2010年08月16日

ダンテ「学園都市か」6(上条修業編)

483 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/07(金) 00:31:59.83 ID:02VBpOI0
―――

事務所デビルメイクライ。

上条は自分の部屋のベッドに寝そべり、天井をボーっと見上げていた。

上条「……いてぇ…」
先ほどトリッシュによって、電撃を鼻先に叩き込まれたせいで未だにヒリヒリ痛む。

一応右手をかざしてみたが、トリッシュの力は体内の奥深くまで浸透しているらしく効果は無かった。
鼻を引きちぎり右手を突っ込めばこの痛みは消えるだろうが、それだと比べ物にならない激痛を味わうので本末転倒だ。

上条「……」
隣の部屋からは御坂の嬉しそうな声が聞こえる。
さっきからスゴイだのヤバイだのを連呼している。

恐らく部屋の中でいろいろ弄ったり、剣型に変形させては戻したりを繰り返しているのだろう。


上条「……んあ?」
ふと携帯の時刻を見た。

上条「お、そろそろいいな」
学園都市はちょうど朝だ。
もうインデックスも起きている事だろう。

上条は携帯を握り、お馴染みの番号へ電話をかけた。

ワンコールで相手が出る。


禁書『とうま!!!!!おはようなんだよ!!!!!』

484 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/07(金) 00:40:19.73 ID:02VBpOI0
上条「おおう…相変わらず出るのはええな!!!おはよ!!!」

上条は知らないが、彼はいつもこの時間帯にかけているので、
インデックスは毎度欠かさずスタンバイしている。

禁書『そっちはどう!?大丈夫!?』

上条「おう、問題はねえぜ」
いつものやりとりだ。

ちなみに、インデックスは上条が具体的にどんな目に合っているかは知らない。
もし知ってしまえば発狂してしまうだろう。

上条「お前はどうだ?ちゃんと飯食ってるか?」

禁書『うん!!!あのね―――』

インデックスが昨日一日の出来事を嬉しそうに事細かく喋る。
上条は穏やかな笑みを浮かべ相槌を打ち、彼にとって心温まる歌のような少女の声に聞き入る。

上条にとって最高の癒しだ。
この声を聞けば、全ての疲れが吹き飛び、そして安眠できる。

485 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/05/07(金) 00:42:16.95 ID:Jm34VwAO
相変わらずこのインデックスはいいインデックスだなぁ

486 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/07(金) 00:45:48.05 ID:02VBpOI0
禁書『―――なんだよ!!!』

上条「はははそうか〜!」

禁書『でねでね……んん?』

上条「?」
インデックスが向こうで誰かに話しかけられ、言葉を止めた。

禁書『ちょっとまって。あくせられーたが話があるって。今かわるんだよ』

上条「お、おう」
上条は少し嫌な予感がした。
まさかインデックスが何か迷惑かけたのか と。

電話越しに 少しだけなんだよ!!!すぐ終わらせて!!! とインデックスの声が聞こえた。

上条「……」


一方『よォ』

上条「おう」

一方『どォだ?そっちはよォ』

上条「……へ…あ、ああ、特に問題ねえぜ」
少し拍子抜けした。
開口一番に文句を言うと思って身構えていたのだ。

487 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/07(金) 00:50:48.66 ID:02VBpOI0
一方『そォか。そィつはイイ』

上条「ま、まあな」

一方『……』

上条「……」

少しばかりの沈黙。

お互いともなんとなく古い友人のように思っていたが、お互いをそこまで知っているわけではない。

確かに拳を重ね、魂をぶつけ合い会話をし、背中を合わせてお互いを信頼して共闘もしたが、
こういう平時ではどういう風に接すればいいのかお互いともわからなかった。
何を話せばいいか分からないのである。

一方『……つーかよ』
先に口を開いたのは一方通行だった。

一方『話し長ェよあのガキ。テメェもよ』

上条「あ、あ〜、もしかして待ってたのか?」
30分以上もインデックスと話していたのである。
代わるタイミングを待っていたが、ついに耐えかねてインデックスに代われと言ったのだろう。

一方『まァな。まァ……ガキは話が長ェってのはどこも共通みてェだな』

上条「みたいだな。ま、お互い色々と苦労してるみたいだな」

一方『まァな………って、ンなこたァどォだっていィんだよ!!!クソがァ!!!』

いきなり一方通行が語気を荒げ、凄まじい勢いで自分に突っ込みを入れた。

上条「……」

488 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/07(金) 00:54:31.52 ID:02VBpOI0
一方『なンでテメェなンぞとグダめいて、苦労を共有しなくちゃなンないんですかァァ゛?!!!!アァァ゛ァ゛!!!??』

上条「……なんか…その……すまん」
上条は お前がその話を振ってきたんじゃねえか と思ったが、
それを突っ込むと色々面倒になりそうだったのでここは謝った。

一方『チッ………つーかよ、テメェはいつ帰ってくンだ三下ァ?』

上条「あー、まだわかんねえな」

一方『大体でもわかンねェのか?』

上条「ん〜……全然」

一方『……クソッ』

上条「?何かあんのか?……まさかインデックスがなんか迷惑を……」

一方『それはねェ。あのクソガキにも見習わしてェくれェに大人しくしてる」

上条「おおおお……そうか……良かった……」
上条は心の底から安堵した。

一方『色々あンのは俺だ』

上条「?」

一方『……「用」があンだ。大事な「用」がな』

489 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/07(金) 00:59:06.45 ID:02VBpOI0
上条「いつだ?」

一方『さァな。だが近い内にだ』

上条「う〜ん……丸一日とかあける位の用か?」

一方『まァな』

上条「むむむむ……とりあえずステイルに連絡してみるぜ」
ステイルなら二つ返事ですぐに飛んでくるだろう。

一方『つーかよォ、そっちに連れてけや』

上条「そ、それは……」
それは色々と面倒な処理が必要になるのは上条も知っている。

上条「うーん………待てよ……そうだ」

上条「俺が一時的に戻るってのはどうだ?その日だけ俺が代わりに面倒を見る」

一方『いや……代わりじゃねェ。『交代』だ。俺はその日以降面倒は見ねェ』

上条「……そんな長い期間の用事なのか?」

一方『多分なァ』

上条「……と、とにかく、とりあえず近い内に一度帰れないかトリッシュさんに話してみるからよ」

上条「できればだが、そん時にちゃんと話そうぜ」

一方『……あァ。早く帰って来い。三下ァ』

上条「ああ、できるだけ早く行くよ」

490 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/07(金) 01:05:37.97 ID:02VBpOI0
一方『話してェのはこンだけだ。じゃァガキに代わんぜ』

上条「おう」

一方『いや……最後に一つ聞く』

上条「?」

一方『ダンテよォ……なンか言ってねェか?』

上条「何かって……何が?」

一方『学園都市に関係することでだ』

上条「……特に何も聞いてないけど……なんかあったのか?」

一方『いや、何も聞いてねェなら別に言い』

上条「……ちょっとまてよ……そうだ、確かまだ魔具の一つが返って来ないって言ってたな」

上条「『まあいつか返ってくる』っていつも通り笑ってたけどな。それだけかな、学園都市の話が出たのは」


一方『……………………………………………………へェ。そいつは「知らなかった」ぜェ』


一方『じゃァな三下ァ。早く帰って来い』

上条「おう」


491 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/07(金) 01:10:48.11 ID:02VBpOI0
―――


とあるマンション。

一方通行はインデックスに携帯を投げ渡した。

インデックス「わ!!!ちょ、ちょっと!!!」
インデックスがわたわたと慌てながらキャッチし、すぐに耳にあて大声で再び喋りはじめた。

一方通行はソファーに乱暴に座った。
背もたれの上辺に後頭部を当て、天井を仰ぐ。

一方「……」
黄泉川がつくっているのだろう、朝食の香りが鼻腔を優しく刺激する。

一方「……」
こうやって過してもう二週間が経とうとしている。

あまりにも場不相応だ。
こんな自分がこんなに明るいところで暮らしているなど。
そしてそれを悪くは無いと思っている自分もいる。

誰も殺さず、笑顔に囲まれてだ。

一方「……」

そう、この笑顔。

この笑顔をなんとしても守らねばならない。

492 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/07(金) 01:15:11.04 ID:02VBpOI0
とんでもない何かが起ころうとしている。
恐らく戦争だろう。

相手が誰かは知ったこっちゃ無いが、土御門曰く学園都市は厳しい戦いを強いられるとのことだ。

自分は必ず戦力として動員される。
ミサカネットワークという強い情報網を持つ、妹達と打ち止めも利用されるかもしれない。
アンチスキルである黄泉川は兵として動員されるかもしれない。

前線に立つことはないであろう芳川も、この学園都市に残れば危険かもしれない。

このままだと全て壊れるかもしれない。

一方「……」

だから彼は動く。


打ち止めを守る為に。

その少女の周りの『世界』を守る為に。

学園都市に固く繋がれている鎖を断ち切る為に。

『アレイスター』という死神から逃れるために。

今が立ち上がる時だ。

493 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/07(金) 01:20:03.37 ID:02VBpOI0
中に住まうものにとって最大の禍である『学園都市の危機』は、一方通行達にとっても最終通告だ。

だが皮肉な事に、一方で彼らにとってこれ以上ない程の最大のチャンスともなる。

役者は全て揃った。

『アラストル』もある。

後はとりあえず『ネタ』をできるだけ漁りながら時期を待つだけだ。

一方「……」

『アラストル』。

一方通行はこれには少し迷いがある。
使って良いのだろうかと。

土御門や海原は使う気マンマンらしいが、一方通行は少し気が引ける。

確かにアラストルがこちらにとって究極の切り札になるだろう。



今、こちら側にはレベル5が二人いる。

しかし、いくらレベル5がとはいえ、『学園都市の能力者』である。
つまりアレイスターの手の平の上だ。

だからアレイスターの裏をかくには彼の手の外、彼の手が届かない領域の力が必要なのだ。

そこで『アラストル』なのだが。

494 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/07(金) 01:28:17.07 ID:02VBpOI0
確かに有用だ。

だが一方通行は知っている。

実際に直で目にしたことの無い土御門や海原とは違う。

彼はその領域の力を直にこの身で味わっている。
圧倒的な破壊を目の当たりにし、底なしの恐怖と絶望を味わった。

『あんな物、あんな力、人間の手には到底扱えない』

それが一方通行の考えだ。
あのアレイスターでさえ及び腰になってしまう領域だ。

一方「……」

一方通行は迷っていた。
事を成し遂げるには『アラストル』の使用が必要なのだ。
それはわかっている。

自分達だけじゃ、あまりにも頼りなさすぎる。

だが『アラストル』を使うという事には、自滅するという可能性も含れている。

アレイスターにとってイレギュラーだが、一方通行達にとってもイレギュラーなのだ。

一方「……クソッ…」

あまりにも危険すぎる。
しかし使うしかないのだろう。躊躇っている余裕は無い。

一か八かの賭け。
負ければ全てを失う。
そしてこの賭けを降りればもう二度と立ち上がれない

だから道はただ一つ。

勝つだけ。

絶対的な勝利を手にする。

そしてその為には『アラストル』が必要なのだ。

一方「…………」

495 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/07(金) 01:36:55.97 ID:02VBpOI0
鎖を砕き、自由への切符を手に入れる為の戦い。
かけがえの無い存在をその『船』に乗せる為の戦い。

当然、彼は己自身がその『船』に乗るつもりは無い。
クソはクソ溜めに残るのが相応しい。

学園都市が滅ぶというのなら共にする。

一緒に消えて無くなるべきだ。

一方「……カカッ…」
一方通行は天井を仰ぎながら小さく笑った。

こんな自分達の姿が何となく滑稽だ。

あまりにも無様なだ。
クズが寄り集まって足掻く。

見るに耐えない薄汚れた戦いだ。

所詮悪役のカス共だ。
こういう戦い方しか出来ないのだ。

ヒーローの様に己が身一つで、拳のみで掴み取ることは出来ないのだ。


一方「……」
己が見たヒーロー達の姿を思い出す。


ボロボロになりながらも前に突き進むツンツン頭の少年。

赤いコートをなびかせ、華麗に疾駆していく銀髪の男。


忍び寄ってくる運命をねじ伏せ、鎖など自力で簡単に引き千切ってしまう強き『主人公達』を。


一方「………かっけーなァ…おィ…」


506 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 00:12:47.23 ID:efQIU8E0
―――


事務所デビルメイクライ。
時刻は深夜。

ダンテは一階のホールのソファーに寝そべり、うとうとしていた。
いい具合にアルコールがまわり、極上の一時だ。

だがその至福の時間が、電話のけたたましい音で中断される。

ダンテ「………」
だがダンテはソファーから動かない。
面倒臭いのだ。

机の上の電話は相変わらず鳴り響いている。

ダンテ「………」

根競べだ。
電話の主が先に諦めるか、ダンテが降参して受話器を取るか。

ダンテ「………」

電話が鳴って3分が経過した。
徐々にダンテの苛立ちがつのってゆく。

ダンテ「………」

だが彼は負けない。
そうと決めたのなら、意地でも突き通す。
どんな戦いだろうと負けねえ と。

その時だった。

トリッシュが早歩きで地下室へ続く階段の方から、
ダンテが寝そべっているソファーの方へ真っ直ぐに進んで来た。

トリッシュ「出なさいよ」

そしてソファーを思いっきり蹴飛ばした。衝撃でダンテは床に転げ落ちた。

507 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/05/09(日) 00:16:54.17 ID:IS1jTP2o
ダンテwwwwww

508 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 00:17:08.12 ID:efQIU8E0
ダンテの小さな戦いはそこで終わった。

トリッシュ「いい歳こいて居留守とか。ホントしょーもないわね」

トリッシュはそう吐き捨て、早歩きで机に向かい受話器を取った。
ダンテは悪態を付きながらモタモタとソファーに這い上がっていた。

トリッシュ「Devil May Cry」

机に軽く腰掛け一言。

トリッシュ「ねえ。合言葉アリだけど」

トリッシュが、再びソファーの上に寝そべっているダンテへ声を飛ばした。
その言葉を聞いてダンテが勢い良く上半身を起こした。

ダンテ「場所は?!」
ダンテが見るからにワクワクしている笑みを浮かべトリッシュに声を飛ばした。

トリッシュ「というかかわって。エンツォだから」

ダンテ「ハッハァ!」
ダンテがひらりとソファーから飛び起き、一切無駄のない華麗な動きで進みトリッシュから受話器を奪い取った。

ついさっきソファーから無様に蹴落とされた男とは別人のようだ。

トリッシュ「……ったく…」
トリッシュはそんなダンテを呆れた目で眺めた。

509 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 00:21:19.04 ID:efQIU8E0
ダンテが相槌をし、ハハッと笑い、そして 任せろ と言って受話器を放り投げる。
宙を舞った受話器は、まるで磁石にでも吸い寄せられているかのようにストンと元の位置に収まった。

トリッシュ「何だって?」

ダンテ「タレコミだ。四日後にリスボンの港に例の人造悪魔を積んだ船が入るとよ」

トリッシュ「へぇ……ウロボロス社の?」

ダンテ「ああ。その次の日もだ。二日続けて入るとよ」

トリッシュ「面白いわね。そろそろ現物が欲しかったところなのよね」
現物が手に入れば、
それを調べる事によってかなり詳細な黒幕についての情報を掴むことができる。

トリッシュ「いいわ、私がいk」

ダンテ「俺が行く」

トリッシュ「……」

ダンテ「そろそろパーっとやりてぇんだよ。良いだろ?」
ダンテが軽く手を広げニヤける。

トリッシュが呆れたようなため息を付く。

トリッシュ「ま、いいわよ。あなたが決めることだし。じゃあ私はその二日間の間坊やの面倒を見るから」

ダンテ「ヘッハァ!」

510 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 00:28:47.79 ID:efQIU8E0
トリッシュ「わかってると思うけど」

ダンテ「あんま暴れんな だろ?わかってる」

トリッシュ「……」
わかってはいるが、その言いつけを守るとは言わない。
いつもの事だ。

どうせその船が真っ二つに折れて爆沈でもするのだろう。
先にトリッシュが早めに何体か捕獲しておかないといけない。

その時、階段を降りてくる音が聞こえた。

トリッシュ「あら、まだ起きてたの?」

上条が階段の所に立っていた。

上条「おう。電話しててな。でさ、ちょっと話あんだが……いいか?」

トリッシュ「どうぞ」

上条は簡潔に説明した。
インデックスの面倒を見ていた一方通行が、近い内にその役から降りなければいけないと言う事。
とりあえずその事を話す為に、今週中にでも少しだけでも向こうに顔を出したいと。

トリッシュ「……へぇ」

511 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 00:30:42.25 ID:efQIU8E0
トリッシュ「ちょうど良いわね」

ダンテ「だな」

上条「?」

トリッシュ「良いわよ。ダンテが四日後から出かけるから。二日間」

上条「!!」

トリッシュ「一日目はあなたの力を調整するわ。二日目はお休みにしてあげる」

今の荒削りのままだと、ダンテやトリッシュの傍から離すのは少し不安だ。
一日かけて『バリ』を削り落とし、上条の力をある程度安定させてからの方が良いだろう。

上条「ってことは………戻って良いのか!!!?」

トリッシュ「ええ。一日だけだけど」

上条「おう!!!全然おっけーだぜ!!!!」

ダンテ「ま、久々に羽伸ばしてきな」

上条「ああ!!!サンキュ!!!」

こうして上条は五日後に一時帰宅する事になった。


512 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 00:39:55.06 ID:efQIU8E0
―――


バッキンガム宮殿地下。
とある蔵書。

ネロは険しい表情で椅子に座り足を机に乗せていた。

ネロ「……」
この妙な胸騒ぎ。日に日に徐々に強くなってきている。

悪魔の勘が叫ぶ。
『数日中に開演する』と。

ネロ「……」

一番近い、大きなイベント。それは五日後に行われる神裂とローマ正教の枢機卿との会合。

ネロ「……」
神裂を信頼し任せるか。
それとも女王に直談判でもして中止させるべきなのだろうか。

だが悪魔の勘は「そんな事は無駄だ」という。
どちらの道を選んでも結局『開演』すると。

ネロ「……最悪だな……ホント最悪だぜ畜生が…」

その時、机の上の通信霊装が光りだした。

513 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 00:42:03.85 ID:efQIU8E0
ネロ「……」
報告の時間はいつも大体決まっている。
つまり、この通信はそれ以外。

嫌な予感がする。

机に乗せている足で通信霊装を乱暴に叩き起動する。

ネロ「あ?」

『フォルトゥナからネロ殿に』
通信霊装からの男の声。

ネロ「……」
予想通り報告ではなかった。

そしてフォルトゥナから。
ネロの顔が少し引きつる。

心当たりがある。
ここ最近なんやかんやでしばらく家に帰っていない。

ネロ「……つなげ」

『了解』

数秒後。

『ネロ?』
通信霊装から、穏やかで優しいハープの音色のような透き通った女性の声。

その声を聞いてネロは机から足を下ろし、一瞬で姿勢を正した。

ネロ「悪い!!色々忙しくてっ!!!……本当に悪い!!!」
そしてネロは相手の話を聞かずに即座に謝罪をした。

相手はキリエだ。

514 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 00:48:16.40 ID:efQIU8E0
キリエ『うん、いいの、それはしょうがないよ』
声だけで分かる。
素直で優しい、まるで天使のようなキリエは何も怒っていないだろう。
だが逆に素直すぎて、彼女の寂しさもビシビシ伝わってくる。

ネロ「すまん!!!本当にすまん!!!!」

キリエ『いいってばもう……そうそう、ご飯とかちゃんと食べてる?』

ネロ「ああ、大丈夫だぜ」

キリエ『洗濯とかちゃんとしてる?』

ネロ「お、おう、してるぜ。そっちはどうだ?」

キリエ『うん、特に何も問題ないよ。あ、そうそう……』

そこからキリエは女の子特有の世間話を始めた。
その内容は、同じ世界にいるのかと思いたくなる程に微笑ましいものだった。

キリエの話した内容はお隣さんのわんちゃんが子犬を無事出産したとか、
家の前の花壇のお花が咲いたとか、孤児院の子が元気 などなど。

その美しい歌のようなキリエの話をネロは穏やかな笑みを浮かべ、優しく相槌を打ちながら聞いていた。

今のネロにとって最高の安らぎだ。

515 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 00:53:01.26 ID:efQIU8E0
しばらくそうしてキリエの話を聞いていると、蔵書のドアが軽くノックされた。

ネロ「(チッざけんな誰だクソッタレぶっ殺すぞクズ野郎)」

ネロ「おっと、わりぃ!ちょっと待ってろ」

キリエ『…それでね…えっ?、あっうん』

ネロは通信霊装の書物を閉じ、緩んだ表情を一瞬でいつもの冷たい仕事モードに戻した。

ネロ「入んな」
そして扉に向けそっけなく声を飛ばした。

扉が開き、黒いローブに身を包んだ背の高い修道女がいそいそと入ってきた。
緩いローブ越しからでもわかるそのグラマーな体。
ローブについている帽子を深く被り、俯いている為顔は見えない。
手には黄ばんだ古めかしい紙。

特におかしい点は無い。
こうして『暗部』の者が報告書を直に持ってくる場合も多々ある。

ネロ「……」

だがネロはその妙な『空気』に気付いた。


ネロ「―――止まれ」


ネロの制止を受けて、『グラマー』な修道女は部屋に数歩入ったところで止まった。

516 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 00:59:43.19 ID:efQIU8E0
ネロは椅子の背もたれに寄りかかりながらその修道女を睨む。

ネロ「―――で、どちらさんだあんた?『来客』の予定はねえはずなんだが」

修道女が顔を上げた。
ローブの帽子の下から、黒縁のメガネをかけた整った女性の顔が見えた。
そして―――口元のほくろ。

女は色っぽい笑みを浮かべている。

ネロ「………」

ネロは一目で気付いた。
この顔やほくろ、メガネや体格は神裂の証言と完全に一致している。

聖ジョージの襲撃犯だ。

「はじめまして。坊や」

女が口を開いた。
その声は不気味なほどに色っぽい妖艶な物だった。

ネロ「遊びてえのか?バァさん」

ネロは右手を隠しもせずに顔の横にあげ、指を曲げながら力んで関節を鳴らした。
異形の右手の青い光が強まる。

同時に目が赤く光る。

「あら、ダディに似て冷たいのね。でもそういうところもセクシーで可愛いわよ」

そんなネロを見ても女は一切動じずに、余裕の篭った妖艶な笑み。


ネロ「……(ダディ……?)…親父を知ってんのか?」

517 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 01:03:05.71 ID:MzE/2.DO
ベヨネッタwwwwwwwwwwww

518 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 01:06:44.59 ID:efQIU8E0
「よ〜く知ってる」

女が熱い吐息を漏らし、身をくねらせる。

ネロ「……」
なぜか無性に腹が立つ。今すぐにでも叩き切りたい。
なんというか、初めてダンテに会った時の感覚に似ている。

自分が幼稚園児扱いされているのだ。

ネロ「……へぇ…じゃあ聞かせてもらおうか?ああ?」
ネロが苛立ちを隠しもせずに上半身を起こし、机の上に右手を叩きつけるように乱暴に乗せた。

「待って。私は別に『遊び』に来たわけじゃないの」

ネロ「へぇ。てっきりそうだと思ってたがよ」

右手の光が増す。
ネロは後ろに立てかけてあるレッドクイーンを意識する。

何かあればすぐにデビルブリンガーを伸ばし、そして叩っ切る為に。

「可愛い子ねぇ。ちゃんと聞きな。アンタのダディから『伝言』よ」


ネロ「……あ?」


「『今すぐイギリスと縁を切れ』」


「『魔術サイドとも学園都市とも、どの人間の勢力とも関るな』」


「『即刻フォルトゥナに戻れ』」


ネロ「………………は?」

519 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 01:11:03.91 ID:efQIU8E0
「ちゃんと伝えたわよ。じゃあね」
女は手をひらひらさせ、ファッションモデルがターンするかのように華麗に踵を返して扉の方へ向かった。

ネロ「おいッ!!!……待てやババア!!!」
ネロが勢い良く立ち上がる。
その反動で座っていた椅子が後ろに倒れた。

「……あんまりババアって言わないでくれる?」
女が立ち止まり、振り向かないまま不機嫌そうな声を背後のネロに飛ばす。

「それ結構ムカつく」

ネロ「るせぇ!!!」

ネロがデビルブリンガーを一気に伸ばした。
女を鷲掴みにしそのまま扉に叩きつけるべく。


「You want to touch me? Huuummhum....Bad boy」


その巨大な右手が女の体に触れる瞬間。

ネロ「―――!」

女の体がバラバラに、いや、小さな無数の黒い蝶になった。
ネロのデビルブリンガーはその蝶の群れを突き抜け、そのまま扉をブチ破った。

ネロ「―――チッ!!!!」

女の体はどこにも無かった。
そして蝶の群れも一瞬で掻き消えた。

520 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 01:15:49.36 ID:efQIU8E0
ネロは机を飛び越え、女が最後に立っていた場所に着地する。
そしてその床に右手を当てる。

力が僅かに残留していたものの、追跡に利用できるような情報は一切無かった。

ネロ「……何だってんだクソ……」

父が伝言とは?

あの女は何者か?

その関係は?

あの女が先日の聖ジョージ大聖堂襲撃犯なのは確実だ。
イギリスに対して友好的では無いのは確実だ。

もしかして父もあの女と同じくイギリスに対して非友好的なのか?

そしてあの伝言の内容。

ネロ「……」

これは確実にこれから起こる戦争に深く関係しているはずだ。

一体何がどうなっているのか。

父は何を知っているのか。

何を望んでいるのか。

そして何をしようとしているのだろうか。

521 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 01:18:29.26 ID:efQIU8E0
ネロは己の異形の右手に目を落とす。
いつもと変わらず、この『向こう』側に父の存在を感じる。


ネロ「なあ……知ってんだろ?」
右手を見ながら小さく呟いた。


ネロ「教えてくれよ……何が起こってんだ?……親父ィ…」


『ネロ?ネロ?』


その時、自分を呼ぶ透き通った声に気付いた。
どうやら先ほど右手を机に叩き載せた拍子で起動してしまっていたらしい。

ネロは慌てて机の方に戻る。

ネロ「悪い!!!…色々立て込んでてな…」

ネロ「……ってどこから聞いてた?」

キリエ『えっと……女の人が「遊びに来たわけじゃない」って……」

となると本題は全て聞かれていた。

ネロ「(クソ…)」
ネロは、このキリエだけはこういう暴力と殺戮の禍々しい世界から遠ざけておきたかった。

彼女だけは触れさせてはならないのだ。
絶対に関らせてはならないのだ。

ネロ「……」

523 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 01:25:55.00 ID:efQIU8E0
キリエ『それと…お義父さまの伝g』

ネロ「キリエ。今の事は絶対に誰にも話さないって誓ってくれ」

キリエ『……うん』

ネロ「……よし。じゃあまた後で、次はこっちから連絡するよ」
背後からざわめきが聞こえる。
大方、扉が破壊された騒ぎで警備の魔術師達が大慌てでこの地下に降りてきたのだろう。

キリエ『待ってる』

ネロ「じゃあ―――」

キリエ『ネロ』

ネロ「……ん?」

キリエ『愛してる』

ネロ「俺も愛してるぜ」
通信霊装の向こうから照れくさそうな小さな笑いが聞こえた。

キリエ『じゃあね』

ネロ「おう」
ネロは通信霊装をゆっくりと閉じた。

頭の中が混乱している。

ネロ「……………何が何だってんだよ…」

ネロは机に手を突いて、寄りかかった姿勢のまま一人吐き捨てるように呟いた。

524 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 01:28:06.88 ID:efQIU8E0
―――


事務所デビルメイクライ。

上条は自室のベッドの上に座っていた。
下でトリッシュと日程を話し合った後、すぐにインデックスへ電話を掛け、彼女と一方通行に伝えたところだ。

五日後の朝にトリッシュに学園都市に送ってもらう、つまり向こうに着くのは五日後の夜だ。
それから丸一日の自由時間という訳だ。

インデックスはこれでもかという位に大はしゃぎし、
上条にも聞こえてくるくらいに一方通行に うるせェ!!!! と向こうで怒鳴られていた。

上条「ははぁ〜!!」
上半身を勢い良く倒し、天井を見る。

上条「久々だな〜……」

考えてみると、インデックスとこんなに長期間離れたのは初めてだ。

上条「………うへへ…へへはあ……」
久々にあの愛おしい天使に会えると思うと、ニヤニヤしてしまう。
自分でも分かる。今の己の顔はかなり気持ち悪いだろう。

上条「……ん?」
そうやってニヤニヤしていたところ、ふと隣の部屋からの声に気付いた。

御坂が何やら大声をあげている。

上条「……」
まだあの大砲ではしゃいでいるのかと一瞬思ったが、どうやらそれは違うようだ。
何やら誰かと話しているようだ。
電話でもしているのだろうか と上条は思った。

525 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 01:31:00.88 ID:efQIU8E0
「うるさい!!!!皆黙っててば!!!黙りなさい!!!」

上条「……」
誰かと電話越しか何かで喧嘩しているようだ。

「ちょ、ちょちょちょ…!!!!!消しなさい!!!!」

「見ないで!!!!見ちゃだめだって!!!」

「共有って……ダメだって!!!お願い!!!!いやぁあああ!!!!」

「全部消せってば!!!!だめぇ!!!!見んな!!!」

「ちょっと!!今『保存』って言ったの出てきなさい!!!出て来い!!!!出て来いやぁあああああ!!!!」」


「保存すんなゴルァアア!!!!!!!そこさりげなく長さ測ろうとしてんじゃねぇええええ!!!!」


「てめぇら試し撃ちの的にすっぞウラァァァァアア!!!!!!!」


「アァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛!!!!…………へ?……ウソ…そんなに長いの…?…た、確かに…そんぐらいあったような…」


「……え?!もっと大きくなるの?!!に、二倍ぃい?!!」


「………ってうるせェエ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!!!!!!!!!!!」

上条「……」

526 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 01:34:44.48 ID:efQIU8E0
上条「……」
そういえば、五日後に学園都市に帰る事を御坂にも伝えとこうと思っていたのだが、
今はやめておこう と上条は判断した。

上条「……明日でいっか」
上条はティッシュを耳に詰め、部屋の電気を消し床についた。

相変わらず隣の部屋からは御坂の怒号が聞こえてくる。

上条は夢にも思っていなかった。
自分のムスコの映像が一万人の手に渡った事に。

己が今リアルタイムで公開処刑されているなど。

上条「……まあ元気そうでなによりだぜ。早く寝ろよ。御坂。おやすみ」
壁に向かって小さく呟く。

そして。


上条「おやすみ。インデックス」


五日後に会えるであろう、地球の裏側の少女へ向けて。

そう、『五日後』。

それは『開演』の時。


528 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 01:37:14.78 ID:efQIU8E0
―――


とある深い森の中にある、古い廃屋。

時刻は深夜。
満月の月明かりが、周囲をぼんやりと照らしていた。

その廃屋の前に、黒いボディスーツに身を包んだグラマラスな女が立っていた。
右足に体重を乗せ体をしならせ、右手にはスティックの付いたキャンディ。

魔女、ベヨネッタ。

ベヨネッタ「ヴァチカンに行くのあのエンジェルちゃんだって」

ベヨネッタ「五日後の昼に会合を開くみたい」

ベヨネッタ「どうする?良い機会だと思うけど」
ベヨネッタが星空を仰ぎながら声を放った。

その声の相手は、廃屋の屋根に座って瞑想している男。

後ろに撫で付けた銀髪。
青いコート。傍らには黒い鞘に納まった日本刀。

バージル。

529 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 01:41:40.75 ID:efQIU8E0
ベヨネッタは廃屋の屋根に座っているバージルへ向けて言葉を続ける。

ベヨネッタ「も〜う待ちくたびれちゃった。これ以上おあずけなんか無理」

ベヨネッタ「アンタももうそろそろ暴れたいでしょ?」

バージルが静かに目を開け、傍らの閻魔刀を掴み立ち上がった。

ベヨネッタ「どう?」


バージル「……異論は無い」

ベヨネッタ「じゃあ『天使』は任せて」
その言葉を聞いてベヨネッタが甘い吐息を吐き、妖艶な笑みを浮かべる。


ベヨネッタ「で、思いっきりブッ差してもいいの?あの『刀』?成功する確率は半々だと思うけど」


バージル「構わない。『天使』は殺せ」


ベヨネッタ「Huuum.Okaaay」

530 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 01:44:04.47 ID:efQIU8E0
ベヨネッタ「そうそう、ところで坊やはどうすんの?一応伝えたけど」

ベヨネッタ「結局動かなそうよ坊や。『親』に似てガンコっぽいし」

ベヨネッタ「アンタの『弟』も。それとあの金髪悪魔が色々嗅ぎまわってるけど」

バージル「……必要な場合は俺が行く」

ベヨネッタ「……手を引かなかったらどうするの?」

バージル「その時はその時だ」

ベヨネッタ「……………仲良いんだか悪いんだか。面白い家族ねえ」

ベヨネッタ「じゃあもう行きましょ。色々下見も必要だし」

バージル「一人で行け」

ベヨネッタ「?」
ベヨネッタが大げさに首を傾げる。

ベヨネッタ「一緒に来ないの?」

バージル「さっさと行け」


ベヨネッタ「もう……ノリ悪いったらありゃしないわね」


531 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/09(日) 01:49:20.74 ID:efQIU8E0
ベヨネッタ「じゃあ何かあったら『喚ぶ』から。ダディ♪」

ベヨネッタが腰をくねらせ軽くウインクをする。


バージル「失せろ」


バージルが親指で閻魔刀の鍔を弾いた。
僅かに姿を現した刃が月明かりを浴びて不気味に光る。


ベヨネッタ「もう、そんなに嫌われてると悲しくなっちゃう」

ベヨネッタ「恐い恐いって坊やに言われない?ダーディ?」

ベヨネッタがキャンディを咥え、相変わらず舐めた態度で笑みを浮かべる。
このバージルにこんな態度で接する事ができるのはダンテか彼女ぐらいだろう。

バージル「……」
バージルが猛烈な殺意の篭った赤く光る瞳で睨み返す。

だがその瞳に晒されても尚ベヨネッタは一切動じなかった。

ベヨネッタ「はいはいわかったってば。じゃあね」
ベヨネッタは踵を返して森の中へ、腰をくねらせながら消えていった。


バージル「……………」

537 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/05/09(日) 07:14:00.23 ID:RthPfMDO
バージルはあのパラレルエンドのようにベヨ姐と契約してる?
しかし上条一万人に息子大公開とは哀れすぎる、御立派様なのがせめてもの救いか…

542 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 01:03:43.24 ID:mJZkMyM0
―――

四日後。夜

事務所デビルメイクライ。

上条は自室のベッドに寝そべっていた。
朝の内にダンテはトリッシュに送られて、嬉々としてリスボンに向かった。

トリッシュはすぐに帰って来て、そのまま上条の調整に入った。
全身にいつものように杭を差して。

上条にとっていつもと同じ『拷問』だったが、トリッシュ曰く違うらしい。
まあ、とにかくこれで暴走する可能性はほぼゼロだという。
今日一日は絶対安静という条件付だが。

その後、トリッシュは再びダンテの元にいった。
明日の朝に上条を学園都市に送る為に戻ってくるという。

上条「……へへへへ…」
今から半日後はもう学園都市だ。
インデックスが傍にいることだろう。

そう思うと自然と顔が綻んでしまう。

543 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 01:07:51.54 ID:mJZkMyM0
ドアが軽くノックされる。

上条「おう」

ドアが開き、隙間から御坂がヒョコッと顔を出した。

御坂「えへへへ……準備できた!」

上条「おいおい、気が早いな。明日の朝なんだぜ?」

御坂「だって……久しぶりに戻るんだし…」
もう荷物を持って、今すぐにでも出発できる体勢の御坂が部屋に入ってくる。

上条「………って!それも持ってくのか!!?」
上条は勢い良く上半身を起こした。

彼が突っ込んだのは御坂の背中にある黒い棒状の大きな包み。
例の『大砲』だ。

良く見ると、手にも大きな箱型のバッグを持っている。
あのバッグにも見覚えがある。
昨日レディが持ってきた、術式強化を施した弾が300発程入っているバッグだ。

御坂「へ?うん。そうだけど」
御坂が 何かおかしい? とでも言いたげな顔で上条へ言葉を返した。

544 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 01:16:05.21 ID:mJZkMyM0
上条「持ってってどうすんだよ!!!使う気かよ!?」

御坂「だ、だって!!!あたしはアンタの護衛なんだから!!!万が一に備えなきゃ!!!」

上条「……」
決して自惚れているわけじゃないが、自分には到底護衛が必要とは思えない。
この二週間でかなりダンテに鍛えられたのだ。

あの暴走時程とはいかないものの、光を集めて擬似的にベオウルフ風の装具も出現させられる。
学園都市の基準に照らし合わせれば、今の自分はレベル5クラスだと上条は思っている。

だが護衛も御坂の仕事であり義務の一つなのだから、しょうがないだろう。

上条「まあ……無闇に使うなよ」

御坂「フンだ!!……ってアンタはアレ持ってかないの?」
御坂が部屋の隅にある、小さなテーブルに乗っている黒い拳銃を指差した。

上条「……俺はいいかな」

持っていく気は無い。
インデックスにはあまり見られたくないのだ。

いつも通り、『ただの上条当麻』として会いたい。

御坂「……そう…」

とその時だった。

一階の電話がけたたましく鳴り響いた。

545 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 01:20:16.16 ID:mJZkMyM0
上条「……一応出た方が良いよな?大事な件かも知れねえし」

御坂「……うん」

上条がベッドから飛び起き、廊下に出て階段を駆け下りていく。
御坂が荷物を上条の部屋に降ろして、そのすぐ後ろに続く。

上条は1階に降りると、素早く滑り込むように机の上の受話器を取って耳に当てた。

上条「はいはいこちらDevil May Cry」

エンツォ『んお?あの坊主か?俺だ俺。エンツォだ』

上条「あ、あ〜どうも」

エンツォ『ダンテかトリッシュいるか?悪魔狩りの依頼が入ったんだがよ』

上条「いや、まだ二人とも帰って来てないぜ」

エンツォ『ああ、クソッ……そういやぁそうだったな……参ったぜ…』

エンツォ『…………待てよ。おい坊主!』

上条「ん?」


エンツォ『お前がやってみねぇか?』

547 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 01:24:47.47 ID:mJZkMyM0
上条「……はい?何をでせう?」


エンツォ『お前が悪魔退治すんだ』


上条「………………はぃいいいいいいいい?!!!!」


御坂「何!!どうしたの!!!?」

エンツォ『お前強いだろ!?何せベオウルフだしよ!!二ヵ月半前も魔帝軍とやりあったんだろ!?なら余裕だぜ!!!』

エンツォ『ギャラも出るぜ?1万5千ドルだ。悪くはねえだろ?』

上条「いやいやいやいや……すんません……無理です。動くなって言われてるし…」

エンツォ『ダメか?!できるだけ早く!!!い、いや、今すぐやってもらわなきゃヤベェんだ!』

上条「ああ……悪いけど………(……って『今すぐじゃないとヤバイ』?)」
エンツォが言ったその言葉が妙に引っかかる。
そんなに急を要する自体なのだろうか。

エンツォ『そうか……悪いな。邪魔したな。他を当たってみるぜ』

上条「……ちょっと待ってくれ。今すぐじゃないとヤバイってどういう意味だ?」

エンツォ『んあ?……まあ…その悪魔共な、ココ最近毎晩のように人間をぶっ殺して喰ってるらしい』

上条「!!!!!」

エンツォ『退治が一日遅れるたびに人間が殺されるってこった』


上条「………ッ!!!!!!!!!」
そんな事を聞いてこの上条が黙っていられるわけがない。

良心の塊であるこの少年が、人が殺されるのを黙って見ているわけがない。

エンツォ『まあそういうことだ……じゃあn』


上条「―――俺がやる!!!今すぐ行く!!!!」

548 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 01:29:48.18 ID:mJZkMyM0
御坂「ちょ、ちょっと……どうしたの…!?」
いきなり声を荒げた上条に驚き、御坂がオロオロする。

エンツォ『うおおおお!!!!良いのか!!!!?』

上条「当然だ!!!!俺がそいつら全員ぶっ飛ばす!!!!」

エンツォ『こりゃあ良い!!!場所は―――」
エンツォが場所を伝える。

上条が相槌を打ち即座に暗記していく。
こういう時の彼の頭の回転は人間離れしているのだ。

その悪魔達がいる場所は、ここから20km程離れた街のスラム街にあるそうだ。
悪魔の力を使って駆ければ10分もしない内に行けるだろう。

エンツォ『連中は全員下等悪魔らしい。お前なら5秒もしねえ内に片付けられるだろ。じゃあ頼んだぜ!!!』

上条「おう!!!!任せな!!!」

ちなみにトリッシュから絶対安静と言われ、当然悪魔の力の使用も禁止されていたが、
上条にとって、人の命と天秤にかける間でもない。

それに下等悪魔が相手なら、暴走するような状況にはほぼ確実にならないだろう。

上条は受話器を置き、御坂の方へ向いた。

御坂「ね、ねえ…ど、どうしたの?何かあったの?」


上条「悪魔狩りだぜ!!!!」
そう一言だけ告げると、上条は階段に向かい一気に駆け上がっていった。


御坂「……はぃ?ちょ、ちょっと!!!」
御坂がその後を追う。

551 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 01:43:02.60 ID:mJZkMyM0
上条は自室に駆け込み、真っ直ぐに小さな机に向かい銃を左手で取る。
そしてスライドを引き、動作を点検した後に慣れた手つきで弾倉を入れ、
力を流し込んで自動装填の術式を起動する。

上条「よし」

その銃を腰のベルトの部分に差込み、今度はクローゼットに向かい右手を保護するための手甲を手に取った。

御坂「ね、ねえ……悪魔狩りって?」

上条「これから退治に行く」
手甲を右手に装着しながら上条が答える。

御坂「こ、これからって…!!?」

上条「俺は行くぜ」
右手を開いたり閉じたりして馴染ませる。
金属生命体である手甲は上条の腕の形に合わせてフィットするように形を変えた。

手のひらの部分だけは素肌が出ている。
これはダンテと相談の上で、戦闘中にも幻想殺しを使えるようにした物だ。
右手を守るときは手を拳を握れば良い。

御坂「だ、ダメよ!!!トリッシュさんが……!」


上条「すぐに退治しねえと人が死ぬ。理由はそれだけで充分だろ」


御坂「……」
その上条の目を見て御坂は諦めた。
彼の心に火がついたのだ。
こうなるとてこでも動かなくなるのは何度も経験済みだ。


御坂「……わかった。でもあたしも行くから。拒否する権利は無いからね」
御坂が踵を返し、足早に荷物の方へ向かい、大砲の包みを剥す。
そしてバッグを開け弾を取り出し、装填していく。

上条「おう。だがお前は見てるだけでいいぜ」

上条「俺に任せろ。全部俺の獲物だ。全員俺が叩きのめす」

御坂「……そう」


553 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 01:50:21.83 ID:mJZkMyM0
―――

リスボンの港。

ダンテはコンテナを下ろす為の大きなクレーンの鉄骨の上に寝そべっていた。


ダンテ「……」
正面は月明かりが反射している水平線。
後ろはリスボンの夜景。

空はうっすらと明るくなりつつある。
もうすぐ日が昇るだろう。

ダンテ「……つまみには悪くはねえ景色だ」
ワインボトル片手に一人呟く。

そうやってしばらく時間を潰していたところ、背後に気配を感じた。

ダンテ「見つけたか?」
ダンテがワインボトルに口をつけながら、振り返らずにそのまま声を放った。

トリッシュ「ええ」
そのトリッシュの言葉と同時に、ダンテの前に黒い小銃が放り投げられてきた。
クレーンの鉄骨とぶつかり金属的な音を放つ。

トリッシュ「小銃はざっと500丁ってところかしら。それと戦車が三台、戦闘ヘリが一台」

トリッシュ「小物は無理やり合成した人造悪魔ね。デカブツはインフェスタントかそれ系統のが複数取り憑いてるみたい」

トリッシュがダンテの後ろからそのまま説明する。
ダンテは放り投げられてきた小銃を手に取り眺めていた。

ダンテ「おい、随分おとなしいな。コレ」

トリッシュ「それは持ち帰りやすいように封印式ぶちこんであるから。中に入ればかなり盛大におもてなししてくれると思うわよ」

ダンテ「それなら文句はねえ」
ダンテが後ろのトリッシュの方へ小銃を放り投げた。

554 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 02:03:48.57 ID:mJZkMyM0
ダンテ「で……どの船だ?」

ダンテが上半身を起こし、トリッシュの方を見る。

トリッシュ「あそこ」
トリッシュが1kmほど離れた所に停泊している巨大な貨物船を指差した。

トリッシュ「船倉のカーゴに」

ダンテ「へぇ…」

トリッシュ「いい?二隻目が来るまで待ちなさいよ?」

今やってしまうと、襲撃の報を受けた二隻目が引き返してしまうかもしれない。
狩られるとわかっててみすみす寄航はしないだろう。

トリッシュ「下手したらお楽しみが半分になるわよ」

ダンテ「へーへー」

ダンテが手をひらひらさせ、再び寝っころがった。

トリッシュもその場に座った。

ダンテ「……帰らねえのか?」

トリッシュ「見張り。あなたの」

ダンテ「……」

トリッシュ「ワインちょうだい」

ダンテ「……これは俺んだ」

トリッシュ「ケチ」

ダンテ「……」


555 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 02:10:20.75 ID:mJZkMyM0
―――


とあるスラム街。

時刻は午前二時。

その寂れた町の一角、路地の裏に薄汚いクラブがあった。
日中も常に影になって日の光がささない。
夜の今はその闇が更に強い。

路地の奥。

唯一の光源である、オレンジ色のランプが照らしていた薄汚い木製の扉。
扉には手描きで「OPEN」と書かれているプレートが下がっていた。

その前に、フードを深くかぶった全身黒尽くめの少年が立っていた。

フードのついた黒い皮製のくたびれたジャケット、黒いカーゴパンツ、そして黒いハイカットの革靴。
フードの影がまるで黒いアイマスクのように落ち、少年の鼻から上を隠していた。

だがその瞳だけはその影のカーテンを貫いて光を放っていた。

少年の左手がゆっくりとノブに伸びる。
そして掴み、まわし、扉を開けた。

来客を知らせる鈴の音色とともに、少年はその暗いクラブに入っていった。

556 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 02:14:00.54 ID:mJZkMyM0
クラブの中はガランとしていた。
掃除の時のように円テーブルの上には椅子が上げられ、ステージの上にも誰も立っていない。

三人の客と思しき、見るからにカタギではない目つきの悪い男が奥の机を囲んで酒を飲んでいた。
カウンターには顔に傷があるこれまた強面のバーテンダーが一人。

クラブの中にはこの四人しかいなかった。
音楽も鳴っていない。

唯一営業中と思わせてくれるのは暗めに設定されている室内灯だけだ。

客やバーテンダーの睨むような視線を向けられたが、
少年は特に気にするそぶりも見せず、カウンターに進み円椅子に腰掛けた。

バーテンダー「よう、坊主。ここはガキの来るところじゃねえぜ?」

バーテンダーが嘲笑的な笑みを浮かべ、少年に言い放った。
少年の背後から客のものと思しき笑い声。

「水、くれないか?」

少年が口を開いた。

バーテンダー「んなもんは置いてねえ。これしかねえよ」
バーテンダーがショットグラスにウイスキーを注ぎ、少年の前に乱暴に叩きつけるように置いた。

「……これだけか?」

バーテンダー「ああ」

「他にもあるんじゃねえのか?」


「―――人間の『血』とかよ」

557 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 02:17:27.51 ID:mJZkMyM0
少年のフードの下の、光に当たっている口の端が僅かに上がる。
探りを入れているかのような、挑発的な笑みだ。

バーテンダーは相変わらずニヤニヤしていたが、その目の色が鋭く冷たいものに変わった。

「なあ、妙な話を聞いたんだ」
少年は笑みを浮かべたまま言葉を続ける。

「なんでもこの辺りで人を喰う『悪魔』が出るってよ」

バーテンダー「……」

「笑っちまうよな。なんのホラー映画だっつーの」

バーテンダー「……」

「でもよ、あながち嘘でも無いらしいんだ」

「実際に何人も跡形も無く失踪してるらしいぜ」



「んで、ここも血の匂いがプンプンしてるしよ」



バーテンダー「……」
バーテンダーは相変わらず笑みを浮かべていた。

少年の背後に座っていた三人の男が立ち上がる。

558 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/10(月) 02:19:10.89 ID:f7b2OwI0
アニメのDMCみたいだな

559 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 02:21:33.77 ID:mJZkMyM0
>>558そのまんまです

「へっへ。血の匂いか」

三人の内の一人が、不気味に笑いながら、カウンターに座っている少年の背中へ声を飛ばした。

「確かに匂うぜ。へっへへへ。腹ぁ減ってきちまった。そろそろ『仕入れ』の時間だなぁおい」
もう一人も下品な笑みを浮かべながら呟く。

「しょうがねえ。俺が―――」
三人目がゆらりと前に出る。
見開かれた目が赤く輝き、指先から黒く巨大な爪が皮膚を裂いて生える。

そして。

「―――奢るぜぇぇえええええ!!!!」

カウンターに座っている少年の背中へ、手を振り上げ人間離れした脚力で一気に飛びかかった。

その凶悪な爪が少年の背中に食い込もうとした時。

一発の銃声が鳴り響いた。

突進していた男は額から赤い液体を撒き散らせながら大きく仰け反り、後方に吹っ飛ばされ、テーブルを叩き潰して床に転がった。

バーテンダー「―――」

二人の男とバーテンダーの顔が一瞬凍る。

カウンターに座っていた少年がゆらりと立ち上がった。
左手には、一筋の煙があがっている黒い拳銃。

「俺が奢るよ」

少年が深く被っていたフードを右手で降ろし、微笑を浮かべながら声を放った。


『遠慮はしなくていい―――』


瞳が赤く輝いているツンツン頭の少年。
声は『悪魔特有』のエコーがかかっている。


『―――上条さんが奢ってあげるぜ!!たっぷりとよ!!!』

560 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 02:23:30.67 ID:mJZkMyM0
二人の男が、到底人間の物とは思えない咆哮を上げた。
その瞬間、皮膚がはち切れる様に裂け、その下から黒いザラついた『本体』が姿を現した。

トカゲ人間のようなシルエットの、全身が黒い悪魔。
瞳は赤く輝き、手足の先には鋭い爪、そして大きく裂かれ開かれた口からはおぞましい牙。


上条『来いよ』


上条が笑みを浮かべ、右手で手招きをした。

それに応じたかのように二体の悪魔が一気に飛びかかる。
同時に上条が前に踏み込んだ。

上条『―――』

一体目が上条の顔面へ手を突き出す。
だが上条は軽く頭部を傾けてスレスレでかわした。
右頬から僅か数センチの所を黒い巨大な爪が突き抜けていく。

そしてかわすと同時に、左肘の突きを悪魔の胸部へ叩き込んだ。
鈍い炸裂音と共に、突進してきた慣性もかかって悪魔の体が大きく『く』の字に曲がる。

だがその衝撃で後ろに吹っ飛ぶのは許されなかった。

上条は、肘の突きが炸裂したと同時に、畳んでいたその左腕を一気に伸ばす。

上条『―――ハァ゛ッ!!!!』

銃を握っている拳が悪魔の顔面へ叩き込まれた。

一瞬の間の二連撃。
悪魔の体はその場で床に叩きつけられた。
木製の床板の破片が飛び散り、大きな穴が穿たれる。

561 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 02:25:54.58 ID:mJZkMyM0
それはほんの一瞬の出来事だった。

常人なら何も見えなかっただろう。
そして飛び掛っている悪魔達自身も何が起こったのかわからなかった。

ほぼ同時に突進していた二体目の悪魔は、
その上条の異常な戦闘能力を『認識する前』に、彼の間合いへと侵入してしまった。

上条は左腕を勢いよく引き、その反動で体を『駒』のように回転させる。

上条「―――ッ―――」

そしてその『駒』は一回転し再び元の方向、二体目の悪魔の方へ向く。
白く光り輝く『左足のハンマー』を引き連れて。

上条「―――ッラァァァァァァァァァァァァァアア!!!!!!!」

上条の回し蹴りがカウンターとなって二体目の悪魔の顔面へめり込んだ。
直撃の瞬間、白い光がその『ハンマー』から溢れ、柔らかい肉を金属の塊で打ち付けるような炸裂音が響いた。

衝撃波でクラブ内の机・椅子・ステージありとあらゆるものが薙ぎ倒され、床板が捲れ上がっていく。
そして悪魔の体は跡形も無くチリと化した。

上条「―――シッ!」
振り切った左足を畳み、息を短く吐きながら右足で軽く跳ねる。

562 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 02:27:57.23 ID:mJZkMyM0
バーテンダー『なッ―――』
先の三体の悪魔と同じように、本来の姿を現していた『バーテンダー』の悪魔が、
カウンターの影でその上条の立ち回りを見て固まっていた。

バーテンダー『(ここは逃げるしか―――)』
バーテンダーの足元に黒い円が浮かび上がる。

そして直ぐにバーテンダーの体が沈み始めていく。

だが次の瞬間。

上条「待てや―――」

上条がバーテンダーの方へ振り向き、跳躍し一瞬でカウンターを飛び越えて、彼の目の前に着地した。

そして上条は右手を床に叩きつけた。
ちょうどバーテンダーの足元に浮かび上がっていた、黒い円の『淵』に。

次の瞬間、黒い円は割れ砕け散った。


悪魔の使う移動用のこの黒い円。
原理は、悪魔の力で強引に空間を切り裂いて『穴』を作るという物だ。

ただの空間の亀裂である『穴』自体には、上条の右手の効果は無い。
だがその淵、『身から離れた』悪魔の力によって、空間を切り崩し『穴』の形を維持している部分。
亀裂を元に戻そうとしている空間の力を塞き止めている堤防。

そこには上条の右手は通じる。

そしてこのバーテンダーのように移動途中に、下半身だけ沈んでいる時にその穴を塞がれたらどうなるだろうか。

空間を自分自身の手で歪められる程の力を持っていない、
このバーテンダーのような下等悪魔達は当然真っ二つになる。


激痛に襲われたバーテンダーの咆哮が、半壊したクラブの中に響いた。

563 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 02:35:27.88 ID:mJZkMyM0
上条がその上半身だけとなったバーテンダーを光輝く足で蹴り、踏みつけて押さえる。
そして左手の銃をバーテンダーの顔へ向けた。

上条『奢るって言ったじゃねえか。ノリが悪いな』

バーテンダー『……!!!!』

上条『まあ、「向こう」に帰るってんのも別にいいけどよ、』

上条『どうせまた来るんだろ?人間はお前等にとってご馳走だもんな』

バーテンダー『……我等にとって餌。本来は我等の糧となるべき卑小で下等な存在。何が悪い』

上条『いいか?人間はそんなもんじゃねえ』

上条『お前等よりも高潔とはいわねえ。でもよ、「下」でもねえ』

上条『お前等の生き方もルールも分かる。だがよ、それは「向こう」での話しだ』

上条『確かによ、お前等の行動自体は向こうのルール通りだ』

上条『だがよ、ここは魔界じゃねえ。人間界だ』

上条『「こっち」にも『こっち』のルールがある』


上条『「こっち」にいる限り、間違ってんのはお前等だ』


バーテンダー『………ふざけるな……』

565 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/05/10(月) 02:38:24.29 ID:/R4CLQAO
悪魔相手にも説教ですか上条さん

566 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 02:41:44.84 ID:mJZkMyM0
上条『勘違いすんじゃねえ。こっちはお前等の庭でも領地でもねえ』

上条『人間はお前等のもんじゃねえ』

上条『お前等には人間を殺す権利はねえ』

上条『もしその権利があると思ってんなら―――』


上条『もしそう思ってんならよ―――』



上条『―――そんな幻想ぶっ殺す』


上条の顔に怒りの色が現れる。
それは虐げられ殺された人間達を代弁しているかのような憤怒。


銃を握る手に力が入り、引き金が小さな軋む音を立てて徐々に引かれていく。

バーテンダー『黙れ小僧!!!!……そもそも貴様も我等が眷属でありながら……忌まわしき逆賊めが!!!』
バーテンダーの目が更に強く赤く光る。
その声も、光もどす黒い、救いようの無いほどの憤怒が篭っていた。

いや『救う』という表現は合わないだろう。
改心させる事が出来たとしても、それは彼らの概念からすると堕落だ。

悪魔達と人間達の概念は根本的な部分から違うのだ。
人間が救いと考える物も彼らにとっては拷問と化す。

人間の正義が彼らにとっての悪であり間違いである。

567 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/10(月) 02:49:32.17 ID:mJZkMyM0
バーテンダー『なぜわからぬ!!!』

上条『わかってるさ。その上で言ってる』

バーテンダー『ではなぜ人間共に付く?!!!なぜだ!!!?貴様は悪魔だ!!!』

なぜ?

上条『違えよ。俺は―――』


守りたいたいからだ。


上条『「上条当麻」だ』


人間達を。
あの愛しい少女を。


上条『それ以外でも。それ以上でもそれ以下でもねえよ』


その為なら戦う。

ありとあらゆる力を使ってでも。


上条『一応聞くぜ。どうすんだ?もう二度と来ねえってんなら見逃しても良い』


バーテンダー『DARBS CNILA OL AMMA (くたばれ 忌まわしき者)』
バーテンダーは猛烈な憎しみの篭ったエノク語を発した。

忌まわしき者。
悪魔達から見れば、魔界のルールに照らし合わせれば今の上条は正にそうだろう。


上条『……そうか』
上条の顔に一瞬悲しそうな影が差す。


上条『じゃあこれは上条さんの奢りだぜ。ちゃんとあの世まで持っていけよ』

上条は引き金を引ききった。
一発の銃声がクラブ内に響く。

579 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/12(水) 23:50:48.78 ID:UiEp/yE0
―――

『ハァ゛ッ……』

額から赤黒い血を流す悪魔は、闇に包まれた路地を突き進んでいた。
彼は三体の内、一番最初に上条に突進した悪魔だ。

どうやら彼は幸運だったようだ。
あの少年は恐らく威力偵察の為、初撃である彼へ放った銃弾はかなり力を押さえ込んでいたらしい。

そのおかげか、瀕死ではあるがなんとか命を失うことなく、ドサクサに紛れて逃げることができた。

『恐怖』という感情をこちらの人間界で味わうとは思ってもいなかった。
過去に何度か、魔界で大悪魔を目の当たりにして恐怖した事があったが、
戦闘態勢に入ったあの少年の放つオーラはそれと同じ物だった。

同じ悪魔とはいえ、大悪魔クラスは彼らにとって『神の領域』だ。

どう転んでも勝ち目は無い。
百の仲間がいても到底勝てない。

逃げるしかない。

黒い円も出せなかった。
かなり力を押さえ込んでいたとはいえ、あの銃弾にも彼からすれば莫大な量の力が練りこまれていた。
撃ち抜かれてから、体内の力がかき乱されて上手く使えないのだ。

今は力が回復するまでとにかく走ってできるだけ遠ざかるしかない。

『……ッ』


とその時だった。路地の向こうに気配を感じた。


立ち止まり、悪魔の目で見通す。

その先には。

茶髪の日系の少女が立っていた。

580 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/12(水) 23:54:33.40 ID:UiEp/yE0
『……』

その少女はキャップを深く被り、灰色のパーカーにベージュの短いスカート、
黒いレギンスに黒いブーツという出で立ちだった。
キャップの下からは短めの茶髪の髪が、路地を吹き抜ける微風で小さくなびいていた。

だが服装なんかはどうでもいい。

彼にとって一番重要なのは、その少女の持っている物だった。
長方形の箱に丸太が付いているような、長さ一メートル半程の金属の塊だった。
少女自体は人間のようだ。

だが、手に持つその金属の塊から莫大な量の悪魔の力が感じられる。

それに見た感じかなりの重量がありそうなのに、少女は片手で軽々と持っている。
明らかに普通では無い。

「見つけたわよ」

少女が彼をジッと見据えながら声を放った。
その英語は癖のある、少しぎこちないものだった。

「全部任せとけって言ってたくせに……ちゃんと逃げられてんじゃないの……」

少女が溜め息混じりにブツブツ呟きながゆっくり歩いてくる。
ブーツの靴底が、アスファルトの地面とぶつかる音が路地に響く。

581 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/12(水) 23:58:58.71 ID:UiEp/yE0
「ま、試し撃ちになるしいいわね」

少女が小さく笑い、彼から15m程のところで立ち止まった。
そしてその丸太のような金属の塊を軽々と掲げ、先を彼に向けた。

その金属の先端には直径約1cm程の穴。

『……』

誰でもわかる。
あれはきっと銃のような武器だ と。

彼は瞬時に地面を蹴り、射線から逃れる為に真横に飛ぶ。
人間離れした脚力による高速の移動。
それは常人には捕えきれない速度。

常人にはだ。

だが相手は、彼よりも遥かに強大な力を持つゴートリングや、ブリッツを倒した経験がある少女だ。
残念ながら、彼のとった回避行動は無意味だった。


「ごめんね。でもアンタさ、人間殺し捲くったんでしょ?」


大気が切り裂く音。路地裏が青白い光で照らされる。
金属の『丸太』が迸る電気で覆われる。

「自業自得よ。ツケは払ってもらうから」

『―――なッ』

その異変に気付いた時にはもう遅かった。
というか、この少女に出会ってしまった時点で彼の命運は尽きていた。


「バイバイ」


次の瞬間、その金属の丸太の先端から、目を覆ってしまいそうになる位の青白い光が噴出した。

術式で極限まで強化された12.7mm弾が、この少女の能力でブーストされ音速の五倍以上の速さで放たれる。
プラズマを纏った全てを貫く破魔の光の槍が彼に向かった。

衝撃波で路地裏の壁・地面が一瞬で砕かれ捲れる。

その銃弾は彼の体を『貫通』しなかった。

直撃と同時に、弾頭が『貫ききる前』に彼の体は蒸発したのだから。

582 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 00:02:54.75 ID:.DMD5uc0
放たれた弾頭はそのまま斜めに天を貫いて突き進んでいった。
そして3キロ程飛んで行った所で爆発した。

御坂「………」

長さ10cmの巨大な薬莢が地面に落ちる音が響く。

御坂「……ほひゃああああ……」
御坂は目の前に広がる惨状を見て思わずマヌケな声を漏らしてしまった。

崩れている両脇のビルの壁。大きく抉られている地面。
ジリジリと音を立てて、淡く赤く光るガラス化した地面。

路地裏は一瞬で無残な姿に変わった。

御坂「……なによこれ……すごい…すごいけど……さすがに強すぎ……かな?」
御坂は手に持っている『大砲』に目を落とした。


今の一撃の破壊を見てさすがの御坂も少し尻込みしてしまった。

これを渡された時、トリッシュがダンテに怒った理由がわかるような気がする。

ちなみに弾頭が3キロ程で爆発したのはレディの術式の為だ。
最高速6000m / sで放たれる『矢』だ。

打ちっぱなしにしてれば大変な事になるのだ。

ダンテは最大出力にすれば地平線まで届くと行っていたが、
さすがの御坂でもそんな長距離の照準はできないので、そこまでの性能があっても意味が無い。

そこでトリッシュがレディにこの弾頭の自爆機能をつけさせたという訳だ。

御坂「(……使いにくい……)」

583 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 00:06:54.82 ID:.DMD5uc0
上条「御坂ッ!!!!」

上条が御坂の真後ろへ上から飛び降りてきた。
着地の衝撃でアスファルトが割れる。
ビルからビルへ跳んでここまで来たのだろう。

御坂「あ……お、終わったわよ!!!」

上条「うぉい!!!どっからどうみてもやりすぎじゃねえか!!コレ!!」
上条がすぐさまこの惨状に突っ込みを入れた。

御坂「だ、だって……こんなに『コレ』が強いなんて思わなかったんだもん!!一発しか撃ってないのに…」

御坂「それにアンタ達みたいに相手の強さなんかわかんないし……」

御坂は人間だ。
上条や、ダンテ達のように悪魔の感覚で相手の力量をおおまかに知ることは出来ない。
レディのように種類や力関係を理解している訳ではない。

御坂にしてみれば、実際に戦うまで相手の力量が全然わからないのだ。

上条「……あ〜…………まあ、最初だし…しょうがねえよな……」
上条が頭を掻きながら、少し申し訳無さそうに答えた。

御坂「え、あ、い、いや!!!別にいいわよ!あたs」

上条「!!!!」
その時上条が血相を変えて顔を上げた。

御坂「―――」
その理由はすぐに御坂にもわかった。

サイレンの音が猛烈な勢いで近付いてくる。
これだけの大騒ぎだ。
当然、誰かが通報したのだろう。

上条「に、逃げんぞ!!!!」

御坂「わひゃ!!!!ちょ、ちょちょちょちょちょっと!!!!」
上条が御坂を抱き上げ、真上へ一気に跳躍した。


584 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/13(木) 00:09:02.68 ID:o9SU1D2o
うおおおおおおおおおおおおおおおおおお
585 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 00:11:58.52 ID:.DMD5uc0
―――

一方その頃。リスボン。朝。

クレーンの上にダンテとトリッシュはいた。
ダンテは右手でワインボトルを抱きながら小さい寝息を立てていた。

左手は大きく放り出され、クレーンの鉄骨からはみ出してブラブラと揺れている。

その横にトリッシュが座っていた。
ダンテの左手と同じくトリッシュの足も地上50mの高さで揺れていた。

トリッシュ「……」

そっとダンテの方に手を伸ばす。
その先、目的はワインボトル。

トリッシュ「……」
ボトルの先の部分を掴み、引き抜こうとするが案の定抜けない。

だがトリッシュはそんな事は予想済みだ。

トリッシュはボトルを掴んだまま軽く電気を放った。
その電気がダンテの右手に伝わり、バチンっと勢い良く手のひらが開いた。

その隙にトリッシュは素早くワインボトルを引き抜く。

ダンテは常人なら心停止してもおかしくない電気を浴びても尚、相変わらず寝息を立ていた。
タフすぎるのも考え物だ。

トリッシュ「甘いのよ」
トリッシュは親指で弾くようにコルクを飛ばし、ボトルに口をつけ流し込んだ。

トリッシュ「あ」

三飲みしたところで気付く。
弾いたコルクはそのまま下に落ちていった事に。

降りて探して拾うのは面倒くさい。

トリッシュ「……しょうがないわね…全部飲まなきゃね。私が」

586 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 00:16:37.82 ID:.DMD5uc0
ダンテからワインを奪って15分後。
ボトルは空になっていた。

トリッシュ「……」
トリッシュは空になったボトルを軽く振りながら、港を眺めていた。

トリッシュ「……あ」

水平線の彼方に船。
昨日から停泊しているのと同型の貨物船だ。

トリッシュ「来たわよ」

トリッシュが空になったボトルでダンテの頭を強めに突く。
だがダンテは起きる気配が無い。

トリッシュ「来たってば」
徐々に力を強めて突く、いや、半ば叩いているのだが、それでもダンテは起きない。

トリッシュ「起きなさい」

トリッシュはダンテの頭に思いっきりボトルを振り下ろした。
気持ち良いくらいにボトルが豪快に砕け散った。

ダンテ「……いってぇ」
ダンテがうっすらと目を開け呟いた。

トリッシュ「ほら来たわよ。二隻目」

その言葉を聞いてダンテが跳ね起き、

ダンテ「ハッハ〜♪やっとか!!!」
勢い良く立ち上がり、両手を組んで伸ばして骨を鳴らす。

587 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 00:21:22.61 ID:.DMD5uc0
トリッシュ「あそこ」
トリッシュがこちらに進んでくる二隻目の貨物船を指差した。

ダンテ「やっちまっても良いんだな?!」

トリッシュ「ええ。程ほどにね(ワインの事忘れてるみたいね)」

ダンテ「OK!!!」

ダンテが腰を落とし屈む。

トリッシュ「いい?あんまり―――」


ダンテ「It’s SHOW TIME!!!!!!!Yeaaahuuuuha!!!!!」


そしてトリッシュの話を最後まで聞かずに思いっきり跳躍した。
クレーンの鉄骨が大きくひしゃげ、ダンテの姿が一瞬で消えた。

トリッシュ「……」

ダンテであろう、赤い『砲弾』が沖の貨物船へ真っ直ぐに放物線を描いて飛んで行った。

トリッシュ「……やっぱり一隻は沈むわね」

トリッシュは大きく揺れ今にも倒壊しそうなクレーンの上で呟いた。

トリッシュ「……」
停泊しているもう一方の貨物船を見る。

トリッシュ「……向こうは私がやるかしらね」
トリッシュがやれば沈む程の不必要な破壊はまず無い。

これも人間の財産を守る為だ。
ダンテはグチグチ言うかもしれないが、ピザでもあげてればどうせすぐに機嫌が直る。

人の言う事を守らないダンテが悪い。
一隻沈ませたダンテに そら見たことか と突っ込めば強くは出れないだろう。

トリッシュは立ち上がり腰から二丁の拳銃、ルーチェ&オンブラを引き抜いた。

トリッシュ「さ、私もたまには運動しなきゃね」

そして軽く跳躍しクレーンから飛び降りると、もう一隻の方へと向かっていった。

588 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 00:27:00.67 ID:.DMD5uc0
―――

ロシア、とある内陸部の巨大な地下の円形ホール。

そのだだっ広いホールの中央に大きな机と椅子。
フィアンマはその椅子に座っていた。

そして彼の向かい、机の前には葉巻を咥えたアリウス。

フィアンマ「コレの調整は終わった」
フィアンマの右手に持つダイヤル式の南京錠のような禁書目録の遠隔制御霊装。

アリウス「ふむ……」

フィアンマ「それとだ、『四元徳』の内二人が魔界からの脱出に成功した」

アリウス「誰と誰だ?」

フィアンマ「フォルティトゥードとテンパランチア」

アリウス「ほう……」

フィアンマ「だが残りの二人は間に合うかどうかわからない。サピエンチアに至っては絶望的だろう」

アリウス「ふむ……で、その二人は乗り気なのか?」

フィアンマ「もちろん。俺様を全面的に支援してくれる」

『四元徳』。

天界において最上位に位置する四人。
肩書きは一応『天使』だが、それは表現の一つに過ぎない。
『主神ジュベレウス』の僕である『天使』という意味であり、実際は『神』と称されるべきレベルの強大な存在だ。

事実、『四元徳』率いるジュベレウス派が天界における最大派閥である。

忠誠に魔女狩りを扇動し、更に500年前に直接手を下して魔女の本拠地を壊滅させたのも彼らだ。

つい最近、その魔女狩りの『報復』を受けたが。


590 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 00:35:46.65 ID:.DMD5uc0
>>588 訂正 下から三行目の最初の「忠誠に魔女狩り〜」→「中世に魔女狩り〜」

数ヶ月前に、『プルガトリオ』と呼ばれる狭間の世界で勃発した、ジュベレウスの復活を賭けた魔女との戦い。
それにより『四元徳』は打ち倒され、魔界の煉獄に堕とされた。

魔女に殺された天界の者は皆、魔界に堕ち永遠に『殺され続ける』。
想像を絶する苦痛だ。

だが四元徳の内二人はその圧倒的な力をもって、何とかその煉獄から抜け出した。
『神』と称されてもおかしくは無い彼らだからこそできる芸当だろう。
逆に言えば、彼らでもギリギリであったという事だが。

事実、他の二名は魔女との戦闘による傷が更に深く、その内の一人はもう絶望的だ。

アリウス「動けるのか?まだ力も完全には復活していないだろう?」

フィアンマ「なぁに、どうせ人間が大量に死ぬ。それで『補充』は充分だろう。すぐに回復する」

アリウス「……『セフィロトの樹』か」
アリウスが嫌悪感を露にして呟いた。

『セフィロトの樹』。

天界の者達と人間達の魂の繋がり。
その実体は天界の神々が作った『エネルギーのパイプライン』であり、
人間の魂を繋ぎ留め管理する制御システムだ。

死した人間の魂は天界に運ばれる。
『天国へ行く』と言えば聞こえは良いだろう。

だが実際はそれとは程遠い。
運ばれた魂は天界の者達に吸収され力の糧と成る。

運が良ければ下っ端の天使として転生できる場合もあるが、
そうなったとしてもどうせ前線に出され捨て駒のように扱われる。

人間界は天界にとってのエネルギー源であるのだ。
いわば『油田』、『畑』のようなものだ。

人間達の魂は管理され『養殖』されているのである。
頭数は厳格に定められ、その生死も操作されている。

591 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 00:39:35.62 ID:.DMD5uc0
本来、魂とはその世界の中を輪廻する。
魔界も天界もそうだ。

死した者は長き時を経て復活するか、
世界の礎である力の源へ帰り、新たに生まれてくる者達の糧となるかである。

だが人間達の魂は違う。

力の源、『人間界の本来の天界』は封印されている為、そこに帰ることはできない。
そして同じ理由で力自体も非常に矮小な為復活もできない。

その無防備な魂を、天界が作り上げた『セフィロトの樹』というシステムが拾う。

人間達の魂はそのパイプを通り、世界の外、天界に吸い出され奪われる。
これは人間界の魂が枯渇するまで半永久的に続くだろう。

(ちなみに『御使堕し』という魔術はこの魂の流れを強引に逆流させるものだ。
人間界の魂の頭数は厳格に管理されている為、予定外の魂の流れは当然エラーを引き起こす)


だが全ての人間がこのシステムの制御下にある訳ではない。
一部はこの『セフィロトの樹』とは繋がっていない。

天界以外の強い力に染まった魂はその制御下に置く事ができないのだ。

フォルトゥナや各地のデビルハンター等と魔女達、


そして人間界の本来の力を行使する者達―――『能力者』の極一部。

592 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 00:43:16.79 ID:.DMD5uc0
天界の手により『人間界の本来の天界』は封印されたが、それは完璧ではなかった。

人間界の本来の力は微弱に漏れ出し、極少数ながらも生まれながらに力を宿した者達が現れてくる。
『原石』と呼ばれている者達だ。

これは天界にとって大いなる脅威だ。
流出する力の量が増えれば封印が砕け、全てのシステムが瓦解する恐れがある。

魂を直接制御できない者は、力をもって強引に押さえつけるしかない。

天界は制御下にある人間達に天界の力を、『魔術』という武器を与え、この能力者達へ対抗させた。
原石と魔術師達の数の差は圧倒的であり、数千年の間、『魔術サイド』の絶対的優位は揺るがなかった。

だがこの数十年の内に、とある人間の手によって人工の能力者が爆発的に増えつつある。
大半はまだ一応形だけ制御下にあるものの、生死を直接操作する事が出来ない状況にまでなりつつある。

500年前に魔女の本拠地を一気に殲滅した時のように、直接軍勢を降臨させなければならない可能性がある。

だが人間界と天界は『物理的』には直接繋がっていない。
(魔女との戦争はプルガトリオと呼ばれる『狭間の空間』で行われた)

学園都市を直接破壊する為には、物理的に二つの世界を繋げなければならない。
そしてその問題はジュベレウスの復活によって簡単に解決するはずだった。

はずだったのだ。

ジュベレウス程の存在なら一瞬でその穴を繋げる事ができるが、結局は魔女の手によって失敗してしまった。


だが全ての手が尽きたわけではない。
穴を直接繋げる方法は他にもある。

それに悪魔達の人間界への侵入もかなり激化している。
2000年前の戦争前夜とまるで同じだ。

天界の正念場は今だ。
人間界から『魔界の力』と能力者を一掃する。

今を逃せば後はもう立て直しようが無い。
ジュベレウスを失い、続けて人間界をも失ってしまったら天界は一気にその力を失墜させてしまうだろう。

それを回避する為に天界はフィアンマを『支援』するのだ。

そしてフィアンマもそれを『利用』する。

593 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 00:55:04.44 ID:.DMD5uc0
フィアンマ「彼らは乗り気だ。むしろ喜んでいたよ。この『チャンス』に」

アリウス「つまりまんまと貴様の罠に嵌った訳か」

フィアンマ「ああ、向こうは俺様を信じきっている。今の天界には疑問を抱く余裕すらないだろうしな」

フィアンマ「『穴』が開いたらすぐにでも現れるだろうよ」


アリウスの策謀により、人間界に悪魔が溢れ大規模な戦争となる。

そこに直接開いた穴から降臨する天界の軍勢。

そしてこの戦争は天界と魔界の全面衝突に一気に発展する。

確かに魔界の力は圧倒的だ。
だが今の魔界は魔帝の完全な死によって大きく混乱し、内戦も激化している。
外に注意を払う余裕など今の魔界には無い。

魔界にしてみれば人間界などちっぽけな存在だ。
それよりも、魔界の諸王達は魔界内での覇権を優先するだろう。

天界もジュベレウスという旗印を失い混乱しつつあったが、魔界よりは纏まりがある。
彼らはこの戦争を好機と見て立ち上がるだろう。

魔界が内側に集中している間に一気に勝負をかけるはずだ。
己の『所有物』である人間界を守る為に『能力者』を、そして悪魔を一掃する為に。


それにスパーダの一族にも怯えることはないと天界は睨んでいる。
裏の目的はどうあれ、天界には『人間を守る』という大儀があるのだ。

それに理由は定かではないが、かのスパーダ自身がこの天界の制御機構を黙認した。

天界の者達は、少なくともスパーダの一族が刃を向けてくることは無いと思っているのだ。
もしかして味方として戦ってくれるかもしれない とも思っているだろう。


595 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 01:01:32.66 ID:.DMD5uc0
アリウス「マヌケな奴等だ」

フィアンマ「そう言うな。俺様はこれでも表向きは敬虔な聖職者だ。その絶大な信頼を裏切るのだよ」

フィアンマ「あの正直者達に気付けと言うのは酷だろう」

アリウス「お前は相変わらず醜い。醜いな」

フィアンマ「言ってくれるね。だがお前も協力する振りをして結局は裏切るだろう?魔界を」

アリウス「それは向こうでは当たり前の事だ。裏切りも勝つ為の手段の一つにしか過ぎん」

アリウス「俺の行動は向こうのルールに沿っている」

フィアンマ「ふん……」

その戦争がアリウスとフィアンマにとって隠れ蓑となる。

フィアンマは天界に、アリウスは魔界に表向きだけ協力する。
そして出し抜く。

二人ともその隙に、強大な力を手に入れるのだ。

『哀れな』天界はフィアンマを信頼し、軍と『穴』を開く為の『鍵』を与え、そして『封印』を掛け直す権限を与える。
天界の動きを見た魔界は、アリウスの覇王復活を支援するはずだ。

そして二人ともその二つの強大な力をみすみす返すつもりは無い。

魔界と天界がそれに気付いた頃にはもう遅いだろう。

その頃には、

アリウスは覇王と『魔帝』の力を手に入れ、魔界の統一王に相応しい存在となっている。

フィアンマは『人間界の真の力』と天界の力を全て取り込み手中に収め、天界と人間界を統べる『神上』となっている。


そこまでいった二人が手を結べば、スパーダの一族も魔女達ももう恐れることはない。


フィアンマ「ともかくだ、最高のショーになりそうだな」

アリウス「同感だ」


596 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 01:05:22.85 ID:.DMD5uc0
―――

学園都市。現地時間午後二時。
第七学区、上条宅。

禁書「〜まだかなまだかな♪」
上機嫌なインデックスがベッドに腰掛けながら、落ち着きなく足をパタつかせている。

一方「……」
少し離れた所で、壁に寄りかかる形で一方通行が座っていた。

上条が帰って来るのは夜だ。
8時から10時の間辺りと上条は言っていた。

それまでは黄泉川のマンションにいる予定だったのだが、
インデックスが待ちきれずに急かした為、こうしてもう上条宅にいるわけだ。

一方「……」

一方通行にとってはどこで待つかなんて事はどうでもいい。
とにかくこのシスターをできるだけ早く上条に引き渡したいのだ。

彼は今日この後、大事な『私用』がある。

シスターの引き渡しが完了次第、土御門達と合流する。


そして理事会の一人である塩岸を襲撃する予定だ。

597 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 01:08:24.46 ID:.DMD5uc0
元々第四位と土御門達でやる予定だったのだが、
彼も動けるのなら加わった方が良いのだ。

一方「……」
テレビの横に置いてある時計に目を向ける。

三分おきぐらいに見ている。
当然、時間はいつも通り平常運行だ。

三分ごとに見れば、三分しか進んでいないのは当然だ。

一方「……チッ…」

早くして欲しいのだ。
時間もベクトル操作できりゃァなァ と彼は思った。

禁書「あくせられーた?」
インデックスが首を傾げながら彼の名を呼んだ。

一方「あァ?」

禁書「……なんで怒ってるのかな?」

一方「……」
少し顔に出てしまっていたようだ。
それに打ち止めもそうだが、こういう純粋な少女は人の感情を読む事にかなり長けているらしい。

一方「怒ってねェよ」

禁書「ああ!わかったんだよ!!私と離れるのがいやなんでしょ!?」

禁書「だよね!こんな可愛いシスターさんがいなくなったら寂しいもんね!!」
上機嫌なインデックスが天真爛漫な笑みを一方通行に向けた。

一方「ンなわけねェだろクソガキ」

598 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 01:10:39.21 ID:.DMD5uc0
禁書「むぅ!あくせられーたは素直じゃないんだよ!!」

一方「……」
絶対に表には出さないが、確かにインデックスがいなくなる事で少し残念な事がある。

インデックスを見送った打ち止めは少し寂しそうだった。
二人は気が合うようで、いつも一緒に騒いでいた。

芳川もだ。
手塩にかけた生徒が卒業するのを見ているような顔をしていた。


一方「……なァ。一つ頼みがあンだが」

禁書「?」


一方「たまにで良いからよォ。今後もラストオーダーに付き合ってくれや。黄泉川ンとこにも顔をだしてよォ」


禁書「何当然な事言ってるのかな!?皆で遊ぶんだよ!とうまも一緒によみかわの家でご飯食べるんだよ!!!」

一方「はッ……そィつはありがてェ」

彼の頭の中に浮かんだ、黄泉川家の団欒の光景。

だがそこには一方通行自身はいない。


彼はいない。
いてはならないのだ。

599 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/13(木) 01:15:48.01 ID:.DMD5uc0
今日の夜から、彼は絶対に引き返せない道へと進む。
死と血にまみれた殺戮への道。

端から見れば大量虐殺を行うテロリストだ。

彼の手は今以上に血に塗れるだろう。
今まで溜め込んできていた、学園都市に対する怒りが全て噴出すだろう。

確かにこれは自由への戦いだ。だが同時に報復戦でもある。

自分でも分かる。

己は歓喜し、笑いながら学園都市側の者達を引き裂いていくだろう。
彼は己の憤怒を全て受け入れ、そして全てを清算するべく吐き出す。

その大量の血に沈んでいく。
今よりも更に深くへ、深い闇へ堕ちこんで行く。
一切光の差さない、一片の光も浴びる資格が無い奈落の底へと。

全てを背負い、全てを受け入れて。

そんな血に濡れた手で。血を浴びた体で。血を受け入れた瞳で。

再びこの少女達の住まう光の世界に上がれるわけが無い。
そして上がるつもりも無い。


一方「……」

禁書「もちろんあなたも一緒だよ!!!皆一緒に遊ぶんだよ!!!」
インデックスの純真無垢な笑顔。


彼には眩しすぎた。
一方通行は目を細めた。


一方「頼んだぜ」

そして一言。
自分も一緒という言葉には答えず、願いの言葉を。


616 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:00:26.46 ID:0mf4Q9Q0
―――


リスボンの港に向かう、全長300メートルはあろう大きな貨物船。
甲板には大量のコンテナが規則正しく積み上げられている。

そのコンテナの『タイル』の上に一発の赤い砲弾が着弾する。

直撃したコンテナは紙箱のようにあっさりと潰れ、
とてつもない衝撃がコンテナの『タイル』全体に伝わり、拘束具が弾け、
数トンはあろうかという大量のコンテナがポップコーンが弾けるかのように飛び散り、海面に落ちていく。

艦橋の船員達は突然の事に皆驚き、喚き立てる。

そして彼らは見た。

無残に倒壊したコンテナ群の中央に立つ、銀髪の赤いコートを羽織った男。
背中には不気味に光る銀色の大剣。

全身を赤い光の靄が覆っていた。
その男の出現と同時に巨大な貨物船全域が、重く圧し掛かるような異様な空気に覆われた。

「死にたくねえなら降りな!!!!!!」

突如男が叫ぶ。
船員達の脳内に直接響いてくるような、聞く者にとって抗いようのない圧倒的な恐怖を伴った声。
その声は船内にいる者にまで伝わる。

そして男は左手を天に掲げた。
その手には黒い拳銃。

次の瞬間、大音響と共にその拳銃から赤い光の矢が放たれ天を貫いた。

「おっと、救命胴衣とボートは忘れんなよ」

今度は小さく呟く。
だがそれも船員達の脳へ直接響いた。

それと同時に堰を切ったかのように、船に乗っている人間達は我先に走った。

船員達は無我夢中で救命胴衣を着、そしてゴム製のボートを海に投げ込み続けて飛び込んでいった。

皆、何が起こったのかという事を考えている余裕がなかった。
とにかくこの場から、この圧倒的な恐怖から逃げ出したかっただけだった。

618 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:05:36.63 ID:0mf4Q9Q0
ダンテ「Humm.......」

ダンテはしばらくその場で人間達が下船しきるのを待っていた。

ダンテ「……」

三分後、最後の一人であろう『気配』が下船した。

ダンテ「……」

そして足の下から別の気配が伝わってきた。
それもかなりの数。

ダンテ「……起きたか」

ダンテの存在を感知し、船倉の人造悪魔達が動き出したようだ。

ダンテは両手にエボニー&アイボリーを持ち、
足元の無残にブッ潰れたコンテナに銃口を向けた。

ダンテ「OK、お邪魔すんぜ」

そして体を駒のように回しながら引き金を凄まじい速度で引いた。
円を描くかのように無数の銃痕がダンテを中心として穿たれていく。

一回転し、

ダンテ「Ha!!!!」

軽く床を蹴った。
次の瞬間、銃痕の円に沿って床が抜け落ちる。
綺麗に円形に切り出された金属の円盤はダンテを乗せたまま真下に落ちていく。

その下階の床も全て撃ち抜かれており、連続して抜け落ちていく。

619 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:07:13.92 ID:0mf4Q9Q0
天井と床だった金属の円盤が、パンケーキのように何重にも積み重なって、
轟音を響かせながら船倉の床に落ちた。

ダンテ「Humm……」
そのパンケーキの上に立つダンテ。

船倉の中は一応電気も点いているがかなり暗い。
天井に空いた穴から光が差し込み、ダンテの周りだけを明るく照らしている。

小さなステージに立っているようだ。

船倉の中は、ウロボロス社のマークが入った無骨なコンテナが積み上げられており、
その奥にはシートが被せられている何か大きな物が置いてあった。
一目でわかる。

あのシートの下にあるのは戦車だ。

ダンテ「……へぇ」

静かだ。

物音は軋む船体の音のみ。
他には何も無い。

だが悪魔の気配は充満している。
こちらの様子を静かに見ているのだろう。

620 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:11:20.02 ID:0mf4Q9Q0
ダンテ「Hey!!!!! Good Morning Guys!!!!!」

ダンテが両手の銃をクルクルと回しながら叫んだ。
薄暗い船倉にその声が反響し響く。

だが答えは返ってこない。
悪魔達はまだ彼を静かに見ているようだ。

ダンテ「挨拶もねぇとはな。礼儀がなってねえ」

無視されたダンテを小ばかにするかのように、
パンケーキ状のステージの淵から海水がピューっと小さく噴出した。

船底まで貫通しないように力を加減したが、どうやらまだ強すぎたらしい。


ダンテ「ノリわりぃぜったくよ。じゃあ―――」

ダンテが銃を腰に差し込み、そして両手を広げた。

ダンテ「―――無理やりでも踊ってもらおうか」



ダンテ「ネヴァン!!!!!!!」



次の瞬間、ダンテの右手に紫色のギターが出現する。


ダンテ「Let's Rock!!!!!!!!!!!!! Yeeeeeeeeeaaaaaaaaaaaaaaaaahaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!」


『ステージ』もある。
『客』も大勢いる(ノリが悪いが)。

狂気のライブを開演させるにはもってこいだ。


621 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:16:12.28 ID:0mf4Q9Q0
―――

ローマ。
とある低めのビルの屋上。

ベヨネッタはキャンディを咥えながら、遠くに見えるサンピエトロ大聖堂を眺めていた。

足元には『イギリス清教』の修道服。

ベヨネッタ「……臭っさいわねココは」

ポツリと不機嫌そうに呟く。
人間界において、最も天界の力が充満しているこの街。

ベヨネッタにとってかなり胸糞が悪い。
暴れて暴れまくって掃除して更地にしたい気分だ。

その時、真後ろから足音がした。

ベヨネッタ「……」

振り向かなくても気配でわかる。
良く見知った『仲間』だ。


「着ないのか?もうすぐなんだろ?さっさと着な」


背後の者がベヨネッタの背中へ向けて声を放つ。
いかにも気が強そうな、締りのあるキレの良い女の声。

ベヨネッタ「その時になったら着るわよ」


「ヘマするとまたバージルに嫌われるぞ」


ベヨネッタ「じゃあアンタがこの役やる?ジャンヌ」

623 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:22:42.44 ID:0mf4Q9Q0
ジャンヌ「良いのか?あの天使も私がもらうぞ?」

ジャンヌと呼ばれた女性が答える。
短い銀髪、濃い化粧、そしてベヨネッタと同じようなピチピチの赤いボディスーツ。
袖には狐の尻尾のような白い飾りが下がっている。

そしてこれまたベヨネッタと同じくヒールのかかとに取り付けられている巨大な拳銃。

ベヨネッタの唯一無比の親友であり、生き残った魔女の片割れでもある。
お互いとも、相手の為なら命を投げ出しても構わないという程の仲だ。

ベヨネッタ「ん〜んやっぱり私がやる。あの天使は私の獲物」


ジャンヌ「チッ。セレッサ、次はアンタが裏方やりな」

ジャンヌ「次は私がメインディッシュを貰う」

『セレッサ』とはベヨネッタの本名だ。
彼女だけはこう呼んでいる。


ベヨネッタ「わかったってば。でも今の『コレ』の裏方も楽しいと思うけど」
ベヨネッタがジャンヌの方へ振り向き、左手のひらを上に向け軽くあげた。

ジャンヌから見て、ちょうどベヨネッタの手にサンピエトロ大聖堂が乗っているようだ。


ベヨネッタ「イギリスが『悪魔』送ってくるかも。弾道ミサイルに乗っけて」

624 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:27:52.86 ID:0mf4Q9Q0
ジャンヌ「強いのか?」

ベヨネッタ「それなりに」

ジャンヌ「……」
強いのならば文句は無い。
暇つぶしにもなるし、得る物もあるだろう。

気に入ったら力でねじ伏せて強引に使い魔にするのも良い。
どうしても従わないのならば力を剥ぎ取り吸収してしまうのも一つの手だ。

ベヨネッタ「面白いこと教えてあげる。その来るかもしれない悪魔、こう名乗ってるみたい」

ベヨネッタ「『イノケンティウス』」

ジャンヌ「……はッ」
ジャンヌが小さく笑う。

イノケンティウス。『魔女狩りの王』。
その名を名乗っているとは。

ベヨネッタ「どう?」


ベヨネッタ「ムカつかない?」


ジャンヌ「はははッそいつはイイ―――」

ジャンヌの考えが変わった。
使い魔にする気も、吸収する気も無くなった。


ジャンヌ「その名を冠する資格があるかどうか―――」


ジャンヌ「―――試してやんよ」


625 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:32:36.79 ID:0mf4Q9Q0
―――


ロシア、とある内陸部の巨大な地下の円形ホール。

そのだだっ広いホールの中央に大きな机と椅子。
フィアンマはその椅子に座っていた。

フィアンマ「……」

重量感のある禁書目録の遠隔制御霊装を右手で弄びながら思索に耽る。

フィアンマ「……」
この遠隔制御霊装。

禁書目録の制御システム『自動書記』の操作端末であり、これを使うことによって10万3千冊の魔導書の情報を引き出したり、
それを元にして新たな術式を創り出すことも出来る。
(また、『首輪』と呼ばれる防衛システムを起動することが出来、あの少女を『兵器』として使うこともできる)

今のフィアンマには、その莫大な情報と術式を新たに創り出す機能が必要なのだ。

フィアンマには『聖なる右』という絶大な力がある。

『聖なる右』とは『手』だ。

『行使する手』。
確かにコレだけでも力は絶大だ。
その力は圧倒的であり、一振りで地形を変えてしまう程だ。

だが制約もある。

かなり不安定なのだ。
数回使ってしまえば、しばらくはまた安定するまで使えなくなってしまう。

一撃の破壊力は相当なものだが、これから始まる規格外の戦いを考えればかなり心もとない。
神クラスの者達とも合間見える可能性がある以上、まだまだ力不足だ。

このままだと目的を達する前に斃れてしまう事だって在り得るのだ。

626 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:35:42.18 ID:0mf4Q9Q0
だからフィアンマにはまず禁書目録が必要なのだ。

禁書目録を手に入れ、『頭』の一時的な代替となる術式を創らせて『聖なる右』を安定させる。
そうすれば『聖なる右』単体でもそれなりの力を連続して使うことが出来る。

それでとりあえずは大丈夫だ。

とりあえずはだ。

元々この『手』は単体で使えるものではない。
禁書目録を使って行う代替の策はあくまでも一時的な物だ。

『手』を動かし、制御して本来の力を発揮するには『頭』が必要だ。
そしてその『頭』と『手』を繋ぎ一つにできる『器』も必要だ。

今のフィアンマには、その『頭』と『器』が無い。

だからこそ『頭』と『器』を手に入れる。
それがフィアンマの一番の目的でもある。

『頭』はとある少年が持っている。
だが『器』は、この力達が切り離された時に砕かれた為、別の物で代替しなければならない。

そこで当初フィアンマが目をつけていたのは、『御使堕し』の際に天界の魂を一時的に宿した、ロシア成教に所属する少女の体だ。
完璧とは言えないが、魂の『器』としての強度は一応最低ラインを越えている。

その少女を手に入れる為にロシア成教に根回しをしたといっても過言ではない。

だが現状を見ると、どうやらそんな必要は無かったようだ。

『頭』を持っている少年がここ二ヵ月半の間に、更に頑丈な『器』も手に入れてしまったのだから。

627 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:38:49.75 ID:0mf4Q9Q0
今、『頭』と『器』は一つになっている。

悪魔サイドとの関わりにより、一時はフィアンマでさえ頭を悩ませたが、どうやらそれは杞憂に過ぎなかったようだ。
結果的にフィアンマにとってかなり好ましい事になった。
『頭』と『器』を調整し結合させる手間も省けた。

かなり行程が短縮できる。

後はこちらの『手』を、禁書目録で創った術式で結合させれば良いだけだ。


更に魔帝の『創造』という素晴らしいオマケ付だ。


そのオマケがあるからこそ、アリウスも協力してくれる。

いくらフィアンマでも、アリウスの協力無くして『魔界と天界の全面衝突』という巨大な隠れ蓑を作る事はできないし、
それが無ければ天界の助力も得られなかっただろう。

『創造』という報酬を約束することでアリウスの協力を手に入れることが出来たのだ。

まあ、渡す気はさらさら無いが。
そんな素晴らしい力を手に入れておきながら はいどうぞ と渡す程このフィアンマはおめでたくはない。

アリウスもそれはわかっているだろう。
だが『創造』を引き出すにはフィアンマの目的が成就しなければならない。

だからアリウスはとりあえず協力しているのだ。

フィアンマもわかっている。
その内、機会を見てアリウスは打って出るだろう。
力ずくで奪う為に。

628 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:42:17.66 ID:0mf4Q9Q0
フィアンマ「……それにしてもな……面白い」
フィアンマは一人呟いき、右手にある遠隔制御霊装を見つめる。


これを調整していた時に、面白い事実が明らかになった。


禁書目録は元々かなりの魔力を有している様だが、それは全て『自動書記』の維持に使われている。
あの少女自身の意志では魔術を行使できないのだ。

なにしろ10万3千冊の魔導書、更にはフォルトゥナの魔剣生成・人造悪魔・界の封印式等の、
規格外の『魔界魔術』まで記録しているのだ。

『自動書記』はこれを守るという役割もあるが、
また一方でこの少女自身がその力を独断で行使するのを防いでいる訳である。

―――と、ここまではフィアンマも知っていたし、業界内でトップ地位にいる者達の間では常識とされている。

だがこの遠隔制御霊装を詳しく調べてみた結果、とんでもない事が、
それこそこのフィアンマすら驚愕する程の事実が判明した。

自動書記は外に対する防御と、彼女自身への拘束具の役割もしているが、
その外と内に振り分ける力の量が余りにも偏っていたのだ。

実に、力の9割が内側への拘束に使われている。
つまり自動書記と『首輪』が行使する伝説級の魔術、『聖ジョージの聖域』や『竜王の殺息』の源は残りのたった1割の力だ。


あまりにもおかしい。
普通は逆であるはずだ。
いかに元から有する魔力が多いとはいえ、少なくとも『普通の人間』なはず。

だが実際に目の前の証拠は揺ぎ無い事実を告げている。

そしてそこから導き出される答えは?

これ程の力をかけて拘束する必要があるのならば、
その拘束されている『モノ』はそれこそ大悪魔や神クラスの『何か』だ。

つまりあの少女、インデックスの中には、記録してある魔導書以外にとんでもない代物が隠されているという訳である。

629 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:44:43.74 ID:0mf4Q9Q0
見つけた物は更にもう一つある。

遠隔制御霊装に篭められている術式。
その言語はラテン語から古代ギリシャ語、ルーン文字等かなりの種類が複雑に組み合わされている。

この遠隔制御霊装の根幹となる術式を作った者は正に天才だろう。
これだけでも、魔術に携わるフィアンマにとってかなり興味深いものだった。

だがそれすらもどうでも良くなってしまうようなモノがこの術式の核の部分で見つかった。
この術式の器であり、核である根幹に使われている言語。


それは『エノク語』だった。


『エノク語』とは主に天界の者達や、魔界の一部の者が使う言語だ。

文字そのものが『生きて』おり、これで祝福の言葉を発せば本当に祝福され、
呪いの言葉を発せば本当に呪いがかかってしまう、運命を捻じ曲げる力を持っている と称されている。

そして人間には扱えないと言われている。
『エノク語』で魔術を行使すれば、効力を出す以前に術者の魂が耐え切れずに崩壊してしまうという。

例えると、持った時点で死に至る銃だ。
弾丸を放てば圧倒的な力を発揮できるが、使用者自身が引き金を引く前に死んでしまうので意味が無いという訳だ。

その線のエキスパートであるフォルトゥナの騎士達や、最高峰のデビルハンター達でさえ敬遠しているという言語だ。

『人間には使えない』 それが魔術を行使する者達の間での常識だ。


つまりこの遠隔制御霊装、及び自動書記を作った者は一介の人間を超越しているという事である。

更に『エノク語』を使ってまで抑えこまなければいけないという事実は、
とんでもない『何か』があの少女の中にあるという事を更に裏付ける。

630 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:47:33.46 ID:0mf4Q9Q0
フィアンマ「……」

フィアンマの思索は更に深く進んでいく。


ではこの遠隔制御霊装、及び自動書記を作ったのは誰だ?

天界の者か?

だがこの術式の組み上げ方は人間のやり方だ。

つまり、人間界で術式の作り方を学んだ何者かだ。
そしてたった一つだけ、それに該当する者達がいる。


『アンブラの魔女』達だ。


彼女達は好んでエノク語を使った。
『アンブラの魔女』達は一応人間とは呼べるものの、普通とは違う。

生まれながらにして魔界の『祝福』、十字教側から言えば『呪い』にかかっている。
例えるならば魔界版の『聖人』だ。

彼女達は寿命も無く力も絶大だ。
一部の者は神クラスにも達している。
その証拠は、四元徳やジュベレウスが魔女に敗れたという事実で充分だ。

そのレベルの者達なら、この遠隔制御霊装と自動書記を作るのは造作も無いことだろう。

フィアンマ「……魔女か」

そう、つまり魔女の手によって遠隔制御霊装と自動書記は作り出されたかもしれない とフィアンマは推測する。

631 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:49:43.49 ID:0mf4Q9Q0
魔女達の手によるもの。

イギリス清教があの少女を『禁書目録』として使い始めたのは10年程前。

だがそれはローマ正教が入手した情報の範囲内での話だ。

あの少女の出身地も親もわからない。
年齢すら確かな事は分かっていない。

『禁書目録』となる前の情報は何一つ無い。


フィアンマ「…………」

疑問。

魔女と関わりを持ったとしたら、それはいつだ?どんな関係だ?

なぜエノク語を使ってまで、内なる『何か』を拘束し封印しなければならないのか?

また、そこまでして封印しなければならない『何か』をなぜ破壊せずに残しておくのか?

『それ』は一体何なのか?

魔女達の手にすら余る代物なのか?―――

―――それとも魔女達が封印しつつも残す という決断を取ったのか?

―――まるで何者かの目から隠すかのように。


―――あの少女は『いつ』生まれた?


―――そして『何歳』なのだ?

632 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:51:34.84 ID:0mf4Q9Q0
そう考えると、これまで禁書目録について導き出していた『答え』も全てが怪しく見える。

フィアンマは己の中で、業界内では既に『答え』が出ている疑問を再度反芻し、
もう一度考え直し、この遠隔制御霊装を調べて判明した事実を基に、『別』の『答え』を導き出す。


―――なぜ魔導書を直に見て記憶しても精神が犯されないのか?

それは魂の『器』が大きいからではないか?


―――力に対する嗅覚が異常に強いのはなぜだ?


悪魔や天使が先天的に持っている『感覚』に似ていないか?


―――そしてなぜイギリス清教は記憶を消し続けていた?


生まれも親も隠し、過去を抹消する為では無いか?

つまりあの少女本来の『身分』を隠す為ではないか?



フィアンマ「………まさかな―――」

浮き彫りになった『裏』の答え。
今までの推理をもう一度確認する。

推理から導き出された答えは一つの事実を示していた。

633 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:54:39.67 ID:0mf4Q9Q0
フィアンマ「……面白い」

どうやらあの少女を直接迎えに行った方が良さそうだ。

本来はあの少女自身を手元に置かなくても、遠隔制御霊装を使えば術式を引き出せる。
フィアンマも元々はそのつもりだったが、あの少女自体にも興味が湧いたのだ。

使い様によってはかなりの武器になるかもしれないのだ。

フィアンマ「直に行ってやるか」

フィアンマはあの少女も手元に置くことにした。

今は学園都市最強の能力者、あの『境界から半歩踏み出している』少年が護衛しているという事らしいが、
フィアンマの『聖なる右』と遠隔制御霊装があればどうとでもなる。

ついでにその少年を殺しておくのも良いかもしれない。
アレイスターの最終目的は確実ではないものの大体予想がついている。

あの者の行動がこちら側の障害になるのは確実だ。
ならばその者の目的の核の一つを破壊しておくに越したことは無い。


フィアンマ「それにしても……驚いたな―――」


この推理から導き出した答え。
自分でも少し信じられない。

この推理が正しければ。

あの少女の生まれは―――。

あの少女の正体は―――。



フィアンマ「―――こんな所にもう一人いたとはな」


634 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 00:57:31.98 ID:0mf4Q9Q0
―――


リスボン沖の貨物船。船倉。

ダンテは金属板が積みあがった即席のステージの上で、ネヴァンの弦を弾く。
大音響が鳴り響き、船倉を振るわせる。

ネヴァンからは爆音のようなBGMと共に紫色の稲妻が発せられ、船倉の中をクラブのように明滅させて照らす。

ダンテ「Bless me with your gift of light」

ダンテ「Righteous cause on judgment night」

その大騒ぎを受け、ようやく人造悪魔達が動き出した。
積まれていたコンテナが爆発するかのように弾け、中から背中に小銃を括りつけた小さな猿のような悪魔達が飛び出し、
ステージの上で一心不乱にギターを奏で歌うダンテに向かって四方八方から飛び掛る。

ダンテ「Feel the sorrow the light has swallowed」

ダンテは歌いながらギターを掲げ、ネックの部分を掴んでハンマーのように大きく振るった。
ハイになりすぎたギタリストが闇雲に乱暴に振るが如く。

ダンテ「Feel the freedom like no tomorrow!!!」

その瞬間、ギターのボディが変形し巨大な刃が飛び出した。

ダンテ「Yeaaaaahh!!!!!!!!」

巨大な『鎌』となったネヴァンが、飛び掛ってた『客達』を一気に薙ぎ払った。
更にその刃から放たれた紫の稲妻が周囲を穿つ。

船倉の壁や床に穴が開き、辺りに飛び散るバラバラになった悪魔達の破片と火花が、
この狂気のライブをより一層盛り上げる。

635 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 01:00:53.51 ID:0mf4Q9Q0
人造悪魔達は今度はダンテの周りを囲む。
天井・壁にへばりつき、背中の銃をダンテに向ける。

更に船倉の奥から轟音が響いてきた。

重いキャタピラの音。
そしてコンテナを踏み潰しながら、所々が黒い甲羅で覆われた戦車が姿を現した。
船主側からと船尾側から一台ずつ向かってくる。

砲塔にある赤く輝く巨大な目がダンテを真っ直ぐ睨む。

ダンテ「Stepping forth a cure for soul's demise」

ダンテが再びネヴァンをギター型にし、歌いながら前へ踏み出しステージから跳ぶ。
それと同時に小銃型の人造悪魔達の銃口が一斉に火を噴く。

無数の銃炎が連続して明滅し、大量の銃弾が跳び上がったダンテ目がけて放たれた。
上下左右、前後ろ全ての方向から。

ダンテ「Reap the tears of the victims cries」

普通なら逃れようが無い鉛の網。
どこに移動しても、どうかわしても絶対に直撃してしまう―――。

―――普通ならばだ。

ダンテ「Yearning more to hear the suffer」

だがダンテには一発たりとも当たらない。
身を捻り、銃弾と銃弾の僅かな隙間、穴場へと瞬時にそして正確に体を移動させる。
皮膚からわずか数ミリというスレスレのところを銃弾が通過していく。

だが銃弾が接近できたのはそこまでだ。
この『数ミリ』の距離は凄まじく遠かった。

銃弾は無数に放たれているが、ただの一発もその『数ミリ』の距離を縮めることが出来ない。
なびいているコートにすら当たらない。

ダンテ「Of a demon as I put it under」

床に降り立ち、ギターを奏で歌い、ステップをキメながら『華麗』に突進する。
その周りの床に、ダンテを追って無数の銃弾がぶち当たり、大量の火花が彼の足元を彩る。

636 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 01:03:27.85 ID:0mf4Q9Q0
ダンテ「Killed before―――」

ダンテがネヴァンのネックを掴み、再び振るう。
そして今度はそのまま放り投げる。

巨大な鎌型に変形したネヴァンが稲妻を放ちながら、船倉の中を弧を描きながらブーメランのように飛び、
次から次へと人造悪魔達を切り裂き砕いていく。


ダンテ「―――a time to kill them all!!!!!!!!」


同時にダンテは突進し、小銃型の人造悪魔を鷲掴みにする。
そして腰だめに構えた。

ダンテの莫大な力を大量に流され、その人造悪魔は抵抗することすら出来ずに彼に『使われる』。

ダンテはそのままフルオートでぶっ放す。

彼の力を帯びた赤く光る銃弾が一瞬で大量にばら撒かれ、
他の人造悪魔達を穴だらけにしていく。


だが僅か一秒も経たずして、ダンテの抱えていた人造悪魔は流れ込む力に耐え切れずに破裂した。


ダンテ「Passed down the righteous law」

ダンテは残ったグリップを放り投げると、
相変わらず歌いながら今度は正面の戦車の方へ突進した。

639 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 01:08:32.65 ID:0mf4Q9Q0
>>637 3の『Devil's Never Cry』です

正面の戦車の砲身が真っ直ぐにダンテの方に向く。
後方の戦車もその砲口をダンテの背中に向けたのを彼は感じ取った。

そして二つの大砲が同時に火を噴く。
120mm滑腔砲弾が1650m/sという速さでダンテに前と後ろから一発ずつ向かう。


だが今度はかわすどころか、ダンテはその二つの砲弾を『掴んだ』。


ダンテ「Lifeless corpse as far as―――」


そして砲弾の慣性を利用して体を回転させ、後方の戦車へ二発続けてぶん投げる。

その僅かな一瞬でダンテの力を注がれた砲弾は赤い光を帯び、
放たれた時の数十倍もの破壊力をもって戦車の砲塔をぶち抜いた。

より一層巨大な爆炎と火花がこのライブを更に彩る。

ダンテは投げた反動を利用してもう一台の戦車の方へ大きく跳ぶ。

そして宙で右手を掲げる。
その右手に、帰ってきたブーメランのように鎌型のネヴァンが収まり―――。


ダンテ「―――the eye can seeeeeeeeeeeeee!!!!!!!!!!!!!!!!」


―――そのまま砲塔の上に着地すると同時にネヴァンを振り降ろす。

紫の電撃を帯びた刃が、分厚い装甲を難なく引き裂き深く食い込む。

640 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 01:11:49.56 ID:0mf4Q9Q0
ダンテ「The eye can seeeeeeeee!!!!!!!!!!!!!!!!」

ダンテはシャウトしながら、ネヴァンをその『砲塔ごと』引っこ抜いた。

車体から砲塔が強引に千切られ、ターレットから大量の火花と悪魔の血が噴出す。
そして今度は、突き刺さったネヴァンをグリップ替りににしてその砲塔を巨大な銃のように腰だめに構えた。


ダンテ「The eye can seeeeeeeee!!!!!!!!!!!!!!!!」


その120mm滑腔砲が今度はダンテの力を帯びて、いまだに船倉に残っている大量の人造悪魔達へ放たれた。
それも単発ではなく、彼の力で強引に連射して。

赤い砲炎を連続して噴出す120mmの『マシンガン』が人造悪魔の群れを吹っ飛ばしていく。


AC−130ガンシップもびっくりの圧倒的な物量の弾幕だ。

天井、床、壁に巨大な穴を穿っていき、そこから大量の海水が雪崩れ込んでくる。

だがハイになっているダンテはお構いナシに撃ちまくる。

爆炎と海水が何重にも絡み合い飛び散る。

そして遂に砲身がその熱と負荷に耐え切れずに歪みはじめた。
熱で誘爆する寸前だ。

641 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/15(土) 01:14:10.64 ID:0mf4Q9Q0
ダンテは右手でネヴァンを引き抜き、左手で砲身を掴むとそのままハンマー投げのように一回転し、

ダンテ「The eye can see!!!!!!!!」

歌いながら壁際にいる人造悪魔達の方へ砲塔をぶん投げた。
悪魔達が巨大な金属の塊に叩き潰され大爆発を起こす。

ダンテはネヴァンをギター型に戻し、再び弦を弾く。

ダンテの体から赤い光が溢れ、弦が弾かれるごとに巨大な稲妻がネヴァンから四方八方へ放たれる。
雪崩れ込む海水の轟音、軋む船体、船体の壁から弾けるボルトの音、飛び散る火花、業火と稲妻の明滅と爆音。

ダンテ「The eye can seeeeeeeee!!!!!!!!!!!!!!!!」

狂気と破壊のライブは最高潮に達する。

ダンテはネヴァンを抱え前に跳ぶ。

そして両膝で滑り込むように着地し、天を仰ぎ。


ダンテ「THE EYE CAN SEE!!!!!!!!!!!!!」


シャウトをキメ、思いっきり弦を弾いた。
その瞬間、ネヴァンから紫の閃光が溢れ、船倉の中を覆い尽くした。
残っていた人造悪魔達は一瞬で消し飛び、更に天井、壁、床を全て吹き飛ばした。

船底も甲板も何もかもが消失し、ネヴァンの稲妻は天を貫き海を割る。

この瞬間に貨物船の中央の部分、実に全船体の三分の一が『消滅』した。


665 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/17(月) 00:10:44.17 ID:nOTTbJE0
―――

一方その頃。

事務所デビルメイクライ。

現地時間午前六時。

上条と御坂は一回のソファーでお互いにもたれかかる様にして座りながら寝ていた。
近くのビリヤード台には無造作に置かれている御坂の大砲と上条の黒い拳銃。

上条「……んあ……」

まぶた越しに目に差し込む明るさに気付き、うっすらと目を開ける。

上条「……朝か…………ん?」
腑抜けた声でポツリと呟く。
そして気付いた。

肩にかかる重さ。ほのかに漂ってくる良い香り。
ふと見やると、御坂が自分の肩に頭を乗せ、上条の左腕に固く手を回しながら可愛らしい寝息を立てていた。


上条「………………」
起きたばかりの上条の頭が、今の状況を理解するまでには10秒ほど必要だった。


上条「………!!!!!!!み、みみみみみみm!!!!」

そして理解した途端一気に鼓動が早まる。

666 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/17(月) 00:12:19.52 ID:nOTTbJE0
上条「(なんでこうなってる!!!!!?思い出せ!!!!思い出すんですよ上条さん!!!)」

脳内の最後の記憶を細かく確かめていく。

悪魔を退治し、警察から逃げる為に御坂を抱き上げてビルからビルへと跳び、
そのまま事務所に帰ってきた。

御坂は疲れていたらしく、ふらふらとソファーに向かいポスリと座った。
その隣に同じく疲れていた上条も座った。

『初仕事』ということもあってか、そのまま二人は疲れで寝てしまった。

というのが上条の記憶だ。

上条「………御坂」
恐る恐る名前を呼んでみる。

だが反応は無い。
熟睡しているようだ。

上条「(疲れてんだな……寝かしといてやるか……)」

上条はもぞもぞと動き、左腕に絡まっている御坂の手をゆっくりと外す。
そして起こさないように慎重に立ち上がり、御坂を優しくソファーに横たわらせた。

御坂は ん… と小さな声をあげうずくまった。

上条「(いつもはキリッとしてるけど……こいつ『も』こういう顔して寝るんだな……)」

667 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/17(月) 00:14:27.27 ID:nOTTbJE0
上条はビリヤード台に寄りかかり、
己の銃を軽く服の袖で磨きながら御坂をなんとなく眺めていた。

上条「……」
御坂とインデックス。
数々の視線をくぐりそれなりに猛者でもある二人も、
寝顔はやっぱり年相応の年下の女の子だ。

上条「(……つうかこうしてよく見てみると……御坂もすっげえ可愛いな…)」

上条「(良い匂いしたし……暖かk……って何考えてんですか上条さんは!!!うぉおおお!!!!)」

自分のムスコが元気一杯なのに気付き慌てる。
一瞬顔を出した男の欲望を慌てて抑えこむ。

寝起きにおっ勃つのは若い男性特有の『症状』ではあるが、
それに更に溜まっていた欲望が上乗せされいままで見たことも無いくらいにギンギンになっていた。

というのも、もう大分前から一人の『営み』をしていない。

数ヶ月前に、インデックスが寝静まった後に風呂場で一回だけした事があったが、
翌日の朝に彼女に とうま、何か変な匂いするんだよ と突っ込まれてから一度もしていなかった。


御坂「ん……ん……」


上条「!!!!!!」

御坂がもぞもぞと動き、甘えるような声を放つ。
その声は上条の耳に入り、彼の中の本能をより強く刺激した。

668 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/17(月) 00:16:31.59 ID:nOTTbJE0
御坂のはだけたパーカーの間から見える、Tシャツ越しのささやかな膨らみ。
その上に見える綺麗な鎖骨と首。


上条「(マズイ!!!!!これはやべぇ!!!)」


何もかもが今の上条にとって刺激が強すぎた。
服役していた囚人が、シャバで何十年振りかに直接女を見たような感覚に似ているだろう。

上条「(いぎぎぎっぎ!!!)」
強引に下げ、股の間に挟んでとにかく沈めようと奮闘する。

もう少しでトリッシュが返ってくる予定だ。
こんな調子で更に刺激的なトリッシュを見てしまったら大変だ。


御坂「んん……」

御坂が再びもぞもぞ動く。どうやら眠りが浅くなってきているようだ。


上条「(やばい……とりあえず避難した方が…!!!!)」


御坂「と…うま……」


上条「……………は、はい?」

669 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/17(月) 00:18:14.64 ID:nOTTbJE0
突然名前を呼ばれ、上条は股間を押さえたままの姿勢で硬直した。

だがそれだけだった。
御坂は相変わらず寝息を立てている。

上条「(……寝言?夢に俺が出てんのか?……つうか『とうま』って今言ったよな?)」


御坂「………当麻」
御坂が再び呟いた。

上条「これは本当にやばいな」
思わず声に出してしまった。

名前を呼ばれ、上条の立派な『竜』はますます熱り立つ。


御坂「……当麻……」

上条「(ごめんなさいもうカンベンしてくださいお願いします)」
そう思いつつもなかなかこの場から離れようとしないのは男の性だろう。



御坂「………好き………当麻………大好き……」

670 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/05/17(月) 00:20:28.35 ID:bzVRMwDO
上条さんの下条さんがやばいことに

672 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/17(月) 00:27:25.05 ID:nOTTbJE0
上条「………………………………は?」
一瞬耳を疑った。

時間が止まる。

上条「…………なッ……!!!」

上条「……ッ……」

上条「………」

ダンテに世界遺産認定される程のこの鈍感少年もさすがにわかる。
そして一旦感づいてしまえば、後は一気に答えが組みあがっていく。

この修行期間でより鮮明に浮き彫りになったが、上条は元々かなり頭の回転が速い。
ヒントやきっかけさえあれば、すぐに答えを導き出してしまう。

御坂の今までの行動も。
彼に対する態度の理由も。

今までの全てが一つの答えを裏付けてしまった。

彼はようやく気付いたのだ。

この少女の想いに。

上条「…………(そうか……)」


上条「…………御坂……ありがとう」

三分程考え込んだ後、上条がポツリと呟いた。

673 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/17(月) 00:31:16.56 ID:nOTTbJE0
上条はゆっくりとソファーに向かい、御坂の前に屈んだ。
そして左手でそっと御坂の頬を撫でた。

上条「……ありがとう」

乱れた御坂の前髪を優しく正す。

上条「…でもよ……あのな…」


上条「……確かにお前を、お前の世界を守ると誓った」


上条「それは絶対に破るつもりはねえ。死んでも守る」


上条「お前は俺にとって大事な人の一人だ」


上条「だがよ……」


上条の頭に一人の少女の顔が浮かんだ。

白い修道服を着た、青い髪の『天使』。


上条「俺は……」


上条「そのな、何て言うか……お前のその気持ちには……」


上条「……って寝てる相手にこりゃねえよな。またかよ俺」
上条は苦笑した。

これではこの事務所に来る前夜と同じではないか と。
相変わらず卑怯だな と。

674 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/17(月) 00:33:15.41 ID:nOTTbJE0
上条「あ〜……」
右手で乱暴に頭を掻いた。

上条「……ちゃんと……時期が来たら起きてる時に話すよ」

上条「お前もそっちの方がいいだろ」
上条は立ち上がり、小さく伸びをした。
さっきまで熱り立っていた欲望もいつのまにか影を潜めていた。

上条「(……シャワーでも浴びるか)」

上条は頭を掻きながらバスルームへと向かっていった。

そして彼の姿がバスルームに消えた後。


御坂「……うん…知ってる」

御坂が小さく呟き目をうっすらと開いた。


御坂「わかってるよ」


そして再び目を閉じた。

穏やかな笑みを浮かべたまま、御坂は再びまどろみの中へ落ちて行った。


676 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/17(月) 00:37:33.80 ID:nOTTbJE0
―――


リスボンの港に停泊している貨物船。
トリッシュはそのマストの上に座りながら、沖を眺めていた。

沖には黒煙を立ち上らせて沈む船の残骸。

海面から船首が突き出している。
更にそこから400m程離れた海面から船尾が突き出し、本来見えるはずの無いスクリューが露になっていた。

ついさっきあの船の中央辺りで紫の光の爆発が起こり、巨大な稲妻が天を貫いたのだ。
それによりあの船は木っ端微塵になってしまった。

トリッシュ「……やっぱりね」

予想通りだ。
そしてよりによってネヴァンを使ったらしい。

ネヴァンを使うとダンテは更に見境が無くなるのだ。

トリッシュ「……」
しばらく眺めていると、その残骸の方角から赤い砲弾のような物体が、
猛烈な速度で放物線を描いて飛んで来た。

『砲弾』はトリッシュの真横に着弾した。
衝撃で鉄骨が大きく歪み、マスト全体が悲鳴のような金属音を立ててしなった。

677 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/17(月) 00:39:25.02 ID:nOTTbJE0
トリッシュ「おつかれさま」

トリッシュがその砲弾の方へ向く。
そこには水を滴らせているダンテが立っていた。
右手にはネヴァン。

ダンテ「お前ッ……」

ダンテがこの貨物船を眺めながら、少し不機嫌そうに声を放った。

トリッシュ「こっちは私が片付けといたから」
トリッシュが右手の銃を口元に沿え、未だに銃口から立ち昇っている硝煙の煙をフッと吹く。

ダンテ「おいおい……」

トリッシュ「楽しかったでしょ。思いっきり『沈んだ』わね」
トリッシュが作り笑いを浮かべながらダンテの顔を見た。

ダンテ「……………」

トリッシュ「私の言った事覚えてる?さっき言ったわよね。暴れn」

ダンテ「OK文句はねえ」
ダンテが左手の平をトリッシュに向け、彼女の言葉を遮って瞬時に負けを認めた。

こうでもしないと、またグチグチネチネチ小言を言われ続けるのだ。
それは何よりも回避したい。

トリッシュ「OK」


ネヴァン『感じ悪い女ねぇ相変わらず』


とその時、ダンテの右手にあるギターが声を放った。

678 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/05/17(月) 00:42:03.39 ID:nOTTbJE0
トリッシュ「あらいたの?」

ネヴァン『ねぇんダンテ、こんな女やめて私にしない?私ならダンテの命令にもちゃあんと従うわよ』

トリッシュ「そんなに盛りたいのなら自分の鎌でも突っ込んでなさいガラクタ女」

ネヴァン『あらあら可哀そうな子。己の方が上とでも思っているのかしら?実際は私の方が愛でられてるのよ』

ダンテ「……」

ダンテはその二人の会話を完全に無視して左手でコートを払い、
そして髪を軽く叩いて水気を払っていた。

トリッシュ「くだらないわね。所詮淫魔ってところかしら」

ネヴァン『本当に可哀そうね。この快感を知らないなんて』


ダンテ「……帰らねえか?シャワー浴びてえんだが……」


ダンテが遂に耐えかね、二人の会話を遮った。
女の口喧嘩ほど聞くに堪えない音は無い。

トリッシュ「じゃさっさと帰りましょ」
トリッシュが生け捕りにした小銃型の人造悪魔を手に取り立ち上がった。

ネヴァン『私もお供してあげる。シャワー』

ダンテ「………いらねえ」

ネヴァン『遠慮しなくてもいいわよ。戦いの後はたっぷりと癒さn」

トリッシュ「いい加減黙りなさい。ダッチワイフギター」


ダンテ「………」

再び始まった言い合い。
下手に介入するとかなり面倒臭くなる。

ダンテは目を細め沖を遠い目で眺めながら、黙って二人の言い合いを聞き流しながら黄昏ていた。

ダンテ「学園都市か」17(上条修業編)



posted by JOY at 22:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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