2010年08月26日

佐天「今までありがとうございました―――左天お兄ちゃん」2

296 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 17:13:26.50 ID:G4WdUiso
――――聖ピエトロ大聖堂

アックア「テッラ。聞いたぞ、C文書を失ったようだな」

テッラ「ああ……アックアですか。ええ、『幻想殺し』とはなかなか厄介なもののようで」

アックア「……その割には、随分と機嫌がよさそうに見えるが」

テッラ「ええ、まあ。ロシア成教と組むことになりましたからねー。これで日本への進行が容易になります」

アックア「お前ならば、ローマ正教が、異教と手を組むことに賛成しないと思っていたのだがな」

テッラ「利用するだけですからねー。あちらもそう考えているはずです。この戦争において、どうすれば
    利益を得られるか、あちらも考えているようです」

アックア「……そうか。ところで、このリストだが」

テッラ「はい?何か問題ありました?」

アックア「いや、この佐天涙子という少女―――取り立てて騒ぐほどの危険分子なのであるか?」


299 :◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 17:25:33.01 ID:G4WdUiso
テッラ「現時点ではどうということはないでしょう。ただ、あの身体能力と反射神経、判断力、そして小麦粉で
    作ったギロチンを焦がすなんて暴挙をされてしまった以上、放っておくと危ないかもしれませんねー」

アックア「焦がされた?魔術的な防御が張ってある貴様の小麦粉を、であるか」

テッラ「ええ。優先で色々お話を聞いたところによると、随分特殊な事情で手に入れた能力のようで。かくかくしかじか」

アックア「まるまるうまうま。もうひとつの人格……そういえばヴェントの報告書にそういうことが書かれていたか」

テッラ「しかしヴェントも不憫なんですねー。この娘の戦う理由も聞いたんですが、自分を救いたいそうです。
     ヴェントの理由も理由でしたが、ここまで自分本位な理由に『神の右席』が遊ばれたとなると同情せざるえませんねー」

アックア「……自らを救う。それは本当であるか」

テッラ「私の優先魔術で聞いたのだから間違いないですねー。本人は随分と否定したがっていましたが」

300 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 17:34:21.86 ID:G4WdUiso
アックア「そうか……あとひとつ聞きたいことがあるが、大丈夫か」

テッラ「大丈夫ですが手早く終わらせてくださいねー。私もフィアンマとこれからの展開に関して
    話し合いたいですし、いろいろ考えたいことがありますから」

アックア「何、単純な質問だ。―――貴様にしか使えない『光の処刑』。その調整のために、ローマ近郊の
      子供や観光客を使っていたという報告があるが、これは本当か」

テッラ「ええそうですが。……あの、取り立てて騒ぐようなことなんですか、それ」

アックア「……確か貴様は全人類を『神聖の国』へ導き、永遠の救いを享受するということが願いだと聞いたが」

テッラ「ええ、ですから、そもそも異教徒は人間では無いでしょう?私は対象がローマ正教徒でないことを入念に
    チェックしてから使っています。ああ、もしかしてスペイン経由で送られてくる『処刑できなかった凶悪犯罪者』
    を使用するという話を気にしているんですか?彼らは確かに罪を犯しましたが、私が救うべきローマ正教徒
    ですからねー。対象にしたりはしませんよ」

アックア「……そうか」

テッラ「さて、もういいですか?それでは私はこれにて」

アックア「ああ――――最後にひとつ、やることができてしまったがな」

ゴバッ

302 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 17:39:52.75 ID:G4WdUiso
テッラ「……お、ぁ?」

アックア「―――超高速の爆撃から身を防いだという『光の処刑』も、さすがに背後からの不意打ちには対応できなかったようであるな」

テッラ「……――――ふ、は」ニィ

アックア「(……死しても『最後の審判』で選別されてばそれで救われる―――ただ殺しただけでは殺しきれぬ、か。
      これはこれで大した男であるが―――だが、ぬるい)」

アックア「言っておくが、貴様が『神聖の国』へ行くことは出来ん。神は全てを知っておられる。
      ―――貴様がたどりつくのはただの地獄だ。忘れぬよう胸に刻んで死ね」

テッラ「―――――――、ぬ?」




アックア「……死んだか」

教皇「ここは聖ピエトロ大聖堂だぞ。そんなに簡単に柱をもぎ取られてしまうと困るのだがな」

303 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 17:50:38.08 ID:G4WdUiso
アックア「……すまない。学術的にも歴史的にも重要な建造物に傷をつけてしまった」

教皇「そこじゃないんだが―――しかし、柱で一閃、か。胴体から下が見当たらないが」

アックア「掃除をする手間も考えて一息で潰しておくべきだった。重ねて謝罪する」

教皇「……やはり、お前はどこかズレている。いや、別にいいんだが―――しかしローマ正教最大の要塞を、
   こんな風に破壊されるとは、防御機能面に不安を感じてしまうな」

アックア「――――ふむ。それは全てにおいて当てはまる問題である。我々のような『神の右席』でさえも、
      このように暴走してしまえば破壊をまきちらすのみである。このテッラのようにな」

アックア「故に貴方のような。外部から『神の右席』を監視する存在が必要である。
      『神の右席』となり、貴方自身で信徒を直接救いたいという想いには感服するばかりであるが、私は貴方には 
      我々『神の右席』を導いてもらう位置にいてもらうのが一番だと思うのであるが―――」

教皇「……そうか。『神の右席』の話を聞いた時は、これほど手っ取り早く信徒を救える方法があるのかと喜んだものだが、
    神はそう簡単には目的を達成させてはくれぬらしい。―――それで、どうするつもりだ、アックア」

アックア「―――ヴェントが倒れ、テッラの粛清が終わった今―――私が出る他あるまい」

教皇「―――『神の右席』でありながら、聖人であるお前が出るか。なら、行くのだな?日本へ」

アックア「うむ。今回の騒動で思い知った。やはり戦場へたつのは、力を持った人間のみで十分である」



アックア「―――『幻想殺し』上条当麻。そして佐天涙子という少女。この二人を粛清して来る」

304 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 17:53:14.97 ID:G4WdUiso
―――学園都市 

御坂「――――……」

ノイズの走る携帯からの音声は、たった今途切れた。
最後に聞こえたのはアイツが携帯が壊れているという声と、はっきりと佐天さんの名前を呼んだ声。
でも―――確かにそこも大事だけど。
それ以上に。
もっと大切なことを、彼は言っていた。

―――アイツが、記憶喪失?

305 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 17:56:13.34 ID:G4WdUiso
―――学園都市 病院

佐天「……ん」

佐天「……あれ?ここ、いつもの病院……っと、もうすぐ6時、ね。てことは日をまたいじゃったのか」

佐天「んー……確か、いきなりすっごい勢いで吹き飛ばされて、そっから意識ないなぁ……
    意識失ったままここまで運ばれてきたのかな?」

佐天「ま、いっか。少し疲れたし―――二度寝しよっかな……ぁ」

佐天「……え……あれ、なんだろ……」



佐天「うぅ……なんか、身体が熱い……この感じ久しぶりだなぁ……んっ」

306 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/19(土) 17:58:26.95 ID:G4WdUiso
―――学園都市 病院  10月9日 06:43

佐天「―――ふぅ」


こうして佐天涙子の始めての海外旅行は終わった。
しかしこの時、彼女はまだ気づいていなかった。
今日という日が、人生最大の転機となることを―――

―――14巻終わり。


401 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/27(日) 14:34:19.08 ID:hW9qqYAo
―――学園都市 病院 07:11

佐天「うーん、結局目がさえちゃった」

ミサカ「どうもおはようございます、とミサカはノックも無しにドアを……おや、本当にもうお目覚めでしたか」

佐天「ああうん、ちょっと起きちゃって」

ミサカ「…………」

佐天「どうしたの?」

ミサカ「いえ、こうして朝起こしにくるショートカットで無表情というと、どこかのメイドと被る気がして、
    とミサカは解りにくいネタを披露します」

佐天「ふぅん……?」

ミサカ「さて、起きているのなら話は早いですね。先生が呼んでますのでお部屋へどうぞ、とミサカは
    あの蛙医者を先生と呼ぶことに若干の違和感を感じてみました」

佐天「先生が?まさか私の体に何か……まあいっか、んじゃちょっと行ってくるね」

ミサカ「ええ、どうぞごゆっくり、とミサカは軽く手を振り見送ります」ベッドメイクベッドメイク

402 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/27(日) 14:34:49.72 ID:hW9qqYAo
佐天「失礼しまーす」ガチャ

医者「やあおはよう。具合はどうかな」

佐天「いえ、特にどこも―――そうだ、なんで私日本にいるんですか?」

医者「詳しくは言えないけれど運ばれて来たから相応の治療をしただけだけどね」

佐天「……先生って実は裏の人間?」

医者「僕はただの医者だけどね?医者に裏も表もないね」

佐天「……まあいいですけど。先生には何度もお世話になってますし。それで、妹さんから呼んでるって
   聞いたんで来たんですけど、何かありましたか?」

医者「何、大したことじゃないけどね?まず一つ目だ」

医者「僕は医者で君の病気や怪我を治すことが仕事だからそう強くは言えないんだが――――
   ――――あまり無茶はしないようにね?死んでしまったら、流石の僕でも治せない」

佐天「……善処します」

佐天「(無茶するな、かぁ……やっぱりこの先生色々知ってるみたいだなぁ)」

医者「二つ目なんだけどね?木山教授、かな。この人からの言伝でね。君に電話したけれど繋がらなかったから
   もし会ったらこっちに来るように言っておいてくれってね」

佐天「木山先生が?ふむ……」

医者「ま、これくらいだね。それじゃお大事に。元々そんなに怪我してなかったからもう退院手続きは終わってるからね?」

佐天「はいっ、ありがとうございましたー」

403 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/27(日) 14:35:21.20 ID:hW9qqYAo
――――研究所

佐天「どうもー佐天涙子でーす」

木山「ああ来たか。入ってくれ」

佐天「失礼しまーす」





佐天「……あれ?今日はミサカちゃん居ないんですか?」

木山「居ないというより調整中、といったところだな」

佐天「ああ、なるほど。それで、何かありました?」

木山「以前二週間待ってくれ、と言ったのは覚えているかい?」

佐天「ええ、それは」

木山「それが予定より縮まってね。昨日完成したんだよ」コト

佐天「……耳かけ式のイヤホン?あの、これが何か?」

木山「なんだ、わからないのかい?君が欲しがってた幻想御手だよ」

404 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/27(日) 14:36:16.14 ID:hW9qqYAo
佐天「えっ……でもあれって、共感覚を使ったネットワークを使うから無理なんじゃ……」

木山「言っただろう、理論はある、と。あの幻想御手事件以来、どうすればああいった邪魔が入らないように能力行使できるか
   考えてみたんだ。詳しいことを省いて大雑把に説明するとだな、AIM拡散力場というのは能力者が無自覚に出しているものだろう?
   それを拾い集め、演算の糧にする―――――それがこの新しい幻想御手の機能だよ。形状は脳付近に設置でき、
   不自然でないものを考えた結果こうなった。少々時代遅れな感はあるがね」

佐天「……つまりこれを使えば幻想御手と同じような効果が得られると?」

木山「理論的には、だけどね。とりあえずこの学園内ならどこでも同程度の効果は発揮してくれるだろうが、学園外となると
   効果に自信は無い。それと、今回の幻想御手はバッテリー式だ。使用可能時間は30分。切れたらこれで充電しなさい。
   替えのバッテリーは流石に容易出来なかったからね」

佐天「けど、二週間って言ってたのに1週間くらいで出来るなんて」

木山「ツテがアテになったんでね。全く、患者に必要なものはなんでも用意する、ね。随分とまあ……」ブツブツ

佐天「……これ、本当に使ってもいいんですか?」

木山「ん?ああいいよ、君のために作ったものだからね。副作用は、まあおそらく無いだろう。だがもしかしたら何かあるかもしれないが、
   それでも君はそれを持っていくかい?」

佐天「―――副作用を怖がってちゃ強くなんてなれませんから」

木山「そうか……なら持って行きなさい」

佐天「はい、ありがとうございますっ!」

406 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/27(日) 14:47:11.46 ID:hW9qqYAo
――――――――。 およそ12:00頃



佐天「よし―――これで、とりあえず今出来る全部、か」

佐天「けど、演算能力が上がる、かー。あの時はただえいやって感じで風を起こせたけど、
   今回はどんな感じなんだろ。ベクトル操作だし……やっぱりまずは演算式を組み立てないとダメなのかな」

佐天「しかしAIM拡散力場ってまだまだ研究段階なんじゃ……それをこんな形で物にするって、
   木山先生って本当は凄い人なんじゃないのかなぁ。幻想御手作った時点で凄いとは思うけど」

佐天「そういや今頃皆学校かー。んー、制服は昨日のアレでぼろぼろになっちゃったし……
    予備はあるけど新しいの買っとかないとなー。奨学金増えたからなんてことないけど」

佐天「そういえば今の私の能力ってレベルどれくらいなんだろ。一応体の中の熱の流れを操作するくらい
    できるみたいだけど……う、でもちゃんと式組めてないから頭痛がするか」

佐天「まぁ、腐ってもベクトル操作だからなぁ……そりゃ難しいに決まってるか」

佐天「―――ちょっと、この幻想御手、試してみよっかな」

佐天「……そりゃ」カチッ

407 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/27(日) 14:54:10.33 ID:hW9qqYAo
佐天「――――っ!?」

佐天「……!な、なるほど……唐突に理解した……これが、この能力の使い方……!!」

佐天「演算能力を上げる、とか、そこじゃないんだ……この幻想御手は、」

佐天「これは、他人のAIM拡散力場から自分だけの現実≠知り演算式を読み取り、自身の自分だけの現実≠ノ
    照らし合わせるモノ―――つまり、演算式の最適化……!」

佐天「確かに演算補助の機能の方が強いけど……あ、もしかして、このこっちの機能って木山先生も予想してなかったものなのかも」

佐天「……よし、これなら―――これがあれば、私は強くなれる……!」カチッ

佐天「―――ふぅっ。でもこれなんだか一気に疲れるなぁ……っとと」フラッ

佐天「ん……まあ、この程度ならなんとでもなるか……」

408 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/27(日) 15:02:14.25 ID:hW9qqYAo
その頃の美琴ちゃん。

御坂「……はぁー」

白井「お姉さまどうしましたの」

御坂「んー……別になんでもないわよ」

白井「ため息ついて昼食に手をつけてらっしゃらないのに、何でも無いはずないと思いますの」

御坂「……ねえ黒子。もしよ。もしもよ?私が黒子に秘密で何か危ないことしてるとしたらどうする?」

白井「……えー今更そんな」

御坂「だよねー……黒子、誰にも言わないって約束してくれる?」

白井「お姉さまとの約束ならば、どのような拷問を受けても口を割ったりはしませんわ」

御坂「ん、まあそういうところは信頼してるわ。あのね、佐天さんのことなんだけど――――」

409 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/27(日) 15:13:07.12 ID:hW9qqYAo
御坂「――――ということなんだけど、どう思う?」

白井「……昨夜あの類人猿から電話がかかってきたと思ったら、類人猿と共に佐天さんがいたと?
    それは、その、佐天さんと類人猿が付き合ってるとかそういうことではありませんの?」

御坂「なっ、そ、そんなはずないじゃない!佐天さんはあんなに可愛いのよ!?あ、あんなヤツじゃ釣り合い取れないわ!
    それにっ、ちょっと前まで小学生だった子を彼女にするなんて犯罪じゃない!!」

白井「……お姉さま、一応言っておきますけれど、お姉さまもせいぜい一年くらいしか歳の差はありませんのよ?」

御坂「べっ、別に、というかなんでそこで私の歳が出てくるのよ!関係ないじゃない……ってそこじゃなくて!」

白井「わかってますの。佐天さんがまた℃達の知らない所で戦っていた、という話でしょう?」

御坂「うん……そういう話、佐天さんは私達には全然してくれないなー、って。ほら、自分で言うのも何だけど、一応私
    第三位じゃない?話してくれれば少しくらい力になれるんだけどなぁ、って」

白井「それはそうかもしれませんが、しかしお姉さま。お姉さまも、私もそうであるように、佐天さんにも人に言えない理由が
    あるはずですの。佐天さんの方からそれを話してきてくれるまで、私たちは待ち続けるしかありませんの」

御坂「……そっか、な」

白井「お姉さまが佐天さんを心配する気持ちはわかりますけれど、こればっかりはどうしようもありませんのー」

御坂「……そっか。そうだよね。ごめんね黒子、お昼休みにこんな話しちゃって」

白井「別に問題ありませんのよ、お姉さまがこうして黒子に相談して下さるということはそれだけ信用していただいていると
    いう証拠ですから」


410 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/27(日) 15:16:45.98 ID:hW9qqYAo
その頃の上条さん

上条「いててててて!染みる染みる!!」

ミサカ「男の子なのに何を言っているのですか、とミサカは火傷した個所に消毒液を塗ります」

インデックス「とうまー!なんで昨日は帰ってこなかったの!?お腹ぺこぺこで死にそうだったんだよ!!」

上条「う、それについては後できっちり謝る!だから今は静かにしててくれ!」

インデックス「謝るって、それなりの誠意は見せてくれるんだよね?」

上条「お、おおう……任せろ……」

インデックス「じゃあ焼き肉行きたい!」

上条「無理!」

インデックス「とうまー!」

上条「いてえっ!!噛むな!!」

ミサカ「静かにしなさい、とミサカは修道女をひきはがします」

421 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/27(日) 20:37:23.29 ID:hW9qqYAo
その頃の14444。

ミサカ「調整終了しました、とミサカは頭を拭きながらシャワー室から―――ふああああああ」

木山「何ぞ」

ミサカ「い、今さっきまでここに涙子がいましたね?とミサカは確認をとります!」

木山「ああ、幻想御手を取りにきてね」

ミサカ「ちっくしょおおおとミサカは机を蹴りながら悔しがります……幻想御手?」

木山「以前彼女が来た時に話していただろう。それが完成したから取りに来てもらっていたんだよ」

ミサカ「いえ、それはわかりますが……開発に携わった身としては、あれはあの幻想御手とは完全に別物で、
    確かに実際にレベル以上のことは出来るようになりますがけれど―――」

木山「そうだな。『レベルアッパー』というくくりでは同じだがモノが全く違う。しかしそんなことは瑣末事だよ」

ミサカ「……副作用とかはないのですか?とミサカは涙子の身を案じての問いかけをします」

木山「わからん。だがそれも含めて彼女は了承して持って行った。それだけだよ」

ミサカ「釈然としませんが……まあ涙子の意志を尊重しましょう、とミサカは納得します「」

木山「ま、大したことはないだろうさ。あるとすれば――――」

423 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/27(日) 20:50:43.87 ID:hW9qqYAo
そして佐天さん。

佐天「暇だ」

佐天「皆学校行ってるからなー。能力の練習以外やることないなー」

佐天「うーん……まぁ、こういう時間もいいかな。最近なんだかずっと、走ってばっかりだったし。ちょっと休憩」

――――。

佐天「……空が青いなー。もう秋の空、か」

佐天「そういえば空が高くなるって言うけど、あれってなんでなんだろ」

佐天「天高く馬肥ゆる秋、とかねー……検索検索、っと」

佐天「……なるほど、光の屈折や雲のできる位置、か。当たり前っちゃ当たり前な理由だなぁ」

佐天「そういえば今の私ってあの時みたいに日光集めたりできるのかな、っと……うぇ、駄目だ、出来ないや」

佐天「放射状に降り注ぐ熱を操作するだけだから簡単だと思ったんだけど、そういうもんでもないのかな」

佐天「……そういえば、熱視覚化の時、普段太陽熱の線は視てなかったっけ。……ん、」

佐天「……ああ、そういうこと。太陽熱は無意識のうちに視ないようにしてたんだ。そうじゃないとえらいこっちゃになるからね」

佐天「一方通行さんの反射みたいなもんかー……そういえば今頃、一方通行さん何してるのかな」

佐天「電話は……やっぱり繋がらない、か。やれやれだぜー」

424 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/27(日) 21:01:07.19 ID:hW9qqYAo
―――放課後時間

佐天「……結局ぼんやりして過ごしてしまった」

佐天「今何時だろ……あー、こんな時間か」

佐天「ん、そういえば昨日初春から電話かかってきてたんだっけ……何かあったのかな」

plllllllllllpllllllllllllllll

佐天「もしもし初春ー?」

初春『ふぁっ、佐天さんっ、ごめんなさい、今ちょっと迷子を保護してて手が離せなくて、ってて!』

佐天「お、風紀委員のお仕事かーお疲れ様ー。どこにいるの?それくらいなら手伝うよ」

初春『い、いえっ、これは私の仕事ですからっ!』

打ち止め『むむっ、あっちの方から電波が!ってミサカはミサカは受信中!』

初春『とぁーっ!引っ張らないでくださいアホ毛ちゃん!』

佐天「……ごめん初春、もしかしてその迷子ちゃんって私の知り合いかもしれないから場所教えて?」

初春『えっ、そ、そうなんですか?えっと、今は第○学区の○○って通りです!』

佐天「了解、すぐ行くね」ピッ

佐天「あの声は打ち止めちゃん……退院できたんだ、よかったよかった」

426 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/27(日) 21:10:37.81 ID:hW9qqYAo
暗部のみなさんの状況。

麦野「はーまづらぁー」

浜面「無能力者の耳一つで超能力者の眼一つだ……安い買い物だろ?」

―――――。

帝督「このガキ探してくるわ」

心理「頑張ってね」

―――――。

一方「くっそダリィなァオイ」

海原「死ぬかと思いました」

427 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/27(日) 21:20:32.87 ID:hW9qqYAo
―――――。

佐天「っと……この辺りのはずだけど。お、いたいた。なんだぁ、喫茶店にいるじゃん」

佐天「打ち止めちゃんは……ああー、あっちの小物屋か」

佐天「座ってるところをスカート捲りするのは難しいか……しょうがない、普通に声かけよう……ん?」

佐天「……初春が……ナンパされている……だと……?」

佐天「しかも結構かっこいい人に!でもなんかホスト崩れっぽい!こっ、これは一大事すぎる……!」

佐天「よーし、ここはひとつ思いっきりからかってやろう!おーいういh」


がこん、って音がして初春が倒れる。
倒れた初春の頭をさっきまで笑顔で話してた男が踏みつけていた。
それはあまりにも突然の出来事で、何が起こったのか全然理解できなかった。

428 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/27(日) 21:24:44.71 ID:hW9qqYAo
さて、ここまでここから原作15巻読んでない人にはかなり不親切な書き方になってるが許してくれ。
簡単に説明すると、
暗部同士が喧嘩

その中のスクールって組織のリーダーが一方さんを殺そうとする

打ち止め達に代理演算してもらってることを知ってるので、打ち止めを殺そうとする

初春と一緒に行動してる打ち止め発見

けどちょっと目を離した隙に打ち止めどっか行く

しょうがないから初春に「この写真の子どこ行った?」って聞く

初春「こんな子知らない」って嘘つく

帝督「嘘ついてんじゃねーぞガキが」って怒って暴力振るう←いまここ

こんな感じでござい。垣根帝督の目的はインデックスwikiでも見ればいいと思うんだ。
さて、次から地の文かぁ

429 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/27(日) 21:39:51.71 ID:hW9qqYAo
学園都市第二位垣根帝督は初春飾利の頭を踏みつけながら彼女に通告する。

「俺がなんでこの女の子を知らないか≠ナなくこの女の子はどこへ行った?≠チて聞いたと思う?
 ったく、正直に答えてりゃ何もしなかったのによ――――で?このガキはどこに行ったんだ?」

「―――りません」

「あ?」

「知らない、って言ってるでしょう……その歳で耳が遠くなるなんて、ご愁傷様です」

「―――なるほど、よほど愉快な死体になりてぇとみえる。いいぜ、それならこのまま頭を踏み砕いてやるよ」

垣根が足を思いっきり振りあげる。
人の力で頭がい骨を踏みぬけるのかは不明だが、彼の能力で何かをどうすればそれも可能かもしれない。
初春は固く目を瞑る。

―――これで良かった。こんな危ない人間にあの子を渡すことは出来ない。 
     死ぬのは嫌だけど、でも風紀委員としての任務は全う出来たかな。
      出来れば、誰かあの子を保護してあげてください―――


しかし振りあげられた足は初春に届くことは無かった。
代わりに、聞きなれた親友の声が耳に届く。

「大丈夫?初春」

「……へへ、大丈夫ですよ佐天さん」

実は全然大丈夫じゃないけれど、と内心思うけれど。

430 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/27(日) 21:50:50.60 ID:hW9qqYAo
足を振りおろそうとした瞬間、垣根は横へ弾き飛ばされた。
『未元物質』で身を守ったのでダメージは無いが、何事かと思い先刻まで自分の居た場所を見ると、
なんてことない、ただの中学生がそこにいただけだった。

しかし、垣根は少し考え込む。
ただの中学生が未元物質をまとった自分を弾き飛ばせるのかと。
だがその思案も結局どうでもよかったらしく、結論としては、

「まぁ、邪魔する奴は殺せばいいか」

ということだった。

対する佐天涙子は、先刻蹴り飛ばした男をみる。
蹴った感覚では、何かよくわからない感触があった。おそらく能力による何かだろうと推測する。
だがそんなことはどうでもよく、彼女は

「―――私の友達に手を出すなぁぁあああああああああああっ!!!」

強化した身体で垣根へと飛びかかった。

451 :◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/28(月) 22:28:26.43 ID:nB8RuOwo
吠えて一足で垣根へと到達せんとする佐天に対し、垣根は右腕を前へ突き出したのみだった。
だがそれで十分。彼の能力が見えない力として佐天を向かい撃つ。
しかし佐天は熱の歪みを読み取り、不可視の攻撃を直前で身体を回転させることにより回避し、
その力を利用したまま垣根の側頭部へと蹴りを放った。

「―――っ、なんだ……?まるで視えてるみてぇなかわし方だったな」

「……っ!なにこれ……!」

蹴りは確かに側頭部へ直撃するはずだったが、何時の間にか現れた白い翼によって防がれる。
直後、翼が佐天の身体を弾き飛ばし余波で風を起こし、そして、

「――――飛んだ!?」

垣根は六枚のメルヘンな翼を展開し飛翔した。

「……天使気どり?似合ってないわよ!」

「大丈夫だ、自覚はある―――さて、それじゃ一方的な殺戮タイムといこうか。愉快な死体になってくれ」

453 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/28(月) 22:51:51.95 ID:nB8RuOwo
「ハッ―――空を飛べたから、なんだって言うのよ……!」

佐天は耳に手を当て、幻想御手を起動させる。
周囲の能力者のAIM拡散力場を利用し、己の演算式と演算能力を極限まで高める。
制限時間は30分。
一対一の戦いには、十分すぎるほどの時間だった。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

地面を蹴り、高く跳ぶ。
本来ならありえあい高さも、強化した身体でならばどうということのない芸当だ。
垣根はそれに対して驚くこともない。ただ、中空をまっすぐに向かってきた相手に向かって攻撃を放つだけだ。
空を自由に跳べる垣根に対して、佐天は進路を変更することは出来ない。
絶好の的になるだけ――――のはずだった。

「何……?」

垣根はつい驚きの声を漏らす。
突如風が吹き、彼女の身体を進路を変えて上へと吹き飛ばした。
―――垂直に吹きあげる風などありえない。ならばそれは能力に違いない。
     しかし、ならばあの身体能力は何だと言うのだろうか。あれが彼女の、身体強化の能力ではないのか―――
一瞬の思案。それは彼が彼女の力を理解していないこと、そして彼自身が慢心していたことによる一瞬のスキ。
それを、佐天涙子は見逃さなかった。
     ダウンバースト
「殺った―――堕ちろ!」

直後、のしかかる突風により垣根は地面へと叩きつけられ、辺りに強風が吹き荒れる。
街路樹は折れる寸前までしなり、人は歩くこともままならない。
ビルの間で発生した風はしばらくとどまり、そして霧散していった。
落下する佐天は、その中途で右腕を垣根が落下し、砂埃を巻き上げている場所へ向け、

「駄目押しってヤツよ―――第四波動ォォおおおおッ!!」

先刻吸収した熱をエネルギーに変換し撃ちだした。

454 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/28(月) 23:05:06.53 ID:nB8RuOwo
地面へ着地し、未だ粉塵を巻き上げる場所を見据える。

(……いや、駄目だ。たぶん、あれくらいじゃまだ―――)

手ごたえはあった。しかしあれでは足りない。佐天はそう判断し、そしてそれは正しかった。
ぶわっ、と白い翼が広がり、粉塵を吹き飛ばす。現れたのは塵一つつけていない垣根帝督だった。

「く……厄介な翼ね」

「……テメェ、なんだその能力。身体強化、俺を吹き飛ばす程の突風、そして今の爆炎――――どういう仕組みだ?」

垣根は納得のいかない表情で佐天に尋ねる。
学園都市の第二位。それはつまり、能力というものを扱う力、それに対する理解―――そういうものもまた、
第二位相当であるということだ。だから垣根は不審に思う。能力は一人につき1つ。
その大原則が、目の前で破られていることに。
だから尋ねた。どういう仕組みだ、と。
その言葉を聞いた佐天は、不敵に笑いながら右手を垣根へとさしだし、

「さてね―――私の能力の仕組みは、死んでゆっくり考えな!」

「――――ッ!?」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 
遠距離から、一気に垣根の身体の熱のみを奪いとる。
体温が急激に下がったことに勘づき、垣根は再度空を飛ぶ。
熱吸収を避けられた佐天は右手を振りながら、

「……やっぱり最初から頭部だけを凍らせるべきだったかな」

とだけ呟いた。

460 :◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/28(月) 23:17:15.45 ID:nB8RuOwo
(……マジでどういう仕組みだありゃあ)

垣根帝督は空を飛びながら考える。
風を起こし爆炎を放ちさらには他人の熱を奪いとる。

(んな能力聞いたことが―――いや、まて……ハッ、なるほどな。それならうなづける。
 熱を操作する能力、ってとこか?これなら気流や爆炎も出来るわな。
 あの馬鹿みてえな身体能力は不思議でならねえが、まあいい。そろそろ本気でいくか―――)

「なぁ、テメェの能力ってのは熱を操作する能力だろ?しかもただ操作するだけじゃねえな―――そうだ、
 吸収し放出、操作ってとこか?これならだいたいが片付くが」

「へぇ……何も言ってないのによくわかったわね。そうだよ、大正解。よくできました、っと」

会話の最中にも容赦なく、先刻垣根から吸収した熱を第四波動として撃つ。
勿論垣根はこれをなんなくかわし、そしてひとつ息を吐いて一言、

「なら―――これからはその能力、使わねえほうがいいぜ。使ったら死ぬからよ」

と言ったが、佐天は「何を言っているんだこいつは」と言いたげな目で垣根を睨む。
だがそんな視線はお構いなしと言わんばかりに、垣根は軽い口調で続ける。

「いや、ほんと。ほら、俺って親切だからよ、忠告してやったんだよ。そうだな、珍しいもん見せてもらった駄賃だ、
 今回は殺さないでおいてやるよ。ああ、勿論あの花の嬢ちゃんもだ。だから、な?早くこの写真の女の子がどこ行ったか
 教えてくれないか?」

へらへらと笑いながらおかしな話を持ちかける。
佐天からすれば、今優勢なのは自分で、相手はただブラフを張って逃げようとしているようにしか見えない。
だから佐天が次にとる行動は当然といえば当然で―――その結果がどうなろうと、彼女を責めることは出来なかった。

461 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/28(月) 23:31:37.09 ID:nB8RuOwo
「舐めた真似を―――初春にあんなことをしておいて、許されるなんて思うな!!」

怒りを声に変えて垣根へぶつける。彼は「まあ当然か」と言いたげに肩をすくめた。

「お前は絶対に許さない―――ここで殺してやる……!」

「おお、怖いねぇ。せっかく可愛い顔してんのに台無しだぜ?」

「こ、の…///・どこまでふざけて……!!」

佐天は熱ベクトル操作の能力により、垣根を含む半径20mの空間内部の熱を外界と遮断する。

(今私が出来る最大半径のベクトル操作領域―――内部の熱を一瞬で吸収して、アイツを凍らせてやる!
 さっきはラインで繋ぐだけだったから避けられたけど、これなら避けられない……!)

そして佐天は残った演算能力を使用して、熱の方向を自身へと向けて熱を吸収し始める。




瞬間、佐天の身体の中で、何かが炸裂した。

462 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/28(月) 23:42:02.50 ID:nB8RuOwo
「―――――ッ!?が、ごふっ……ッ!」

彼女の口から赤くてどろりとしたものが滴り落ちる。
それだけに留まらず、身体のいくつかの箇所の血管が切れ、血を垂れ流しだしていた。

「な……ぐ、が、はぁ―――がふっ、げほっ……!」

何が起きたか理解できない。
何をされた様子も無かった。
しかし現にこうしてダメージを受けている。
痛みの中で思いだされるのは垣根が言った「使ったら死ぬ」という言葉。

(ただ、の……ブラフ、じゃ、なかった……?)

身体は力を無くし、ぐらりと地面へ倒れこむ。
そこへ垣根が舞い降り、彼女の頭を踏みつけ見下しながら嘲笑った。

「だーから言っただろ?熱なんか吸収しちまったら、俺が放った未元物質まで一緒に吸収しちまう、ってな」

「な、にを……?」

「ん……ああ、そういや言ってなかったなぁ。悪い悪い」

と、悪役らしく全く悪びれる様子もなく謝る。

「俺の能力は『未元物質』って言ってな。簡単に言えばこの世に無い物を生み出す能力なんだが―――
 今回は『熱』の中に人体に有害な物質を混ぜ込んでおいた。つまりお前は熱ごと毒を身体に取り込んじまったってわけだ!
 はっはァこれは傑作だよな!だってお前、自滅してんだぜ?これを笑わずに何を笑えってんだ!」

「ぐ……その、翼、が……能力じゃ……」

「こりゃあ副作用みたいなもんだ。残念だったな―――ここは既にお前のしる空間じゃなかったんだよ。
 お前の能力もなかなかだったが、そうだな―――俺の『未元物質』に常識は通用しねえ。
 そんな常識内の能力じゃ、俺に勝とうなんて考えないことだったな」

464 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/28(月) 23:49:12.92 ID:nB8RuOwo
―――意識がぼんやりとする。
     痛みで頭が上手く働かない。
     吐血は収まったみたいだけど、身体から流れ出る血が止まらない。
     それは大出血ってわけじゃないけど、けど止血しないと死に至る。
     いや、それ以前に、私は今、私を踏みつけている男に殺されるんだろうけれど。



「さーて、それじゃ殺すか。放っておいても死にそうだが、遅いより早いほうがお前もいいだろ?」



―――もはや答える気力も無い。
     呼吸をするのも億劫だ。息を吸い吐くだけで肺がずきずきと痛む。
     結局、私は初春一人も救えなかったんだろうか。
     ごめんね初春、もっと私が強かったら、良かったのになぁ―――



「……なんだこいつ、泣いてやがる。ったく、泣くくれぇなら最初っからかかってくるんじゃねえっての」

そう言って垣根は足を高く振りあげる。それは初春飾利を殺そうとした時のように。





そしてその行動は、同じように阻害されることになる。

469 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/29(火) 00:02:46.47 ID:6vd1Ijoo
「……ッ!」

ひどい悪寒を感じ、咄嗟に白い翼でガードする―――が、衝撃まで殺すことは出来ず、数メートル吹き飛ばされる。
そのまま空へ飛び威力を殺して、先刻自分が殺そうとしていたガキを見る。
そこでは、白い髪と赤い眼、病的な白さの肌をした男が立っていた。

それは自分の上位番号。目的を達成するための最大の障害。
学園都市第一位、一方通行―――『一方通行』。

「……ハハ、来やがったか、一方通行」

「黙れ」

ぞくり、と。
たった一言で気押されてしまう自分が居た。
第一位―――第二位である自分より、たった一つだけしか変わらないその順位。
だがそのたった一つが、大きな壁なのだと、思い知らされるかのような一言だった。

(ぐ……何びびってんだ俺……!!こんなヤツたいしたことねぇはずなのに……力の差なんて、大した事ないはずだ……!)

折れてしまいそうになった心を必死で修繕し、ごくりと唾を飲み込み息を大きく吐きだす。
自分は強い。なんといっても第二位だ。
第一位との差は、ただ自分の能力『未元物質』が未だ未知の領域にあるからというだけだ。
力の差は無いに等しい。
勝てる。目的のためにも絶対に勝たなければならない。

「……どうした、来ねぇのか第一位。なら、俺からいくぜ」

口に出して勝負の始まりを宣言する。
さあ行こう、勝たねば死ぬだけの道だ。

492 :◆oDLutFYnAI[sage]:2010/06/29(火) 14:18:40.34 ID:6vd1Ijoo
―――朦朧とする意識の中、映ったのは白い背中だった。
     真っ白な髪の毛と、真っ白な服。そんな白さの中、首に取り付けられた黒いチョーカーがやけに印象的だった。
     
「―――、一方、通行、さん」

―――途切れながらもしっかりと口にする。
     あの雨の日に別れ、それからずっと探し続けてきた大切な人の名前。
     まあそれは、その人の本当の名前なんかじゃないんだけれど。

「―――――」

―――白い背中が何も言わない。こちらを振り向こうともしない。
     前を見たまましゃがみ込んで、私の頭の上にそっと手を置くと、途端に重たかった身体が軽くなる。

「……異物だけ取り除いてやった。だからもう寝てろ」

―――それだけ言うと、彼は地面を蹴ってその場から消え去った。
     
―――久しぶりに触れてくれた、彼の手の感触。
     その余韻を感じながら、私は―――――

494 : ◆oDLutFYnAI[sage]:2010/06/29(火) 14:50:13.47 ID:6vd1Ijoo
「随分優しいじゃねえか第一位。今更誰かに優しくしたところで、何かがどうにかなるとでも思ったのか?
 俺達みたいなくそったれが、その程度で救われるだとか思ってんのか?」

先の戦いで既に交通機能がマヒした道路上で、垣根帝督は一方通行に向かって言った。
一方通行は何も言わない。睨むわけでもなく、静かに眼を閉じてただ立っているだけだ。
無反応な敵に苛立ったか、舌打ちをして垣根は言葉を続ける。

「なるほど、流石に第一位ともなるとたいしたムカツキっぷりだな。こんな面倒くせぇ手なんざ使わず最初っからてめえを
 ぶち殺しときゃよかったぜ。しかし、なんだ?『滞空回線』っつっても大したことねえのか?いや、それともお前の方の仕事が
 長引いただけか?知ってるぜ、確かその電極が無けりゃ能力使えねえんだろ?仕事が長引いたってことは、もうテメェに
 残された時間はほとんど無ぇってことだ。ハッ、ざまぁねぇな、第一位。それが何かを救おうとした代償だ。『最終信号』なんて
 もんを救おうとした結果がそれだ。俺達みてえな悪人が、救えば変われるはずがねえだろうが」

白い翼を広げながら垣根はひとりごとのように喋り続ける。
その言葉が果たして誰へ向けてのものかなど、考えるまでも無い。

「―――チッ、マジで何も反応無し、か。会話する気はねえ、ってか?」

それなら、と言ったところで一方通行は動いた。
いや、正確には一方通行は指一つ動かしていない。代わりに、大気のベクトルを操作し
風速120メートルに達する空気の塊を垣根へと叩きつけた。
凄まじい音を辺りにまきちらし、砲弾は垣根へと直撃する―――しかし、

「いきなり攻撃とはな。本当にむかつく野郎だ」

彼は翼で砲弾を真正面から受け止め、それでいて無傷であった。

「それなら俺もいかせてもらうぜ―――『未元物質』って知ってるか?」

問いかけながら翼を大きく広げ、彼は太陽を背に飛び上がった。
同時に、一方通行は地面を蹴り壊して彼へと一直線へと跳んだ。

495 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/29(火) 15:07:30.09 ID:6vd1Ijoo
「ハッ、喰らいな!」

叫び、垣根はその翼で烈風を生み出し、同時に翼が強く発光する。
全てのベクトルを操作し、反射する一方通行にそんなものは全く意味はなさないし、翼が光ったところで何が起こるわけでもない。

「……っ!?」

しかし一方通行はすぐさまベクトルを操作し方向転換する。
ひりひりと痛む右腕の袖を捲ると、皮膚が赤くはれ上がっていた。
困惑する様を見て、垣根は実に愉快そうに笑った。

「どうだ?今の光は太陽光を折り曲げて―――まあ、『回折』つーんだが、それで作りだした光だ。
 日焼けで死ぬってのも、不健康そうなテメェにはなかなか健康的な死に方だろ?」

「―――物理と医学の知識が足りてねェよォだなクソカス。回折だろォがなンだろォが、ただの太陽光なンぞで
 人が死ぬか。あと日焼けってのは不健康極まりねェンだよ」

「っと、ようやく口を利くようになったか?まあ、不可能を可能にするのが俺の『未元物質』ってワケだ。
 この世界に存在し得ない物質を生み出す―――これを通した太陽光はこの世界の法則に捕らわれねえ。
 あと紫外線が人体に有害なくらい知ってるよ。皮肉ってやつだ。流石に会話慣れしてねぇ第一位には難しかったか?」

「……なるほど、な。未元物質か」

一方通行は思考する。先ほど佐天涙子の身体から取り除いた異物。
通常の人体組成には組み込まれておらず、それでいて検知が容易でなかった物。
それが自分の知らない物質であるというのならば、解析に時間がかかったことも頷ける。
と、ここでふと彼の頭を疑問がよぎる。

(―――まて、解析……?)

反射しているとはいえ、さっきから吹き続けているこの烈風。そして今の太陽光。
その意味は――――

「――――逆算、終わったぞ」

「――――ッ!!!」

薄く笑った垣根を見て、瞬時に全てを理解し回避行動に移ろうとするが、だが遅い。
垣根の6枚の翼はただの鈍器として、一方通行の身体を容赦なく殴りぬける。

496 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/29(火) 15:30:24.86 ID:6vd1Ijoo
反射されるはずの攻撃を受け吹き飛んだ彼の身体は、そのままビルへと叩きつけられる。
しかしビルへ叩きつけられた衝撃はなく、そしてその威力は反射されすべてビルへと帰り、結果として
彼が激突した部分はただの瓦礫となった。
つまり、反射は効いている。だが、

「ご、がぁ……ッ!!」

身体の底から空気と共に苦痛の声と、このみしりみしりと、軋むような嫌な音は本物だ。
瓦礫に埋まった身体を起こし、垣根を睨みつける。
その様子を見て、垣根はまずまずの出来だ、と言ったように頷き口を開いた。

「その『反射』だが、何も全てを反射してるわけじゃねえだろ。もしそうだとしたら何も見えない聞こえない。
 つまりてめぇは有害無害を無意識化で選別し、有害なものだけを反射している、ということになるな」

喋りながら彼は翼を先刻通り一方通行へと向かって突き伸ばす。
一方通行はそれを避け、小石をいくつか拾い上げてはそれを蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた小石は
驚くべき速度で垣根へと突き刺さろうとするが、彼は一枚の翼のみでそれを弾き飛ばした。

「『未元物質』を通した今の太陽光と烈風には2万5000のベクトルをぶち込んどいた。後はそれのどれが反射されているかを
 解析し、有害と無害のフィルタは判別し、無害としているベクトル方面から攻撃を加えてやりゃいい、ってわけだ」

おそらく、一方通行が反射の設定を切り替えたとして、それはすぐに解析され、堂々巡りとなるだろう。
そうして攻防を重ねれば、ただ無意味にダメージを蓄積するだけだ。

「これが『未元物質』――――異物の混ざった空間。ここはテメェの知る場所じゃねえんだよ」

497 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/29(火) 16:12:43.98 ID:6vd1Ijoo
そして二人は激突した。
標識を、風力発電機を、ビルを、ガラスを、道路を破壊しながら凄まじい速度で街中を駆け抜けていく。
暗部である二人は表沙汰になるような動きはしてはいけない―――しかしそんなものは今や関係無かった。
後始末のことなど考えず、ただ互いが持つ能力をぶつけ合う。
ベクトル操作で生み出された竜巻と白い翼で生み出された烈風が喰らい合い、
弾かれたコンクリートの塊は粉々にされ石つぶてのして返される。
災害が駆け抜けていく様をみた人々は、それを口外した瞬間に殺されると本能で理解し、
自分達が出来ることは、被害に会わないようにただやり過ごすだけだと判断した。

「色々策を練ってみたが、やっぱりこのままテメエをぶっ殺した方が早いみてぇだな第一位!」

「ハッ、この期に及ンでまだ数字なンてツマンねェもンに執着してンのか!」

「そんなんじゃねえ。俺はただ、アレイスターとの直接交渉権が欲しかっただけだ!
 テメェは自分のいる立場ってのを全く理解してねぇ。アイツはいくつか予備プランを持ってるとはいえ、
 その全てはテメェに向くよう仕向けられてやがる。ならその予備をぶち壊しテメェを殺し、その座に
 次点である俺が座るしかねぇだろうが!それならヤツと交渉できる権利が得られるってもんだ!」

白い翼が横に薙がれ、発生した衝撃波が一方通行へと襲いかかる。
未元物質の影響を受けたであろう衝撃波を同じく衝撃波で返しながら、一方通行は今垣根が言ったことを考える。
アレイスターとの直接交渉権とプランの存在。
ここまでのことをしでかした以上、そのプランというものについては自分よりも相手が熟知しているということは認める。
そして直接交渉権を求めるその理由。

(―――どォせ、暗部に居るうちにゴマンとある悲劇のうちの一つにでも触れてぶっ壊れやがったンだろォな)

まるで自分のようだ、と彼は思う。
だから、彼が垣根へ向ける言葉なんて、とうに決まっていた。

「ガキだな―――オマエは正しいことを言ってるようで、結局自分の思い通りにならなかった世界を憎んでるだけだォが」

498 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/29(火) 16:33:26.02 ID:6vd1Ijoo
「テメェに言われたかねぇよ」

垣根は鼻で笑う。
しかしそれを聞いて、一方通行はつまらなさそうに言った。

「その一言がすでに安い悪党なンだよ―――悲劇の使い道は色々だ。それにどうこう言うつもりはねェ。
 だがな、それを理由に無関係のガキを狙ったり一般人に手ェ出したりしてもイイって決めつけてンじゃねェ。
 ご大層な理由があれば一般人を殺してもイイなンて考えた時点で、オマエの悪はチープすぎる」

「説得力にかけるお説教だな、第一位」

垣根は興味無しといわんばかりに投げやりに答える。

「俺だって好き好んで一般人を殺したりはしねぇよ。気分がよけりゃあ、悪党だって見逃してやる。
 しかしそれは命を張ってまですることじゃ無い。テメェにしても、今の戦闘で散々見殺しにしてきただろうが。
 コンクリートやアスファルトの破片は音速を超えて飛び交って、ガラスはシャワーのように降り注いでいた。
 こんな中で、一般人が生きていられるはずがねぇだろ。全部俺達の戦いで死んでいった」

「――――、」

「最終信号を狙ったのも、その保護者っぽいガキを狙ったのも、その後突っかかってきたヤツを狙ったのも、
 全部それと同じだ。上から説教足れてんじゃねぇよ人殺し。俺を殺すために無関係なヤツらを見殺しにしてきた
 テメェが、自分だけ特別みてぇな口きいてんじゃねえぞ」

499 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/29(火) 16:45:38.10 ID:6vd1Ijoo
「―――ハッ、オマエを殺すために一般人を見殺しにしてきた、ね」

一方通行は顔を抑えて笑いだす。

「三下だな。美学が足りねえからそんな台詞しか出てこねェンだよ」

「何……?」

「そもそも、何で俺とオマエが第一位と第二位に分けられてると思う」

言いながら、一方通行は今まで自分達が破壊してきた町並みを指さす。


「―――俺とオマエとの間に、絶対的な壁があるからだ」


垣根は示された町並みへと視線をやり、そしておかしな点に気づいた。
確かにそこは、自身や台風が一度に来たかのような大惨事になっていた。
しかしそこには人の泣き叫ぶ声が聞こえない。
ただのひとつも、悲劇が無い。
ある看板は飛び散ったガラスから人を守り、破壊されたアスファルトやコンクリートはそれらが互いに
ぶつかり合い、安全な空間を作り出していた。
奇跡としか言えないその状況が、確認するだけで20を超える。おそらく、もっと先でも同じような奇跡が起こっているのだろう。

(ま、さか……守ったっていうのか……?)

「テメェ……どこまで掌握してやがった……!」

垣根の頭に血が上る。今さっき自分が突き示した事が否定されたことによるものではなく、
ただ当然といったばかりに、自分と殺し合いをしている最中に一般人を守っていた一方通行のその力量にだ。
自分がどれだけかかっても届かないと思わせられるような力の差。
その力の差が、まるで最初からわかっていたかのように退屈そうに答える一方通行に。

「ムカついたかよ、チンピラ」

一方通行の眼が嘲笑っている。力の差に気づかなかった、第二位の垣根帝督を。

「これが悪党≠セ」

500 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/29(火) 16:58:47.50 ID:6vd1Ijoo
―――多少は動くようになった身体を起き上げる。
     所々から流れ出していた血液は、一方通行さんが何かを取り除いてくれたおかげで、すでに止まっていた。
     
「……行かないと」

―――ふらふらと立ちあがる。未だ所どころ痛むが気にしては居られない。
     身体強化……は使わない方がいいだろうと判断して、そのまま駆け出す。
     
「ようやく……ようやく見つけたんだ。こんな所で、また、置いてかれるなんて、」

―――何処へ向かったかは破壊された町並みをみれば一目瞭然だ。
     めくれ上がったアスファルトを乗り越えて、割れたガラスの破片を踏み砕いて走る。

「―――もう置いていかれないように、強くなったんだから」

―――いつもなら一瞬で駆け抜ける距離が、とても長く感じた。

503 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/29(火) 19:54:03.62 ID:6vd1Ijoo
「ッッッ!テメェに酔ってんじゃねぇぞ一方通行ァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

豪、と六枚の翼を広げ力を蓄える。形状はより凶悪に、より破壊力を持たせるようギチギチと変化し、
六ヶ所の急所へと照準を合わせる。
それを見て一方通行は特に表情も変えず一言。

「来いよ」

「余裕だな―――テメェのその反則じみた反射の壁はもう効かねえんだぜ」

「確かにこの世界にゃオマエの操る『未元物質』なンて存在しねぇ。そのオカシナ物質に触れたモノがこの
 世界の法則から外れちまうってことも解った。だからまァ、この世界の法則に沿ったベクトル操作じゃ
 どォしても『隙間』が出来ちまうってのは頷ける」

だがな、と一方通行は続ける。

「だったらソイツも含めて演算し直せばいい。この世界は『未元物質』を含む素粒子で構成されてると再定義して、
 オマエの公式を暴けばチェックメイトだ」

「俺の『未元物質』をも……テメェのベクトルで操るだと……?」

「出来ねェと思うか?」

「俺の底まで掴み取るつもりか」

「浅い底だ」

「……!」

「悪ィが、いちいち掴むまでもねェよ」

そして二人の力が交差する――――はずだった。
そこに本来現れるはずのない人間が現れなければ。

「―――――、一方通行さんっ!!」

504 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/29(火) 20:05:42.82 ID:6vd1Ijoo
その声で垣根は一方通行から視線を少し後ろへズラし、そして一方通行は驚きのあまり振り返った。
そこには肩で息をし、ところどころに赤い染みを作った制服を着た佐天が立っていた。

先に動いたのは垣根だ。
蓄えた力を一方通行を通り過ごし、その後ろの佐天涙子へと向ける。
音速を超えた六枚の翼は的確に急所へと放たれる。
能力使用時の佐天ならば、限界を超えた反射神経と身体能力で避けることも出来ただろう。
しかし今は違う。未元物質によって能力を封じられている今の佐天は、ただの中学生となんら変わりない。
だからその放たれた攻撃をかわす術などなく、コンマ1秒先には串刺しになっている姿が容易に想像される。

だから、それを防ぐために動いたのは、垣根より僅かに遅れて動いた一方通行だ。
振り返り佐天を抱きかかえると、そのまま隣のビルの屋上まで跳んだ。
空振りに終わった六枚の翼はアスファルトの地面をたったの6撃で粉々に粉砕する。
チャンスだ、と垣根は思った。
何故かは知らないが一方通行はあの中学生にご執心だ。この戦いの中、もし彼が彼女を
どこか安全な場所に隠そうとも、それは完全な弱点となる。

「―――ハッ。一般人を傷つけないのが一流の悪党、だ?
 出来るもんならやってみやがれ第一位――――――――!!」

叫び、一方通行が跳んだビルへと飛ぶ。
そこには佐天を背にしたまま、こちらに対峙する一方通行が居た。

505 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/06/29(火) 20:14:15.77 ID:Xm2KO6SO
原作読んでないが、一方さんの悪党美学に濡れた

506 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/29(火) 20:17:27.15 ID:6vd1Ijoo
乱暴に抱きかかえていた佐天涙子をとりあえず下ろした一方通行は、彼女に向かって吠えた。

「何であの場に居なかったクソガキがァ!!!!」

第一位の凄まじい剣幕。普通の相手ならば、それだけで戦意はおろか、彼を見ようとすらしないだろう。
だが佐天はそんな彼の眼を見て、

「だって……!ようやく見つけたのに……私だって、一方通行さんの役にたてるように強くなっt」

「オマエは馬鹿か!!どォ見ても足手まといだろォが!!!」

「……ッ!」

と、二言三言交わした後、ビルの下から垣根が飛び上がってきた。
ちっ、と舌打ちをして佐天を垣根からかばうように背後へ回す。
それを見て垣根は実に愉快そうに笑いながら叫んだ。

「ハハハハハ!!どうした一方通行!!俺の『未元物質』の解析は終わったんだろ?だったらかかってきな!
 最も?テメェが攻撃に集中してる間にその女は殺させてもらうがなぁ!!!」

「随分と三下になり下がったじゃねェかかァァァァきねくゥゥゥゥウウウン!!!さっきまで出来る限り一般人殺さねェとか
 言ってたオマエは何処に行ったンだァ?!」

「ほざけよ一方通行。ここまでやったんだ。どんな手を使ってでも勝たせてもらうぜ」

「そォかよ。だがな、コイツ一人守りながら戦うなンざワケねェンだよ」

「ハッ、なら俺は今からソイツだけを狙うぜ。その余波で破壊されるコンクリから、果たして今までと同じように
 一般人を守れんのか?一般人を殺させねえってんなら、勿論出来るんだよなぁ?」

「上ォォォォォォ等ォォォォォオオオオオ!!!!」

「行くぞオラァァァアアアアアアアアアア!!!!!」

508 : ◆oDLutFYnAI[saga sage]:2010/06/29(火) 20:30:49.42 ID:6vd1Ijoo
(なに……これ……)

一方通行さんの背中越しに、二人の戦いを間近で見てしまう。
風と風、衝撃波と衝撃波、瓦礫と瓦礫のぶつかり合い。
それらが眼にも止まらぬ速度で、まさに音速を超えた疾さで何十手、何百手と繰り返される。
レベルが違う。
おそらく、身体強化が使えたとしても、この戦いにはついて行けない。
手に入れた幻想御手を使ったところで、そんなもの無いに等しいだろう。

(……駄目、じゃん)

ぐ、と拳を握りしめる。

(強くなったと思ったのに―――それでも、全然届いてない。今だって、ただのお荷物だ)

途端、一方通行に抱きかかえられ、宙を舞う。
瞬間、今まで居たビルの屋上が崩れた。どうやらさっきのやりとりで耐久度が限界を超えてしまった結果らしい。
道路に着地すると、さっきのように私を背中にして敵と対峙する。
そこでふと思い出す。一方通行さんのチョーカーのバッテリーだ。
この戦いが始まってから10分は既に過ぎている。確か、限界は15分程だったはずだ。

「あ……あくせら、れーたさん……あの、バッテリーは、」

「黙ってろ!!!」

一喝されて、つい小さくごめんなさい、と言ってしまうと、それを聞いた一方通行さんは舌打ちをする。怖い。

「オイオイ、命かけて守ってる嬢ちゃんに随分きついこと言うんだな第一位」

「……だからどォした」

「いやいや―――あァ、成程。今ようやく思い出したわ」

空を跳んでいるメルヘン男は何か納得のいったような表情になると、一方通行さんではなく私を見た。
そして、


「心理定規のヤツから聞いたっけな―――確かお前、その嬢ちゃんを守るために暗部に入ったんだろ?」


そんな、とんでもないことを言った。

511 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/29(火) 20:45:05.26 ID:6vd1Ijoo
「そうそう、そうだった。何でテメェがいきなり暗部に入ってきたのか不思議だったんだよな。
 それで心理定規に調べさせたら、なんか誰かを人質に取られて入ったって言ってたか。
 あんまりに第一位らしくなかったが、それが最終信号だとしたら合点がいってたんだが―――どうやら違ったみてえだな」

話ながらもヤツと一方通行さんは戦いを続けている。
その轟音の最中、メルヘン男の声だけがやけに鮮明に聞こえてきていた。

「ハッハ、しかしテメエも大変だな第一位!そんな女をかばって何になる?
 最終信号ならわかるさ。テメェの演算能力の要だからな。最強を維持するための最大の弱点ってわけだ。
 だがそっちの女はどうなんだ?何か特別な能力でもあんのか?」

そう。
そうだ。
理由が無い。
一方通行さんが、私をかばう理由。
自らを犠牲にしてまで、私を救おうとする理由が。
理由が無いなら、メルヘン男の言っていることは間違いだ。

――――たぶんソイツは佐天さんを守りたいだけだ。だから突き放したんじゃねえか?
      まあそれじゃソイツが不幸になっちまうから俺がソイツに出合ったらそげぶしてやるけどな―――

「……ッ!!」

なんでここで上条さんの言葉が出てくるんだろう。
それに、守ってもらえるだとか、そんなのはただの自惚れだ。きっとそうだ。
ダカラキット、ワタシノセイナンカジャナイ。

512 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/29(火) 21:05:17.45 ID:6vd1Ijoo
垣根帝督は翼で直接攻撃し、そして時には風を起こしたりと一方通行を追い詰める。
対する一方通行は、既に垣根の翼を反射することが出来ているため苦ではない。ただし、それが自分だけの狙ってくるのならば、だ。
垣根の翼は執拗に彼の後ろにいる佐天涙子を狙いに行っている。
遠距離から攻撃しようにも、強力すぎる攻撃は佐天をも巻き込んでしまう。
能力を使用しているのならともかく、今の佐天はごくごく普通の中学生の強度だ。本気の一撃の余波を受けた瞬間、
肉と骨が分離してしまうことは間違いないだろう。
だからと言って接近して攻撃しようにも、一瞬でもこの場を離れた場合あの翼で佐天は串刺しにされていしまう。
それと引き換えに垣根を殺すことは出来るだろうが、それでは意味が無い。
つまり、完全に攻撃手段が封じられている状態にあるのだ。

「オイどうした第一位。俺の攻撃を捌くだけで精いっぱいか?答えてみろよ。
 そっちの女を守る理由ってのはなんなんだよ」

垣根もそのことを解っているのだろう。でなければ、自分の翼が反射されているのにあんな風に余裕でいられるはずがない。
このまま防戦一方では不味い。バッテリはまだあと10分程あるが、それが無くなるのも時間の問題だ。
そして先ほどからしつこく放たれる問いかけ。佐天涙子を守る理由。

理由などない。
ただ、自分のような悪党が光の世界にいるよりも、彼女のような一般人が光の世界に居た方が似合うと思ったからだ。
理由と言えば、それが理由か。
天秤にかけられた時に迷わなかったのは、一方通行は自分自身の人生を正しく認識していたこと。
一万人を殺し、それ以外にも多くを不幸にした彼が闇へ堕ちていくのは、ある意味当然の結末だと認識したからだ。
だから、やはり垣根の問いへの答えなんて無い。
けれど、彼はふと思う。
もしかしたら、本当にただ守ってやりたかっただけなのかもしれない、と。
打ち止めとは違う、掛け値無しの、ただ純粋な守りたいという想い。
それが自分の中にあるのかもしれないと思った瞬間、心の中で自分を嘲笑う。
今更誰かを救おう―――守ろうなんて、そんな甘えた考えを未だもっていた自分を。
けれど、それは別に思っていたほど哀れでも恥ずかしいことでも無く。
むしろ、こんな自分でも、まだそんな心が残っていたのかと、少し誇らしくなった。
だから彼は胸を張って、垣根に向かってこう言った。

「あァ―――理由なンざねェ。ただ、守ってやりたかった。それだけだ」

おそらく垣根には嗤われる。そんなことは解っている。
だが口にしたその言葉は、自分の心にしっくりとくる感じがした。
今まで感じたことの無い感覚で、それは以外にも悪いものでは無かった。



だからその言葉を聞いた佐天がどんな気持ちになるかなんて、彼は予想なんてしていなかった。

513 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/29(火) 21:12:44.43 ID:6vd1Ijoo
「あァ―――理由なンざねェ。ただ、守ってやりたかった。それだけだ」

瞬間、私の世界は色を無くした。
眼の前の白い背中の言葉を理解できない。
理解しようとするのを、心が拒む。
しかし思考はからからと回転して、その言葉を分解し、意味として認識してしまう。

ただ、守ってやりたかった

本当ならとても嬉しいはずの言葉なのに。
本当なら、恥ずかしがってでも御礼を言いたくなる言葉なのに。
本当なら、普段絶対にそんなことを言わないって、からかっているであろう言葉なのに。

その言葉は、私の心をざくざくに切り裂いた。

ここでメルヘン男の言っていたことが、上条さんの言っていたことが証明されてしまう。
一方通行さんが私のために暗部に入ったこと。私を守るために暗部に入ったこと。
ワタシノセイデ、アンブナンテモノニハイッテシマッタコト。

「……、ぁ」

考えるな。
考えるな。
考えるな。

「……。」

奥歯ががちがちと鳴る。
足ががくがくと震える。
身体は支えを無くしたように、ふらりと横へ倒れてしまう。


「――――――!!」

「―――、――――――!!!」

何か聞こえる、と思ったら。
私のお腹を、白い翼が貫いていた。

514 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/06/29(火) 21:17:09.08 ID:HUEUXUMo
佐/天さああああああん!!!!!!!

515 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/29(火) 21:17:08.13 ID:6vd1Ijoo
そのまま、私は、吹き飛ばされる。
その時に、お腹からは、白い翼が抜けて。
かわりに、お腹からは、赤い血が出てきた。

そして、地面へ、投げだされる。
瓦礫が、頭に当たって、痛いなって、思ったけど。
そこに、手を置く、元気なんて、なくて。

ただ、ああ、これ、このまま、死んじゃうな、とか、思ってた。

でも、いいかな。
わたしがしんだら、あくせられーたさんも、あんぶから、ぬけだせるかな。
ごめんね、らすとおーだーちゃん。
でも、もうすぐ、あくせられーたさんは、かえってくると、おもうから。
ごめんっていえたら、よかったけど。
なんだか、もう、いいや。

ああ、つかれた。


ほんとうに、つかれた。

527 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/29(火) 22:22:00.48 ID:6vd1Ijoo
佐天の身体がぐらりと揺れる。
それを垣根は見逃さなかった。

「―――そこだッ!!」

白い翼は刺突槍のような形に変化し、他の二枚の翼とともに佐天を狙いにいく。
勿論一方通行はそれを叩き落とそうとするが、他の二枚がそれを妨げる。
一枚が通り抜けてしまった瞬間、しまったと思うと同時にその軌道がやけに外れていることに気付いた。

(何だありゃあ……一体何処を狙って―――)

そう思ってふと後ろを振り向くと、そこには血を撒き散らしながら遥か遠くへ飛ばされている佐天の姿があった。

何で、と思った。

あの軌道で当たる筈が無いのに、と。

だからその光景を理解したのは、垣根の笑う声が耳に届いた時だった。

「ハハハハハハハ!!!守りたいと思っただと!?甘ぇんだよ!!お前が!俺が!俺達が!!
 今更何かを守って生きていけるわけがねえだろぉがぁぁぁあああああああああ!!!」

垣根の台詞は最後の方は絶叫と化していた。
それもそのはずだ。一方通行が彼を一瞬で蹂躙していたのだから。
そしてその一瞬で長い戦いは、驚くほど簡単に幕を閉じた。
あれだけの防戦が嘘のように、簡単に。

倒れた垣根から流れ出した血は、不気味な魔方陣のように広がっていく。
そんなものには興味が無い、と言わんばかりに、一方通行は倒れた佐天の元へ疾り寄る。

528 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/29(火) 22:32:19.65 ID:6vd1Ijoo
駆け寄った一方通行はその出血量を見て、不味い、と感じる。
それは絶対能力進化計画時に、一万以上の妹達を殺害してきた際に覚えた感覚だった。
すぐさまベクトル操作によって血流の流れを安定させる。だが、流れ出した血は戻らない。

(―――このまま、だと……)

嫌な想像が頭をよぎった。早く病院へ運び輸血しなければ死に至る。
だが、千切れた血管から血管へ、それも複数個所で他人の身体ともなると、かなり繊細のベクトル操作となる。
ただ逆流させるような単純な作業では無い。人を救うということは、殺すことよりも難しいと再度実感させられる。

(どうする―――どうする……!抱えて走るなンざ出来るか……?
 ―――いや、やってやるしかねェ。出来る、あァ出来るさ!!俺が出来ねェ筈がねェンだ!!)

そう自らを鼓舞し、彼女の身体を抱きかかえようとした瞬間、遠くから声が聞こえた。

「一方通行!」

それはよく知った、元同居人の声だった。

529 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/29(火) 22:48:07.48 ID:6vd1Ijoo
「黄泉、川……」

見れば実はそう遠くなく、割と近くには警備員の医療専用車両などが何台も止まっていた。
おそらくここの被害にあった一般人が電話して呼んだものだ。
こんなに近くにくるまで気付かなかったのは、彼自身が思ったよりも動揺していたことによるものだろう。
黄泉川愛穂は彼に近寄ると、佐天の傷口に乗せている彼の手に自分の手を重ね、彼の眼を見て言った。

「大丈夫、もう救護班は着いてるじゃんよ。今すぐ病院に搬送すれば助かるじゃん!
 輸血なら車に積んである!この子の血液型も判ってる!安心するじゃん、この子はちゃんと助かるじゃん!
 ―――だから、そんな今にも死にそうな顔するな」

黄泉川に言われてはっとする。どうやら、自分は随分ひどい顔をしていたらしかった。
血流操作を続けながら、ぽつりと一方通行は、ひとりごとのように口を動かす。

「……守りてェ、って思ったんだ」

「俺みてェな救いようのない悪党が、誰かを守りてェなンざ、おかしいってわかってる。嗤われるのもわかってる。
 けどよ、それでもだ。守りてェ、って、口に出した時は、なンつうのか、今まで空っぽだったところが少し埋まった気がしたンだよ」

「けど見ろ―――現実はこのザマだ。やっぱりよォ、俺みてェなヤツが誰かを守るなンて無理だったンだろォなァ」

ああ、空しい、と。
一方通行は、眼を閉じながら、そう思った。
しかし、

「だがこの子はまだ生きてるじゃん」

そこに、黄泉川の力強い言葉がかけられる。

「お前がこうしているおかげで、まだ生きてる―――胸を張るじゃん、一方通行。お前は、ちゃんとこの子を守ったじゃんよ」

たったそれだけの言葉。
それだけの言葉だけで、沈みかけていた一方通行の心は引き戻される。
ああ、自分は佐天を守れたのか、と。
こんな自分でも、守れたのか、と。
それを誰かに認められることが、こんなにも、心も満たしてくれるものだと。
―――ありがとよ、黄泉川。
そうやって、普段なら絶対に言えない恥ずかしい言葉も今なら言えるような気がして、静かに黄泉川の方へ顔を向け――――




そして、わき腹に白いモノが突き刺さった黄泉川愛穂を、彼は見た。

530 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/29(火) 23:05:05.50 ID:6vd1Ijoo
「な……?」

ずしゃり、と黄泉川は地面に倒れ、添えていた手は離される。
白いナニカは引き抜かれ、そこからじわりと血がにじみ出す。

「……よみかわ?」

ナニガオコッタ?と頭が回らず呼びかける。返事は、無い。
実にゆっくりとした動きで、自分の後ろを見る。そこには、白い翼を展開した、垣根帝督の姿があった。
その姿は満身創痍。だが垣根は確かに、その口から言葉を搾り取る。

「……守れるわけがねぇっつってんだろ」

そして紡がれる言葉は己に向けたものか。

「出来るわけがねぇだろそんなこと!!これが俺達の世界だ!このクソッタレで絶望しかない世界が!
 何が悪党だ!そんな希望にすがりやがって!!さんざ上からモノ語っといて調子乗ってんじゃねぇぞコラァ!!」

ギリ、と奥歯を噛みしめ殺意を放つ。しかし一方通行はそれが自分へ向けられた殺意でないことを知る。
それは、今さっき崩れ落ちた、彼の隣にいる重症者へ。

「や、めろ」

無意識のうちに出てきたのは制止を呼び掛ける言葉。
しかしそんなものを垣根が聞く筈もなく―――

「聞こえねえよ!!!」

彼は見えない力で彼女の身体を圧迫した。
びくん、と黄泉川の身体が震える。傷口からは、出血がひどくなる。
じわりと血だまりを作っていく光景をみて、一方通行は、

「やめろっつってンだろ!!」

「聞こえねえっつってんだよ!!」

止まらない、出血は止まらない。
血だまりは広がるだけだ。血流操作を施そうとするが、その手は見えない力に弾かれる。

「あ……?なンだテメェ、反射なんか解いて何して……ハッ、そうか時間切れか!!ザマァねぇな!
 結局テメェは何も救えず終わるわけだ!ハハハハハハハ、こりゃあ愉快だ傑作だ!
 どうだわかっただろ、これが俺達だ、俺達の世界だ!救いなんてありはしねぇ、正しさを示したいなら
 敵をぶっ殺せ。あの場で確実に俺を殺しておけば、今頃ハッピーエンドだったかもしれなかったのになぁ!!!」

ゴウッ!と六枚の翼が力を溜める。それは一方通行達へ向ける最後の攻撃。
直撃すれば三人まとめて肉片に変わる程の強大な一撃。

「さぁ終わりだ第一位!!こんな状況でも見せられるもんなら見せてみやがれ、テメェの言う、
 悪党の『美学』ってヤツをよォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

531 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/29(火) 23:12:16.99 ID:6vd1Ijoo
なんてザマだ、と一方通行は思う。
一般人は傷つけない。
カタギの命は狙わない。
そんな大層なことを掲げ、死にそうだった佐天の治療に専念した結果がこれだ。
垣根の言うとおり、あの場で完全に息の根を止めておけば、こんなことにはならずに済んだ。

完全な『悪』に徹しておけば、こんなことにならなかったというのならば。
今こそ徹底した『悪』になる。
何を失ってでも、眼前の『垣根帝督』という障害を排除することに専心する――――


―――ざくざくと、
     脳ミソが切り開かれて、
      その中から、
       何か、
        ヨクワカラナイモノがとびだしてきた。

「ォ、」

両目からは赤黒く腐った液体を垂れ流し。

「ォォ、」

その意識は、淀んだ闇の底へと沈んで。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

変わりに、全てを無くす暴走が訪れた。

532 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/29(火) 23:21:24.05 ID:6vd1Ijoo
一方通行の背中から、数十メートルの巨大な黒い翼が展開される。
それを見て、垣根は小さく笑って呟いた。
そして彼は唐突に理解する。自分の『未元物質』というものが、一体なんだったのかということを。

「……やりゃあ出来るじゃねえか第一位。ハッ、なるほどな、こりゃあ確かにすげぇ『悪』だ。俺がスペアってこともうなづける。
 だがな、それが勝敗を決するとは限らねぇんだよなぁ!!」

吠えると、彼の背中の翼もまた、数十メートルにまで一気に膨れ上がった。
酷似したその翼は、しかし全く性質の異なるもの。
神にも等しい力の片鱗を振るう者と、神が住む天界の片鱗を振るう者。
確かにこれならば力は互角―――しかし垣根は意識を持ち、そしてその力を使いこなせる自信があった。
いける、と垣根は踏む。
それは自身の力を過大評価したわけでなく、ただ素直にそう思っただけのことだった。

「ははははははははははははは!!いくぜ第一位!!さあせいぜい俺の実験台第一号になってくれ!!!」


ぐしゃり、と。
彼の身体は、アスファルトの道路に突き刺さった。

533 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/29(火) 23:27:02.48 ID:6vd1Ijoo
「ごッ―――!?」

何が起きたかはわからない。
ただ、倒れる寸前で、一方通行は手をゆっくりと動かしたことだけは解っていた。
たったそれだけ。
たったそれだけで、絶対に位置に君臨していた垣根帝督は、無残にもアスファルトへと沈んでいた。
みちり、と音がする。
それがぶちぶちという音に変わったかと思うと、彼の右腕は吹き飛んでいた。

(な、ぁ―――なに、が……ッ!?)

理解に至らず。
理屈も解らず。
いや、そもそも理屈なんてものは無いのだと、たったそれだけ理解できた。
一歩、また一歩とゆっくりと一方通行は垣根へと近づいていく。
彼との距離が自分の寿命なのだと、垣根は直感で感じ取っていた。

「は、は」

「―――-yjrp悪qw」

「ちくしょう。……テメェ、そういう事か!テメェの役割は――――!?」

返事は無く。
殺意の拳とともに、殺戮は始まった。


547 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/30(水) 13:12:02.43 ID:CsnZxEgo
黒い翼が幾度となく垣根だった何かに振り下ろされ、そのたびに不気味な振動が辺りに響いた。
非常識なその光景を目の当たりにした辺りの人間達は、目をそらすことすらできずただ呆然と眺めている。
一方通行は翼を振るいながら咆哮を続ける。人の身体からかくも獣のような声が出るのかと思わせるような、
理性のかけらもない叫び声だった。
手出しなど出来ない。
それは警備員であろうと同じだ。
しかし、先刻倒れた黄泉川にはその声が子供の鳴き声にしか聞こえない。
だから、子供を守るために此処にいる彼女にとって、それは恐怖の対象でなく自分が動く理由にしかならなかった。

力の入らない身体をずるりと引きづり一方通行へ近づこうとすると、後ろから同僚の男に止められた。

「黄泉川さん危ないですって!!」

「だ、まれ才郷……!おまえは、早くそこの中学生を病院へ連れていくじゃん……!!

「しかし」

「うるさい!私に構っている暇があったらすぐに重症者を助けろ!!」

と、叫んだあたりで彼女の口からごぷっ、と血が溢れだす。

「いえ、違うんです。あれを見てください―――『六枚羽』です。先ほど、この辺りから周囲100mにかけて
 説明のつかない異常な空間歪曲が広がっています。アレを使って自爆覚悟でその原因をとめようというわけです」

「なん、だと……?」

辺りを見回すと完全武装の警備員や、駆動鎧の部隊が、重装備で道路の中心にいる一方通行を
挟み込むようにして配置されていた。
その光景はかつて一方通行がささいなことで同級生の骨を折ってしまったことで起こした地獄と酷似している。
もう一度、あんな地獄へ彼を叩き落とすわけにはいかない。
黄泉川は才郷の腕を振り払おうとするが、しかしそれは叶わない。

「あの子への攻撃を止めさせろ!あの子は子供だぞ!私達が守るべき対象だ!それを攻撃してどうする!!
 認めない―――私はそんなの絶対に認めないからな!!」

もしここで攻撃が開始されれば、彼の世界の全てが終わる。
社会から拒絶された彼の心は砕け散り、再び戻ることはないだろう。

(なにか―――何か、ないか……!)

思考すれど答えは見つからない。
希望なんてものはどこにもなかった。

(こんなところで、こんなつまらない事で、あの子の未来を潰させるわけには――――)

しだいに絶望が侵食していく黄泉川の心。
だがしかし、そんな彼女の目の前を、小さな女の子が横切った。
膠着したその場所に、

      ラストオーダー
――――最後の希望が舞い降りる。

548 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/06/30(水) 13:27:59.76 ID:CsnZxEgo
その後の顛末は、以下の通りである。

警備員「ええ、本当なんです。小さな女の子が黒い翼をまとった男に近づいていったときにはもう駄目かと思いました。
     実際その翼はいっせいに女の子へと向かって放たれました。けれど、その子の目の前で翼がぴたりと止まったんです。
     まるで、見えない壁に阻まれているかのように」

野次馬「皆怖くて動けなかったのよ。動いただけで死ぬ、って思ってて。でもね、あの女の子は違ったわ。
     こう、腕を広げて、まるで『大丈夫だよ』って言ってるようにしてあの黒い翼の前に立ってたわ。
     警備員が発砲して、黒い翼がその警備員に向いた時、その子が何かを言ったの。すると、攻撃はぴたりと止まったわ」

黄泉川「打ち止めが来てくれて本当に助かったじゃん……あの子の前では、一方通行もただ駄々をこねる子供と
     なんら変わらなかったじゃん。最後の最後で、打ち止めはしっかり一方通行を支えてくれてたじゃん。
     結局子供に頼る形になっちゃったけど、それでも、あの子達が救われたのならそれで良かったじゃん」

打ち止め「別に何もしてないよ、ってミサカはミサカはきょとんってしてみたり。ただあの人がずっと迷子だったから  
      見―つけた、って言ってあげたの。だって、迷子の子にかける言葉なんて皆知ってるでしょ?
      『何処へいっていたの―――おかえりなさい』、って。とかミサカはミサカは話を締めくくってみる」


そうしてこの事件は幕を閉じる。
この一件で一方通行はペナルティをかけられたが、彼はそれを気にも留めていない。
垣根帝督は死体を回収され、能力を吐きだす冷蔵庫へと変貌した。
打ち止めは迷子を見つけて一言、「よかった」と言うだけだ。
そして佐天涙子は――――


―――――15巻 終了


佐天「今までありがとうございました―――左天お兄ちゃん」 3



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