2010年08月26日

佐天「今までありがとうございました―――左天お兄ちゃん」3

609 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/01(木) 21:35:11.50 ID:D7fRJFko
―――10月11日  昼  病院


佐天「―――――、ぅ」

佐天「っ……ぁあ」

佐天「見なれた天井、か―――ん?」


初春「―――zzz。――――……zzz」


佐天「ういはる……――――――ッ!?」

佐天「初春!起きて初春!!……っぁ……!」ズキン

初春「う、ふぇっ!?な、なにかありましたか!?……うわああああ佐天さあああああああん!!!」

佐天「えっ、何!?」ビクッ

初春「め、目が覚めたんですね!!よかったです……ずっと目が覚めなくて、わ、わたし、死んじゃったとぉ……」グスグス

佐天「ずっとって……私、何日くらい眠ってたの?」

初春「びえええええええええええええん!!!」

佐天「いや、泣いてないで答えてよ……」


医者「その質問には僕が答えようかね?」610 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/01(木) 21:46:58.97 ID:D7fRJFko
佐天「先生……」

医者「さて、君はちょっとだけ席をはずしていてくれるかな?」

初春「う……ひっく……は、はい……」グシグシ


がちゃっ ばたん


医者「さて――――と。何から話そうか。ああ、まず今が何日かって話だったね?
    今は11日……君が退院して入院してきたあの日から二日たってるね」

佐天「二日も私は眠りっぱなしだったんですか」

医者「何しろ血液量が圧倒的に足りてなかったからね?ここへ運び込まれてきたときは、
    正直あまりの血の少なさにさすがの僕も驚いたね」

佐天「先生が驚くってことは相当死にかけだったんですね―――惜しかったな」ぼそっ

医者「うん?何か言ったかい?」

佐天「いえ何も。それで、私の怪我の状態はどんな感じなんですか」

医者「所々の血管が破裂しているのと腹部へのダメージが大きかったね。けどま、あと一週間もすれば
    ある程度は治るだろうね?」

佐天「そうですか」

611 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/01(木) 22:01:39.63 ID:D7fRJFko
佐天「そういえばひとつ聞きたいことがあるんですけど、コレ、作るのに先生も一役買ってますよね?」

医者「……幻想御手、かい?」

佐天「ええ。木山先生一人じゃ、こんなもの作れないと思ったんですよ。使ってみてわかりました。AIM拡散力場の
    理論や『自分だけの現実』を周囲からくみ上げる技術なんて、今の学園都市をもってしても不可能なはずです」

佐天「まぁ、細かい推論なんてどうだっていいんです。結論として、先生がかかわっているかどうか。
    それだけが知りたいんです」

医者「まあ別に隠すようなことじゃないからね。確かに僕も協力しているよ。主に設計の部分をだけどね?」

佐天「やっぱりそうですか。なら聞きますけど、これを使うのは私だってことも知ってましたよね?」

医者「ああ、知っていたとも」

佐天「じゃあこれを使って私が何をしようとしているのかも、知っててもおかしくないですよね?先生なら」

医者「そうだね」

佐天「―――止めないんですか」

医者「止めてほしいのかい?僕の仕事は患者を死なせないこと。治すこと。そして患者に必要なものであれば
    なんでも揃えるからね。どれだけ何を言おうと無駄なのなら、せめて死なないように手を尽くしてあげるだけだ」

佐天「……そうですか」

医者「別に何をするなとは言わない。君の人生に口を出すつもりは無い。けれどこれだけ言わせてくれ。
    ―――生きていれば、僕が治す。だから、後悔のないように行動しなさい」

佐天「―――わかりました。ありがとう、ございます」

医者「それじゃあ僕はそろそろ戻ろうかね?お大事に」

がちゃ ばたん



佐天「―――後悔のないように、かぁ。それが一番、難しいんだけど。
    でも、まぁ。やることなんて、目が覚めてから決まってるんだけどね」

614 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/01(木) 22:34:30.99 ID:D7fRJFko
がちゃ 

初春「佐天さあああああああああああああああああああああああああああああああんっ!!!!!」がばぁっ

佐天「ごふぅっ!?」

初春「もう!無茶ばっかりして!!この馬鹿!馬鹿佐天!!」

佐天「ちょ、初春ストップ……お腹!私お腹怪我してるから!!」

初春「あ!ご、ごめんなさいっ!!」

佐天「い、や……まあ、大丈夫だけど、ね?そういえば初春は大丈夫?怪我とかしてない?」

初春「え、私はちょっと擦り傷とか打撲程度でしたけど……そうだ、佐天さん、私聞きたいことがあったんです」

佐天「……なにかな飾利くん」

初春「ふざけないでください」

佐天「……わかってるよ。何だ、全部見てたんだ」

初春「はい―――何時の間に、あんなに強くなったんですか?」

佐天「根性?」

初春「ふざけないでください、って言ってるじゃないですか!」

615 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/01(木) 22:38:48.53 ID:D7fRJFko
佐天「いやあふざけるもなにも大真面目だよ?根性出せば何だっt」

初春「佐天さん」

佐天「……ごめん」

初春「……そこまでして、話たくないんですか」

佐天「……ごめん、初春」

初春「―――いえ。話したくないって言うんなら、それでいいんです。けど、」

初春「無茶だけは、しないでください―――絶対に、危ないことはしないでください」

佐天「……うん。ごめんね初春。心配かけて」

初春「ふふ、私は佐天さんの保護者ですからね。保護者は心配かけられてなんぼです!」

佐天「何をー?どっちかって言うと保護者は私でしょ?この初春めー」がしがし

初春「きゃう!?ひ、変なとこ触んないでくださいよぅ佐天さぁん!」

佐天「どうだー参ったかーあはははは」

619 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/01(木) 22:45:19.64 ID:D7fRJFko
初春「お、おかえしですっ!!」がばっ

佐天「ひぁっ!?ちょ、どこ触ってんのさぁ、ぁんっ、ちょ、やだぁっ」

初春「ふふ、佐天さんのよわいところはぜーんぶ知ってますから。こことか、ですよね?」つー

佐天「くぁぅっ!あっ、うぁぁぁあああ……!」ビクンビクン

初春「あー佐天さんすっごい可愛い声だすんですね……じゃあ、こことかどうですか?」さわっ

佐天「ふぁぁぁ……っ」ゾクゾクッ

初春「そしてここを経由してこうやって……」つぃー

佐天「あっ、やぁ、そこやだぁ……」

初春「嫌とか言っちゃって、だらしない顔してますよ?」くちゅっ

佐天「……っくぁぁぅぁ……!み、みはぁ……噛まないでぇっ……!」プルプル

初春「ひゃへんひゃんはほうはれるのはふきれひたもんれ?」もごもご

佐天「喋っちゃだめぇぇっ……!」ビクンッ

621 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/01(木) 22:51:04.09 ID:D7fRJFko
ミサカ「いい加減になさい、とミサカはハワイアンに向かってチョップを喰らわせます」

初春「あいたっ」

佐天「妹さん……た、助かったぁ……」

初春「助かったってどういうことですかぁ……」

佐天「え、だってもう少しで初春に犯されるとこだったし」

初春「えっ」

佐天「えっ?」

ミサカ「客観的に見て、今のはハワイアンが涙子を犯そうとしていましたが、とミサカは今見たことをありのままに話します」

初春「……犯す?私が?佐天さんを?」

ミサカ「いえす、とミサカは肯定します」

初春「……ふにゃー////」ぼっ

佐天「初春っ!?頭の花がいきなり花粉撒き散らし始めたけど大丈夫!?」

624 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/01(木) 22:59:22.95 ID:D7fRJFko
ミサカ「なるほど、このハワイアンはどうやら無自覚に涙子を襲っていたようですね、とミサカは推測しつつ団扇で
     花粉がこっちにこないようにあおぎます」パタパタ

佐天「うぅーん、たまにおかしなスイッチ入るとは思ってたけどそういうことかー」パタパタ

初春「あ、あれは、ただのスキンシップで、だってさてんさんだってスカートとかめくってくるし……」ごにょごにょ

ミサカ「時にこの花粉で自家受粉はしないのでしょうか、とミサカはぶっちゃけこのありえない現象に首をかしげることなく
     実に科学者っぽい言葉を口にします」ぱたぱた

佐天「自家受粉したら次は種をまくのかなぁ。シードキャノン、とかガトリングシードとかできそうだねぇ」ぱたぱた


ミサカ「いやぁそれはねーよ、とミサカはつっこみます」ぱたぱた

佐天「ところであの花粉が私達についたらどうなるのかな?」ぱたぱた

ミサカ「想像したくもありません、とミサカは団扇をあおぐ手を休めることはありません」ぱたぱた

626 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/01(木) 23:05:46.28 ID:D7fRJFko
――――。

佐天「大丈夫?初春」

初春「あ、はい、すみませんとりみだしちゃって」

佐天「いや別にいいけど―――っと、髪になんかついてるよ?花とは別に……じっとしててね」

初春「いやぁ駄目です触っちゃだめです妊娠しちゃいます!!」ばっ

佐天「何言ってんの!?」

ミサカ「どうやらまだ錯乱しているようですね、とミサカは分析します」

初春「……はっ!ご、ごめんなさい佐天さん、つい……」

佐天「何がつい≠ネの……」

初春「と、とにかく今日はもう帰りますね!早く怪我治してください!」

佐天「ああ、うん。ありがとね、初春」

初春「いえいえ―――それじゃまた、佐天さん」

佐天「うん――――さよなら、初春」

初春「……?ええ、じゃあまた」

がちゃ ばたん

628 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/01(木) 23:09:04.15 ID:D7fRJFko
ミサカ「さて、それではミサカもそろそろおいとましましょうか、とミサカはドアノブへ手をかけます」

佐天「?結局妹さんは何しにきたの?」

ミサカ「いえ、部屋の前を通ったら何やら怪しい気配がしたので覗いてみただけです、とミサカは説明します」

佐天「ああ、そうなんだ」

ミサカ「ですが今回の担当もミサカなので、何かありましたらそちらのナースコールでどうぞ、と
    ミサカはベッドの横を指さします」

佐天「ん、了解。それじゃさよなら、妹さん」

ミサカ「?まあまた後で会いますが、それでは、とミサカは部屋を後にします」

がちゃ ばたん



佐天「―――――さよなら、初春。妹さん」

633 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/01(木) 23:21:00.84 ID:D7fRJFko
初春「(わ、私が今までしてきたことって佐天さんを襲っているように見えてたのかな……あわわ、だったらどうしよう)」カァー

御坂「あら、初春さん」

初春「うひゃいっ!?」

白井「どうしましたの突然大声上げて」

初春「あ、いえ、ちょっと考え事を……御坂さんと白井さん、なんで病院なんかに?」

御坂「佐天さんのお見舞いに決まってるじゃない。初春さんもでしょ?」

初春「あ、ええまあ。今終わりましたけど」

白井「佐天さんはまだ目を覚ましませんの?」

初春「いえいえ、さっき目を覚ましました。特にどこもおかしなとこはないそうで、ちょっとお話してきました」

御坂「あ、佐天さん目が覚めたんだ!よかったぁ……」

白井「それにしても初春ったらひどかったですの。佐天さんが集中治療室に運びこまれた時は
    わんわん泣いてそれはもう」

御坂「ま、仕方ないと思うけどね。私も黒子がそんな状況になったらとりみだしちゃうかもしれないし」

白井「……!お姉さま……そんな、そんなに黒子のことをおもtt」

御坂「とまあ何時も通りのやりとりはこれくらいにして、」

白井「」

御坂「もうちょっとだけ時間ない?初春さん」

初春「え?別に大丈夫ですけど」

御坂「よし。それじゃ黒子、ひとっぱしりしてケーキでも買ってきて?」

白井「……お姉さま、黒子はパシリじゃありませんの。けれどお姉さまの頼みごとならば―――というよりも、
    折角佐天さんが目を覚まされたのですからそれくらいの見舞いの品を用意するのは当然ですの。しばしお待ちを」シュンッ

635 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/01(木) 23:28:47.82 ID:D7fRJFko
御坂「ちょろいわ」

初春「いやぁ今のは別に御坂さんの功績じゃあ……」

御坂「……うん、知ってる。まあ、それだけ佐天さんも皆に好かれてるってことなんだろうねー。
    初春さんなんて毎日面会謝絶時間までいるくらいだし」

初春「――――私のせいでああなったんですから、当たり前ですよ」ぼそっ

御坂「?なにかいtt」

白井「戻りましたのっ!」

御坂「早っ!まあいいわ、それじゃ行きましょうか」


とんとん

御坂「佐天さーん、はいるわねー」がちゃ

白井「……?居ませんの」

初春「トイレですかね?」

御坂「……ねぇ、黒子、初春さん。これ、何かな」

白井「……封筒?」

初春「ん、隅っこに何か書いてありますね―――初春へ、って私宛?」


636 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/01(木) 23:36:18.52 ID:D7fRJFko
拝啓
 
 夏の残り香もすっかり去り、秋の爽やかな空気を漂わせる今日この頃ですが、初春はどのようにお過ごしでしょうか。
 きっと頭の花も秋の七草に彩られて、セピア色の落ち着いた雰囲気を漂わせていることだと思います。
 さて、このたびは私佐天涙子は真に勝手な事情ながら失踪させていただくことにします。
 詳しい理由を書くことが出来ない無礼、どうかお許しください。
 そして以下は御坂さんと白井さんにも伝えたい言葉です。どうか、後ほどお伝えください。

  ―――初春へ
              守れなくてごめん。

  ―――白井さんへ
              どうか御坂さんが無茶をしないように。

  ―――御坂さんへ
              今なら八月の御坂さんの気持ちが、よくわかります。

 では、お身体にお気をつけて。
                              敬具


白井「……?なんですの、これ?佐天さんなりのいたずらですの?」

御坂「――――(八月の私、って―――ま、さか)」

初春「……さよなら、って。もしかして、」




八月十一日。
その日、佐天涙子は三人の前から姿を消した。


―――幕間 終

642 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/01(木) 23:55:59.79 ID:D7fRJFko
――――10月13日

初春「…………」カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ

白井「おはようございますのー……って、またこんな朝早くからやってましたの、初春」

初春「…………」カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ

白井「……初春?」

初春「…………」カチャカチャカチャカチャカ ガチャンッ

白井「初春!?」

初春「……しらい、さん……?」

白井「……っ!初春、正直に答えなさい―――昨夜、あれから帰りましたの?」

初春「……帰ってる暇なんてありません」

初春「はやく、佐天さんを見つけないと―――」

白井「だからって一晩ぶっ通しで学園都市中の監視カメラをチェックするなんて無茶すぎますの!
    ハックがバレないように偽装工作を繰り返しながらだなんて、さすがの初春でも身体がもちませんのよ!?」

初春「……黙っててください……」

初春「なんで佐天さんがいなくなったのかわかりません―――けれど、あんな居なくなり方、どう考えても安全なことを
    する人間のやりかたじゃありません」

初春「思えばおかしかったんです……いつもはバイバイ≠ニかまたね≠ネのに、なんで、あの時さよなら≠セなんて……!」

初春「佐天さんが何をしていようと―――親友を危ない目に会わせるわけにはいかないんです……!」

白井「だからと言って熱まで出してやり続けてどうするつもりですの……ほら、一度倒れたらもう起き上がれないでは
    ないですの?もともと体力が無いのに無理なんてするからこうなるんですの」

初春「……けどっ……」

白井「大丈夫ですの―――心配しているのは初春だけではありませんのよ」


―――――。


御坂「――――さて。それじゃいっちょ、やりますか」

644 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/02(金) 00:03:36.76 ID:RpS8RBEo
10月11日のあれ以来、佐天涙子は完全に姿をくらましていた。
最初は何かのいたずらかと思っていた三人も、病院内に彼女が居ないことがわかると顔色が変わった。
初春は違和感が確信に変わり、御坂はその一文から何をするつもりかはともかく、どんな道を進もうとしているのか
程度は理解していた。白井はぽかんとしていただけである。
10月12日。
初春はまず学園都市全域の監視カメラに侵入し、セキュリティを誤魔化しつつカメラを全てチェックしていた。
10月11日の記録の一部に佐天涙子の姿があったが、しかしその姿は忽然と消えさり追跡することは出来なかった。
それを聞いた御坂は、佐天の交友関係とその状況を考え、ある仮説を立て、それを二人に説明した。
初春はなるほど、と頷き白井はぼんやりしていた。それならば監視カメラを探る必要性は0に等しい、とはいえ
「もしかしたら現れるかもしれない」という希望を胸に、初春はひたすらに監視カメラをチェックしていた。
その頃白井はですのですのと叫んでいた。己の無力を噛みしめながら。

そして10月13日。

御坂美琴は、木山春生の研究所の前に立っていた。

645 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/07/02(金) 00:11:19.80 ID:Dnsyv2I0
>>636の手紙の日付は十月十一日の訂正でいいのか?

646 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/07/02(金) 00:12:17.97 ID:Dnsyv2I0
間違えた。手紙の日付じゃなくて普通の地の文だ

647 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/07/02(金) 00:15:10.68 ID:WTBn.YAO
だよな
8月じゃ一方さんも暗部落ちしてないわけだし

648 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/02(金) 00:20:34.81 ID:RpS8RBEo
御坂「私だけど」

木山「ああ、久しぶりだね。元気にしてたかい?」

御坂「世間話をしにきたわけじゃないのよ―――佐天涙子。彼女について知っていることを全て話しなさい」

木山「おいおい随分高圧的だな。まるであの時のようだ。それに、彼女についてなら君達のほうがよく知っているだろう?」

御坂「そういうことを聞いてるんじゃないの!『幻想御手』―――調べはついてるのよ」

木山「……まあ、特に隠していたわけじゃないが……ああ、そうか。あの御坂妹君経由か」

御坂「MNW、ね。病院にいたあの子が教えてくれたわ」

木山「……さて、話すと言っても何を話そうか」

御坂「知ってることは洗いざらい、よ」

木山「そうか―――ならまず、幻想御手について講釈させてもらおうとするかな」

649 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/02(金) 00:22:30.72 ID:xsFO.9Ao
>>その頃白井はですのですのと叫んでいた。
おい黒子wwwwwwww

659 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/02(金) 21:07:03.65 ID:RpS8RBEo
―――――。

木山「―――とまあ、こんなところだな」

御坂「……馬鹿げてる。他人のAIM拡散力場から自分だけの現実≠逆算してその中から演算式を引き出す?
    そんなこと、出来るわけないじゃない」

木山「しかし出来ているんだからしょうがない。ま、副作用についてはわからんがね」

御坂「わからないって……そんな無責任なものを佐天さんに渡したの?」

木山「彼女は了承したよ。そんなものを怖がっていても強くなれない、だとさ」

御坂「(……違う。違うよ佐天さん―――そんなもの使って手に入れた強さなんて……)」

御坂「……なんで佐天さんのためにそんなもの作ったのよ。どう考えても全うな方法で作ったものじゃないわよね」

木山「まあね。なんでかと聞かれると、そうだな―――10月の始めに彼女がここに来てね」

木山「その時に幻想御手が欲しいと言ってきたんだ。しかしアレは脳波ネットワークを利用したものだろう?
    だから使用出来ないと伝えたら大層残念がってね……だから理論はあったものをツテを使って完成させたのさ」

木山「君には夏に言ったね。私は目的のためなら手段を選ばない。そして、そういう人間は好きなんだ。
    彼女がどんな目的を持っているにしろ、一度昏倒しておいてまたそれに手をだそうだなんて、よほど
    大切な目的があるんだろうね」

木山「彼女は私にとっての恩人だ。出来る限りのサポートはしてあげたかったのさ。
    彼女の人生は彼女のものだ。彼女が何をしようとしていたとしても、止める権利は私にはない」

御坂「……」

木山「だが―――君も私にとっての恩人だ。だからこうして話している。
    せいぜい救ってやることだ。それが君に出来て私に出来ないことだよ」

御坂「……そもそもアンタが佐天さんにあんなものを渡さなければ……!」

木山「さて、それはどうかわからないな。まあ、大人になればわかるさ」

御坂「―――いいわ。これ以上は話にならなさそうね」

660 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/02(金) 21:11:16.14 ID:RpS8RBEo
御坂「どうやら佐天さんの居場所も知らないみたいだし―――」

木山「確かに場所は知らないが、心当たりならあるぞ」

御坂「……何処よ」

木山「いや、何処というよりだな。確か佐天君が居なくなったのが一昨日だったか。
    実は私の助手の御坂妹君も一昨日から来なくなってしまってね」

木山「佐天君と御坂妹君は仲がよかったようだ―――もしかしたら、一緒に行動しているのかもしれない。
    確か、MNWとかいうネットワークで妹達は繋がっているんだろう?だったら見つけるのも容易いんじゃないかい?」

御坂「ここの妹達が……ふぅん、なるほどね。わかったわ」

木山「気をつけることだ。今回の幻想御手はモノが違うぞ」

御坂「ふん―――私が偽物の力に負けるはずがないわ。いっぱつぶん殴ってでも止めてやる」

661 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/07/02(金) 21:13:37.57 ID:/f5Tw06o
とりあえずぶん殴るとか上条さんの影響受けまくりっすねww

662 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/02(金) 21:14:57.50 ID:RpS8RBEo
御坂「MNWから逆算して居場所を特定、か。それで見つかればいいけれど」

御坂「……」

御坂「……佐天さんがどんな目的を持ってるかなんて知らない」

御坂「けど、あの時の私の気持ちがわかるって言うんなら、それはろくな目的じゃない」

御坂「―――佐天さんを、あんな暗いところへ居させてたまるか」

御坂「初春さん、泣いてたじゃない……あの馬鹿」

御坂「親友を泣かせてまで達成しなきゃならない目的なんて、絶対間違ってる」

御坂「だから止めてやる。恨まれることになっても、絶対に」

―――美琴サイド 一旦停止

663 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/02(金) 21:27:40.86 ID:RpS8RBEo
―――巻き戻ってイギリス静教ネセサリウス

神裂「こ、これは……」

ステイル「同封されていた手紙には神の右席、『左方のテッラ』だと書いてある。フランスで直接戦闘した
      天草式の五和という子にも確認をとったが、間違いないそうだ」

神裂「……何故、このような古風な挑戦状≠送りつけてきたと思いますか?」

ステイル「さて、ね……何か策があるのか、それともただ単に正々堂々勝負、とでも言いたいのか」

神裂「そういえば、手紙にはなんと?」

ステイル「……直接読めばいいだろう」

神裂「?……―――……なっ……!!」

神裂「馬鹿な……上条当麻に関してはわかります……しかし、何故この子も!?」

ステイル「『使徒十字』の件と『C文書』の件……聞くところによると、9月30日のあの時も神の右席の一人と勝負し、
      簡単にあしらったらしい。そこまですれば、抹殺対象にもなるだろう」

神裂「くっ……この子は一般人です!こんなことって」

ステイル「いや、あの子は自分の意志でこちらの世界に足を踏み入れた。ある意味、当然の結果と言ったところだろう」

神裂「しかし!……」スッ

ステイル「……行くのかい」

神裂「ええ。上条当麻と佐天涙子の護衛には建宮斎司の始めとする天草式についてもらうことにします。
    私は、何かあったときのために後ろで控えています」

ステイル「相手の力は未知数だ―――聖人といえど、油断するなよ」

神裂「わかっています」

―――神裂サイド 終

665 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/02(金) 21:42:29.13 ID:RpS8RBEo
――――10月11日 夜

佐天「……よし」

佐天「前に左天さんがやってた身体の修復―――なんとか私だけでも出来た。
    随分ひどい塞がり方しちゃったけど、まあいいか……どうせ、もう誰かに見せることなんてないんだし」

佐天「―――嘘ついてごめんね初春。でももう謝っておいたから、それで許してね」

佐天「さて、と」

佐天「一方通行さんは確かに言ってた―――私を守るために暗部へ入った、って」

佐天「私なんかを守ってくれるなんて、それは凄く嬉しいけど―――だけど、暗部なんて場所へ堕ちたのも
    私のせいなんだ。うん、これは間違いない」

佐天「それじゃあどうすれば一方通行さんを暗部から救い出せるのかって考えると、結局答えなんて
    簡単なことなんだよね」

佐天「――――もっと辛いかと思ってたんだけどなぁ。この選択肢。でもなんだか、もういいや。
    もう疲れちゃった―――もう、何がどうなってもいいや」

佐天「ごめんね、初春。それから御坂さんと白井さん。もし私と仲が良かったからって変な目で見られちゃったら、
    本当にごめん。それからお父さん、お母さん、こんな娘でごめんなさい――――っと」

佐天「ま、反省はこんなもんか。さて、それじゃ行こうかな」


ミサカ「……?こんな雨の中で傘もささず、こんな所で何をしているのですか?とミサカは尋ねます」

668 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/02(金) 21:55:45.57 ID:RpS8RBEo
佐天「ありゃ、ミサカちゃん」

ミサカ「風邪をひいてしまいますよ、とミサカは傘を差しだします」

佐天「大丈夫大丈夫。それにしても、なんでこんなとこに?」

ミサカ「ああいえ、ミサカはあんまり人ゴミは好きではありませんから、こうして実験中使用していた
    証拠隠滅マニュアルにのっとったルートを経由して買い物をしたりしているのですよ、と
    ミサカは片手にもったビニール袋を持ちあげます」

佐天「そうなんだー。あ、てことはミサカちゃんは証拠隠滅マニュアルのルート全部知ってるの?」

ミサカ「ええまあ。それで、なんでこんなところにいるんですか?とミサカは再度尋ねます。
     ここは一応路地裏ですし、涙子が来るような場所ではないと思うのですが、とミサカは疑問をあらわにします」

佐天「んー……ちょっと、暗部に喧嘩売ろっかなー、と思ってね」

ミサカ「……今なんと?」

佐天「暗部に喧嘩売ろうと思って。けど、何からしようかわからなくってさ。とりあえず、皆とさよならするためにこうして
    ちょっとだけ覚えてた監視カメラとかに映らないところで休憩してたんだけどね」

ミサカ「……暗部なんてモノに手を出してもロクなことはありませんよ、とミサカは制止を呼びかけます」

佐天「まあそうなんだけどさー。けどね、どうしてもやらなくちゃならないんだ」

ミサカ「……何故?」

佐天「私を守って暗部へ堕ちちゃった人がいてね。その人を助けるためにある人を殺さなきゃいけないんだけど、
    どうしてもその機会っていうか、チャンスっていうか、決心っていうか、そういうのが来ないんだ」

佐天「だからまずは暗部に喧嘩をうってそのチャンスを作り出すことから始めないと、と思ってね」

ミサカ「……それは、涙子が絶対にしなければならないことなのですか?とミサカは確認をとります」

佐天「うん。私が動かなきゃ始まらないし、私が動かなきゃ終わらない。だから頑張るんだ」

ミサカ「……ふふ、なるほど。そういうことですか」

佐天「?」

ミサカ「わかりました―――では、ミサカもお手伝いしましょう、とミサカは涙子の右手を掴みます」

669 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/02(金) 22:01:49.16 ID:RpS8RBEo
佐天「え、駄目だよ。だって危ないもん」

ミサカ「そんなことは承知です。とミサカは断言します。ですが我が愛しの涙子が助けを必要としているのならば、
     それのお手伝いをしないわけにはいかないでしょう、とミサカは言い放ちます」

佐天「いや別に助けてなんて言ってないけど」

ミサカ「証拠隠滅マニュアルのルート―――これが必要なのでしょう?とミサカは答えなんてわかりきっていますが
    一応問いかけます。確かに紙媒体に写すことは出来ますがそれでは時間がかかりすぎてしまいます。
    それよりミサカは直接涙子と共に行動した方が早いでしょう、とミサカはまくしたてますが、どうですか?」

佐天「そりゃあまあそうだけど―――じゃあ、手伝ってもらえる?」

ミサカ「その言葉が聞きたかった!とミサカは某ヤブ医者の真似をしてみます!」

佐天「そっか、じゃあちょっとだけ長い間逃避行って形になるけど、よろしくできるかな?」

ミサカ「逃避行……二人で逃避行……かけおちですね!とミサカはテンションがあがってまいりました!」

佐天「(うーん……まあ、適当なところで別れたらいっかな。こんなことに、ミサカちゃんを巻き込めないし)

670 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/02(金) 22:05:58.24 ID:RpS8RBEo
ミサカ「そういえば、ひとつ気になっていたのですが、とミサカは握った右手へと視線を落とします」

佐天「ん?……ああ、この篭手のこと?」

ミサカ「はい、とミサカは頷きます」

佐天「これは、まあ、たぶん邪魔が入るだろうからそれ対策かな」

ミサカ「邪魔が入るのならミサカが排除しますが、とミサカは提案します」

佐天「いやぁ、たぶんミサカちゃんじゃ勝てないと思うからさー。まあ、それが何時になるかわからないけど」

ミサカ「むっ……ミサカだって結構強いんですよ?とミサカは弱く見られたような気がしてむっとします」

佐天「えー」

ミサカ「なんですかその不審な目は……ま、来るべき時が来たらお見せしましょう、とミサカは今回はおとなしく引き下がります」

佐天「そっかい。じゃあ今日はそろそろ休憩しよっかな。どっかいいとこある?」

ミサカ「そうですね、この近場だと―――」

691 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 19:33:08.99 ID:tGTR/Cwo
―――10月12日 朝

佐天「……ん。朝、か」

佐天「おはようミサカちゃん、朝だよ」

ミサカ「むー……もうちょっと……とミサカは……」

佐天「だぁーめぇー。ほらぁ、起きて起きてー」

ミサカ「……涙子がちゅぅしてくれたら起きます、とミサカは提案してみたり」

佐天「ミサカちゃんがすぐに起きてくれたらしてあげるよ?」

ミサカ「本当ですかっ!?とミサカは跳び起きます!」

佐天「嘘です。ほら、早く顔洗いに行こう?」

ミサカ「……ちくしょう、とミサカはこれが惚れた弱みかと悔しく思いますびくんびくん」


―――夜が明けた。
     私は昨夜ミサカちゃんが案内してくれた、第19学区の廃屋で寝泊まりした。
     確かにこの学区なら人の目は届きにくいし、動きも制限されにくい。
     
佐天「けど、こんな場所ならスキルアウトとかがいそうな気がするけど」

ミサカ「コンビニも何もない街ですから不便なんでしょうね、とミサカはスキルアウト達もやはり
    現代っ子であることをほのめかします」

692 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 19:36:49.84 ID:tGTR/Cwo
ミサカ「さて、それでは食料の調達に行ってきますね、とミサカは顔を洗って準備をします」

佐天「でもいいの?買いにいってもらって」

ミサカ「涙子はあまり表に出たくないのでしょう?ならここでおとなしくしていてください、とミサカは
    友達想いな面を見せます」

佐天「……うん、ありがと。ミサカちゃんがいてくれて助かったよ」

ミサカ「〜〜〜っ!う、嬉しいことを言ってくれますね、とミサカは顔を抑えながら身もだえします。
    さて、何を買ってきましょうか」

佐天「んー……あんまり食欲ないし、コーヒー買ってきてくれないかな。ブラックならなんでもいいや」

ミサカ「わっかりましたー、とミサカは元気よく飛び出します!」

佐天「おねがいねー」

694 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 19:40:37.01 ID:tGTR/Cwo
佐天「ふぅ……さて、これからどうしよっかな」

佐天「まずは一方通行さんを見つけないと……それで、どこを潰したらいいか聞こうかな。
    それにしても一方通行さんは怒るだろうなぁ、こんなことしてたら」

佐天「でもしょうがないよね。うん、しょうがない」

佐天「ミサカちゃんが戻ってくるまで暇だし、能力の練習でもしてよっかな」


―――――。


ミサカ「ただ今戻りました、とミサカは壊れかけのドアを開きます」

佐天「おかえりー。ありがとね」

ミサカ「いえいえ、礼にはおよびません。ところで本当にコーヒーだけよかったのですか?
     とミサカは大量に買い込んできた缶コーヒーの袋を涙子に手渡します」

佐天「うん、これでいいんだ」

695 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 19:48:33.98 ID:tGTR/Cwo
――――。

ミサカ「それで、これからどうするつもりで?とミサカはたずねます」

佐天「まず暗部の人間をとっ捕まえないといけないんだけど、そうそう出会えるもんじゃないからねー」

ミサカ「いっそのこと、適当な研究所を襲撃しましょうか?とミサカは提案します」

佐天「う、うーん……私の事情だけで関係ない研究所を壊すのはさすがに申し訳ないし……」

ミサカ「では今からミサカが違法な研究をしている研究所を調べてきますから、そこを壊滅させるというのはどうでしょう?
    とミサカは先ほどよりも少々具体的な案を提案します」

佐天「そんなことできるの?」

ミサカ「少々時間はかかりますが、できないことはないですよ、とミサカは自分の情報収集能力を自慢します」

佐天「それじゃあそうしよっか。本当にありがとね、ミサカちゃんがいなかったらこんなにスムーズに進まなかったなぁー」

ミサカ「いえいえ、御礼を言われるのは、涙子の目的が終わったあとですよ、とミサカは内心凄く喜びながら
    情報収集へと駆け出します。それではだいたい一日後にお会いしましょう」

佐天「うん、よろしくねー」

696 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 20:11:42.47 ID:tGTR/Cwo
佐天「……痛」

佐天「無理やり傷口塞いだとはいえ……やっぱりまだ駄目、かな」

佐天「今は動けることはないし、ちょっと身体休めようかな……」ぽすっ

佐天「……ふぅ」

佐天「……何も考えるな。今はただ、一方通行さんを見つけることだけを考えよう」

――――――。


――――10月13日 昼

佐天「―――――ん」

佐天「……今何時―――って、うわ、一日以上眠ってたんだ」

佐天「やっぱり結構身体に負担かかってるのかなぁ……けど、ミサカちゃんからまだ連絡無いし」

佐天「……まだ雨が降ってる。秋雨、ってやつかな」

佐天「―――――まあ、だから何って話なんだけど」



ミサカ「遅くなりました!とミサカは部屋へとびこみます」

佐天「あ、おかえり―――ってびしょぬれじゃん!」

ミサカ「え、ああ、傘をさす手間が惜しかったので、とミサカは別段気にした風もなく答えます」

佐天「駄目だって!風邪ひいちゃうから……ちょっとじっとしててね」カチッ

ミサカ「え?―――おおお?衣類がかわいていきますとミサカはなんだか不思議な感覚につつまれます」

佐天「―――ん、これでよし、っと」

ミサカ「何をしたんですか、とミサカは問いかけます」

佐天「ベクトル操作と熱放出の応用かな……自分の身体に溜めた熱をこういう形でも放出できるようになったんだー」

佐天「それより、研究所のデータどうだった?」

ミサカ「はい、これがどうにも怪しい感じの研究所のリストです、とミサカは紙の束を手渡します」

佐天「ん……多いね。さすが学園都市、叩けば埃はいくらでも出てくる、か」

697 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 20:20:45.70 ID:tGTR/Cwo
佐天「さて、それじゃ行きますかね―――ミサカちゃん」

ミサカ「はい、なんでしょう?とミサカは返事をしました」

佐天「こっから先は一方通行になる―――引き返せなくなるから、ここで、」

ミサカ「はっは、馬鹿なこと言わないでください、とミサカは涙子の肩をつかみます」

ミサカ「涙子がいない世界に意味なんてありません―――どれだけ危険でも、引き返せなくても、
     ミサカはずっと着いていきます……ずっと一緒です、とミサカは涙子の眼をまっすぐ見て自分の想いを伝えます」

佐天「……そっか。ありがとね、ミサカちゃん。ははっ、なんだか最近ずっと御礼言ってるなぁ―――ねぇ、ミサカちゃん」

ミサカ「はい、なんでしょう?」

佐天「全部終わったらさ―――どっか遠くに行こっか。学園都市なんて関係ない場所で、監視の届かないような田舎とかで、
    一緒に暮らすのもいいと思うんだ」

ミサカ「……それは若干死亡フラグを含んでいる気がしますが、とてもいい提案だと思います、とミサカはあれ?これって告白
     なんじゃね?とどきどきしてしまったりしまいます」

佐天「不吉なことを……いやまあ、外れてないけど」


佐天「それじゃ行こっか―――最後の戦いだ」

698 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 20:33:11.50 ID:tGTR/Cwo
―――10月13日 御坂サイド

御坂「14444の居場所は特定できない?どういうことよ」

ミサカ「通常ならばミサカ達は常にMNWに接続しているのですが、検体番号14444は色々あって普段はMNWから
     接続を切っている状態にあります、とミサカは説明します。
     この状態では最終信号の強制力を使用しなければ特定は不可です、とミサカは付け加えます」

御坂「じゃあその最終信号ってのに頼めばいいわけね?」

ミサカ「それはそうなのですが、最終信号は現在メンテナンス中でたいした力をもっていません、とミサカは
     あのガキの無力さに苛立ちます」

御坂「……折角見つける手がかりが出来たと思ったのに、これじゃあ……」

ミサカ「……いえ、ご安心ください」

御坂「?何がよ」

ミサカ「実はミサカ達にもいろいろ居まして、その中でも尾行や追跡を得意とする者に14444を探すよう連絡した結果、
    どうやら見つかったようです、とミサカはMNWから流れてくる情報を逐一チェックしながらお知らせします」

御坂「ほんとっ!?」

ミサカ「ええ―――なるほど、どうやら彼女達は第19学区にいるようですね、とミサカは10700からの連絡を報告します」

御坂「第19学区……そっか、あそこなら隠れるのには丁度いいわけか」

ミサカ「どうしますか?10700は足止めくらいはすると言っていますが、とミサカは10700の声を代弁します」

御坂「うん、そうしといて。私もすぐに行くから」

ミサカ「了解です、とミサカは10700へ連絡を送ります―――お姉さま」

御坂「うん?何よ」

ミサカ「どうか、佐天涙子の事をよろしくお願いします―――とミサカは何もできそうにない自分を恨めしくおもいます 」

御坂「……はっ、誰に言ってんのよ。佐天さんは私達の友達よ?よろしく頼まれなくても、ちゃんと連れ戻してやるわ」


御坂「待ってなさい佐天さん……叱るくらいじゃ、すませないんだから」

699 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 20:39:09.13 ID:tGTR/Cwo
佐天「それじゃあまず、この学区にあるこの研究所から行こっか」

ミサカ「そうですね、とミサカは―――」



10700「行かせません、とミサカは二人の前に立ちはだかります」


佐天「っ!?」

14444「……10700、ですか。なるほど、確かに同じ妹達で、しかも追跡術に長けた貴女ならミサカ達の居場所を
    特定することもできますか、とミサカは腹正しく思います」

10700「そういうことです、とミサカは肯定します。
    さて、ミサカは詳しい事情はわかりませんが、オリジナルからの正式な頼みごとですから、貴女たちをここで
    食い止めさせてもらいます、とミサカは臨戦態勢に入ります」

14444「……涙子、ここはミサカが引き受けますから先へ行ってください、とミサカもまた、臨戦態勢に入ります」

佐天「……わかった、お願いミサカちゃん」だっ

10700「行かせると思いますか?とミサカは佐天涙子の前へ―――っ!?」」

14444「させると思いますか?とミサカは10700を蹴り飛ばします」

700 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 20:41:47.44 ID:tGTR/Cwo
佐天「―――これでよかった。これで、ミサカちゃんを最後まで巻き込まないで済む」

佐天「けど、そっか……意外と早かったかな、見つかるの」


佐天「―――本当に早かった。ねぇ、御坂さん」


御坂「―――佐天さん」


703 :BGMは「消えない思い」辺りで俺と同じ気持ちになれる   ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 21:40:30.21 ID:tGTR/Cwo
静かな音を立てて雨が降る。
ぱしゃり、と。前から水たまりを踏む音が聞こえてきた。
ずっと下を見て走り続けてきた私は、その音で前を向く。

―――誰が立ちはだかったのか、なんてすでに知っている。
 
早かった。思っていたよりも、ずっと。

「―――本当に、早かった。ねぇ、御坂さん」

雨の中立ちふさがる親友の名を呼ぶ。
数々の事件を共に潜り抜けてきた彼女は、今や自分の敵となって目の前に現れた。

「―――佐天さん」

御坂さんが私の名を呼ぶ。そこに、どんな感情が込められていたのかはわからない。
けれど、そんなものはどうでもいい。
今となっては、結局彼女は自分にとっての障害だ。

704 :すまん、「消えない想い」だったわ  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 21:50:00.11 ID:tGTR/Cwo
「……何してるのよ」

御坂さんが震える声で私に言った。
何をしているのか。
―――何を、しているのだろうか。
自分でも全くわからない。

―――こんなことをしても、あの人が救われるわけがないと気づいている。
     
「何してるのよ、この馬鹿!!」

御坂さんは、はりさける声で私を叱ってくれる。
よく見れば彼女の周囲にわずかばかり電気が流れているが、漏電するほど怒ってくれているのだろうか。

―――そんな彼女の気持ちが嬉しくて、私は少しだけ口元を緩めた。

「……御坂さんならわかるはずですよ。目的を達成するためには手段は選べない。
 あの八月の事件。あの時の御坂さんの気持ちが、ようやくわかりました」

「ま、さか―――死ぬ、つもりだとか、言わないでしょうね」

なんだ、わかっているじゃないか、と思う。
死ぬつもりか。私は、たぶん死ぬつもりなんだ。
そうすることで、あの人に掛けられた制約が解ける。それであの人が戻ってこられるのなら、それは安い買い物だ。

―――私が死んだところで意味がないなんて考えがよぎるけれど、それは無視しておく。

705 :すまん、「消えない想い」だったわ  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 21:59:56.74 ID:tGTR/Cwo
私では何も出来ない。
私では何も救えない。
誰かが誰かを救うなんてことは、普通の人間である自分には無理だったのだ。

誰かを救えるのは特別な人間だけだ。
それは上条さんや、御坂さんや、そしてあの人みたいな。
ただの人間が誰かを救おうとするのなら、その全てをかけなければならない。
救うとは、それだけ大変な力が必要なんだって気付いた。
だから、

「―――死んで誰かが救われるなら、それでいいと思ったんです」

だから、私は私の全てをつかって、あの人を救いだす。
それが普通。それが当然。
それくらいしなければ、私のような人間では誰も救えない。

「ふざけんじゃないわよ!!!!」

しかし御坂さんにそんな考えは通じなかったみたいだった。

「死んで誰かが救われる?そんなはずないでしょ!!犠牲を払ってまで手に入れる幸福なんて間違ってるわ。
 そもそも佐天さんが死んだら、私達が救われないじゃない!」

それは考えた。自分が死んだことで、御坂さん達に迷惑がかかるということ。
けれど、私が救いたいのは御坂さん達じゃなくて―――

「―――でも、私はあの人を救いたいんです。救わなきゃいけない。だから、ごめんって謝ったんですよ、御坂さん」

「謝らないでよ!そんなことで、私達が納得するわけないじゃない!!」

あの人と親友を天秤にかけること自体間違っていることには気づいている。
けれどそれでも、自分のせいであんなことになったのなら、私が救い出すのも道理だと思った。

706 :すまん、「消えない想い」だったわ  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 22:08:49.43 ID:tGTR/Cwo
だからそのために、私の全てをかける。
それだけだ。だから、大切な親友でさえも、切り捨てていく。

―――覚悟はしたはずだ。
     後悔に意味は無い。

「……納得してもらわなくてもいいんです。さよならは言ったはずです。別れた、はずです。
 さあ通してください御坂さん―――ここから先は、一方通行ですから」

しかし御坂さんはその場から動かない。
勿論、こんなことは解っていたことだ。御坂さんがこうしてここに現れた以上、戦いは避けられない。
ぴりぴりと帯電したまま、こちらをじっと睨みつけている。

「―――やっぱり、退いてはくれませんか」

「当たり前よ―――言いワケも、反省の言葉も後で聞くわ。一応聞いておくけど、諦めるつもりはないのね?」

「愚問ですね」

「そう―――それじゃあちょっと痛い目みるかもしれないけど、覚悟することね……!!」


こうして御坂さんとの戦いは始まった。
今となっては懐かしく感じる、かつての親友。
学園都市の頂点に立つ超能力者の第三位。
その力は十分に知っている―――だから、絶対に負けない。

雨は、いつの間にかあがっていた。

707 :BGM「Mighty Wind」  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 22:27:59.76 ID:tGTR/Cwo
雨が降る中、『妹達』の二人は相対していた。
検体番号10700は先刻検体番号14444に蹴り飛ばされたことによって、その身体を泥まみれにしている。
距離は10メートル程。互いに軍用クローンといえど、一歩では間合いをつめることは出来ない。

「……ミサカの任務は検体番号14444と佐天涙子の足止めをすることですが、」

睨みあっていた中、検体番号10700は口を開く。

「どうして検体番号14444がそれほどまでに佐天涙子に力を尽くすのか理解できません、とミサカは
 恩人への感謝、というには過ぎた行動をとっている貴女へ問いかけます」

特徴的な口調と共に検体番号10700は検体番号14444へ問いかける。
それを聞いて検体番号14444はくだらなさそうに答えた。

「―――涙子はミサカの親友だからに決まっています、とミサカは当然の答えを貴女につきつけます。
 孤独だったミサカを救ってくれた親友のためにならば、この命惜しくありません、とミサカは自分の気持ちを語ります」

「なるほど―――その気持ちはよくわかりませんが、退く気が無いということはわかりました、とミサカはナイフを構えます」

検体番号10700は刃渡り10センチほどのダガーナイフを両手に構える。
重さはほとんど無く一撃の威力に欠けるモノだが、しかし自在に扱えるそのナイフは殺すのではなく足止めをするという点においては
ある意味適しているものかもしれない。
対する検体番号14444はポケットから手袋のようなものを取り出し、装着してから拳を構える。

「―――徒手空拳で、この忍術を納めたミサカに対抗しますか、とミサカはその無計画さに笑いをこらえきれません」

「―――エモノを相手に知らせている時点で貴女の負けは決定しています、とミサカは失笑します」

「……いいでしょう、ではすぐにカタをつけてさしあげます、とミサカは息を整えます」

「それはこちらのセリフです、とミサカは構えをとります」


そして『妹達』は激突した。

709 :BGM「Mighty Wind」  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 22:38:38.95 ID:tGTR/Cwo
詰め寄ったのは検体番号10700だった。
縮地と呼ばれる技術と軍用クローンとしての身体能力を使い、その距離を一瞬でゼロにする。

(行動不能にするのならまずその四肢の機能を失わせる―――10032からは、死なない傷ならば
 あの医者が治すと言われています。躊躇なく、一瞬で終わらせてみせます、とミサカはナイフで神経を狙いに行きます)

呼吸を合わせての一撃。
それはつまり虚を突く一撃であり、通常かわせる攻撃では無かった。

しかし検体番号14444はその攻撃をいとも容易く迎撃する。
右手で振るわれたナイフが身体に届くより早く、刃の腹に左拳を下から当てて攻撃を払った。

「――――ッ!」

一瞬目を見開いて驚愕するが、すぐに次の攻撃へと切り替える。
だがその一瞬こそが致命的なスキとなった。
検体番号10700は気付いた時にはすでに後方へと吹き飛んでいた。

「がっ……!」

ぐっ、と胃から込みあがってくるものをこらえる。どうやら、鳩尾を思いっきり蹴り飛ばされたようだった。

(ぁ―――いつ、蹴られて……?)

倒れたまま先刻のやりとりを思い出そうとするが、腹部の痛みにより思考がまわらない。
検体番号14444はその場から動こうともせず、じっと立っているままだ。

710 :BGM「Mighty Wind」  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 23:00:07.74 ID:tGTR/Cwo
「……ふむ、そのナイフを吹き飛ばすくらいは出来たと思ったのですが、思ったよりやりますね、とミサカは呟きます」

そうやら検体番号14444はナイフを弾き飛ばすつもりで拳をあてたようだが、そうならなかったことに感心している。
それはつまり、自分が相手より圧倒的に上位に立っていることの自身の表れであり、そのことを検体番号10700も
正しく認識しているようだった。

「ぐっ……はぁっ―――」

痛みをこらえながら検体番号10700が立ち上がり、ナイフを構える。

(今の速さは……わかりませんが、どうやら検体番号14444はただ者ではないようですね、とミサカは
  認識を改めます。そして同時に、戦い方も変える必要があることも……?)

ここで検体番号10700は不自然な点に気づく。

「……そちらからはかかってこないんですか?とミサカは尋ねますが」

そう、検体番号14444は足止めを食らっているはずなのに自分からは動こうとはしない。
普通ならば、あのまま追撃して行動不能へと陥れてもよかったはずだ。
しかし彼女はそれをしなかった。それは何故か。

(……いえ、今はまだ考えるための材料がたりません。今はただ、相手の手の内を読み取ることが先決です)

検体番号10700は再度跳びかかる。しかし今回は先刻と違い、相手の動きをみるための戦い方だ。
検体番号14444の背後に回り込むがナイフは振るわない。そのナイフは防御のためにとっておく。
そして予想通りの迎撃がきた。検体番号14444は右へと振り返りがなら裏拳を検体番号10700の頭部へと放つが、
その一撃は腕でガードされる。しかし彼女の攻撃はこんなものでは終わらない。
裏拳を放った勢いを使って左足を反対方向へと踏み込み、そして戻ろうとする反動をつかって上段へ回し蹴りを放つ。
だがこれも腕でガードされる。

「チッ……!」

悪態をつきながら、検体番号14444は距離をとる。
追撃は、無い。

711 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/07/03(土) 23:05:46.36 ID:O6f8z6DO
ミサカ同士のガチバトルって結構貴重だな

714 :BGM「Mighty Wind」  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/03(土) 23:53:24.69 ID:tGTR/Cwo
(……防御に回ればなんとかなりそうな攻撃速度でしたが、それにしたって早すぎますね、とミサカは思案します。
 ミサカの速度は技術によるモノですが、あの速さはもっと別の何かのようです、とミサカは推測します)

検体番号10700と検体番号14444は距離を取ったまま動こうとしない。
睨みあいを続けること十数秒。不意に、検体番号10700がおかしな感覚に気づいた。

(……?なんでしょう、この肌にぴりぴりとくる感じは、とミサカは―――電磁波?
 しかし何故――――まさか、電磁波をレーダーのように使い目でなく肌でミサカの動きを読み取っていたのでしょうか、
 とミサカは考えると同時に、しかしそれはミサカ達『妹達』では出来ない芸当であると思いだします)

そう、第三位の御坂美琴であればそれも可能だろう。
しかし、『妹達』である彼女達にはそれが出来ない。それゆえの暗視ゴーグルである。

(ですが、それ以外にこの感覚とあの速さの説明はできません……とミサカは頭の悩ませます。
 それにもしレーダーであるとすれば、迎撃ばかりであちらから攻撃してこない理由もつかめます)

考えている間にも検体番号14444は特に攻撃してこようともしない。
それはつまり、検体番号10700の推測が的中しているということの証明にもなりえることだった。

(……なるほど、理屈はわかりませんが、どうやら彼女はそういう芸当も出来るようです、とミサカは
 納得はいきませんが認識を改めます。しかしそれならば、それ相応の戦い方もあるというものです、とミサカはナイフを構えなおします)

716 :BGM「Mighty Wind」  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 00:08:23.58 ID:qompHDso
検体番号10700が動く。
右手と左手は同時に腕と足を狙いに行くが、検体番号14444はおよそ自動的にその攻撃を拳で払いのける。
そして蹴りをいれようとするが、その足は宙を蹴る。

「……っ?!」

そして次は別方向からの攻撃。
だがそれにも反応して防ぎそして攻撃し返すがまた空振る。

「なっ……!」

そして次。これもまた、同じように防いだと思ったら既に居なくなって、そしてまた別の方向から攻撃が来る。
次も、次も。次も次も次も次も。
同じような攻防が幾度となく繰り返される。

(一体何のつもりだ、とミサカはヤツの意図を掴めません)

検体番号14444は攻撃を防ぎながら納得いかないといった表情を浮かべる。
彼女は検体番号10700の予想したように、電磁波によるレーダーを張っている。
それは『妹達』には出来ない芸当だったが、そこは彼女なりの『何か』によるものだ。
だから相手の攻撃には反射的に防御行動がとれるが、だからこそ自ら攻撃をしかけることはできない。
迎撃戦こそが、孤独であった彼女の選んだ戦闘形式だったわけだが、それが今ここにきて足かせとなっている。

717 :BGM「Mighty Wind」  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 00:35:37.27 ID:qompHDso
「痛っ!」

先ほどから全ての攻撃をはじいてきた検体番号14444の腕に、鋭いな痛みが走る。
ふと目をやると、切られたのか、わずかにだが血が流れ出ていた。
その感触を感じ取ったのか、検体番号10700は攻撃の手をやめ距離をあける。

「―――どうやら集中力が切れてきたようですね、とミサカは検体番号14444の傷を眺めます」

彼女の言うとおり、検体番号14444の集中力は摩耗していた。
そもそも電磁波によるレーダーなど度が過ぎており、本来出来るものではない。
それをこなしているのは彼女が積み重ねてきた『何か』と集中力であったが、彼女自身
このレーダーを実践で使用するのは初めてだったらしく、思った以上に消耗していることに気づいていなかった。

「……だからどうしたと言うのですか、とミサカは拳を構えます」

―――そう、だからどうしたと言うのか。
     この程度の欠落では、何の支障も無い。
     あと二つの切り札にて、眼前の敵を封殺する。
     力は見切った。これより迎撃でなく追撃へと変更する。

729 :BGM「エミヤ」けどまぁ、熱い曲ならなんでもいいや  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 10:34:44.66 ID:qompHDso
「―――ッ!」

動いたのは検体番号14444だった。
今まで全て後手に回っていた彼女が自ら攻撃を仕掛けることに、検体番号10700は驚きを隠せない。

「電磁波による防御を捨てましたか……!だがしかし、とミサカはナイフを振るいます!」
                     スペック
体術を取得した検体番号10700の速度は、同じ基盤ならば負けるはずがない。
故に無策に飛びこんだ検体番号14444が負けるのは道理だ。
だが彼女はそれを易々と捻じ曲げる。

「な、ぁ―――っ!?」

距離が3mまで詰まった瞬間、検体番号14444の動きが急激に加速する。
それは体術でも電磁波でもない、単純な肉体としての速さだ。
そしてその速さをもってして、振るったナイフへ向けて蹴りが繰り出される。

「くっ……!」

遠くでカラン、と音がする。
それは検体番号10700の持っていたナイフが、地面へと落ちる音だった。

「まずはその武器を殺します、とミサカは貴女にナイフを拾わせる暇を与えません……!」

「ナイフがミサカの全てだと思わないことですね、とミサカは空いた片手で貴女の拳を受け止め、
 そのまま左手でその拳を突き刺しにいきます!!」

「両手が使えるのは貴様だけではありません、とミサカはその腕を掴み取り、さらにひざ蹴りでナイフを
  握った手を破壊します……!」

「づぁ……!」

そしてもう一度、今度は彼女達の足もとでカランと音がした。

730 :  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 11:14:12.56 ID:qompHDso
「ちっ……!」

検体番号14444は自分の腕を握っていた手に対しても同様に膝蹴りを食らわせるが、
検体番号10700は直前に腕を引っ込めて回避し、そのまま距離を取―――

「―――らせると思いますか?とミサカは顎へ向かって手のひらを突きだします」

「が、ぁ――――ッ!」

掌底が直撃する。
脳をゆすぶられた検体番号10700は、そのままがくりと地面に倒れこむ。
立ちあがろうとするが、足がもつれただ無様に転がるだけだった。

「いい様ですね、とミサカは検体番号10700を見下します」

「は、ぁ……ぐ、―――」

地に伏したまま検体番号10700は彼女を見上げる。
今の速度と攻撃力は『妹達』の限界を超えている。
一体どうして、と。
その意図をくみ取ったのか、検体番号14444はその場にしゃがみ込んで検体番号10700へと話しかける。


732 :  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 12:15:10.84 ID:qompHDso

「『妹達』の限界を超えた身体能力がそこまで不可解ですか?とミサカは検体番号10700の顔を覗き込みます」

「別にこんなもの、種を明かしてしまえばなんてことありませんよ、とミサカは言い放ちます」

「生体電流を使用して本来あり得ないルートで筋肉を動かす―――たったそれだけのことです、とミサカは
 つまらなさそうに種を明かします」

「……それ、でもっ……いえ、そんな、こと……『妹達』に、できるはずがありませんっ……」

「おや、もう喋る程度には回復しましたか、とミサカは以外とタフな貴女に驚きます」

「『妹達』の、限界は、せいぜい……レベル3に届くか、どうか……貴女のそれは、完全にレベル3程度の、力、を」

「……まさかそんなことを気にしていたのですか?とミサカは呆れてしまいます」

本来『妹達』の『電撃使い』としての能力は大目に見つもってもレベル3程度のもの。
しかし、己の生体電流を操り身体を動かす、などといったことは、レベル4に届くほどの能力を持たねば不可能なはずだ。
それは電流の強さではなく、操作性といった意味である。
『妹達』では、そこまで精密な操作は出来ない。せいぜい他人の心電を計る程度だ。
だから検体番号14444が『妹達』である以上、さっき言ったような芸当が出来るはずがなかった。

「ミサカが所属していた研究所での研究内容はAIM拡散力場の研究でした、とミサカは説明を始めます」

733 :  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 12:23:36.19 ID:qompHDso
「AIM拡散力場と能力の関係については説明するまでもありませんね、とミサカは説明を省略します」

「……能力者が無意識のうちに作りだす力場……つまり、逆説的に言えば力場から能力を推測できるということ……
 ……――――まさか、とミサカは思いついた仮説に驚愕しますがそんなことはあり得ないと可能性を振り払います」

「いえ、おそらくそれが正解でしょう、とミサカは言い放ちます」

「……人体、実験ですか……!確か、貴女の所属していた研究所の所長は―――木山春生……!」

「……木山教授が悪人のような言い方はやめなさい、とミサカはこの実験が同意のもとであることを告げます」

「なん……だと……?」

「貴女は知らないでしょうが、ミサカは一番最初に配属された研究所で問題を起こしました。そして路頭に迷っている
 私を引き取ってくれたのが、木山教授だったのです、とミサカは自分語りを始めます」

――――――。
734 :  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 12:27:57.62 ID:qompHDso
―――――。

木山「……雨にうたれて何をしているんだい、超電磁砲」

14444「……ミサカはオリジナルではありません、とミサカは突然話しかけてきた人間に敵意をあらわにします」

木山「オリジナル……?ああ、なんだ。君は複製の方だったか。しかしこんなところで何をしている?実験は中止になったと聞いたが」

14444「答える義務はありません、とミサカはたった今配属された研究所をクビになったことを隠します」

木山「隠せてないじゃないか」

14444「……ちくしょう、とミサカはこの嘘がつけない口調を恨めしく思います」

木山「ふむ……よければウチの研究所にこないかい?丁度助手が足りていなくてね」

14444「突然何を言い出すんだこいつは、とミサカは驚きを隠せません」

木山「まあまあそう言わずに、とりあえず雨の中で立ち話もなんだから」

14444「あ、ちょ、何するんですか、とミサカは抵抗してみますが抗えません」

735 :  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 12:37:39.14 ID:qompHDso
―――研究所

木山「釈放になって、研究所を与えられたばかりでね。どうしても人手が足りなかったんだよ」

14444「……ミサカはまだ何も了承していませんが、とミサカは無理やり研究所につれてこられてイライラしていますが」

木山「まあそう言わずにこれでも飲みなさい」

14444「……毒でも入っているんじゃないんですか、とミサカは警戒心全開にします」

木山「随分と人間不信なことだな……これなら問題ないだろう?」

14444「貴女の飲みかけなどいりません、とミサカは全力でお断りします」

木山「ならこれだ」

14444「……缶コーヒーですか。まあこれなら受け取ってやらんでもない、とミサカは受け取ります」


736 :  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 12:47:38.10 ID:qompHDso
14444「一応飲み口は念いりに拭いておきます、とミサカは服の袖でごしごしします」

木山「さて、研究の内容だが」

14444「いやいや待てよ、とミサカは突っ込みます」

木山「ん?何か問題でもあったか?」

14444「だからミサカはまだ協力するともなんとも言ってないだろ、とミサカは半分拉致のような形でここへ連れてこられた
    ことを思い出させます」

木山「しかし行く場所も無いならここで働けばいいと思うんだが、どうだろうか」

14444「……別に行く場所がないのはいつものことです、とミサカは感傷に浸るわけでもなく答えます」

木山「……そういえば、研究所をクビになったと言っていたが、何かしたのかい?」

14444「言う必要はありませんん、とミサカは欠陥品である自分には研究所のような多くの人間が出入りするような場所では
     自分が持たなかったということを心の内へしまいこみます」

木山「しまいこめてないが」

14444「ちくしょう!とミサカはこんな人格を組み込んだアイツらを憎たらしく思います!!」

737 :  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 13:00:49.03 ID:qompHDso
木山「ふむ、しかし人が多いのが苦手なら、その点に関してはこの研究所では大丈夫だ。
    私も色々と前科があるものだから、たいした規模のことは出来ない。だから人員もそこまで多くない」

14444「だからなんでミサカがここで働くことが前提となっているような会話をするのですか、
    とミサカは人の話を聞かない目の前の女性を睨みつけます」

木山「ちょっと待っていなさい」

――――。

木山「よし、君がここに再配属されることが決定したぞ」

14444「何勝手に話進めてるの?ってミサカは憤りを通り越して呆れかえります」

木山「ちょっと前に世話になった医者が『妹達』の件をよく知っていたからもしやと思ったが大当たりだったよ」

木山「さて、まずは君の調整マニュアルを受け取らないといけないな。その次は―――」

14444「……なんでそんなにお節介焼きみたいなことしてくるんですか、とミサカは問いかけます」

738 :  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 13:16:44.42 ID:qompHDso
木山「うん?……そうだな。ただ研究のための人手が欲しかったから、では駄目か?」

14444「それなら普通に雇った方が安くつくでしょう、とミサカはこの身体を調整するための費用も
     馬鹿にならないことをほのめかします」

木山「それは確かにそうだな……なんでだろうな、放っておけなかっただけだ」

木山「しかしそれは些末事だろう。私は人手が確保でき、君は調整を受けられる。双方得するいい結末じゃないか」

14444「……別に」

14444「別に、調整なんて受けなくてもいいです、とミサカは呟きます」

木山「それでは君の身体は持たないだろう」

14444「だから、それでいいと言っているのです。実験で生み出されて殺されるために生きてきたのに、
    いきなり死ななくてもいいとか言われても困るだけです、とミサカは吐露します」

14444「今のミサカに生きる理由なんてありません、とミサカは息を大きく吐き出します」

木山「しかしただ死んでいく理由もあるまい。さあこれから忙しくなるぞ。それこそそんな理由を考えている暇もないくらいにな」

14444「……ミサカは問題を起こして研究所をクビになったんですよ?とミサカは
     この研究所でも同じように問題を起こす可能性を示唆します」

木山「その時はその時さ。さ、それじゃあこの荷物をあっちまで運んでくれ」

14444「……どうなっても知りませんから、とミサカはいやいやながらも立ち上がります」

739 :  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 13:25:40.07 ID:qompHDso
―――――。

14444「木山教授!とミサカは部屋へ飛び込みます!」

木山「どうした?……随分ご機嫌な顔だな」

14444「友達が出来ました!とミサカは今日起きた一部始終を話しますかくかくしかじか」

木山「まるまるうまうま……ほう、あの子か。よかったじゃないか」

14444「はいっ!とミサカは元気よく返事します!」

木山「(どうでもいいがテンション上がりすぎじゃないか……キャラ変わってるぞ)


――――――。


木山「ぬぅ……」

14444「どうしましたか?とミサカは頭を抱えている木山教授に話しかけます」

木山「いや、な……AIM拡散力場に影響を与えれば能力にも何らかの影響が出る……という理論が出来ているんだが、
    実証方法が見つからないんだよ」

14444「?人体実験ですか?とミサカはたずねます」

木山「まあ、そうなるだろうな……だがこの実験を行うにはレベル2程度の力が必要だ。しかも、どのような影響が出るか
    まだはっきりとしていない……さすがに未開発な分野だな。データが足りなさすぎる。どうしたものか……」

14444「……ミサカはレベル2程度の力はありますが」

木山「馬鹿を言うな……どんな結果が出るかわかっていないんだ。君を危険な目に会わせるわけにはいかない」

741 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 16:44:12.19 ID:qompHDso
14444「……覚えていますか、教授がミサカを拾ってくれた日のことを、とミサカは昔話を始めます」

木山「?一体何を突然……」

14444「あの時ミサカは生きる理由がないと言いましたが、それは覚えていますか?とミサカは問いかけます」

木山「……ああ、覚えているよ。だが、まさかそれが理由で被験者になってもいいと言うんじゃないだろうな」

14444「違いますよ―――あそこでもし、教授がミサカを見離していたら、ミサカは今こんな生活はできていなかったでしょうね」

14444「あの場面で、教授がミサカを引き取ってくれたからこそ、ミサカは涙子に出合うことが出来ました、とミサカは胸を押さえて言います」

木山「……私はただ人手が欲しかっただけだよ」

14444「……むぅ。ここは素直にミサカの気持ちを受け取る場面だと思いますが、とミサカは教授って意外とツンデレなんだなと認識を改めます」

14444「まあ何が言いたいかと言いますと、あの時教授がミサカを拾ってくださらなければ世界がこんなにも素晴らしいとは知る事が出来ませんでした。
     だからとても感謝していますし、そのための恩返しがしたいのですよ、とミサカは簡単にまとめて自分の思いを伝えます」

木山「……嬉しいことを言ってくれるが、だがやはり―――」

14444「信用してるぜ!とミサカは親指をぐっと立てます」

木山「は……?」

14444「ですから、信用していると言ったのですよ、とミサカは再度同じセリフを吐きます。教授の研究っぷりはミサカが最も
     近くで見てきたのですから、安心してこの身を任せられます、とミサカは教授への絶対的な信頼を表に出します」

木山「……は、」

木山「そうか―――最初に会った時は、あんなに警戒されていたのにな」

14444「時間とは流れていくものです、とミサカは過去の自分を思い出してなんだか恥ずかしくなります」

木山「……わかった。だがそうとなれば、もう少し時間をくれないか。理論を詰めて、出来る限り安全なものにする」

14444「ええ、わかりました。手伝えることがあればなんでも手伝うので言ってくださいね、とミサカは了解します」

――――――。
742 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/07/04(日) 16:46:55.65 ID:ELL7rzI0
お、再開してる

14444の変化は佐天さんの影響だけじゃなかったんだな

743 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 16:51:08.96 ID:qompHDso
――――。

「―――とまあ、そういうわけで実験が行われました。結果ミサカの能力は上昇したというわけです、とミサカは
 昔話を締めくくります」

「……―――」

少しばかり長い話を聞き終えた検体番号10700は納得したと同時に、次の行動をどうとるべきかを考える。
脳へのダメージは今や消え去っている。動こうと思えば何時だって動ける。
だがそれが何になるというのか。
自らの体術は単純な速度差の前に敗れた。
ならば、今ここでどのような行動を取ったところで叶うはずがない。
撤退し、対策を立て装備を整え直せば打倒する方法もあるだろうが、眼前の敵がそれを許すとも思えない。

(さて、どうしたものか……とミサカは思案します)

勝てない相手に向かうほど馬鹿ではない。
しかし退ける状況でもない。
となれば、ここは―――

(―――降参、しますか)

投了の覚悟だった。

744 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 17:01:13.62 ID:qompHDso
(負けるのは悔しいですが、今この状況下で勝ちを拾える可能性は万に一つだけです、とミサカは
  諦めムードを漂わせます)

オリジナルもそろそろ到着しているでしょうし、と検体番号10700は思考をしめくくる。
確かにいくら検体番号14444のレベルが上がっていようとも、オリジナルの前には意味は無い。
絶対的な力の差に敗北するだけであろう。
それに、本来の目的は足止めだ。
無駄話でもなんでも、とにかく検体番号14444をこの場にとどめることが彼女の任務だ。

(まあこの後捕まってどこかに監禁されるかもしれませんが、それくらいなら問題ないでしょう、
 とミサカはMNWという便利な存在に感謝します)

例え監禁されようとも、MNWを使用すれば救援を呼べる。
監禁するための時間も足止めになると思えば、それは全く無意味なことではなかった。

ただ、ひとつ間違いを指摘するというならば。

相手が普通の『妹達』ではなく、検体番号14444という、人格に障害がある相手だったということだが。

745 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/07/04(日) 17:10:25.10 ID:XLdc.aIo
濡れ場クルー

746 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 17:11:56.94 ID:qompHDso
「しかし、結局切り札その2は使うことはありませんでしたね、とミサカは思ったよりも苦戦せずに済んだ
 ことに胸をなでおろします」

「ほほう、切り札その2とはなんでしょうか、とミサカは尋ねます」

検体番号14444が呟いた言葉に即座に反応する。
足止めすると決めたのならば、なんでもいいから話に食らいつく。

「……そうですね、どうせすぐ終わることですし、実際にお見せしましょうか、とミサカは立ち上がります」

すっ、と立ち上がったと思えば、何やら腕をふるってから指を動かす検体番号14444。

(……何をしているのでしょう、とミサカは――――っ!?)

意味がわからない、と思った検体番号10700の身体は。

見えない何かに持ち上げられた。

「……っ?」

自らの意志に反した行動をとる身体に、彼女は驚きの表情を浮かべる。
両腕はだらりと広げられ、足はまっすぐ立っていない。
力なく、まるでワイヤーに吊られたように起き上がった身体は、

(……なんてこった、とミサカは自分の身体がほとんど動かないことに驚愕します)

彼女の意志を受け取ったところでそれを反映することはなかった。

747 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 17:21:36.70 ID:qompHDso
「……驚きました、とミサカは純粋に本音を呟き、同時に一体何をしているのか全く理解できません」

「それはそうでしょう、とミサカはそう簡単に切り札その2を看破られては困るといった表情をうかべます」

検体番号14444は振るっていた腕を止めると、そのままゆっくりとしゃがみながら、
足元に落ちていたナイフを拾い上げる。

「なるほど、どういう原理がわかりませんがこれならばミサカを拘束しておくことも可能でしょう、とミサカは
 自由の効かない身体を恨めしく思います」

「拘束?何をいっているのですか、とミサカはナイフを振るいます」

検体番号14444は逆手にナイフを持つと、検体番号10700の襟へ刃をかけ、一気に下へ引き裂く。

「ぇ……」

衣類を両断され、白い肌をあらわにした検体番号10700は困惑の表情を浮かべる。
肌に傷はついていない。ただ服が裂かれただけだ。
だからこそ意味がわからない。こんな、意味のない行動をする意味が。

「まさか、自分が拘束されるだけで、殺されないとでも思っていたのですか?とミサカはナイフを
 下着にひっかけて切り外します」

ブツ、と小さな音とともに胸に着けていた下着が真ん中で切り落とされる。

750 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 17:42:30.74 ID:qompHDso
「……殺すつもりですか、とミサカは問いかけます」

「むしろ殺されないつもりでミサカ達の前にたちはだかったことにミサカは驚きを隠せません」

逆手に持っていたナイフを持ち変えて、刃を首筋に突きたてる。
紙一重で皮膚には当たっていない。
しかし、肌に感じる圧力は凄まじく、自らの武器であるからこそ、その切れ味を知っている。
少し力を入れて引くだけで、皮は裂け肉を切り血管を傷つけそして血が溢れだすだろう。

だが検体番号10700はその程度では臆さない。
いや、臆さないというのは語弊がある。
実際に殺される、という実感がわいていないのか、恐怖というものを感じられない。そもそも『妹達』にはそのような感情は
プログラムされていない。だからこそ、彼女は冷静に言葉を紡ぐ。

「……ミサカを殺せば、他の『妹達』から危険因子として処分される可能性もありますが、と
 ミサカはデメリットを貴女につきつけます」

しかし、

「それがどうした、とミサカは貴様の言葉を跳ねのけます」

彼女の言葉は、検体番号14444には全く届かない。

「こうして涙子と命を共にする時に、そんなことは百も承知だったのです。今更そんなものに
 おびえるミサカではありません、とミサカは己の覚悟を貴様に叩きつけます」

「その佐天涙子でさえも『妹達』から狙われることになりますが、とミサカはさらにデメリットを示唆します」

「そんなもの、全てミサカが処分します、」

とミサカはナイフを横に引きました、という言葉とともにナイフが検体番号10700の皮膚を裂く。
皮が切れる。
しかしそれだけだ。じわりと血が滲み出すが、それ以上の出血は無い。

「ぁ―――」

だがそれだけで十分。
検体番号14444の殺意はその傷口から検体番号10700の脳へ侵食し、ひりひりとした鋭い痛みと共に
彼女の脳を侵食する。

殺される。

間違いなく、私はここで殺される。

そんな考えが脳裏をよぎった瞬間、嫌な汗が全身の毛穴から噴き出し、下がる筈の体温はじわりと温度を上げる。
傷自体は大したことがないのに、やけに痛みが鮮明に感じられる。
そこまできて、ようやく検体番号10700は、間違いの発端に気づいた。

検体番号14444の人格が、一度壊れていたことに。

752 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 17:52:31.17 ID:qompHDso
「そういえば確か、貴様には個人的な借りがありましたね、とミサカは表出した肌に手をかけます」

ぴたり、と検体番号14444は検体番号10700の腹部へと手を当てる。

「ひっ……」

小さく漏れた声にどのような感情がこもっていたのかはわからない。
しかしそれを聞いた検体番号14444は気をよくしたのか、そのまま腹部を撫でまわす。

「いつぞやに監禁してくれた御礼、ここで返してさしあげます、とミサカは指でわき腹をなぞります」

「ぅ、ぁ……くぅ……」

びくん、と検体番号10700の身体が震える。
顔はわずかに上気し、目には涙を溜めている。
その涙が殺意によるものか、それとも痴態を晒してしまっていることからなのかはやはりわからない。

「ふふ、第19学区の路地裏といえど、人がくる可能性もあるのに声なんて出して―――同じ『妹達』として
 恥ずかしい限りですよ?とミサカは鎖骨をなぞりながら胸へと指を這わせます」


753 :鎖骨じゃねえ、肋骨だった、とミサカは打ち間違えを後悔しますが正直どうでもいいと思いました。  ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 18:06:52.36 ID:qompHDso
検体番号14444の指が検体番号10700の乳房へと到達する。
控えめながらも確かに発達したそれを指でふにふにと押して堪能すると、
下着の残骸に指をひっかけ引きずり下ろす。
邪魔なものはなくなったと言わんばかりに、検体番号14444はしっかりと乳房を掴むと、
ゆっくりとした動きでそれを揉みしだく。

「ぁっ……」

「……ふむ、乳首がたってますが、もしかして感じてるんですか?とミサカは眼の前のいやらしい
 子に問いかけつつそれを指でつまんでみます」

「あぁぅっ!」

びくびくと震えていた検体番号10700の身体がひときわ大きく震えた。
いや、この場合震えたよいうよりも跳ねたと言う方が正しいのかもしれない。
それくらいに、動かない身体を大きくそり上げたのだ。

「くっ……はははははは!殺し合いをしていた敵にこんなことされて随分と可愛らしい声を
 上げるのですね!とミサカは愉快に素敵な気分になります!」

「くぅぅうぅぅ……!」

ぎりぎり、と奥場を噛みしめる。
この行為はしばらく続いた。
検体番号14444は動けない検体番号10700の身体をまさぐり、その反応に逐一罵声を浴びせる。
実は全身が性感帯でしたーなんてオチが検体番号10700にはあり、つまりどこを触られても
びくんびくんしちゃうわけだったんだけど、だからこそまあ10700はえっちな気分になっちゃう自分が
恨めしくて、けど悔しい感じちゃうビクンビクンだったんだよ。ちなみに14444は自分が引き裂いた上半身だけ
しかまさぐってないので下半身はしらないよ。ああ、でも太ももとかには手をやったらしいぜ。えろいな。

754 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/07/04(日) 18:09:29.51 ID:XLdc.aIo
ちょっとカメラさん仕事して

757 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sagesaga]:2010/07/04(日) 18:12:17.09 ID:oNjnuXo0
17行目から先が見えない
早く続き続き

758 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/07/04(日) 18:15:09.86 ID:SQut8Sso
続けたまえ

760 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 18:20:01.95 ID:qompHDso
そしてしばらく後。

「はっ……ぁぅ……」

「ふぅ……そろそろ飽きてきましたね、とミサカは指を舐めます」

動けない身体を肉体的にも精神的にも凌辱された検体番号10700は、か弱く
息を吐いては吸ってを繰り返している。
検体番号14444はポケットに入れておいたナイフを取り出し、検体番号10700の首筋に当てる。

「まあこのまま縛り付けておいて、誰かが通りかかるのを待っているのも面白そうですが、それだと
 ミサカが動けませんし。まあ綺麗に殺してあとは放置しておけば誰かがよろしくやってくれるでしょう、
 とミサカは死姦が趣味な人間の思考を疑いつつもその可能性を考慮します」

検体番号10700の頭に、ぼんやりと検体番号14444の声が届く。
殺されてしまうことに対して頭がマワラナイ。
けれど、『自分が死ぬ』ということに対しては、思うところがあった。

八月のあの日。

自分達のオリジナルである御坂美琴が命をかけて助けようとしてくれたこの命。

上条当麻によって、奇跡ともいえる結果で助かったこの命。

そして、今食い止めようとしている佐天涙子という恩人がいたからこそあるこの命。

もう誰一人として死んでやるものかと誓ったのに、こんなところで、しかも自分に殺されてしまうのか。

(……ひどい話です、とミサカは諦めムード全開で思い返します)

「さて、それでは死んでもらいますね、とミサカはナイフを握る手にぐっと力をこめます」

予想されるのは一秒先。自らの首から鮮血が吹き出る場面。
凌辱されきった頭に恐怖はなく、ただ一つの後悔がよぎる。

それは自分の師匠の事。
友を無くし、悲しみの中で、それでも強く在った忍者の末裔。
自分がずっとそばにいると、約束したたった一人の相手。

(―――すみません、半蔵師匠。約束は守れませんでした、とミサカは目を閉じます)

そして。

ナイフは振るわれた。

761 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 18:28:26.40 ID:qompHDso
しかし鮮血が宙を舞うことは無かった。

「――――っ!?」

驚きは妹達両者からのもの。
一人は必殺のナイフが宙を切ったことについて。
もう一人は死ぬはずの自分が、誰かに抱えられていることについて。

「ぁ……」

検体番号10700は自分を抱えている人物の顔を確認する。
それは、本当によく見知った相手。

「なんで……ここに、」

自然と口から洩れていた疑問。
こんな誰もこないような場所に、何故彼が現れたのか。

「……いや、ちょっと仕事でこっちきてたらお前が見えたから助けたんだけど、迷惑だった?」

その場にそぐわない気の抜けた声で答えた半蔵は、やっべちょっとまずいことしちゃったかも、
とかそんなことを考えていた。

762 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/07/04(日) 18:31:02.76 ID:XLdc.aIo
くそっ0歳児相手に半蔵の奴

763 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 18:41:24.68 ID:qompHDso
「あ……いえ、そんなことはありません。ありがとうございました、とミサカは師匠の腕から離れます」

「ああ、悪い」

半蔵は彼女をそっと地面に下ろす。
先ほどまでほとんど動かなかった彼女の身体には自由が戻っていた。

「しっかし同じ顔が二人とは。こりゃマジでやばいところに触れちまったかね」

異様な殺気を放つ検体番号14444と、服を両手でつかんで必至に肌を隠す検体番号10700を
交互に見比べながら、半蔵は誰にともなく呟いた。
検体番号14444は彼を睨みつけながら動こうとはしない。
ただ、その腕をゆらりと持ち上げて、

「っと、やめとけやめとけ。種は見えてる。そんな時間のかかるもんは俺には通じねえ」

「……っ!」

半蔵の言葉に検体番号14444の腕がとまる。

「『糸使い』って言うと漫画やアニメじゃ随分ポピュラーだが全く実践的じゃないんだよな。確かにそういう技術は
 実在するが、そんなもんトラップ程度にしかつかえねーよ。あんな、指をちょっと動かしただけで相手の
 肉が切れたりするなんてまずありえねえ―――が、お前のそれはよくやってる方だな」

「……特製のワイヤーですよ。極細の磁力を持たせたワイヤーです。これならばミサカの能力と共に使用すれば、
 敵を拘束するくらいのことは出来ます、とミサカはどうやら種は知られているようなので説明してみました」

最もこれでは肉を切断なんてことはできませんけど、と検体番号14444は続ける。

「能力、ねぇ……電撃使い、だったか?磁力ってこたぁ、ああなるほど、そういう仕組みか。よく考えたもんだ」

「それより貴様は何者ですか、とミサカは一応それなりの強度があるワイヤーを切り裂いた不審者に問いかけます」
     スキルアウト
「ただの無能力者だ。成り行きでこいつの師匠なんてもんをやってる。ワイヤーを切り裂いたことに関しちゃ、まあ
 突きつめれば切るって行為は摩擦力だとかそういうもんの関係だから、技術があればどうとでもなるだろ」

たいしたことじゃないさ、と半蔵は締めくくった。

765 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 18:59:51.35 ID:qompHDso
「……まあいいです、とミサカはワイヤーを取り付けた手袋をぬぎすてます」

「言っとくが俺はお前とやらないぞ」

「戯言を。ここまで手を出して無関係でいられると思わないことです、とミサカは拳を構えます」

「だって正面きっての戦いじゃあ俺だとお前に勝てそうにないし。変わりにコイツがやってくれるさ」

と言いながら、半蔵はさっきから胸元を隠している検体番号10700の肩に手を置く。
びくり、と身体を震わせて彼女は半蔵へと目をやった。

「……しかしミサカでも彼女には勝てません、とミサカは残念な事実をお伝えします」

そう、彼女の体術だろうとなんであろうと、基本となる速度に差がありすぎる限り、検体番号14444には届かない。
だがそんなこった知ったこっちゃないぜ、と半蔵はどこからともなく一本の脇差のようなものを取り出す。

「コイツを使えばなんとかなるだろ」

「これって―――忍者刀、ですか?とミサカは意外すぎるものが出てきたことに驚きます」

忍者刀。
脇差よりも長く、一般的の刀よりも短い刀。反りは無く、まっすぐに伸びた刃に四角い鍔がつけられている。
黒塗りの鞘と飾り気のない柄は、一見すればただの黒い棒のようだった。

「お前が最初にもってた武器だ。今の時代じゃこんなもん役に立たんといってやめさせたが、お前はこれが一番得意だろ」

「ですが、これでは忍術が……」

「馬鹿かお前は。そういうのを技に溺れる、って言うんだ。言っただろ、忍ってのは雑草だ。誇りなんてもんはいらない。 
 第一に勝つことを考えろ。そのためなら忍術だとかそんなことはどうでもいいんだよ。死んだら終わりだ」

「話しはまとまりましたか、とミサカは律儀に待っている自分に疑問を感じます」

「ほら、相手がお待ちかねだ。行って来い」

とす、と半蔵は検体番号10700の背中を押す。
全く緊張感の無いその態度に彼女は戸惑うが、しかしだからといってどうすることもできない。
だが手に握られた刀は、懐かしくもありそしてしっくりと手の中に収まる。

766 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/07/04(日) 19:02:28.92 ID:fB9260.o
どっちが主役側なのか分からん流れだなww

767 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 19:12:22.84 ID:qompHDso
「―――わかりました。それでは、」

と彼女は刀を抜く。
日本刀のように刀身に妖しい光は無い。ただ鈍く光りを反射しているだけだ。

「武器を変えたところで勝てると思っているのですか、とミサカは愚かな考えを嗤います」

「武器によっても戦い方がありますから―――勝てるかどうかはわかりませんが、
 しかし負ける気は一切しませんね、とミサカは刀を構えます」

構えると言っても右手に握り、左手に鞘を持ったままだ。
単純なリーチだけで考えれば先ほどよりも有利になるのは確かだが、検体番号14444はそもそも武器を弾き飛ばすという
芸当が出来る故に、リーチが変わったところで大した意味は無いようにも思える。

ふっ、と息を吐いて全身の力を抜く。
呼吸を相手に合わせて神経を集中する。
相手の肉体が自分を凌駕するというのならば、こちらは精神面で相手を凌駕しなければ勝ち目は無い。

「―――――」

検体番号14444が動いた。
全身を電流で操作したその瞬発力は、5mの間合いを一瞬で詰める。
繰り出された拳は、正確に検体番号10700の額を撃ちぬく。
それは反射行為も許さないほどの速度。
軍用クローンとして作りだされた身体能力を、能力で底上げした一撃は回避などさせることない一撃だった。

そして、検体番号10700は、そんなことは既にわかっていると言わんばかりに。
歯を食いしばり、真っ向から額で拳を受け止めていた。

770 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 19:35:16.12 ID:qompHDso
―――ずしん、と額に重たい衝撃が走る。
     今にも意識が沈みそうな中、自分の頭に電流を流して必至で耐える。
     
検体番号10700の右腕が動く。
まっすぐに通ったその刃は切り裂くためのものではなく突きさすためのものだ。
故に最短の距離で、その刃は下から上に検体番号14444のわき腹を突き刺そうとする。

「っ!」

しかし彼女は底上げされた反射神経をもってして、服をすこしかすめる程度で回避する。

(相打ち覚悟―――しかし、やはり基本の速度差が優劣を決することになりましたね、とミサカは
 次の一撃を繰り出します……!)

刀を空振ったことにより隙だらけになった検体番号10700の身体に向けて、
彼女は引いた足を踏み込んで拳を繰り出そうとする。
しかし、踏み込んだ瞬間に振りあげられていた刀が一気に振り下ろされた。

(柄の一撃……しかしその程度では―――)

私は倒れない、と考えたが、しかしその柄の先端がきらりと光りを反射したところを、
彼女は見逃さなかった。
柄の先端には3センチほどの小さな刃。
持ち手として逆手になるその刃は、振り下ろされた瞬間彼女の身体を斜めに引き裂く軌道を描く。

「―――っ!!」

既に体重は前へと向いている。後退している暇はない。
拳の一撃を諦め、検体番号14444はそのまま検体番号10700の背後へと飛びこんだ。
小さな刃は宙を裂く。
思いっきり振り下ろされた刀のせいで、検体番号10700の姿勢は崩れる。
勿論この好機を検体番号14444が見逃すはずがない。

(その姿勢では刀を構えている暇もない、とミサカは姿勢の崩れた彼女の背中めがけて
 掌底を繰り出します……!)

それで終わり。
彼女の力で背中を殴られた検体番号10700の呼吸は大きく乱れ、そのうちに刀を取られて
自らの武器で突き殺されるだけだ。
そんなわかりきった先を、検体番号10700は強引に捻じ曲げる。

掌底が背中へ届く瞬間、左手に握っていた柄を検体番号14444の腹へ押し込む。
勿論、その攻撃は彼女には見えていた。
しかし、そんなカウンター狙いの一撃程度では自分の身体が揺らぐことはない、と確信していた。
腹筋に力をこめ、襲いかかる打撃に備えて掌底を叩きこむ。
その攻撃は確かに検体番号10700の背中へ届き、彼女の身体は前へ吹き飛ばされる。

そして同時に、検体番号14444の腹部に、鞘が突き刺さった。

771 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 19:50:43.85 ID:qompHDso
「な、ぁ―――!?」

痛みでその場に倒れる。
その際鞘は抜け、地面に転がった。刺さった個所からは血が溢れだす。

(な、にが……なんで、ただの鞘が……?)

混乱するままに鞘へと視線をやる。
光の反射を防ぐために黒塗りにされたまっすぐな鞘。
その先端には、15センチ程の、同じように黒塗りにされた刃がついていた。

(……ッ!油断、した……と、ミサカは腹部を抑えて、立ち上がろうとします……)

柄に取り付けられた刃。
あれが本命の攻撃だと思い油断した。
忍者刀の本体はフェイク。そして柄に仕込んであった仕込み刃もまたフェイク。
本命は、鞘の先端に堂々と取り付けられていた黒塗りの刃。

「ごほっ……偽物に偽物を重ねて、相手の油断を誘う―――少々卑怯なやりかたですが、
 相手が自分より強い場合は、これくらいしか方法がないので使わせてもらいました、とミサカは
 上手く決まっていなかった掌底のおかげでそこまで呼吸を乱されずすんだようです」

「ハっ……ぐ、ぁ……!」

「無理に立ち上がらないほうがいいですよ、とミサカは検体番号14444へ声をかけます。
 咄嗟のカウンターでしたからどこに当たったかわかりませんが、その様子では出血はひどいようですから」

と言いながら自分の武器を回収する検体番号10700。

「勝負はつきました―――貴女の負けです、とミサカは刀を鞘へしまいます」

772 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 20:13:12.20 ID:qompHDso
「ふざけろ……!とミサカは立ち上がります……!」

「……その傷では満足に動けないでしょう。それではミサカには勝てませんし、佐天涙子を追うことも
 出来ません。おとなしく病院へ搬送されてください、とミサカは貴女の身をあんじます」

「黙れ……ミサカが負ける時は死ぬときだけです……!ただ腹が破かれたくらいで、何がどうというのですか……!
 さあ早く!早く早く早く!!まだまだ勝負はついていません、とミサカは拳を構えます……!」

「……やはりミサカには、そこまでして佐天涙子に尽くす理由がわかりません、とミサカは理由を求めます。
 彼女の歩む道ははっきりいって死ぬだけの道です、とミサカは言い放ちます」

「そんなもの先刻言ったはずです……彼女はミサカの親友です……親友が何かをしようとしているのなら、
 それを全力で、命をかけても手伝うだけです……!それだけの単純な理由です、とミサカ、は……っ!」

ぐらり、と彼女の身体が傾く。地に伏しそうになる身体を、半蔵が受け止める。

「……はっ……貴様、どういうつもりですかっ……!」

「―――なんで。
 なんで、命を賭けるくらいのことが出来るんなら、その命でそいつを救ってやらないんだ」

「貴様に……何がわかると……!」

「俺には命を賭けるなんてことは出来ない。そんな風には強くなれない。
 だからこそ後悔してる。後悔しつつも、毎日を当たり前のように過ごしている」

半蔵は検体番号14444を支えながらつぶやく。抵抗し、必至で振り払おうとする彼女の身体を強く支えて、

「だけどお前は違うだろ。そんなに強い気持ちがあるってんなら、その気持ちで友達を救ってやれ。
 お前だって、その友達が死んじまうのは嫌なんだろ?時にはぶん殴ってでも間違いを止めるのが、友達ってやつさ」

俺が言える台詞じゃあ、ないんだけどな。
そうして半蔵は支えていた検体番号14444の身体から手を離す。
彼女はふらりとした後、しっかりと自分の足で立っている。
出血で薄れる頭で彼の言葉を考える。

自分は佐天涙子にどうしてほしいのか。

自分は佐天涙子になにをしたいのか。

まとまらない頭に、ぽつりと彼の言葉がなげかけられる。

「―――無くしてからじゃ遅いんだよ」

「―――っ!」

それで十分だった。
けれど彼女の身体はもう限界。
意識は身体の寒さを伴って、泥沼へ沈んでいく。

ここに、妹達の戦いは決着した。

773 : ◆oDLutFYnAI[sage saga]:2010/07/04(日) 20:21:07.47 ID:qompHDso
半蔵「……ふぅ。柄にもないことしちまったなぁ」

10700「師匠師匠」

半蔵「何だ」

10700「ていっ、とミサカは拳を繰り出します」

半蔵「あいたっ。なんだよ」

10700「いえ、なんとなく……それでは彼女はミサカが引き取ります、とミサカは検体番号14444を背負います」

半蔵「ああ、早いとこ病院に運んでやったほうがいいと思うぞ。ほれ、それは俺が預かってやる」

10700「どうも、とミサカは刀を手渡します。そしてありがとうございました、師匠が来なければ死んでいました、と
    ミサカは心をこめて御礼を言います」

半蔵「まあたまたまだったからなー。気にするなよ」

10700「どうしてたまたまでこんな所を歩いていたのかは知りませんが、今は一刻も早くこの子を病院へ
     運んでやらなければいけないので、失礼します。とミサカは頭を下げてその場を後にします」

半蔵「おう」



半蔵「……しかし、この原石のリスト。マジでこりゃなんなんだ?
    ちょっと気になって調べてみたが、極秘すぎて手ぇ出したくなくなるな」

半蔵「郭がどうしてこんなもんを持ってたのか……この学園都市で何が起きているのか……」

半蔵「俺には関係ないとは言え、どうにも嫌な予感がする。それにアイツもなんだか訳ありって感じだったが」

半蔵「さて……どうしたもんかね」

ゴォォォォォンッ!!!

半蔵「うおっ……なんだ今の音」

半蔵「……いや、俺には関係ないな。ああ、関係ない」



―――妹達vs妹達 終

佐天「今までありがとうございました―――左天お兄ちゃん」 4



posted by JOY at 22:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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