2010年08月17日

ダンテ「学園都市か」8(勃発・瓦解編)

869 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:10:30.20 ID:oX5VND.o
―――

同じ病棟のとある一室。

壁際がさまざまな電子機器で覆い尽くされている病室。

二ヵ月半前に『彼』が入ったのと同じ病室だ。

ここはすっかり『彼』専用部屋となってしまっているようだ。

それらの電機器に囲まれるように、
この部屋の占有主『一方通行』はベッドの上に座っていた。


パンツ一枚で。

隣の小さな椅子に座っている、
いつかと同じようにリンゴを手に持っている打ち止めの視線を浴びながら。


一方「…………」


とはいえ、身に纏っているのはパンツだけでは無い。

上半身下半身いたるところに、
そして額にも赤く滲んでいる包帯が巻かれていた。


打ち止め「今のあなたってまるでミイラ男みたい、ってミサカはミサカはシャレた事を言ってみたり!!」


一方「全然シャレてねェよ」

870 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:14:46.39 ID:oX5VND.o
打ち止め「うう……、ってミサカはミサカはいつも通りのあなたで安心したけど、相変わらずの冷たさで(ry」


一方「つーかなンでオマェがここにいンだァ?いくら何でも早すぎンだろ」


打ち止め「お見舞いはすぐ行くものなんだよ!!!、ってミサカはミサカは(ry」


一方「あーァうるせェ」

そんな賑やかな打ち止めの声を遮るかのように、一方通行は左手を彼女の方へと差し出した。

目で そのリンゴを寄越せ と促しつつ。


どうせ彼女じゃ剥けないのだから、
いつかのようにやんややんや言われる前に、やってしまおうと思ったのだ。

だが。


すべてがあの時と同じというわけではなかった。


伸ばされた一方通行の手はあの時とは『別物』だった。


ぱあっと打ち止めが笑みを浮かべたのも束の間。


一方「―――」


リンゴを手にした漆黒の義手は、
一瞬でその赤い果実を握り潰してしまった。

871 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:16:53.81 ID:oX5VND.o
一方「―――チッ!!!!」

力の加減ができなかったのだ。

いとも簡単に砕かれ潰されたリンゴは、黄色の液体となって
指の隙間からぼたぼたと床に落ちていった。


打ち止め「―――ああ!!!!ちょ、ちょっと待ってて!!!!今お手拭もってくるの!!!!ってミサカはミサカはぁ(ry」


それを見て、打ち止めは大慌てで椅子から飛び降り、
賑やかに喚き立てながら病室を出て行った。


残された一方通行はその左拳を静かに見つめていた。
感覚を確認するかのように、ゆっくりと開いたり握ったりしながら。


一方「…………」


己はもう『人』に触れることが出来なくなってしまったらしい と思いながら。

馬鹿騒ぎする打ち止めの頭を軽くはたく事も。

飛びついてきた打ち止めを軽く剥すのも。


もう彼女に触れることはできない と。

872 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:19:25.25 ID:oX5VND.o
これも更なる力を求めた代償か。


一方「ハッ…………」


そんな中、一方通行は小さく笑った。

これこそおあえつらむきではないか と。


後悔は無い。


『守る為』に力を求めたのだ。

何を今更。

そもそも、もう触れないと思っていたのだ。

もうあの少女のいる世界には戻らないと思っていたのだ。


ちょうど良いでは無いか。


これで心理的だけではなく、物理的にも決別できたのだ。


一方「…………そォだ」


そうだ。
これで、これからの道を一切の心残りなく突き進むことができる。
一切振り返らずに だ。

873 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:21:16.63 ID:oX5VND.o
と、その時。


一方通行は気配に気付き、ゆっくりと顔を上げた。

その視線の先。

そこにはカエル顔の医者が立っていた。


カエル「気分はどうだい?」


一方「……クソみてェだ」

左手を大きく振るい、リンゴの雫を払いながら吐き捨てる一方通行。


カエル「ふむ、問題は無いみたいだね?」


一方「さっさと言え。検査結果は出たンだろうが」


カエル「じゃあ要点だけ。君が懸念していたネットワークの負荷についてだが、」

カエル「特に問題は無かったよ。全妹達を検査しなければ100%とは言えないが、僕の名に懸けてそれは保障しよう」


一方「……」


カエル「次に君の脳。これも問題は無い。全く損傷していなかったよ」


カエル「ただ……」


と、そこで少しカエル顔の医者は口篭った。
別の『問題』が見つかったとでも言いたそうに。

874 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:23:56.31 ID:oX5VND.o
一方「ただなンだ?さっさと言え」

カエル「君の体は『構造』が変化しつつある。少しずつだが、今もそれは進行している」

カエル「そして君のAIMも性質が変わりつつある」


一方「…………あァ?はっきり言え。なンだ?やっぱ俺もついに『人外』の仲間入りですかァ?」

一方通行は皮肉めいた笑みを浮かべながら、
漆黒の両手を見せ付けるように顔の両脇に掲げた。


カエル医者「いや。君は『人間』だ。どれほどこの変化が進もうが、そして変化が終わろうが君は『人間』だ」


一方「……………………はァァ?」


カエル「それは『本来の人間』としての『真っ当な進化』だよ。『人間界に生を受けた者』としての ね」


一方「…………全っっ然わかンねェンだがよ」


カエル「それもそうだろう。実は僕も詳しくは知らなくてね。その『段階』の『人間』は専門外だからね」


カエル「『誰』がこの件に詳しいかは、君もわかっているはずだ。知りたければそちらに聞いてくれ」


カエル「ではここらで僕はお暇するよ。『ご覧』の通り、今日は『患者』が多いからね」


小さく微笑んだ後、カエル顔の医者は退室して言った。

足早に。

一方「…………」


875 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:27:21.64 ID:oX5VND.o
―――

同じ病棟の別の一室。


その病室の中央にある、小さな丸椅子に麦野は腰掛けていた。

まるでボクサーが、コーナーリングにて座り込んでいるかのように肩を揺らしながら。

ボロボロになったワンピースコートの隙間からは、医療用のチューブが大量に伸び、
周囲の電子機器に繋がれており。

右手にはアラストルが固く握られていた。


そして麦野の前に立っている、険しい表情の土御門と結標。


麦野「…………だからアイツに聞けっつーの!」


麦野は苛立ちを隠そうともせずに、その二人へと吠えた。


麦野「私はただ貰っただけだって!」


アラストルで床を軽く叩きながら。


土御門「……『貰った』のか?」


結標「『借りた』んじゃなくて?」


そんな麦野を冷たく鋭い視線で『尋問』する二人。


麦野「……ん……とにかくだ!私はこれを直接渡されたんだよ!!」


麦野「『OK』って事だろ!?承諾を得たんだよコレを使う為のな!!!」

876 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:29:55.67 ID:oX5VND.o
土御門「…………まあいい。後で直接聞いて確認するぜよ」


結標「この病棟に今いるし。ダンテ」


麦野「―――!!!!…………やっぱり……まだいるの……?」


その名を聞いた途端、そして彼がこの病棟にいると聞き、
今度は子犬のように大人しくなる麦野。


土御門「ビビッてんのか?ちょっかい出さなきゃすごく良い連中だぜ?」


結標「後で顔出せば?相方さんがバージルにやられて重傷だから、しばらくここにいると思うわよ」


麦野「……………………そ、そそそそうだ、そういえばあの優男はどうした?」


土御門「……海原か?」


結標「あ〜……」


麦野は、バージル繋がりで上手く話を展開したつもりなのだろうが、
わざと話題を変えようとしたのは見え見えだった。

まあそこに突っ込むの無粋だったので、二人は特に気にせずに話を続けた。


土御門「『一応』生きてる。一応な。未だに意識不明だが」


結標「それと『優男』では無くなったけど」

877 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:33:30.80 ID:oX5VND.o
麦野「……は?」


土御門「『皮』が剥げてるんだぜよ」


麦野「……『皮』……ね……それはそれは…………」


皮が剥げているといわれれば当然、目も当てられない悲惨な姿を思い浮かべるだろう。
この時の麦野もそうだった。


土御門達は別の意味で『皮』と言っているのだが。


結標「ま、今は完璧に戦力外よ」


麦野「そうだろうな……」


土御門「とりあえずだ、で、お前はどうなんだ?調子は?」


麦野「は、やっとそれか」


というのも、病室に入ってきた土御門達の開口一番は『アラストルは!?』だったのだ。 

878 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:34:40.88 ID:oX5VND.o
麦野「問題無い」


麦野「『調整』も今終わったし」


アラストルを持ったままの右手で、
乱暴にチューブをむしりとっていく麦野。



土御門「……で何か言われなかったか?」


麦野「何かって?」


結標「例えば、『君の体は変異している』とか」


土御門「『人間ではなくなりつつある』 とか」


麦野「……いや何も」


その麦野の答えを聞き、土御門と結標は顔を見合わせた。
微妙な笑みを浮かべながら。

879 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:36:02.49 ID:oX5VND.o
麦野「……コレか?」

そんな二人に見せるように麦野はアラストルを掲げた。

二人が何に対してそう言っているのか、麦野も薄々感付いたのだ。

土御門「そうだ」


麦野「……」

ふとつい先程の事を思い出す。


アラストルとトリッシュの支援を受けたあの時の事を。

確かにあの瞬間、自分は人間の枠から外れた。
詳しい事は分からないが、それだけはなぜか本能的に確信できる。


あの時の己は『人間』ではなかった と。

本物の『怪物』になっていた と。


麦野「……逆に聞くけど」


土御門「なんだ?」



麦野「私が『怪物か人間か』なんて、どうでも良くない?」



麦野「というか、『怪物』の方が良いでしょ?『私達的』に」

880 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:37:07.77 ID:oX5VND.o
土御門「はは、それもそうだにゃー」

これは1本取られたとでも言いたげに、土御門は頭を掻きながら笑った。

そう、『これから』の事を考えると『怪物』であった方が有利なのは確かだ。


結標「てっきり、一見強そうに見えて中身はナイーブだと思ってたけど。そうでもないみたいね」


麦野「アンタには言われたくないわね」


土御門「生粋の『女帝』だぜよこりゃあ」


麦野「で、これからどうするの?」


土御門「ん、とりあえず計画は修正する必要がある。今の状況を考えてな」


麦野「……それで今の状況は?」


土御門「それがかなり複雑でな……色んな事が起こり過ぎてる」


結標「『騒動』があったのは学園都市だけのじゃないのよ」


麦野「?」


土御門「情報が足りないが、まあとにかくこれだけは言えるぜよ」


土御門「明日にでも第三次世界大戦が勃発する」

881 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:38:40.14 ID:oX5VND.o
麦野「第……三次……それか?お前らが言ってた学園都市の危機ってのは」


土御門「違う」


麦野「は?じゃあ何よ?」


土御門「第三次世界大戦はただの『火種』だ」



結標「もっと大きな『爆弾』のね。それこそ学園都市だけじゃなく人類全体に関係する ね」



麦野「だからその爆弾は何?」


土御門「わからない。だから『聞く』」



麦野「誰に?」



結標「アレイスターに」

882 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:40:32.13 ID:oX5VND.o
麦野「アレイ…………!!!!!」

その名を聞き、麦野は勢い良く立ち上がった。
切り裂かれたワンピースコートの胸元が大きく開くのも気に留めずに。


土御門「慌てるな」


結標「向こうも話があるらしいのよ。ちなみに私達の行動、『やっぱり』全部知られてたわよ」


麦野「で、何よ?雁首そろえて自らハイドウゾって差出に行くっつーのかよ?」


土御門「まあまあ。向こうも『今』は手を出してくるつもりはないだろう」


麦野「根拠は?」


土御門「ダンテからアラストルを渡されたお前がいる」


結標「そのダンテも今は学園都市に」


結標「いくらアレイスターでも、この状況下でまた騒動起こすとは思えないけど」

883 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:42:16.90 ID:oX5VND.o
麦野「…………ん……まあ……」


土御門「じゃあそういう事だ。準備しとけ。俺はアクセラレータにも伝えてくるぜよ」


ニヤニヤと笑いながら、
土御門は手を振りつつその病室を後にした。


病室の外は長い長い廊下。


ところどころに黒服の男が立っている。
アレイスター直属の非公式部隊の連中だ。


そんな中を、土御門は早歩きで進んでいった。


とその時。


土御門「……ん?」


ズボンのポケットの中で、携帯が激しくバイブ。
振動の仕方からみてメールだ。

はいはいと呟きながら携帯を取り出し、やや乱暴に開き。


そして画面を確認した瞬間。


土御門「……………………………………は?」


土御門はその場で絶句した。

884 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 00:44:28.67 ID:oX5VND.o
メールはイギリスからだった。


イギリス清教からの通達だ。

そこまでは良い。
通達などしょっちゅうある。


だが問題はその内容だった。


土御門「…………最…………インデッ…………」


小さな画面にはとんでもない事が記されていた。



土御門「…………おいおい……『お前ら』何やらかしたんだよ……」



今、イギリスを揺るがしているとんでもない事が。



土御門「………………ステイル……」




898 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 22:55:38.23 ID:oX5VND.o
―――

同じ病棟のとある一室。

普段なら八人の患者が入る大きな病室。

その部屋には今、四人の大悪魔と一人の人間がいた。


繋げて並べられている二つのベッド。

その片方には今だ意識が戻らないキリエ。

もう一方には右腕の無いトリッシュが座していた。
残った左手でキリエの右手を掴み、その手首にある赤いアザをジッと見つめながら。

ちなみに、トリッシュのチューブトップの服は彼女の力によって修復されたが、

鎖骨から腹部にかけての傷は今でもパックリ開いており、
それを隠す為に白いシーツをマントのように羽織っていた。


壁際には、待合室から勝手に持ち出されたであろう、
大きなソファーが無造作に置かれており、そこにだらしなく寝そべっている座っているダンテ。

キリエが寝ているベッドの横には、腕組をしたネロが立っていた。
つい数分前に、ルシアにここまで連れて来てもらったのだ。


トリッシュがこの有様の今、世界中を自由に移動できるのはルシアしかいないのだ。


その当のルシアは、窓枠のところに座り足をプラプラと揺らしていた。

900 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 22:57:31.40 ID:oX5VND.o
トリッシュ「…………ん〜、これは中々手がつけられないわね」

小さく息を吐き、肩を竦めるトリッシュ。

トリッシュ「気を失っている事自体は、力を浴びた一時的なショックだからすぐ起きると思うけど……」

ネロ「……けどなんだよ?」

トリッシュ「禁書目録に解析してもらってからじゃないと、正確な事は言えないけど」


トリッシュ「この術式は彼女の魂まで達してるわよ。というか、彼女の魂を『核』にしてるみたい」


ネロ「外せるか?」


トリッシュ「…………一週間あればなんとか。イマジンブレイカーの助けも借りて……」

トリッシュ「レディも呼ばなきゃ。というか、コレについては私は出る幕無いわよ」


人間が扱う術式については、レディの方がこの場にいる誰よりも精通している。
その分野においては、トリッシュでさえ彼女には手も足も出ない。

それにインデックスは、魔界魔術の分野は網羅していない。

それ以前に、このキリエの魂に組み込まれた術式は製作者の完全オリジナルだ。

インデックスが解析して全体の構造が把握できたとしても、
個々の『構文』が何を意味しているかは彼女も理解できないだろう。


そこを埋める為にもレディの知識と経験が必要なのだ。


トリッシュ「禁書目録が解析、彼女の知識に無い部分はレディが埋めて……」

トリッシュ「そしてレディが解除術式を作ったり、彼女の指揮の下イマジンブレイカーで壊したり……ね」


ネロ「……それで一週間か……」


902 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:02:32.03 ID:oX5VND.o
ネロ「で、レディは今どこにいる?」


トリッシュ「さあ」


ダンテ「ロダンかエンツォ、それかモリソン辺りに聞けばわかるだろうよ」


ネロ「……まあ、とにかく早くしてくれ」


トリッシュ「それもそうね」


そう、このままでは相手に手が出せない。
相手を潰せば、キリエも死んでしまう。


だがネロの話を聞く限り、
相手は早急に潰さなければならない『最悪の者』だ。


トリッシュ「この子は私達の方で何とかするから、アナタはその男を追いなさい」


ネロ「当たり前だろ」


トリッシュ「その男、『覇王を復活させて魔界への口を開く』って言ってたのよね?」


ネロ「ああ」


トリッシュ「そう……この術式は彼女専用に作られてる。つまり、その男は最初からこの子が狙い」


ネロ「大元の狙いは『俺』って事だろ」


トリッシュ「そうなるわね」

903 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:06:20.17 ID:oX5VND.o

トリッシュ「覇王と魔界の口……そして『ネロ』……」


覇王の力だけで、スパーダの一族に対抗するつもりは相手もさすがに無いだろう。

それはタダの自殺志願者だ。


覇王はかつてスパーダに完敗して封印されたのだ。

そして今のダンテはスパーダと互角レベルなのは確実。
ダンテと互角以上のバージルもいる。

更に彼らに匹敵しつつあるネロもいる。


彼ら三人は、戦力においてでは魔帝すらをも圧倒した。

その魔帝よりもワンランク下の覇王の力のみで、この三人に勝てるか?


否。


絶望的だ。


今のネロとギリギリ互角レベル。

ダンテとサシで遣り合ったら確実に覇王は負ける。

それは相手もわかっているはず。


つまり、相手は他にも何らかの切り札を持っているはずだ。


トリッシュ「…………」

904 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:09:02.14 ID:oX5VND.o
トリッシュ「……じゃ、皆で確かめていきましょ。まず『魔界の口』を開くには何が必要?」


ダンテ「『力』。バカでけえ『悪魔の力』だ」


ソファーに寝そべっているダンテが、天井を仰ぎ見たまま呟く。


トリッシュ「それに足りうる力を有していて、今も『存命』の者は?」


ダンテ「バージルと俺とネロと―――」



ネロ「―――『覇王』だ」



トリッシュ「それが恐らく、覇王の力を求めてる本当の理由ね」

トリッシュ「アナタ達と戦う為ではない」



トリッシュ「じゃ次。なぜそこまでして『魔界の口』を開けようとしているのか」


トリッシュ「人間界を破壊し、魔界に取り込む為?」



ネロ「開けれたとしても『俺達』がいる間は無理だろ」

905 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:11:33.48 ID:oX5VND.o
トリッシュ「そうね。それが目的だとしてもまずはアナタ達を排除する必要がある」


トリッシュ「じゃ、次は別の視点から」


トリッシュ「なぜネロに挑発的行為をしたのかしら?」


トリッシュ「なぜ彼女を狙ったのかしら?」


キリエ専用の術式を作っていたことからも、
フォルトゥナに来た目的そのものが彼女だったのは間違いない。

それにネロが騎士達から聞いた証言によると、
悪魔達は当初キリエを連れ去ろうとしていたらしい。



トリッシュ「なぜこの子を誘拐しようと?」




ネロ「…………俺…………だ。俺を誘き出す為だ……」




ダンテ「ビンゴ」

906 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:13:37.93 ID:oX5VND.o

トリッシュ「じゃあ、ネロを誘き出す目的は?」


トリッシュ「それともう一つ。『魔界の口』とネロの間にある共通点は?」




ネロ&ダンテ「『スパーダ』」




トリッシュ「……答えは出たわね」


トリッシュ「『魔界の口』を開く本当の目的は、その封印の要になっている『スパーダの魂』を解き放つこと」


ネロ「……」


トリッシュ「で、アナタを誘う目的は『魔剣スパーダ』」



ネロ「…………決まったな」


トリッシュ「ええ、相手は『スパーダの力』を欲してる」



トリッシュ「いえ、覇王とスパーダが融合した『怪物』になろうとしてるのかも」

907 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:15:53.00 ID:oX5VND.o
トリッシュ「これなら、場合によってはアナタ達に勝てるかもしれないわね」


ネロ「……そいつは随分と……胸糞悪ぃな……」


薄々感付いていたとはいえ、
はっきりと口に出されてネロはより一層顔を曇らせた。

それとは対照的に。


ダンテ「ハッハー!!!!!!そいつはスゲェ!!!!」


跳ね起き、満面の笑みを浮かべるダンテ。


だがその笑みは複雑なものだった。


ダンテ「たまんねぇぜ!!!最っっっ高だ!!!!―――」


強敵の出現に喜ぶ一方で。


ダンテ「―――ぶっ潰してやろうじゃねえか!!!!とっととやっちまおうぜんなアホ野郎はよ!!!!!!」


父を穢され、侮辱された怒りも同時に噴き出していた。



だが、そんな漲るダンテに向かってトリッシュが一言。


トリッシュ「アナタはバージルの件が先」


ダンテ「―――……ッ……………………あ〜……」

908 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:17:59.86 ID:oX5VND.o
ネロ「こっちは俺がやっておく。アンタは親父をどうにかしてくれ」


ネロはやっとダンテの方へ振り返り、彼の顔を見据えた。


ダンテ「…………まあそうだな」


ダンテがスパーダや覇王の件に割り込みたいのと同じく、
ネロも父親の件に割り込んで行きたくてたまらないのだ。

だがお互いとも全力で集中しなければならない問題がある。


今はそれぞれが我慢して進むしかない。


トリッシュ「ま、そう心配しなくても良いでしょ。バージルの行動もコレにかなり関係してると思うし」


トリッシュ「最終的に全てが繋がって、一点に集中するわよ多分」



ダンテ「……へえへえ」


ダンテはそんなトリッシュの言葉を掃うかのように手を振り、
少し拗ねたようなそぶりで再びソファーに乱暴に座り込んだ。

909 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:20:06.03 ID:oX5VND.o

トリッシュ「じゃあとりあえずネロの方はこんなところね」

トリッシュ「アナタはその男の行方を追う」

トリッシュ「この子の術式は私たちの方で外す」


トリッシュ「場所は……」


ネロ「学園都市で良い。フォルトゥナにはまだ連中の残党が残ってる」

ネロ「ここには向こうに無い医療機器も揃ってるしな」


トリッシュ「OK、じゃあ術式が外れ次第、アナタはその男を叩き潰す」


トリッシュ「できれば『魔界の口』が開かれる前に」


トリッシュ「魔界の口が開いた場合は状況に応じてそれぞれが動く」


ネロ「ああ」


トリッシュ「それと……アナタ他にも仕事があるんでしょ?」


ネロ「まあな」


ネロにある別の仕事。

それはフォルトゥナに未だに残っている悪魔の残党を狩り、
そして世界に溢れかえるであろう、人造悪魔に対抗する為に騎士団を再編成する事だ。


ネロ「まあ、それは大丈夫だ。俺はいくつか指示するだけで言い。あとは皆がやってくれる」

910 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:22:18.70 ID:oX5VND.o

トリッシュ「なら問題ないわね。じゃあ次」


トリッシュ「バージルの動きについて」


トリッシュ「少し前にアナタの所に魔女が来たのね?バージルの使いとして」


ネロ「……ああ」


トリッシュ「ヴァチカンを襲撃したのは魔女。その直後に、神の右席を支援する形でバージルも学園都市に」


ネロ「…………」


トリッシュ「つまり、戦争を誘発させたのはバージルと魔女と考えて良い」


トリッシュ「フォルトゥナを襲撃したその男はウロボロス社関係、ウロボロス社とローマ正教は協力関係」


トリッシュ「彼らは学園都市・イギリス清教と対立してる」


トリッシュ「そして彼らの背中を強引に押したのはバージルと魔女」


トリッシュ「バージルと魔女は彼らに何かをやらせようとしている」


トリッシュ「さっきのバージルの行動から見て、彼らの目的を後押ししてるみたいね」


ネロ「……」
911 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:24:30.78 ID:oX5VND.o
トリッシュ「ウロボロス社関係のその男の目的は先の通り」


トリッシュ「じゃあ神の右席の目的は何だったのかしら?」


ネロ「魔女が絡んでるっつーことは天界も関係してたんだろ?」


トリッシュ「ええ。ローマ正教も絡んでるし」



ダンテ「……………………で?」


ネロ「……………………」


トリッシュ「……………………さあ」


そこで彼らの推理は行き詰った。

そう、彼らにとって天界は専門外だ。


ダンテもネロも、そしてトリッシュも天界の事については詳しくは知らない。
魔女の事も、軽く聞いた程度でほとんど知らない。


だがそこを知らなければ神の右席の目的は見出せない。



そしてそれを見出さなければ、バージル達の真の目的も推測できないのだ。

912 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:26:05.58 ID:oX5VND.o

トリッシュ「…………『こっち』についてはもっと情報を集めなきゃ」


ネロ「その神の右席は死んだんだろ?」


トリッシュ「さあ。木っ端微塵になったらしいけど」


トリッシュ「何ともいえないわね。最も強い天界の加護を受けてる連中だから」


ダンテ「あの『培養野郎』に聞けば良いだろ」


トリッシュ「アレイスター?喋るかしら?」


ダンテ「俺が行くぜ」


トリッシュ「ああ……じゃあ喋るわね」


今のダンテは一見するといつも通り飄々としているが、
その中はかなり煮えたぎっている。


なにせバージルの事に大きく関ってきているのだ。


アレイスターもこのキレる一歩手前のダンテには、

いや、ある意味もうキレている彼にはどうしようもないだろう。


彼に聞かれたことは洗いざらい、そしてウソ無く喋るしかないだろう。

914 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:30:11.45 ID:oX5VND.o

トリッシュ「……じゃ、とりあえず今はそんなところね」


ネロ「俺は戻って良いか?」


トリッシュ「ええ」


ネロ「頼んだぜ」


トリッシュ「そっちもね」



ネロはキリエの顔を覗き込むように身を屈め、
その頬を軽く撫で、額に軽くキスをした。

そして再び身を起こし、今度はダンテの方を向き。


ネロ「親父の事もな」


ダンテ「おー」


それに対し、ダンテはソファーに寝そべったまま軽く手を挙げた。


その時、黙って彼らを見ていたルシアがヒラリと窓枠から飛び降り、
ひょこひょことネロの横に向かって来た。


ネロをフォルトゥナに送る為だ。


ネロはそんな彼女に一瞥をし、そして最後にもう一度キリエの方を見、
そのままルシアと一緒に赤い円に沈んでいった。

916 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:34:02.21 ID:oX5VND.o
ダンテ「……坊や、何かあったのか?」

ネロが姿を消した後、ダンテがポツリと呟いた。


トリッシュ「さあ……でもなんか……妙に落ち着いてるわね」

トリッシュ「もっと熱くなってると思ってたんだけど」


トリッシュ「……私と会った頃のアナタに似てるわね」


ダンテ「そうかぁ?」


トリッシュ「……って、ほら、アナタも行きなさいよ」


ダンテ「なあ」


トリッシュ「何よ?」


ダンテ「ここにワインって(ry」


トリッシュ「病院にあるわけないでしょ」


ダンテ「喉が渇いてよ」


トリッシュ「水はトイレにあるわよ」


ダンテ「……」


トリッシュ「……」


しばしの沈黙。

917 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:36:32.12 ID:oX5VND.o
とその中、部屋の床に赤い円が浮かび上がり、
そこからルシアが姿を現した。
フォルトゥナにネロを送ってきたのだ。

そんな彼女にすかさず。


ダンテ「おうチビ助」


ルシア「は、はい!……な、……なんですか?」


ダンテ「おつかいがあん(ry」


トリッシュ「子供に買わすな」

ダンテ「……」


ルシア「?」

状況が飲み込めず、
赤毛の少女はキョロキョロと二人の顔を交互に見る。

そんな彼女に、トリッシュは不気味な程に穏やかな笑みを浮かべ。

トリッシュ「いい?この人の言う事まともに聞かないようにね」


トリッシュ「基本的に頭おかしいからこの人」


トリッシュ「こんな大人になっちゃダメよ」


ルシア「は……はい」


ダンテ「ヘッヘ、まあ、そいつは言えてら」

918 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:38:28.06 ID:oX5VND.o
―――


病室を出たステイルは、
足早に廊下を進んでいた。


向かうはアレイスターの下。

先程上条に伝えたとおり、最大主教と連絡がつかない。


というか、イギリスへ向けての通信魔術が『起動』しないのだ。


ステイル「…………」

妙だ。


通信が繋がらないのではなく、魔術そのものが『起動』しないのだ。


何かが起こっているのは確かだ。

ヴァチカンもあの有様。

今や、世界規模の『何か』が現在も進行しつつあるのは確か。


その情報を得る為に、彼はアレイスターの下へと行こうとしているのだ。

あの男が全て喋ってくれるとは思わないが、
行けば必ず何らかの情報は得られるはずだ。

919 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:40:11.73 ID:oX5VND.o
ステイル「…………」


そういえば一つ、先程上条に伝えなかったことがある。



神裂の事だ。



彼女の死についてだ。



ステイル「…………」



上条もその事については知る権利がある。

ヴァチカンで起こった事を。

ステイルが目にした彼女の最期の姿を。


そしてその事を聞いた彼は必ず悲しむだろう。

まるで家族を失ったかのように。

920 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:42:48.53 ID:oX5VND.o

ステイル「……」

だがそれは今言うべきではない。

今の上条は精神的にも肉体的にも疲れ切っている。
休息してからの方が良いだろう。


ステイル「…………」


と考えたのだが。

実はこれは建前的な部分もある。


ステイル側の だ。

目の前で悲しまれると、
こちらが我慢できなくなってしまう気がしたのだ。

この悲しみと喪失感に負けてしまう気が。


今まで気付いていなかったが、
ヴァチカンにて動かなくなった神裂を見た瞬間、彼は自覚した。


彼は気付いてしまった。


どれほど神裂が己にとって重要な存在だったのかを。

921 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:44:30.86 ID:oX5VND.o

インデックスとの思い出の中には、常に神裂もいた。

『三人』で過したかけがえのない思い出。


共に笑い、共に哀しみ、共に喜んだあの頃。


インデックスとステイルと神裂の『三人』で過した日々。


神裂は、ステイルにとって『ただの仕事仲間』ではなかったのだ。


親友であり戦友であったのだ。


なぜその『絆』に気付かなかったのか。

なぜ彼女が生きている間に気付けなかったのか。


ステイル「……」


そんな己が憎い。


最期の最期までしょうもない、最悪の『馬鹿』だ と。


一体己は今まで何を『見て』いたのか? と。


何が『戦士』だ? と。


『矛と盾』になり切ることでその役目を果たせるとでも? と。


『ハート』を捨てておきながら使命を全うできるとでも? と。


こんなことだから己はインデックスを『救う』ことができなかったのでは? と。

922 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:46:09.86 ID:oX5VND.o
ふと思う。

君は気付いていたのか? と。


いや、彼女は気付いていたはずだ。

ステイルのように心を閉ざしてはいなかったはずだ。


だからこそ彼女の手はインデックスだけではなく、
弱き者すべてに差し出されていたのだ。


『あの日』から時間が止まっているステイルとは違い、
彼女は歩み続けたのだ。

現状をただ保持し、『守るだけ』しかしなかったステイル。
上条と出会っても尚そのまま。
まるで進歩無し。


だが彼女は違った。

上条と出会った彼女は変わった。

インデックスだけではなく、現状を『変えるため』に、
彼女が住まう周りの世界をも救っていこうとしていたのだ。


ステイル「……」


そして彼女は最期までその思いを胸にしていたはずだ。

インデックスを守るという誓い。

それだけでは無い。

世界を守り、そして救おうと。


彼女は最期の最期まで、その為に刀を振るい続けたはずだ。


決して諦めず、命尽きるまで。
923 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:48:12.96 ID:oX5VND.o
ステイル「…………」


先程の上条の言葉が、今でも頭の中で木霊している。


彼は言った。


『俺達で救うんだ』 と。


以前のステイルならば一歩引いていただろう。
己は今までと同じく『矛と盾』で良い と。



だが神裂の死でようやく気付いた今は違う。


上条の言葉を正面から受け止め、そしてそれに応えたい。


『本当の戦い』に歩み出す時なのだ。



『守る為』の戦いではなく。


『救う為』の戦いに。

924 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:49:28.72 ID:oX5VND.o
できれば生きている彼女と並んで戦いたかったが。

できれば彼女と一緒にこの道を歩みたかったが、それはもう無理だ。


ステイル「…………」


だからステイルは思い、そして誓う。


ならば、せめて『彼女の名』と共に戦おう と。

気高き本物の戦士であった『彼女の姿』を胸に と。

かけがえの無い『親友の笑顔』を心に と。



ステイルは長い廊下を進んでいった。

その足取りは力強かった。



この時、彼は思ってもいなかっただろう。


約一週間後に再会するなど。


『生きている神裂』に。




そして。




壮絶な『殺し合い』をするなど。

925 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:51:40.44 ID:oX5VND.o
とその時。

廊下の先から、こちらの方に向かってくる土御門が目に入った。


ステイル「(……ちょうど良いな)」

正にちょうど良い。

土御門も、今の状況の全体像が掴めずに色々と困惑しているはずだ。

ここは一つ、
情報交換という事でお互いの知っていることを確認しあったほうが良い。


土御門もそのつもりだったのか、彼を見つけた駆け足で向かってきた。


その表情はいつもとは違い、なぜか強張っていたが。


ステイル「やあ」


土御門「ここにいたか」


ステイル「ちょうどいい。いくつか聞きたい事があったんだ」


ステイル「イギリスへの通信がなぜかできなくてな。君もそうだろう?」


土御門「…………いや……俺は『できる』」



ステイル「…………なに?」



土御門「…………その前に答えろ。『お前ら』何したんだ?」

926 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:55:34.94 ID:oX5VND.o
ステイル「何って……?おい……何のことと言っているんだい?」


土御門「お前……やっぱり知らないんだな」


ステイル「…………待ってくれ。話が全然見えないのだが」

土御門「聞け」



土御門「最大主教、いや……『今』はそう言わないな」



土御門「ローラ=スチュアートとステイル=マグヌス、およびインデックス」



ステイル「……僕等がどうかしたのかい?」




土御門「お前ら三人は先程、位と権限を剥奪され『必要悪の教会』を『除名』―――」





土御門「―――そしてイギリス清教から『破門』された」




ステイル「………………………………………………………………は???」

927 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/06(金) 23:57:42.10 ID:oX5VND.o
ステイル「……………………………………………な、………………」


土御門の口から告げられた驚愕の事実。
余りの事に、ステイルの思考が停止しかけてしまった。



土御門「それだけじゃない。これと一緒に『陛下』が全軍にこう布告した」




土御門「『神の名の下、ローラ=スチュアートとステイル=マグヌスを即刻処分せよ』」




土御門「『忌まわしき肉体はその場で「火刑」に処せ』」




土御門「『禁書目録は舌を抜き、四肢を切断した後にイギリスへと持ち帰れ』」




土御門「『その際の生死は問わない』」




土御門「『これは神の名の下の命であり―――』」





土御門「『―――主の意思である』ってな」


938 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/08(日) 23:39:11.09 ID:w2mYm2ko
―――

イギリス。

バッキンガム宮殿のとある廊下。

その長い長い廊下を、最大主教ローラ=スチュアートが足早に歩を進めていた。


右手に古めかしい大きめの『皮袋』を持ちながら。

重めの物が入っているのか、
彼女が歩を進めるたびにゆさりゆさりと大きく揺れていた。


ふわりとなびくゆったりとしたベージュの修道服と、『解放』されて光り輝いている金髪。



彼女のその歩む姿は、さながら映画の神秘的なワンシーンの様だった。



周囲の『惨状』はそれとは余りにも対称的だったが。



ローラに飛び掛る騎士や衛兵達。

今や彼らは、イギリスが誇る最大霊装『カーテナ』の影響により莫大な力を授かり、
その身体能力も行使する魔術も凄まじい程に強化されていた。


何の為か?


それは女王が全軍に下した命に従い、『魔女』を排除する為。


『正体』を現し、イギリスと『神』に反旗を翻した穢れし者を殺す為。



ローラ=スチュアートを―――。

939 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/08(日) 23:42:13.17 ID:w2mYm2ko
だがそんな彼らも、この『アンブラの魔女』の前には無力だった。


ローラ「ふふん、私に触れたるなど500年早いのよ」


騎士や衛兵達は一瞬で『金の光』に弾かれ、
そして壁を突き破って吹き飛ばされていく。

彼らの放った魔術は、ローラに到達する直前になぜか霧散し、
彼らの剣や槍も全て届かぬまま粉砕されていった。


そんな中、ローラは指先一つ動かさず彼らなど元からいないかのように、
鼻歌交じりでそのまま流れるように歩を進めていく。


彼女は今、魔女の力を隠そうとはしていなかった。


もう隠す意味が無いのだ。



いや、逆に今はこうしてこちらからわざと目立たたせ、

『天界』に向けて強烈にアピールする必要がある。



ローラ「……」


そう、こうしなければならないのだ。



この状況を切り抜ける為には。



こうやって、完璧な『敵役』に徹しきらなければ。



『イギリスの敵』に―――。

940 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/08(日) 23:44:39.25 ID:w2mYm2ko
ヴァチカンでの力の行使が、
天界に正体を知られるという事はローラは理解していた。

だが、『かなり鈍い天界』はそうそう即座に行動してこないのも知っていた。

これは彼らの生まれながらの『気質』、
現在に至る成り立ちに起因する、天界内の『複雑な体制』、


そしてジュベレウスの滅亡・魔帝の完全敗北からくる、ここしばらくの『混乱』も影響している。


更に今後に控えている『問題』も。

これらの状況下ではローラの件もどさくさに紛れてしまい、
本格的な『解決』に乗り出すのはいくらか時間がかかったはずだったのだ。


それにジャンヌやセレッサ(ベヨネッタ)のような名の知れた頂点クラスならまだしも、
ローラ程度を最優先するはずもない。


あのヴァチカンで見せた程度では、ローラのかつての身分も判別できないだろうし、
そもそもあの程度の力じゃ『即刻排除すべき脅威』とも見られない。



ローラの件は『保留』となり後回しにされるはずだったのだ。



少なくともこれから始まる戦争が終わり、
ローラの親友であり恩人であるエリザードが退位し隠居するまでは。


ローラがかつてエリザードに誓った、
『あなたが在位している間はイギリスを全力で守り、そして助けとなる』という約束を果たしきるまでは。


そのはずだったのだが―――。

941 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/08(日) 23:47:26.82 ID:w2mYm2ko
ローラ「…………」


今回の件はそれ『だけ』では済まなかった。


ヴァチカンの後、彼女は再び力を使わざるを得なかった。

天界に注目されていると知りつつも。


学園都市にいるインデックスを守る為に。

その為に、ステイルを『使い魔』として魔女の力で送り込んだ。


そして事態は瞬く間に『悪化』した。


学園都市の件はローラも全く予期していなかった。


更に、遠隔制御霊装の持ち主が『あの点』に気付いていたとは、
さすがのローラも思ってもいなかったのだ。




インデックスの中にある、彼女の『本当の姿』に。

942 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/08(日) 23:49:59.93 ID:w2mYm2ko
学園都市は、人間界において天界の影響がもっとも少ない場所の一つ。
天界の目は中々届かない。

だが『上』から見えなくても『セフィロトの樹』がある。

対象が接続下ならば、『魂』から直接情報を得ることが出来る。


そしてインデックス。

『御使堕し』にも影響されるとおり、彼女は『セフィロトの樹』としっかり繋がっている。

これもまた、彼女を隠蔽する為のローラの策の一つだったのだが。
今回はそれが仇となった。


『解放』されたインデックスの『別』の、いや『真の力』。


当然、その『魂の情報』は『セフィロトの樹』経由で上に運ばれ。


彼女の正体と、かつての『身分』が暴かれたであろう。


一平卒ではない、『ただの魔女』ではない、
アンブラの『書記官』というかなり高い位にいたということが。

943 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/08(日) 23:56:06.11 ID:w2mYm2ko
天界は500年前の降臨の際、

アンブラ魔女の幹部・高官・そして名だたる強者を名指しにし、最優先として皆殺しにした。

(唯一その手から逃れ切ったのがジャンヌだ。ベヨネッタはとある特別な理由があって、殺害ではなく『捕縛』対象とされていた)


アンブラの魔女を再興しうるレベルの者達を残さない為にだ。

100人の魔女の部隊よりも、これら一人一人の方が天界にとっては凄まじい脅威だったのだ。

人間の世界で言えば、正に『十億単位の賞金首』クラスだ。


その『リスト』の中に、当時の幼い『書記官』の名もあった。

そして今の今まで当然『排除済み』として記録されていただろう。


今の今まで だ。



その記録は覆された。



つい先ほど、その『書記官』が生きていたことが明かされたのだ。




なんとイギリスの懐で。

944 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/08(日) 23:59:53.91 ID:w2mYm2ko
最早、天界はローラ達の件を『保留』しようとは思わないだろう。


この件は最優先事項の仲間入りとなるのは確実。

いくらトロい天界でも、『賞金首』を見つけたとなってはかなり早く動いてくるはず。


ローラ「…………」


このままではローラ達に矛先を向けるだけではなく、
『書記官』を匿ったイギリスへ制裁を加えてくる可能性も高い。

天界の支援を失えば、イギリスは魔術的な力を大幅に失う。
カーテナ等の霊装もただのガラクタと化し、騎士や魔術師も天界魔術を使用できなくなる。

ネロの指導の下、魔界魔術をマスターした者もそれなりにいるが、それでも全体の極一部。

魔界魔術のみでまともに戦えるのは10%にも満たないのだ。


そんな状況下でこれから始まる『大乱』を乗り切れるか?


否。


魔術超大国イギリスの名は地に落ち。


滅亡する。

945 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:02:39.76 ID:3okE3Kso
そもそも、ヴァチカンのステイルを保護しに行かなければ、
こんなイギリスの危機にはならなかったのか。


いや、それは違う。

ステイルを死なせていたら、インデックスは敵の手に落ちていた。
ステイルを保護し、学園都市に送らなくとも。


あの場で天界に『身分』を知られなくとも、

『遠隔制御霊装』保持者である神の右席が、
彼女の中の力に気付いていた時点でどうせ同じだ。


どの道『天界』に知られ、神の右席は『魔女の高官を捕らえた』事を称えられ、
そして彼女を匿っていたイギリス清教は敵視される。


どの選択を取っても結果は同じだったのだ。


これは誰の責任でもない。

誰かが判断を誤ったのでもない。


大きな大きな世界の流れが生み出した、逃れ様の無い結果だ。

一つ一つの事象が、誰も予想していなかった未知なること。


それらが組み合わさって導き出す結果を誰が予想できる?


誰も予想できるわけがない。

946 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:04:09.53 ID:3okE3Kso
ローラ達が今やるべきなのは、
最小限の犠牲をもって状況を切り抜けること。


天界よりも先に、こちらが行動で『示す』こと。


その方法がこれだ。


ローラとエリザードはこの方法しか思いつかなかった。




エリザードはローラ達を『イギリスの敵』として宣言し。



ローラは『本物のイギリスの敵』となる。



そして天界に証明する。




『イギリスは魔女派ではない』 と。

947 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:09:07.77 ID:3okE3Kso

イギリスを守る為に だ。



そして今のところ、その方法は結果を出しつつある。


天界は魔女と戦う『イギリス清教側』を支援している。

騎士や衛兵達も魔術を使い、カーテナの支援を受けている。

イギリスの罪は、この『戦い』で水に流しきれるとはさすがに言えないが、
かなり優しい恩赦を与えられたようだ。


ローラ「……」

ローラは歩み進み、適当に騎士や衛兵をぶっ飛ばしながらふと上を見上げた。


見ているのは『天井』ではない。


天界だ。


『上』では今、『穏健派』である十字教が、
怒り狂っているジュベレウス派をなだめてくれているのだろうか。


500年前と同じく―――。

948 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:13:45.67 ID:3okE3Kso
本気になったジュベレウス派はそれこそ、
イギリスごと6000万の人命もろとも地図から消し去りかねない。

500年前、アンブラの都が滅んだ後に行われた魔女の残党狩り、

つまり『魔女狩り』も、

当初はヨーロッパ全土が破壊されかねない規模になるはずだった。


ジュベレウス派は魔女を完全根絶する為に、
億単位の人間をも平気で巻き添えにしようとしたのだ。


これは『聖戦』であり、犠牲とは救われる事を意味している と宣言しながら。


それを懇願して押し留めたのが、十字教の神と天使達だと言われている。


ジュベレウス派の命で、直接人間界を管理してきた十字教。

十字教の神や天使達は直接人間に接する関係上、『情』も移ったのだろう。


そのおかげか、魔女狩りは比較的穏やかなものだった。
人間の巻き添えは最小限に留められた。

その温情による、ツメの甘い追跡のおかげでローラもこうして逃げ延びることが出来たのだ。


まあその点を考えれば、十字教の連中にはある意味感謝できるだろう。



同族を滅ぼされた恨みと怒りの方が万倍億倍も強いが。

949 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:16:37.18 ID:3okE3Kso
それにこういう、
十字教の神や天使達のコソコソとした動きがローラは無性に腹が立つ。


人間の死が嫌ならば、なぜ声を大にしてジュベレウス派に抗議しない?


人間を愛しているのならば、なぜ『本当の意味』で人間側に立たない?


なぜ『本当の意味』で人間を救おうとしない?


なぜ反旗を翻し戦おうとしない?


ジュベレウス派のご機嫌を伺いビクビク怯えやがって。


結局は天界における『保身』が一番大事か? 


『誇り』というものは無いのか? と。


実は『御使堕し』の際、ミーシャ・クロイツェフに直に会い、
その文句を直接言いたかったほどだ。

そんな事をしたら、
己が魔女であると明かしてしまうようなものだから結局は我慢したが。

950 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:19:08.51 ID:3okE3Kso

まあ、勝ち目がないから立ち上がらないのもわかっている。

天界の一大派閥である十字教も、
ジュベレウス派には到底敵わないのは自明の理だ。

魔界や人間界の者ならばそれを承知の上で、誇りを胸に立ち向かうだろうが、
天界の者達は基本的に『安寧』を好む。

『不可能』に対して立ち上がる根性などない。


ましてや、ジュベレウス派の『犬』としてもう型に嵌りきっている十字教には。


――――――と、ローラの『文句』はここらで置いておくとして、とりあえず今はイギリスを守れそうだ。


天界はイギリスを見捨てなかったのだ。



まあ、ここからはローラ達にとって新たな『苦難の始まり』でもあるのだが。
いくら十字教でも、『コレ』はさすがになだめきる事ができないだろう。



ジュベレウス派がローラ達に向ける、壮烈な『怒り』と『殺意』は。



かの者達は絶対に容赦しない。



ローラ、インデックス、そしてステイルに対し、
ジュベレウス派は全力で壮絶な追い込みをかけてくるだろう。



ありとあらゆる手段を使って―――だ。

951 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:22:02.32 ID:3okE3Kso

ローラ「…………………………む?」

ぼんやりと天井を仰ぎ見ていたら、
いつのまにか目的の扉の前に到着していた。


周囲は静かになっている。

バッキンガムに詰めていた兵達は、無意識の内に大方ぶちのめしたのだろう。

いくらローラの力が不完全とはいえ、腐っても『アンブラの魔女』。
普通の人間では到底相手にならない。



ローラ「……さて……………………行きたるか……」



扉の前でポツリと呟くローラ。

この扉の向こうが『山場』だ。

今こそ親友、エリザードとの誓いを果たす時。


彼女の『退位』の時までイギリスの為に。


そして思いっきり目立ち、『見せ付ける時』だ。


『私はイギリスの敵だ』 と。


全ての思いを内に押し込め『鬼』となる時だ。


イギリスへの愛も。

そして親友への思いも。


『本物のイギリスの敵』となる時だ。

952 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:23:51.61 ID:3okE3Kso

ローラは両手で、ゆっくりとその大きな扉を押し開けた。

扉の向こうは薄暗い大きな部屋。



そして扉から10m程奥。

そこに英国女王エリザードが座していた。

質素でありながらも洗練された、美しい木造りの椅子に。

肘掛に肘を突き、頬杖をし。


鋭い矛のような瞳を真っ直ぐにローラに向けながら。

全身から殺意と敵意を溢れ出させ。

だらりと下がっている女王のもう一方の手で、

霊装『カーテナ=セカンド』の柄を握り締め。



『カーテナ=セカンド』。

見た目は長さ80cmほどの両刃の剣。

使用者となる英国王室の者には天使長の力を与え、
その者に仕える騎士達にも天使の力が与えられるという、

イギリスが誇る最大霊装の一つだ。


そんな最終兵器級の霊装が淡く光を放っていた。


天界の『意志』を帯びて。


エリザードがローラに向ける敵意を後押しして。

953 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:26:22.49 ID:3okE3Kso

エリザード「……………………来たか」


ローラ「ふふ―――」

その『光』を、その『親友』の顔を見てローラは目を見開き。


ローラ「んふ、んふふんふふふふふふふふふふ―――」


口を大きく横に裂き。



ローラ「さぁさぁ、『退位の時間』でありけるわよ―――」



魔女の証である、その妖しくも艶やかな『金色の髪』をうねらせ。



ローラ「―――『最期』の祈りは済たるか?」





       陛 下 殿
ローラ「Your Majesty」




そして『本物』になる。

これで天界はイギリスを『許す』だろう。
これでイギリスは守られるだろう。


女王エリザードの『退位』をもって。


女王エリザードの『血』をもって。


954 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:28:00.25 ID:3okE3Kso
―――

学園都市。
とある病棟の廊下。


ステイル「……………………アンブラの………………魔……女………………だと?」


土御門「……知らないままあの女に従ったのか?」


土御門「布告によればローラ=スチュアートは『アンブラの魔女』。お前はその『使い魔』」


土御門「インデックスは…………お前らと関わりが強いから疑われてるんだろ」


ステイル「…………」


違う。

土御門は知らないだろうが、ステイルは知っている。

ステイルは見た。

ヴァチカンでのあの女達、そしてローラが使った力を。
そしてそれと同じ力をインデックスも使ったのを。


あれは恐らく、いやほぼ確実に『魔女の業』だろう。


つまりインデックス『も』―――。

955 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:31:07.81 ID:3okE3Kso
ステイル「……」


土御門「まあ、ともかくだ。お前らは今、イギリス清教の敵だ」


土御門「十字教、天界の敵だ」


ステイル「そうか………………」


土御門「…………」


二人は向かい合ったまま、
無言でお互いの顔を見据えた。


鋭い目で。


睨むように。




ステイル「………………つまり今……君と僕は『敵同士』という訳か」

956 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:32:50.32 ID:3okE3Kso
土御門「…………まあ、そうなるな」

そのステイルの地を這うような重い声に、土御門はそっけなく答えた。

無感情に。


ステイル「…………で、どうするつもりだい?命令通り、僕を『排除』するかい?」


土御門「そうするべきだろうな」


ステイル「…………僕を倒せると?」



土御門「いいや。無理だ。だがそれでも従うべきだろ。何せ陛下の命だしな」



土御門「…………っと言いたいところだが……」


とその時。
土御門は急にニヤニヤとし始め。


ステイル「…………?」


土御門「こっちは今な、『個人的理由』で猛烈に忙しいんだぜよ」

957 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:38:06.15 ID:3okE3Kso

土御門「いや〜、ちょうど『休職届』でも出そうかと思ってたところでな」

土御門「『悪い』が、『向こう』に付き合ってるヒマはないんだぜよ」


頭を掻き、大げさに残念そう仕草をする土御門。


土御門「そういうことでだ。俺はこの命令は『聞いていない』」


ステイル「…………は、はは」


解ける緊張。

ステイルも軽く笑みを浮かべた。


ステイル「そうかそれは『残念』だな。君とも一度『本気』で遊んでみたかったんだが」


土御門「勘弁してくれ。今のお前とは絶対に戯れたくないぜよ」


土御門「……と、そうだ、一つだけ言っておく」


土御門「お前が死のうが、あの胡散臭い女が死のうがどうでもいい。だがな―――」




土御門「―――俺の『ダチの女』は絶対に死なすなよ」




ステイル「……ふん、当たり前だろう」

958 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:39:43.73 ID:3okE3Kso
土御門「OK、っつーことでな」


そして土御門は軽くステイルの上腕を叩き。


土御門「お前らの事は何も報告はしない。だがお前らを助けるつもりもない」


ステイル「いや、助けたかったら助けてくれても良いんだが?」


土御門「おおっとその手には乗らねえぜよ。『そっち』には行かないぜ」


ステイル「そうか、それは残念だな。楽しくなりそうなんだが」


土御門「はは、…………ところで一つ聞くが」


ステイル「何だい?」



土御門「ねーちんはどうした?」



ステイル「…………………………………………彼女はもういない」

959 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:41:22.08 ID:3okE3Kso

土御門「………………………………そう……………………か」


一瞬だけ。

僅かに一瞬だけ、土御門の表情が濃く翳った。


ステイル「…………」

すぐにまたいつもの『仮面』に戻ったが。

その僅かな表情がステイルの脳裏にはっきりと焼き付けられた。
土御門が一瞬だけ見せた『悲しみ』の顔が。


以前なら、そんな他者の表情など気にも留めなかっただろう。


そんな風にステイルが思っているとは露とも知らず、
土御門はまたいつもの調子で言葉を続けた。


土御門「ま、何せ情報が足らなくてな。イギリスもお前らの件もあって大混乱だしよ」


土御門「そういう事でだ、俺は今からアレイスターの所に行くぜい。お前も一緒にどうだ?」


ステイル「……」

960 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:43:09.77 ID:3okE3Kso
そう、ついさっきまでステイルもアレイスターの下へ向かおうとしていた。


己が置かれている状況を知るまでは。

学園都市はイギリスと同盟を結んでいる。


つまり―――。


土御門「あー、それは心配ないと思うぜよ。引渡しはしないと思うぜい」


と、そこでステイルの懸念を察したのか、土御門が先回りして答えた。


ステイル「……そうだといいがな」


土御門「お前はともかくインデックスを今、かみやんがいる時に引き渡すのは色々と問題があるだろ」


土御門「ダンテもここにいるしな。そう波風は立てたくないはずだ」


ステイル「……そうか。では少しは君を信用してみるかな」


土御門「少しはって、今まで信用されてなかったのか俺は」


ステイル「まあな。君も『あの女』と同じくらい胡散臭いからな」


土御門「おおう、そいつは手厳しいぜい」

961 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:45:03.66 ID:3okE3Kso
土御門とステイルは並び、そして廊下を進んでいく。


土御門「……それにしてもな、まさか『アンブラの魔女』の伝説も事実だったとはな」


ステイル「『スパーダの伝説』も同じだっただろう?『真実』は『物語』よりも『物語らしい』面がある」

ステイル「僕も実際にフォルトゥナに行って、スパーダの息子と孫に会うまでは信じてなかったしね」


土御門「そう考えると、俺らってかなり『バチ当たり』だぜよ」


ステイル「……どういうことだい?」


土御門「十字教の事だって、俺らは『神の存在を知っているだけ』で、『神を信じてはいない』だろう?」


ステイル「はは、まあ確かに。『力』を利用させてもらっていただけだったな」


ステイル「だがそこは『現実主義』と言って欲しいね」


土御門「……というかな、話はまた戻るが、」


土御門「『アンブラの魔女』が実在してたって事は、その『滅亡の経緯』も実話だった可能性が高いな」

962 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:47:01.79 ID:3okE3Kso

ステイル「『神々の軍勢が降臨し、一夜にしてアンブラの都を滅ぼした』……か」


土御門「……最……いや、ローラ=スチュアートの力は直で見たのか?」


ステイル「ああ。恐らく、いや確実にあの女は僕よりも遥かに強い」


ステイル「少なくとも大悪魔上位クラスの力を持ってるだろう」


土御門「……ということは、『神々の軍勢』は……」


土御門「そのレベルの連中がごたまんといた都をたった一日で滅ぼしたってことか」


土御門「ひゃ〜、本当に『ご愁傷様』だぜよステイル君」


土御門「んな連中に狙われてるとは」



ステイル「…………さすがにストレートに言われるとかなり堪えるな……」
963 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/09(月) 00:51:50.37 ID:3okE3Kso

土御門「ま、落ち込むな。何とかなる。せいぜい死なないように頑張るんだぜい」

ステイル「……君も『こちら』に来ないかい?助けは多い方が良い」

土御門「だからその手には乗らないぜよ。『勧誘』はお断りだにゃ〜♪」

ステイル「…………上条が(ry」

土御門「おおう、頼むから巻き込まんでくれ。勘弁してくれい」


ステイル「…………はは」


土御門「……それにしてもな……こう『伝説』や『神話』が真実だったら、色々と夢が広がるぜよ」


ステイル「…………僕は逆に嫌だがな。厄介事が増えるだけだ。『真実の歴史』は知らない方が良い」


土御門「いんやあ、歴史は浪漫だろ。もしかしたら『あの伝説』も実在してるかもな〜」


ステイル「……どの伝説だい?」


土御門「『伝説のメイド王国』」


ステイル「…………さて、僕がその『伝説』を知らないだけなのか、それとも君がおかしいのか、一体どちらだろう」


土御門「お前が知らないだけだ。世界は広いんだぜい?」


ステイル「…………君を信じるのはやはりやめておこうかな」


土御門「ステイル君ったら本当に夢が無いにゃ〜。つまんない男だぜよ」


ダンテ「学園都市か」27(勃発・瓦解編)



posted by JOY at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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