2010年08月16日

ダンテ「学園都市か」2(上条覚醒編)

618 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 00:41:45.68 ID:eOiceRY0
―――

銃を向けられ、佐天はなすすべなく兵達に地下駐車場に連れて行かれた。

地下駐車場には40人程の市民が集められていた。
この十倍を越える客がいた筈だが、それがどうなったかなど考えたくもない。

佐天「(…ど、どうなっちゃうんだろ…死んじゃうのかな…)」
体が小刻みに震える。
胸がざわつき、呼吸が荒い。

目隠しをされる前、
何かが引きずられたような赤い筋が床に付いているのを何度も見た。

『何』が引きずられたのか。想像するのは難しくない。

佐天「(うぅ……)」

皆目隠しをされ後ろ手で縛られ、人質として一箇所に寄せ集められているらしい。
背中や腕に小刻みに震えている隣の人の肌が当たっている。

その時。

佐天「ひゃぁああ!!!」

いきなり視界が元に戻った。
目隠しが外されたのだ。

目の前には二人の兵。

619 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 00:43:25.14 ID:eOiceRY0
周囲はやはり人質達が集められていた。

そしてその周りや、離れたところを巡回している兵達。
合計で15人くらいはいるだろうか。

「立て」
目の前の兵のガスマスク越しからくぐもった声。

佐天「ひぁ!!!」

「来い」
服の背中を掴まれ、引きずられるように乱暴に立たされた。

佐天「こ、殺さないで!!!ごめんなさいごめんなさい!!!!!」

「黙れ」

銃で背中を押され誘導されて近くに止めてあったトラックの傍まで連れて行かれた。

620 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 00:45:16.76 ID:eOiceRY0
佐天「(やだよ…こ、殺されちゃうのかな…)」
嫌な汗が全身から噴き出してくる。
両足が振るえ、今にも倒れてしまいそうだ。

トラックの後部の扉が開き、一人の男が降りてきた。
他の物と同じく戦闘服を着ているが、ガスマスクは被っていない。

その男が佐天の前に立つ。

佐天「…ひっ…」

「連れて来い」
男が横を向き、一人の兵に指示を出した。

するとトラックの陰から、白い修道服の少女が腕を掴まれて連れて来られた。
佐天と同じく後ろ手で縛られている。

だがその表情は佐天とは正反対だった。

毅然とした表情でそのリーダー格の男を睨んでいた。

621 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 00:46:42.78 ID:eOiceRY0
禁書「とうまは!!!?とうまはどこにいるの!!!!?何かしたら許さないんだよ!!!絶対に!!!!」

「おい」
男がその少女を無視して佐天に声を飛ばした。

佐天「は、はい!!!」

「こいつ知ってるか?」
男が顎で修道服の少女を指しながら問う。

佐天「…い、いえ…」

「そうか。あの銀髪の男とはどういう関係だ?」

佐天「…!」
銀髪の男。ついさっきまで一緒にいた。

背後の兵が 早く答えろ とでも言うかのように背中に銃口を押し付けてくる。

佐天「な、何も!!!今日知り合ったばっかりで…!!!」

「本当か?庇うのは止めといた方がいいぞ」

佐天「ほ、本当です!!!本当ですってばぁああああ!!!」

622 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 00:48:22.56 ID:eOiceRY0
「そうか。じゃあ用無しだ」
男は手を挙げて合図をした。

すると今度は後頭部に冷たい金属の感触。

佐天「イヤァアアアアアアア!!!違います!!!!ごめんなさい!!!!違うんです!!!!」

「何だ?」
男が手を挙げて兵を制止する。


佐天「あ…お…ぉ…」


佐天「こ、恋人です!!!」


何も考えないで喋った。
生きたいが為に咄嗟についた嘘だ。


そしてその嘘は幸運にも彼女の命を繋ぎとめる事になった。

「そうか。おい、このガキ二人をそっちに置いとけ」

禁書「(う、う、浮気!!!?ネロが本当に浮気してたんだよ!!!!)」

623 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 00:50:47.10 ID:eOiceRY0
二人は止められているトラックとトラックの間に並んで座らされた。

佐天「…うぅ…もうやだよ…」

禁書「……あなた…名前はなんていうのかな?」

佐天「…佐天…涙子」

その名はインデックスの脳内にしっかりと記録された。

『ネロの浮気相手』として。

禁書「私はインデックス。よろしくなんだよ」

佐天「…」
隣の少女はなぜこんなに落ち着いているのか不思議だった。
どう考えても絶望的な状況だ。
こんな時に新しい友達を作る気など到底なれない。


禁書「大丈夫なんだよ」

佐天「ど、どこが…」

624 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 00:51:46.31 ID:eOiceRY0
禁書「ネロの恋人さんなんでしょ?じゃあ大丈夫」

佐天「そ、それは…」

禁書「きっと助けに来てくれるんだよ」

佐天「…?」
ネロの事を思い出す。
学園都市外部の人間だ。何か能力を持っているとは思えない。
本人も言っていた。

そして能力無しでは、軍隊でもつれてこないと到底この状況は打開できないだろう。

禁書「もしかして知らないのかな?」

佐天「…へ?」
『何』に対して知らないと聞いているのだろうか。

625 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 00:53:05.73 ID:eOiceRY0
禁書「そうなんだ。ネロから聞いてないんだね」

佐天「…な、何を?」

禁書「私からは言えないんだよ。でももうすぐ直接見れると思うんだよ」

禁書「私達皆を助けてくれる。皆生きて帰れるんだよ」

禁書「絶対に。皆」

佐天「…」
その揺ぎ無い確信の中に、
わずかに『願い』のようなニュアンスが篭められていた。


禁書「人質の皆も、あなたとネロと私も―――」


禁書「―――とうまもきっと」


626 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 00:54:34.55 ID:eOiceRY0
―――


東棟三階。

粉塵が舞う。
瓦礫が落ちる。

その光景を御坂は少し離れたところから見ていた。

御坂「―――へ?」

何が起きたかわからなかった。
自分は今あそこにいたはずだ。

「……どォなッてやがる…」

少し離れた横から声が聞こえて来た。

御坂「…」
ぼんやりとそちらの方を向く。

そこには。

白髪で赤い瞳の色白の少年が。

一方通行が立っていた。

627 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 00:56:02.70 ID:eOiceRY0
一方「おィ!!!!テメェ何してやがんだァ!!!!??」

一方通行が怒りの篭った声で、粉塵の向こうにいるであろう上条に声を飛ばした。

今、あの少年は確実に御坂を殺そうとした。

一方通行がベクトル操作で御坂を移動させていなかったら
今頃彼女は無残な肉塊になっていただろう。


一方「聞こえてンだろ!!!」


粉塵が晴れ、中から赤く輝く瞳の上条が現れた。


一方「…ッ!……おィ…何だよ『ソレ』はよォ…?」
その上条の姿を見て一方通行も戦慄する。

あの瞳。

悪魔そのものだ。

上条が一方通行の姿を見て不気味な笑みを浮かべた。

一方「……!!」

628 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 00:57:58.56 ID:eOiceRY0
その赤く輝く瞳は凄まじい殺意が篭められていた。
それも無差別の。

目に映る者全てを殺す気だ。

一方「なンで…なンでテメェが『そッち側』にいやがる!!!?」

上条が闇の世界、それも底無しの闇の中にいるなど。
この一方通行よりも遥かに深い闇に身を置いているなど。


一方「そッちはテメェのいる『所』じゃねェ!!!」


上条はその正反対の場所にいるべき『人間』のはずだ。
光の当たる位置に。


一方「おィ!!!!聞こえてンだろ!!!ざけンなクソがァ!!!」

あの日、闇に身を置いていた一方通行の手から御坂と妹達を救い出したヒーロー。

そのヒーローであるべき男が。

自らの手で救った者を殺めようとするなど。

あれ程の無差別な殺意を纏っているなど。

許されるはずが無い。

629 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 00:59:41.98 ID:eOiceRY0
上条『……………インデックスhagie…?ドコ…ダ?』
上条が一方通行に向けて口を開いた。

インデックス。
一方通行も知っている少女だ。

一方「……なにを言ッてやが…る…?」
インデックスはどこだ?という意味なのはわかる。

その上条の姿を見て一方通行はふと感じた。

まるで自分の姿を見ているようだった。

何かが違えば。
別の未来ではあの『位置』にああして立っていたのは自分かもしれないと。


一方「(なンでだよ―――)」


一方「(テメェが『ここ』に立ッてるはずだろ)」


一方「(なンでンな所に立ッてやがる)」


一方「(コレじゃァまるッきり―――)」



一方「(―――逆じゃねェか)」

630 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 01:01:12.61 ID:eOiceRY0
上条『……殺ス』

上条が呟いた。赤い瞳で真っ直ぐ一方通行を見ながら。

一方「……ふざけンじゃねェ」

上条があんな位置にいるなど絶対に許せない。

あの立ち位置は自分の物だ。

闇に溺れて無残に死ぬのは自分だけでいい。

一方通行は上条のように『何かを救う』星の下で生まれてはいない。

上条の真似をして成功する可能性もかなり低いのは知っている。


それでも。



それでも一方通行には退く気は微塵も無かった。

631 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 01:02:40.79 ID:eOiceRY0
一方「上等だ。テメェが自分で這ィ出てこねェッてンなら―――」


自分のこのゴミみたいな命は尽きてもいい。


一方「俺がその闇を―――」


だから―――

―――この少年だけは。



一方「―――ぶッ壊してやる」



二人は再び激突する。

あの時とは正反対の立ち位置から。


641 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 23:37:51.66 ID:eOiceRY0
―――


地下駐車場。トラックの荷台の中。

「どうなってる?現状は?」
リーダー格の男が苛立ちながら声をあげる。

「わ、わかりません」

東棟と西棟のチーム全てから交信が途絶えた。

「(…クソ…)」

その時スピーカーから男の声が聞こえてきた。

『お、繋がったな』

西棟の三階の部隊の通信機からだ。
だがその声の主は明らかに隊員ではない。

『誰かいるか?』

「…誰だ?」
リーダー格の男が答える。

『よう。話がしてえ』


「…話す気はない」

642 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 23:40:07.74 ID:eOiceRY0
『…そうか…まあ…一応言っておく。手を退いた方がいいぜ』

『今なら見逃してやる』

「その気は無い」

『だろうな』

「…」

『OK。全員ぶっ飛ばしてやる。今の内にお祈りでもしとくんだな』

「…やってみろ」


『ああ―――』


『―――「今」からやってやるぜ』


「……あぁ?」

次の瞬間、トラックが『浮いた』。


643 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 23:45:05.90 ID:eOiceRY0
―――


さかのぼること数十秒前。

地下駐車場。
佐天とインデックスはトラックとトラックの間に縮こまって座っていた。

佐天「…?」
何かがパラパラと落ちる音が聞こえた。

ふと顔をあげると、天井から砂粒程の小さなコンクリート片が降って来ていた。

インデックスもそれに気付き、にっこり笑った。


禁書「来たんだよ」


次の瞬間。
突如轟音が響き佐天達の前に止めてあったトラックの運転席の上へ、
青い『何か』が天井を突き破って落下してきた。

その反動でトラックの荷台がシーソーのように大きく浮かび上がった。

645 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 23:49:29.65 ID:eOiceRY0
その時間は一秒も無かったであろう。
だがこういう時、人間の脳はまるでスローモーションでも見ているかのように錯覚する。

佐天もそう見えた。
まるで数分もの間、トラックの荷台が浮いているような気がした。

そしてその錯覚は突然切れる。
トラックの荷台が重力に従い、地面に叩きつけられて大きくひしゃげた。

佐天「わっ!!!わああああああ!!!」

聞き覚えのある声が耳に入ってきた。


「ワリィな!!遅れたぜ!!!」


佐天「―――?」

その声の方を向く。
そして彼女は目にした。


トラックの潰れた運転席の上から。

青いコートに銀髪の男がニヤけながら彼女達を見下ろしていた。

禁書「ネロ!!!」

646 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 23:52:09.49 ID:eOiceRY0
佐天「…へ?な、何…?何ッ…!?」

禁書「遅いんだよ!!!」


ネロ「はは!!そこから動くなよ!!」


「て、敵襲!!!!」
兵達が叫び、トラックの上のネロへ一斉に銃口を向ける。

だが次の瞬間、トラックが大きくひしゃげネロの姿が消える。

そして青い光の帯が凄まじい速度で駆け抜けた。

佐天「ひゃあああああ!!!!」

爆風が吹き荒れ兵達が瞬く間に吹っ飛ばされて、
割れた銃やアーマーの破片を飛び散らせながら床や天井、壁に叩きつけられていく。

「クソ…!!!」

兵の一人が人質を盾にしようと、床に座っている一人の若い女性の腕を掴もうとする。
だがその手が届く前に。


ネロ「おっと!!お触りのサービスタイムは終了したぜ!!」
兵の体が青い光の帯に弾かれて宙を舞った。


そして全員があっという間に地に力なく伏せた。

ネロは10秒も経たずにこの地下駐車場を制圧してしまった。

647 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/07(水) 23:56:10.21 ID:eOiceRY0
地響きの嵐がやみ、静寂が戻る。

佐天は恐る恐る目を開けた。

佐天「……!!!」

すると兵達は皆地面に人形のようにピクリとも動かずに転がっていた。

そして地下駐車場の中央に立つネロ。

佐天「な、…あ…、?」
言葉が出ない。
何を喋れば言いのかわからなかった。

目隠しをされていて状況が全く掴めずに縮こまっている人質達の方へネロが歩いていく。
そして一人の女性の手の拘束を解き、目隠しを取る。

ネロ「終わったぜ」

女性は周囲の光景を見て目を丸くして呆然としていた。

ネロ「おぃ、他の奴のも解いてくれ」

648 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:00:15.01 ID:f3Vqx320
女性が他の者の拘束を解き、その拘束を解かれた者達も更に他の者の拘束を解いていく。

ネロ「OK、じゃあアンタ等はさっさとここの外に出てくれ」
解放された人質達へそう言い放つと踵を返し、インデックス達の方へ向かった。
そして二人の拘束を解いた。

ネロ「何かされなかったか?怪我はねぇか?」

禁書「ありがとうなんだよ!!私は大丈夫なんだよ!」

ネロ「アンタは?」

佐天「あ…あ、だ、大丈夫…」

ネロ「そうか」

禁書「…?(……なんだかよそよそしいんだよ…本当に恋人さんなのかな)」

ネロは潰れたトラックの方へ向かった。

そしてまるで新聞紙でも裂いているかのように、
簡単にトラックの荷台の壁を引き千切り中に入っていった。

649 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:08:08.26 ID:f3Vqx320
佐天「ふぁぁぁぁ……た、助かったみたい…」
死の危険から解放され、安堵の声を上げて佐天は地面に座り込んだ。

そしてそのままボーっとネロの入っていったトラックを眺めた。

佐天「……」
思考が元に戻るにつれ、色々と浮かび上がってきた。

佐天「(……ネロさんって…)」
聞きたいこと山ほどある。

禁書「……一ついいかな?」

佐天「……へ?」

禁書「本当に恋人さんなの?」

佐天「…うッ!………う、嘘です」

禁書「……むー…嘘はついちゃいけないんだよ」

佐天「ほ、ほら、あそこでああ言っとかないとさ…あたし殺されそうだったし…」

禁書「……」
それはそうだが、『ネロの恋人』と言うのは色んな意味で危険すぎる。
ともかく、ネロ自身に聞く事が無くてよかった。

禁書「……まあ言いんだよ。この事は黙っておいてあげる」
誰にも言えるはずが無い。もし万が一トリッシュやダンテの耳に入ったりでもしたら。

あの二人はでまかせと知っていながらもネロを弄くるだろう。
そしてキリエに知れたら。

禁書「……」
この人はとんでもない爆弾を作りかけたのを自覚しているのだろうか、 
とインデックスは佐天を眺めながら思った。
当然自覚するはずも無いが。

650 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:11:29.98 ID:f3Vqx320
ネロ「……」

ネロは潰れたトラックの中で横たわっている兵を見てまわっていた。

トラックが浮き上がり思いっきり揺さぶられたせいで中は滅茶苦茶になっていた。
中の者達は壁や床に何度も叩きつけられただろう。

ネロ「…アンタだな」

一人の兵の前に屈む。

「……直に…会えたな…」
額から血を流し、壁に寄りかかって座っているリーダー格の男が苦しそうに答えた。

ネロ「目的は?親玉は?」

「…知りたかったからだ…ボスはいない…俺達が単独でやった…反乱さ…」

ネロ「何を知りたかった?」

「二ヶ月前の事件についてだ…あの怪物共は何なんだ?…お前達は知っているだろ…?」

「死ぬのは別にいい…だが何の為に、何と戦っているかぐらいは知りたい…」

ネロ「つー事はアンタ等は学園都市の連中か」

「ああ…捨て駒さ…ただの道具だ……」

ネロ「…そぉかい」

651 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:13:43.60 ID:f3Vqx320
「あれは…一体何なんだ…? 能力を持った生物兵器か何かか?」

ネロ「…悪いが教えられねぇ。『こっち』には入って来ない方がいい」

「だろうな…まさかお前らの内二人もあれと同じような怪物だったとはな…」

ネロ「―――二人?」

「とぼけるな…あの…ツンツン頭のガキもお前と同種だろ…名は上条当麻だったか…」

ネロ「―――ああ?」

「東棟の部隊は全滅した……ハッ、『無能力者』か……能力以前に人間じゃねえだろ…」

東棟。
今もネロの右手はその東棟の悪魔の力を感じている。

これが―――

―――あの少年だと?

ネロ「……そうか」
ネロは立ち上がる。

ネロ「さっさと消えろ」

「……殺さないのか?」

ネロ「ああ」

652 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:16:57.62 ID:f3Vqx320
「……」
次の瞬間リーダー格の男が腰から拳銃を引き抜き、ネロに向けた。

ネロ「……俺にやらすんじゃねえ。幕を引きたきゃ自分でやれ」

ネロ「アンタの命はアンタのもんだ」

「……はははは…」
男は笑った。
まさかこんな形で己の死ぬ権利を手にすることができるとは。


「……お前…良い奴だな…」

ネロ「アンタもな。そういう覚悟は嫌いじゃねえぜ」


「……はは…」

男は銃口を自分の顎の下に当てた。

「最期の相手がお前みたいな奴で良かったぜ」


ネロ「……寝るなら早く寝ろ。見届けてやっからよ」


「スマン。じゃあな」


そして引き金を引いた。
一発の銃声が響き、男の手がダラリと下がった。


ネロ「……ゆっくり休みな」

653 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:19:15.99 ID:f3Vqx320
ネロ「…」
ネロはその男の死体の前に立ちながら考えていた。

あの悪魔の反応はどうやら上条らしい。

ネロ「…あ〜…」
とりあえず見に行くのは決まってる。
問題はその後だ。

『処理』する必要があるかどうか。

ネロ「(ま、見てみねえ事にはな)」

ネロ「(…禁書目録には何て言えばいいんだクソ)」

その時だった。
トラックの外から少女の悲鳴が聞こえた。

ネロ「…お次は何だよ」

ネロは荷台の壁をぶち破り、外に飛び出した。

すると目に入った。

二人の兵が佐天とインデックスを盾にし、銃を突きつけて何やら叫んでいた。

ネロ「…(やっぱ『戦士』もいれば『ゴミクズ』もいるな)」

654 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:22:22.50 ID:f3Vqx320
「動くんじゃねえ!!!!ぶち殺すぞ!!!」
二人の兵が喚き散らしている。

地下駐車場内の兵は全員ぶっ飛ばした。
とすると、この二人は別の所にいた生き残りだろう。


ネロ「おい。やめとけ」

ネロが動じずに歩いていく。

「く、来るんじゃねえ!!!!」
インデックスと佐天をネロの方へ押し出し盾にする。

佐天「ひあああああああ!!!!!」

インデックス「…やめといた方がいいんだよ」

「うるせぇ!!!」

655 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:25:15.53 ID:f3Vqx320
ネロ「…あ〜」
ネロと兵の距離は15m程。

兵の震えている指が引き金に触れている。
いつ銃弾が放たれてもおかしくない。

だがネロにとってはどうってことは無い。

兵達の指が引き金を引く前に、
ブルーローズを腰から引き抜き二人の兵の額を正確に撃ち抜くのは容易い。

当然二人の兵は死ぬが。

悪魔の目で殺意を向けるという方法もあったが、それだとあの二人の少女も巻き添えだ。
インデックスは耐性が備わっているだろうが、佐天はあの兵達以上に弱いだろう。

ネロ「…チッ」
できれば殺したくは無いがやむを得ない。

ネロが腰のブルーローズへ手を伸ば―――

―――そうとした瞬間。


ネロ「―――」

佐天「…へ?」

佐天の後ろにいた兵が突如『消えた』。

657 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:27:52.86 ID:f3Vqx320
普通の人間ならまるで映像がいきなり途絶えたように見えただろう。
だがネロの悪魔の目はその瞬間をしっかりと目撃した。

佐天の後ろにいた兵の『像』が残像を引くように伸び、佐天の腰のポケットのあたりへと吸い込まれたのだ。
その瞬間、ネロの右手が強力な反応を検知した。

ネロ「(―――『アレ』は)」

このデパートに来た時から感じていた僅かな悪魔の視線。
それの根源だ。

恐らくシェオル。

佐天「…はれ?」

禁書「…!!」

「お、おい!!!てめえ何しやがった?!!!!」
インデックスを盾にしていた男が佐天に銃を向ける。

佐天「ひゃぁ!!!あ、あたしは何も…!!!!?」

次の瞬間、もう一人の兵も消えた。

659 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:33:45.05 ID:f3Vqx320
ネロ「ハッ!!そういう事か!!」

ネロ「OKOK!!!」

ネロが佐天を見ながらまるで獲物を見つけた狼のように心底嬉しそうに笑う。

禁書「…あなた…!!!」

佐天「ちょ、ちょっと待って!!!あたしは何も!!!!」

ネロはブルーローズを引き抜いた。
そして佐天へ銃口を向ける。

ネロ「動くんじゃねえ」

佐天「ひぁああ!!!違う!!!!違うんです!!!あたしじゃぁあああああ!!!!!!」
佐天が大きく手を振りジタバタする。


ネロ「うるせぇ。動くなっつってんだろ」


ネロは躊躇い無く。

―――引き金を引いた。

凄まじい炸裂音が響き、巨大な砲炎が噴き出す。

660 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:36:46.13 ID:f3Vqx320
その銃弾が。
佐天の体へは直接当たらずに、かするよう腰のポケットを引き裂いた。

佐天「へ…?」

小さな10cm程の鏡が宙を舞った。
光が反射しキラキラと輝く。

ネロ「野郎見つけたぜ!!!」


ネロ「女の尻に隠れるとは品の無ぇ野郎だぜ!!!」


すかさずブルーローズの引き金を何度も引く。

爆音が連続し、大量の銃弾がその小さな鏡、シェオルへ向かう。

佐天のすぐ脇をとてつもない威力の破壊の槍が通過していく。

佐天「きゃああああああ!!!!!」
佐天は咄嗟耳を塞ぎその場にうずくまった。

661 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:39:54.51 ID:f3Vqx320
銃弾は直撃した。だが炸裂はしなかった。

ネロ「…へぇ」

そのまま溶けるように鏡へ吸い込まれていった。

鏡は地に落ちずに1m程の高さの宙に浮いていた。


ネロ「…面白え。その『先』が『鏡の世界』ってやつか?」


シェオル『…スパーダの一族…逆賊共が…』

低く、かつ尖っている不気味な声が鏡から発せられた。


ネロ「ハッ。相変わらず俺達は人気者か」


シェオル『スパーダの孫、ネロ。我が腹の中へ入るが良い』


ネロ「悪いな。赤ちゃんゴッコする趣味は無ぇんだ」

662 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:42:27.44 ID:f3Vqx320
禁書「あ、あれは…!!!」

ネロ「おい。離れてろ。俺の『仕事』だぜ」

禁書「う、うん!!」

インデックスがうずくまってる佐天に駆け寄り、
何とか立ち上がらせてその場から遠ざかろうと―――

―――した時だった。

ネロには見えた。

ネロ「―――あ?」

二人の少女の『像』がシェオルの方へ残像を引く様に伸びたのだ。

ネロ「―――そっちかよ!!!!」
ネロはデビルブリンガーを一気に伸ばし、二人を掴んだ。

だが。

そのデビルブリンガーごと像が伸び、シェオルの方へ向かう。

ネロ「―――マジかよ―――」


シェオル『間抜けだな。こうもあっさり掴まってくれるとは』

663 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:45:26.69 ID:f3Vqx320
禁書「ネロ―――!!!!」

デビルブリンガーの拳ごとシェオルの中へ二人が吸い込まれていった。

ネロ「クソ野郎が!!!!」
そしてデビルブリンガーが凄まじい力で引っ張られる。

ネロの体も残像を引き始める。
だがこのまま成す術なく吸い込まれる訳ではない。

ネロ「ハァ!!!!!」
ネロの目が赤く輝く。

その瞬間、引き込まれていたデビルブリンガーが制止する。

シェオル『―――ッ』

ネロ『ハッ舐めんなコラ!!力比べじゃ負けたことねえんだよ!!!』
じわじわとデビルブリンガーを引きずり戻す。

シェオル『―――なッ』

そして。

ネロ『ハァアアアアアアアア!!!!!』
デビルブリンガーがシェオルの鏡から勢い良く引き抜かれた。

だが。

ネロ『―――あ?』

その拳には二人の少女の姿が無かった。

空っぽだった。

664 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:47:15.43 ID:f3Vqx320
ネロ『―――あぁ?』

シェオル『禁書目録。「アレ」、かなり大事な物なのだろう?人間達にとって』

ネロ『―――』

シェオル『見物だな。禁書目録を失った人間の世界がどうなるか』


禁書目録は魔術サイドにおいて中核をなす重要な存在だ。
アレが無くなれば。

パワーバランスが完全に崩れるだろう。

最悪、全世界を巻き込む大混乱が起こるかもしれない。
そんな事態を引き起こす訳には行かない。

ネロ『……あ〜、クソ』

シェオル『我を殺したければ殺すが良い。貴様なら一瞬だろう』

シェオル『「鏡の世界」は唯一の入り口を失い完全に外界と隔絶されるだろうがな』

ネロもそれは知っている。


ネロ『しょうがねぇ…』

665 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:49:28.65 ID:f3Vqx320
ネロ『(俺も―――入るしかねぇか)』

一度シェオルを『通り』向こう側に行きあの二人を保護する。

シェオルは牢獄としても使われていた。

あの中には血に飢えた、気が狂った危険な悪魔が大勢いるだろう。

そんな中に二人の人間の少女が放り込まれた。

外から救う手段を探している暇は無い。

今、ネロが中に入るしかない。

二人を守り戦いながら抜け出す手段を探す。

禁書目録を失うわけには行かない。

そして。

ネロは友人を見捨てられるような男でもない。


ネロ『上等だガラクタ野郎』

666 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:52:06.63 ID:f3Vqx320
ネロはブルーローズを高く掲げ、銃口を真上に向けた。
力を集中させる。

そして引き金を引いた。

凄まじい衝撃波と共に青い光の槍が天井・そして上の階を次々と貫通し、ビルごとぶち抜いて空に放たれた。

この学園都市のどこかにダンテがいるはずだ。
あの光の矢は必ずダンテの目に留まるだろう。

あの男が来ないはずが無い。
きっとすぐに飛んでくる。

だがダンテにこのシェオルを『あげる』つもりはない。
ダンテにはせいぜい足止めして貰うつもりだ。

中にネロがいるとなるとシェオルを殺そうとはしないだろう。


つまりこのクソッタレを―――

ネロ『(マジで頭に来たぜ)』


シェオルを叩き割るのは―――


ネロ『(―――俺の獲物だ)』

667 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 00:55:27.88 ID:f3Vqx320
ネロ『入ってやろうじゃねえか』

シェオル『来い』

ネロ『腹壊しても知らねえぜ』

ネロはシェオルへ突進する。
体から残像が伸びる。

ネロ『ハッ!!』

左腕、右足、胴体の順番でシェオルに引き込まれていく。

ネロ『ガラクタ野郎―――』

シェオル『何だ?』

頭部が引き込まれ始める。
その顔は挑発的に笑っていた。


ネロ『―――後でたっぷり遊んでやる』


そして最後に中指を立てた右手が引きずり込まれた。

ネロは鏡の世界へ。
その先にいる弱き二人の少女の下へ。

その先で始まるであろう無数の罪人との『闘技場』へ。

675 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 23:32:58.07 ID:f3Vqx320
―――

東棟三階。 

一方通行と赤い瞳の上条が20m程の距離を隔てて向かい合っていた。

その少し離れた所の壁際で御坂が屈みなが、涙を浮かべた瞳でら二人を見ていた。


一方「…行くぜ」

一方通行が軽く地面を足で叩いた。
一方通行は上条を殺すのではなく、彼の周囲を瓦礫で固めて動きを止めるつもりだ。
次の瞬間、崩れた天井の瓦礫が宙に浮き、凄まじい速度で上条へ放たれた。

あの右手は一方通行のベクトル操作すら簡単に無効化してしまう。
だが以前戦った記憶によると。
飛ばした物体は止められない。

能力から生まれた慣性は消されるかもしれないが、
数百キロある瓦礫はただ重力にしたがって落ちるだけでかなりの破壊力になるだろう。

だが。

上条はまるで飛ぶ蚊を軽く叩くかのように左手を振るった。
瓦礫が手に当たる瞬間白い光が放出され、瓦礫の砲弾がスナック菓子のようにあっけなく砕かれ四散する。

一方「―――あァ?」

どう見ても右手の力ではない。
見覚えがある。

二人でバージルからインデックス奪還しようとした時。
あの時使っていた力と似ている。

いや、おそらく同じ物だろう。
そしてあの時よりも遥かに強力だ。

678 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 23:38:07.77 ID:f3Vqx320
一方「―――チッ」

今度は上条の下の床へベクトルを収束させる。
床が盛り上がり、爆発するように破片が飛ぶ。

上条はその攻撃を逆に利用する。

上条は身を捻り、その周囲を舞う破片を一方通行へ向け『蹴り』飛ばした。
その場でさらに何度も体を回し、まるでダンスでもしているかのように華麗に次々を蹴り飛ばす。

音速を超えた破片の雨が一方通行へ向かう。

一方「ハッわかッてンだろ!!!無駄だぜ!!!」

当然一方通行には傷一つつかなかった。
全て上条へ反射され、散弾の雨が彼を包んだ。

一方「…ッて…テメェも無傷かよ」

だが、粉塵の中上条は何事も無かったように立っていた。
上条が自分の右手を眺める。

そして一方通行の方へ向き、

不気味な笑みを浮かべた。


一方「―――準備運動は終わりッてか」


そして上条は床を蹴り、一方通行に真っ直ぐ突進する。

679 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 23:41:47.69 ID:f3Vqx320
上条が蹴った床が爆散する。

予想以上の凄まじい速度だった。
爆風が吹き荒れたと思った次の瞬間、上条が目の前に現れた。

一方「―――ッ!!」

上条は右手を一方通行の顔面に伸ばす。

その右手が触れる寸前。

一方「オァ!!!!!」
収束した大気を上条の腹部へ叩き込む。

衝撃で周囲の床が大きく抉れる。

だが至近距離でそれ程の衝撃を与えても上条を弾き飛ばすことはできなかった。
僅かに速度を削っただけだった。

しかしそれで充分だった。

今度は自分の体を後方へ瞬時に移動させる。
鼻から僅か数センチのところを上条の右手が通過する。

一方「―――ファッ!!!」
反射的に安堵の感情の篭った息が一方通行の口から漏れた。

そしてそのまま後方へと飛ぼうとした時。

上条が目の前で駒のように一回転し、強烈な回し蹴りを一方通行へ放った。

680 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 23:46:21.98 ID:f3Vqx320
巨大な鉄塊がぶつかり合うような轟音が響く。
発生した爆風が天井と床を大きく砕き、吹き抜けを作る。


凄まじい衝撃を受け、一方通行は15m程後方にずり下がった。
能力でブレーキをかけなければこのまま壁を貫いてビルの外へ叩き出されていただろう。

一方「…ぐぉ………」

体の内部が軋み、痛みが走る。

一方通行は15m先の上条を睨んだ。

蹴りの『物理的』な衝撃波は全て難なく反射した。
だがそれ以外の『何か』が。

あのバージルと戦った時も経験した。
反射どころか感知すらできない『何か』が、体をすり抜けてスタミナそのものを削り取った。

明らかに自分の生命力が減ったのがわかる。

悪魔特有の攻撃だ。
直接の破壊と同時に相手の魂へもダメージを与える。

一撃で体を簡単に大きく引き裂くバージルの攻撃と比べればかなり可愛いものだが、
それでも何発も喰らって耐えられる代物では無い。

そして上条の蹴りを放った足は、その莫大なエネルギーを反射されたにも関らず無傷だった。


一方「……マジかよ…クソがッ…!!!」

681 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 23:48:49.68 ID:f3Vqx320
更にあの右手に当たっている間は能力を行使できない。
もし掴まれたりすれば。

能力の鎧を失った一方通行は簡単に叩き潰されるだろう。

凄まじい身体能力を誇る悪魔の体と能力を無効化する幻想殺し。

一方「(―――そりゃァ反則過ぎじゃねェか?…三下ァ……)」

完璧すぎる。

正に今の上条は『能力者キラー』だ。

あの右手も左手や他の部分と同様凄まじい力を持っているのかどうか。
その疑問も浮かんだが、今は問題ではない。

怪力があろうが無かろうが右手に掴まった時点で一方通行は『終わる』。


一方「(―――無傷は―――ムリだ)」

傷つけないように保護するのはどう考えても不可能だ。

殺す気で全力で向かわねば到底押さえ込めない。
今ここで一方通行が死ぬと後は誰がいる。

すぐ近くにネロがいるらしいが、土御門の話によると上条を殺そうとするかもしれない。

今、この少年を確実に生かしたまま確保できるのは一方通行しかいないのだ。

682 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 23:52:58.39 ID:f3Vqx320
一方「(―――手加減はナシだ)」

こうなったら手足をもぎ取ってでも押さえるしかない。


一方「オァアアアアアアアア!!!!!!」

能力を最大限引き出し、周囲のベクトル全てを掌握する。

このフロア内の壁際にいる御坂の前に、彼女をこの激突から守る為に一部の力を割いて壁を作る。
そして残りの莫大なエネルギーで二つの瓦礫を上条の下半身へ飛ばす。

両足を吹き飛ばすために。

音速の数倍にまで一気に加速された瓦礫が大気との摩擦熱で輝き、まるで光線のようになる。

二本のオレンジの光の線が上条へ突き進む。
床がその凄まじい熱と衝撃波を受け砕け散る。

だが上条には当たらなかった。
上条は上へ跳ねてそれをかわした。

一方「チッ―――!!!」

二つのオレンジの槍が床を貫き、そのまま斜め下へビルを貫通していった。

上条そのまま空中で体を縦に180度回転させ、天井へ『着地』する。
そして天井を蹴り一方通行へ一直線に向かった。

683 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 23:55:17.12 ID:f3Vqx320
一方「ハァアアアアアアアア!!!!!!」
一方通行は向かってくる上条へ向けて更に二発放つ。

同時に上条がそれを避けるべく体を捻る。
二発は難なくかわされた。

だが。

三発目が向かう。

一方通行は上条が回避するのを見越して時間差で三発目を放ったのだ。

その三発目のオレンジ色に輝く瓦礫の砲弾が。

上条の左腕に直撃する。



次の瞬間、上条の左肩から先が吹き飛んだ。

赤い肉片が飛び散る。

684 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/08(木) 23:59:26.75 ID:f3Vqx320
一方「(―――クソ…!)」

いつもなら敵の体を引き裂けば最高の快感が込み上げて来る。
だが今のこの少年相手ではそんな感情はとても起こらなかった。

一方「(―――あァ?)」
更にもう一発放って右足を吹っ飛ばそうとした瞬間。

その向かってくる上条の姿を見て一瞬思考が停止する。

一方「(―――)」

左腕が無くなったのに苦痛の色どころか表情が一切変わらない上条。

一方「(―――ッ!!!)」
数百分の一秒の僅かな反応の遅れが追い討ちのタイミングを逃し、更に隙を生んだ。

上条が再び右手を一方通行の顔面へ向けて放つ。

一方「オァッ!!!!」

咄嗟に身を屈め、交わす。
頭のすぐ真上を上条の右手が通過する。

一瞬でも当たってしまったらそこで終了だ。

一方「ラァアアアア!!!!!」
腰を落とし、右手にベクトルを収束させる。
大気が一瞬で圧縮されプラズマ化する。

その輝く右手を上条の腹部へ放つ。
だが有り得ない速度で反応した上条が左足の蹴りを一方通行の拳へ重ねた。

白く光る拳と足が正面から激突する。

685 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 00:02:48.32 ID:Sr.H6fA0
一瞬音が消える。

そして次の瞬間ビル全体が大きく振動し、天井が上の階ごと吹き飛んだ。
破壊の嵐は七階まで達した。


一方「(―――イケるぜ!!このまま―――!!)」

上条の左足が大きくひしゃげていた。

残るは右足。

これさえ奪えばあとはどうとでもなる。

残る右足を吹き飛ばそうとベクトルを収束―――

―――させようとしたが。


一方「―――!!!!」


能力が発動しなかった。
同時に体が急に重くなる。体を支えていた能力も切れたのだ。

『ア゛ァ゛ァ゛ァ゛』
その時、不気味な笑い声が上条の口から発せられた。
上条の顔に邪悪にせせら笑うかのような笑みが浮かんでいた。

そして左腕の感触に気付く。

一方「―――しまッ―――」

上条の右手が彼の左腕を掴んでいた。

686 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 00:07:19.45 ID:Sr.H6fA0
どうやらこの右手にはあの凄まじい怪力は無いようだが、
今はもうそんな事は問題ではなかった。

驚愕し目を丸くしている一方通行に上条が不気味な笑みを向ける。


上条の左足が元の形に戻っていく。
左腕が瞬く間に再生していく。

一方「―――!?」

わずか一秒で上条の体は傷一つ無い完全体に戻った。


そして左手を握り、大きく後ろへ引いた。
一方通行を叩き潰し肉塊へと変えるパンチを放つべく。


一方「―――クソガァアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


その時。

突如雷鳴が響いた。

そして上条の側頭部を巨大な電撃の槍が直撃した。

687 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 00:11:07.56 ID:Sr.H6fA0
上条の上半身が横に大きく曲がり押しのけられる。

その拍子で一方通行を掴んでいた右手が離される。

一方「アアア!!!!!」
拘束から解き放たれた一方通行はすぐに能力を復旧させる。

その時、電撃が放たれた方向から御坂の声が聞こえた。

御坂「当麻を―――!!!!」
電撃を放ったのは彼女だ。
一方通行と上条の戦いを目の当たりにし、自分の電撃では上条には到底効果が無いのを知った。

だがそれが逆に彼女が電撃を上条に直撃させる勇気を与えた。


一方「あァ―――」

地球の自転ベクトルを捕え、右手に集める。

一方「任せろ―――」


一方「俺が―――起こしてやンぜ―――」


そして上条の顔面へ―――。


あの日、上条が一方通行の目を覚まさせた時のように―――。


今度は一方通行が右の拳を叩き込む―――。



688 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 00:14:48.67 ID:Sr.H6fA0
―――


佐天「……は?」

禁書「……」

二人はさっきと同じ地下駐車場に立っていた。
ひしゃげたトラック、大きく崩壊し穴が開いている天井。

だが人間は誰一人いなかった。

周囲には二人以外誰もいない。
人の気配が全く無い。

佐天「…皆…は?…あれれ?」
佐天が状況を掴めずにキョロキョロする。

禁書「…これは…」
インデックスが何かに気付いたように声をあげた。

佐天「な、何…?」

禁書「…よくまわりを見てみるんだよ」

佐天「?」
インデックスに促され周囲を改めて見回す。

689 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 00:18:50.63 ID:Sr.H6fA0
佐天「…別に何も…あれ………えぇ!!!」
佐天もその異常に気がついた。

全てが『左右反対』だったのだ。

トラックの配置、出入り口の位置、柱の並び、そして柱に刻印されている階数を表す数字。

佐天「な、何これ!!!」

インデックスが屈み、足元の小さな瓦礫を手に取る。
するとその数秒後にその瓦礫が消え、同時に元にあった場所に『現れた』。

元の位置に戻ったのである。

禁書「…鏡の世界……『ゲヘナの鏡』……」

ここは鏡の世界。表の世界のコピー。

瓦礫が元の位置に戻ったのもそのせいだ。
表の世界の位置にあわせて修正されたのだ。

禁書「……まずいんだよ…」

ゲヘナの鏡だとすると。
ここは『牢獄』。

つまり―――。


その時、どこからかまるで地の底から響くような何かの咆哮が聞こえた。

690 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 00:22:15.00 ID:Sr.H6fA0
佐天「ひゃッ……な、何よぅ今の…!!!」

禁書「……あぅ…」

続けて何かを引きずるような音と、重い何者かの足音が聞こえてきた。
徐々に近付いてくる。

佐天「な、何…!!!何よ…!!!」

禁書「静かにするんだよ……こっちに…」
インデックスが佐天の手を掴み、小走りで潰れたトラックの陰に連れて行った。

禁書「隠れるの…静かに…」

佐天「へ……う、うん…」
足音と何かを引きずる音が更に近付いてくる。もうこの地下駐車場内にその何かがいる。

二人はトラックの影に屈み、息を殺して身を潜める。

佐天「…ふ、ふぇぇぇぇ…」
極度の緊張で佐天の気分が悪くなってきた。

禁書「シーッ……」

あの音の主は確実に悪魔だ。
それも魔界において『罪人』の烙印を押された悪魔。

あまりにも危険すぎる。

禁書「(…ど、どうすれば…)」

このままではいずれ見つかる。


691 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 00:24:48.19 ID:Sr.H6fA0
音の主が更に近付いてくる。

このまま進んできたらトラックの影に隠れている二人から見える位置を通りそうだ。

禁書「目を覆って。見ちゃダメなんだよ」

佐天「…へぁ?」

禁書「早く」

佐天「う、うん」
佐天は理由を聞かず言われるがままに目を両手で覆った。

その数秒後。

禁書「…!!」

二人の位置からその音の主が見えた。

体高は2m程。黒い肌に山羊の頭に巨大な角。
ゴートリングだ。

だがその背は老人のように曲がり、口からはだらしなく舌が出ていた。
体が傾いており、まるで片足を引きずっているかのように歩いている。
体表の所々が焼け爛れているかのようにグロテクスなっていた。

禁書「…ッ!!!」

通常のゴートリングの禍々しくも神々しい威厳溢れる佇まいは欠片も無かった。

693 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 00:28:06.14 ID:Sr.H6fA0
人間と違い、悪魔の外見はその者の精神的な面や魂の性質に大きく影響され変化する事がある。

この罪人のゴートリングも、元は神々しく威厳が溢れていただろう。
だがこの牢獄に長きに渡って閉じ込められ、その精神は完全に破壊されてしまったのだ。

高等悪魔のゴートリングの知性や精神レベルは人間のそれよりもかなり高い。
だがあのゴートリングにはその欠片すら見えない。

今は殺戮と破壊を貪るタダの『獣』だ。

禁書「…」
ジリッと肌が焼け付くような悪寒。

あの姿になっても未だに圧倒的な力は健在のようだ。
むしろそれだけしかないと言っても良いだろう。

その悪魔が歩き進み、全身が見える。
そして右手で引きずっていた物も。

禁書「…ッ!!!」

それは戦闘服を履いた人間の下半身だった。
インデックス達の少し前に鏡の世界に吸い込まれた兵の成れの果てだ。

佐天「……な、何……??」

禁書「だめ…絶対に見ないで…」
佐天のような一般人には見せてはいけない。
悪魔に何度も触れているインデックスとは違う。

しかも相手は高等悪魔のゴートリングだ。
初めて目にすれば精神が不安定になりパニックになりかねない。


695 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 00:30:33.89 ID:Sr.H6fA0
ゴートリングが床に屈み四つんばいになった。
なにやら床に鼻先を近づけている。匂いを嗅いでいる様な動作だ。

そこは先ほどインデックスと佐天が立っていた場所。

禁書「(…まずいんだよ…!!!!)」

ゴートリングが顔を上げた。

その目が。

真っ直ぐとインデックス達の方へ向いていた。

禁書「(―――!!!)」

次の瞬間醜いゴートリングが凄まじい咆哮を挙げた。
建物全体が振動する。

佐天「ひぁ―――」
その拍子で顔を覆っていた手を外してしまった。

禁書「だ、だめ―――!!」

そして佐天は見てしまった。


佐天「―――」


その悪魔の姿を。

彼女も遂にその『世界』を見知ってしまった。


698 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 00:40:24.91 ID:Sr.H6fA0
佐天「あぁああああ―――」
頭の中が真っ白になる。何も考えられなくなる。

残る感情はただ一つ、本能的な恐怖。
だがその恐怖に埋もれそうになったところを小さな温もりが引き止めた。

禁書「大丈夫!!私がここにいるから!!」
インデックスが佐天の手を固く握っていた。

佐天「ああ……ああああ…」
佐天がその手を握り返す。

禁書「行くよ!!!」
もうあのゴートリングは二人の位置を把握した。逃げるしかない。

どこまでこの命を永らえさせることができるか。
恐らくもって数十秒だろう。
だがそれでもインデックスには諦める気が無かった。

禁書「(とうまなら―――)」
上条なら絶対に諦めない。
こんなところで彼女が諦めてしまったらどうする。

佐天の手を強く引っ張り一気に駆け出す。

そしてゴートリングの反対側へ走り、トラックの間から抜け出す。
次の瞬間轟音を響かせて背後のトラックが何かによって叩き潰された。

その衝撃で二人が転ぶ。

禁書「うぅ!!!」

佐天「あぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

無残な姿になったトラックの上にゴートリングが二人を見下ろしながら立っていた。

だらしなく半開きになっている口から、涎のような黒い液体が糸を引いて落ちる。

699 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 00:45:05.90 ID:Sr.H6fA0
禁書「うううう!!!!」
インデックスが佐天を庇うかのように覆いかぶさる。
無駄だとはわかっている。

だがそれでも体が佐天を守ろうと動いた。

まるで上条のように。

無駄とでも言いたそうにゴートリングが不気味な笑い声をあげた。

そして二人に飛び掛った。

二人の少女は目を瞑った。

次の瞬間、凄まじい衝突音が響く。

だが二人の上に『死』は来なかった。
インデックスが恐る恐る目を開ける。

禁書「―――」

すると目の前には。

巨大な金属のケースを背負った、青いコートに銀髪の男の後姿。
その少し前の床にペシャンコになったゴートリングがめり込んでいた。

ネロ「いつもギリギリでワリィな」
その背中から救いの声。

禁書「ど、どうしてあなたもここに!!!??何で!!!」

700 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 00:47:11.88 ID:Sr.H6fA0
禁書「な、何で!!!?」
助けてくれたのは嬉しい。

だが何でこの鏡の世界に。
ネロなら鏡の世界に囚われるどころか易々とシェオルを打ち破れるはずだ。

ネロが振り向く。
ネロ「アンタ等が入っちまったからじゃねえか」

佐天「へぁ……ネロ…さん…?」

禁書「私達の為に…!!!?」

ネロ「うるせぇ黙れ」

禁書「……うぅ…た、確かに私が重要なのは知ってるけど…」

禁書「……で、でもそれよりもあなたの方が…!!」
スパーダの一族の一人と魔剣『スパーダ』が無くなるなど人間界を越えた問題になる。

ネロ「ハッ」
ネロは軽く鼻で笑った。


ネロ「生憎―――オンナを捨てれる程の『度胸』は無ぇんだ」


周囲に大量の黒い円が浮かび上がる。


ネロ「それに―――」

ネロが心底楽しそうな笑みを浮かべた。


ネロ「―――こんな楽しそうな『パーティ』を欠席する気もねえよ」

714 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 23:41:57.44 ID:Sr.H6fA0
―――

黒子と初春とある路上にいた。

テロリストが大きなデパートに立てこもるという大事件が発生し、
ありったけのアンチスキルとジャッジメントが現場にまわされた。

当然黒子と初春も向かった。

付近一帯を封鎖し上からの指示待ちで待機していたが、突如デパートの西棟続けてすぐに東棟が大きく揺れ、
窓が割れ爆発したかのように粉塵が噴き出した。

周りは大騒ぎとなった。
爆発物が大量にある可能性が高いと判断し、アンチスキルとジャッジメントは半径1kmの民間人全員を避難させた。


ジャッジメントはその外円部の封鎖を任されていた。


黒子「…初春。何か情報は?」

初春「…い、いえまだ何も…」

この位置からでも遠くに現場のデパートが見える。
そしてこの距離からでも地響きが伝わってくる。
先ほどよりも更に激しくなっている。

まるで爆弾が連続して炸裂しているかのように外壁が飛び散り、そのたびに巨大な粉煙が噴き出している。

715 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 23:46:11.54 ID:Sr.H6fA0
本部は内部で高位の能力者同士が戦っていると予想した。
まあ大体はあっているだろう。

『大体』はだ。

黒子の考えは少し違う。

西棟の屋根から飛び出し、天を貫いた青い光の柱。
能力でもああいう現象を起こすのはあるかもしれない。

だが黒子はあの光は能力によるものとは思えなかった。
何となく匂う。

二ヶ月前に知り、足を踏み入れたあの『世界』の力。

黒子「(…また…ですの…)」
黒子としては封鎖半径を3kmくらいにしたい気分だ。
いや、それだけでも足らないだろう。

三日前の事件でさえ、長さ数kmに渡る地下駐機場が全壊した。
二ヶ月前なんかは学園都市全体だ。

とにかく『外』の何も知らない人々をあの『世界』からできるだけ遠ざけたかった。

黒子「…チッ…」

封鎖バリケードギリギリまで近寄って集って来ている野次馬達を見て舌を鳴らす。

来ないでくださいまし!!!!さっさと消えますの!!!!と叫びたい気分だった。

716 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 23:48:17.47 ID:Sr.H6fA0
初春「きっと…人質の皆さんは助かります」
苛立つ黒子を見て初春が声をかけた。

黒子「…そう…ですの」
心ここにあらずといった感じで返事をする。

ここにいる野次馬達でさえ、黒子の経験上かなり危険だ。
次の瞬間死んでいてもおかしくないのだ。

あの現場にいる人質はどうなってしまうのだろうか。

黒子「………」
考えたくも無かった。
ぼんやりと煙の上がっている現場の二つのビルを眺める。

その時一際大きな地響き。
同時に西棟の五階から白い光が溢れ、そこから上階が全て吹き飛び爆散した。


黒子「―――!!!」

続けて西棟から300m程離れた場所に、巨大な粉塵が周囲のビルを巻き込んで噴きあがった。

初春「…ひゃぁ…!!!!」

黒子「伏せて!!!!!!」
黒子が腹に力をこめて思いっきり叫んだ。

その数秒後、鼓膜が破れそうな程の爆音と衝撃波が押し寄せてきた。

717 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 23:52:32.42 ID:Sr.H6fA0
距離があった為、人が薙ぎ倒される程の強さではなかったが、
それでも優しい物ではなかった。

黒子「初春!!!!」

初春「あぅぅぅぅ…」

黒子「大丈夫!!!?」

初春「は、はい…」

黒子は思った。

ほらですの と。
あの手の力のから逃れるには1km程度じゃ全然足らないと。

その時。

黒子「―――」
慌てふためく雑踏の中に黒子は見た。

銀髪に赤いコートの男が―――

ニヤけながら立っていた―――。


黒子「―――ッ」

だが次の瞬間その姿は消えていた。
見間違いだったのか。

それとも。

718 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/09(金) 23:56:55.38 ID:Sr.H6fA0
―――

東棟三階。

天井と階上が完全に消え、青空が広がっていた。

一方「……」
一方通行は険しい顔のまま、その廃墟と貸したビルの上から300m程離れた場所の街を眺めていた。
粉塵でその中心地が見えない。

あの右の拳はキレイに直撃した。
その余波でビルの上半分が完全に吹き飛び、弾き飛ばされた上条の体は300m離れた場所の街に叩き込まれた。

上条は死んではいない。

直撃の瞬間に感じた。
上条の体が更に輝き、例の悪魔的な力が増幅されたのを。

そしてあのパンチを食らっても体が吹き飛ぶどころか顎が砕けもしなかった。

まるで能力オフのまま殴ったような光景だった。
口の中が切れているだろう。だがおそらく傷はそれだけだ。

それに一方通行のこの拳に比べたらあの叩き込まれた街などクッションみたいな物だ。

ほぼ無傷だろう。


一方「……」
その恐ろしいまでの頑丈さを目の当たりにし、少しショックを受けたもののそれはバージルで経験済みだ。
それよりも上条の体が完全に破壊されなかった事に安堵していた。

だがその一方で。

果たしてその『程度』であの上条の目を覚まさせることができたのか。

719 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:02:42.82 ID:A4YykO.0
御坂「ねぇ…」
御坂がその一方通行の背中に声を飛ばした。

御坂の周りの床だけはキレイに円形に残っていた。
一方通行がベクトル操作で彼女を衝突の激流から守ったのだ。

一方「あァ…?」
一方通行は振り返らずに返事をする。

御坂「………」
御坂は言葉を続けなかった。


だが一方通行は彼女の考えてる事がわかっていた。
そして言葉を返す。

一方「……任せろ」


一方「ぜッてェ連れ戻す」


御坂「……うん」


そして一方通行は跳ね、
ベクトル操作で一気に加速させその上条の落下地点へ向かった。
御坂はその背中を静かに見送った。

御坂「…お願い…」

720 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:05:05.08 ID:A4YykO.0
一方通行が目的地に降り立つ。

一方「……」
ベクトル操作で辺りを包んでいる粉塵を払いのけた。

辺りの姿が露になった。
上条の落下によって生じた直径50m程のクレーター。
その周囲の崩れたビルと瓦礫の山。

そしてクレーターの中央に立っている上条。
その目は相変わらず赤く輝いていた。

一方「……チッ…やッぱりなァ…」

どうやらあの一撃でも『上条当麻』には届かなかったらしい。

一方「(……どォすンだ…どォすりゃァ…?)」

先ほど御坂に任せろと言ったが、
どうやって上条の目を覚まさせるのか方法は考えていなかった。
あの一方通行の攻撃で上条は更に力を強めたらしい。

今の状態では手足をもぎ取る戦法は厳しいだろう。

一方「(……クソ…)」

ならばどうする。
方法は何も思いつかなかった。

721 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:08:56.00 ID:A4YykO.0
一方「……あァ?」
一方通行はその上条の異変に気付いた。

上条の左手と両足が白く輝き始める。
そしてその光がまるで立体映像のように何かを浮かび上がらせた。

篭手と脛当て。

その半透明の光り輝く装具が少年の左手と両足に現れた。

それはその力の『母体』とそっくりだった。


ベオウルフ。


遂に上条はその『心臓』が持つ力の本来の領域に達した。

一方「…オィ……ンだそりゃァ…!!!」
上条から放たれる威圧感が更に強まった。

上条が調子を確かめるように足踏みをし、左手を握ったり開いたりする。
そのたびに篭手と脛当てが眩い白い光を放つ。

そして一方通行へ目を向けて不気味に笑った。

723 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:15:55.15 ID:A4YykO.0
上条は笑いながら左拳を握り天に掲げ、

一方「あァ…?」

そして瓦割りでもするかのように真下に拳を放った。

次の瞬間大地が揺れ、その上条の拳を中心として巨大な亀裂が四方に走った。
その亀裂の長さは300mにも達した。そして亀裂の間から一瞬だけ白い光が溢れ。

一帯の地面が爆発するように粉々になって真上に吹き飛んだ。

白い光が周囲を包む。


一方「―――!!!!!!」
咄嗟に後方に体を飛ばしその光の嵐から脱出する。

だが次の瞬間。

一方「―――なッ」

腰を低く落として身構えている上条が目の前に。


一方「オァァァァ―――!!!!!」

一方通行は瞬時に体を横に移動させる。
その瞬間、僅かに遅れてわき腹の30cm右側の空間を上条の左手が貫いた。

一方「ぐォ…!!!!」
かわしたはずなのにわき腹に激痛が押し寄せる。

724 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:18:37.71 ID:A4YykO.0
一方通行は瞬時に周囲の地面をベクトル操作で吹き飛ばして上条に牽制し、
その隙に自らの体も飛ばして50m程距離を開ける。

一方「クソ…!!!」
着地し、わき腹を見る。
うっすらと血が服に滲んでいた。

もし直撃したら。
物理的な部分は反射できるかもしれない。

しかし。

一方「(……ッ!!!)」

バージルに比べたら上条は遅いしその攻撃の破壊力も微々たるものだが、それでも今のはギリギリだった。

このままでは必ず負ける。

そして殺される。

だがここでただ死ぬ訳には行かないのだ。

725 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:19:55.25 ID:A4YykO.0
依然上条の目を覚まさせる方法は思いつかない。
だがここで戦うのを辞めたら。
ここで一方通行が死んでしまったら。

もう後が無い。

上条の無差別の殺意が学園都市へ解き放たれる。

そしてダンテ達に気付かれたら。
いや、もう気付かれているかもしれない。

今すぐにでも乱入してきて上条を殺してしまうかもしれない。

一方通行が今戦うしかないのだ。

学園都市を。

あの小さな少女の生きる世界を守る為に。

上条を救うために。

今、一方通行が上条の全て受け止めるしかないのだ。



もっと力が必要だ。

一方「(―――こォなったら―――アレを)」

726 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:24:04.87 ID:A4YykO.0
上条がゆらりと一方通行の方へ向く。

一方通行は深呼吸して精神を落ち着かせ、集中する。

そして二ヶ月前の感覚を思い出す。
あの黒い翼を自在に操った時の感覚。

あの時と同じ黒曜石のような洗練された翼程の物は使えないのは知っている。

だが今なら。
あの時の感覚を思い出せば。

あの時の物に近い、
二ヶ月前までの雑な黒いざわついた翼以上の物を出せるはずだ。

一方「……」

感情を暴走させずに。
己の意思で。

平常の意識下で冷静に使えるはずだ。

上条が一方通行の方へ一歩、また一歩と揺れながら近付いてくる。

728 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:28:42.30 ID:A4YykO.0
一方「(……そォだ…)」
背中の辺りがざわついてくる。

力を感じる。
冷静なまま更に引き出す。

上条がゆっくりと腰を落とした。
一気に距離を詰める気だ。

一方「(……落ち着けェ…)」
自分に言い聞かせ、更に集中する。

上条が地面を蹴る。
その衝撃で砲弾が炸裂したかのように地面が抉れる。

一方「―――」

凄まじい速度で上条が突き進んでくる。
一瞬で一方通行の目の前に。

そして体を横に倒して駒のように回転し。

白く輝く脛当てが装着されている左足を一方通行目がけて縦に振り下ろした。

次の瞬間、大気が激しく振動し白い光の衝撃波が周囲を薙ぎ払った。

730 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:32:44.08 ID:A4YykO.0
だが上条のその蹴りは止められていた。

一方『オァ―――』


黒い棒状の物に。


一方『アアアアアアアアアア!!!!!!!』


一方通行の背中から長さ10m程の黒い『杭』が何本も生えていた。

あの二ヶ月前の黒曜石のような翼の足元にも及ばないだろうが、
それ以前の物と比べれば差は歴然だ。

今までのは無駄に長く巨大で肥大化した翼だった。
それをコンパクトに、かつ力を凝縮させ安定させたのが今の杭だ。
一点の破壊力は今までの雑な翼の数倍だ。

一方『ガァァァァァァァ!!!』
杭を大きく振り上条の足を弾く。


上条は一方通行から20m程の場所に着地した。

一方通行は残りの杭を上条へ向けて音速の数十倍もの速度で突き出す。

731 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:35:47.14 ID:A4YykO.0
一方『オァアアアアア!!!!!!』

黒い杭を音速の数十倍もの速度で繰り出していく。
無数の黒い杭が周囲を行きかい、地面や瓦礫の山へ突き刺さり抉られていく。

だが上条はその乱撃の網をトリッキーな動きで軽々と交わす。
死角からの攻撃も全ていなされかわされ当たらない。

左手や足で強烈な攻撃を繰り出して杭を弾く。
そのたびに上条の手足から白い光が溢れ、その光の衝撃波が一方通行の黒い杭の衝撃波を合わさり渦となる。

そして右手で杭を掴み破壊する。
右手に触れられた黒い杭は僅かな時間を置いて砕け散る。

どうやらこの強大な力が篭められている杭を、
完全に処理しきるには少し時間がかかるらしかった。

だがそれは今は問題ではない。

問題は今の攻撃でさえあっさりとかわされているという事だ。

一方『(クソッ……!!!!!)』

完全に見切られている。


732 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:39:22.20 ID:A4YykO.0
一方『ァアアアアアアアア!!!!』
攻撃の手を休めずに更に激しく速く振るう。

一瞬負荷で頭が痛んだが、それでも更に強く速く。

もっと速く。

もっと強く。

そして一本の杭が。
上条の顔面へ直撃した。

顔の左側半分を抉った。

一方『―――!!』
一瞬やってしまった と思ったがその心配は無用だった。
残った右目が真っ直ぐと一方通行を見据えていた。

そして上条は左拳を握り杭の間を掻い潜って一気に踏み込み。

一方通行の顔面へお返しとばかりに振るった。

一方『ッアァ―――!!』
咄嗟に四本の杭を顔の前に交差させ盾を作る。

その盾に上条の左拳が叩き込まれた。

金属が激しく衝突するような轟音が響く。

734 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:45:18.58 ID:A4YykO.0
>>733 一時前後くらいに終わります。

一方『ぐッッッ―――!!!』

杭の盾が大きく歪む。
だがその拳はそこで止まった。

何とか防ぎきった。

すかさずその盾の杭を上条の左手へ巻きつける。

一方『オオオオオオ!!!!』
そして残りの杭をねじり合わせて大きな1本に集約し、上条目がけて突き出す。

上条も右足で大きく蹴り上げてくる。

莫大な力同士が衝突する。
白く光る足と漆黒の杭が正面から激突する。

その衝突点を中心として半径200mの物全てが粉砕され吹き飛んだ。

735 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:48:37.89 ID:A4YykO.0
お互いが弾かれ後方へ吹っ飛ばされる。

一方『―――ッ!!!』
能力を使いブレーキをかけて静止する。


上条も地面に左腕を付きたて、乱暴にブレーキをかける。
彼の腕が地面を抉り、長さ30m程の筋を刻んでようやく止まった。

一方『ハッ…ghaiik……とンでもねェ野郎だぜ…』
自分の背中から伸びている黒い杭を見る。
数本の杭が大きくひん曲がっていた。

一方『…』
そして100m程前方にいる上条を見る。

上条の右足の半透明の脛当てが大きく歪んでいた。

ちょうど互角といったところか。
いや、上条の方がやや強い。
そしてこれが果たして全力なのかどうかわからない。

一方「………強すぎンぞテメェ…」

曲がっていた杭を修復する。
それと同じように上条の右足の脛当ても元の形に戻っていく。

736 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:50:54.10 ID:A4YykO.0
一方『…チッ…』
一方通行は焦り始める。

いつまでも戦って入られない。
時間が経つにつれダンテ達が乱入してくる可能性も高くなる。

それにこの黒い杭も。

今でもしきりに頭の中が痛む。
明らかにかなりの負荷がかかっている。

気を緩めてしまうとこの杭が肥大化して以前の雑な翼に戻ってしまいそうだ。

それどころか消えてしまうかもしれない。

だがこの戦いを終わらす方法が見つからない。

一方『(……クソ…どォすりゃァ良いンだチクショウ…)』

737 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:52:00.20 ID:A4YykO.0
どうやって彼を救うのか。

どうやれば救えるのか。

一方『(おィ―――)』

もし逆の立場だったら。

一方『(―――教えてくれよ)』

上条はどうしたのだろうか。


一方『(―――テメェならどォすンだ?)』


終わりが一方通行には見えなかった。

『救える』結末など。

738 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 00:54:38.90 ID:A4YykO.0
上条が右手を虚ろな赤い目で見て、何やら頭を傾げている。

一方『(なンだッてンだ……?)』
嫌な予感がする。
まさかまだ『隠し玉』があるのか。


上条『ア゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!』
上条が右手を押さえながら突如咆哮を上げた。


一方『―――』

一方通行のその予感は的中した。


次の瞬間。


上条の右手に重なるように。


半透明の巨大な『竜の頭』が出現した。


―――『竜王の顎』が。

740 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/10(土) 00:56:46.44 ID:FEXIswAO
ドラゴンストライクまで使うか

746 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 02:46:59.39 ID:2NXA4.oo
乙乙
ベオ条さんチートだなwwwwwwww


747 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 21:37:35.58 ID:A4YykO.0
―――

さかのぼる事数分前。


鏡の世界。

周囲に黒い円が浮かび上がる。


ネロ「おでましか」

ネロが背中の巨大な金属ケースを乱暴に足元の床に投げ落とした。
その拍子でケースが大きく開く。

すると同時に巨大な赤い大剣レッドクイーンが跳ねるように飛び出し、
まるで磁石に吸い寄せられたかのようにネロの手におさまった。

ネロ「動くなよ」
レッドクイーンのアクセルを吹かしながら背後のインデックスと佐天に声を飛ばす。
赤い大剣からエンジンの駆動音のような音と共に炎が噴き出す。

インデックス「う、うん!!!」
佐天に覆いかぶさるような姿勢のインデックスが返事をする。

その腕の中で佐天が縮こまっていた。

佐天「ひぁああ……うぅうう…」

749 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 21:42:55.86 ID:A4YykO.0
周囲の黒い円から悪魔達が飛び出して来た。
ゴートリング・フロスト・アサルト等の成れの果ての醜い怪物達。

いや、元を特定できるだけマシだ。
元が何だったのかわからないほどに姿が崩れている者が大半だ。
肉が腐ったような異臭が充満する。

ネロ「……ひっでぇ匂いだな。たまには風呂入れよ」
ネロが顔を歪め、手で匂いを掃う。

それぞれが生理的に悪寒が走る粘ついた液体を撒き散らしながらネロに一斉に飛び掛った。


ネロ「Get out―――」

腰を屈めレッドクイーンを大きく引き。


ネロ「―――Here!!!!! Fuckin' Scums!!!!!!」


前方を横一線になぎ払う。

レッドクイーンから生じた剣撃と爆炎が複数の悪魔達をなぎ払い灰に変える。

750 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 21:46:12.74 ID:A4YykO.0
そして今度は右を向き、レッドクイーンを返して斜めに振り下ろす。
同時にデビルブリンガーを巨大化させ、左の方へ裏拳を放つ。

ネロ「Blast!!!!!!!」

巨大な青い拳がインデックス達の真上を通過して行き、
そのまま左側から迫ってきていた複数の悪魔達をぶっ飛ばした。

同時に振り下ろされたレッドクイーンが右側の悪魔達をなぎ払う。

衝撃波で床が捲りあがり、地下駐車場の柱が寸断される。
悪魔達の体が引き裂かれ、黒い腐った体液が飛び散る。

その飛沫の数滴がネロのコートにつく。

ネロ「あ〜…きったねぇなクソ…」
ネロは右手でコートを摘み上げながら悪態を付いた。

そして周囲の悪魔達を睨む。

続々と現れてきて、三人を囲む数がどんどん増えてきている。
長き間牢獄として使われていたのだ。こちら側にいる悪魔達の数は相当なものだろう。

ネロ「汚しやがったなクソ野郎…」
長期戦になるだろう。
ゆっくり脱出策を考えられるのはもうしばらく先のようだ。

ネロ「?」

ふとネロは今切断した柱を見た。

その逆再生でもするかのように欠片が戻り、柱が一瞬で元の姿に戻った。

751 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 21:49:38.92 ID:A4YykO.0
ネロ「へぇ…」

ここは鏡の世界。表の世界のコピーだ。
いくら破壊しても表の世界に合わせて元に戻る。

つまり。

ネロ「ハッ!!!こいつは良いぜ!!!」

暴れ放題だ。
力を使い放題だ。

いくらこっちで暴れても人間界自体には負荷がかからない。

ネロ「来い!!!場所を移すぜ!!!」
ネロがインデックス達の方へ振り向き、二人を軽々と担ぎ上げた。

そしてそのまま真上へ飛び上がり、天井貫通して1階に行く。

禁書「わ!!!わぁ!!!!」

佐天「にゃああああああ!!!!!」

ネロ「黙ってろ!!!舌噛むぜ!!!」

1階に降り立つと今度は壁へ突進する。
後方からネロ達を悪魔達が追いかけて天井を突き破ってくる音。

ネロはそのまま壁をぶっ壊し、ビルの外へ出た。
そしてそのまま人影の無い街を突き進む。

752 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 21:53:33.23 ID:A4YykO.0
ネロはビルから200m程離れた路上で止まり、二人を降ろした。

ネロ「ここらでいいか」
周囲のビルは低く、見通しが良い。

『フルパワー』で薙ぎ払うには最適だ。

ネロ「…?」
ふと先ほどまでいたデパートを眺めてその惨状に気付いた。
東棟の上半分が無くなっていたのだ。

爆発でもしたかのような酷い有様だ。

ネロ「(『アレ』か…)」
もう一体いた、上条らしい悪魔。

それしか原因が浮かばない。

どうやら表の世界でも派手にやっているらしかった。

ネロ「(ゆっくりしてらんねぇな)」

753 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 21:55:30.91 ID:A4YykO.0
ネロはインデックスの前の地面にレッドクイーンを勢い良く突き立てた。

禁書「わわ!!!!」

ネロ「コレを核にしてトリッシュが作った防護壁を張れ」

禁書「へぁ?」


ネロ「『スパーダ』を使う」


禁書「―――」
インデックスも理解した。

二ヶ月前に、魔帝との戦いからの余波を防ぐ為にトリッシュが作った術式。
レッドクイーンを動力にしてそれを起動させインデックスと佐天を守れという事だ。

それが無ければ、『スパーダ』の余波で二人は一瞬で塵になってしまう。

禁書「う、うん!!!!わかったんだよ!!!」


ネロ『急げ。来たぜ』
目を赤く光らせながらネロが急かした。


デパートの方から黒い波のような物が押し寄せてくる。
悪魔達の群れだ。
そして周囲にも大量の黒い円が浮かび上がった。

754 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 21:58:56.90 ID:A4YykO.0
ネロ『まだか?』
三人を囲む悪魔達の群れの輪が凄まじい勢いでどんどん狭まってくる。

禁書「待って!!!もう少し…!!!」
レッドクイーンに触れながら頭の中の術式を整える。

ネロ『早くしろ』
ネロの体から青い光が溢れ出てくる。

悪魔達がもう目の前に迫る。

ネロ『まだか?!!』

禁書「うぅ…!!!!」

悪魔達との距離が20mを切った。

その時、インデックスと佐天を囲むように直系3m程の青い魔法陣が浮かび上がった。

禁書「良いんだよ!!!!!」


ネロ『Ha!!!!!Do it!!!!!』


その瞬間、青い光が周囲を包んだ。
光の衝撃波が周囲のビルを砕き、迫ってきていた悪魔達の群れを吹き飛ばした。

そして光がやみ。


魔剣『スパーダ』を持った魔人化したネロが現れた。

755 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:04:18.99 ID:A4YykO.0
二ヶ月前の覚醒で手に入れたネロ・アンジェロと瓜二つの姿。
そして左手には赤く輝く魔剣『スパーダ』。

ネロは全てを解き放った。

ネロ『Huuh............』
深く息を吐く。

二ヶ月前に完全に覚醒して以来、全てを解き放って魔人化したのは二回目だ。
つまり前回の魔帝戦以降一度も完全な魔人化はしていなかった。
ネロやダンテ、バージルクラスとなるとそう易々と人間界で魔人化する訳には行かないのである。

ましてや魔剣『スパーダ』を持った状態での完全解放など。

だがこの壊れることの無い鏡の世界では使い放題だ。

この世界は魔帝でさえ抜け出せないと言われている。
脱出の事を考えると色々と面倒だが、力を行使するには好都合だ。


ネロ『Ha......Hahahahaha!!!!!! Yeah!!!』


気分が良い。

あの二ヶ月前もそうだったが、今までの人生で味わってきたどの快楽よりも甘美だ。

最高に気持ち良い。

756 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:06:32.48 ID:A4YykO.0
ネロ『気を抜くんじゃねえぜ!!!』

禁書「う、うん!!!」
まだ戦闘が始まっていない今の段階でさえ防護壁にかなりの力がぶつかってきている。


一瞬でもこの防護壁を破れば二人の少女は瞬時に命を落とすだろう。


周囲の崩れたビルが逆再生でもしているかのように元に戻っていく。
それと同時に再び無数の悪魔達が群がってくる。

見えるだけで千はいるだろうか。
それも極一部だろう。

だがネロは一切動じない。

ネロ『OK、じゃあ「試して」みるか』

ネロは今、とある戦法を試そうとしている。

757 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:08:44.52 ID:A4YykO.0
前々から興味があった。

基本的にダンテやネロは、
一対一等の少数での悪魔とのでは剣に力を凝縮させ、
全ての破壊力が刃面に集中するようにしている。

だが今の相手は悪魔達の無数の群れ。

その莫大な力を圧縮せずに外に解き放てば、雑魚悪魔の群れなら一掃できるのではないか?

魔界の戦争では、高位の大悪魔が一振りで千や二千の雑魚悪魔を薙ぎ払う。

その戦場は人間界で例えるとまるで特大の水爆が何発も連続して炸裂するような光景になるらしい。

当然ネロにもできるはずだ。

その『魔界の戦争』の攻撃方法を真似ようという事である。

ここはいくらやっても壊れない世界。
実験にはおあつらえ向きだ。


ネロ『ハッハァ!!!派手に行こうじゃねえか!!!』

758 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:14:19.16 ID:A4YykO.0
ネロが魔剣『スパーダ』を大きく引き。

ネロ『B――――laaaaaaaaaaaaast!!!!!!!!』

そして横一線に振るう。

目の前の悪魔の群れを

その瞬間スパーダからとてつもなく巨大な赤い刃が300m以上も伸び、そして斬撃となって飛び全てを薙ぎ払った。

斬撃と衝撃波によってネロから前方の半円状の一帯が数kmに渡って吹き飛ぶ。
鏡の世界の学園都市の街並みが一瞬で砕け散り、更地と化す。

禁書「―――!!!」
そのあまりの破壊力にインデックスは目を丸くし硬直する。

前々からスパーダの一族の力は『人間界』そのものを破壊できるレベルというのは知っていた。

「人間界を破壊する」、「ムンドゥスやスパーダ等の頂点の悪魔達は「世界」そのものを崩壊させる力を持っている」
そう言葉ではわかっていたが、実際にその破壊の片鱗を具体的に目の当たりにするとやはり驚愕する。


「頂点の大悪魔達は人間が掲げる天使や神々を遥かに超えた力を持っている」、
「この斬撃は・あの攻撃は人間界を破壊させる力を持っている」、と頭では知っていてもいまいちピンとこない。


「では、その凄まじい攻撃が実際に『人間界向け』に行使されたらどうなるか」、
その答えを今インデックスは具体的に目の当たりにしていた。


このスパーダの一族や上位の大悪魔達が一体どれ程の力を持ち、どれ程人間とかけ離れた存在なのか。
改めてインデックスは知った。


759 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:19:03.15 ID:A4YykO.0
ネロ『Ha-ha!!!!!!』

今の一振りで千体以上の悪魔を一瞬で処理できた。
実験は成功だ。

『魔界の戦争』方式はうまく機能した。


更地になった街がすぐに元に戻っていく。

ネロ『ハッハァ!!!便利だぜ!!!人間界もこうだといいぜ全く!!!!』


悪魔達がまだまだ押し寄せてくる。

ネロ『ハハハ!!!良い度胸だ!!!!』

この鏡の世界にいる無数の罪人達がまるで明りに群がる虫のように集ってきているのだろう。



ネロ『もういっちょ行くぜ!!!もっとでけえのをよ!!!!』


ネロが再びスパーダを振う。


ネロ『Yeaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaahhhhh!!!!!!!!!』


更に力を篭め、かつ一切圧縮せずに。

761 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:22:32.77 ID:A4YykO.0
その瞬間、学園都市全体がネロを中心として消し飛ぶ。
まるで大きな隕石が衝突したかのような破壊。

大悪魔ならこの拡散された攻撃を受けても傷一つつかないだろう。

だが雑魚悪魔や脆い人間は一瞬で消し飛ぶ。


大地が抉れ、地殻ごと歪む。
学園都市は跡形も無く消え、半径数十キロがまっ平らの更地になった。
そしてその物質的な破壊以上にとてつもない力の負荷。

その攻撃に篭められていた力の総量は魔帝と戦った時の斬撃と同等だ。
それが無圧縮で拡散されて放たれればこうなる。

ネロ『あぁ?』

突如地震が起きたかのように大地が揺れ始め、周囲の景色に『ヒビ』が入る。
『景色』がガラスのように砕け落ちていく。

禁書「……!!」
この鏡の世界の『人間界』がネロと魔剣スパーダの力に耐えられずに崩壊を始めた。

762 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:24:45.12 ID:A4YykO.0
ネロ『………やべぇ…やりすぎたか?』

そう思ったのも束の間、
その景色の破片が逆再生されているかのように元の位置に戻り始める。

ネロ『……ハッ!!驚かすんじゃねえよ!!!』
どうやら鏡の世界内では人間界その物すら修復可能らしい。

禁書「…」
だがインデックスにとってはその事は大した問題でもなかった。
問題は実際にネロの力によって人間界が本当に崩壊しうるという事だ。

完全に力を解放したネロ・覚醒したスパーダによる、今の数回の攻撃が人間界の『器』が耐えられる限界点だ。

その圧倒的な力を直に目の当たりにし鳥肌が立った。

あの二ヶ月前の異世界での魔帝戦。
もしその余波が漏れていたら。

太古の昔、魔帝達は多くの世界を滅ぼしたという。
人間がそう聞いても、脳内にその映像は浮かびにくいし、現実としては受け入れにくい。
神話的・抽象的なイメージしか浮かばない。

だが今、目の前で『世界が崩壊する』のを擬似的にだが具体的に目の当たりにした。

禁書「…」

佐天は地面に顔を伏せてうずくまっている。
インデックスがそうさせたのだ。

悪魔の力をできるだけ見せないほうが良い。
それが頂点のクラスだと尚更だ。

763 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:26:45.63 ID:A4YykO.0
無数の黒い円が浮かび、理性を失った罪人の悪魔達が更地に次から次へと現れる。
人間界自体の土台は修復されるものの、あまりの破壊にビル等などの物質的な構造物の修復が追いつかない。


ネロ『Hahahahahaha!!!!!!! So fuckin' sweet!!!!!!!!!!! Sweeeeeeeeeeeet!!!!!!!!!!!!!!!』


恐らくダンテですら味わったことの無い大規模な力の行使でネロは最高にハイになっていた。
まるで子供のようにはしゃぎ、歓喜の声を上げながら何度もスパーダを振るう。

力を一切圧縮せずに。
そのたびに無数の悪魔達が一瞬で消し飛び、平らになっている更地を数十kmに渡って更に削っていく。


ネロ『Hooooooooooooo!!!!!! Craaaaaaaaazy!!!!!! Huuuuuuuuuuuuuuuuuaaaaaaa!!!!!!!!』

もうしばらくしたら終わるだろう。
太古の昔から溜まり続けていた罪人達のストックもこのペースで行けば時期に切れるはずだ。

禁書「……うぅ」
今のネロにはとてもじゃないが声をかけづらい。

だんだんエスカレートしていき、更に破壊力が高まっていく。

もし二千年前にスパーダが人間側につかなかったら。
寝返ることなくスパーダが人間界を攻めていたら。
当然人間はあっさりと絶滅し、人間界は跡形も無く消滅だ。

その有り得たかもしれない『if』の未来を思い浮かべるとゾッとする。


ネロ『Yes!!!!! Yeeeeeeees!!!!!!!! Yeaaaaaaaaaaahhhhhahahahah!!!!!!!』



764 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/04/10(土) 22:26:45.92 ID:UtQDxwco
ちょwwwwwwwwやべえwwwwww

766 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:37:24.39 ID:A4YykO.0
―――


ダンテは崩れかけているビルの上にいた。

ダンテ「へぇ…」
1km程先の瓦礫の山の間で戦う二人の少年。

凄まじい閃光とともに地響きが連続して聞こえてくる。

ダンテ「随分とはえぇじゃねえか…」

上条当麻。

インデックスと話し合ったさっきの今だ。

あの少年の悪魔化は予想以上のスピードだ。

いずれ何かの形で悪魔の力が発現すると予想はしていたが、それは10年20年のスケールだ。
まさかたった二ヶ月でここまでになるとは。

それも母体となったベオウルフの力を7割近くまで引き出すとは。

767 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:42:03.27 ID:A4YykO.0
ダンテ「…」

あのイマジンブレイカーという能力は前々から奇妙に感じていたが、今確信する。
あの少年は元から普通では無い。

ダンテ達と運命が交差する以前からあの体の中に異質な何かが宿っていたのだ。

恐らく二ヶ月前に一時的に悪魔に転生し、魔帝の力にあの右手で触れてしまい、
そして悪魔の心臓を手に入れたことで『何か』の歯車が動き始めたのだ。

すぐにあの場に行って直に見てみたいが、先客がいる。

あの白髪の少年の覚悟を決めた戦いに乱入するのも無粋だ。

人間が何かの為に命を賭して戦う姿は良いものだ。
見てて嬉しくなる。

乱入したいが、それ以上にあの覚悟に水を差すのは気が進まない。

ダンテ「ま、いいか…」
もう少し様子を見る事にした。

何かがあれば。

一方通行の手に負えない事態になったらダンテが行けばいい。

768 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:44:00.33 ID:A4YykO.0
今度はデパートの方へ目を向けた。

ダンテ「あっちは良いとしてよ……」

ダンテ「こっちのワルガキは何考えてやがんだ」

シェオルの件。

ネロがシェオルに取り込まれたのは知っている。
つまりシェオルを殺すわけには行かない。

ダンテ「ったくよ…」

先ほどダンテはトリッシュに連絡し、どうにかしてネロを救い出せる方法が無いか聞いた。
今はその答え待ちだ。

だがただ待っているのもヒマだ。

ダンテ「とりあえず…拝みにいくか」

シェオルを野放しにしとく訳にもいかない。



その時だった。

769 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:47:15.29 ID:A4YykO.0
ダンテ「―――」

妙な感覚。

まるで自分の『気配』が消されるような。

ダンテ「何だこりゃ―――」

自分の体から溢れていた悪魔の力が消えた。


ダンテ「―――」

目を赤く光らせ力を強めてみる。
いつもなら赤い光のもやが体を覆うはずだが。

今は何も出てこなかった。

体内の力には異常は無い。

だがその力が肌を越えて体外に出た途端に消えるのだ。

770 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:49:02.74 ID:A4YykO.0
ダンテ「―――へぇ」

更に力を強めると通常通り体から光が溢れた。

どうやら無条件で消えるわけではなく、消せる力の量の上限があるらしい。


ダンテ「こいつぁ―――」


この『消え方』に覚えがある。
彼が思い当たるのはタダ一つ。

ダンテは再び二人の少年の方へ目を向けた。
そして悪魔の目で見た。

上条の右手に重なるように竜の頭のような物が出現していた。


ダンテ「―――面白ぇ」

ダンテは不気味な笑みを浮かべた。


771 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:50:54.03 ID:A4YykO.0
―――


『竜王の顎』が上条の右手に重なって出現する。
その瞬間、左手と両足の半透明のベオウルフの装具は消失した。

一方『―――』

そしてその装具と同じように。

一方通行の背中から伸びている黒い杭が風に吹かれたかのように消えた。

一方「―――なン―――」

体が急激に重くなる。

能力が発動しなくなったのだ。

そして。

何も考えられなくなった。

彼が失った脳の機能を補助していたミサカネットワークも消失したのだ。
この辺り一帯の能力が全て消された。

一方「あァ……がッ……」

一方通行は地面にうつ伏せに倒れこんだ。

773 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:53:17.09 ID:A4YykO.0
一方「おご…あァ……」
何も考えられない。

目が見えているのに。
音が聞こえているのに。

それを意識することができない。


一方「がッ………」

そして意識が遠のき始める。


だが。


一方通行の左手が腰の後ろの方へゆっくりと動いた。

意識したのではない。

自然に。

何かに突き動かされるように動いたのだ。

一方通行は腰から小さな拳銃を引き抜いた。

そして震えるその手で銃口を上条に向ける。

774 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:55:53.56 ID:A4YykO.0
もう何も考えていない。
生きているのか死んでいるのか。
これが現実なのか幻なのか。

「どっちなのか?」という疑問すら頭に浮かばない。

だが彼の体は動いた。

頭が機能停止していても。

魂は叫ぶ。

木原と戦った時と同じように。

魂に刻み込まれた闘争心が雄叫びをあげ体を突き動かす。

―――戦え と。

距離は100m。
いくら精度のいい学園都市の最新の拳銃でも、今の状態では当たらない可能性が高い。

だがそんなのを考える事すらできなかった。

一方「アアアアアア!!!!!!!」

咆哮をあげ。

無心で引き金を何度も引いた。

775 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:57:20.16 ID:A4YykO.0
乾いた銃声が連続して響く。

そして。

その内の一発が上条の腹部に命中した。


一方『―――』

一瞬だけ上条の体が僅かに跳ねるように揺れた。

上条がゆっくりと自らの腹に目を向けた。

シャツにどんぐり大の穴。

そしてそこがじんわりと赤く染まっていく。


一方『―――』

776 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 22:59:00.98 ID:A4YykO.0
上条が無表情のまま、自分の腹から流れ出る大量の血を眺めている。

次の瞬間。

上条がよろめき、そして膝をついた。

そして。

『竜王の顎』が風に吹かれたかのように消失した。



一方『―――オァアアアアアアアア!!!!!!』

同時にミサカネットワークが復旧し、一方通行の能力が再起動する。

意識が元の調子に戻る。

何本もの黒い杭が一気に背中から伸びる。

777 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:00:35.84 ID:A4YykO.0
一方『ファッ!!!!』
能力を使い一気に跳ね起きる。

そしてすかさず黒い杭を地面に膝を付いている上条へ突き出す。

一方『ラァアアアアアアアア!!!!!!!』

だが。

『竜王の顎』が消えたと同時に、再び上条の左手と両足に半透明の装具が出現した。

そして上条はその場で天を仰ぎ、

上条『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!』

咆哮をあげた。
その瞬間上条の体から光が溢れ、凄まじい爆発を起こした。

一方『―――ッ!!!!』

一方通行の黒い杭が弾かれ、大きくひん曲がる。

すぐに自分の前へ他の杭を集め盾を作り、その光の衝撃波を防いだ。

778 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:02:16.80 ID:A4YykO.0
光がやむ。

一方『―――』

100m前方の上条は何事も無く立っていた。
銃撃によって生じた腹の傷は跡形も無く消えていた。

一方『(―――何があッた)』

一方通行はついさっき見た記憶を思い起こす。
今はしっかりと分析ができる。

あの竜の頭らしきものが現れた瞬間、能力は全て消された。
一方で、上条の装具も消えた。

そしてその状態の時に撃ち込んだ銃弾は難なく上条の体を裂いた。

先程までの上条だったら傷一つつかないはずだ。
それどころか銃弾を易々を避けていたはずだ。

ではなぜ。

一方『(そォか―――)』

導き出される答えは一つ。


あの竜の頭が出ている時の上条の体は『人間レベル』だ。

779 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:04:19.27 ID:A4YykO.0
一方『ハハッ―――!!!!』

僅かに希望の光が差す。

一方『―――同時に使えねェッてのはありがてェぜ!!!!』

一方通行は笑った。勝算が見えたのだ。
どうにかして上条にあの竜の頭を使わしてその『人間』の状態のうちにぶっ飛ばして気絶させる。

あの竜の頭が出ている間は一方通行の体は鈍くなり、論理的思考もできない。

だが。

頭が止まってても体を突き動かす信念がある。

一方『行くぜェ!!!!!』

状況は悪化している。
だがその一方で微かな希望の道が見えた。



『能力者』である一方通行にとっての最大の脅威。


それが『人間』である一方通行
にとっての最大のチャンスとなる。


その小さな希望を掴み取るため。


一方通行は前へ進む。


780 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:10:06.66 ID:A4YykO.0
―――



鏡の世界。
頭がイカれているさすがの罪人達もネロのあまりの力に恐怖して逃げてしまったのか、
ネロ達に群がってくる悪魔達はだいぶ減った。

鏡の世界の学園都市はゆっくりとその姿を修復している。

ネロ『もう終わりかよ。根性ねえな』
どれだけイカれていてもあんな物を見せられたら退くしかないだろう。

その時だった。

ネロ『…あ?』

周囲に立ち込めていた余波の力が消失した。

ネロ『なんだこれ…』
左手のスパーダを見る。

スパーダから伸びる赤い光の刃は未だに健在だが、ネロはかすかに感じた。
その光の刃が僅かづつ削り取られていくような感覚。

781 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:12:45.89 ID:A4YykO.0
その削り具合は気にしなくても良いレベルだが、それは問題ではない。

『スパーダ』の力を得体の知れない『何か』が削り取っているというのが問題なのだ。

莫大な力をぶつけて削るのならわかる。

だが、『これ』は違う。

まるで硫酸の霧の中に置いている様な感覚。

体内の力は全く異常ない。
だが肌や剣身から外に出た力が削られている。

ネロ『…』

禁書「ちょっ!!!ちょっとネロ!!!!!」

突如インデックスが慌てた声をあげた。

782 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:14:25.56 ID:A4YykO.0
ネロ『あぁ?』
ネロが振り向く。

すると。

インデックスと佐天を囲んでいる防護壁の魔法陣が、
まるでテレビの砂嵐のようなノイズでかき消されそうになっていた。

ネロ「―――ッ」
ネロがすぐに魔人化を解く。スパーダの光もおさまった。

その一瞬後に魔法陣が割れ、防護壁が消失した。

禁書「!!!!」

あと少しでもネロが魔人化を解くのが遅かったらインデックスと佐天はその圧力に潰されていただろう。

禁書「…これ…!!!」

なぜ魔法陣が壊れたのか。

ネロ「……」

二人ともこの現象に覚えがある。


『幻想殺し』だ。

783 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:17:13.55 ID:A4YykO.0
禁書「これ…とうまの…!!!!」

ネロ「……」

その時だった。

鏡の世界が大きく歪み始めた。
まるで蜃気楼のように景色がゆらめく。

禁書「…!!!」

佐天「へ……?」

ネロ「は…なるほどね」


なぜ幻想殺しの効果が全域に、そしてこの鏡の世界にまで到達しているかは分からないが、
どうやらあの力はこの世界にも効果があるらしい。


この鏡の世界が不安定になり始めた。

おそらくシェオル本体にも何らかの異常が起こったのだろう。

784 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:18:47.52 ID:A4YykO.0
ネロ「ここから出るしかねえ!」

禁書「!!!!」

ネロ「何かねえか!!」

禁書「え、えーっと!!!ちょ、ちょっと待って!!!」

ネロ「このまま『ここ』にいれば多分ヤバイぜ!」

このまま崩壊に巻き込まれれば。
一緒に消えてなくなるか、虚無の世界に放り出されて永遠に閉じ込められるのがオチだ。

ネロ「―――」
その時ネロは閃いた。

ここまで上条の力が到達していると言う事は。

向こうと繋がっている。

恐らくシェオルの入り口が開いている。

その穴を見つければ。

785 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:24:23.77 ID:A4YykO.0
ネロはスパーダを右手に収納し、地面に突き刺さっていたレッドクイーンを背中にかける。

そして二人を乱暴に担ぐ。

ネロ「来い!!!」

禁書「あぅ!!!」

佐天「ひゃああああ!!!!」

ネロは体から僅かに力を放出させる。
当然それは消された。

だがそのスピードに差があった。
消される速度が速い方向。

そっちからこの幻想殺しの力が流れてきているという事だ。

ネロ「行くぜ!!!掴まってな!!!!」

二人がネロのコートにしがみ付く。

ネロの発する力に二人の少女が晒されるが、今は辛抱してもらうしかない。

ネロが自らの感覚を頼りに突き進んでいく。

シェオルと繋がっている『入り口』へ。


786 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:30:02.34 ID:A4YykO.0
―――


シェオルは地下駐車場にいた。
先ほどネロ達を吸い込んだ場所だ。

シェオルは移動できなかった。
いや、移動しようと思えばできるがそれどころじゃなかった。

己の鏡の入り口が『何か』によってかき回された。
今はその嵐は止んでいるものの、この短時間の間に大きく破壊された。

その奇妙な力が鏡の世界にも流れ込んでいったのだ。

シェオルは感じていた。
鏡の世界も不安定になり崩壊しかかっているのを。

シェオル『……!!!』

これは一体。

だが原因を探りに行く余裕すらなかった。

シェオル『ぐぉ…!!!』

力を安定させようとするので精一杯だ。

何とかして扉を閉じなければ。

あの男が出てきてしまう。

787 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:34:06.94 ID:A4YykO.0
―――

ネロはインデックスと佐天を担ぎながら猛烈な速度で道路を走っていた。

あの幻想殺しの力はすぐに消えた。だが扉が閉じたわけではない。

ダンテや、その上条らしき悪魔の力を右手が感知している。
まだ繋がっている。

そしてそのおかげでより明確に入り口の位置がわかった。

その後ろを大量の悪魔達が追って来る。

どうやら彼等もこの世界が崩壊しつつあるのに気付いたのだ。

逃れようと出口に殺到してきているのだ。

悪魔の移動術の黒い円はこの世界が大きく歪み始めている為使えないのだろう。

皆猛烈な速度でがむしゃらに走ってくる。

788 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:36:07.02 ID:A4YykO.0
デパートの東棟の壁をブチ破り、屋内に侵入する。

すかさず今度は床を思いっきり踏みつける。
すると床が砕け、そのまま地下駐車場までぶち抜いた。

地下駐車場に降り立つ。

ネロ「OK!!!!」

そして見つけた。

黒い小さな楕円形の影が地下駐車場の中央に浮いていた。

ネロが突き進む。

後を追ってきていた悪魔達も同じように床に穴を開けて地下駐車場に侵入し、
その出口へ向けて突き進んだ。


ネロ「―――ちょっとやべぇな」

ネロは気付いた。

このままだとこの悪魔達も表の世界に飛び出す。
あのフォルトゥナで地獄門が開いた時のように大軍が学園都市に放出されてしまう。

789 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:42:19.16 ID:A4YykO.0
出た瞬間に入り口のシェオル自身を殺せばいいかもしれない。

だがやけくそになったシェオルがそのまま罪人達を解き放つかもしれない。
一瞬遅れればシェオルの周囲は大量の悪魔達で埋め尽くされる。
そうなれば最悪の事態だ。

ネロ「Shit―――!!!!!!!」

ネロは出口の目前で止まり二人を乱暴に降ろした。

禁書「わわ!!!」

佐天「うにゃあああ!!!!」

ネロ「行け!!!!」
ネロがレッドクイーンに手をかけ悪魔達の方へ向き仁王立ちする。

禁書「……!!!!」

ネロ「出たらすぐにここから離れろ!!!!」
ネロはギリギリまでこの悪魔達を抑え、そして崩壊の直前に脱出する気だ。

禁書「…で、でも!!!!」

悪魔達が飛び掛ってくる。


ネロ「Go Now!!!!!! Run!!!!」
ネロが叫びながらレッドクイーンで一気に薙ぎ払った。


禁書「―――う、うん!!!」
インデックスが佐天の手を取り出口に向かう。
その瞬間二人の体が残像を引き始める。

790 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:45:48.92 ID:A4YykO.0
ネロ「―――あぁそれと」
ネロが振り返る。


ネロ「上条はダンテに任せろ」


禁書「―――え?」
その言葉を聞いた瞬間インデックスの顔が固まった。

禁書「それってどういう―――」

だが聞き返す前にその姿は消えた。二人は表の世界に戻っていった。

ネロ「―――Ha」
そういえばまだインデックスには伝えてなかった。

ネロ「―――まぁなんとかなるか」
ネロが前を向く。
地下駐車場は大量の悪魔で覆い尽くされていた。

ネロ「OK―――」

挑発的な笑みを浮かべる。


ネロ「悪ぃな―――切符は残り一枚だ!!!」


ネロ「―――欲しけりゃ取りに来いや!!!」



ネロ「遊んでやるぜ!!!」

791 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:54:19.29 ID:A4YykO.0
―――


禁書「あぅうう!!!!!」

佐天「うきゃああ!!!!」

二人は地面に叩きつけられた。

禁書「うぅ…」
地面に手を突き頭を上げる。
そこはさっきと同じ地下駐車場だった。

だが周囲には悪魔の姿は無い。

そして柱に刻印されている数字。
左右反転していなかった。

禁書「―――出たんだよ!!!!」

佐天「ふえ…ほぁ…?」
何がどうなっているのか理解していないであろう。

792 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/10(土) 23:57:50.99 ID:A4YykO.0
その時インデックスは気配を感じた。

振り返り見上げると。

禁書「―――!!」

2mほどの場所に小さな鏡、シェオルが浮かんでいた。

インデックスは佐天の手を握り勢い良く立ち上がる。

禁書「行くんだよ!!!!!」
とにかく離れるのだ。

佐天「わぁ!!!!わああああ!!!!!」

幸いな事にシェオルは今それどころじゃないらしい。
二人を完全に無視していたようだ。

インデックスと佐天はとにかく走った。
地下駐車場の出口へ向かい、地上へ続いている傾斜路を走り抜ける。

793 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:01:40.12 ID:BPV9cRE0
外へ出てそのまま無我夢中でしばらく走り、二人は道路の真ん中で膝をついた。

禁書「……ふぁ…」

佐天「はぁはぁはぁ…」

心臓がマシンガンのように鼓動を打っている。
ここまで離れれば大丈夫だろう。

佐天「もう…終わった…の?」
佐天が安堵と不安が混ざった声でインデックスに聞いた。

禁書「……」
インデックスは答えなかった。

まだ終わってはいない。

ネロがまだ帰ってきていないしシェオルも生きている。
そしてネロが最後に放った言葉。

上条について。

794 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:04:03.26 ID:BPV9cRE0
その時、凄まじい轟音と地響きが起こった。

佐天「ひゃああああ……今度は何よ……」

インデックスはその轟音が来た方角を向いた。
300m程離れたところだろうか。

巨大な粉塵が上がっていた。

禁書「……とうま!!!!!」

インデックスが立ち上がり、その方角へ駆けて行く。

佐天「ちょ、ちょっと!!!!どこ行くの!!!!!」

禁書「あなたはここから離れるんだよ!!!!」
インデックスが走りながら佐天に叫んだ。

佐天「ま、待って!!!!!」

佐天「…ひ、一人にしないでよぉぉぉぉぉ!!!!!」

佐天も立ち上がり、インデックスの後を追って走っていった。



795 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:08:16.39 ID:BPV9cRE0
―――


東棟三階。大きく崩れ、四階から上は消えていた。
天井は青空だ。

その崩れたビルの淵に御坂は立っていた。

そして死闘を繰り広げる二人の少年を涙が浮かんでいる瞳で見ていた。
両手を胸の前で固く握り締めている。

御坂「……ひぐっ……お願い…お願い…」

あの上条の姿から目を逸らしたかった。
だがそれでいて不安で不安で見ないではいられなかった。

御坂「……うぐ……えぐ…」

「あんま泣くと目が腫れるぜ?お嬢ちゃん」

その時だった。真横から聞き覚えのある声。

一度聞いたら絶対に忘れない声。

ダンテが彼女の横に立っていた。

796 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:12:28.08 ID:BPV9cRE0
御坂はダンテの方を向かないまま震える声を飛ばした。

御坂「…ど、どうなっちゃうの…ひぐッ…アイツ……」

ダンテ「心配すんな」
ダンテが特に緊張もしてない声を返した。

御坂「……アンタも…アンタも行ってよ!!!!」
御坂が今度はダンテの方を向き声を荒げる。

御坂「……アンタなら…アンタなら…!!!!」

ダンテ「そう焦んな。今はあのボーヤに任せようぜ」

御坂「……!!!!」


ダンテ「あいつならできる」
ダンテは断言した。

揺ぎ無い確信が篭っていた。

御坂「………?」

ダンテ「大丈夫だ」

797 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/04/11(日) 00:13:39.41 ID:dTOrCAQ0
ダンテさんの推薦いただきましたー!
アクセロリータさんはかませなんかやなかったんや!

798 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:16:32.39 ID:BPV9cRE0
ダンテが乱入しない理由は二つ。

一つ目はあの上条に余計な影響を与えないためだ。

今の上条が大悪魔クラスの力を持っている。
あれを抑えこむにはダンテもそれなりに力を解放しなければならない。

上条はダンテの莫大な力を浴びる事になる。

ここまで至った理由も考えると、必ず何らかの影響が上条に残る。

今は抑えこめても、後々に更に悪化するかもしれない。


そしてもう一つの理由。

それは一方通行の目。

覚悟を決めた、揺ぎ無い信念が篭った『人間』の瞳。

799 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:18:56.78 ID:BPV9cRE0
ダンテ「(良い目だ。痺れるぜ)」
ダンテは人間のそういう姿が大好きだ。

それでこそ人間だ。

『守り』甲斐がある。

どうしようもなくなった場合にダンテは行くつもりだ。
だがギリギリまで待つ。待っていたい。

『人間』と『悪魔』。

両者の間には到底越えられない壁が存在する。

だがその壁を越えて。

『悪魔』が『悪魔』を打ち倒すのではなく、


『人間の意思』が『悪魔』を打ち倒す。


それに意味があるのだ。


ダンテ「(―――やってみろ。ボーヤ)」


801 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:22:35.96 ID:BPV9cRE0
―――

インデックスはその激しい爆音が響き続けている場所へ向かって走り続けていた。

禁書「はぁ―――はぁ―――」
心臓が今にも弾けそうだ。全身が脈打っているのがわかる。

頭が酸欠でざわつく。

だが彼女は速度を緩めることなく走り続ける。

途中で瓦礫に躓き激しく転ぶ。
膝がすりむけ、白い修道服に赤い染みが浮かび上がる。

それでもインデックスは止まらなかった。


立ち上る粉塵の中から見える白い光。


あの時の光と一緒だ。


二ヶ月前、ある少年がインデックスを救うために身に纏っていた光。

あの場所にいる。

インデックス「はぁっ―――はぁっ―――とうま―――」

802 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:27:40.09 ID:BPV9cRE0
―――


一方『オァアアアアアアアア!!!!!!』
全力で黒い杭を上条に打ち込みながら突進する。

あの右手を恐れている『余裕』は無い。

とにかく猛攻撃を加え、能力を消さざるを得ない、
あの竜の頭を出さざるを得ない状況を作り出さなければ。

遠距離攻撃のみでは不可能だ。

右手をかわしつつ近距離戦で圧倒するしかない。

一方通行が凄まじい衝撃波を纏いながら突き進む。

そして両手に数本の杭を巻きつけ覆う。

近距離で叩き込むべく。


その時。

上条が軽く地面を蹴り、5m程真上に跳び足を畳んだ。

一方『―――!』

上条の体を光が覆う。

803 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:33:57.26 ID:BPV9cRE0
次の瞬間。

光の爆発と共に上条が一方通行へ『射出』された。

斜め上から。

光の筋を引きながら上条が飛び蹴りを放つ。

一方『ッ―――!!!』

瞬時に周囲に展開していた杭を全てからだの前に押し出して盾を作り、
さらにその後ろで黒い腕を交差して二重の防壁を作る。


その分厚い盾に。

上条の飛び蹴りが炸裂する。
金属音と爆音が混じり、光の洪水と共に一方通行の盾の黒い破片が散弾のように周囲に飛び散った。

一方『ッッッ!!!!』

一枚目の盾が砕かれる。
だが上条の蹴りは交差している一方通行の腕で止まった。

一方『ラァ!!!!』
手を一気に押し出してその足を弾く。

804 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:37:51.88 ID:BPV9cRE0
だが上条は後方には吹っ飛ばされなかった。

左腕を地面に突きたて、まるで崖にぶら下がっている姿勢を逆さまにしたような体勢で制止した。

そして足を返し、逆さまに『蹴り上げる』。
上条の光り輝く左足が一方通行の顔面へ向かう。

一方『―――』
体を捻り交わす。顔の真横を爆圧の塊が突き抜ける。頬に焼けるような痛みが走る。

だがその痛みを無視し、腰を落とし。

一方『オオオァ!!!!』

黒い杭が巻きついている左腕を逆さまに上条のがら空きの腹部に叩き込んだ。

だがそれは上条の右膝に止められた。

一方『チッ―――!!!』

上条が体を捻り、そして左腕で地面を『蹴り』、左足を振るう。

一方通行はそれを右手の肘で防ぐ。
長い針が突き刺さるような痛みが腕を走る。

805 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:41:37.68 ID:BPV9cRE0
その凄まじい衝撃で一方通行の体が10m程後方にずり下がった。

上条が右足を軸にして上下を元の姿勢に戻し、
一方通行の後を追うようにそのまま距離を詰める。

そして更に『蹴り』を放つ。
体を何度も回し、光り輝く足を一方通行へ向け放つ。


一方『オァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』


その凄まじい蹴りの嵐を捌きながら一方通行も杭と拳を繰り出す。

時たまのびてくる右手をスレスレでかわす。

二人の間を白い光と漆黒の筋が行きかい、火花のように光が飛び散る。
地響きが連続し、周囲の地面や瓦礫が粉となり散っていく。


806 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:42:37.51 ID:BPV9cRE0
一方『―――ッ!!!!』
一方通行の頭の中が痛む。

だがそれを無視する。

互角ではダメなのだ。
上条にあの竜の頭を使わせるには更なる猛攻を加えなければ。

持っている全ての力を注ぎ込む。

全ての力を、意識を、演算を黒い杭に集中させる。


一方『アアアアアアアアアアアア!!!!!!』


そして。

一方通行の左手が上条の胸に届く。

上条の光の衣を貫通し、肋骨を砕き肺へ黒い左拳が突き刺さる。


807 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:44:40.84 ID:BPV9cRE0
一方『ラァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』
続けて無数の杭を上条の体に打ち込んでいく。
右肩、左肩、両脇腹、下腹部、両太もも。

大量の黒い杭が上条の体を貫通し、彼の体の自由を奪う。


一方『―――使えやァ!!!!!』


さあ。

今こそ使う時だ。

使え。

あの竜の頭を使え。


その瞬間、一方通行の能力が『消えた』。

黒い杭が『ひび割れ』て崩れ落ちる。


808 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:49:58.87 ID:BPV9cRE0
一方『―――』

ひび割れて。

あの竜の頭の効果とは違う。


一方『クソッ―――』

一か八かの捨て身の賭け。
振られたサイコロは一方通行の負けを示していた。

上条の体を貫いていた左腕に。

幻想殺しの右手がかざされていた。

上条が笑みを浮かべた。

赤く輝く瞳が一方通行へ死の宣告を下した。


その時だった。


どこか離れたところから声が聞こえた。


「とうまああああああああああ!!!!!!!」


809 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:53:33.40 ID:BPV9cRE0
―――


どれだけの時間が過ぎたのだろうか。

全てが闇だ。
音も風も感触も無い。

何も無い。

自分は何者かわからない。

「……いい…」

でも思い出そうとはしなかった。
理由は分からないが、なぜかどうでも良い。

大事な事も。

やらなければいけない事もたくさんあったような気がする。

でもどうでもいい。

「……」

810 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:55:48.03 ID:BPV9cRE0
これだけはわかる。

思い出せばきっと苦しむと。

その時だった。



この『無』の世界に明らかな『有』が。

それは声だった。



―――!!!

声が聞こえる。

「……」

誰の声か知っている。
この声を聞くと心が休まる。


「………ス」

811 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 00:58:25.64 ID:BPV9cRE0
「……インデックス?」

その瞬間、心が開いた。

そしてそれと同時に。

この数十分の間、彼がばら撒いた死の記憶も流れ込んできた。


「……え?」


白く輝く己の腕が黒ずくめの兵に伸び、引き裂く。

「……!!!!!」

頭を掴み叩き潰す。


「な、なんだよこれ!!!!」


壁に猛烈な力で打ち付けられ、跡形もなく弾け飛ぶ兵士。


「お、おい!!!!やめろ!!!!!!!」

812 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:02:56.59 ID:BPV9cRE0
『何ってお前が望んだもんだろ』

どこからか別の声が彼に答えた。

「俺が…?!!!」

銃を捨て、喚きながら逃げる兵の背中へ飛び掛る。
そして八つ裂きにする。
生暖かいすえた蒸気が鼻に入る。

「ウソだ!!!!!こんな……!!!!!ああああああ!!!!!」


『何寝ぼけてやがる。お前が望みお前がやった』


命乞いをする兵の頭を引きちぎる。


「やめてくれ!!!!!やめろおおおおお!!!!!」


次は良く知っている少女が現れた。

「!!!!」

御坂美琴。

813 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:05:45.02 ID:BPV9cRE0
『彼』を見て涙を流す少女。


「逃げろ!!!!おい逃げろよ!!!!!」

だがその声に御坂が反応するわけも無い。
この映像はもう起こった過去の記憶なのだから。

「頼む…!!!!やめてくれ……やめてくれよ……!!!!」


彼女の顔は恐怖ではなく悲しみで歪んでいた。


その頭へ。


「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


『上条』の左腕が振り下ろされた。


「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」



814 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:07:22.65 ID:BPV9cRE0
―――

上条『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!』


禁書「とうまあああ!!!!!とうまああああああ!!!!」

突如上条が両手で頭を抱え凄まじい咆哮をあげた。
地響きのような凄まじい声。
全身から今まで以上の光が溢れる。

その右手は当然一方通行の腕から離れた。

一方通行の能力が復旧する。

一方『―――ッ』

なぜあの少女がこんなところにいるか。
そんなのを考えている暇は無い。

左腕を引き抜き、そしてすかさず杭を突き出した。

悶えてる上条は回避行動を一切取らなかった。

杭が直撃する。

だがその切っ先は上条の肌を貫かなかった。

一方『―――!』

杭の先端がひん曲がっていた。

上条の光が更に強まる。

815 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:09:58.54 ID:BPV9cRE0
一方『―――テメェはなンなンだよチクショウ!!!!』

明らかにヤバイ。

更に力が強まっている。
この黒い杭ですら傷がつかないレベルにまでに。

禁書「とうま!!!とうま!!!!」
インデックスが危険を省みずに今にも泣きそうな顔で真っ直ぐ上条に走ってくる。


一方『―――』

その姿にデジャヴを感じた。

二ヶ月前。

あの打ち止めが一方通行の元に駆け寄ってきた時と今の光景が重なる。

禁書「とうまああああ!!!!」
上条を呼びながらどんどん近付いてくる。

名前を呼ばれるたびに上条の光が揺らぎ、顔が歪む。
先ほどまでの人間性の全く無い表情とは正反対だった。

嫌になるほどの人間的な苦痛の顔。

817 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:13:25.11 ID:BPV9cRE0
一方『―――』
上条とインデックスを交互に見る。

一方『(―――考えろ!!!!)』

上条の力は更に強化され、武力で抑えこむのは絶望的だ。

だがきっと何か方法があるはずだ。

あの二人。

その関係は?
今の状況は?

一方通行は思考を巡らした。

以前の一方通行の陥った状況と良く似ている。

自分と置き換えてみる。

己が今の上条だったら。

どのような状況であの竜の頭を使う?

一方『―――』

そして一つの『悪』の方法が浮かんだ。

818 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:20:05.84 ID:BPV9cRE0
一方『ハハッ』
思いついた策。
それに対して一方通行は軽く笑った。

上条なら絶対に考えない方法だ。

闇を這う悪党の一方通行ならではの策だ。

自覚し受け入れていたが、改めてそんな自分が嫌になる。


それでいてこうも思った。

やッぱり俺はこォあるべきだ と。


一方通行は杭の一本を操作し、そして突き出した。

その行き先は上条ではなく。

走ってくるインデックスへ―――


―――少女の小さな顔へ伸びる。

819 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:22:01.65 ID:BPV9cRE0
上条『―――』
上条の表情が変わる。

一方『―――ハハァ!!!!』

インデックスへ伸びた杭は彼女へは達していなかった。

彼女の顔の僅か10cm前で寸止めされていた。
そしてすぐに引き戻した。

インデックスは軽く尻餅をついた。
そして不思議そうに周囲を見渡していた。

音速の数十倍もの速度で動く杭が彼女に見えるはずも無い。

それにベクトル操作で衝撃波もまとめているため、
ちょっと強めの風くらいしか当たっていないだろう。

上条が凄まじい形相で一方通行を睨んだ。

一方『ギャハハハハハ!!!いィぜェ!!!!そォだ!!!!!』

820 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:23:38.51 ID:BPV9cRE0
あの上条の反応、それだけで充分だ。

一方通行の予想は当たった。
その顔は上条とは正反対に歓喜の笑みが浮かんでいた。

一方『そォだ!!!!これだぜェ!!!!』

上条の真似をしてもやはり無理だ。

自分のやり方で。
悪党は悪党のやり方で。

それが合っている。

上条が地面を蹴り、今まで以上の速度で突進してきた。

それと同時に一方通行は全ての杭を放った。


一方『アアアアアアアアア!!!!!!!』


上条ではなく。

インデックスの方へ再び。

今度は無数の黒い帯がインデックスへ突き進む。

821 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:25:52.94 ID:BPV9cRE0
一方『ほォら―――使え』

上条の目の色が変わる。
そしてインデックスの方へ向いた。


一方通行はもちろんインデックスに当てる気は無い。
傷一つつける気は無い。

だが先の反応を見る限り、上条はこの安いこけおどしにあっさり乗ってくるはずだ。

まんまとハマるはずだ。


一方『―――使ェやァアアアア!!!!!』


その一方通行の叫びと同時に。

上条がインデックスを『守る為』に『竜王の顎』を出現させた。
そして左手と両足の装具が消える。


一方『目ェ覚まさせてやらァ三下ァァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』


インデックスに向かっていた大量の黒い杭も消えた。

822 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:29:42.87 ID:BPV9cRE0
そしてミサカネットワークも消え、再び何も考えられなくなる。
平衡感覚が狂い、どっちが上か下かもわからなくなる。
だが一方通行は前へ強く地面を蹴った。

体の動くがままに。

無心で突進する。


上条はインデックスの方へ向いている。


その左側の頬に。

硬く握った右拳を。

『魂』が乗った拳を。


全てを終わらせるべく。


一方「がああああああああああああああああああああ!!!!!!」


―――上条を救うべく。


全体重を乗せて倒れこむように放った。


そしてその拳が遂に『上条』に届く―――。


823 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:33:43.18 ID:BPV9cRE0
―――


ネロ『―――』
その瞬間、鏡の世界が今まで以上に強く揺らいだ。

肌の表面の力が削られるのを感じる。

またあの幻想殺しの力が流れ込んできている。


そしてこの二回目の幻想殺しの嵐がこの鏡の世界に決定打を与えた。

景色に黒いノイズが混ざり、徐々に消えていく。
足元の地面がうっすらと黒くなっていく。

ネロ「そろそろ時間か―――」

周囲の景色が見る見る消失していく。
そして悪魔達も消えていく。

ネロは真後ろの出口へ跳ぶ。

体が残像を引き始める。

そのネロを追うかのように悪魔達が押し寄せてくる。
ネロはブルーローズを向ける。


ネロ「失せな―――閉店だぜ!!!!!」


そして連射した。

その悪魔達の姿が見えなくなるまで引き金を引き続けた。

824 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:36:57.18 ID:BPV9cRE0
―――

シェオル『ぐぉぉぉおお!!!!!!』
シェオルは感じていた。あのスパーダの孫の存在を。
この開け放たれている扉のすぐ向こうにいる。すぐ近くだ。

その時、声が聞こえた。


「鏡よ鏡―――」


シェオル『―――!』

その発信源は。
鏡のすぐ向こう側から。


「―――てめぇをぶっ殺すのは誰だ?」


そしてその声の主が突如目の前に現れた。
ネロが後ろ向きで、シェオルに銃口を向ける形で鏡の世界の崩壊と同時に飛び出して来た。
ネロの顔には挑発的な笑み。


シェオル『―――』


ネロ「―――俺だ」


次の瞬間、ブルーローズの銃口から巨大な砲炎が噴き出した。

826 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:42:39.32 ID:BPV9cRE0
放たれた銃弾がシェオルを貫き砕く。

鏡が砕け散る。

欠片がダイヤモンドダストのように煌きながら飛び散った。

ネロは床に着地し、そしてブルーローズを腰に納めた。


ネロ「次はトランプの兵隊でも用意しとくんだな」


その物言わぬただのガラス片になったシェオルに言葉を飛ばした。


ネロ「―――ってそれは違う話か…」


ネロ「鏡が出るのは……シンデレラだったか?」

一人どうでも良い事に悩み頭を掻く。


ネロ「あ〜…クソ……しまらねぇな」


828 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:47:01.80 ID:BPV9cRE0
―――

鈍い炸裂音が響く。

そして二人の少年は並ぶように地面に倒れた。


一方「あ……が……」
地面に体を打ちつけ、鈍痛が全身に走る。

無心で放った拳。

それが当たったのかどうか。
効いたのかどうかわからない。

だがその答えはすぐにわかった。


徐々に思考が元に戻り始める。

能力を感じる。

一方「―――ッつ…」

地面に手をつき起き上がる。
ベクトル操作によって補佐され、楽々立ち上がったが体が軋む。


一方「…」

そして。

すぐ隣の地面に仰向けに倒れている上条―――。

829 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:52:33.60 ID:BPV9cRE0
あの竜の頭も、全身を包んでいた光も消えている。
そし一方通行の拳が炸裂した左頬が赤くなっている。

さっきまでのような体の修復はしていないようだ。

一方「………」

その上条の顔はまるで寝ているかのように穏やかだった。

どうやら生きてはいるようだ。

胸がゆっくりと上下し、小さな呼吸音が聞こえている。


一方「はは…ははははははははは!!!!!」

一方通行はその場の地面に乱暴に座り込んだ。

そして天を仰ぎ大声で笑い始めた。


一方「ギャハハハハハハハハハハハ!!!!!ハハハハハ……ハハ……」

830 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 01:58:38.69 ID:BPV9cRE0
一方「はははは……はは……」

顔を下ろし、目の前に横たわっている上条を見る。
気を失っているようだ。


一方「おィ……三下ァ……」

上条には聞こえていないだろう。
だがそれでも一方通行は言葉を続けた。


一方「テメェはそッちに行くンじゃねェよ…」


一方「そこは俺の席だ……」

その声色は刺々しくも、まるで旧友に会っているかのような優しさも篭められていた。

一方「テメェは『こっち』の席だろ…」



一方「二度と……俺にテメェの真似事なンざさせるンじゃねェよ三下ァ」

831 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 02:02:12.23 ID:BPV9cRE0
その時、気配に気付いた。
一方通行はふと顔をあげた。

一方「……テメェか…」

上条を挟んだ向かいに赤いコートに銀髪の男が立っていた。


ダンテ「よう」


一方「……テメェ見てやがッたな……」


ダンテ「まぁな」


一方「……」


ダンテ「心配すんな。殺す気はねぇ」


一方「そォか…」

少女の声が聞こえる。
インデックスが叫びながら走ってきているのだ。

832 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 02:05:07.84 ID:BPV9cRE0
一方「……なァ…コイツどォなンだ…?」

ダンテ「さぁな」
ダンテが上条を眺めながらそっけなく言葉を返した。

ダンテ「しばらく様子見だ」

一方「……またこォなるかもしれねェのか?」

ダンテ「多分な。いずれ」

一方「―――!」

ダンテ「心配すんな。俺がいる」


ダンテ「それにココには―――」


ダンテが一方通行の顔を見た。


ダンテ「―――お前がいるじゃねぇか」

833 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 02:09:17.78 ID:BPV9cRE0
一方「―――」
その思わぬ返しに一瞬動揺する。


一方「ハッ…俺かよ…」

ダンテ「そうだ」

一方「……」

ダンテ「このボーヤとはもう戦いたくないか?」


一方「……るせェ」


禁書「とうま!!!!とうまああ!!!!」

インデックスが走りこんできて上条のすぐ傍に屈む。

ダンテ「大丈夫だ。気絶してるだけだぜ」


禁書「とうま…うぅ」
インデックスが上条の右手を握る。

ダンテは肩を竦め、踵を返して歩きその場から離れていった。

834 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/04/11(日) 02:10:24.35 ID:BPV9cRE0
と、3歩程歩いたところで足を止めた。
そして振り返り一方通行を真っ直ぐ見た。

ダンテ「おぃ」

一方「……あァ?」


ダンテ「良いもん見せてもらったぜ―――」


一方「……」



ダンテ「上出来だ―――」



ダンテ「―――『アクセラレータ』」


それだけ言うと再び前を向き歩いていった。

一方「………」

一方通行は離れていくダンテの背中をずっと見ていた。


ずっと。

839 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/11(日) 02:32:17.87 ID:nUT4zQ60
一方さん株がまた上がったぜェ…
乙です。

ダンテ「学園都市か」13(上条覚醒編)




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