2010年08月18日

ダンテ「学園都市か」9(勃発・瓦解編)

971 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/10(火) 23:44:35.22 ID:rTQks5Qo
―――

窓の無いビル。

赤い液体が満たされた水槽の中、アレイスターは静かに目を瞑っていた。

眠っているわけでは無い。
こう見えて実は脳内はかなり活発に活動している。

彼は今の状況、そして今後の情勢、その中でのプランの位置を確認していたのだ。
これはいつもやっている、言わば日課・癖のようなものだろう。

こうやって常に自分の位置を見定めつつ全体像を把握し、
絶え間なく入ってくる新情報を組み込み、
これから起こりうる様々な事態を予測することが重要なのだ。


絶え間なく入ってくる新情報。

つい数分前、大きな『ソレ』が飛び込んできたばかりだ。


それはイギリスでの騒動。



『元』最大主教、アンブラの魔女ローラ=スチュアートの『反乱』。



ローラ=スチュアートは身分がバレたと知った途端、バッキンガム宮殿に乗り込み、
女王エリザードにかなりの重傷を負わせて逃走したらしい。

973 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/10(火) 23:48:00.47 ID:rTQks5Qo

これにはさすがのアレイスターも驚いた。

以前からあの女には色々思うことがあったが、まさか本物のアンブラの魔女だったとは。

まあ、それならば天界傘下のイギリスから『国家の敵』・『神の敵』として認定されるのも当然。


同じく『神の敵』として指定されたステイル=マグヌスと禁書目録。

この二名は今、学園都市にいる。


アレイスター「……」


天界からすれば、学園都市が匿っているようにも見えるだろう。
つまり、かの者達の学園都市への怒りは更に倍増されたというわけだ。

そして当然、イギリスもこの二名の引渡しを要請してくるだろう。


だがアレイスターにとって、それに応じる理由は無い。

応じても何も利益が無いのだ。

あの二人がいなくともどの道、天界は学園都市を潰す気だ。
ならば大きな戦力となりうるあの二人を、匿っていた方が良いのは確実では無いか。


敵の敵は味方。


至極当然、単純明快な法則だ。

974 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/10(火) 23:50:11.79 ID:rTQks5Qo

イギリスの要請を断れば同盟は破棄されるだろうが、それも今や大した問題ではない。

この同盟も対ローマ正教としてパワーバランスを保つ為のものであり、

その人間世界のしがらみなどどうでもいい今の状況下では、
アレイスターにとって気にすることでは無い。

そもそもアレイスターは天界と敵対していたわけなのだから、
どの道イギリス清教とも敵対するのは確実だったのだ。


そして今の状況下では、イギリス清教も脅威では無い。

イギリス清教とローマ正教が手を結んで学園都市に対抗する事も有り得ない。

ヴァチカンの件もあって、彼らの関係はもう修復の余地無しだ。

必ず全面戦争となる。

そうなれば、イギリスも遠く離れた学園都市には構ってはいられないだろう。
何せ海峡を挟んですぐ隣にローマ正教陣営があるのだから。


例え魔術師の刺客を送り込んできたとしても、
『とある理由』で彼らは学園都市内では『ほぼ無力化』される。


アレイスター「…………」


そう、『とある理由』で。


今の学園都市内では、『通常の天界魔術』は使用できないのだ。

975 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/10(火) 23:51:57.64 ID:rTQks5Qo
学園都市は今、高密度のAIMに覆われている。

この中では、『通常の天界魔術』はまともに起動しない。


これは以前、神の右席『前方のヴェント』が学園都市に襲来した際の、
ヒューズ=カザキリの『完全起動』下での状況と同じだ。


この高濃度のAIM拡散力場が、『通常の天界魔術』を阻害する原理。

それは『セフィロトの樹』に重大な障害が起きる為だ。


基本的に『通常の天界魔術』とは、

『セフィロトの樹』を経由して送り込まれてくる、
人間の為に『調整』された『テレズマ(天使の力)』を動力として、機能する魔術の事を指す。


これが『魔界魔術』や『能力』と最も違う点だ。


『魔界魔術』や『能力』は、力の源から『直接』引っ張ってくる。


だが『天界魔術』は、『セフィロトの樹』という管理システムのワンクッションを置く。


『調整』と『統制』の為に。


『調整』とは、天界の力の法則を規格化し、薄めることだ。


『純の力』だと人間に負荷がかかりすぎるのだ。

976 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/10(火) 23:56:57.61 ID:rTQks5Qo

『能力』、つまり『封印されし力場』から引き出された力は既に『死んでいる』。
太古の昔に滅びた、『死んでいる』存在の残骸だ。

その為、使う際の『拒絶』はほとんど無い。


だが魔界や天界からの力は『生きている』。

『生』として存在している者達の力を引き出すのだ。

当然、胎動し意志を持っている力は、使用者に対し拒否反応を示すこともある。


その部分を削り落とす為にある機能が、『セフィロトの樹』の『調整』だ。
これにより力はかなり弱まるが、それを扱える者の人数を爆発的に増やすことができる。

天界は個々の戦闘能力よりも、数を優先したのだ。

魔界魔術の使い手の数が絶対的に少なく、それでいて個々の戦闘能力が異様に高いのはこの為だ。

(天界魔術の使用者の合計が数百万に達するのに対し、魔界魔術の使用者は数万足らずだ)


そして『統制』。

天界に仇なす者に天界の力を利用されない為の制御機構だ。

『天界の敵』である『能力者』が、
天界魔術を使おうとすると『魂』が蝕まれるもこの働き。


強引に能力者が天界の力を使おうとすると、
『セフィロトの樹』の働きによりその者の『魂』が破壊されてしまうのだ。

977 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/10(火) 23:59:37.18 ID:rTQks5Qo

この様に、『通常の天界魔術』は『セフィロトの樹』があってこそのもの。


『セフィロトの樹』に障害が起これば、当然それに頼っている魔術にも影響が出る。

調整システムも狂い。

規格外の『純の力』を流し込まれた術式は、まともに動くわけも無く暴走し。

魔術が起動するどころか、使用者自身がその莫大な力によって蝕まれる。


これが、通常の天界魔術が今の学園都市で使えない理由だ。



だが『通常』と冠するだけあって、例外もそれなりに存在する。


『セフィロトの樹を介さない天界魔術』 だ。


例えば、天界と特別なパイプを持つ『聖人』。

彼らは『セフィロトの樹』を介する、既存の天界魔術も使うが、

聖人としての力そのものは、天界から『直』で流れ込んできている『純な力』だ。
リスクもかなりあるが、その分強力な力を行使する事ができる。

もちろん、それを制御している術式も特別なものだ。

つまり『根元の基本的』な構造は、『魔界魔術』や『能力』と良く似ている事になる。

978 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/11(水) 00:05:22.39 ID:3iWVRjAo


次に『魔神』の称号を持つ者。


一般的に『魔術を極め、神の領域にまで達した者』と言われる者達だ。

具体的にはどうなのかというと、
『セフィロトの樹を介さずに、直で天界から力を引き出す方法を知っている者』だ。

聖人と同じに聞こえるが、聖人は生まれながらにして直で繋がっている『だけ』であり、
その構造を把握しているわけでは無い。


一方で魔神はその構造を把握し、自らその『直のパイプ』を作る事ができる。


つまり聖人は生まれた時から持っている『一本のパイプ』のみであるのに対し、
魔神は複数のパイプを作り、そして状況に応じて使い分けることが出来るのだ。

その為、彼らが行使する力は通常の聖人など遥かに凌駕し、
その気になれば複数の天使から、同時に力を直接授かることも可能だ。


これに該当するのが在りし日のアレイスター自身。

彼はこの道を究めた結果、『セフィロトの樹』の構造と存在意味をも全て暴いてしまったのだ。
人間が決して知ってはならない真実を知ってしまったのだ。



偽装して『セフィロトの樹に繋がっている』と天界に思い込ませ、
のうのうと天界の力を使い捲くっていたローラ=スチュアートもこれに該当する。


言い換えれば、『アンブラの魔女』は魔神と呼べるほどの技量をもった集団だ。

彼女達に対抗しパワーバランスを保つ為に組織されてた、
ジュベレウス派直属の『ルーベンの賢者』も究極の魔神集団と言える。

979 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/11(水) 00:08:26.93 ID:3iWVRjAo

神の右席『右方のフィアンマ』と禁書目録。

この二名も、今の学園都市の状況には左右されない『例外』だ。


アレイスターの知る限り、禁書目録は魔女ローラ=スチュアートの手がかなり入っている。
それならば『魔神』化してても何ら不思議ではない。

先程の戦いを見るとおり、
AIMの濃度が爆発的に上がった後も、普通に天界魔術を使っていたのがその証拠だ。


そして『右方のフィアンマ』。


『神の右席』は、十字教の四大天使の力を授かっている。

彼らの『セフィロトの樹』は通常のとは違い、
その四大天使の力を効率よく使えるよう、天界の計らいで特別に調整されているものである。

神の右席専用術式を他の者が使えないのもこの為だ。

だが神の右席といえども、『セフィロトの樹』を介して力の行使を行っている以上、
AIM拡散力場による障害は確実に受ける。

前方のヴェントのように。


しかしその神の右席の中でも、『聖なる右』を有する『右方』だけはまた『特別』だ。


『聖なる右』、つまり『竜王の行使の手』の歴史を見るとおり、
その本質ははっきり言って『天界の力』では無い。



根は『能力』と同種の力だ。



つまり、フィアンマはミカエルの『加護』を有する『魔術師』でありながら、
『能力者』でもあるという事だ。

980 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/11(水) 00:12:02.42 ID:3iWVRjAo

天界の『了解』の下で、『聖なる右』という『能力』を有しているのだ。

『聖なる右』のとある特性上、『セフィロトの樹』とも繋がってもいない為、
高濃度のAIMによる妨害も一切受けない。

当然天界魔術と能力を『併用』し、更に『融合』させても何ら障害は無い。



『右方』とは、唯一人間の中で能力と天界魔術の併用を『許されてる』座なのだ。



アレイスター「…………」


在りし日を思い出す。

あのイギリスの片田舎での激闘を。

そう、『聖なる右』との戦い。

その場にいた他の聖人や魔神とは一線を画す、とんでもない存在だった。

年齢も50程だったろうか、
その力の使い方は今のフィアンマよりも成熟され、かなり練り上げられていた。

当時の『右方』ははっきり言って、先程のフィアンマよりも強かったのだ。


あの時アレイスターは、
一度限りの『切り札』によってようやく相打ちに持ち込むしかなかった。



一度限りの『切り札』によって だ。

981 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/11(水) 00:15:07.25 ID:3iWVRjAo

幸運な事に、今その切り札を使う必要は無かったようだ。

アレイスター「…………」

というか、あの程度の『聖なる右』ならば、その『切り札』を使うまでも無い。

アレイスターが出る必要なく、現『右方』は敗北した。

木っ端微塵に爆散して だ。


アレイスター「…………」


だが、『死んだ』と断言するのは早計すぎるのもまた確か。

考えれば考えるほど、懸念すべき部分が浮かび上がってくる。


特に一番の問題点。


それは この高濃度のAIM拡散力場の中心地で、竜王の『行使の手』が霧散した事 だ。


まるで。


『溶け込んで』いくかのように。

982 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/11(水) 00:16:44.03 ID:3iWVRjAo

だがまあ、そこまで頭を悩ませる心配も無い。

それを考えて一応『防壁』も組み込んでいる。

そして今のところ、その『探査ネット』に引っかかる反応はない。

AIM拡散力場には何ら以上は無い。

これらの結果を見れば、『心配ない』と言えるだろう。


アレイスター「……」


溶け込んでいたとしたら、必ず反応があるはずなのだ。

あれほど巨大な力の塊だ。

隠しきれるはずが無い。


まあ、念には念を入れて、注意しておくに越したことは無いが。


この高濃度の『AIM拡散力場』を、
何度もくまなく調べ上げたほうがいいだろう。


そしてこの高濃度の『AIM拡散力場』の放出主である―――。


―――大事な大事な『要』もだ。


ちなみにその『要』は、以前のヴェント襲撃の際とは違う存在だ。

この『AIM拡散力場』の放出主は『ヒューズ=カザキリ』ではない。




―――先程進化を遂げた『一方通行』だ。





983 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/11(水) 00:18:16.70 ID:3iWVRjAo
―――


とある病棟。


長い廊下を並んで歩く二人の少女がいた。


黒子と佐天。


佐天「それにしても……相変わらずここは厳重ですね……」


黒子「あまりキョロキョロなさらないでくださいまし」


黒子「それと口うるさいでしょうが、余計な物を見たり、面識がない方とは話さないように」


黒子「絶対にですの。ここはある意味『超法規的』場所ですので」


佐天「ちょー……ほ…箒……?……やだなあ、わかってますって〜白井さん」

984 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/11(水) 00:19:48.14 ID:3iWVRjAo

黒子「……はぁ……」

隣の友人の緊張感の無さに溜息を付く黒子。

佐天がこの状況を理解していないわけでは無いのはわかってるが、
どうにもこの空気は気に入らない。


以前も認識したが、

この友人はナイーブな面もあるが一度吹っ切れると、
とんでもなく図太くなるということを改めて認識させられた。


この友人はネガティブになればとことん堕ちるが、
そこを越えたら今度は馬鹿としか言いようが無いほどにポジティブになるらしい と。

一線を越えた後の順応力は黒子以上だろう。

まあそのくらいないと、
二ヵ月半前の事件の後の黒子のように、精神的に擦り切れてしまうのだろうが。

いわばPTSDの一種だ。


黒子としては、友人がそんな風になる姿は見たく無いので、これはこれでいい事なのだが。

985 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/11(水) 00:22:46.62 ID:3iWVRjAo

とはいえ。

佐天も決してこの状況を舐めているわけでは無いはわかるが、
彼女も彼女なりに緊張し、事態の重大さを認識しているのもわかるが。

黒子「……少しは顔を引き締めてくださいまし」


それでも一言告げたかった。


黒子「今回の件、『今のところ』は死者の報告はありませんが負傷者は千人を越えておりますし、」

黒子「住居を失った方は二万人を越えておりますの」


外傷を負った者は極少数だが、大勢の避難途中の市民達が突如意識を失ったのだ。
市民どころか、避難誘導をしていたアンチスキルやジャッジメントまで だ。

事態が終息した後、何事も無く皆意識を取り戻し、大事はないらしいが。

ちなみに黒子はその『強烈な威圧感』に慣れていたため大丈夫だった。

初春は支部で情報統制をしており、現場に出ていなかった為その難は逃れた。


そして死者の報告も『今のところ』はない というだけ。


これだけの規模なら、必ずいくらかは出ているはずだ。
広大な廃墟の中から遺体を見つけ、確認するまでは少なくとも数日はかかるだろう。

986 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/11(水) 00:24:34.87 ID:3iWVRjAo


佐天「………………あ………………すみません」


強い口調で現実的な数や被害状況を示され、ようやく佐天も顔を引き締めた。


二人は無言のまま、廊下を進んでいく。

彼女達は御坂に会いに来たのだ。

厳重な身元確認をし立ち入りと面会が許された際、
その黒服の男から『超電磁砲は無傷であり、軽い検査で済む』と聞いたが、

あれ程の規模の戦いに身を投じていたとなれば、やはり心配だ。


と、そうしてL字状の廊下の突き当たりを曲がった時。

廊下の向こうに、その目当ての人物が立っていた。

黒服の男に食いかかるように、何かを話し込みながら。


佐天「あ、いましたよ……元気そうですけど何話してるんでしょ?」


黒子「……行きますわよ」

987 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/11(水) 00:26:34.38 ID:3iWVRjAo

―――

御坂「もう一度ちゃんと調べて。『海原 光貴』」


「何度も言うが、この病棟にその名の者は入ってない」

手のひらサイズのPDAを操作しながら、小さく肩を竦める黒服の男。


御坂「もしかして私のセキュリティレベルが低いから教えられないっての?」


「いいや。お前の方が俺よりも上だ。少なくとも俺の所にはその者の情報は来てない」


御坂「そう……じゃあそれちょっと貸して。私の方がセキュリティレベル上なんだからいいでしょ」

と、言いながら御坂はPDAを奪い取り。


「お、おい!…………チッ……クソガキが……」


黒服の男のボヤキなど全く聞かずに、自ら操作し調べていく。

だが男の言うとおり、『海原 光貴』の名はどこにも無かった。

一応能力を使ってハックもして、周辺の病院も調べたがそれでも見つからなかった。

まあ代わりに、上条・インデックスと一方通行の病室の位置を特定したので、
収穫ゼロというわけではないが。

988 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/08/11(水) 00:29:01.64 ID:3iWVRjAo

御坂「…………本当に無いわね。邪魔して悪かったわ」


溜息混じりに、御坂はPDAを投げつけるように男に返した。


「……おい。お前の面会人だ」

とその時、黒服の男は立ち去ろうと踵を返しながら、顎で御坂の背後を指した。


御坂「へ?」

振り返ると。


黒子「おっっっっ姉さまああああああああああああああああああく、くくくくく黒子はぁあああああああああああ!!!!!!!!」


飛びかかって来ていた後輩が目に入り。


御坂「っっっしゃぁあああああああああ!!!!!!!!!」


黒子「んひぃいいぎぁああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


そして反射的に電撃で打ち落とした。

ついつい反射的に。

ついつい強めに。


黒子はこの時以降、二度と背後から飛びかかろうとはしなくなった。


背後から だが。


3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:04:02.99 ID:3iWVRjAo
―――


窓の無いビル。


アレイスター「…………」



学園都市を覆う高濃度の『AIM拡散力場』。

その原因は、ヒューズ=カザキリではない。

エイワスでもない。



一方通行だ。



学園都市中のAIMを掻き集めた存在と同じ規模・濃度のAIMを、

今の一方通行はたった一人で放散しているのだ。
その原因は当然、先の『戦い』だ。


あの場で、一方通行は更に進化した。

遂に『人間界の天使』の領域へ、
『生きている身』・『魂と器』を持つ者として足を踏み入れたのだ。

この 『生きている身』・『魂と器』を持っている という点が、
一方通行がヒューズ=カザキリやエイワスと最も違う部分だ。


今の一方通行とヒューズ=カザキリの『力』自体は拮抗しつつあるも、
その『性質』と『構造』は全く別物だ。

4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:05:45.02 ID:3iWVRjAo

ヒューズ=カザキリとは、
『学園都市中の能力者』という小さな蛇口から僅かに染み出た、

『AIM拡散力場』を寄せ集めた結晶だ。


古の滅びし、人間界の神々の『力』の『集合体』であり、『タダの力の塊』に過ぎない。

『風斬 氷華』という人格は操作しやすいようにアレイスターが組み込んだものであり、
厳密に言うと『生命』ではない。

『器』も『魂』も持っていないのだ。

当然、ヒューズ=カザキリの上位体であるエイワスもだ。
この二体は、大勢の能力者がいないと存在を維持できない。

封印されている『力場』から力を引き出す、『大量の蛇口』がないと だ。

この供給が止められたら、ヒューズ=カザキリやエイワスはいずれ完全に消滅する。

器と魂が完全に破壊された、悪魔や天使が復活できないのと同じく だ。

『器』と『魂』が無ければ、力を『修復・成長』させることどころか、
現状を維持する事もできずに、時間と共に崩壊して霧散していくのだ。


『器と魂』が無い『タダの力の塊』はつまるところ、
『生ある存在』としては完全に死んでいる状態だ。


つまり、ヒューズ=カザキリとエイワスは古の神々の『亡霊』だ。


『死んでいる力』のみで形成されているのだ。

5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:08:23.37 ID:3iWVRjAo
対する『一方通行』。

彼は『生きている』。

『器と魂』を持ち、そして力の『修復・成長』も可能だ。


その力は『生きている』のだ。

数千年の時を越えて、遂に『生きている状態』の『人間界の力』が誕生した。


『人間界の天使』の領域へと踏み込んだ彼は、
最早ヒューズ=カザキリらのような外部からの供給はもう必要としていない。

封印されし『力場』からの供給を だ。


もう一般の能力者のように、その『力場』から『死んでいる力』、

『古の神々の残骸』を借りなくてもいいのだ。


何せ彼の魂と器の中で力は『生きている』。

彼の内部で力は胎動し、成長を始めている。


『力場』から大勢の能力者へ。
その能力者達から供給を受ける。

というヒューズ=カザキリらの行程を、


今の一方通行は己の『内部』のみで完結し、今尚更なる高みへと進化し続けているのだ。

6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:10:40.23 ID:3iWVRjAo

本物の悪魔や天使と同じく、己の『器と魂』を力の供給源とし、
『力場』に頼らない存在へと。

魔女達と同じような、『別次元の人間』へと昇華するのだ。

(その力の属性は魔界と人間界で全く別物だが)


もう、ただ一方的に力場から供給を受ける立場ではなくなる。


逆に、一方通行『側』から『力場』へと力を供給することも可能だ。

つまり、一方通行『側』からの『力場』への干渉も可能なのだ。


ヒューズ=カザキリやエイワスを形成した、
この巨大なAIM拡散力場を統べれるようになれるのももうすぐ。

全能力者の『力』を統制するのも可能になる。

それだけじゃない。



封印されていた『力場』の、その莫大なエネルギーを手中に収めるのも可能になる。



これこそが、アレイスターが一方通行に求めていたモノなのだ。

7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:12:29.56 ID:3iWVRjAo

天界に封印されて数千年。

その時を越えて、遂に『人間界の力』と『人間の魂』が直接繋がり、そして融合した。


長き時を越えて、『力場』に生ある者の『意志』が流れ込むのだ。


アレイスター「…………」


この状況下での、『通常の天界魔術』はまともに起動しない というのはアレイスターにとってただのオマケだ。

天界の干渉を避ける為に一方通行を育てたわけでは無い。


『封印されし力場に直接干渉できる個体』が欲しかったのだ。


『セフィロトの樹』から完全に外れ、『力場』に『直接』繋がる個体が。




『力場』へと、こちらの『意志』を流し込める巨大な『パイプ』が。



とはいえ、一方通行にはもう少し手を加える必要があるが。

欲しいのは力場に直接干渉できる『魂と器』。

彼の『精神』ではない。

8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:14:35.78 ID:3iWVRjAo

その精神、つまり『意志』を排除する必要がある。


『未元物質』とミサカネットワークがその『最後の調整』の為のパーツだ。

その調整が終われば、プランのゴールはもう数歩先。

目前だ。

調整が終わった後。

次にエイワスとヒューズ=カザキリ、この二つの存在を形成する、大勢の能力者によって支えられている巨大なAIM拡散力場、

これらで『幻想殺し』を洗浄し『初期化』する。


いや、幻想殺しとしてではなく、あらゆる情報と力を飲み込むことが出来る『竜王の顎』を だ。

『完全起動』させ『生きている力』として だ。


その後、その『浄化』された『竜王の顎』と『一方通行』を結合し。

そして最後にアレイスターの『意志』を、
このアレイスターが『入っている肉体』の『能力』を使用して結合させる。


『セフィロトの樹』の構造を完全に『理解』した、アレイスターの『意志』を だ。


それで彼の最終目的が遂げられる。

それでプランが遂に成就する。


アレイスター念願の、とある『二つ』の事象が起こるのだ。



それは天界の完全滅亡と―――――――――。

9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:15:18.16 ID:3iWVRjAo
―――と、そうやって思考を巡らせていた時。


アレイスター「…………」


とある複数の気配に気付き、アレイスターはゆっくりと目を開けた。

すると、水槽の前5m程の所に三人の少年と二人の少女が立っていた。

いや、その内の一人は座っていたが。


土御門、ステイル、結標。


そしてボロボロのワンピースコートを着、アラストルを右手に持っている麦野と。

同じくボロボロの服を着て、床に座っている一方通行。


アレイスター「…………待っていたよ」


ステイル「話がある」


土御門「同じく」


10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:16:48.43 ID:3iWVRjAo
―――

とある深い森。

太陽が高く昇っているにも関らずその一帯は薄暗く、そして湿った冷たい空気が覆っていた。

そんな森の奥深くにポツンと佇んでいる古い廃屋。

人の手が入っていた頃はそれはそれは立派だったであろう洋館。

人々の記憶から捨て去られた今は、
正に『化物屋敷』という表現が相応しすぎるほどにおどろおどろしい姿をしている。

ある意味その『姿』は『正しい』。


なにせ今は、本物の魔女達と最強の悪魔のアジトなのだから。



廃屋の一階。

広め部屋の中央に置かれている、大きな薄型テレビとソファー。


そのソファーに、シャワー上がりのベヨネッタは寝そべっていた。
缶ビールを片手に。


格好は、普段の黒縁メガネに大き目の白いTシャツ、下はいろいろな意味で際どい黒のパンツ一枚。
当然ノーブラ。

ちょうど太ももの付け目辺りまで覆っているTシャツ、
そのギリギリの裾から黒のパンツがちらりちらりと見え隠れしていた。

11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:20:02.38 ID:3iWVRjAo

普段の黒いピチピチボディースーツは、ベヨネッタの髪が変異してたもの。
つまり厳密に言えば、あのスタイルのベヨネッタは常に『全裸』という事になる。

そしてシャワー上がりの今、一応ようやく全裸では無くなっているというわけだ。

そんな彼女の周りの床には、空になったビールの缶や、ウイスキーやワインのボトル、
スナック菓子の袋等が散乱していた。

これらはたった今、シャワーから上がった彼女が一気に消費したもの。


ベヨネッタ「………………………………げぇぇぇっっふっ……」


だらしなくソファーに寝そべりながら、胃からこみ上げてきた空気を下品に吐く。

完全OFF時間のだらしなさは、どこかの某デビルハンターと良く似ているかもしれない。

ON状態のぶっ飛び具合も良く似ているが。


と、そうしてソファーの上で伸びていたところ、
部屋のドアが開け放たれジャンヌがツカツカと入ってきた。


ベヨネッタと彼女の周囲の有様を見、
あからさまに呆れた表情を浮かべて。


ベヨネッタ「ん〜んお先。ほらどうぞ」


そんなジャンヌに対し、ベヨネッタはもう片方の手で別の缶ビールを持ち、
ジャンヌの方へと放り投げた。

13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:23:11.30 ID:3iWVRjAo

ジャンヌ「……全くお前って奴は……」

その缶ビールをキャッチし、ソファーの背もたれに軽く腰掛けるジャンヌ。


ジャンヌ「……バージルはまだか?」

ベヨネッタ「戻ってないわよ。学園都市はもう静かになったらしいけど」


ベヨネッタ「というか『右方』の『ドラゴンちゃん』どーすんのよ。アレ生きてんの?」


ジャンヌ「それもバージルと話しなければな」


ベヨネッタ「どこをほっつき歩いてるんだか」

ベヨネッタ「というか勝手に学園都市行くとか」


ジャンヌ「『右方』が学園都市に来るのを察知してたんだろ」


ベヨネッタ「あーあーわかってたなら教えろってのよ」


ベヨネッタ「『協調性』が無いから結局ミスするのよ」

ベヨネッタ「こっちはしっかりきっかり仕事済ませたのに」


ジャンヌ「…………まあ仕方ないさ。まさかダンテが来るとはバージルも思っては無かっただろうよ」

一瞬ジャンヌは どの口で協調性って と突っ込みたくなったが、そこは心の奥底に静かに仕舞いこんだ。

14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:28:56.18 ID:3iWVRjAo

ベヨネッタ「こっちだって『不測の事態』があったけどちゃんとこなしたでしょ」

ジャンヌ「仕事が済んだ後だっただろ。それにローラとダンテを比べるわけにもいかないさ」


ベヨネッタ「…………ローラ……」


ベヨネッタ「…………あれ、『メアリー』じゃないの?私見たのよ『ローラ』が死んでるの」


ジャンヌ「いや、それは無いよ。あのすっ呆けたノリはローラだ。メアリーはもっとお淑やかだった」

ジャンヌ「私はメアリーとはあまり話したことも無かったしな。ああやって接してくる事はまずないさ」


ジャンヌ「少なくとも私らが話してた『相手』はローラだと思うよ?」


ベヨネッタ「…………でも『バレットアーツ』使おうとしてたわよ?」


ジャンヌ「……」


ベヨネッタ「そもそもアレ、『おてんばローラ』の装備じゃないでしょ?」


ベヨネッタ「あの子、バレットアーツを習う歳ですら無かったと思うけど」

15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:34:59.54 ID:3iWVRjAo

『バレットアーツ』とは、武器を取り付けた四肢による魔女の超高速体術だ。

『バレット』とあるが、武器は銃だけではなく剣や槌・鞭等などありとあらゆる物を扱う総合的なもので、
戦闘員には必須の技術だ。

更に単純な戦闘能力強化だけではなく、

力の統制の仕方・己の内にある『魔』の強化・様々な術式を体と魂に『染み込ませる』等、
全体的な強化の面もある。

アンブラの『戦士』の基本中の基本だ。
これを習得していなければ、アンブラ内では戦力として数えられない。


アンブラの魔女の戦闘スタイルの基本は、至近距離下での超高速肉弾戦。

彼女達の戦闘の根底には必ず『バレットアーツ』がある。
アンブラの魔女の戦闘能力は、『バレットアーツ』をどれだけ扱えるか に直結している。


ベヨネッタとジャンヌがアンブラ最強と謳われているのも、
『最強のバレットアーツ使い』という前提があるからこそだ。

魔女達が扱う魔術も、基本的には『バレットアーツ』と併用すること前提として、
長い歴史の中で熟成されてきたものだ。

当然、奥義の一つでもある『ウィケッドウィーブ』もだ。

それらの魔女の術は、『バレットアーツ』と組み合わせる事により本当の威力を発揮する。

その組み合わせの相性によっては、単体時の数千倍もの火力を発揮することもあるほどだ。



と、ここまで言えば、お手軽な万能ツールのようにも聞こえるがそれは違う。

『バレットアーツ』をマスターするにはかなりの時間を要する。

魔女の修練の内、バレットアーツ習得の為に裂かれる時間は8割以上。

そして一人前として認められるには、最低でも50年はかかるのだ。

16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:39:25.57 ID:3iWVRjAo
一人前になるだけでそれだ。

『一人前』とは決して『達人』というわけではない。

ようやく『戦力』として認められる最低ラインだ。

かつてメアリーが在籍していた、近衛等の精鋭になるには、
更に過酷かつ長きに渡る修練が必要だ。


そして当時のローラの年齢は10歳前後。

魔女の世界では正に赤子同然。

彼女がバレットアーツを習得していたはずはない。


(『書記官』とは文官であり戦士では無いため、就任にはバレットアーツ技術は必要としていない)


更に、素質さえあれば習得できる『ウィケッドウィーブ』とは違い、
『バレットアーツ』を本格的に教わるのは肉体がある程度成熟してからだ。

当時のローラは修練が始まってさえいなかったはずだ。


都が滅んだ後の500年間で独学で習得したとも考えられない。

数千年に渡り、無数の魔女達が人生を捧げて練り上げてきた技術の結晶だ。


『世界の目』という反則的な力を持っているベヨネッタはともかく、

こればかりはジャンヌでも無理だ。


たった一人、たった500年で『ゼロ』から習得するなど。

17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:43:17.90 ID:3iWVRjAo
だが、ヴァチカンのローラは確かにバレットアーツを習得していた。

ただ装備を持っていただけではない。


立ち振る舞いや、醸し出す空気でわかる。


ジャンヌ「…………あの装備…………メアリーのか?」


ベヨネッタ「ただ、姉の『形見』を持っているってわけでも無さそうね」


ジャンヌ「じゃあこうか。私らが話していたのは『ローラ』だが……」


ベヨネッタ「戦おうとしていたのは『メアリー』」


ジャンヌ「あの金髪の体はローラ、話していた精神もローラ、でも魂はメアリー……」


ベヨネッタ「……な〜んか腑に落ちないわね。どこかが間違ってる気がする」


ジャンヌ「『観測者』さんよ、その『世界の目』で何か見えないかい?」


ベヨネッタ「ん〜はぁ、そう都合良く動くもんじゃないのよ『この目』は」


ジャンヌ「まあ、そりゃそうだ」


ベヨネッタ「…………心配?おてんばローラの事」

18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:44:31.53 ID:3iWVRjAo
ジャンヌ「…………」


『心配じゃない』と言えばそれは嘘になる。

現に、ヴァチカンで彼女に会った時は心の底から嬉しかった。
生き延びていた『家族』が自分達だけではなかった と。

そして当然、『あの子』が心配だ。

天界傘下に入っていたという大罪を背負ってはいるが、

かけがえの無い家族なのは真実。

かけがえの無い同族なのは事実。


彼女が『こちら』に来なかった理由も気になるし、
何よりも絶対に死なせたくない。


これ以上、『姉妹』が死ぬのは見たくない。


だが。


ジャンヌ「………………ま、アイツの件はまた今度だ」


『今』は『今』の仕事を優先すべきだ。

19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:46:30.50 ID:3iWVRjAo

ベヨネッタ「…………そうね」

缶ビールを一口飲み、小さく呟くベヨネッタ。


彼女も内心はジャンヌと同じだった。

ここで今ジャンヌが ローラを救う と言ったとしたら、彼女も共に立ち上がっただろう。

今の仕事を放棄してでも、だ。

だがそんな事など許されない。

そんな事をすれば、『人間界を救う』チャンスは二度と来ない。

魔女も広義では『人間』に属している。

『魔界の理』で生きているが、生まれた地は人間界。


その故郷である人間界と魔女一人の命。

天秤にかけるまでもなかった。

優先すべきなのはどちらなのか、それは明白だった。


ベヨネッタ「今は『コレ』やらなきゃね」


ジャンヌ「ダンテが動く以上、バージル一人に任せてられないしな」


ベヨネッタ「ねぇ〜。ダディってなんだかんだで弟に『甘い』みたいだし」

20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:48:40.21 ID:3iWVRjAo

ジャンヌ「…………」


ベヨネッタ「で、話し変わるけどどう?あのイギリス清教の子は?」


ジャンヌ「ほら」

ジャンヌが指を軽く弾き音を鳴らすと、
先程彼女が通ってきたドアが一人でに大きく開き。

その向こうの、小部屋の角にいる五和がベヨネッタからも見えた。


五和は七天七刀の鞘を固く抱き、
頭を伏せて小さく蹲っていた。


ジャンヌ「ご覧の通りだ」


ベヨネッタ「あら、萎れちゃってかわいそーねぇ」


ベヨネッタ「どーすんのあの子。私がバージルに説明するのはイヤよ」


ジャンヌ「『勝手にしろ』の一言で終わるさ」


ベヨネッタ「でもさ、『アレ』の『転生』が失敗してたらさすがにさ」

ベヨネッタ「『置いておく意味は無い』ってバッサリやられちゃいそうだけど」


ジャンヌ「失敗してたらお前の責任だからな」

21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/11(水) 01:53:03.15 ID:3iWVRjAo

ベヨネッタ「んん……あの『刀』はバージルの『子』なんだから、一番はバージルじゃない?」


ベヨネッタ「あ……もしかして、バージル直で『煉獄』に行ったんじゃない?」


ジャンヌ「……今か?早すぎると思うがな……」


ベヨネッタ「アイツがただ様子見に行くとかはまず有り得ないから、今『連れて来る』気ね多分」


ジャンヌ「…………」


ベヨネッタ「ん〜、『センセー』は心配性ねぇ。しかめっ面はやめなって。大丈夫だって。多分」

ベヨネッタ「私の一張羅をぶった切ったくらい、気合入ってたエンジェルちゃんだったし」


ジャンヌ「……」

ベヨネッタ「……」

ジャンヌ「……」

ベヨネッタ「……」


ベヨネッタ「…………ボヨヨーーーンッッッ!!!!!!!!」


ジャンヌ「うるさい」


ベヨネッタ「少しは笑いなよ。せめて呆れ笑いくらい。私が惨めでしょノリ悪いわね」


ジャンヌ「断る。バカがうつるからな」


38 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 17:33:30.17 ID:Arjuuw.o
―――


窓の無いビル。


アレイスター「―――これが大まかな状況だ」


ステイル「―――…………そうか……」


土御門「…………」


アレイスターの口から告げられた、全体の状況。

ヴァチカン、フォルトゥナ、学園都市、そしてイギリスで起こった事。

だが教えたのはそれだけだ。

『全て』を教えたわけでは無い。


バックグラウンドや、それぞれの人物間の繋がりなどは一切教えていない。

アレイスターにとって教える必要などないし、
土御門達もその裏の、核心部分を聞き出せるとは元々思っていない。



ステイル「それで、僕達を引き渡す意思は無いという事だが……」


アレイスター「思う存分この街にいてくれてもかまわん。フォルトゥナもあの惨状だ」

アレイスター「君達が安心して休めるのはこの地くらいしかないだろう」

39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 17:34:26.24 ID:Arjuuw.o

ステイル「…………僕等を匿う理由は?」


アレイスター「理由は『能力と魔術』の歴史が証明しているではないか」


ステイル「…………つまり……『能力迫害』も天界の意思だったということか?」

アレイスター「当然だろう」

ステイル「ふん、敵の敵は味方か……」


土御門「(………………学園都市は天界の……敵か……?)」


アレイスター「『味方』かどうかは任せるが、少なくとも今は敵対すべきではないと思うがな」


ステイル「…………もう一つ聞きたい事がある」


アレイスター「何かな?」


ステイル「今のフォルトゥナが危険なのはわかる」


ステイル「だがなぜ学園都市が『安全地帯』なんだ?」


アレイスター「…………」

40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 17:36:16.63 ID:Arjuuw.o

フォルトゥナは天界の影響を全く受けない地の一つ。
襲撃され結界・防壁が破壊されていなかったら、ステイルとインデックスにとって最も安全な場所と呼べただろう。

だが今は違う。

結界・防壁が無い今は更に魔が強くなっている。
魔窟となりかけているのだ。

天界からの脅威が無いのは確かだが、
それとは桁違いの強大さを誇る魔界の手がいつ伸びてきてもおかしくない地なのだ。

さすがにステイルも、そんな地にインデックスを連れて行く気にはなれない。
それならば天界の脅威に晒されていたほうがマシだ。

ステイルは天界と直接交戦したことは無いが、どちらの『世界』の連中が恐ろしいかは承知している。

『天界が魔界を心底恐れている』という事実がそれを物語っているではないか。



だがフォルトゥナがそうだからといって、『じゃあ学園都市は安全だ』 とはならない。


ステイル「僕が納得しうる説明をしてもらおうか」


ステイル「お前の話を聞く限り、この街『そのもの』にも天界の敵意が向いているという事になるが?」


ステイル「……もしそうだとしたら、僕達にとってはそこらの荒野にいた方が安全だと思うが」


アレイスター「…………」

41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 17:38:25.58 ID:Arjuuw.o

そのステイルの問い。

これに土御門達もそれぞれの反応を示した。


―――この街『そのもの』にも天界の敵意が向いている。


土御門「―――」


『天界に敵意を向けられる』。


『学園都市』が。


天界等、そういう世界関係や歴史を知らない一方通行や麦野、
結標は怪訝な表情を浮かべただけだったが、

その危険性を知っている土御門は表情を凍らせた。


土御門「…………」


ステイル「答えろ」


アレイスター「……一部の例外を省き、人間界は天界の強い影響下にある」


アレイスター「その例外が、魔界の影響下にあるフォルトゥナ等」



アレイスター「そして今の学園都市だ」

42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 17:40:13.66 ID:Arjuuw.o

アレイスター「この街の中では今、『セフィロトの樹』に障害が起きている」


アレイスター「天界が人間達に嵌めた、『セフィロトの樹』という『首輪』の管理機構が機能していないのだよ」


と、簡単すぎる説明を受けたが、当然ステイルと土御門は理解しきれない。

『セフィロトの樹』という存在自体は知ってはいるが、
その範囲は十字教や魔術関係で教わった『程度』のみなのだから。


土御門「……管理機構?何の事を言っている?」


ステイル「それがどう関係……一体何を言っているんだ?」


アレイスター「知らぬのも当然、か」

アレイスター「まあ、『魔』に接した君達は、少しくらいは違和感を持っていたと思っていたのだが」


ステイル「……『セフィロトの樹』とは、ただの『界の繋がり』のことだろう?」




アレイスター「―――良く考えろ。『誰』が『セフィロトの樹』についてそう言った?」




アレイスター「―――その概要は『どこから』、『どうやって』学んだ?」

43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 17:42:04.28 ID:Arjuuw.o

そのアレイスターの言葉で、二人の魔術師は凍った。


誰がそう言った?

どこから学んだ?

どうやって学んだ?


それは『天界魔術』から。


『天界』から―――。



ステイル「……な、な…………」


土御門「………………」


二人の中で、『魔術サイドの常識』が音を立てて崩壊していく。


今のこの状況下でなければ、
アレイスターの言葉など『嘘』として全く気にも留めなかっただろう。



今のこの状況下でなければ だ。

44 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 17:43:22.71 ID:Arjuuw.o

アレイスター「全ての真実を話すには少し時間がかかる」

アレイスター「知りたくばまた後にするか、トリッシュに聞くがいい。」


アレイスター「私程では無いが彼女も良い線をいっている」



アレイスター「天界がここまでして隠そうとした、その真実を知る『勇気』があるのならばな」



ステイル「……」


土御門「……」


知る『勇気』。


なぜアレイスターがその表現を使ったのかはわかる。


天界が隠そうとした真実。

『隠し続けてきた』真実。


それを知れば、どんな状況に陥ってしまうかなど―――。

45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 17:44:32.46 ID:Arjuuw.o
土御門「……」


土御門は迷っていた。
果たして知ってしまってもいいのだろうか と。

天界が隠し続けてきたのだ。

言い換えれば、知ってしまった者は皆消されてきたということだ。


ステイル「……」

だがそんな土御門とは違い、ステイルは知りたかった。
天界にはもう既に睨まれている。

知ってしまったところで状況には大差が無い。


そして何よりも。


その『真実』が、インデックスを『救うカギ』になるような気がしたのだ。


確証は無い。
その理由を具体的に説明しろ と言われても無理だ。


だが悪魔としての『勘』が妙に反応しているのだ。



その真実の向こうに『カギ』がある と―――。

46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 17:46:28.22 ID:Arjuuw.o

そんなステイルの思考を見透かしていたかのように、アレイスターは口を開いた。


アレイスター「それとだ、禁書目録について一つだけ言っておこう―――」




アレイスター「―――彼女は学園都市から出たら死ぬ」




ステイル「―――……な、に!!!!??」



アレイスター「『御使堕し』の時を見る通り、彼女は『セフィロトの樹』と固く繋がっている」


アレイスター「その『セフィロトの樹』から障害が取り除かれた瞬間、天界は彼女の『魂』を操作するだろう」


アレイスター「普段は連中もこんな手は中々使わんが、何せ標的が標的だからな」


アレイスター「『魔女』が制御下にあるのならば、少々強引でも手を打つはずだ」



ステイル「……だ、黙れ!!!!!!」


アレイスター「嘘と思うか?ならば試すが良い。後悔するぞ」

47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 17:49:29.91 ID:Arjuuw.o
ステイル「……く、クソ!!!!!!!」

ステイルはその場で歯を食いしばるしか出来なかった。

試すなどもっての他。
アレイスターの言う通りに学園都市に留まるしかない。

彼にある選択肢はそれだけだった。



土御門「……とりあえずそれは置いておく。で、学園都市が天界の敵とはどういうことだ?」


そう、今の土御門にとって、『セフィロトの樹』だのなんだのよりもそっちの方が重大だ。
アンブラの滅亡が事実だった以上、そこだけははっきりさせておきたいのだ。


アレイスター「その言葉の通りだ」


土御門「それは、例の『真実』を知っているお前に対しての敵意か?それとも学園都市そのものへの敵意か?」


アレイスター「全てだ。私も。学園都市も。そしてここに住まう能力者達もだ」


と、そこで話についていけなかった二人がようやく口を開いた。


一方「…………なンだ?今度は『天使』さンとも戦えってのか?敵には事欠かねェな」

結標「というか、私達にもわかりやすく説明してくれない?」

結標「魔界も天界も名前だけは知ってるけど、具体的にはわかんないんだから」



麦野「つーか、そもそもテンカイだのマカイだの何の話してるのよアンタら」


そして最後に、この場で最も濃い『魔界』力をその手の中に有していながら、
この件に関する知識がゼロの麦野も。

48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 17:52:07.22 ID:Arjuuw.o

土御門「悪いがお前らは黙っててくれ。後でわかりやすく説明する」


一方「……そォしてくれ。こっちは頭が回ンねェからよ」

麦野「…………チッ」


先程の激戦の最前線にいたこの二人、当然疲労は限界のところまで来ている。

麦野はアラストルを肩に乗せ、
そのまま一方通行の隣に乱暴に座り込んでしまった。


と、そんな彼らに向け。


アレイスター「いや、ここからは君達にも聞いてもらおう」



アレイスター「先に言っておく。君達を呼んだのは、状況説明の為でも『反逆行為』を弾劾する為でもない」



その言葉に、ステイル以外の四人がピクリと眉を顰めた。




アレイスター「ここからの話をする為に君等を呼んだのだ」

49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 17:57:37.17 ID:Arjuuw.o

アレイスター「ステイル」


ステイル「……」


アレイスター「ここからは土御門達との『ビジネス』の話だ。君には退出してもらう」

アレイスター「気になるならば、後で土御門に問うがいい」


ステイル「……わかった。おい、ムスジメ……だったか?頼む」


そのステイルの声に、結標は無言のまま手に持っていた軍用ライトとクルリと回し、
即座にステイルを外に飛ばした。

実はステイルや一方通行、麦野のような特殊な力を持ってたりする異質な者は、
座標移動で飛ばすのが結構楽なのだ。

もし失敗してコンクリ等の中に飛ばしてしまったとしても、こういう連中ならいとも簡単に抜け出せるだろうし、
100mの高さに飛ばしても無傷で着地するだろう。


まあ、逆に抵抗されたら飛ばすことが困難なのだが。

まず一方通行には『座標移動』の能力そのものが反射されるし、
ステイルや今の麦野のような研ぎ澄まされた悪魔的勘を持つ者は、
飛ばす寸前にその座標位置から難なく離脱してしまうだろう。


そして二ヵ月半前の経験上、
例え座標を捉えられたとしても悪魔は『飛ばせる時』と『飛ばせない時』があるようだった。

相手が結標を意識し戦闘態勢となった瞬間、どういう訳かその悪魔の体には干渉できなくなるのだ。
『放出されている悪魔の力』とでも言うか、どうやらそれが障害となっていたらしかった。


(結標は知らないが、黒子でもダンテを飛ばせた例もある通り、
 『戦闘態勢』でなければどれ程強大な存在でも一応飛ばせることが出来る)

50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 18:00:17.18 ID:Arjuuw.o

アレイスター「―――……さて、では聞いてくれ」


アレイスター「イギリス清教、ローマ正教とロシア正教、そしてこの学園都市」

アレイスター「禁書目録らを匿った以上、こちらとイギリスの同盟は破棄」


アレイスター「その三つ巴の第三次世界大戦が勃発するのは、君達も承知だろう?」


アレイスター「そして本当の問題はこの『程度』の戦いでは無いのも、だ」


土御門「ああ」

一方「もったいぶってねェでさっさと要点を言え」


アレイスター「その前にもう一つ言っておこう」



アレイスター「君達の用意した『交渉のテーブル』につく用意はできている」


土御門「…………なに?」


一方「…………あァ?」


結標「…………え?」


麦野「…………はぁああああ?」


アレイスターの突然の申し出。

その言葉を聞き、腑抜けたそれぞれの声を漏らす反逆の首謀者達。

51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 18:05:03.54 ID:Arjuuw.o
アレイスター「聞こえなかったか?君達の要望を聞こうということだ」

土御門「…………は、ははは……」

正に拍子抜けだった。

こうもあっさりとアレイスターが『降りてくる』とは。
この『反逆作戦』の主要目的が早々に達成されてしまったのだ。

土御門「…………はは、いいぜい。俺達が具体的に何を望んでるかは知ってるな?」

アレイスター「もちろん。だからこうしよう」



アレイスター「事が済み次第私は全権を放棄し、統括理事長の座を『親船 最中』に譲る」



アレイスター「これで充分だと思うが」

一方「ハッ……」


『親船 最中』。

理事会の中で最も子供達のことを気にかけている者だ。
何せ、『学生達にも選挙権を』 と訴えている程。

彼女が学園都市のトップとなれば、
学園都市の闇の部分がいずれ解決されるに違いない。

非人道的な実験は全て中止され、能力者達への扱いも改善されるはずだ。
子供達の人権が保障されるのだ。

能力者にとって、学園都市が本当の意味で『安寧の地』となる。

打ち止めと妹達も全うな人生を歩めるだろうし、

囚われの身である結標の仲間達の安全も保障され、

麦野の体も治療され、彼女の『元部下達』も平和の中で生きることが許され、

土御門の義妹も、このまま学園都市で平穏な日々を過すことができるだろう。

53 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 18:06:14.83 ID:Arjuuw.o


一方「で、当然『タダ』と言うわけじゃァねェだろ?」


結標「そっちの提示条件は?」



アレイスター「君達の『思惑通り』、学園都市には『危機』が迫っててな」


アレイスター「そこで君達の手が借りたい」



アレイスター「まず、一週間前後の内に『人造悪魔兵器』がこの戦争に投入される」


表情を曇らせる、麦野以外の四人。
麦野は相変わらず頭の上にクエスチョンマークを浮かばせていた。


アレイスター「大規模な悪魔の介入だと思ってくれ」


アレイスター「これもこれで大きな問題だが、その他にもあってな」


アレイスター「天界がこの悪魔を自らの手で排除しようとしている」


アレイスター「つまり、かの者達は500年振りにこの世界に『直接降臨』する気だ」

54 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 18:09:08.66 ID:Arjuuw.o

土御門「―――500年振りに…………だと…………?!!!!」


500年振り。

500年前に何があったか。


アンブラの都の滅亡だ。

その事を知っている土御門の顔から、一気に血の気が引いていく。


そんな事を知らぬ一方通行は。


一方「ゴキブリ共を退治してくれンのか?じゃァいいじゃねェか。せィぜィ化物同士戦わせておけや」


と、半笑いを浮かべながら口を開いたが。


アレイスター「いや、『彼ら』の目的はもう一つある」



アレイスター「それは全能力者の『殲滅』」



アレイスター「学園都市を人間界から『完全』に消す気だ」


一方「―――あンだって??」



アレイスター「跡形も無くな」

55 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 18:11:08.39 ID:Arjuuw.o

土御門「…………ッッッッ!!!!!!!」

最早、土御門は言葉が出なかった。


第三次世界大戦自体はほぼ全く脅威では無く、
その後ろに控えている『モノ』が問題なのは感付いていた。


だがこれ程までの『モノ』とは思ってもいなかったのだ。



一方「…………おィ!??」


麦野「つまり……どーいう事よ???」


その只ならぬ空気を感じ、未だ具体的に把握していない二人のレベル5も勢い良く立ち上がった。

一方通行は義手の両拳を床に突き、杖無しで足を震わせながらも身を起こし。
麦野はアラストルを一度大きく振りながら。


アレイスターは表情を一切変えぬまま、土御門の方へと視線だけを動かし。



アレイスター「君はわかるだろう?この街はアンブラの都と同じ『運命』を辿るという事だ」



その言葉を受け、今にも砕けそうなくらい強く歯を食いしばり、拳を握りこむ土御門。

56 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 18:13:50.76 ID:Arjuuw.o

一方「つまりどォいうことだってンだよ!!!具体的に言ェ!!」


アレイスター「二ヵ月半前の争乱の際、ダンテ達が『いなかった』場合を想像してくれ」


アレイスター「背後関係は全く別物だが、学園都市が見舞われる事態はそれと良く似ている」


結標「―――ッ……」


二ヵ月半前の争乱からダンテ達を省けば?

その結果、学園都市はどうなっていたかはバカでもわかる。


一方「…………で、オマェの要望はそのカス共と戦えってことか?」


アレイスター「いや。そうではない。君達『程度』では、かの軍勢と直接交戦したら10分ももたん」


一方「あァ!?」


アレイスター「降臨する天使の数は百や千ではない」




アレイスター「数百万の単位だ」



アレイスター「学園都市の空を完全に覆い尽くすだろうな」

57 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 18:16:40.83 ID:Arjuuw.o
アレイスター「その軍勢の核となっているのが、上級三隊、『熾天使・智天使・座天使』」

アレイスター「この『大悪魔クラスと並ぶ』者達が少なく見積もっても『500』体」


一方「………………!!??」


結標「…………なッッ…………!!!?」


大悪魔クラスという『わかりやすい例え』を聞き、ようやく土御門と同じく愕然とする一方通行ら。


大悪魔クラスという区分自体については詳しくは知らないものの、
そう呼ばれる連中がどれ程のレベルなのかは身をもって知っている。



土御門「…………熾……天使……」

そして土御門らは、その天使の階位の高さに愕然としていた。
魔術サイドならば常識中の常識だ。

だがアレイスターの指している対象は、呼び名は同じでも全く『別物』。

土御門の頭に浮かんでいる天使ではない。


アレイスター「勘違いするな土御門」


アレイスター「私が言っているのは『十字教の天使』ではない」


アレイスター「言ってもわからんだろうが、『主神ジュベレウスに直接仕えてた天使』だ」


アレイスター「かつて太古の昔、強大な魔界に対抗する為に組織された集団だ」

58 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 18:18:40.49 ID:Arjuuw.o
アレイスター「十字教の四人の大天使達は、個々の力は上級三隊をそれなりに上回っているが、絶対的な差があるとはいえん」

アレイスター「上級三隊所属の10人にでも囲まれたら、ミカエルだろうとガブリエルだろうと『一方的』に殺される」


土御門「…………!!!!!!!!」

実際に『御使堕し』事件の際、その領域の力の片鱗を垣間見た。


そんな存在ですら、『一方的』に殺される。


何か『悪い夢』を見ているとでも思いたかった程だ。

『悪夢』としか言いようがない。



アレイスター「更にその上級三隊を統べるのが、天界の現最上位『四元徳』」


アレイスター「この『四元徳』の力は、少なくともトリッシュよりは強大だ」



アレイスター「十字教の神も彼らには遠く及ばん」



アレイスター「そして500年前と同じく、この『四元徳』も直接降臨してくるだろう」

64 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 19:31:57.92 ID:Arjuuw.o

一方「………………おィ……前にも同じことがあったみてェな口ぶりだが?」


アレイスター「知りたいか?絶望が深まるだけだと思うがな」


一方「実例があンなら知っといて損はねェだろォが」


アレイスター「……『アンブラの魔女』と呼ばれていた集団がかつて存在していた」




アレイスター「その者らの頂点は……そうだな、スパーダの一族に匹敵しうる者もいたが、」



アレイスター「それでも敗北した。この天の軍勢の前にな」



一方「………………」


アレイスター「まあ、それは彼女達の本当の力が発揮できない、彼女達にとって最悪の状況だったせいもあるがな」



一応、魔女も大悪魔と同じく『力の拡散攻撃』もできる。

大悪魔クラス相当、上級三隊以上に対しては全く意味を成さないが、
それで雑魚天使の群れは一掃できる。


だがそんな攻撃手段をとったら、守るべき都も破壊される事になる。

65 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 19:36:21.27 ID:Arjuuw.o
魔女の中で、上級三隊を越える力を有していたのは一部の精鋭。

ジャンヌやベヨネッタのような上級三隊をも軽く圧倒でき、
『四元徳』にも匹敵しうる者も両手で数える程度だが存在していた。


だが逆に、その彼女達の強大すぎる力『それ自体』が『防衛』の枷にもなったのだ。


フォルトゥナの都の『中』で、

最大出力の魔弾をばら撒き、フルパワーのウィケッドウィーブを振るい、
挙句に『魔界の諸王』や『大魔獣』を召喚してしまったらどうなるか。

そんな事をしたら自滅だ。

守るべき都は破壊され、
仲間の魔女達にも多数の巻き添えが出てしまう。


『少し』本気になっただけであのヴァチカンの有様だ。

ジャンヌやベヨネッタクラスの者達が複数人、同時に『全て』の力を解放してしまったら、
それだけで都は崩壊する。


一対一において最大戦力を発揮できるその戦闘スタイル。

『超』攻撃特化し、それを極めてしまった魔女。

その戦闘スタイルと大きすぎる力が、
皮肉な事に『アンブラの都』の陥落を決定付けてしまったのだ。

66 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 19:38:12.02 ID:Arjuuw.o
その状況下では、個々の戦闘能力が突出していても何も意味を成さない。

ジャンヌ達がどんなに強大でも、フルパワーを使えなかったら意味が無い。

彼女達は『組織』へのダメージを懸念するあまり、『大火力』で一掃することはできなかった。

押さえ込み凝縮した攻撃で少しずつ削っていくしかなかった。


そしてそれは正に『焼け石に水』だった。

その間に、彼女達がいなかった区画は次々と制圧され破壊されていき、仲間は次々と斃れていった。


もし天界の軍勢が全員でジャンヌら最精鋭に殺到していたら、
時間はかかるだろうが彼女達は最終的に天使達を皆殺しに出来ただろう。


だが、天界の最大の目的はアンブラの魔女という『組織の破壊』だ。

『個人の殺害』ではない。


ジャンヌを倒すのは難しいと判断した天使達は、
彼女の事は後回しにして他の魔女の殺害に向かった。

殺せぬ1人よりも、殺せる100人を優先するのは当然。


結果、ジャンヌは生き延びたが組織は滅んだ。

優先リスト筆頭『ジャンヌ』殺害の任務を帯びた天使達は失敗したが、
その他の天使達は任務を成功させたのだ。

ジャンヌは『勝ち』続けて生き延びたが、アンブラの魔女は『敗北』して滅亡した。


個々の戦闘能力では勝っていたものの、結局『数の暴力』の前には彼女達も屈するしかなかった。

67 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 19:41:03.17 ID:Arjuuw.o

先日のベヨネッタによるジュベレウス滅亡も、天界側から言わせれば『戦争』ではなく、
首脳達とのピンポイントでの『決闘』だ。


このやり方は、2000年前のスパーダの戦法にも似ている。

かつての人間界へ対する魔界の侵略も、魔帝というトップが敗北したからこそ防がれたのであって、
侵略軍『そのもの』が滅ぼされたわけでは無い。


魔界の兵力は正に無尽蔵だった。
天界でさえ比べ物にならない。


スパーダが前線に立ち一振りで千単位の悪魔を薙ぎ払おうと、
その損失以上の兵力が次から次へと補充されてくるのだ。

大規模破壊による人間界へのダメージもある以上、スパーダにとってそんな戦法を取ることはそもそも不可能だった。


幹部クラスをピンポイントで次々と倒していき、そして魔帝を打ち倒す。

『頭』だけを排除していく。

それが勝利への最短ルートであり、
総兵力では劣る人間界側にあった唯一の選択肢だった。


500年前、魔女側も同様の戦法を取れていれば結果はまた違っていただろう。

ベヨネッタやジャンヌ等の最強最精鋭達が先手を取って殴りこみをかけ、四元徳を打ち倒していたら だ。

だが当時はそれが許されなかった。
天界の降臨は完璧な奇襲だったのだ。

気付いた時には遅かった。

アンブラの『心臓部』には既に天界の手がかかり、無数の軍勢によって包囲されていたのだ。
その時点で、既に『組織対組織』としての勝敗は決していた。

68 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 19:45:02.86 ID:Arjuuw.o
また、『天界と人間界は直接繋がっていない』というのもその『殴りこみ』が難しい要因の一つでもある。


この間のジュベレウスに纏わる件は、

『四元徳』全員が僅かな手勢のみを率いて、
『プルガトリオ(狭間の世界)』にいたベヨネッタに会う為に自らやってきたからこその戦果。

首脳総出で雁首そろえて、わざわざベヨネッタの手が届く場所へと『来てくれた』に過ぎない。


直接繋がっていない天界の奥深くに居座られていたら、さすがの魔女達も手が出せないのだ。

そして天界の口が開くのは降臨する瞬間。
口が開いた瞬間に軍勢が解き放たれる。

殴りこみをかける時間など無い。



まあ、学園都市側としては、例え殴りこみが可能な状況でもどうしようもないが。

一方通行やアラストル所持状態の麦野『程度』で天界に殴りこむのは、それこそただの自殺行為。

エイワスでさえ、『四元徳』に届く前に100を越える上級三隊からの
一方的な袋叩きにあって消滅するだろう。

(そもそもエイワスは学園都市内及びその周辺での限定的な存在であり、天界へと派遣すること自体が不可能だが)



アレイスター「―――スパーダの一族に匹敵する者でも、この『数の暴力』を退けることは出来なかった」


アレイスター「結果、それ程の強者がいた都もたった一日で陥落した」

アレイスター「この戦火の中から『個々』が『逃げ延びる』事は不可能では無いだろう」

アレイスター「現に、500年前の戦火から生き延びた者も少数だがいるしな」


アレイスター「だが学園都市『そのもの』を防衛するのは不可能だ」


アレイスター「学園都市の全兵力をもってしても、無論私が直に打って出ても20分ももたん」

69 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 19:46:51.92 ID:Arjuuw.o


土御門「…………正に『審判の日』ってやつか……」


アレイスター「『審判の日』?そんな畏まった言葉で表すな」


アレイスター「実質は、君達が今まで暗部として行ってきた事と同じだ」


アレイスター「敵対者・障害と成り得る者の排除」


アレイスター「それだけだ」



結標「……ダンテ……ダンテ達はどうなのよ?あいつらなら……」



アレイスター「……彼らなら食い止められるだろうな」



アレイスター「それと引き換えに、結局は学園都市は無くなるだろうが」

70 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 19:50:06.28 ID:Arjuuw.o
土御門「…………」


学園都市に群がる百万単位の軍勢、500を越える大悪魔クラス。

その『塊』をダンテやネロのような更に『規格外の巨大な爆弾』で吹き飛ばせばどうなるか。


天界の軍勢は壊滅するだろう。


だが学園都市も消滅だ。


二ヵ月半前、ダンテ達と魔帝は隔絶された異界で衝突したが、
今度はその戦いが『隔絶無し』で行われるようなものだ。


アレイスター「ダンテがその軍勢と正面から戦うという事はだ。『学園都市を守る』という事ではなく、」


アレイスター「天界の軍勢もろとも『学園都市を道連れ』にするという事だ」


アレイスター「天界の軍勢が現れたその時点で既に『手遅れ』なのだよ」


アレイスター「この件に関しては彼らの救いは期待できん」


結標「…………」



アレイスター「わかったかな?これが具体的な『学園都市の危機』だ」

71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 19:52:10.27 ID:Arjuuw.o

一方「―――…………その天使さンとやらの軍勢には、どォやっても勝ち目がねェのはわかった」


一方「俺達は当然、オマェも学園都市が無くなったら困る」


アレイスター「…………」


土御門「だが、その軍勢が『降臨』した時点で何をしても結局は学園都市は終わり」


一方「…………猶予は一週間強。そうだな?」


アレイスター「そうだ」




一方「……つーことはだ、どォにかして『降臨』とやらを『未然に防ぐ』しかねェ。違うか?」




アレイスター「話が早いな」



一方「……『ソレ』がオマェの『条件』か?」



アレイスター「ご名答。君等の『最後の仕事』だ」

72 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 19:53:52.49 ID:Arjuuw.o
土御門「……で、その内容は?」

その土御門の声に合わせ、麦野がアラストルを見せ付けるように大きく振り上げて肩に乗せ、
一方通行が両手の拳を軽くぶつけ合わせた。


麦野「よくわかんないけど『最後の仕事』。最っっ高の響きね」


一方「最後だ。色々『サービス』してやってもいいぜェ?」


アレイスター「乗り気になってくれて助かるよ」


アレイスター「ちなみに言っておくが、『裏』を疑う必要は無い。私も全力を尽くさせてもらう」


アレイスターの本音は『学園都市を守る』ことではなく、
その先にある『プランの成就』の為に全力を尽くすという事だが。


アレイスター「では簡潔に話そうか。少し長くなってしまったからな」


アレイスター「かの軍勢が降臨するには、『口』を開く必要がある」


アレイスター「それは人間界側からの作業も必要だ」


一方「その『コッチ側』のクソ野郎を潰せば、カス共は降りてこれねェってことか」


アレイスター「そうだ」

73 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 19:56:03.58 ID:Arjuuw.o


アレイスター「その男の名は『アリウス』」


アレイスターの水槽の表面に、壮年の男の画像が浮かび上がった。


土御門「……こいつは……!!!」

その場にいる全員が目を見開いた。
科学サイドでは超有名人だ。


アレイスター「ウロボロス社CEOだ。デュマーリ島が本拠だ」



学園都市と共同関係にあり、そして双璧をなす巨大多国籍企業ウロボロス社。

つい最近、テロによって首脳が死亡した巨大複合企業体「イザヴェルグループ」を吸収し、
更に巨大化した勢力だ。
(この『テロ』は、実はベヨネッタの戦いによるものなのだが)


その大企業のCEOが標的。


アレイスターとは違い、メディアにも良く顔を出している著名人だ。

主に軍需産業に力を尽くしており、そのイメージは決してクリーンではないが。

74 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 19:57:39.51 ID:Arjuuw.o
一方「そォと決まったンならさっさと潰すぞ」


アレイスター「そう簡単に排除できるのならば苦労しない」

アレイスター「この男は多数の悪魔を使役し、大悪魔すらも傘下においている」


一方「チッ……」


土御門「…………」


世界中に拡散しつつある人造悪魔兵器もウロボロス社製。

ウロボロス社のトップが悪魔サイドにドップリと浸かっているのならば簡単に説明がつく。



それだけじゃない―――。



土御門「(なるほどな……)」



その人造悪魔兵器の『精製技術』。


これは別の事件とも繋がってる。



土御門「(そうか)」



―――ウィンザー事件の『黒幕』だ。



―――覇王を復活させようとしていた許されざる者だ。

75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 19:59:18.00 ID:Arjuuw.o
と、そこまで御門は考えたが、ここでふと疑問が浮かんだ。

土御門「待て……悪魔を使役してるのに天界を支援するのか?」


アレイスター「目的は知らん。あの男が何を企んでるかはな」


だがアレイスターはここでさりげなく誤魔化した。
下手に情報を与えると、色々と厄介な事になるのが目に見えているのだ。


アレイスター「質問は後にしてくれ」


土御門「……」



アレイスター「このアリウス、先も言った通りかなりの兵力を有している」


アレイスター「そして彼自身の戦闘能力も相当なものだ」



アレイスター「先程の『右方のフィアンマ』と同等クラスと考えてくれ」



一方「……………………クソ……どいつもこいつも……」

76 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:01:42.25 ID:Arjuuw.o
アレイスター「確実に殺せとは言わん」

アレイスター「殺害はあくまでも『副次目的』だ」


麦野「……」


アレイスター「『主要目的』は、この男の障害となり、その行動の妨害に成功する事」



アレイスター「最悪でも時間稼ぎを、だ」



一方「時間稼ぎだァ?確実に潰さなきゃアウトなンだろ?」


アレイスター「いや。時間稼ぎの間、私が学園都市にて『策』を講じる」


アレイスター「それが成功すれば、天界からの脅威は完全に消失する」


アレイスター「まあ、アリウスを殺してくれれば最適なのだがな」


アレイスター「お互いが全力を尽くすことで乗り切れる」


一方「…………ハッ……『最後の仕事』が、本当の意味での『最初の共同作業』とはなァ」


アレイスター「不満か?ウェディングドレスでも着たいか?」


一方「おォ、オマェも随分と言うじゃねェか」

77 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:03:20.94 ID:Arjuuw.o

一方「なンなら早く行こうじゃねェか。その島へよォ」

麦野「さっさと済ませたいんだけど」

土御門「……」


アレイスター「いや。それなりに準備をする必要がある」


アレイスター「それにアクセラレータ。君は学園都市での『策』に必要だ。君は残ってもらう」


一方「あァ?」


アレイスター「君の『力』が必要なのだよ。断れないと思うが」


一方「……カッ……」


アレイスター「その他三名」


麦野「あ?」


アレイスター「君等に能力者の『部隊』を率いてもらい、デュマーリ島を強襲してもらう」


結標「……『部隊』?」

78 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:05:52.26 ID:Arjuuw.o
アレイスター「人選は済ませてある。暗部所属をメインとした、レベル4以上」


アレイスター「君達を省くと101人だ」


麦野「…………待て……」

暗部所属。

レベル4以上。

その言葉に真っ先に反応したのが麦野だった。


アレイスター「何かな?」


麦野「そのメンバー……の中に…………」

左目を見開き、右目眼窩から閃光を迸らせる麦野。



そんな彼女のとある『懸念』を即座に察したアレイスターは。


アレイスター「絹旗 最愛と滝壺 理后も入っている」


麦野の思いを知りつつも、それを気にも留めずに淡々と応えた。


それに対して声を荒げる―――。



麦野「―――ふッ…………ふざけんなッッッ!!!!!!!!!外せ!!!!!そいつ等を外せ!!!!!!!」



―――アイテムの元リーダー麦野 沈利。

79 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:08:14.15 ID:Arjuuw.o
アレイスター「何か問題か?」

それでも淡々と言葉を続けるアレイスター。


麦野「―――テッ……テメェ!!!!!!ッッッッざっけんじゃねええええええ外せ!!!!!!!!!!!!」


アレイスター「それは無理だ。絹旗 最愛はともかく、滝壺 理后は重要な『要』だ」


アレイスター「外したせいで任務が遂げられず、学園都市が無くなれば元も子も無いと思うが」


麦野「…………!!!!!!!」


アレイスターの言葉は正論だ。

それに倣うかのように、
土御門・結標が麦野へと冷たい視線を向けた。


ただ、一方通行は顔を曇らせてそっぽを向いていたが。



アレイスター「君自身の手で守ればいいではないか。それとも『私の手』に預けておきたいか?」



麦野「…………がッッ……!!!」

80 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:10:25.92 ID:Arjuuw.o

アレイスター「私が君の立場なら『全員』連れて行くが。『公認下』で学園都市から『脱出』できるのだぞ?」


そう、学園都市が滅ぶという最悪の事態が起こったとしても、
少なくともその瞬間に道連れとはならない。


麦野「…………!!!!!」


戦えば生き延びれる可能性のある『地獄、デュマーリ島』か、
戦っても生き延びれる可能性がゼロの『地獄、滅亡の日の学園都市』か。



麦野「………………クソッタレがッッ!!!!上等だっつーの!!!『全員』守ってやるってーよ!!!!!!」



麦野は前者を選んだ。

少なくとも己の腕次第で何とかなる方が良い と彼女は判断したのだ。


アレイスター「承諾と受け取る。『全員』を君の直下に編成しといてあげよう」


とこの時、熱くなっていた麦野は気付いていなかった。

アレイスターとの会話が、いつのまにか『全員』を指して進んでいた事に。

81 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:11:44.85 ID:Arjuuw.o

土御門「―――……ところでだ、俺は戦力にならんぜよ?」


アレイスター「君は戦闘員ではなくアドバイザーだ」

アレイスター「エツァリはあのザマだ。君ぐらいしか私の直命で動ける『五体満足』な魔術師はいなくてね」


土御門「……」


アレイスター「君には後ほど、『口』を開く術式の構造を暗記してもらう」

アレイスター「どのような方法で行使するかまではわからんが、」

アレイスター「術式の媒体を物質的な物で賄っているのならば、それを破壊すればいいしな」

アレイスター「それを見つけ判断するのが君の役目だ。無論、その他の悪魔関連の知識サポートもしてもらう」


こればかりは経験豊富な魔術師でないと不可能だろう。

術式は何気ない風景、何気ない物体の配置にも混ざっていることがある。
それを見出すには、一夜付けの知識では到底無理だ。


アレイスター「それと結標 淡希」




アレイスター「君は『四日』で『レベル5第八位』になってもらう」




結標「……………………………………………………………は?」

82 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:13:17.94 ID:Arjuuw.o

結標「……………………………………私が………………………レベル5…………?」

突然の宣告。

その内容に結標は耳を疑った。

目を見開き口が半開きのまま呆然。


だがそんな結標の様子など気にも留めず、アレイスターは淡々と言葉を続けていく。


アレイスター「先程言ったとおりアリウスは強大だ。いくらアラストルを保持しているとはいえレベル5が一人だけでは心もとない」


アレイスター「だから君も戦力の『要』となってもらう」


結標「…………ど…………どうやって…………?」


アレイスター「君には少し手を加えるだけでいい」



アレイスター『学習装置』で演算方程式を最適化し、そしてミサカネットワークに接続してもらう」



一方「―――おィ!!!!!待て!!!!!ミサカネットワークだァ!!!!?」


当然、一方通行はその単語が出ては黙っていられない。

83 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:17:20.88 ID:Arjuuw.o
アレイスター「心配するな。ミサカネットワークは君が思っているよりも性能が高い」

アレイスター「タダの『レベル3が一万人集ったモノ』ではない」

アレイスター「最適化し、極限まで演算効率を高めた代物だ」

アレイスター「それぞれの相互作用により、その性能は『加算』ではなく『乗算』的に跳ね上がっている」

アレイスター「能力演算だけに限って言えば、その処理速度は『ツリーダイアグラム』と互角だ」


アレイスター「あのネットワークを『使い潰し』、クラッシュ寸前にまで追い込める『人間』は今の君くらいだろう」


アレイスター「『原子崩し』や『超電磁砲』程度なら80人分を難なく同時演算できる」


麦野「……あぁ?」


アレイスター「今更レベル5が『二人』接続されたところでどうってことは無い」


結標「(……二人?)」


一方「ッ…………!!!!」


何せヒューズ=カザキリやエイワスをも統制できる代物。
普通のレベル5を『複数人』演算補助したところで全く負荷にはならない。

だが一方通行の懸念は、ネットワークへの『負荷』だけではない。

一方「そ、そォじゃねェ!!!!!…………またあのガキに…………!!!!」

そもそも、これ以上打ち止めに手が加えられたくはない。

だが。

アレイスター「ではどうしろと?」


一方「…………!!!!」


どうしろと?

その問いに答える言葉を一方通行は持っていなかった。

84 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:19:52.50 ID:Arjuuw.o

学園都市を守る。

その為には妥協は許されない。


打ち止めが生きているこの世界を何としてでも守らねばならない。


一方「…………!!!!!!!!!!!」


だがそれには。


アレイスター「状況が状況だ。『全員』にそれなりの仕事をしてもらわんと乗り切れんぞ?」


打ち止めの力も必要だという事。


アレイスター「何も命を頂こうという訳では無い。『自由と安寧』への少しばかりの奉仕をラストオーダーにもしてもらう」




一方「―――クソ!!!!!クソがッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」




選択の余地は無い。



アレイスター「先程言った通り、君がその『力』を使うよりはかなり安全だ」


アレイスター「保障しよう」

85 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:21:38.91 ID:Arjuuw.o

一方「あァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」



一方「わかったぜ!!!!!!!わかったぜこンチクショウが!!!!!!!!」


一方「だが条件がある!!!!!!!!!」


アレイスター「…………」


一方「あのガキに書き込むプログラムを芳川にチェックさせる!!!!!!!!」


一方「それで俺と芳川の立会いの下で作業してもらうからなァ!!!!!!!!!!!」



アレイスター「かまわんよ」



一方「もしなンか妙ォな事しやがったら全部ぶつ壊してやる!!!!!!!!全部叩き潰してやっからよォ!!!!!!!」



一方「―――オマェの大事な大事な『俺の体』を『蒸発』させてやっからなクソが!!!!!!!!!!」



アレイスター「うむ。決まりだな」

86 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:24:14.44 ID:Arjuuw.o
一方「カッ!!!!!!!!オァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!」

苛立ちが押さえきれずに、声を荒げて落ち着き無く体を揺らす一方通行。

そんな彼の精神状態が影響を及ぼしているのか、
両手に義手に僅かにだが薄く黒い靄のようなものが纏わりつき、屋内を不気味な空気で覆っていた。


結標「……ちょっと待って」


アレイスター「何だ?」


結標「『二人』って?私ともう一人は?」



アレイスター「滝壺 理后。彼女が『レベル5第九位』候補だ」



麦野「…………!!!!」


再び鋭い目でアレイスターを見据える麦野。


アレイスター「おっと、先言わせて貰うぞ」

そんな彼女の心中を察し、『先手』を取ったアレイスター。


アレイスター「まず体晶による『侵食』は全て治癒処置させる」


アレイスター「その後、結標と同じく演算方程式を最適化、そしてネットワークに接続させる」


アレイスター「彼女自身への負荷は無い」



アレイスター「質問は?」

87 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:29:03.91 ID:Arjuuw.o

麦野「…………そもそもなんでアイツを連れてくのよ?」

結標がレベル5候補になるのはわかる。
彼女の力が強化されたら、それはそれは凄まじい物となるだろう。

だが滝壺は?

彼女はそんな戦闘向けではない。



アレイスター「現地の能力者の『管理と統制』」


アレイスター「そして能力の『強化支援』」


麦野「……管理……強化……?」



アレイスター「『能力追跡』が対象のAIM拡散力場に干渉し、」

アレイスター「理論上は完全な支配化に置ける事が可能。これは知っているな?」


麦野「…………『乗っ取り』、か」



アレイスター「ミサカネットワークの演算補助があればそれが可能だ。それも大々的にな」

アレイスター「少なくとも同行する100の能力者を支配下に置くことができ、」


アレイスター「滝壺 理后を核としたAIM拡散力場のネットワークを構築できる」


麦野「……!!」
88 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:30:22.13 ID:Arjuuw.o

アレイスター「対象の能力を遠隔で操ることが可能だ」


アレイスター「AIM拡散力場を乗っ取るという事は、対象の『演算域』にも接続するという事、そこから知覚情報も共有できる」


アレイスター「そしてあくまで擬似的にだが、滝壺 理后を介して、個々へのミサカネットワーク代理演算支援も可能になる」


アレイスター「それが『強化支援』だ」



土御門「待て…………対象のAIM拡散力場、能力を完全に支配下に置けるという事は……」



アレイスター「滝壺 理后『が』対象の能力を使用することも可能だ」



アレイスター「『多才能力』と呼べるな」



アレイスター「それも個々の能力をレベル5相当に強化して行使できる」



アレイスター「その間、能力の『本当の持ち主』はその力を行使できなくなり、負荷で昏倒するがな」
89 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:33:13.24 ID:Arjuuw.o

滝壺 理后のバックには『超電磁砲』80人分に匹敵する演算補助がある。

それを使えば、ただ乗っ取って能力を奪い取るだけには留まらない。


例えば、彼女が絹旗の『窒素装甲』を乗っ取り、
そしてレベル5並に強化して行使できることも可能なのだ。

だがその間、能力を奪われている絹旗は無能力者となり意識を失う、という事だ。



アレイスター「その『多才能力』を使うことは考えるな」



アレイスター「『一時的』に優位になる『だけ』で、最終的に全滅する」



理論上は100人種類のレベル5相当の力を同時に行使できるが、
かわりに『部隊』としての戦力は『ゼロ』となるのだ。

当然、昏倒した者達は無力であり悪魔達に易々と狩られていく。
そうすると、滝壺もその能力を使えなくなっていく。


『多才能力』となった滝壺『自体』はそうそう負けはしないだろうが、
基盤である100の能力者が死ねば最終的に完全に無力化だ。



アレイスター「彼女の派遣目的は、あくまで部隊の統制と個々の能力強化支援、及び知覚サポートだ」
90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:35:17.34 ID:Arjuuw.o

アレイスター「さて、彼女が『要』という理由もこれでわかっただろう?」


麦野「………………………………」


アレイスター「ここまでで質問は?」


土御門「こっちが出撃するのはいつだ?」


アレイスター「予定は五日後だ。色々と作業が多くてな」


アレイスター「では……とりあえず今はこんなところにしておこう」


アレイスター「君達も疲れているだろう?しっかり休息を取るんだ」


アレイスター「明日の朝、それぞれに詳細を通達する」


そのアレイスターの言葉に皆無言で同意し、
結標の『座標移動』で去っていった。


麦野だけは無言ではなく、最後にもう一度クソッタレと吐き捨てていったが。


また、一方通行は無言だったが凄まじい形相でアレイスターを睨みながら。
91 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:36:59.64 ID:Arjuuw.o

一人となったアレイスターは、水槽の中で一度目を瞑った。


いや、厳密に言うと『一人』では無いのだが。


いつ侵入してきたかはわからないが、先程からこの広い室内の天井の角に気配を感じていた。

ただでさえ薄暗い。
角なんかは完全に漆黒だ。


だが、その『空気』で相手が誰なのかはすぐにわかった。


アレイスター「さて…………君はいつからそこにいた?」


アレイスターは目を閉じたまま声を飛ばした。

その侵入者に対し。


すると。



「あ〜、『セフィロトの樹』と魔術がどうのこうのって辺りからだ」



バサリとコートをはためかせながら、上の漆黒の中から降りてきた銀髪の大男。


ダンテ。

92 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/08/14(土) 20:39:13.89 ID:Arjuuw.o

アレイスター「ほぼ最初から聞いていた訳か……」


ダンテ「まあな」


ダンテは肩を竦め、ニヤニヤと笑いながらだらしなく歩を進める。


アレイスター「それで君は何が聞きたい?」


そこでアレイスターはようやく目を開き、彼を見据えた。

『今まで以上』の威圧感をこの男から感じながら。

いつも通り笑ってはいるが、その纏っていた空気はかなり張り詰めていた。


ダンテ「半分は立ち聞きで済んじまったからな、いくつか質問があるだけだ」



ダンテ「右方のフィアンマって野郎と―――」



ダンテ「―――そのアリウスって野郎についてもうちっと詳しく聞きてえ」



アレイスター「…………なるほどな」

ダンテ「学園都市か」28(勃発・瓦解編)



posted by JOY at 00:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。