2010年08月26日

佐天「今までありがとうございました―――左天お兄ちゃん」 1

1 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/14(月) 22:46:39.21 ID:Q6hvLaco
佐天「―――もう、間違えませんから」

左天「ああ――――頑張れよ、涙子」



このスレは禁書外伝のキャラ佐天涙子が、NEEDLESSのキャラ左天の「第四波動」って能力を
使えた場合どうなっちゃんだって妄想した結果のお話です。
ストーリーは原作基準。なので原作を持っていない人は今すぐ本屋へどうぞ。
今月にNEEDLESS新刊発売らしいね!禁書は8月だっけ?胸が熱くなるな!
ちなみにvipでやってたやつはのくすでまとめられてました。ありがてぇ。

3 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/14(月) 23:03:38.78 ID:Q6hvLaco
現在の進行状況をダイジェストでお送りします。

佐天さんが左天さんと会って第四波動を覚える。

佐天さんがステイルと上条さんに会う。

いろいろあって一方通行さんと仲良くなる。

大覇星祭で魔術師と初めてのガチバトル。

0930事件にて心がぶっ壊れる。

壊れた精神状態で一方通行さんを探索中←今ココ!


このスレの佐天さん。
・第四波動と熱ベクトル系列の能力が使える。
・最初と戦う目的が変わってきてる。
・今現在精神的にかなりやばい。
・結局中学生は中学生。12歳は12歳。

このスレの上条さん。
・基本原作と変わらない。
・佐天さんと仲良し。記憶喪失なのは知られてる。
・自分の境遇を妹達と同じだと例えて佐天さんの同情を引く。逃げて佐天さん、そいつ悪いやつです!

このスレの一方さん。
・原作より丸い。凄く丸い。
・佐天さんの師匠的な存在。アクセラ先輩。仲良し。
・借金無し、統括理事殺害無し。けれど佐天さんを人質にとられて暗部入り。なんてこった。
・杖と演算補助なくても歩いたり喋ったりできる。でも能力は使えない。

このスレの美琴ちゃん。
・禁書の美琴ちゃんっぽいかも。
・レディオノイズ事件で佐天さんが恩人になった。気になる後輩。
・恋愛感情に似たものを感じないでもない。でもきっと気のせい。
・大覇星祭で割りと本気で戦ってきた。所詮中学生。

4 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/14(月) 23:12:31.15 ID:Q6hvLaco
このスレの初春
・無自覚の百合っこ。攻められるより攻めるほうが好き。
・大規模小説サイト『今日のあの人』管理人。佐天さんのえっちな自作小説を掲載してる。
・レールガン組の中で、唯一佐天さんの第四波動を知らない。

このスレの白井さん
・原作と変わりません。
・佐天さんの能力のことは知ってる。

このスレの妹達。
・10032について⇒スカートを捲られる親友。頭が性感帯。上条ラブ。
・14444について⇒佐天さん大好きなヤンデレ百合っこ。涙子ちゃんどいてそいつ殺せない!!
・10700について⇒17600と間違えて生まれてしまった子。半蔵師匠に見込まれて忍者の修行をつんでます。

このスレのステイルさん。
・魔術師の中で一番親しい知り合い。
・かませ。

このスレの土御門先輩。
・暗部の人間。
・そろそろこの人から体術を習おうかと本気で考えているらしい。

このスレのモブキャラ
・級友1⇒優等生タイプの子だったのに初春に洗脳された。
・級友2⇒スポーツマンなショートカット快活っ娘。俺の好み。付き合ってください。
・研究員1⇒元仲間2。電熱線を研究してる大学に籍を置く。メタルギアのスネークみたいな感じ。戦友。
・木山先生⇒モブじゃない。ただいま幻想御手(改)を制作中。

37 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/15(火) 22:33:20.29 ID:7aA04vAo
―――――10月8日  10:55  柵川中学校

佐天「……」ボンヤリ

佐天「……はぁ……」



初春「佐天さん、最近なんだかずっとぼーっとしてる気がします」

級友1「さっき私が話しかけても『あぁうん』で全部の会話終わっちゃったし……」

級友2「んー……あれじゃね?恋煩いじゃね?」

初春「なん……」

級友1「だと……」

級友2「なんだか最近随分雰囲気変わったしさ。ほら、よく言うじゃん?恋する女は云々カンヌンって」

初春「馬鹿な……わ、私の佐天さんがどこの馬の骨ともわからぬ輩に……!」

級友1「佐天さんが普通の恋愛なんてありえない……もっとこう、ドロドロした……はっ!まさかNTR……?」

級友2「……てきとうに言っただけだからな?てかもうその妄想止めてやれよ」


39 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/15(火) 22:39:12.65 ID:7aA04vAo
佐天「――――」


――――わかんねぇのか?お前は、俺達の未来をすっかり攫っちまったんだよ

――――お前には何も出来ねえよ。さっさと行けド畜生が


佐天「―――私のせい、なのかな」

ガタンッ

初春「あ、あの、佐天さん……?授業始まりますよ……?」

佐天「―――ごめん、ちょっと気分悪いから保健室いってくるね」

初春「あ、はい……あ!付添!付添ますよ私!」

佐天「ううん、一人で行けるから大丈夫。それじゃあね」

ガラッ


初春「……振られちゃいました」

級友2「どんまい」

級友1「これはあれね、寝とった罪悪感と優越感の狭間で苦しんでると見た」

級友2「お前もう帰れよ……」

40 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/15(火) 22:48:41.20 ID:7aA04vAo
―――屋上


佐天「……授業さぼって屋上って、どこの不良なんだか」

佐天「あー……空が青いなぁ。世はこともなく本日も平和なり、っと―――いや、平和じゃないか」

佐天「世界各地での反科学デモ、かぁ……9月30日の事件が随分と尾を引っ張ってるみたいで」

佐天「相手はローマ正教徒……なんだっけ?20億人もいるんだっけ?ははっ、世界の3分の1が一気に暴動起こしちゃったら
    学園都市もおしまいかな」

佐天「――――はぁ。何言ってるんだろ、私」

佐天「昔なら――――ちょっと前までの私なら、何か思うこともあったはずなのに」

佐天「なんだかなぁ……何を見ても空しい気分になっちゃうなぁ……なんでかなぁ……」

佐天「……――――何も出来ない、か」

佐天「あのスキルアウトの人達、どうなったかな……あー、考えるといらいらしてくる!何これ何なんだろこれー!」

佐天「……はぁ」

41 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/15(火) 22:57:35.95 ID:7aA04vAo
――――plllllllllplllllllllll

佐天「んっ……もしもし」

研究員1『よう嬢ちゃん。今大丈夫か?』

佐天「えぇ、はい。大丈夫ですよ」

研究員1『この前言ってたアレ、完成したぜ。もし時間あるなら今日取りにきて欲しいんだけどよ』

佐天「本当ですかっ!?わかりました、今から行きますね」

研究員1『今からって……学校あるだろ、お前さん』

佐天「能力に関することだったら大目に見てくれますって。だいたい1時間くらいでそっちに行けると思います」

研究員1『ははっ、まあ俺もそこまで真面目な学生じゃなかったから人さまのことは言えないがな。じゃあ待ってる。
      守衛にはこっちから話通しとくから』ぴっ

佐天「はい、お願いします―――よし、それじゃ行こうか」




教師「つまりAIM拡散力場ってのは無意識のうちに漏れる能力の余波みたいなもんだな。
    それぞれの能力によってその種類は異なり、逆にいえばもしAIM拡散力場を観測・解析できれば
    誰にどんな能力があるか判定できるわけだ―――まあこれに関しては高校でやることだからな」

ガラッ

教師「お、佐天、もういいのか?」

佐天「すみません早退しまっす!」

教師「何でそんなに元気に早退宣言してんの!?あ、こら、待ちなさい!」

佐天「能力開発のためなんですって!あとお腹痛いんです!生理なんです!それじゃ!」

42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/06/15(火) 23:02:38.73 ID:SBz1KgYo
言い訳にデリカシーの欠片も無ぇなww

43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/06/15(火) 23:04:57.52 ID:ERQ90lIo
佐天さん頼むからもう少しオブラートに包んでくれwww

44 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/15(火) 23:08:41.90 ID:7aA04vAo
――――第五学区  某大学研究所

佐天「こんにちはっ」

研究員1「こんにちは。さっそくだが、コイツが例のアレだ」

佐天「……篭手、ですか」

研究員1「ガントレットとも言うな。大覇星祭の時の嬢ちゃんの戦いかたを見てるとこの形が一番いいだろうと思ってな。
      なるべく自由度が高いように金属片は使わないようにしたかったが、最低限必要な部分は出てくるから
      その辺りは勘弁してくれ。俺達の電熱線を特殊加工して繊維のようにして、表から裏まで編んである。
      外から受けた電撃は内部まで入り込み、高熱を発生させるわけだ。つまり、嬢ちゃんが能力を使えなかった場合
      大やけどどころじゃ済まない設計だが……本当にこんな感じでよかったのか?」

佐天「ええ、大丈夫です。それにですね」

カチッ  ボッ

佐天「……この通り、私は能力の性質上熱にも耐性があるんですよ。ある程度なら熱いとも感じませんし」

研究員1「ほー。不思議なもんだな」

佐天「ええ、まあ。それよりありがとうございました!でも結構時間かかるみたいなこと言ってたのに……もしかして無理させちゃいました?」

研究員1「いや、皆こういうもん作るのは初めてでな。楽しんでできたよ……さっきも言ったように、嬢ちゃん以外には使えないが」

佐天「なら良いんですけどね―――えっと、そういえばいくらくらいですかね?これって」

研究員1「そのことなんだが、まあタダでいいってことになった」

佐天「いいんですか?」

研究員1「皆楽しかったみたいだし、それに大覇星祭のあの競技のことも聞けて満足だったみたいだからな―――ま、代金はその話ってことで」

佐天「……ありがとうございます。かっこいいですね、お兄さんたち」

研究員1「普通だよ、普通」

46 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/15(火) 23:17:07.20 ID:7aA04vAo
研究員1「それにしてもよ」

佐天「はい?」

研究員1「そんなもん、何に使うんだ?そりゃあコンセントからでも電気は取り入れられるようにしておいたが、
      正直使い勝手微妙じゃないか?」

佐天「んー……御坂さん対策、ってところですね」

研究員1「第3位の?なんだよ、お前ら友達同士じゃなかったのか?」

佐天「そうなんですけどね……御坂さんのことだから、きっと衝突するはずですから」

研究員1「?まぁ俺は研究員でお前さんの事情につっこむ権利はないが……ただ、技術者倫理的な観点から言わせてもらうとな。
      それを悪用しようってんなら、こちらとしても止めなきゃいけないんだが」

佐天「悪用、じゃないですよ。そんなことはしません。約束します」

研究員1「……そうかい。ま、そんなもん悪用しようにもどうするんだーって話だからな。問題ないか。
      それじゃあそろそろ昼飯時だが、どうする?何か食ってくか」

佐天「んー……いや、遠慮しときますね。またロリコン扱いされちゃいますよ?」

研究員1「ぐっ……それは困る、な」

佐天「でしょー?それじゃあお兄さん、ありがとうございました。他の方にも、よろしくおねがいします」

研究員1「おう、何すんのか知らねえけど頑張れよ」

佐天「……っ」

研究員1「……?どうした、いきなり顔しかめて」

佐天「あ、いえ、はい、頑張ります!では!」


49 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/15(火) 23:24:40.61 ID:7aA04vAo
―――自然公園 13:21

佐天「だから別にさぼりじゃないんですって!本当ですって!」

警備員「本当か?なら何故こんな昼間に公園何かにいるんだ?」

佐天「早退してきて、気分が悪くなったって言ってるじゃないですか!」

警備員「君の学校に確認したところ、元気に、その、生理だといって飛び出していったそうだが……?」

佐天「だから生理なんですよ!女の子の日なんです!痛くて辛いんです!男の人にはわからないんですって!!」

警備員「ん、まぁ、それはそうだが……もう少し声を抑えたほうがいいのでは?」

佐天「いやだって周りに人いませんし。とにかくそういうわけで、サボりとかそんなんじゃないですから」

警備員「そうか……なら寮まで送って行こう。それで構わないな?」

佐天「ん……はい、じゃあそれで」



―――寮

警備員「ここか」

佐天「はい―――えっと、まだ付いてくるんですか?」

警備員「一応部屋に入るまでな」

佐天「はぁ……」

50 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/15(火) 23:26:46.82 ID:7aA04vAo
佐天「ここが私の部屋ですから」

警備員「そうか」

佐天「……それじゃ、ありがとうござ―――きゃっ!?」

佐天「くっ……ぁ、やめっ、離して……!」

警備員「そっ、そんなエr






初春「みたいな展開になってたら笑えますよね」

級友1「さすが飾利ちゃん……!」

級友2「あー佐天ちゃん大丈夫かなー」

52 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/15(火) 23:39:40.73 ID:7aA04vAo
――――自然公園  13:21

佐天「よし―――これで御坂さん対策は良し、っと」

佐天「あとは、木山先生か……電話するのも図々しいし、向こうから連絡くるのを待ってるしかない、か」

ミサカ「やや、そこにいるのは佐天涙子ではありませんか?とミサカは尋ねます」

佐天「ん……妹さん……んん?誰さん?」

ミサカ「ミサカは10700ですね、とミサカは自分の検体番号で自己紹介します」

佐天「あぁー……あの時はどうも御世話様で」

ミサカ「いえいえ、あの程度なら全く問題ないでござるよ、とミサカはさりげなくキャラ付けします」

佐天「(ござる……?)ところで、えっと、なんて呼ぼう……妹さんってのは10032さんだし、14444さんにはミサカちゃんだし」

ミサカ「ふむ……でしたらミサカのことはこう呼んでください、とミサカは提案します」

ミサカ「科学の街に潜む影―――ある時には量産用クローン、ある時には愛玩用クローン。しかしてその正体とは!
    古より受け継がれる技術を正しく継承したかの有名な忍者の一番弟子、ミサカ10700通称忍者ミサカなのです!
    ――――とミサカは自分の正体をかっこよく明かします」

佐天「(突っ込みどころが多すぎてどうしようもない……)」

ミサカ「フフ、決まりました。あまりの素晴らしさに佐天涙子も絶句のようですね、とミサカは胸を張ります」

佐天「っ……えっと。ひとつひとつつっこんでもいいかな?」

ミサカ「?はぁ、まあいいですけど、とミサカは首をかしげます」

55 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/15(火) 23:45:17.42 ID:7aA04vAo
佐天「まず、『忍者ミサカ』ってそのまんますぎて逆に呼びづらい」

ミサカ「はうっ」

佐天「次に、あんまり言いたくないけど、ある時には量産クローンじゃなくて、常に量産クローンだと思う」

ミサカ「んあっ」

佐天「それから愛玩用クローンって何さ。えっちなことするの?」

ミサカ「いやっ」

佐天「それからこれが一番気になるんだけど……自分で忍者って言っておきながら正体明かしちゃだめじゃん。忍んでないじゃん」

ミサカ「やあっ」

佐天「なんていうか、全てが胡散臭すぎると思うんだけど」

ミサカ「ううっ……ミ、ミサカの全てを否定されてしまった気分です……とミサカはよよよと地面に泣き崩れます」

佐天「あ……ご、ごめんねっ?別に傷つけるつもりじゃなかったんだけど……」

ミサカ「いえ……事実ですから……とミサカはそういえば師匠にも『お前忍者になりたいならもっと忍べよ』って言われてたことを思い出しました」

佐天「(んー……妹達にもいろいろいるんだなぁ)」





20000「へっくし」

20000「む……おかしいですね、いつもはこれくらいの寒さへっちゃらなんですけど、とミサカは首をかしげます」

60 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/15(火) 23:55:50.52 ID:7aA04vAo
佐天「(ん……待てよ、忍者……。もし。もしもだけど、このミサカさんが本当に忍者なら――――)」

佐天「ねぇ、ニンジャミサカチャン、忍者っていうならさ、こう忍者的な体術とかみせて欲しいんだけどなー」

ミサカ「にっ、忍者的な、ですか!とミサカはついに自分が忍者と認められて嬉しく思います!」

ミサカ「そ、そうですね……ではまず、一瞬で相手の懐に潜む技でも見せましょうか、とミサカは立ち上がります」

佐天「おおっ、なんだか隠密行動っぽい」

ミサカ「まあそもそも敵に発見されている時点で三流なのですが、もしもの場合のためにこういった術もあるということで、  
    とミサカは誰にというわけでもなく言いワケをします」

ミサカ「では――――いきますね」

佐天「(――――……?うん?別に普通に立ってるだけだと思うけど……)」



ミサカ「―――これであなたは一度死にました、とミサカは首にナイフを突きつけて断定します」

佐天「っ!?」ばっ

佐天「え―――ええ!?(何時の間に――――)」

ミサカ「とまあこんな具合ですかね。師匠ならもっと上手くやってのけるのでしょうが、とミサカは自分の腕の無さにがっくりします」

佐天「いや―――いやいやいや!凄いよ!どうやったの!?」

63 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 00:26:35.29 ID:7Nsewf.o
ミサカ「す、凄い、ですか……?ふ、ふふ、ふふふふ……」

佐天「(こわっ)」

ミサカ「ふふ……おっと、ついついにやけてしまいました、とミサカは技が褒められてついつい気分が高揚してしまいました」

ミサカ「さて、どうやったのかと言うと、簡単に言えば呼吸を合わせただけです、とミサカは説明を始めます」

佐天「呼吸?」

ミサカ「口で説明するだけでは不十分ですので、まずこれを見てください、とミサカは携帯でムービーを再生します」

佐天「これって……剣道、だっけ」

ミサカ「ええ。これは達人と呼ばれる領域まで達した人達同士の試合ですが――――どうですか?とミサカは佐天涙子に意見を促します」

佐天「え……どうって言われても、えっと、竹刀?をかつかつしててほとんど動いてないみたいだけど―――あ、動いた。一瞬だったね」

ミサカ「厳密に言うと違いますが、これが呼吸を読むということですねとミサカは全国の剣道師範を敵に回さないかビクビクしながら口にします」

ミサカ「達人同士は構えを見ただけで相手の力量がわかり、剣先を合わせることで相手の心情、動作などを読むそうです。
    そして打ち込むその瞬間というのは、相手が呼吸を吸った時だそうですよ、とミサカは昔先生に聞いたことを思い出して文章をいやなんでもない」

佐天「む……よくわからないかもしれない」

ミサカ「まあつまりは、相手に攻撃するというのは相手の呼吸を読むことが第一ということを言いたかったのですよ、とミサカは説明します」

64 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 00:35:13.56 ID:7Nsewf.o
佐天「呼吸を読む、かぁ……でもそれだけじゃ駄目なんだよね?さっきニンジャミサカチャンは呼吸を合わせる、って言ってたし」

ミサカ「ああ、確かにそうですが―――合わせてしまえば相手の心理状況を正確に把握できるからそうしているだけです、
     とミサカは自分でも何を言っているのか解らない執筆者の心を代弁したく思います」

ミサカ「さて、先ほどの場合ですが、佐天涙子はミサカを見ている最中に後ろで少し物音がした時に、一瞬気を緩めましたね。
     一定だった呼吸がわずかに乱れたことを感知し、その瞬間と、あと瞬きをした時に動いたのですよ、とミサカは長々と説明します」

佐天「……けど、それだけじゃ本当に一瞬だよ?たったそれだけで詰め寄れるとは思わないけど」

ミサカ「あとは忍者の足運び―――縮地法、というものを使いました。とミサカは某明治漫画のことではないことを注釈しておきます」

佐天「縮地法?」

ミサカ「静から急へ一気に加速する技術のことです、とミサカは実演してみます」

佐天「んっ……なるほど、確かに普通とは違う速さがあるみたい」

ミサカ「実はミサカは呼吸を合わせるよりこちらを習得することに苦労しました。軍事用クローンでなければ無理だったでしょうね、とミサカは―――」

佐天「―――っと、こんな感じかなぁ」

ミサカ「」

66 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 00:39:25.62 ID:7Nsewf.o
ミサカ「なんてこったい、とミサカは頭をぴしゃりと叩きます」

佐天「不思議と出来ないとは思えなかったかなぁー……あー、そっか。睡眠学習の効果かも」

ミサカ「むぅぅ、ミサカは一か月以上訓練してようやく形になってきたものをこうもあっさりと実現されると少々傷つきます、
    とミサカはうなだれます」

佐天「けどその呼吸を読む?ってのがイマイチかなぁ」

ミサカ「……MNWによると、佐天涙子の能力、熱ベクトル視覚化ならば相手の動きはわかるということでしたが、
    とミサカは尋ねます」

佐天「確かに動きはわかるけどさ……相手が動いてこなきゃ意味のない技術だもん。ニンジャミサカチャンのそれは、
   相手が全く動いてなくてもできるし、何より呼吸を合わせて?るから虚をつけるみたいだし」

ミサカ「それは確かにありますが、とミサカは忍術の偉大さを実感します」


67 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 00:44:27.78 ID:7Nsewf.o
佐天「(けど、忍術―――これは、強くなれる可能性があるかもしれない)」

佐天「ねえニンジャミサカチャン、その師匠って人に会わせてくれない?」

ミサカ「駄目です、とミサカは即答します」

佐天「なんでさ!」

ミサカ「師匠との約束ですから、とミサカは絶対に口外しない姿勢を表します」

佐天「む……それって、やっぱり忍術はあんまり広めるものじゃないーとか、そういうの?」

ミサカ「ええまあ、そんなかんじですね、とミサカはぶっきらぼうに答えます」

佐天「……そっか。まあ、しょうがないか、それなら」

ミサカ「ええ。っとそろそろミサカも修行の時間なので行きますね、とミサカは駆け出しますニンニン」

佐天「はーい、頑張ってねー」





佐天「とでも言うと思った?ふふふ、後をつけさせてもらうよニンジャミサカチャン……!」

70 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 00:51:15.45 ID:7Nsewf.o
―――第七学区 

佐天「……随分治安の悪いとこに行くんだなぁ。見た感じスキルアウトの集落、ってかんじだけど」

佐天「……スキルアウト、か」



ミサカ「どうも、遅れそうになってもうしわけございませんでした、とミサカは謝罪します」

半蔵「暇だからいいぞ別に」

ミサカ「まあお優しい、とミサカは師匠の優しさに惚れてしまいそうになります」

半蔵「ははっ、お子様は出直してきな……それで、後ろのヤツは知り合いか?」

ミサカ「後ろ?とミサカは振り向きますが……誰もいませんよ?」

半蔵「おーい、隠れてるのバレバレだから出てこい」

佐天「……バレテーラ。やっほ」

ミサカ「……まさか尾行してましたか?とミサカはおそるおそる確認します」

佐天「まあ、おざなりだったけど」

半蔵「このアホ。忍者が尾行されてどうするんだ」

ミサカ「うううっ、ミサカ一生の不覚です、とミサカはへこみます」

71 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 00:59:03.93 ID:7Nsewf.o
半蔵「それで?見たところ中学生みたいだが、こんな治安の悪いとこに来て何をしようってんだ?
    風紀委員ってわけでもなさそうだが」

佐天「単刀直入に言うと忍術を教えてください!」

半蔵「却下。帰れ」

佐天「即答!?な、なんでですか!!」

半蔵「教えるようなもんでもないからだ」

佐天「でもそこのミサカさんには教えてるじゃないですか。だったら私に教えてくれたって……!」

半蔵「コイツに教えてるのは事情があるからだ。そうでもなけりゃいちいち教えたりなんてしねぇよ」

佐天「む……」

半蔵「それより、早く帰ったほうがいいんじゃないか?ただの女子供が一人でこんな場所に来るなんて正気の沙汰とは思えないんけどな」

佐天「そんなことはなんてことのない問題です。普通のスキルアウトの人達くらいには負けませんから」

半蔵「ほぅ、言うねぇ。随分な自信だが、能力者か?」

佐天「まあそんなとこです―――そうだ、今から手合わせしてくれませんか?それで、私が勝ったら忍術教えてください!」

半蔵「お前が勝ったら別に忍術なんて必要ないって照明になるだろ。つかそんな勝負、俺にまったく利がねえだろ」

佐天「そっ、そりゃそうですけど……でも、ほら。そこのミサカさんは目を輝かせてますよ?」


72 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 01:03:15.89 ID:7Nsewf.o
半蔵「あん?」

ミサカ「師匠の忍術と我らが恩人佐天涙子の戦いが見られる……こ、これは興奮します!とミサカはわくわくします」

半蔵「阿呆、別に俺は戦うと言ってねえだろうが」

ミサカ「佐天涙子の能力は熱吸収とかです!頑張ってくださいね!とミサカは応援します!」

半蔵「勝手に話進めてないで俺の話を――――まて、熱吸収、だと?」

佐天「……?どうかしました?」

半蔵「……いや、わかった。勝負してやる。ただし、こっちも勝った時の条件をつけさせてもらうぞ」

佐天「はぁ……それは構いませんけど」

半蔵「よし―――そんじゃあま、やろうか」

佐天「ええ―――(身体強化―――)」

73 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 01:09:12.99 ID:7Nsewf.o
佐天「(そこのミサカさんの言う限りじゃ、忍術ってのは相手、つまり私の呼吸をよんで発動してくる―――ってことは、  
    迂闊には動けないってこと。なるべく呼吸を乱さず、こちらもスキをうかがって―――)」

半蔵「トラップ発動ー」カチッ

佐天「―――へ?あ、きゃっ!?」バサッ

半蔵「強化繊維で編まれた重量網だ。あんまり動くなよ、絡まってとれなくなるぞ―――さて、これで俺の勝ちだな」カチャッ

佐天「……忍者が銃を使うってどうなんですか」

半蔵「別におかしくはないだろ。あんまり忍者に幻想を抱くなよ」

佐天「というかこんなの卑怯です!やり直しを要求します!!」

半蔵「ははっ、忍者に向かって卑怯だなんだというとは、お門違いもいいとこだな」

ミサカ「そうですよ、相手の陣地に乗り込んでいるのに油断していた佐天涙子が悪いのです、とミサカは師匠の弁護にはいります」

佐天「う……うぅ……」

半蔵「さて―――それじゃひとつ質問させてもらうか」

佐天「それが勝った時の条件ですか?別になんでもいいですよ」

半蔵「……お前、今月の3日の夜、どこにいた」

佐天「……!」

74 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 01:20:11.24 ID:7Nsewf.o
佐天「……何で、そんなことを」

半蔵「答えろよ。ただ答えればそれでいい」

佐天「……断崖大学、です」

半蔵「……そうか。熱吸収と、ガキの女ってとこから、もしやと思ったが――――お前がやったのか」

佐天「……はい」

半蔵「そうか―――」

佐天「……あの、」

半蔵「なんだ?」

佐天「あの人達は……あそこにいた人達は、まだ生きてるんですよね?」

半蔵「ああ―――生きてるよ」

佐天「……!……よかったぁ……」

半蔵「……なるほど。浜面が言ってたことは本当だったわけか」

佐天「はい……?」

半蔵「自分達の計画を邪魔したヤツに同情された、ってよ。情けないやら悔しいやら憎たらしいやらで、相当まいってたからな」

半蔵「さて―――俺はお前を許すことは出来ない。親友の敵だからな―――お前を恨むことは間違ってるってわかってても、
    どうしても自分の気持ちにケリがつけられん。だから早く帰れ」

佐天「……私に出来ることがあれb」

ガァンッ

佐天「っ」ビクッ

半蔵「帰れ―――頼むから、帰ってくれ」

佐天「……っ!」だっ

75 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 01:29:28.87 ID:7Nsewf.o
―――――――。

半蔵「……はぁ」

ミサカ「話は見えませんでしたが、その、お知り合いで?とミサカは師匠を機嫌を伺いながらたずねます」

半蔵「……俺にはさ、親友がいたんだよ。ほら、お前も知ってるだろ。駒場と、浜面」

ミサカ「ええ、まあ。何度かお会いしたことはありますし、随分と良くしてもらった覚えはありますが、とミサカは返します」

半蔵「駒場がさ―――今月の3日に殺されちまって。浜面の野郎は、スキルアウトから抜けちまって」

半蔵「こんなことしてるから、そりゃあいつ死んでもおかしくないってことはわかってたけどさ。
    ―――一気に親友二人を失うってのは、存外辛いもんだな」

半蔵「悪いのは他でもない―――結局、俺達が悪で、あの嬢ちゃんはむしろ正義側の人間なんだろうけどさ。
    やっぱりこう、どうしても、な。はは、すまん、愚痴っちまって」

ミサカ「―――いいですよ、とミサカは答えます」

ミサカ「それに……ミサカは何処へも行きません。ずっと師匠の傍にいますから、とミサカはさりげなく告白なんてしてみます」

半蔵「……そうか。嘘でも嬉しいな、そりゃ」ナデナデ

ミサカ「ッ!!!」ビクッ

半蔵「ん?どうして、嫌だったか?」ナデナデ

ミサカ「ァ、ぃぇ、初めて師匠に触れてもらえましたから、とミサカは顔が上気するのを感じます」テレテレ

76 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 01:33:20.27 ID:7Nsewf.o
――――――。

佐天「―――」

佐天「何も出来ない―――何も救えない―――」

佐天「……はぁッ……くぅ、なによ……なんでこんなに、胸が苦しくて……!」

pllllllllplllllllllll

佐天「……っ、もしもし」

土御門『にゃー佐天ちゃんかにゃー?今暇?』

佐天「土御門先輩……久しぶりですね。暇―――そうですね、暇です」

土御門『そりゃーよかったにゃー。ちょっと23学区のターミナルまで来てくれるかにゃー』

佐天「……?それは別にいいですけど……」

土御門『サンキュ。そんじゃ頼んだぜい』ピッ

佐天「……なんだろ。ずいぶんイキナリだけど」

77 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 01:43:29.09 ID:7Nsewf.o
――――23学区 ターミナル

佐天「……むぅ。居ないなぁ」

土御門「すまんすまん、遅れちまったにゃー」

佐天「あ、いえいえ私もさっき来たばっかりですから―――って上条さん!?」

上条「何で佐天さんがここに!?」

佐天「……なるほど、また何か厄介事ですか」

土御門「よくわかったにゃー」

上条「おい土御門、なんで佐天さんがここにいるんだよ!」

土御門「何でって、協力してもらうからに気まってるぜいカミやん」

上条「はぁ!?馬鹿かテメェ!佐天さんにそんな危ないことさせるわけにいくか!!」

佐天「ごめんなさい、話が見えてこないんですけど……あの、何するんですか?」

上条「……おい、おいおいおい土御門よ。お前、もしかして何も知らせてないのか?」

土御門「いやーそんな暇なかったというか」

上条「この馬鹿野郎ーっ!!」ガキッ

土御門「甘いぜー当たらないぜー」サッ

78 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 01:47:05.17 ID:7Nsewf.o
土御門「かくかくしかじか」

佐天「まるまるうまうま……暴動を止める、ですか」

土御門「ああ、協力してくれるな?佐天ちゃん」

上条「なぁ佐天さん、別にいいんだぜ?俺達が行ってくるからよ」

佐天「いえ……行きますよ。今は―――今は、何か目的があったほうが楽ですから」

土御門「ほらなーカミやん。佐天ちゃんも行きたいって言ってるにゃー」

上条「あ、ああ……」

土御門「さーてそれじゃさっさと飛行機に乗り込むぜい」

79 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 01:51:48.14 ID:7Nsewf.o
上条「……待ってくれ土御門。まさか、アレに乗るってのか?」

土御門「勿論だにゃー。さっさと着いたほうがいいだろ?」

上条「さっさとってレベルじゃねえぞ!あれ、たしか7,000時速/km出るやつだろ!!」

佐天「7000……?それってどんな感じなんですか?あんまりぱっときませんけど」

上条「鉄板でゆっくりと身体を潰されていく感じだ……インデックスなんてあれのせいでまた科学嫌いになっちまった」

佐天「どういうことなの……」

土御門「まー慣れりゃーなんてこともないはずだぜい。ほら、さっさと行くぞ」

上条「嫌だー!あれだけは!あれだけはマジで勘弁……!!」

佐天「うーん……身体強化したらなんとかなるのかなぁ……」

106 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 22:30:20.01 ID:7Nsewf.o
――――――――飛行機内。

土御門「『C文章』―――この霊装が今回の事件のポイントってわけだぜい」

上条「ごががががががががががががががががががががががががががっ!!」

佐天「だっ、大丈夫ですか上条さん……」

土御門「そういう佐天ちゃんは余裕そうだにゃー」

佐天「身体強化の応用みたいなもんですけど……あの、土御門さん、これ、大丈夫なんですか?」

土御門「あー大丈夫大丈夫、結構辛そうに見えるが案外そうでもないぜい。なーカミやん」

上条「うごげっ!!」

土御門「だってよ。それでだな、そのC文章ってのは、簡単に言っちまえば『言ったことを正しいと思わせる』霊装なんだにゃー」

佐天「言ったことを正しいと思わせる……?えっと、例えば私が『土御門さんは犬だ』って言ったら、本人も周囲の人も土御門さんが
    犬だと思いこむってことですか?」

土御門「にゃー。そんな万能なもんじゃないにゃー。このC文章ってのはそもそもローマ正教徒にしか効果を示さないんだぜい」

107 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 22:40:57.49 ID:7Nsewf.o
土御門「ローマ正教徒にしか使えない―――それは『ローマ正教にとって正しい=xと信じ込ませるってことなんだにゃー。
     だからローマ正教にとっての正しさ≠ネんてどうでもよかったり、強い意志をもって拒んでる人間までには効果を
     示さないんだぜい。そういうわけだから『ローマ正教徒限定の霊装』なんだにゃー」

佐天「言ったことを正しいとする……なんだか、心を操作してるみたいでいやらしいですね」

土御門「つってもこんなことは大昔から行われてきたことなんだぜい。権力者こそが絶対の時代に、その言葉がどれだけ
     重要視されたかは言うまでもないだろ?」

佐天「そりゃまあそうですけど……てことは、今の暴動はそのC文章を使ってローマ正教徒に『学園都市は悪い奴だ』って
    思いこませてるわけですね?だから学園都市、つまり科学への反対運動が起こってる、と」

土御門「そういうことだぜい。だからこのC文章を破壊してしまえば今回の暴動はさっぱりきれいに収まる、ってわけだにゃー」

佐天「なるほど。……ん、でも、そんな強力なもの、なんで今まで使わなかったんでしょうか。こんな風に言うのもあれですが、
    それを使えば世界のローマ正教徒を操って、とっくに学園都市を破壊できたんじゃないんですか?」

土御門「その通り、このC文章ってのは強力―――過ぎる霊装なんだにゃー。一旦正しいとさせた事柄に関しては、
     同じC文章を使っても取り消すのは難しい。だからそうほいほい使われないように厳重に審査されてきたわけだにゃー。
     まして今とは違って昔なら、科学と魔術のバランスは一応保たれていたわけだから、危険を冒してまで使う必要はなかったってことだぜい」


109 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 22:48:29.39 ID:7Nsewf.o
土御門「それに場所も限られてるんだにゃー。本来ならバチカンの中心部に据え置いて、地脈を使って
     世界中に効果を飛ばすってわけなんだが……」

上条「でっ、でもよ、土御門っ……いっ、いまおれ、俺達が向かって、ん、のはっ、フランスだっ、ったよ、なっ……」

土御門「あり?よく知ってるなーカミやん。言った覚えは……そういえばちらっと飛行機が出発する前に言ったかにゃー。
     そうそう、んー、それに関してはどこから説明したもんか……」

ぴんぽんぱんぽん。
This place control room. It is come in remainder approximately 5 minutes to French Avignon air space.
I begin slowdown from now on.
The this place control room which repeats itself……

佐天「(英語?なんて言ってるんだろ……)

土御門「……にゃー、カミやん割としんどそうだにゃー。ほらほら、深呼吸してみるにゃー」

上条「すー……はー……すー……はー……」

土御門「……あー、駄目だにゃー。こりゃー一回吐いちまったほうが楽かもしれんぜい。
     悪い、佐天ちゃん、そっちの肩もってやってくれ」

佐天「あ、はい。ん……っと、大丈夫ですか?上条さん」

上条「ん……あぁ、悪いな佐天さん……」

110 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 22:55:47.28 ID:7Nsewf.o
―――。

土御門「よーろろっとーっとー」

上条「……なぁ、土御門……ここどこだよ……吐くって、トイレとかじゃないのか……?」

土御門「なy−なyなy−っと。佐天ちゃんもこいつをつけるんだぜい。ほらほらカミやん、お前は俺がつけてやるからなー」

佐天「なんだろこれ……あの、土御門さん、これって何ですか?」

土御門「にゃー、っと……ん?パラシュート」

上条涙子「えっ?」

土御門「スイッチオーン」

ゴォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

上条涙子「……ええええええええええええええええええええええええ!?」

土御門「気分が悪いなら空からダイビングするに限るにゃー。幸いフランスは晴天なり、すがすがしい気分になれるぜい」

上条「何やってんだ土御門ォォぉおおおおおおおおおおおおおッ!!!こっ、こんなことしたらバラバラになるだろうがぁぁぁ!!!」

土御門「そんなこと言われてももうやっちまったしー」

上条「死!!」

土御門「それに佐天ちゃんはずいぶんのりのりみたいだぜい?ほら」

佐天「かっかみじょうさぁぁぁぁああああああああああああああああんっ!!!!」

上条「佐天さああああああああああああああんッ!!!と、飛ばされてるじゃねえかバカ御門!!」

土御門「ほれ、そろそろ俺達もいくぞ。離れ離れになるのはちとキツイ」ゲシッ

上条「うおあああああああああああああああああああああッ!?」

111 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 23:01:28.88 ID:7Nsewf.o
佐天「ふおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

佐天「(じょっ、上空何メートルからの死のダイブ!?10700ちゃんと忍者云々言ってたあの頃が懐かしい!!)」

佐天「く、くぅぅぅ……!げんそく!意味ないけど減速したい!!第四波動っ!!!!」ゴァッ

佐天「―――よ、よしっ!少しは速度が落ちて……あ、つ、土御門さーん!!」

土御門「にゃー楽しそうだにゃー佐天ちゃーん」

佐天「楽しくないでごふぁっ!!」バッ

佐天「っ……ぱら、しゅーと……?」プラーンプラーン

土御門「ある高度になったら自動的に開くモンだにゃー……それにしても、」

佐天「……?」

土御門「……シマシマってのもありだにゃー」

佐天「……。……!?ちょっ!!う、上見ないでください!!!」

土御門「そんなこといわれてもにゃー」

113 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/16(水) 23:16:38.97 ID:7Nsewf.o
佐天「この……だっ、第四波動っ!!」

土御門「のわーっ!?こんなとこでそんなもん撃つヤツがあるか馬鹿ー!」

佐天「あわっ、反動でっ……ひやああああっ」


―――――。


佐天「……ふぅ。なんとか着陸できた、けど」

佐天「随分離れたとこに落ちちゃったなぁ……何処だろ、ここ。いや、フランスのどこかってことは解るけど。
    ……うう、フランス語なんて話せないし、どうしよっかなぁ」

佐天「……本当にどうしよう……」

139 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/17(木) 22:08:17.80 ID:mqC9TD6o
佐天「っと、そうだ、とにかくこのパラシュートはずさないと……よし」

佐天「随分林の方に落ちちゃったなぁ……えっと、落ちる時に見た感じだと、
   川の向こう側がアビニョンかな」

佐天「……おおう、よく考えたら私初海外じゃない?って、一人になっちゃ
   言葉とかわかんないじゃん!どうしよう……」

佐天「そうだ、電話だ電話!困った時は土御門さんに……」

ツー。ツー。ツー。

佐天「……出ない……だと……」

佐天「く、どうしよう……本当にどうしよう……とにかく、人がいるところまで
   歩かないと」


―――――――。



佐天「おっきな河……海外じゃこれが普通なんだっけ。うーん、どうせなら観光で来たかったなぁ」

どんっ

佐天「ほわっ……ご、ごめんなさい!」

アンジェレネ「い、いえっ、こっちこそごめんなさいです……」←日本語

140 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/17(木) 22:09:30.27 ID:mqC9TD6o
佐天「へ?日本語……?」

ルチア「シスター・アンジェレネ!だからあれほど前を見て歩きなさいと……」←イタリア語

アンジェレネ「ごめんなさい……」←イタリア語

佐天「(あ、今度はどっかの国の言葉だ……あれ……この人たちの服装、どっかで見たことが……)」


――――思い出すのはアスファルトの暑さ。
    夕焼けに照らされていた白い十字架―――


佐天「……−−−ッ!ローマ正教……!」バッ

佐天「(敵か……それとも何も知らないただのシスターか……なんにしても、C文書とかいうのが発動してる今、
   攻撃される可能性はいくらでも―――!!)」

ルチア「……?その服、その言葉……日本の方ですか」←日本語

アンジェレネ「なっ、なんで私たちがローマ正教って……今は違うけど」←日本語

佐天「……今は違う=H」

ルチア「いえ、それよりもっと注意するべきところがあるでしょう、シスター・アンジェレネ。
     問題は、目の前の人物がローマ正教とわかるやいなや臨戦態勢をとったことです」←イタリア語

佐天「あの、今は違うってどういう……?」

アンジェレネ「その、今はローマ正教じゃなくてイギリス清教にはいってむぐぅっ」←日本語

ルチア「この馬鹿シスター!見ず知らずの人間にぺらぺらと喋ってどうするんですか!!」←イタリア語
               ネセサリウス
佐天「……イギリス清教……『必要悪の組織』……?」

ルチア「……!……よく考えてみればおかしな話でした。最初は修学旅行か何かではぐれた学生だと思いましたが、
     この時期にこんなところへ来るはずがない。そしてこちらの言葉もわからないようなのに手ぶらで歩いている……
     不自然にもほどがあります」←イタリア語

142 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/17(木) 22:11:48.73 ID:mqC9TD6o
ルチア「こほん……日本の方、貴女はネセサリウスのことをご存じで?」

佐天「……まぁ、知り合いに一人二人いるだけですよ。ステイルって人と神裂さんって人」

アンジェレネ「神裂……よっ、よみがえるウメボーシの悪夢……!」

佐天「うめぼし……?」

ルチア「ちょっと黙ってなさいシスター・アンジェレネ。しかし本当にネセサリウスのことを知っているようですね。
    ということは、貴女も今回の事件について調査しに?」

佐天「まぁそんなとこです。お手伝いですけど」

ルチア「お手伝い?」

佐天「私は普通の学生ですよ……ちょっと縁があったのでお手伝いに来ただけです」

ルチア「……まあいいでしょう(どうせこの人が死んでも関係ありませんし)」

佐天「それでですね、ネセサリウスなら知ってると思うんですけど、C文書ってどこにあるんですか?」

ルチア「……知りません」

佐天「えっ」

ルチア「私たちは元とはいえローマ正教です。迂闊に近づけばC文書に影響されてしまう可能性があります。今はこうして、効果外と思われる場所から
     負傷者が出た際に動けるよう待機しているだけです」

佐天「なるほど……あれ?C文書ってそんなに効果範囲せまいんですか?」

ルチア「そういうわけではありませんが、ここは……そちらの言葉でいうところの地脈的に効果が及ばない場所なのですよ」

佐天「ああ、そういえば土御門さんも地脈がうんぬんって言ってたっけ……そうだ、それじゃあそのC文書ってどこにあるかわかりますか?」

ルチア「……おおよその目処はついたと、天草教の方から連絡はありました」

佐天「ほんと?それってどこですか?」

ルチア「教えるわけないでしょう」

佐天「えっ」

143 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/17(木) 22:16:23.01 ID:mqC9TD6o
ルチア「確かに貴女はこちらのことを知っているようですし、事情も把握しているようですが……
     だからと言って、身元不明の人間にこれ以上教えることはできません」

佐天「えー。いいじゃないですかーほらー私は善良な学園都市の人間ですよー」

ルチア「駄目ったら駄目です」

佐天「……うう、早く上条さん達と合流しなきゃだめなのに……」

ルチア「上条……」

アンジェレネ「だと……」

佐天「……?……。……あー、『あれ?知り合いなんですか?』って聞こうと思ってたけど、よく考えたら
   ローマってイタリアで、上条さんこの前イタリアに行ってたし……凄いなああの人、どこでもフラグ立ててくるんだもん」

145 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/17(木) 22:21:17.88 ID:mqC9TD6o
アンジェレネ「ね、ねえルチア、この人あの人のこと知ってるし、話してもいいんじゃないの?」←イタリア語

ルチア「うっ……で、ですが、それもダミー情報かもしれませんし……」←イタリア語

アンジェレネ「それにこの人……なんだか他人じゃない気がするし……」←イタリア語

ルチア「は?何を根拠にそんな……」←イタリア語

アンジェレネ「ねぇ……いいでしょ、るちあぁ……」←上目づかい

ルチア「(はうっ)……ま、まあ確かに、今回は事情が事情ですから、いいことにしましょう」←イタリア語

アンジェレネ「うわーいっ!」←スカート捲り常習犯

ルチア「ただし私の口からは言いません、貴女の口から言いなさい、シスター・アンジェレネ」←スカート捲り被害者

佐天「むぅ……またどっかの言葉でしゃべりはじめた……」←スカート捲り常習犯

146 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/17(木) 22:45:06.65 ID:mqC9TD6o
アンジェレネ「えっと、それじゃ私から説明しますね」←日本語

佐天「あ、はい、よろしくお願いします」

アンジェレネ「天草式の方々からの連絡によると、C文書は教皇庁宮殿にあるみたいです。説明終わり」

佐天「……たっ、確かにC文書がどこにあるかって話だったからそれだけで説明は終わるだろうけど……!
   じゃ、じゃあその教皇庁宮殿ってどの方向にあるかわかる?」

アンジェレネ「何処、ではなく方向ですか?方向ならあっちですけど」

佐天「距離はどれくらい?」

アンジェレネ「距離は……だいたい1kmから2kmだと思いますけど……でも河をふたつ挟みます」

佐天「そっか、ありがとね」なでなで

佐天「そっか……あっちか」




アンジェレネ「出来ましたシスタールチア!」ワーイ

ルチア「それくらい出来て当然です(やだこの子可愛い)」

147 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/17(木) 22:52:28.66 ID:mqC9TD6o
佐天「それじゃ、ありがとうございました」ペコー

ルチア「くれぐれも無茶の無いよう」

アンジェレネ「頑張ってください!」

佐天「はい。さってと―――身体強化」

佐天「助走をつけて――――一気に跳んでやる」だっ


アンジェレネ「……シスタールチア。あの人河に向かって走っていくけど止めなくていいのかな」


佐天「――――そりゃっ!!」だんっ


アンジェレネ「シスタールチア!跳んだ!すっごい跳んだ!」

ルチア「あれが学園都市の実力……」



その日、フランスのある街では河をまたぐ女の都市伝説がうまれたがそれはまた別の話。

148 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/17(木) 23:10:04.19 ID:mqC9TD6o
佐天「―――――っと、ととと」

佐天「まずはひとつクリア……あと一つ河があるんだっけ」

佐天「……うーん、この辺りはとくにデモとか起きてないみたいだけどなぁ。ま、それならそれでいいんだけど」グゥ

佐天「……」グゥゥ

佐天「……そういえばそろそろ晩御飯の時間だもんなぁ。お腹すいたなぁ。あ、ホットドッグの屋台……」キュンキュン

佐天「でもお金持ってないし……無いものは無いし、我慢するしかないか……」クルルルルルル

佐天「……が、我慢だもん!」グキュルキュルキュル

佐天「……ひもじいよぅ」キュー


店員「■■■■■?」


佐天「ふぇ?」

店員「■■■……■?■■■、■■■■■」すっ

佐天「えっ……あの、でも私お金持ってなくて…・・えっと、あいはぶのぅまにぃ」ワタワタ

店員「■■■■〜」グッ

佐天「……『代金はいらねぇぜ、食っておきな』ってこと……?あ、あのっ!ありがとうございました!!さんきゅーさんきゅー!」

店員「■■■ー」フリフリ

佐天「……かっこいい……これがフランス人……」

151 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/17(木) 23:18:10.69 ID:mqC9TD6o
――――。

佐天「ごちそうさまでした」

佐天「よしっ……お腹も膨れたし、そろそろ行きますか」

plllllllplllllllllll

佐天「ほわっ……もしもし?」

土御門『大丈夫か佐天ちゃん!』

佐天「あ、土御門さん。大丈夫ですよ、今お腹いっぱいになりました」

土御門『……?いや、まあ無事そうならいいにゃー。今どこにいる?』

佐天「いや、フランスの地理なんてわかりませんけど……えっと、河の向こうがアビニョンで、教皇庁宮殿らしいです」

土御門『あり?何で教皇庁のこと知ってんだにゃー?』

佐天「さっきネセサリウスの……ルチア?とアンジェレネ?って人に会いまして」

土御門『……あー、アドリア海の一件でイギリス清教に来たやつらかにゃー。ま、目的がわかってるならそれでいいんだけどな』

佐天「話によるとその宮殿にC文書があるからそれを破壊してきたらいいんですよね?」

土御門『そりゃそうなんだが……なかなか上手くいかんみたいぜよ。市内各地で暴動が起きてる―――この中を進むのは骨ぜよ』

佐天「んー……?あはは、何言ってるんですか土御門さん、下が駄目なら上を通って行けばいいじゃないですか。
   さすがのデモ活動も、屋根の上までやってるわけないですし」

土御門『そうか……佐天ちゃんならその手が使えるんだったにゃー。よし、それじゃあ佐天ちゃんはそうやって宮殿まで行ってくれ。
     当たり前だが警護が居ると思うから、正面から突っ込まないでひっそり見つからないようににゃ』

佐天「了解です、っと」ぴっ

154 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/17(木) 23:22:01.02 ID:mqC9TD6o
佐天「さて……そりゃっ」だっ



店員「■■■ー。……■■?■!■■■ー!!」


――――――――――。

佐天「――――よし、あとどれくらいだろ……600mくらいっつあぁぁっ!?」

コロセーニホンジンハコロセー
ヤツラハキットガクエントシノニンゲンダーコロセー

佐天「びっくりしたっ!!いきなり火炎瓶投げられるなんて思ってなかった……こりゃ結構過激なんだなぁ」

佐天「上も安全じゃないかも……ひっそりと行こう」だんっ

155 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/17(木) 23:26:46.31 ID:mqC9TD6o
――――教皇庁宮殿

佐天「割となんとも無くここまで来れたけど……むぅ、正面から跳んでいくのは無理そうかも。すっごい人」

佐天「裏手から入ろうかな……っと」

――――――。

佐天「……よし、こっち側は全然居ない。さて、こっそりと―――」

テッラ「……あらら」

佐天「……えっと、こんにちは」

テッラ「……ええ、こんにちは。こんなところで何をしてるんですかねー」

佐天「あー、いや、ちょっと……日本語御上手ですね」

テッラ「はは、あんな島国でも信徒は居ますからねー。導く者として信徒の居る国の言葉くらいは喋れないといけませんー」

佐天「なるほど……随分熱心なんですね!それでは私はこれで……っちょぁっ!?」ばっ

テッラ「逃がすと思ってるんですかねー……まさかこんな場所から入ってくるとは思っていませんでしたよ」

佐天「くっ……和やかな空気を作りだして一旦撤退する作戦は失敗か……!」

156 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/17(木) 23:37:14.40 ID:mqC9TD6o
テッラ「その格好と現在の状況、考えてみるに貴女は学園都市の人間ということで間違いなさそうですねー」

佐天「まぁね……(白い刃……ギロチン……?あれを操るのかな)」

テッラ「それにしてもこんな小娘を送りこんでくるとは、私達が想像していたより学園都市というのは案外弱いのかもしれませんねー」

佐天「ふん、何も知らないただの信徒を操ってるアンタ達よりはマシだと思うけどね!」

テッラ「いえいえ、元をただせば貴女方の責任ですから。やはり科学は処罰せねばならないようですねー」

佐天「ま、言葉を交わした程度でどうこうなるとは思ってなかったからいいけどさ」

テッラ「それに関しては同感ですねー。異教のサル共に私達の言葉が通じるとは思いませんからー」

佐天「はっ―――ほざけ!!」ばっ

佐天「(ヤツの攻撃は見たところあの大きな白い刃―――なら、それをかわして懐へ入り込めば勝てる……!)」

テッラ「ははっ、威勢がいいですねー」ぶんっ

佐天「(左と上か―――!)見えてるっての!!」ひゅんっ

佐天「(よし、潜り込んだ!楽勝だっての―――!)」ごっ

テッラ「――――優先する。人体を上位に、拳を下位に」

佐天「……っ!?づぁっ……(何……なんであんなに固い―――)」

テッラ「なるほど、その動き。あなたが報告にあった学生ですねー」

佐天「何……?」

テッラ「ヴェントの報告ですよ―――自己紹介が遅れましたね。私は『神の右席』左方のテッラ。どうぞよろしく」

佐天「――――!(神の右席……だと……!)」

178 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 18:38:16.76 ID:whaMJ2Io
(神の右席―――私自身直接対決はしたことないけど、左天さんが教えてくれた……あの昏倒魔術を除いても、結構な力量だったって)

佐天涙子は右腕をさすりながら、目の前の魚のような顔をした男―――左方のテッラを睨みつける。
彼女と彼の間には二つの白いギロチンが揺れている。とくに狙いがあるわけでもなく、ふらふらと。

(―――あの白いギロチン。あの攻撃はアイツの腕の動きに連動して動くみたい。だから、それは別に大丈夫。なんてことない。
  問題は……さっき殴った時に、まるで鋼鉄を殴ったかのように固かったこと)

さすっていた右腕をちらりと見る。拳が赤くなっているが、特にどこも折れてはいないようだった。

(なるほど―――あのギロチンだけならただの魔術師と同じだもんね。たぶん、神の右席とかいう名前を貰っているのは、
 その防御力にあると見た)

つまり、前方のヴェントは敵意を抱いた相手を問答無用で昏倒させる攻撃力を。
対して、左方のテッラにはどんな打撃でも通じないような防御力があると、佐天は推測する。

「んー、あまり時間もありませんからねー。さっさと終わらせてもらいますねー」

つい、とテッラが腕を前へ差し出すと、その動きに連動するように二つのギロチンが佐天へと滑り落ちる。
だが彼女は、

「そんな直線的な攻撃、あたるわけないでしょ!」

と、刃の隙間を縫うようにして避ける。

179 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 18:58:17.59 ID:whaMJ2Io
「そうですか、ならこれでは?」

言うやいなや、二つの巨大なギロチンは、十に分かれて前後左右から襲いかかる。
攻撃を避け、いままさにテッラへ攻撃を仕掛けようとしていた佐天はこの全てを避けることは勿論出来ず、

「……っがぁっ……!」

いくつかのギロチンが直撃する。
元と比較して小さいと言えど、50cmほどの大きさはあるのだから、そんなものがある程度の速度を保ったまま
直撃してはひとたまりもない。いかに身体を強化しようと、強度は『まだ』人間から外れてはいない。
ギロチンのひとつが呼吸を乱す箇所に当たったのか、佐天はたまらずせき込む。

「ぐ……ご、げほっ……っ、はぁっ……!」

「ふむ、やはり小さくなれば威力は落ちますかねー。しかし大きくすれば避けられる、と。
 ではこうしますかねー――――優先する。威力を下位に、数を上位に」

ぶわっ、とテッラは腕を振るうと、袖から白い粉が大量に吐き出される。
その粉は地面へ落ちる前にギロチンの形となる。
今現在、宙に浮かぶ刃の数は二十。ひとつひとつは致命傷にはならないが、一斉に襲いかかってきた時、これを避ける術は佐天には無い。

「さて、それでは嬲り殺しという形になりますが、勘弁してくださいねー」

軽い口調でそう言いながら、テッラは両腕を振るった。
直後、二十の刃は一斉に飛び乱れた。

180 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 19:16:08.54 ID:whaMJ2Io
大量の白い刃が佐天涙子に向かい飛び交う中、彼女は、迷うことなくテッラへと走り向かう。

(刃の攻撃なのに致命傷にならない―――ということは、我慢すれば問題無し!
 それに、この刃の動きはただのランダム……なら、急所に当たりそうな部分にだけ注意すれば防げる……!)

斬れない刃は彼女の身体を斬りつけていくが、あまり効果はないらしく、足止めにはならない。
そして、

(抜けた―――!けど、打撃は効かない―――なら!)

右腕をまっすぐに構えて、

「―――第四波動ッ!!」

熱の塊を吐きだした。


182 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 19:25:33.98 ID:whaMJ2Io
「優先する―――炎を下位に、人体を上位に」

炎がテッラに直撃する。だが、受けた彼は何食わぬ顔でそこに立っている。
そして佐天は気づかないが、彼女の後ろで飛び交っていた白い刃は急にその動きを止め、数を減らした。

(効果なし、か―――やっぱり、最強の防御力、って読みは正しいのかな。だとしたら、どうしよっかな……
 上条さんの右手じゃないと通らない?くそう、なんだか私の相手ってリドヴィアにしろ絹旗って子にしろ、防御高いなー)

「ふむ……やはり『コレ』はひとつにつきひとつが限度ですかねー」

「……?何言ってんのさ」

「いえいえ、こちらの話ですけど。それにしても、『威力』と『数』を天秤にかけられたのなら、もっと他のものの優先順位も
 変えられるかもしれませんねー。そうだ、せっかくですからひとつ、調整台になってください。色々聞きたいこともありますし」

「はぁ……?さっきから何をぶつぶつと―――」

「優先する―――我が言葉を上位に、己が自己を下位に」

瞬間に。
ずしりと、佐天の意識に重しがかかった。

193 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 20:57:14.94 ID:whaMJ2Io
(う……何……?頭が、重い――――)

左方のテッラとかいう魚みたいな顔した男が何かを口にしたとたん、頭に霧がかかったように意識が薄れかけた。
ぐっ、と噛みしめて耐えればどうということはないけれど、何かの精神攻撃かもしれないので油断はしない。
それよりも、このままだと勝負はつかない。攻撃してもその攻撃が攻撃にならない。
どんなタネを使っているかはわからないけれど、これがローマ正教四天王の力、ってことなんだろう。

(ともかく、こっちの攻撃は無効化される―――確かに直撃している手ごたえはあるのに、
 アイツ自身が鋼のように固いんじゃどうにもなんない、か)

私がどう打倒するべきか思案していると、テッラは傍にあった椅子に腰かける。舐めてるのか。

「―――随分余裕ですね」

「余裕ですからねー。それより少しお話しましょうか」

つい、とヤツが手を動かすと白いギロチンがテッラの目の前に現れる。数は2つ。大きさも、最初のように戻っているようだった。

「話?さっき私みたいな異教徒と交える言葉は無いとか言ってなかったっけ?」

「ええ、ですからこれは説法のようなものですねー。私は布教活動はあまりしませんから専門外ですが、たまにはいいですかねー」

あまり時間はありませんから手短にすませますけど、と続ける。
怪しかったが、しかしギロチンを戻す際に刺殺せた可能性もあるので、それを考慮すれば別に不意を打つだとかそういうわけではなさそうだ。
勿論、私はそんな話は聞きたくは無いが、ヤツの防御を破る手立てが無い以上、考える時間が与えられるのはありがたい。

「説法、ね……聞かせてもらおうじゃん」

「ではまず第一問―――
              ―――――――貴女はどうしてここに居るんですかねー?」

―――ざくりと。
     ヤツの言葉が突き刺さる。

194 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 21:10:20.48 ID:whaMJ2Io
(な―――っ)

―――突如襲われるよくわからない感覚。 
      鼓動が早い。嫌な汗がじわりと染みる。

「どうして、って……―――」

―――あれ?
     そういえば、私、どうしてここに―――

「……っ!そ、んなの、だって、私―――」

―――口に出せない。
     私がここにいる理由。そんなもの。
      ただ、アンチスキルの人達に申し訳なくて。どうすればいいかわからないまま、土御門さんから電話があって。
       何もしてないよりは、何かしてた方が余計なこと考えずに済むって―――

「わ、たし、は―――」

―――よくわからないどろどろした心の中から必至で言葉を拾いあげる。

「私は、ただ―――」

―――見つかった言葉は求めていたものとは全く違うもの。
     けれど、呑みこむことは出来ず―――




「私はただ―――何も出来ない自分を救いたくて―――」

―――そんな、ずっと心に誓っていたものとは違う答えが出てきてしまった。

195 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 21:20:10.47 ID:whaMJ2Io
「……ッ!!」

はっとして手で口を塞ぐ。

(なん、で―――あんなこと)

先刻口にした言葉を頭の中で繰り返す。
『何も出来ない自分を救いたくて』。

(違う―――違う、私は、私がここにきたのは、自分じゃなくて、だって、そんなの、違うんだって……!
 私がここにいるのは、デモを食い止めるためで、そんな想いで来てるわけじゃなくて―――)

「……ふむ、では第二問―――
                    ―――貴女はどうして戦っているのですかねー?」

「ぐ……そ、んなの……!」

そんなの、皆を守りたいからだと。
そうやって、大覇星祭の時にステイルさんに向かって誓ったことを口にするだけなのに。
私の口から出てきた言葉は、

「……さ、っき、と……!同じ、に、決まってる……!」

ひどいものだった。

197 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 21:28:52.78 ID:whaMJ2Io
「……はぁー……これは、なんというか……こんな相手にいなされたヴェントも可愛そうですねー。
 そういえば、一度天罰術式にかかって置きながら復活し、その際人格が少々変わっていたような気がしたと
 報告にありましたが……ああ、それでは第三問。貴女、二重人格か何かで?」

―――やめて。これ以上何も聞かないで。

「……ち、がうけどっ……!でも、内側に、もう一人っ……!」

「内側にもう一人?では第四問、その方のお名前は?」

―――やめてください。これ以上何も聞かないで。

「さ、てん、さん……が……」

「サテンサン?―――ああ、サテンさん、ですかねー。では第五問、その方とはどのような関係で?」

―――お願いですから。

「この、能力をくれた、大切な、人、です」

「能力をくれた、と……不思議なこともあるんですねー。今は『幻想殺し』に興味がありましたが、こちらもなかなか面白そうな
 研究対象になりそうですねー。では第六問――――」

―――もう、これ以上私に何も聞かないでください。

「―――と、そろそろ地脈操作に行かなければならない時間ですねー。名残惜しいですが、そろそろお別れの時間のようです」

198 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 21:37:03.53 ID:whaMJ2Io
す、とヤツが右腕をあげる。
きっと、あの白いギロチンで私を殺すつもりなんだ。
でもなんでかな、動く気になれないや。

(もう……なんだか、もういいや……)

「それではさようなら―――優先する。人体を下位に、小麦粉を上位に」

(―――――!)

すっと頭が軽くなる。さっきまで心を圧迫していた何かが無くなる。
瞬間、ヤツの右腕が振り下ろされ、今までとは比べ物にはならない速度でギロチンが私に向かって滑り落ちてくる。

「―――っぁぁぁああああああああああああっ!!!」

叫び、無理やりにでも身体を動かし回避する。ギロチンは服の端を切り取っていっただけだった。

「おや、動けないと思っていましたが―――ああ、優先順位を変更したからですかねー」

無理に動かした身体は受け身をとれずみっともなく地面に転がる。
起き上がる気力もなかったけど、でもさっきよりは死にたくないって思ったから、歯ぎしりして身体を起き上がらせて
近くの窓から外へ逃げ出した。

200 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 21:42:21.38 ID:whaMJ2Io
テッラ「あらら、逃げられちゃいましたねー」

テッラ「しかし、言葉を上位に変更することは可能でしたか。ですが基本的に私の『光の処刑』は
     1対1でしか効果がありませんし、複数の自己を下位に設定することはできそうにありませんねー」

テッラ「さて、地脈捜査にでも行きますかねー。学園都市から来ているということは、あの『幻想殺し』も来ていそうですが」

テッラ「先ほどの戦いではたいして楽しめませんでしたし、せいぜい楽しませてくれると嬉しいんですけどねー」



――――――――――――――。


佐天「……はぁっ……はぁっ……」

佐天「あ―――危なかった……もう少しで、死ぬところだった……」

佐天「それにしても、さっきの……なんだったんだろ。人心操作の魔術か何か、かな……」

佐天「……うん、そうだよ。それ以外考えられないよね」

佐天「―――っと、早く土御門さん達に連絡しないと。神の右席がいるってことと、能力のこと」

207 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 22:33:11.37 ID:whaMJ2Io
佐天「つっちーつっちー土御門せんぱー……ん、ちょい待って」

佐天「連絡するにしても、間違えた情報渡しちゃうとえらいこっちゃかな。時間がないのはわかってるけど、
    ちょっと分析してから連絡しよう」

佐天「えっと……まずあの白いギロチンかな。切れ味自体はほとんど無いみたいだけど、それでも結構威力はあったっけ。
    ……あれ?でも、最後のギロチンは全然威力違ったけど……なんでだろ」

佐天「次に……あの防御力かなぁ。上条さんの右手なら関係無いんだろうけど、私じゃどうにもならなかったし。
    でも上条さんはあのギロチン避けられるかな……不安だ」

佐天「あとは―――人心操作、かな。あれは」

佐天「……精神感応系か―――前方のヴェントも近いことしてたし、使ってても不思議じゃない、よね」

佐天「―――うん、不思議じゃない。さて、と、今考えるのは最後のギロチンの威力が上がってたことくらいかな。うーん……」

佐天「……そういえば」

佐天「なんか、同じフレーズの言葉を繰り返してた気がする……なんだっけ……」

208 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 22:41:28.65 ID:whaMJ2Io
佐天「……―――あ、そうだ。『優先する』だったっけ……」

佐天「『優先する。人体を下位に。小麦粉を上位に』―――って、言ってたっけ。……小麦粉?」

佐天「ん……斬られた服のとこについてるこれ……―――あ!わかった!」

佐天「もしかして、あの白いギロチンは小麦粉を固めて作ったもの?なるほど、だとしたらああやって分裂したり集まったり
    する理由もわかるか。てことは、優先ってのは……優先順位……上位……」

佐天「―――……物事の優先順位を決定し上位に設定したものの威力を底上げする能力?
    だとすると、下位に設定した物事は威力だとか性質を下げられるってことかな……」

佐天「そっか……もしそれで、アイツ自身の身体を上位に、他の攻撃を下位に設定すれば、攻撃は通らない……
    絶対防御なんて特性じゃなくて、優先順位を選択する能力だった、ってことかぁ……やられたね」

―――けど、だとすれば。
     あの人心操作の攻撃は、一体―――

佐天「―――いやいや、ふつうに魔術を何個も使えてもおかしくないよね。相手はローマ正教四天王だし」

209 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 22:53:26.36 ID:whaMJ2Io
佐天「しかし、だとしても、敵意をもった時点で意識を奪う『天罰術式』もそうだけど、優先順位を変更するなんて
    本当ぶっとんだ術式使うなぁ。さすがローマ正教四天王。いや、関心してる場合じゃないんだけど」

佐天「けど、だとしたらどうしよっかなー。こっちの攻撃が全部下位に設定されちゃったらいくら攻撃しても意味ないだろうしー」

佐天「うーん……まあ、でも、C文書を壊すことが目的だし、逃げ続けても勝利条件は達成できるかな」

佐天「とは言っても、私みたいな侵入者が居たんだからあそこの警備はきっと高くなってるだろうし。
    正直テッラに勝てると思えないし……くぅー、どうしよっかなー本当」

佐天「……うん、今は土御門さんに連絡し―――」

ドォンッ……!
                                パワードスーツ      

佐天「とはっ!な、何――――……え、あれって……駆動鎧……?」

佐天「しかも、あれって夏に木原が使ってたヤツに似てる―――ってことは、学園都市製!?でも何で……!」

210 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 23:01:03.40 ID:whaMJ2Io
佐天「土御門さんは今回の件には学園都市は介入しないって―――だから土御門さんがこっそり動くって言ってたのに」

佐天「……くそぅ、何がどうなってるかわけわかんないから電話してみるし!」

佐天「……壊れてる。ガッデム!」

佐天「うぅ、どうしよっかなぁ……流石に学生服で、しかも密出国してきたのに、見つかったらえらいこっちゃだよね……うぅー」

佐天「……仕方ない。もうやることなんて一つしか無い、か」

佐天「もう一度教皇庁宮殿に行くしかないか―――けど」

―――けれど。
     あんなバケモノのような敵に勝てるのか。

佐天「……ぐ」

佐天「人心操作さえなければ―――あれにさえかからなければ、なんとか活路は見いだせるはず」

佐天「―――考えるな。怖いなんて思うな。考えないで、ただ戦う事だけを考えろ―――」

佐天「―――――。」





佐天「――――よし。行こう」

211 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 23:09:58.24 ID:whaMJ2Io
―――教皇庁宮殿

佐天「……っ。デモ活動してた人が居ない……いや、駆動鎧の部隊に片されたのか」

佐天「どうしよう、さっきみたいに裏から入ってくかそれとも―――あれ?あれって……上条さんだ」とんっ



上条「もう始まってやがる。いくぞ五和!」

五和「はいっ!」

佐天「っと待った!!」ばんっ

上条「うおあっ、佐天さんっ!?よかった、無事だったか!」

佐天「そういう上条さんも無事で何よりです。ってちょっと待ってください、この中にはたぶん神の右席が居ます!」

上条「だろうな……だが学園都市が本腰をいれて制圧にかかってきた以上、のんびりしてると逃げられちまう。
    早くテッラごとC文書をなんとかしないとダメだ」

佐天「あれ……?テッラって、なんで知ってるんですか?」

上条「さっき戦ったんだよ。全然歯が立たなかったけどな―――あれ?そういやなんで佐天さんも知ってるんだ?」

佐天「いえ、ちょっと前にここで戦いまして」

212 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/18(金) 23:17:52.03 ID:whaMJ2Io
上条「大丈夫だったか?怪我は―――その服、」

佐天「ああ、掠っただけです。問題ありません。それより上条さん、アイツの魔術って、」

上条「『光の処刑』って言うらしいな。優先順位を選択できるって」

佐天「って知ってるんですか……あと一つ、たぶん上条さんには効かないと思いますけど、人心操作もありました」

上条「人心操作だ?いや、そんなはずは……」

五和「……あの、たぶんそんなことは出来ないはずです」

佐天「――――え?」

五和「テッラ自身が言ってたんですけど……『神の右席』はその特性上、普通の魔術は使えないんです。
    だから、テッラが使えるのは『光の処刑』とその副産物の小麦粉を使ったギロチン、のはずです」

佐天「え……でも、私、さっき、」

―――もしあれが人心操作などではないとしたら。
                     あの時の私の言葉は―――

上条「……なあ五和。『神の右席』ってのはわからないことが多いんだろ?だったら佐天さんの言ってる
    人心操作、ってのも考慮しとくべきじゃないか?」

五和「あ、はい、確かに、そうかもしれないです、けど」

上条「もしそうなった場合、たぶん俺の右手で打ち消せると思うから問題ねえと思うけど、一応気をつけようぜ。
    ありがとな、佐天さん―――佐天さん?」

佐天「……あっ、はいっ」

上条「そろそろ行くが、行けるか?」

佐天「はい、大丈夫です―――行きます(考えるな―――今は何も考えるな)」

上条「そっか。それじゃあ行くぞ!」

213 : ◆oDLutFYnAI[sage]:2010/06/18(金) 23:30:41.04 ID:whaMJ2Io
――――教皇庁宮殿 内部

五和「……誰もいませんね」

佐天「私が入ったのは裏からでしたけど……そういえば、ばったりテッラにでくわしただけで、戦闘中も誰も来なかったっけ。
    ……あの、失礼ですがどちら様?」

五和「は、はい、天草式十字精教の五和って言います。今はイギリス精教傘下にいますけど」

佐天「アマクサ……あ、神裂さんの所ですか」

五和「女教皇様を知ってるんですか?!」

佐天「えっと、初めて会った時に第四波動ーって思いっきり攻撃食らわせちゃった。
    ちょっと前に助けてもらいました」

五和「女教皇様に初見で攻撃を!?一体何したんですか!?」

佐天「う……その、上条さんとインデックスちゃんが抱えられてるのを見て、連れ去られてるのかなーって思って
   ついこう、とりゃーって」

五和「いっ、命知らずなんですね……」

佐天「まぁ……そうかな」

上条「……なあ、佐天さん、あの駆動鎧、どっから出てきたと思う?」

佐天「え?そりゃあ学園都市からでしょう……おかしいなあとは思いますけど、それ以外に考えられませんし」

214 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/18(金) 23:42:17.09 ID:whaMJ2Io
上条「確かに学園都市だろうさ。またはその協力機関か―――けどよ、こんなに派手に動いちまったら
    隠蔽も何も無いだろ。学園都市はこの後どうするつもりなんだ……?」

佐天「……それは、そうですけど」

上条「……」ピッピッ

pllllllpllllllll

上条「ああ、御坂か」

佐天「ぶッ!?」

御坂『な、何よ突然……そ、そりゃ電話は突然くるもんだけど……』

五和「……あの、御坂って誰ですか?」ゴニョゴニョ

佐天「う、うーん……上条さんに惚れてる人の一人で、私の先輩、かな?」ゴニョゴニョ

五和「なん……だと……」ゴニョゴニョ

上条「ちょっと聞きたいことあるんだが、今大丈夫か?」

御坂『へ、へえ。私に?それって私じゃないとダメなわけ?ほ、ほら、例えば母とか、最近佐天さんとも仲いいみたいだし?』

上条「いや佐天さんは無理として……そっか、別に美鈴さんでもいいのか」

御坂『ノンノンノンノン!!ア、アンタ人にかけてきといて何納得してんの!?私に聞きたいことがあってかけてきたんでしょ!?』

上条「ん、ああ、まあ学園都市の人間の方がいいっちゃいいんだけど、よそよそしかったからなんか忙しいのかなーとか思ったんだけど」

御坂『大丈夫!全く問題ないわよ!で?この美琴サマに何を聞きたいの?』

佐天「御坂さんも素直じゃないなぁ……」

五和「うぅ……なんですかこの反応……」

215 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/18(金) 23:51:08.51 ID:whaMJ2Io
上条「御坂、今ニュース見れるか。なんでもいい、フランスのアビニョンって街がどうなってんのか調べてほしいんだけどよ」

御坂『はぁ?……アンタねぇ、何かと思ったらそんなこと?ニュースならどこつけても臨時ニュースじゃない。
    そのアビニョンって街の宗教団体が国際法に触れる破壊兵器を作っててその制圧作戦が展開されたって大騒ぎよ』

上条「……、何だと?」

佐天「制圧……作戦……?」

御坂『本当ならフランス政府が処理するはずだったんだけど、特殊技術関連のエキスパートが必要だからって
    学園都市の連中が引っ張られてったってさ。結構深くまで食い込んでて都市の外へ技術をあまり持ち出さない
    学園都市としてどうなの、ってちょっと騒がれてるみたいだけど……』

佐天「なるほど……それが表向き、か……」

五和「?……?」

御坂『てかアンタ今どこに居るのよ。学園都市にいてこのニュースを聞かないって方が難しいわよ。
    何?また路地裏で女の子に絡まれてるワケ?』

上条「いや、そういうわけじゃ――――」

佐天「――――……っ」


―――――じわりと。
       壁の向こう側から、嫌な感じがする。
       熱の乱れが激しくなる―――これは、


佐天「……!!!!下がって上条さん五和さんっ!!!」でしっ

上条「うぉあっ!?」

五和「きゃっ!」


ゴォォォンンッ!!

216 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 00:01:23.53 ID:G4WdUiso
上条「っあっ!!(駆動鎧―――壁をぶち破ったのはコレか!くそっ、上にのっかりやがって……!」

五和「っ!」ばっ

佐天「くっ―――大丈夫ですか上条さんっ!」がんっ

上条「ああ、助かった佐天さん―――くそっ、来たってワケか」


テッラ「やられましたねー。暴動に制圧を重ねて混乱をより深い混乱にするとは、どうやら学園都市もある程度の
    国際非難を受けてでもコイツをどうにかしたいようですねー」

上条「それが……C文書か!」

テッラ「面倒なことです。私一人が狙われるのなら全く問題ありませんが、このC文書を扱っている術者を狙われるとなれば
    話は別です。脆弱な普通の術者では対抗できませんからねー。こういう時は自分のこの体質を恨めしく思いますよ。
    これ以上術者をかばっているのも面倒ですし、今回はここいらで撤退しますかねー」

五和「行かせると思いますか……!C文書はバチカンでも使えます……それがわかってていかせるほど、私達もお人よしではありません」

テッラ「それが何だと言うんですか。いま制圧している部隊では私は止められないし、まさか貴方達がこれらの部隊よりも
     優れているとでも言うのですか?貴方達三人とも、私に敗れていることをお忘れですかねー」

佐天「……ッ!」

テッラ「とはいえ、何もしないで納得しろというのも無理な話でしょうし。いいでしょう、相手になってあげます。
     存分にかかってきて、存分に蹴散らされてください。その方が私としても面白いですし」

217 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 00:08:51.33 ID:G4WdUiso
――――学園都市

「……え?今の声って……佐天、さん?」

御坂美琴は携帯電話を片手にもったままぼんやりと立ちつくしている。
今さっき、上条当麻と話している際に、遠くからよく知る親友の声が聞こえ、あとはところどころノイズがはいる携帯電話を持ったまま、だ。
随分と焦った声だったな―――と思う。

「……そうだ」

美琴は携帯をハンズフリーにし、机に置く。幸いまだ繋がったままだ、何か情報が入るかもしれない。
そして部屋に備え付けてある電話で後輩の一人に電話をかける。
繋がった先の人物は、相変わらずの甘ったるい声で返事をした。

『なんですかー御坂さんから電話なんて珍しいですねー』

「初春さん?ちょっとお願いあるんだけど、今佐天さんに電話繋がる?」

『佐天さんですか?ちょっと待ってくださいね』

そう、佐天涙子の親友初春飾利だ。
美琴自身がかけてもよかったが、もしかしたら、という場合もある。
少しして、お花畑の後輩から返事があった。

『うーん、繋がらないですね。電源が入ってないとかなんとかです』

「そう……ありがとね、初春さん」

それだけ言うと受話器を置いた。
目の前でノイズと、ツンツン頭の彼と誰だかわからない人の声を発する携帯電話を見ながら、美琴は呟く。

あの馬鹿、一体どこにいるのよ、と。

221 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 00:31:29.31 ID:G4WdUiso
―――――爆撃機 倉庫内
      アースブレイド
「―――『地殻切断』、ねェ。ハッ、全く、学園都市も面白ェモン作りやがる」

一方通行は据え置かれたモニタで外部を見る。
そこには大地を紅い線で区切られたアビニョンの旧市街が映っていた。

「(わずか3kgの砂鉄さえありゃものの一時間でユーラシア大陸をブッた切れる……馬鹿げてやがンぜ、本当)」

その紅い線は大型ブレードで引き裂かれた大気に砂鉄を混ぜることによって作りだされる、超高速高熱の気体状ブレードが、
大地を引き裂いた痕だった。爆撃された箇所はまるでマグマのようにどろどろと溶けている。
幅は20m、深さは10mもあった。もし人間がいれば、ひとたまりもなく蒸発している。

「(……高熱、ねェ。アイツならものともしねェンだろォな)」

簡易的に作られた地獄のような映像を見ながら、一方通行は思いだしていた。
人間にとって有害である高熱を自身のエネルギーに変換する少女のことを。
自分が暗部に入ってまで守ろうと思った、傷つきながらも歩こうとする少女のことを。

「(……まァ、元気にしてンだろ。暗部の連中は信用ならねェが、もし裏切った場合こっちも相応の
    対応をするってわかってるはずだからなァ。ま、この『首輪』だけはなンとかしねェとダメだが。
    さって、そんじゃァま、こンな馬鹿げたことする暗部に変わってクソッタレな仕事でもするか―――)」

自分が下らない感傷に入っていたことを振り払い、仕事に専心を向ける。
隣で作戦指示を送っていた部隊の一人の肩をつかみ、一言。

「変更だ」

「は……?」

部隊の一人は、突然の言葉を聞きつい素っ頓狂な声を出してしまう。
そんなことは構わず一方通行は繰り返した。

「変更だ。俺が降りる。有無は言わせねェ。俺が降りて連絡が途絶えたら旧市街地の爆撃を開始しろ」

「……っ」

無線機を持っていた男は言い返そうとしたが、一方通行と目を合わせてしまった瞬間、言葉を飲み込んだ。
そもそもおかしいと感づいたのだ。レベル5が、こんな作戦に加わっていることが。
何度が無線の先とやりとりし、決着がついたのか一方通行へ向き直り結果を伝える。

「変更は受理されました―――パラシュートは必要で?」

「必要で、ねェ。ハッ、答えがわかってンなら聞くんじゃねェよ」

「そ、そうですか……しかし何故変更を?」

その言葉に、一方通行は当然のようにつまらなさそうに答えた。

「決まってンだろ―――お前から見りゃ悪党なンてもンは全部一緒かもしンねェけどな。
 一流の悪党ってのは、カタギは狙わねェンだよ」

222 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 00:44:27.38 ID:G4WdUiso
―――――教皇庁宮殿 内部

外から轟音が聞こえる。
けれど、上条さんとテッラは気にも留めてないように睨みあっている。

「……もう一度聞くが、おとなしくC文書を渡すつもりはねぇんだな」

「ええ、存分に挑み玉砕してください」

互いに一言ずつかわす。
戦いの始まりは、それだけで十分だった。
上条さんはテッラめがけてかけ出し、対するテッラは右腕を振り上げ術を行使する。

「優先する―――大気を下位に、小麦粉を上位に」

テッラが順位を変更すると、小麦粉で出来たギロチンは3m程の団扇のように膨らみ、風を含んで前方へと射出された。
固くも鋭くもない空気が宮殿内部をめちゃくちゃに破壊しながら上条さんへ襲いかかる。
駆け出していた上条さんはこれに反応できず、一手遅れてかけ出した五和さんが上条さんを横へ引っ張り間一髪で避けることに成功する。
五和さんは上条さんを引っ張り倒したあとすぐに距離をつめ、持っていた十字槍でテッラへ仕掛ける。しかし、

「優先する―――刃を下位に、人肌を上位に」

選択により、その刃は薄皮一枚切り裂くことなく止められる。
金属同士がぶつかりあう音がして、十字槍の刃が震えた。その振動は五和さんの腕まで伝わったのか、
顔を辛そうに歪める。

223 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 00:55:06.61 ID:G4WdUiso
しかしそこは歴戦と戦闘員故か、槍を引きながらすぐさま次の行動へ移る。
五和さんは足元にあった小石をテッラめがけて思いっきり蹴りあげた。
狙いは目。だがテッラはそれを一瞥することもなく腕を振るうと、小麦粉のギロチンが小石ごと容赦なく五和さんを吹き飛ばした。

「五和!」

上条さんが叫び、助けに入ろうと駆け出す。
五和さんは先刻テッラが空気で破壊した残骸へと吹き飛ばされたことによってか、足を痛めてしまったらしい。
そして、それをテッラが見逃すはずがなかった。

「優先する―――人肉を下位に、小麦粉を上位に」

術式で強化されたギロチンの刃が容赦無い速度と鋭さで五和さんへと飛ぶ―――だがしかし。
駆け出していた上条さんは咄嗟にその間に入り、右手でこれを打ち消した。
そんな様子を見ながら、テッラは余裕を含めて、勇ましい、と評した。

「しかし、そちらの方は限界のようですねー。足を痛めてしまったようですから。はは、これが本当の足手まといってやつですねー」

そんな言葉を聞きながら五和さんは足を抑えながら苦しそうに顔を歪めた。
確かに、あの足ではまともに動くことは出来ないだろう。小麦粉の優先がなくとも、あのギロチンは十分な威力を持つ。
五和さんはここで下がるべきだ。これ以上続けても死ぬだけだ。
しかし、

「確かに―――けれど、ようやくボロを出してくれましたね。見えました、その術式の欠点……!」

そんな、挑発するような言葉を吐きだした。

224 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 01:04:18.84 ID:G4WdUiso
「天草式は周囲の身近なものを記号化して魔術を行使します―――ですから、そういった暗号探しは得意なんですよ」

「そうですか。しかし活用する暇がなくて残念ですねー」

退屈そうに言うと、右腕を振り上げる。
それにつられて小麦粉のギロチンはネジのように形状を変え、天井に突き刺さった。

「優先する―――天井を下位に、小麦粉を上位に」

そんなとんでもない選択をし、小麦粉を軽く引っ張った。
途端、天井が昔のゲームのトラップのように面白おかしく落ちてくる。
五和さんは咄嗟に槍を垂直に立て、落ちてくる天井からなんとか身を守り、五和さんを抱えようとした上条さんは
五和さん自身に突き飛ばされ横へ吹き飛び間一髪で天井を回避できた。
だが槍は折れてしまい、そこへ駄目押しといわんばかりにテッラのギロチンが炸裂した。

「―――ッ!!!」

上条さんが飛びこむが間に合わない。
直撃を受けた五和さんの身体はくの字にまがり、2、3度跳んで瓦礫の上に仰向けに倒れた。
胸が上下しているところを見ると、死んではいないようだが―――あれではもう戦えないだろう。

226 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 01:12:57.48 ID:G4WdUiso
「ま、こんなところでしょうかね。ただの魔術師が「神の右席」に敵うはずもありませんし」

ぷらぷらと手首を振りながらテッラはうそぶく。

「五和……くそっ、テメェ……!」

ぐらりと立ちあがりながら上条さんはテッラを睨みつける。
そんな様を愉快そうにしながらテッラは笑いながら言った。

「ははは、今は戦闘中ですよ?私は何も悪いことはしていないと思いますけどねー。
それとも私に何もせずただ殴られていろと、そんな都合のいいことを言うつもりですか?」

「それにしてもがっかりです。あのヴェントを倒したというからどんなものかと期待したのですが……
『幻想殺し』、そこまで未完成とは。本来の性能を発揮していれば、もう少し楽しめると思ったのですが」

―――なんだと。
今、目の前の敵は、何を言って――
ちらちと上条さんを見ると、上条さん自身も私と同じ意見のようだ。
眉をひそめて、自分の右手へと視線を落としている。

「おや。もしかして知らない?」

びくりと。
上条さんと、つられて私の肩が震える。

236 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 02:03:31.15 ID:G4WdUiso
「いやいや、そんなはずありませんねー?何故なら知っていてはいけない事のはずですから……とすると、
 おや、もしかして、知っていたはずのことを忘れてしまっている≠ニか?」

「テメェ!!」

上条さんが激昂する。当然だ、上条さんはインデックスちゃんを悲しませないようにずっと『上条当麻』を演じてきた。
知っているのはあのお医者さんと私だけ―――他の人にはバレないように心に誓っている上条さんにとって、
バレそうだということは十分頭にくる理由になる。

「まさか図星とは……これはこれは、楽しみな研究材料をまたひとつ見つけてしまいましたねぇ!!
そうかそうかそうですか!そういう報告は受けていなかったんですが―――あ、もしかして隠してました?何のために?
そちらの魔術師とそこの小娘には教えてあったんですかねー?あ、そっちの娘には今知られちゃいましたけどねぇ!!」

ここから見てもわかるほど、上条さんは怒っていた。
噛みしめた口からは血が滴っているし、握りしめた拳は白くなっている。
それは自らが定めたルールをこんな形で破られた自分への怒りか、破ったテッラへの怒りか。
そんな上条さんを見て、テッラは静かに口を開く。

「いいじゃないですか、別に。どうせここで死ぬんです。憂い事はすっぱり散らしてあげますよ」

ゆっくりと構え、小麦粉のギロチンをセットする。
駄目だ。あんな状態では、上条さんはまともに動けない。
私が、私が動かないと―――

「そういえば、そちらの方は来ないんですかねー?」

来た。
矛先がこちらへ向いた。

238 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 02:12:35.59 ID:G4WdUiso
「先ほどからお仲間がピンチになっていますが、ずっと立ったままですねー?助けるつもりなんて無いとか?」

「……っ!」

違う。そうじゃない。
ずっと動こうと思ってる。
ずっと動こうと思っていた。
けれど。
テッラを目の前にした瞬間、身体がこわばって動けない―――

「……あー、もしかして、あの質問のことを引きずっていて動けないとか?ははっ、まあ確かに、あんな覚悟で戦いに来ていることが
他人にバレてしまえば、動くに動けないでしょうねー」

「ぐ……違う!あれは私の本音なんかじゃない……!どうせ、アンタが操ったりしたんでしょ……!」

「操る?はは、これは面白いことを言うお嬢さんですねー。言いませんでした?私達『神の右席』はその体質から通常の魔術師が使用する
魔術の行使は出来ません。私に出来るのはこの『光の処刑』のみ―――つまり、貴女の心を操ったりなんてしていませんよ」

「―――っ!で、でも!あの時確かに何か……」

「優先する。我が言葉を上位に、己が自己を下位に、ですか?あれはそのまま、私の言葉を優先することにより、嘘をつけなくしただけのものです。
 故に貴女は嘘がつけなかったはずですねー―――例えそれが、自分で蓋をして気づいていなかった本音だったとしても、口から出てきたはずです」

「…………っ!嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ!!そんな筈が無い!そんな筈、絶対に……!」

「まあ認めないというのならばそれでもいいんですけどねー。どうせ貴女も此処で死ぬだけですから」

つい、とテッラが腕を動かす。
白いギロチンはまっすぐ私へ向かってきた。
避けなきゃいけない。かわさなきゃやられる。
解っていたけれど、やっぱり身体が動いてくれなかった。

240 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 02:23:25.03 ID:G4WdUiso
「危ねぇっ!!!」

ギロチンと私の直線状に上条さんが割りこみ、その右手で刃を打ち消す。

「馬鹿野郎!何してんだ!!死にたいのか!?
 俺には佐天さんがテッラに何て言ったのかわかんねぇし、佐天さんがどんな気持ちで戦ってるかなんてわかんねぇ!
 けどよ、今はそれどころじゃねえだろ!?自分を責めるなら後にしろ!今は目の前の敵を見据えろ!
 今自分に出来ることなんてわかりきってんだ―――いい加減に戦おうぜ、佐天!!」

「――――っ」

―――それはとても自分勝手な言葉だった。
     けれど、今はそれで十分。
     私の心の支えには、十分すぎるほどだった。

「―――上条さん、ちょっと下がっててください」

私は上条さんの肩をつかみ、ぐいと後ろに引くと、驚くほど簡単にその身体は揺らいだ。

「ほら……私がちょっと掴んだだけでぐらぐらじゃないですか。ちょっと休んでてください」

そしてそのまま私が前へ出る。

「なっ……休むなんて、できるわけねえだろ!」

「そんなフラフラな身体で何言ってるんですか―――確かに私じゃアイツに勝てないかもしれません。けど、
 それでも時間を稼ぐくらいは出来ます。そのうちに上条さんはアイツの弱点を見つけておいてください」

大気から熱を吸収する。
大丈夫、私はまだ動ける。

「それに―――私は、一人の方が戦いやすいですから」

「……わかった。けど、危ないと思ったらすぐに飛びこむからな」

身体へ熱を配給し、変換したエネルギーで身体そのものを強化する。

「はい―――それじゃあ、行ってきます」

―――大丈夫、私は行ける。
    頑なに守ってきたルールを破られて心がズタズタな上条さんだって、私のことを守ってくれたんだ。
    だから、私も上条さんのことを守らないと―――

246 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 02:49:18.00 ID:G4WdUiso
「―――待たせちゃったね」

「いえいえ、どうせ死ぬんですから悔いのないようにどうぞ。それでは行きますか―――ね」

テッラの腕が振るわれ、3本のギロチンがテッラを中心に回転し周囲をなぎ払う。
しかし先刻避けたように、ギロチンの攻撃は既に視えている。いかに方向性を変更しようと、その速度が
変化しない限り私にとっては無いに等しい。
そしてその技の特性上、テッラの傍は安全地帯であり、そして敵自身も無防備となっている場所だ。
だから避けてすぐにそこへ走り着き、そのまま一撃を喰らわせようとする。しかし――――

「優先する。―――人肌を上位に、拳を下位に」

「チッ……!」

やはり防がれてしまう。
しかし攻撃の手は緩めない。五和さんが言った、弱点というもの。それに気付いたシチュエーション。
それを自分で行えば、何かが見えてくるのかもしれないと思い、近くにあった石を蹴りあげる。
テッラはつまらなさそうに手を振るうと、それに連動してギロチンの一つが私の石を吹き飛ばす。
来ることは解っていた。だから、強化した身体でギロチンを掴み取ってやった。
流石のテッラもこれは予想していなかったらしく、少しだけ表情を変える。

「確かにギロチン自体の切れ味はありませんが……岩石を破壊する速度を受け止めるとは、なかなかどうしてやりますねー」

「ハッ、こんなもの余裕に決まってんじゃん……!」

軽口を返すが実際はかなりギリギリだった。もしすんでで優先を使われていたら私の身体はまっぷたついなっていたのだから。
そして、来ることが分かっていて避けなかったことには理由がある。それは―――

「―――たしかにこうして触っていると解る。これはただの小麦粉だ。小麦粉を超圧縮したようなもの。

 ―――なら、燃えないはずが無いよね?」

そう、小麦粉ならば燃えないはずはない。魔術的なコーティングがしてあるなら別だが、触っているかぎりそんな感じはしない。
もしそうだとしても。私の第四波動はそれも含めて焼き尽くすけれど。

247 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 03:00:38.32 ID:G4WdUiso
掴んだ片手から第四波動を撃ちだす。
白いギロチンは炎を受けた個所から焦げ、ぼろりと崩れる。焦げた部分はもはや小麦粉でなくただの炭だ。
操ることは出来ないらしい。

「……これは、意外とやりますねー。確かにこれは普通の小麦粉ですが、一応コーティングはしてあったんですが」

「あ、コーティングしてあったんだ」

「やれやれ、いちいち本気になる必要もないと思っていましたが、ここは少しだけ本気になってみましょうかねー」

「ハッ、そういうのは最初から出しとけって言うの……!」

強化した拳を振り上げる。先刻は届かなかったし、おそらく今回もまた優先でガードされるだろう。
けれど、石を蹴りあげギロチンに襲われたあの瞬間、確かに違和感があった。
あと一度。もう一度繰り返せば何かが掴めるかもしれない―――しかし、

「優先する―――空気を上位に、拳を下位に」

がちり、と。
拳の動きが停止した。

「な……!」

「これで貴女は動けませんねー」

拳をいくら押しても引いても動く気配はない。空気を上位にされたためか、完全に『空気に捕らわれている』。
慌てている私を横目に、テッラは軽く腕をふるった。
白いギロチンは横一文字に私を切りつけようとしてくる。どうやら両腕ともの拳が下位に設定されたらしく、全く身動きが取れず。
私はされるがままに、ギロチンの攻撃を受けてしまう―――はずだった。

248 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 03:14:35.33 ID:G4WdUiso
「……悪い、佐天さん。危なかったから中断させてもらったぜ」

上条さんの右腕がギロチンを打ち消し、それはただの小麦粉にかえりテッラの周囲を舞う。
そのまま私にも触れて、優先の術を解いてくれた。
そこへ間髪いれず上からギロチンが振り下ろされるが、私は左に、上条さんは右にこれを避ける。
破片が飛び交う中、上条さんは大声で、

「そんでさ―――『光の処刑』の弱点も掴んだ!!コレの弱点は『優先は一つにつき1つしか設定できない』!
 つまり、俺達二人で攻撃すりゃ勝てるってわけだ!そうだろ、テッラ!!」

と、敵の術式を私に暴き敵自身へと投げた。
それを聞き、テッラは爽やかに笑いギロチンを構えた。その笑みは、どこかすがすがしい。

「―――何分コイツは調整が足りてないですからねー。正解です、その通りですよ。現時点では
 複数の対象に一度に使うことはできません」

ですが、とテッラは続ける。

「それがなんだと言うんですかねー?そちらのお嬢さんはギロチンはかわせますが優先は破れません。
 貴方はギロチンを打ち消し優先も破れますが、その便利な右手は一つしかありません。三方向から攻められれば、それで終わりですねー。

――――それに。こういう手もありますし。優先する―――床を下位に、小麦粉を上位に」

そう言ってギロチンを床に突きさすと、床に散らばっている瓦礫が砲弾のように舞い上がる。
それをかわしながら、上条さんはテッラへ向かって叫ぶ。

「テッラ!テメェがそこまでしてしたいことって何だ!俺達やアビニョンの人達まで巻き込んでやりたいことが、
 テメェにはあるってのかよ!?」

「騒ぎの全てを私のせいみたいに言わないでほしいんですがねー。半分くらいは貴方達のせいだと思いますが?
――――十字教全ての目標、『神聖の国』。これが、私の目指すべき救いです」

263 :◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 13:24:11.22 ID:G4WdUiso
上条「『神聖の国』……?」

テッラ「おや、ご存じ無い?まあ、狭い島国の異教で囲まれた世界では当然かもしれませんねー」

佐天「……神聖の国。確か、最後の審判の後に神サマが築いてくれるとかいう国、だっけ」

テッラ「ほう、そちらの娘さんは知っていましたか。これはこれは、どうやら貴方がただの物知らずなだけのようですねー」

上条「(ぐ……確かに馬鹿だから言い返せねえが……)なんで佐天さんはそんなこと知ってんだ?」

佐天「……さぁ。なんか知ってました。それより、その神聖の国がどうしたっていうんですか」

テッラ「ああ、詳しいことまでは知りませんか。ま、しょうがありませんね。
    その国にはこの世界で研鑽を積んだ者しか入ることは許されず、そしてその場は永遠の救いが得られるという場所。
    まことに素晴らしいと思いませんかねー。私はそこを目指し、そして同じように目指している方達の
    お手伝いをさせていただいているんですねー」

テッラ「ですがふと思いました。ローマ正教だけでも無数に派閥がある中、神が『敬虔なローマ正教徒のみ入国を許す』とした場合、
     その派閥もそのまま受け継がれてしまいます。そして派閥同士がまた争いを始める―――こうなってしまえば、
     せっかく神が築いてくださった『神聖の国』からも、救いが消え去ってしまうのではないのか、と」

上条「知るかんなもん!」がっ

テッラ「貴方から聞いておいてなんですかそれは」ばっ

264 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 13:34:35.42 ID:G4WdUiso
テッラ「救いが欲しいのですよ。そして救いを与えたい。神のプランが完璧であっても、我々人間が神の期待以下なら
    全てはご破算だ!だから私は知りたいのですよ!!現状の人間は『神聖の国』で争いをしてしまわないのか。
    そしてもししてしまうのならば、審判の日までに皆をどのような方向に導き直せば良いのかをねぇ!!
    そのための『神の右席』なんですよ!!!」←原文ママ

上条「……救い、だと。テメェの言う救いってのは、その程度なのかよ」

テッラ「何……?」

上条「別にローマ正教が悪いって言うわけじゃねえ。オルソラやアニェーゼを育てた宗教の教えがそこまでズレてる
    だとか、そんなことは思わねえ。だがテメェは全く別問題だ。救いって言葉の意味を、全然わかってねえんだよ!!」

上条「テメェらの言う神様だって、こんな争いを望んでるはずがねえだろうが!!こんなことのために教えを広めたわけじゃ
   無いだろうが!!ふざけやがって―――テメェはただ単に自分で救いの定義を決めて自己満足してるだけだろうが!!」

上条「いいぜ……テメェがそんなものを救いって勘違いしてるなら」

上条「まずはそのふざけた幻想を、ここでぶち壊してやる!!」

266 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 13:39:19.61 ID:G4WdUiso
テッラ「ははっ、貴方に何が出来るというのですか。このギロチンと『光の処刑』の前に平伏しなさい―――!!」

上条「(大丈夫だ、アイツ自身は強くねえ―――ヴェントのように自ら攻撃をせずにギロチンや優先で身を守っているのが
    その証拠だ。ああ、そういやそんな奴前に戦ったことがあったな。てことは、一撃さえ入れりゃ大ダメージだろ……!)」

テッラ「優先する―――人体を下位に、小麦粉を上位に!!」

上条「効かねえよそんなもん!―――うるァッ!!」バキッ

上条「(決まった……!これで―――)」

テッラ「……ッの異教のサルがあああああああああああああああああああああああ!!!」

上条「くっ……!(決定打にはならなかったか……!)」

テッラ「優先する!人体を下位に!小麦粉を上位に―――」


佐天「―――私を忘れないで欲しいなぁ、本当さ!!」ガンッ

テッラ「がッ―――!」

267 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 13:45:22.32 ID:G4WdUiso
テッラ「ぐ……づ、ぁ……き、さま……まだ、動けたか……」フラフラ

佐天「確かに心は折られたかもしれない―――けど、まだ負けてなかったからね」

佐天「私はギロチンの攻撃自体は避けられるけど、ギロチンの破壊までは出来ない―――出来て少し焦がすだけ。
    かといって、後ろから仕掛けても気配で気付かれて防御される。
    だから待ってた―――正気を無くして私を忘れて、上条さんに向かっていくその瞬間を」

テッラ「こ、の……!」グラングラン

佐天「さて―――後は、上条さんの右手で止めですよ」

上条「ああ―――終わりだテッラ。意識の底で反省してこい!!!」ソゲブッ

テッラ「―――……、……」ばたん


佐天「……―――っはぁー、終わった」とすん

上条「いや、まだ終わってねえ。あとはこのC文書を……よし、これで終わりだ。
    それにしてもひどいじゃねえか佐天さん、俺を囮にしたみたいな言い方だったぞ」

佐天「いやぁ、でもあれくらいしないと私の攻撃は届きませんから」

268 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 13:54:22.23 ID:G4WdUiso
佐天「……記憶喪失のこと、ばれちゃいましたね」

上条「―――ああ。けど、今はそれを考えててもしょうがない。まず土御門に連絡を……っと、そういや携帯落としてたか。
   ……げ、なんだこりゃ。壊れてんじゃねえのか。悪い、佐天さん。土御門に連絡とってくれないか」

佐天「あ、はい……ありゃ、電源切れてた。……よし、これでおっけー……初春から電話来てる。なんだったんだろ」ピッピッ

ガラッ……

上条涙子「っ!」ばっ

テッラ「……はは、なるほど確かに、『幻想殺し』とは相性が悪い―――なんでもかんでも無効化してくれて、
    まるで自分達のやってきていることを全て否定されている気分になりますねー」

佐天「く……もう意識が……!」

上条「いや、大丈夫だ佐天さん―――どうやら動けないみたいだ」

テッラ「私は神職者ですからねー……戦い慣れてなんて、いないんですよ。それよりも……尋ねないんですか」

269 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 13:58:32.01 ID:G4WdUiso
上条「……この右手のこと、か」

テッラ「ええ」

上条「何か知ってるのか」

テッラ「……くっくっく。どうやら本当に忘れているようですねー。よく考えてみることです、何故その力が『右手』に宿っているのかを。
    あらゆる力を無効化してしまうという能力にも、意味はあるんですが―――まあ、いいでしょう」

テッラ「―――『幻想殺し』。簡単なことです。その正体は―――――」


―――左方のテッラが言い終わる直前。
     私のすぐ隣を、光の柱が貫いた。

270 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 14:05:32.28 ID:G4WdUiso
戦いの直後で弛緩していた上条と佐天の身体は、爆撃の煽りを受けて五和や駆動鎧、
周囲の残骸を巻き込んで吹き飛ばされる。

「っぐあああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」

床に叩きつけられた上条は絶叫する。その痛みとは別に、腕のあたりからひりひりとした痛みが伝わってくる。
見ると、腕は赤くはれていた。火傷の症状に似ているな、とぼやけた頭で考えたあと、先刻テッラが居た場所へ視線をやる。

そこは石材などがマグマのように融解し、白に近い赤色の光を放っていた。

「テッラ……?」

空には漆黒のブレードを携えた爆撃機が旋回している。
そして十分な助走をつけ、その爆撃機は―――

「テッラァァああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

再度、同じ箇所を『狙撃』した。

271 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 14:12:44.70 ID:G4WdUiso
その『狙撃』とも言える爆撃は同じように爆風を発し、上条の身体を吹き飛ばす。
何度かおかしなところへ身体をうちつけ、上条の意識はそこで途切れた。

爆撃を受けた部分には何もない。ただ溶岩の海が広がるばかり。

そしてその付近、常人ならば火傷で即死しているような距離に、佐天涙子は転がっていた。
どうやら爆撃によって吹き飛ばされた身体が、壁にあたり跳ね返ってきた結果らしかった。
彼女自身に意識は無かったが、彼女の熱への耐性と、生命維持のために能力が自動で発動しているのか、火傷はしていなかった。
しかし吹き飛ばされたことにより、全身をあたりに撃ちつけたため所々から出血している。

人も瓦礫も同等に扱われる高熱の地獄の中。
一つの人影が揺らめいていた。

「チッ……なンだか面倒臭ェことになってンなァ」


272 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/06/19(土) 14:25:01.25 ID:dEK2ShgP
うぉぉ神展開ですわ

274 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 14:30:54.06 ID:G4WdUiso
「大陸切断用のブレードを人に向かって撃ってンじゃねェよ。死体なンざ確認できねェだろォが。
 まァ爆撃の前後で暴動が止んだあたり、最低限の目標は達成できたってことなンだろォけどよ」

「一応この辺りを探してみるが、制限時間もあるし10分経って何も無けりゃ俺ァ帰るぞ。その後は髪の毛だろうが
 なんだろォが適当に回収すりゃいいだろォが。あ?駆動鎧の回収だァ?ンなもんフランスの後援部隊に
 やらせときゃいいことだろォ」

音も無く灼熱の中を歩きながら、ぼやくように無線に向かって報告をする。
辺りを軽く見回すが、やはり何も無い。あるのは赤い大地だけだ。

(ン……なンだありゃ、人か?爆撃ポイントのあンな近くにいりゃ全身火傷してンだろォな)

チッ、と舌打ちをする。
もしこの狙撃のような爆撃が目標に向かって正確に放たれていたのなら、目標はすでに蒸発してしまっている。
駆動鎧も着込んでいない。つまりあれは関係の無い一般人の可能性がある。
カタギの命は狙わない。そう決めていたからこその悪態だった。

(……生きちゃいねェだろォが、このまま放置なンてのも後味悪ィし。ハッ、だからどうなるってワケでも無いがな)

自嘲しながら倒れている人間に近づいていく。
死んでいても、せめてこれ以上死体がひどくならないように、遠くへ寝かせてやろうと思った。

―――そして、一方通行はその人間を見て声が詰まった。
     何故なら、その人物は自分がよく知った人間だったから。

「コ、イツ……!!なンで、こンな場所にいやがる……!!」

彼の目の前に倒れているのは、自分が暗部へ入ってまで守ろうとした少女だった。
暗部でも無いはずの人間が、何故こんな場所にいるのか。
何故こんなに傷だらけで倒れているのか。
湧き出る疑問は数あれど、今すべきは生死の確認だと思考を切り替える。

(……ところどころ怪我してるみてェだが命に別状はねェみたいだな。コイツの熱耐性と熱吸収が働いたからか?)

生体電流を読み取り安否を確認すると、ほっと胸をなでおろす。
そして、安堵の次に沸いた感情は、疑問ではなく憎悪だった。

(……ちくしょうが……!暗部の奴ら、手ェ出してンじゃねェかくそったれが!!!)

「―――俺だ。ここには何も無い。今すぐ戻るから回収しろ」

そして彼は少女を抱きかかえると、空へ跳んだ。

275 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 14:44:29.57 ID:G4WdUiso
「お疲れ様でぐがぁッ!?」

爆撃機倉庫へ迎えいれられた瞬間、一方通行は出迎えた乗員へと蹴りを入れる。
ベクトル操作を使用しての蹴りの痛みに倒れた乗員を踏みつけ、見下しながら怒号を浴びせる。

「テメェら!!コイツには手ェ出さなかったンじゃねェのか!!!!」

学園都市最強にいきなり踏み倒された乗員は恐怖のあまり何が起こったか理解できず、だから
彼が抱えている少女のことも頭の中に入ってこなかった。
疑問と恐怖に顔を歪める乗員を見て、一方通行は少しは冷静になったのか、その足をどける。

「……いや、悪かった。オイ、無線員、上に繋げ」

先のやりとりを見ていた無線員は何も効かずすぐに上層部へと連絡をつなぐ。
一方通行の耳につけた無線機から、何時もの電話の声が聞こえてくる。

『何かありましたか?』

「テメェ!!コイツは巻き込まねェって言っただろォが!!ブチ殺すぞ!!」

『コイツ?貴方が何を言っているのか理解できませんが』

「とぼけンな!テメェらが送りこンだンだろ!!じゃねェとコイツが此処にいる理由がわかんねェンだよ!!」

『落ち着いて。本当に理解できないんです。私達が行っているのは爆撃機と貴方を用いた制圧のみです。
 それ以外の指令は受けていませんし出していません。まず貴方が言っている『コイツ』とは誰ですか」

「……テメェらが『取り引き』の際に出したガキだ」

『……ああ、佐天涙子のことですか。はて、それに関しては本当にわかりません―――ふむ、出国記録も
ありませんね……あ、いえ、今来た映像によると、23学区のターミナルで確認されています』

「……なンだと?」

『というか、そもそもそんなことするはずないでしょうに。私達だって貴方を敵に回すことは望んでいません。
その首輪≠ヘ有効ですが、しかしだからといってそんなもので安心する私達ではありませんよ。
損得を考えて約束を守るくらいはします』

「……そォかよ」

276 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 14:52:26.11 ID:G4WdUiso
『納得していただけましたか』

「一応、な。コイツはこのまま連れて帰るぞ」

『それは構いませんが、目は覚まさせないようにしてくださいね。では』

「……オイ、誰か床に敷くもンもってきてくれ」

緊張していた乗務員達は、その一言ではっと我にかえりどこからか寝袋をいくつか持ってきた。
おそらくもしもの場合の備え付けであろう。彼らはそれを何重にもして床に敷く。
そこへ一方通行はゆっくりと佐天涙子を寝かせつけた。

「悪ィ、救急箱がありゃそれも頼む。大した怪我はしてねェみてェだが」

それなら私が、と衛生兵が応急処置を買って出る。
一方通行としては暗部の人間が佐天に触れることは気に入らなかったが、自分がするよりも
いい処置が出来るだろうと判断して任せることにした。


そして爆撃機はロンドンを経由して、学園都市へ帰っていく。
学園都市へ着くと、一方通行は佐天をいつもの病院へ搬送するよう命令し、いつもの医者に電話を入れた。
そして、結局彼は久しぶりに会った佐天とは言葉をかわさず、闇の中へ戻って行った。


―――――テッラvs佐天編  終



佐天「今までありがとうございました―――左天お兄ちゃん」 2



posted by JOY at 18:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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