2010年09月24日

士郎「禁書目録?」 上条「サーヴァント?」1

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:26:33.35 ID:rg3ZMcko
Oct.15_PM 05:36


―――聖杯戦争。

二週間という長くも短い時間、それが終わり半年ほど経ったある日のこと。
凛は衛宮邸を訪れると士郎にとある街の名前を告げる。

「衛宮くん。―――学園都市って知ってるわよね?」
「ん? ああ、名前くらいは聞いたことあるぞ。けどその街がどうしたんだ?」
「そうね……これから私たちが行くことになったわ」

「は? なんでさ」
「話せば長くなるけど、一言でいうなら聖杯戦争の後始末ってとこね」
「聖杯戦争と学園都市ってどう関係があるんだ?」

聖杯戦争は死者を出しはしたものの、公には無事に終わったと言える。
しかし、セイバーによって破壊されたはずの聖杯も完全に消滅したわけではなかった。
だからといってその聖杯の残骸自体はほぼ無害と言っても良い状態であり、二人とも問題視はしていなかった。

―――だが、その破壊された聖杯の残骸を悪用しようという人間がいるとのことだ。

3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:27:49.44 ID:rg3ZMcko
「聖杯を悪用されるってのは衛宮くん的にも嫌でしょ?」
「そりゃその話がほんとなら放ってはおけないけどさ。そんな話どこから聞いたんだ?」
「教会よ。昨日綺礼の知り合いだって言う魔術師から連絡が来たわ」

「あの教会に? 言峰の知り合いの魔術師から? ……それ信用できるのか?」

はぁ、と凛は溜息を一つつく。

―――確かに士郎の言っていることもわかる。
正直なところ凛自身も半分くらいはデマなんじゃないかと思っている。

「それはそうなんだけどね。けど聖杯がらみとなると無視するわけにもいかないわ。何かあってからじゃ遅いし」
「む、確かに調べてみておいて損はないか。―――で、それと学園都市と何の関係があるんだ?」

「そこにあるっていう物が聖杯の残骸を完全に消滅させるために必要らしいの。名前は――――禁書目録」


4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:29:48.79 ID:rg3ZMcko
Oct.16_AM XX:XX


とある窓のない建物の一室、二人の男がガラス越しに向かい合う。

「……これで満足か?」
「ああ、予定通り運んでいるようだ」

「最後までそうだといいがな、そうそうお前の思い通りにうまくいくものか?」
「いかないかもしれないな。―――いや、いかないだろうな」
「……まるでいかなくてもいいと言いたげだな」
「その通りだ。最悪の結果にでもならない限りこちらにはたいして損害はない」
「だったらその最悪の結果にならないよう祈ってるんだな」

「そうならないようにするのが君の仕事だろう」
「俺にできることなどたかが知れている。それに聖杯がからむとなるとあるいは抑止力さえも働きかねない」

5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:31:31.39 ID:rg3ZMcko
「いや……抑止力の影響はない」

「―――なんだと?」
「こちらからはあくまで方向を示すに過ぎない。特に聖杯に直接何をするというわけでもないからな」
「……なるほど。聖杯自体が目的ではないということか」
「そうだ。あくまでも聖杯は材料に過ぎない。得られるならばあるにこしたことはないがな」
「チッ、それほどまでにプラン短縮とやらが大事か、アレイスター」

「他になにがあるというのだ?」
「レベル5や幻想殺しを危険にさらしては本末転倒だろう」



「だから言っているだろう。―――それが君の仕事だ、と」

6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:37:32.56 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 04:37


「案外すんなり入れたな。俺たちみたいな部外者が入るのって難しいって聞いてたのに」

あらかじめ連絡を受けていたとはいえ、学園都市に入るには一つや二つ問題があると士郎は覚悟していた。
同じ事を考えていたのか、凛もその言葉に頷く。

「そうね。確かにきちんと言われたとおりには行動してるけど」
「警備がずさんなのか、こいつの指示が的確なのか」
「……後者でしょうね。学園都市はそんなに甘いところじゃないわ」

「実はこいつかなりすごいやつなんじゃないか?」
「そうかもしれないわね。……ま、何も問題なく入れたんだから文句は言えないわ」
「問題なく、か。……それはどうだろうな」

そう呟いた士郎は、さりげなく辺りを見回してみる。
挙動が不審なのか、あるいは学園都市の人間とはなにかが違うのか、どうにも注目を集めているようだ。

「……確かに、目立ってるわね」
「それにしても、これみんな超能力者なのか? ちょっとすごいな」

「何言ってるの? 残念ながら半分以上はレベル0よ」
「む、そうなのか? けど逆にいうと半分近くは超能力者ってことだよな?」

7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:39:44.83 ID:rg3ZMcko
「そうとも言えるけど、まぁ、能力者って言ってもピンきりだと思うわよ。それに能力ってのは一種類しか使えないらしいし」
「へぇ、となるとやっぱり魔術の方が便利なんだな」
「一概には言えないでしょうけど、基本的にはそうでしょうね。けど高位の能力者はほんとに化物らしいわよ」

「化物って……遠坂、その物言いはどうかと思うぞ」
「化物よ。なんでも第一位ってやつは核爆弾をくらっても平気って噂よ」
「―――はぁ? ……なるほど、確かにそりゃすごいな。にしても遠坂、やけに詳しくないか?」

そう何気なく言った士郎の言葉に凛は慌てて弁解する。

「べ、別にそんなことないわよ。こ、このくらい常識でしょ?」
「ははぁ……なるほどな。遠坂、お前、超能力とかに憧れてるクチだろ?」
「ち、違うって言ってるでしょ! ま、魔術と超能力は相容れないものなんだから、興味があるとかそういうんじゃ……」

などど、ごにょごにょ言っている凛を横目に士郎は荷物を取り出す。
そこから凛が受け取っていた書類を取り出し、その中から地図を広げる。

「ま、いいけどさ。……それにしてもわかりづらいな。中は広いし、同じような建物ばっかりだし」

地図と周りを見比べる士郎に対して、落ち着きを取り戻した凛は冷静に返す。

「8割が学生の学園都市だもの。そりゃ学生寮ばっかりでしょうからね」
「それでちゃんと目的の寮を見つけられるのか?」
「ここまでちゃんと来れたんならだいじょうぶでしょ」
「そりゃそうだな。なら何か起こる前に早く探そう」

「―――何かお困りでしょうか?」

8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:41:53.51 ID:rg3ZMcko
そんな二人に横から声が掛かる。
士郎と凛が視線を向けると二人の少女、大きな花飾りをつけた短髪の少女と小さな花飾りをつけた長髪の少女が近づいてくる。

「あ、この子風紀委員なんですよー」
「……ジャッジメント……?」

隣の長髪の少女からのフォローにも、聞き慣れない言葉に戸惑い士郎は凛に顔を向ける。
同様に単語の意味がわからない凛は小さく首を横に振る。

「お、ということはお二人は外からの人ですか? 風紀委員っていうのは……ま、簡単に言うと学生の自警団みたいなものなんですよー」

自警団という言葉になるほど、と二人は頷く。
短髪の少女は少しだけ悩んだような躊躇うような表情を作ると、士郎と凛に尋ねる。

「外からの……申し訳ないんですが身分証明書のようなものはお持ちでしょうか?」

証明書、と言われても二人としてはどうしたらいいものかと戸惑う。
しかし、かといってここで問題を起こすわけにも行かない。
学生による自警団とはいっても見たところそれなりに大きな組織だということが窺える。
少しだけ考え込むと、凛は諦めて予め受け取っていた書類を提示してみる。

「……これしか持っていないんだけどこれでいいかしら?」

9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:43:41.02 ID:rg3ZMcko
短髪の少女はそれを受け取ると高速で目を通し始める。
長髪の少女はそれを心配そうに、少し楽しそうに横から眺める。

「問題は……無いようですね。けど、いえ……」

問題は無いと言いながらも煮え切らない少女の態度に士郎も不安になる。

「何かまずいのか?」
「いえいえ、まずくはありませんが……かなり上の人が関わっているようなので少し驚いただけです」
「へぇー、そうなんだ。ひょっとしてお二人ってかなり凄い人だったりします?」

その答えに長髪の少女が興奮気味に目を輝かせる。
状況が把握しきれない士郎はその向けられる真っ直ぐな視線にうろたえる。

「いいえ、少しばかりコネがあるだけで私たちはなんでもないのよ。ちょっと人を訪ねてきただけ」

凛はその士郎を横目に笑顔で応対する。
その答えが不満だったのか、長髪の少女は少しがっかりしたような表情を浮かべる。

「そうですか、お知り合いに会いに来られたんですね?」
「ええ、そうよ。これは……どのあたりかわかるかしら?」

10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:46:24.43 ID:rg3ZMcko
二人の少女に住所が記された紙を見せる。

「はい、わかりますよ。案内しましょうか?」
「いえ、ありがたいけどそれはいいわ。他にも見たいところがあるし」
「そうですか、では簡単に説明だけしますね」

そう言うと短髪の少女はその建物への道筋、近くの目印などを説明する。
凛はそれを聞きながら簡単にメモを取る。

「……そう、ありがとう。お世話になったわね」
「いえいえ、私もこれから仕事があるので失礼しますね」
「お二人さん楽しんでくださいねー」

そう言うと二人は、長髪の少女は大きく手を振りながら、短髪の少女は小さくお辞儀をして離れていく。
その姿をみて凛は小さく安堵の息を吐く。

「……ふぅ、どうなるかと思ったわ」
「だな、やっぱり不審だったのかな」
「でしょうね。あまり目立ちたくないのだけど……。まぁいいわ、行きましょう」

11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:52:55.86 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 04:45


「不幸だぁあああーっ」

買い物袋を片手にいつものようにお決まりのセリフを叫びながら狭い路地を器用に走り抜けていく少年。

「ちょっと待ちなさいよ!」

そしていつものようにその後ろを追いかけていく少女。

「はあっ、はあっ。……いったい上条さんが何をしたと言うんでせうか?」

埒があかないと感じた上条は観念して立ち止まり、息を切らせながらも少女に問いかける。

「ちょっと話があるって言っただけなのにアンタが逃げ出すからでしょうがっ!」
「だ、だったらいきなりビリビリはやめてくれませんかねっ!」
「そ、それはつい、というかなんと言うか……」

思わず目を逸らし、ごにょごにょと口ごもる少女の前髪のあたりにバチッと電流が流れる。
上条はそんな様子にふぅ、と大きく息をつく。

「あのなぁ御坂、用事があるなら簡潔に、ってあぁーっ! こんなことしてる間にタイムセールの卵が!」

その上条の言葉に美琴の前髪に一際大きな光が奔る。

12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:55:25.75 ID:rg3ZMcko
「―――ア、アンタはっ! ……そう、私よりも卵が大事なわけね」

「いや、そんな私と仕事どっちが大事なのって話ではなくてですね」
「うっさぁぁああーい!」
「ぎゃあぁぁぁ。やっぱ不幸だぁあぁぁああ」

美琴から放たれた電撃を右手の力で打ち消すと、肩で息をする美琴を尻目に一気に走り出す。
上条が家のほうに向かいしばらくの逃走を終えたあと振り返るとすでに美琴の姿はなかった。
途中にふと遠くから聞こえた、お姉様ぁぁああああ、という叫び声のおかげだろうか。

なんとか寮にたどり着いたとき、エントランスの前に地図のようなものであろうか、紙を覗き込む一組の男女が見える。

「ふぅ。……ん? どうかしたんですか? ここの寮に用事ですか」

上条の声に二人は顔を上げ一瞬だけ顔を合わせる。

「いえ、だいじょうぶです。気にしないでください」
「せっかく言ってくれてるんだし、聞いてみた方がいいんじゃないのか」

笑顔で断りを入れる少女に顔をしかめながら少年が口を挟む。

「いいのよ、別にわからないってわけじゃないし。……それにあまり一般人を巻き込むわけにはいかないでしょ」
「あのな、遠坂。そういう思わせぶりな言葉はまずいんじゃないか」

「ま、まさかまた魔術師、なんてオチはありえないですよね」

突然出てきた魔術師という単語に驚きの顔を見せ、二人は再び顔を合わせる。

13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:57:35.63 ID:rg3ZMcko
「へ? おい遠坂、どうなってるんだ」
「し、知らないわよ。けど……魔術師、ってわけではなさそうね」
「じゃあこの人が、ってわけじゃないのか」
「たぶん違うと思うわ。だったら向こうが気づくでしょ」
「そりゃそうか」

ああ、なるほどな、と上条は頷く。
魔術師という言葉への反応からいつものことかとなんとなく状況を把握する。
そして自分のことを知らないということは……。

「ひょっとして土御門の知り合いか。なら部屋まで案内しようか? いるかはわからないけど」
「知り合いというわけではないけれど。つちみかど……、ここなんだけどわかるかしら?」

凛は住所の書かれた紙を上条に見せる。
それを一目見ると上条はもう一度すぐに頷く。

「やっぱり土御門だな、間違いない」
「知り合いなの? ……ならお願いしようかしら、悪いわね」
「ああ、いいぜ、部屋は隣だしついて来てくれ」

上条はついて来るように言うと歩き始める。
二人もその後に続く。

14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 20:59:45.03 ID:rg3ZMcko
上条はああ、と思い出したかのように呟くと、そのまま顔だけ振り返り簡単に自己紹介をする。

「俺の名前は上条当麻だ、よろしくな」
「よろしく。俺は衛宮士郎、こっちは遠坂凛」
「いちおう聞いておくけど二人とも必要悪の教会の魔術師じゃないのか?」

「……ネセサリウス? というのは知らないけど。ええ、魔術師よ。衛宮くんはまだまだ半人前だけど」
「おい遠坂、そんな紹介はやめてくれ」
「あら、事実じゃない」
「うっ、それはそうかもしれないけど」

「ここだ、着いたぞ。おーい土御門、いるかー?」

チャイムを鳴らしながら大きく声を上げる。

「おっ、カミやんか、なんか用かにゃー」
「ああ、いや俺じゃなくてだな、なんかこの人たちが用らしい」
「おーやっときたかにゃー、それは助かったぜよ」

土御門が後ろの二人に目をやると、凛は一歩踏み出し上条の隣に並ぶ。

「初めまして土御門、遠坂凛よ。こっちは衛宮士郎、私の弟子兼相棒ってとこね」
「衛宮士郎だ、よろしく」
「ああ、よろしく、土御門元春だ。カミやんわざわざ悪かったぜい、またにゃー」
「いや、気にすんな、たいしたことじゃない」

15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:02:39.41 ID:rg3ZMcko
手を振りながら隣の部屋へ消えていく上条を横目に凛は土御門に尋ねる。

「……さりげなく追い払ったわね。彼も関係者みたいだけど聞かれちゃまずいわけ?」
「ああ、巻き込むにはまだ早いからな」
「……まだ早い? ふーん、どうにも怪しいわね。ま、関係ないか。それで禁書目録についてだけど」
「禁書目録の居場所ならもう知っているぞ。だが教えるにはまずやってもらいたいことがある。まぁ交換条件といったところだ」
「―――待ってくれ。居場所? 禁書目録って人なのか?」

禁書目録という言葉から完全に書物の類だと思い込んでいた士郎は驚きの声を上げる。

「そうだ。知らなかったのか? まぁそれほど重要なことでもないか」
「そうね、なら早く何をすればいいのかを聞かせてもらえるかしら」
「簡単だ、この少女をここに連れてきてほしい」

土御門は二人に一枚の写真を預ける。

(―――連れてくるだって?)
穏やかでない言葉に士郎は少し顔をしかめながら確認を取る。

「連れてくるってどういうことだ? まさか誘拐とかじゃないだろうな? そんなのはお断りだぞ」
「まぁ落ち着け、直接ではないが俺とは知り合いのようなものだ。嫌だと言われたらそこでやめてもいい」

「よくわからないな。駄目だったらそのまま帰ってくればいいっていうのか?」
「そうだ。だから誘拐なんて物騒な話じゃない。むしろ保護のためと言ってもいい」
「だったらあなたがやればいいんじゃないの?」
「俺は俺でやらなければいけないことがある。こう見えても多忙でな」

16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:04:28.72 ID:rg3ZMcko
(―――明らかに怪しいわね)
凛は訝しげに土御門の顔色を窺う。しかし、無理やりというわけでもないならやりようがあるはず。
この状況ではそれよりもとりあえず話を進めるほうが先決であろう。

「どう聞いてもうさんくさいんだけど。……まぁいいわ。で、その子はどこにいるの?」
「今はこのあたりだな、いちおうここの公園内にいるはずだ」

土御門の手のなかの端末を覗き込む。
ここの地理について詳しいわけではないが、どうやらここからそう遠い場所ではないようだ。

「公園内か、なら少し探せばわかるかな」
「でしょうね、そんなに広くもなさそうだし。さっさと済ませしょ。……じゃあ行くわよ、衛宮くん」

土御門から簡単に道の説明を受け、その場を立ち去ろうと歩きかけた二人の背中に声が届く。



「ああ、言い忘れていた。その少女の名前は――――」

17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:12:36.29 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 05:06


「うぅ、そういえば卵買えなかったんだった。不幸だ」
「とうま。どういうことか説明してほしいかも」
「ぐわっ、やめろ。上条さんは悪くないんですよ」

家に着いてすぐにうなだれ呟く上条にインデックスが噛み付く。

「いやいやいやいや、やめろインデックス。ちゃんとセールの肉は買ってきたんだから」
「はっ、とうまも時には素晴らしいことをするんだね」
「……まったく感謝の気持ちが感じられないんですけど。だいたいお前―――」

いつものようなやりとりを繰り返しいつものようにインデックスに説教しようとしたとき、上条の家のインターホンが鳴る。

「とうま、お客さんなんだよ」
「……はぁ、みたいだな。また土御門か? はーい、どなたさまですか」

これからインデックスにしっかりと言い聞かせようというときの来客に少し気が抜ける。
軽く溜息をつくとおざなりな様子で玄関に向かう。


「き、来ちゃいました」

18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:15:04.00 ID:rg3ZMcko
扉を開けるとそこには意外な人間、つい先日ここにやってきたばかりの五和の姿があった。

「へ? 五和? どうかしたのか?」
「ええっと、また学園都市のなかで魔術師の怪しい動きがあるとかで、あなたの護衛に来ました」

護衛という言葉に上条は一気に冷や汗が出るのを感じる。
先日の神の右席アックアの襲来が脳裏をよぎる。

―――あるいはさらに神の右席の襲撃だろうか。

最悪の場合アックアの再来という可能性すらあることに気づき、上条はぞっとする。
その不安の表情を見て五和は申し訳なさそうに謝罪する。

「……ごめんなさい」
「は? なんで五和が謝るんだ?」
「私じゃ不安ですよね。本当は女教皇様がくる予定だったんですけど、バッキンガムに行かなきゃいけないとかで」

「ああ、いやそうじゃないんだ。五和が居てくれるってのはほんとに心強いんだ」
「そ、そうですか。そう言ってもらえるなら嬉しいです」

「と、そうじゃなくてだな、また俺が狙われているのか?」
「あっ、いえいえ違います! そんなに危ない状況とかじゃありません。念のためで今回はあなたとは関係ないんです」

19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:17:32.91 ID:rg3ZMcko
上条の真剣な顔に五和は慌てて危険を否定する。

「そっか、なら良かった。アックアのときみたいにまた天草式の人達に迷惑かけると思うと申し訳なくてな」

そういえば、と先ほど土御門のところに二人組みのどこかの魔術師が来ていたことを思い出す。
何があったかはわからないがおそらくはその二人がらみのことだろうか。

「そんな、と、とんでもないです。あなたを守るのが迷惑だなんてとんでもないです」
「まあ確かに天草式の助けがなかったら俺はアックアに殺されてただろうけどな。―――ありがとな、助かった」
「いえいえ。ただ、この間は何の力にもなれなくて、結局逆に助けてもらっちゃいましたし、それでそのお礼といいますか、なんと言いますか……」
「そうだったのか。けど気にしなくていいのに。五和も無理して俺のところにいる必要はないんだぜ」
「無理なんてとんでもないです。……むしろ私としては一緒にいたいというかなんというか……」

五和は赤くなりながら俯いてごにょごにょと言葉を呟く。
その姿に上条は不思議そうに軽く首を捻る。

「ん? まぁいいや。ご飯でも作ってくれればインデックスも喜ぶだろ」
「とうま。その言い方だと私がご飯さえあればいいみたいかも」
「いやお前はそうだろう。ってぎゃぁああ、噛み付くな」

「ふふ、じゃあ早速何か作りますね。……あの、え、ええっと、い、一緒に作ってもらっていいですか?」
「ん? ああ、そうだな。さすがにお客さんに全部やらせるのはな。手伝うぜ」


21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/18(土) 21:30:06.75 ID:rg3ZMcko
すみません
>>20ミスりました

Oct.16_PM 05:24


「―――チッ、なンでオレはこンなとこブラブラしてンですかねェ」

片手に杖、片手に少女の手、一方通行は公園をゆっくりと歩く。

「ねぇねぇ、あれ買って、とミサカはミサカは上目遣いを計算して訴えてみる」

指を差しながらの打ち止めのクレープおかわり要求に思わず舌打ちで答える。

「さっき三つも食っただろォが。まだ食いたりねェってのか?」
「ええー、甘いものは別腹なんだよ、とミサカはミサカは女の子の秘密で攻めてみたり」
「別腹もクソもそれしか食ってねェじゃねェか。……チッ、しょうがねェなァ、ここから動くなよ」

ちょうど目に入ったベンチに打ち止めを座らせ一報通行は売り場へ向かう。

(―――ったく、似合わねェな)
溜息をつきながら歩く一方通行の携帯が震える。

「なンだお前かよ。くだらねェ仕事だったら殺すぞ」

22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:32:34.87 ID:rg3ZMcko
その『仲間』からの情報は、学園都市に入り込んだ外部からの侵入者がいること。
その侵入者は打ち止めの身柄を狙っているということ。
そして、その人間を捕らえるようにとのことだった。

「あァ、わかったよ、殺さなきゃいいンだろ。あン、なるべく無傷でだと? ……面倒くせェ」

電話を終えると携帯電話をポケットにしまう。
そして打ち止めの方を見ると、一方通行は軽く舌打ちをする。
今電話があったばかりだというのに、すでに見知らぬ人間が打ち止めに接触していた。

「あれ、おかしいな……君がラストオーダーであってるよな?」
「そうだよ。でもつちみかどって人はわからない、ってミサカはミサカは困り顔で首を傾げてみる」
「どういうことだ? ……これってこのまま帰ってもいいってことだよな」
「そうでしょうね。ま、そんなこともあるような気はしてたけど……いったいあいつは何が目的なのかしら」

やはりというべきか、土御門の話は適当だったらしく、目の前の少女にそんな人は知らないと一蹴された。
一体何が目的だったのだろうか。
凛と士郎は首を傾げながらも一応の義務は果たし終えたはずだと無理に納得する。
それならそれで仕方ないか、と考えたところに横合いから突然声がかかる。

「―――なンなンですかねェ、オマエラは。そのクソガキになンか用ですかァ?」

23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:35:34.08 ID:rg3ZMcko
まず二人に襲い掛かったのは言葉ではなく殺意。
背中に氷柱を差し込まれたような殺気に二人の体はとっさに魔術師として反応する。

「なっ――――!?」
「下がれ! 遠坂っ」

凛をかばうようにして士郎は一歩前に出て身構える。
その様子から戦意を読み取った一方通行は即座に攻撃を仕掛ける。

「―――ハッ、やるつもりか」
「なっ! がぁっ」

一瞬の移動で肉薄した一方通行は士郎を蹴り飛ばす。
鳩尾を突き刺そうかという蹴りをなんとか腕を交差し、受け止めるも、その威力で数メートル吹き飛ばされる。

「士郎っ! くっ」

声を上げながらも凛がとった判断は攻撃。
即座に魔術回路を発動させ一方通行に対してガンドを放つ。
一方通行はそれに右手を向け、凛に対して反射させる。

「ハ? そンなものが通用―――なンだと?」
「えっ? 弾かれた? ―――いえ」

―――その結果に対する二人の驚き。

正確に反射したはずなのにうまく跳ね返らず、さらに自分の体に異変があることへの驚き。
放ったガンドが右手に触れただけで防がれ、さらには全く違うものへと変わったことへの驚き。

24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:37:54.50 ID:rg3ZMcko
「……なンだ今のは? ぎゃははは、もういっぺンやってみるかァ?」

言いながらも一方通行の頭には疑問がよぎる。
先ほど聞いた話によると、打ち止めを狙うのは外部の人間だという話だ。
故に、その敵が能力者だとは思っていなかった。
どこかでも感じた胸にかかる圧迫感のようなものも気に掛かる。

「だいじょうぶか、遠坂」

立ち上がった士郎はガンドを弾かれ立ち尽くす凛の元へ駆け寄る。

「……まぁ、ね。でもこれはやばいかも。話し合いは……できたらラッキーってとこね」
「待ってくれ! こっちは戦うつもりはない」

士郎が大声で呼びかけるも一方通行はそれを一蹴する。

「残念でしたァ、こっちには戦う理由があるンだよォ」
「くっ、やるしかないのか」

―――どうやら話を聞いてくれるつもりはないらしい。
二人はいつ襲いかかってくるか知れない相手に対して身構える。

「やる気になったかァ? 行くぞ」

高速で向かってくる一方通行に士郎は拳を振り下ろす。

25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:41:35.09 ID:rg3ZMcko
「はぁっ!」
「ハッ、ぬるいンだよ。そらっ」

それを頭を振り簡単にかわし体を捻ると、身を守ろうとする士郎を再び蹴り飛ばす。

「が、―――はっ」
「へェ?」

今度は確実に捉えたと思った蹴りも士郎はなんとか腕で防ぐ。

「士郎っ?」
「ぐっ、まだだいじょうぶだ、遠坂」
「今のも受けるとはそこそこ戦い慣れてンのか? ……まァイイ。さァて、ここからどォしてやろうかなァ。殺しちゃまずいらしいからな」

見逃してはもらえそうにない雰囲気に慌てて対策を練る。

「さっきのスピードをみると逃げるのも難しそうね」
「とりあえず俺が囮になる。そのうちに逃げろ。いったん土御門のところへ」
「どうかしらね。あいつ逃げたほうから襲ってきそうな気がするけど」

「もォイイかァい? そろそろいくぜェ」

今にも飛び掛ってきそうな一方通行に士郎と凛は逃げるのを諦めて身構える。



「――――――いや、そこまでだ一方通行」

26 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/18(土) 21:45:53.43 ID:rg3ZMcko
その一方通行の動きを止めたのは二人が先ほど会った男の声だった。

「えっ? どうして?」
「おまえは土御門? なんでここに?」

土御門の突然の乱入に驚きを隠せない二人を横目に一方通行はなんとなく状況を悟る。

「あン? ……どォいうことですかァ? どンな茶番だ? これは」
「説明する必要はない、単なる顔合わせだ」
「オマエふざけてンのか? ぶち殺すぞ」
「そう言うな。これでも上からの指示だ。遊びでやってるわけじゃない」

「……チッ、そォかよ。で、帰ってイイか?」
「いや、紹介だけしておこう。遠坂凛と衛宮士郎、二人とも魔術師だ」

「……あン? 魔術師、だァ?」

聞きなれない単語に一方通行は思わず声を荒げる。

「まぁ海原と同じような種類の人間と思ってくれればいい」

(―――海原と同じ、だと?)
そういえば、と海原は超能力とは異なるようなよくわからない不思議な力を使っていたことを思い出す。
もちろんそれが魔術師だと言われてもピンとはこないが。
それに、どちらにしても今重要なことはそんなことではない。

27 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 21:48:38.03 ID:rg3ZMcko
「で、それがどォした」
「さっきおまえがうまく反射できなかったのはガンドと言ってな、不運の呪いだ。初体験だったろう」

反射できなかった。さっきの少女が放った力を思い出す。
完全に反射させたはずなのにうまくいかず、さらには体にも若干の違和感がある。

「へェ、呪いね。確かに完璧には反射しきれなかったが、もう覚えた。次はねェ」
「ならいい、それが目的だ。とりあえずこれを持っておけ」

土御門は文字のような模様のようなものが描かれた折り紙を差し出す。

「なンだこの紙切れは? なめてンのか」
「幸運のお守りだ、今おまえは運気が少し落ちているからな。今日の仕事料とでも思っておけ」
「はン、仕事料ねェ。嬉しくて涙が出てきそうだぜ」
「そういうな。それでも最高級品だ。それともう一つアドバイスしておいてやろう。―――打ち止めから目を離すな」

「……チッ、ありがたく聞ィとくぜ。帰るぞ、クソガキ」

一方通行は土御門からその紙を奪い取るように受け取ると、完全に話から置いてけぼりをくらっていた打ち止めに声をかけその場を立ち去る。
打ち止めは慌てて駆け寄り一方通行の空いている手をとる。

「えー、結局あれ食べてない食べたいー、ってミサカはミサカは可愛らしく駄々をこねてみたり」
「クソが。……もうメシなンだから一つだけにしとけよ」
「いえーい、おじさん、これとこれとこれください、ってミサカはミサカは隠れて三つも頼んでみる」
「てめェ、クソガキ、なにいきなり三つも頼んでやがる。ぶち殺されてェのか」

31 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/18(土) 21:57:41.65 ID:rg3ZMcko
またミスった、すみません
>>28

まるで何事もなかったかのような二人を見送りながら凛は恨めしげに尋ねる。

「……どういうことか説明してほしいんだけど」
「面倒なことをさせて悪かったな」

全く悪びれることもない土御門の言葉に凛は瞬時に激昂する。

「―――め、面倒ですって? 正直死ぬかと思ったわよ!」
「お、落ち着け遠坂。まずは話を聞こう。あいつは何者なんだ?」
「あいつは一方通行と言ってこの街で最強と呼ばれている人間で、ラストオーダーの保護者だ」

「最強? 噂の第一位ってやつか。……結局、土御門は俺たちとあいつを戦わせたかったわけだな?」
「理解が早くて助かる。おおむねその通りだ。もちろん他にも細かい理由はあるがな」
「何言ってんのよ、あんなのと戦わせるなんて。正直死ぬかと思ったわよ!」

「おい、遠坂。……それさっきも言ったぞ」
「あらかじめあいつには怪我をさせないよう言っておいたから問題ない」

問題ないとあっさり断言した土御門に疑問の声を上げる。

「問題ないですって? あいつはそう言われててもむかついたら殺すタイプの人間よ」
「それは確かに否定できないな。言われてみれば」

32 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/18(土) 21:58:40.67 ID:rg3ZMcko
なるほど、とにやけながら頷く土御門に凛は再び怒りを爆発させる。

「なんですって! アンタふざけてんの?」
「落ち着けって遠坂。要するにそうはならない確信があったんだろ?」
「そういうことだ。おまえらは悪人の部類には見えなかったからな」

「……まぁ確かにこいつは正義の味方気取りだけど」
「遠坂、その言い方には多分に悪意が感じられるんだが」
「……ほう、正義の味方ね」

正義の味方という言葉に思うことがあったのか、笑みを浮かべる土御門に約束の履行を求める。

「―――で、禁書目録に会わせてもらえるんでしょうね? これで会わせないなんて言ったら暴れるわよ」

「ああ、心配するな。約束は守る、付いて来い」

33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:04:10.76 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 05:29


「ったく、アイツは……いっつもこっちの話も聞かないで。―――ちぇいさぁぁあああっ!!」

美琴は八つ当たりぎみに自動販売機に強烈な蹴りを繰り出す。
自動販売機からガコン、とジュースの缶が一つ吐き出されるのと同時に美琴のポケットからもゲームセンターのコインが一枚こぼれ落ちる。
黒子はやれやれ、とそれを拾いながら美琴をなだめる。

「お姉様、はい落ちましたのよ」
「……いやいや、今日のはあっちのほうがおかしいわよ。だって……」

だが、そのコインを差し出すも自分の世界でぶつぶつと呟く美琴の目には入らないようだ。
黒子ははぁ、と一つ溜息をつくとそれを自分のポケットにしまう。

「……どちらかというといつも話も聞かないのはお姉様の方だと思いますのよ?」
「ち、違うのよ、今日はなんていうか、つい……」
「つい? なんですの?」

「……なんでもない」

35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:07:55.95 ID:rg3ZMcko
ごにょごにょと言葉を濁してはぁ、と元気なく溜息をつく美琴に黒子はいつものように唐突に抱きつく。

「もう、お姉様には私がいますのぎゃぁぁあああああ」
「いきなり飛びついてくるな! ばかっ」

その黒子をこれもまたいつものように電撃で迎撃する。

「はぁ。……ったく、アイツは」
「お姉様ぁぁああ、またあの殿方のことばっかり。いい加減私の気持ちを、って……はぁ、初春? なんですの?」

突然震えた携帯に黒子も同じように溜息をつく。
非番であったはずの風紀委員から仕事の連絡のようだ。
簡単に通話を終えると、黒子は肩を落として美琴に告げる。

「お姉様、申し訳ありませんが黒子は風紀委員に行ってきます」
「そう、気をつけて。……あんま無理しないのよ」
「お姉様も、変なことには首を突っ込まないでくださいませ」

テレポートで消える黒子を見送り、さてどうしようかという美琴に声がかけられる。

「―――お姉様?」
「アンタは……」

36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:10:45.34 ID:rg3ZMcko
振り返るとそこには自分と同じ顔。
首から提げているネックレスには見覚えがある。
ということは確か、……ミサカ10032号だろうか。

「これはこれはお姉様、何をしているのですか、とミサカは偶然を装って世間話風に話しかけます」
「偶然を装ってって……どうしたの? 何か用事でもあるの?」

「あると言えなくもないのですが、とミサカは言葉を濁します」
「ふぅん、でもわざわざ来るなんてよっぽどのことなんじゃないの?」
「確かにそうですが、だからこそです、とミサカは迷いを口にします」

(―――ということは危険なことなのかしら)
だとするとわざわざ首を突っ込むのはよくないかもしれない。
ふと、自分のことを慕う風紀委員の少女の顔が浮かぶ。

「言いたくないことなら言わなくていいわ。一人でなんとかできるっていうんなら無理に首を突っ込むつもりもないし」
「……そうですね。もう少し考えてみます、とミサカはこの場を後にします」

振り返り、去って行こうとする御坂妹に美琴は声をかける。

37 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:12:58.81 ID:rg3ZMcko
「けどね、困ったことがあるなら、……アンタが一人でなんとかできないっていうことがあるなら一番に私に言いなさい」

御坂妹は足を止めて再び振り返る。

「一番にとはどういうことでしょうか、とミサカは疑問を投げかけます」

「当然でしょ。―――だって私はアンタのお姉さんなんだから」

御坂妹は少し考え込むかのようにうつむく。
美琴はそれを見つめながらじっと待つ。

「―――わかりました。お姉様にお話があります、とミサカはお姉様に助けを求めます」
「ええ、聞くわ。何が起こっているの?」

「はい。上位固体、ミサカ20001号の危機についてです、とミサカはことの始まりから話します」

39 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:21:03.04 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 05:48


「さっきの御守りをみて思ったんだけど、聞いてもいいかしら?」
「ああ、何だ?」

禁書目録の居場所へと進む道すがら、凛は気になっていたことを土御門に尋ねる。

「土御門って、やっぱり陰陽師のあの土御門?」
「……あの、が何を指すのかは知らないが、おそらくはその土御門だろう」

「その土御門ならロンドンにいるって聞いてたんだけど?」
「ああ、確かにロンドンにはいた。だがまあいろいろあってな」
「……陰陽師の土御門? どこかで聞いたような……そういえば親父が昔そんな名前を言っていたような」

士郎が二人の間の話に昔の父との会話を思い出す。

40 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:25:00.91 ID:rg3ZMcko
「親父? 衛宮―――そうか、なるほど衛宮切嗣の息子か」
「切嗣を知っているのか?」
「まあな。とはいえ知っているといっても何度か会っただけだが」
「そっか」
「なるほど、それで正義の味方、か……」

「―――で、その土御門がこんなところで何をやっているのかしら?」
「何、と言われても普通に学生をやっているだけだが?」
「ふざけないで、知っているのよ。―――超能力者には魔術は使えないし、魔術師には超能力は使えない」

「なっ―――そうなのか? 超能力者でも魔術は使える人間はいるのかと思ってた」
「そっか、衛宮くんは知らないか。いい、超能力者ってのは体の回路自体が魔術師のそれとは違うのよ」
「そのとおりだ。―――だから俺は魔術を使えない」
「は!? ……どういう意味?」

てっきり魔術師として学園都市に潜り込んでいると思っていた凛は驚きの声を挙げる。
魔術が使えない、ということならば魔術師を辞めたということなのだろう。

「そのままの意味だ。簡単に言うと超能力者になれるように体をいじったんでな、魔術を使えない。それだけだ」
「それだけって。……それで済むことじゃないでしょ」
「済まないだろうな。だが今さら言ったところでどうにもならない」
「……確かに、それはそうでしょうけど、でもそんな簡単に―――」

「―――やめろ遠坂」

なんでもないことのように言う土御門に食ってかかろうとする凛を士郎が止めに入る。

41 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:26:32.17 ID:rg3ZMcko
「衛宮くん?」
「簡単じゃないはずだ。何があったかは知らない。けど少なくとも俺たち他人が気安く口を挟めるほどは簡単じゃないと思う」

そう諭す士郎の言葉に凛は気まずげに目を伏せる。

「……そうね。衛宮くんの言うとおりだわ。ごめんなさい、土御門」
「気にするな。―――ちなみに超能力者が魔術を使うとどうなるか知っているか?」
「いいえ。知らないわ」
「使えないんじゃないのか?」

「いや、使えるには使える。……だが、最悪の場合体が破裂して死ぬ」
「なんだって?」

その言葉の様子を想像し、二人は苦い表情を浮かべる。

「そういうことなのね。……ところで土御門、聞きたいことがもう一つ出来たんだけど?」
「なんだ?」

見覚えのある建物の前で凛が呆れたように尋ねる。

42 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:30:28.00 ID:rg3ZMcko
「なんで戻って来てるわけ?」
「戻ってきているわけではない。目的地に向かっているだけだ」
「いや、ここおまえの家だろ?」

ついさっき出てきたはずの建物に入りながら二人は不満の声を上げる。

「ついて来ればわかる、気にするな」
「気にするな、って言われてもね」

とはいえどうすることもできず、二人は土御門に言われるままに後ろに続く。
たどり着いた場所は先ほど訪れたのと同じ土御門の部屋。

「……着いたけど、ここアンタの部屋よね?」
「ここは、な。目的地はこっちだ」
「は? こっち、って隣の部屋?」

土御門は自分の部屋を通り過ぎて隣の部屋の扉の前に立つ。

「おーい、カーミやーん、いるかにゃー」
「なんだ、土御門? くそっ、手が離せない。おーい代わりにインぎゃぁああぁあ、不幸だぁぁあああああああーっっ!!」

中から先ほど会った上条の声と、何か大きな音、そして悲鳴が響く。

43 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:34:04.47 ID:rg3ZMcko
「ねえ、ここってさっきの上条って人の家よね?」
「……今の悲鳴を完全スルーとはさすがだな、遠坂」
「まあ、見ていればわかる」

「……うぅ、不幸だ。どうした土御門。―――おおそっちはさっきの魔術師の人たち」
「あがらせてもらってもいいかにゃー? こっちの人たちが用事があるってさ」
「はい? ひょっとして上条さんはまた魔術師の戦いに巻き込まれたりするのでせうか?」

「だいじょうぶだにゃー、運が良けりゃ面倒なことにはならなくて済むぜい」
「ううっ……不幸な上条さんはやっぱり巻き込まれ確定というわけですね」

土御門の言葉に上条は頭を抱えてその場にうずくまる。

「えっと、いいかしら。……禁書目録に会わせてもらえる?」


「―――――インデックスに?」

45 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:44:26.81 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 06:12


「うん、今の状態ならそんなには難しくないね。そういう記録のある原典ならいくつか残ってる」

聖杯戦争について簡単に説明すると、解決方法はあっさりと見つかった。

「ほんと? じゃあその原典っていうのを見せてくれない?」
「それはちょっと無理かも。それに普通の人に原典を見せるのは危険だと思うんだよ」
「ああ、俺もそう思う。またぶっ倒れかねないしな。……あのおっさんみたいに」

夏休みの終わりに訪れた一人の魔術師について上条は思い出す。

「そっか、ならここでその方法ってのを教えてもらえるか?」
「うーんそれもちょっと難しいと思う。簡単に教えたりできる術式じゃないかも」
「じゃあどうすればいいんだ? なんとかなるんだよな?」

「うん、私がその聖杯の残骸のところまで行けば他の人の魔翌力を使って完全に消滅させられると思うよ」
「なるほど、じゃあこの子を冬木まで連れて帰ればいいわけね」


「―――あのさー、インデックスちょっといいか?」

46 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:47:04.21 ID:rg3ZMcko
上条はふと頭をよぎった簡単な解決策を提案する。
それにできることならインデックスにはあまり魔術とは関わってほしくないという思いも強い。

「なに? とうまどうしたの?」
「いや、それでもいいんだけど、わざわざインデックスが行かなくても俺が行けばいいんじゃないか?」

上条は右手を握り締めながら尋ねる。

「うーん、今は聖杯が実体化していない状態だからそれは無理かも」
「実体化していない? よくわからないけどそのままじゃ触れないってことか?」
「ちょっと違うけどそう思ってくれていいよ。だからとうまじゃ無理。私が行く必要があるんだよ」

「そっか、まぁとりあえず俺も付いていくよ」
「わ、私ももちろんついて行きますよっ」
「よし、で、どうする? 出発は早いほうがいいのか?」

話がまとまったところで、上条は二人に問いかける。

「そうだな、悪用しようとしているやつがいるらしいし、早いほうがいいかな」
「そうね。ま、一分一秒を争うって話じゃないと思うけど」
「なら準備が出来次第出発ってことでいいか?」

上条がそう言うと、凛と士郎は頷き合い立ち上がる。
それを見た上条とインデックスもまた顔を合わせて遅れて立ち上がる。
五和も胸の前で握りこぶしを作り気合をアピールする。
その様子をみて、思い出したかのように凛は尋ねる。

「……えっと今さらなんだけどいいかしら?」
47 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:50:52.14 ID:rg3ZMcko
「どうした遠坂、まだ何かあるのか?」
「ええ、そちらの人はどなたなのかしら? ――――彼女?」

凛は五和を指しながら、ニヤリと笑い上条に尋ねる。

「いやいやいや、残念ながら上条さんには彼女とかそんな素敵なものはいないのです!」

五和のことを思ってか、大慌てで否定する上条に、五和は逆にうなだれる。
そういえば、と全員が五和の方を向き、自己紹介がなかったことに気づく。

「ああ、そっか。俺たちも名乗ってなかったな。俺は衛宮士郎、こっちは遠坂凛、魔術師だ」
「あ、えっと私は新生天草式十字凄教の五和といいます」
「新生天草式? ……どこかで聞いたことあるわね」

「天草式の神裂火織、って言えば聞いたことはあるかにゃー? その天草式だぜい」
「あの神裂火織の? ……なるほど、その天草式ね」
「知っているのか? 遠坂」
「ええ、神裂火織といえば世界に二十人いないと言われてる聖人の一人よ。聖人くらいは衛宮くんも聞いたことあるでしょ?」
「む、聖人か。……確かに話にくらいは聞いたことはあるけど」
「中でも五和はその神裂火織のライバルと言われるほどなんだぜい」


「―――えっ、えぇぇええええええええええっ!?」

48 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:53:09.96 ID:rg3ZMcko
その土御門の発言に驚愕の声を上げたのは他でもない五和自身だった。
彼女の絶叫は悲鳴にさえ似ていた。

「……あなた、そんなに凄い人だったなんて」
「えぇぇええええええ!? いえいえいえいえ! そんな女教皇様のライバルだなんて、と、とんでもないですっ!」

「あっれー、じゃあ五和は諦めてねーちんに負けを認めるのかにゃー?」

そういって土御門はニヤニヤしながら軽く首を上条の方へ向ける。

「―――えっ……あ、諦めません。頑張ります!」

それを見て五和ははっとして上条をちらりと一瞥すると再び拳を握りしめる。

「……なんだかよくわからないけど、なんとなくわかったわ」
「遠坂、俺はお前の今の発言こそよくわからないぞ」

軽くこめかみの辺りを抑えながら納得がいったというように声を漏らす凛。
それと裏腹にさっぱり掴めないといった様子の士郎。

49 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:57:37.61 ID:rg3ZMcko
「ま、衛宮くんにはわからないかもしれないわね」
「む、なんでさ? なんだかそこはかとなく馬鹿にされているような気がするんだが」
「あら、わかる? 気のせいじゃないけど別に気にしないくていいわ」

凛はそう答えて士郎にニヤニヤと笑いかける。

「……まぁいいさ。じゃあ行くとするか」
「そうね、あまりゆっくりしているのもどうかと思うし。……あなたたちもそれでいい?」

凛はその場にいた他のメンバーに確認を取る。

「ああ、まぁ俺はこういういきなりってのは慣れてるしな。……それもなんだか不幸だな」
「私はいつでもだいじょぶなんだよ」
「私も行けます!」

土御門にも目を向けると、いつの間にか誰かと電話で話していた。
凛を先頭に部屋の外へ出ようと動く。



「―――おっと残念、少し遅かったみたいだにゃー」

50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 22:58:46.59 ID:rg3ZMcko
しかし、その動きを電話をしまいながらの土御門の言葉がさえぎる。

「遅かった? どういうことだ?」
「まさか、もう聖杯の残骸に何かあったって言うの?」

凛の頭を様々な事態が駆け巡る。
今の状況ではそれほど害はないはずだが、人によっては使える物なのかもしれない。
それも聖杯に深く関わっている人間にとっては。


「ああ。―――マキリゾウケンが動き出したようだ」

51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/18(土) 23:02:52.91 ID:rg3ZMcko
Oct.16_PM 06:20


「カカカ―――――それでは始めるとするかの」

日の落ちた夕闇、とある公園、そこには二人の人間がひっそりと存在した。
―――あるいは二人とも人間ではなかったのかもしれない。

一人は年老いた老人。
そしてもう一人は少女。

「……それにしてもさすがアレイスター・クロウリーといったところか」

老人は独りごちながらアレイスターからの情報どおりに聖杯の残骸を少女に埋め込む。
それにより、少女からは大きな力が吹き荒れ、背からは巨大な翼が生えてくる。
周囲の木々や建造物を破壊し尽くした翼はやがて収束を始めると少女の体を飲み込み球体を型作っていく。
やがてそれは半径10メートルほどで安定し、そこから数体の人影が飛び出してくる。


「さてあと必要なのは……ラストオーダーといったか。―――行くがいい、サーヴァントよ」

61 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/19(日) 19:52:13.47 ID:1O1gmDMo
Oct.16_PM 06:22


「……なんだ?」

わずかながら地震にも似た小さな揺れを体が感じる。

「―――始まったか。となると次のマキリの狙いは打ち止めだろうな」

「ラストオーダーだって?」
「ん? どこかで聞いたような記憶が……」

「ミサカクローンの最後の一体だ。といえばわかるかにゃー? クローン達よりかなり幼いんだが」

先日会った御坂美琴に良く似た少女を思い浮かべ、その言葉に上条は頷く。
しかし、それと同時に疑問が浮かぶ、彼女のような少女がどうして。

「……あぁ、あいつか。なんであいつが狙われるんだ?」
「簡単に言うと打ち止めを使って聖杯を制御するためだぜい」
「待って。それはおかしいんだよ」
「そうね。制御どうこうの前に聖杯の残骸にはほとんど力はないはず」

土御門の答えを二人の少女が同時に否定する。

62 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 19:54:41.58 ID:1O1gmDMo
「どういうことだ遠坂?」
「言ったとおりよ。今回の聖杯戦争だって力を蓄えるのに前回から十年も待つ必要があったのよ」
「なるほど。わざわざラストオーダーを利用してまで制御するほどの力はないってことか」
「そ。だからそんな聖杯を使うことになんの意味もないわ」

「なんでさ。意味ないものなんて悪用できないだろ。要するに代わりのものでその力を補えばいいだけじゃないか?」
「あのね……そんなに簡単に手に入る程度の力じゃないのよ」
「そうは言ってもここは学園都市だろ? よくわからないけど別の何かがあるんじゃないのか?」

そう言うと士郎はこの都市の住人である上条に目を向ける。

「そんなに詳しいわけじゃないが、そんな力として使えるものなんて―――」

「―――あるぞ」

ざっと考えても思いつかなかった上条が否定しとうとするのに対して、土御門はあっさりそれを肯定する。

「えっ、嘘? ほんとに?」
「―――天使だ」

「……天使?」

63 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 19:57:23.50 ID:1O1gmDMo
天使という言葉で上条の頭に一人の少女が思い浮かんだ。

「天使、まさか……風斬まで利用しようってのか!?」
「それは違うな、カミやん。利用しようとしているんじゃない。すでに利用しているんだ」
「なんてことだ。インデックス、そんなことできるのか?」

「……うん、確実じゃないけど。その聖杯の残骸っていうのを使うのにひょうかを利用すればかなりの力が使えるかも」
「くそっ、またあんなことになってるってのかよ。早く止めなきゃ」

上条は前方のヴェントが襲ってきた日の風斬氷華の姿、そして街の混乱を思い出す。
凛と士郎には天使、という言葉についてはわからなかったが、それでもそれが巨大な力だということは感じ取れた。

「……よくわからないけどまずいことになってるみたいね」
「ああ、とにかく動いたほうがいいんじゃないか?」
「そうだにゃー、マキリゾウケンを押さえるぜい」

「―――待てよ土御門、まずは打ち止めを保護するのが先じゃないか?」
「いや、聖杯が先だにゃー、なんせ放っておくとそのまま暴走してしまうぜよ」
「な―――暴走? それってまずいのか?」

その単語に危険を感じた上条は、士郎と凛に顔を向ける。

「……ええ、あれが暴走となるとかなりまずいわね」
「下手をするとこの街にもかなりの被害が出ることになる」

64 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 19:59:52.96 ID:1O1gmDMo
一瞬、士郎の脳裏に幼い頃に体験した地獄のような光景が蘇り顔を顰める。
その二人の様子から上条も聖杯が優先なのだと一応は納得する。

「そっか、話はわかった。けど打ち止めは放っておけない。俺が向かうから他のみんなは―――」
「ああ、カミやん心配ないにゃー。打ち止めにはすでにちゃんと守ってくれるやつがついているぜよ」

「は? ……ああ、そういやあいつがついているのか」

上条は先日のヴェントの事件のとき打ち止めの保護者のような男と電話したのを思い出す。
それに対して土御門はめずらしく驚いたような表情を浮かべる。

「ん? なんだと、カミやん知り合いだったのか?」

「いや、会ったことはないんだが、電話で少しだけ話したことがある」
「へえ、それは意外だにゃー。おもしろいことになっているみたいぜよ」

上条当麻と一方通行、その絶妙なすれ違いに土御門は無意識に笑う。

65 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:03:18.76 ID:1O1gmDMo
「どういう意味だ? まあいいやつみたいだったけど、だいじょうぶなのか?」
「ああ、実力的には問題ないと思うぜい」

土御門の保証に上条は軽く頷く。

「……そっか、ならそっちは任せるとするか。インデックスはここで待っていろ。危険だ」
「いやだよ。私も行くんだよ。ひょうかはともだちなんだから」
「駄目だ。風斬は俺に任せろ。おまえはじっとしてるんだ。五和はインデックスを見ていてくれ」

「むっ、とうまじゃ聖杯のことなんにもわからないくせに。とうまのほうがよっぽど危険なんだよ」
「そ、そうです。せっかくここにいるのに私があなたを守らないでどうするんですか?」
「いやいや、いくら上条さんでも女の子を盾にはできませんよ」

「俺も反対だ。女の子には危険だろ」
「……衛宮くん、まさか私にも待ってろなんて言うんじゃないでしょうね?」
「いや、そんなことは……だいたい遠坂は来るなって言っても来るだろう?」
「それはそうだけど、そう言われるとなんか悔しいわね」
「遊んでいる時間はないぜい、行くぞ。心配なら自分で守ってみせろ」

66 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:11:30.65 ID:1O1gmDMo
Oct.16_PM 06:42


「クソッ、なンなンだ、このデカブツは? おィ、ちゃんと下がってろよ」

打ち止めを気にかけながらも突然襲い掛かってきた、人と呼ぶにはあまりに巨大な肉塊と対峙する。
おそらくは打ち止めを狙ったものだろう。

(―――これが土御門が言っていたやつってェわけか)
先ほどの土御門の忠告が頭をよぎる。

「■■■■■■■■■■」

凄まじい力で振るわれる剣をかわすと一方通行は懐に飛び込む。

最初に襲い掛かられた際には即座に銃弾を食らわせたが、まるで効果はなかった。
先ほどは巨大なコンクリートの塊をベクトルで操作し、巨人の頭部に直撃させたが、それでも全くダメージはないようだった。
となると同じように遠距離から攻撃しても効果は薄いと考えられる。

「コイツならどうだ? ……あン?」

隙のできた体に右手を突き出し、巨人の胸に触れる。
触った感覚とそのベクトルに違和感を覚えるも、なんとかベクトルを制御、血液を逆流―――心臓を破裂させる。

「■■■■■■―――」

(―――こンだけやりゃ確実に死ンだだろォ)
断末魔の雄たけびを上げながら巨体は崩れ落ちる。

67 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:14:12.03 ID:1O1gmDMo
そこまでして一方通行は先ほどの土御門からの電話を思い出す。

「……しまった、殺しちまったか。しかし、このバケモノはなンだったンだ? ……おィクソガキ、無事だろォなァ?」
「―――うわぁぁあ、後ろ後ろ、ってミサカはミサカは驚きをあらわにしてみる」

打ち止めの声に振り返ると、先ほどとなんら変わらない平然とした姿で巨人がそびえ立っていた。

「なンだと!? 再生能力、いや、確実に殺したはず。なら生き返った? ……となると蘇生能力? ンなバカな」
「■■■■■■■■■■■!!!」

巨人の振り回す剣によって破壊されたコンクリートの破片が砂利のように飛び散る。
一方通行は打ち止めの前に立ち、それらを吹き飛ばす。

「いつ巻き込まれないとも限らねェ。……チッ、ここは引くか」

巨人との間合いを測りながら打ち止めとの距離を詰める。
その一方通行を予想もしない場所からの別の攻撃が襲う。

「喰らいなさい。―――轟雷(ユピテル・ロック)」
「ぐっ!? なンだこりゃ? うまく跳ね返らねェ?」

「上だよ、飛んでる? ってミサカはミサカは今度は指差して驚いてみたり!」

(―――この感じ、これも魔術ってやつか?)

68 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:17:55.37 ID:1O1gmDMo
その一方通行の感覚は正しかった。
突然、空から降ってきた雷をそのまま返そうとしたが、それは形を変えてあらぬ方向に飛んでいってしまう。

「―――なんですって!?」
「ハッ、面倒臭ェが、それほど大変ってわけじゃねェなァ」

自分の魔術があっさりと破られたことに空の女は驚きの声をあげる。

「■■■■■■■■■■」
「にしてもクソが、こいつだけでもうっとォしいってのにもう一匹いたってのかよ―――」


「―――――いや、三対一だ」

蒼い影から放たれた赤い槍を紙一重、跳躍でかわす。

「クッ、速ェ」
「■■■■■■■■!!!!!」
「―――紫光弾(ユピテル・ロッド)」


その着地を狙い巨人が剣を振るいコンクリートの破片を吹き飛ばし、さらに魔術師の放つ光の弾も一方通行を襲う。
飛んできた破片を打ち落とすも、あらぬ方向へ弾き飛ばされた光弾はさらにコンクリート片を巻き上げる。

「チッ、クソガキ、避けろ!」
「うわあぁぁぁああ!!」

無駄だとは思いながらも打ち止めに檄を飛ばす。
避けられないと悟った打ち止めは目を瞑り体を丸める。
そして迫る打ち止めへのコンクリートの破片。



――――――オレンジの閃光がそれを薙ぎ払う。

69 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:21:43.24 ID:1O1gmDMo
「いったい何が起こってるってのよ」

美琴は戸惑っていた。
妹から打ち止めを狙う侵入者がいると聞いていたが、まさかこんな状況だとは思わなかった。
とてつもない巨人が一人。
全身が蒼に、朱い槍を持つ男が一人。
空に浮かぶローブの女が一人。

そして―――――。

「お姉様っ!」
「オマエは、……超電磁砲か」
「……一方通行」

美琴と一方通行の視線が交錯する。
美琴の心に様々な感情が渦巻く。―――怒りや憎しみ、その他にも。
確かに妹から聞いていた。一方通行が打ち止めを守っていると。

70 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:24:39.10 ID:1O1gmDMo
だがそれを聞いても美琴の頭には疑問しか浮かばなかった。
一方通行が? なぜ? 何のために? どうして今さら? 何かを企んでいるのか? 何がどうなってこんなことになっているのか。
その疑問に対する妹の答えは一言で表すならば、贖罪、だと。
だからどうだと言うのか。そうだとしても、今さらそんなことを言われても自分には一方通行を許すことなどできそうにない。
けれども妹は言った。―――お姉様が一方通行を許す必要などありません、と。

ならばそれでいいのだろう。
だいたいあれは自分にだって責任がある。
妹達を殺したのは自分でもあるはずだ。
それを今さら何がお姉さんだ。
自分で行っておきながらなんという欺瞞だろう。思わず頬が引きつりそうになる。
あるいはこれも贖罪のつもりだったのだろうか。

―――ならば皮肉なことに、一方通行と御坂美琴は似た者同士ということだろうか。

そんな言葉が頭をよぎり、思わず笑い出しそうになる。
だが、とりあえずこの場では一方通行は、打ち止めを、妹を守っているということだ。
美琴は目を閉じて一瞬気持ちを静める。
そして目を開くとわずかに身構える一方通行に尋ねる。

「……何なのよ、こいつらは? 一体何者? ―――なんで打ち止めを?」

71 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:26:46.91 ID:1O1gmDMo
感情を持て余していたのは一方通行も同じだった。
この場に御坂美琴が現れたこと、それは完全に想定外だった。
相手が自分にいい感情を抱いていないのは当然のことだろう。
いい感情を抱いていない―――そんな生温いことを考えた自分の愚かさが可笑しくなる。

当然だ。
御坂美琴が自分に抱く感情など決まっている。憤怒、憎悪、殺意、それに類するものしかないはずだ。
あんな出来事があってそれがないとするならば、それこそなんらかの欠陥だろう。
だとするならば、偶然か必然か、偶然であるとすればこの場での鉢合わせは最悪であると言える。
もしかしたらこの瞬間に襲い掛かられるかもしれない。―――いや、それはおかしなことでもなんでもない。
だが―――それだけは避けなければならなかった。
御坂美琴は知らないだろうが、ここで二人が戦って犠牲になるのは打ち止め、彼女の妹なのだ。

―――それだけは絶対に許されない。
しかし、それを、打ち止めが御坂美琴の妹だということ、そして自分が敵ではないことを説明できるとは思えない。

だから助かった。
美琴が打ち止めという言葉を使ったことが。少しは事情を知ってくれているということが。
そのおかげで少し肩の力を抜くことが出来た。

「……知るかよ、このクソガキを狙ってるみてェだが。こいつらに聞いてくれ」

72 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:28:47.25 ID:1O1gmDMo
美琴は、比較的話の通じそうな蒼い男に顔を向けると、男は笑みを浮かべて答える。

「そっちの子を渡してくれればよしだ。渡さないってんなら奪って連れて行くまでだ」
「ふざけないで。どっちもごめんよ」
「気の強い女は嫌いじゃねえが、残念だが十年早いな」
「あんたなんかこっちから願い下げよ」

「そうかい。―――なら死ね」
「ハッ、そォ簡単にやらせるかよォ!」

そういうと一方通行は拳銃を取り出し即座に発砲する。

「おっと……残念ながら当たらないな」

それを蒼い男は朱の槍でこともなげに払い落とす。

「チッ、コイツにも効かねェか」
「生まれつきでな。そういうわかりやすい飛び道具は効かないんだよ」

「ハッ、要するに近づいてぶちのめしゃイイってンだろ?」
「―――やってみろ。行くぞっ!」

蒼の男の突進に白の男も突進で応える。

73 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:38:06.22 ID:1O1gmDMo
Oct.16_PM 06:43


「こっちで本当にあってるのか?」

土御門の指示に従い、六人は走る。
あまりにもあっさりと道を示す土御門に上条は疑問を抱く。

「カミやんは心配性だにゃー、土御門元春は嘘のつけない正直者で有名ですぜい」

「もうその発言自体が嘘まみれなんですけどっ! ……ていうか周りに人が居なくないか?」
「それはおそらく人払いの魔術を使ってるんだと思います。ほら、あのアックアのときみたいに」
「ああ、なるほど。ということはこっちで正解ってことか」
「そのとおりだぜい。―――っと、どうやらお迎えのようだ。ということはやっぱり正解ということだにゃー」


―――向かう先には、目隠しをした、地面まで届く程長い髪の女が立っていた。

「……嘘でしょ? あれってまさかライダー?」
「そんな、サーヴァントだって?」

突如前触れもなく目の前に現れたサーヴァントに士郎と凛は驚きをあらわにする。

「サーヴァント? あれがサーヴァントか?」
「ええ、まずいことになってるわね。サーヴァントとまともに戦えるとは思えないし」
「サーヴァントってそんなにやばいのか?」

74 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:40:57.89 ID:1O1gmDMo
聖杯戦争について、サーヴァントについては先ほど一通り上条も説明を聞いていた。
それでも上条にはどうにもピンとこなかったが、二人の戸惑いようをみる限り相当まずい状況だということはわかった。

「そうね、たぶん説明しただけじゃわからないと思うけど」
「……弱点とかはないのか?」
「そりゃ正体がわかれば弱点もわかるかもしれないわ。死に際なんかも歴史に残ってるでしょうし」
「ということはあいつのことはわからないってことなのか?」
「そうね。残念だけどあいつの正体は知らないわ。あまり戦ってないし」

「―――正体ならわかるかもしれないんだよ」

どうにも状況が好転しそうにないところで、インデックスがその知識をもって話に割り込む。

「ほんとか? インデックス」
「うん、あの眼帯なんだけど、あれは邪眼の力を封印するものなんだよ。おそらくだけどギリシャ神話由来のものだと思う」

「……ギリシャ神話、ね」
「邪眼を封印ってことは、まさか。―――メドゥーサか?」

士郎のその呟きにも似た言葉にライダーは口の端を少しだけ上げることで答える。

75 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:43:58.01 ID:1O1gmDMo
「メドゥーサ? ってどんなやつだったっけ?」
「もう、とうまは何にも知らないんだから。メドゥーサって言えばゴルゴン三姉妹の末娘なんだよ」

「……いや、インデックスさん、その説明じゃ上条さんにはなんにもわからないんですけど」
「メドゥーサっていうと眼で見た者を石に変えてしまう力があるんじゃないですか?」
「石に? どうやって防ぐんだ?」
「えっと、確か神話では鏡の盾でその力を反射させたはずです」
「だったら同じようにすればいいんじゃないのか?」

「無理ね。そんな都合よく馬鹿でかい鏡が転がってるわけないじゃない。それに―――」
「普通の鏡じゃダメだと思うんだよ。ペルセウスの盾はアテナから授かったというもの凄い霊装なんだよ」
「そういうこと。だいたい今は封印してるんでしょ? 用意した盾に向かってわざわざ邪眼を使ってくれるとは思えないわ」
「ってことはどうするんだ?」
「さあね。特に策はないわ。……けどなんとかするしかないでしょ」

「そっか―――いや、まてよ。インデックス、俺の右手ならなんとかならないか?」

上条はふと思い出し、自分の右手を握り締めながらインデックスに尋ねる。

「うん、基本的にはサーヴァントっていうのは霊体みたいなものだから触れることができれば消えると思うんだよ。確実とは言えないけど」
「……どういうこと?」

「俺の右手は幻想殺しって言って、あらゆる異能を打ち消すことができるんだ。たとえば魔術なんかも」

聞いたこともない力に凛は目を丸くして驚く。

76 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:46:37.02 ID:1O1gmDMo
「はぁ? ―――なんてデタラメな力。……けどこの状況ではありがたいのかしら?」
「ああ、接近戦に持ち込んで触ることさえできれば」
「簡単に言うわね。それかなり難しいわよ」

上条の案には同意したいところだが、ライダーに接近するというのはそれほど容易い事ではないだろう。
実際に戦ったことのある士郎もそれに続く。

「だな。動く速さなんかも尋常じゃないからな」
「でもあいつ素手みたいだし、どっちにしろ接近戦になるんじゃないか? 混戦になればなんとか」
「いいえ。ライダーは鎖つきの馬鹿でかい釘を持っていたはずよ。……それに、アイツの場合はどうかしら?」

そういって凛が指差した先には長刀を持った侍が静かに佇んでいた。

「久しいな。セイバーのマスターよ。ふむ、そちらはアーチャーのマスターであったかな」
「侍だって? ……確かに刀相手だとちょっと厳しいな」

「そちらは初顔だな、名乗っておこう。私はアサシンのサーヴァント佐々木小次郎」
「佐々木小次郎だって? あの佐々木小次郎か?」
「正確には違う存在だが、まぁ同じようなものであろう」

77 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:48:52.00 ID:1O1gmDMo
次々と現れるサーヴァントに凛はふと思い出す。

「……まさかセイバーやアーチャーも出てくるのかしら。それはちょっとまずいわね」
「いや、まて遠坂。むしろ二人は味方に付けられないか? こいつらも無理やり従ってるって感じじゃなさそうだし」
「どうかしらね。そううまくいくとは思えないけど。……いえ、この状況、やってみる価値はありそうかしら」

「―――いいえ、残念ですがセイバーとアーチャーは存在しません」

少しだけ見えてきた光明をライダーはあっさり否定する。
その言葉に舌打ちをする凛に対して士郎は逆にはぁ、と息をつき笑みを浮かべる。

「……アンタ、なんで笑ってんの?」
「いや、間違ってもセイバーとは戦わなくて済みそうだからな」
「……そうね」

凛もかつての自分の相棒であった赤い騎士を思い浮かべ頷く。

「聞いていいかしら? どうしてセイバーとアーチャーはいないの?」
「聖杯がセイバーとアーチャーを取り込む前に破壊されたからです。臓硯にはセイバーとアーチャーは再現できなかったようです」

たいして期待もしていなかった質問に対して、意外にもあっさりと返ってきた答えに二人は納得する。

78 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:51:39.53 ID:1O1gmDMo
確かに聖杯を壊したのはセイバーだったし、そのときまだアーチャーも消えていなかった。
はっきりではないが、上条もその様子からサーヴァントが二人いないという状況をなんとなく理解した。

「そうか、それなら少しは気は楽、ってことでいいのか?」
「どうかしら? つまりサーヴァントは確実にあと三体も出てくるってことでしょ?」
「くそ、あと三体だって? インデックスは下がってろ。土御門、インデックスを……あれ土御門?」

「あ、あの、つちみかどさんならここは任せたと言って結構前に向こうに走って行きましたよ」
「なんだって? あいつこの肝心なときに―――」

「おい、来るぞ、アサシンは俺がなんとか足止めする。三人はその間にライダーを頼む。―――投影開始(トレース、オン)!」

士郎は干将・莫耶を投影し、刀を構えるアサシンと向かい合う。

「なんとかって、独りで? ちょっと無茶でしょ? ってもう仕方ない―――」

と、凛の気がそれた一瞬を狙っていたのか、あるいは宣戦の布告かライダーは釘を凛の横顔に投擲する。

「えっ、しまっ―――」

回避が間に合わない判断した凛はとっさに右手を顔の前にかざして受け止めようとする。

79 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:54:02.71 ID:1O1gmDMo
―――が、その凛とライダーの間に上条が割り込みその右手で受け止める。
その右手に触れるとバキン、と派手な音を立てて、釘は鎖ごと消え去る。

「ふぅ、良かった。ちゃんと消えるみたいだ。危なかったな、だいじょう―――」
「―――何やってんのよ、バカっ!!!」

釘がちゃんと消えたことに、凛が無傷であることに安心する上条に、凛はためらわず罵声をあびせる。

「……どうして上条さんは怒鳴られているのでせうか?」
「……助けてくれたことには礼を言うわ。ありがと。けど、これであなたの力がばれちゃったわよ」

「あ――――!」
「……その力で不意打ちならなんとかなったかもしれないのに……」

ライダーは目の前で起こった不可思議な現象に首を傾げる。
見たところによると魔術的な力で破壊されたようには見えなかった。
どちらかというと、ただ消えたように。

「……どういうことです?」

80 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:56:06.26 ID:1O1gmDMo
疑問はそのまま口からこぼれる。
しかし体で受け止めることなくわざわざ右手を使ったということは、右手でなければ使えないということだろうか。
いや、たまたま右手だっただけで、左手でも同じことができるかもしれない。
となると、あるいは四肢でならできるのかもしれない。
どちらにしろ今の現象の本質が消滅であるならば、自身の体にも同じことが起こるかもしれない。
触れるだけで消されてしまう。そんなことがあり得るのか?

「―――どちらにしても、あなたとの接近戦は危険と思っておいたほうがいいですね」

「……ほら、完全にばれてるじゃない……」
「……す、すいませんでしたぁ。……いや、まて、任せろ……」
「……えっ、まだ何か手があるの……?」

上条は思いついたようにライダーに向き合うと大きく声を張る。

「接近戦? はっ、甘いんじゃないか? ―――まさか近づかないと使えないとでも思っているのか?」
「えっ、嘘? そうだったの?」
「ああ、お前にはまだ見せたことなかったけどな」

「……そうですか。―――それでは使ってみてはどうでしょうか」

平然とそう返すライダーの言葉に上条は気まずそうに目を逸らす。

81 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 20:58:19.38 ID:1O1gmDMo
「……くそっ、だめだったか。……まさかアウレオルスを追い詰めたこの上条さんの素敵演技力が通用しないとは……」
「ダメに決まってるでしょ!! アンタ馬鹿じゃないの」
「わ、私も今のはちょっとどうかと……」

「ううっ、こんなことなら土御門かオルソラあたりにでもハッタリの使い方を教わっておくんだった」

凛はうなだれる上条にがーっとまくし立てる。
それに横から五和も小さな声で同意する。

「だ、だいじょうぶだ。前向きに考えれば、逆にこの力であいつの動きをある程度コントロールできるかもしれない」
「……そうね」

その意見には凛も頷く。
確かにその力をわかっているということはライダーも迂闊には上条に接近できない。
凛は横目でちらりと二本の剣でアサシンと切り結ぶ士郎を窺う。

「……士郎がなんとかしてくれているうちに、勝負をつけるわよ」

その言葉に槍を構えた五和と上条がライダーに突撃する。

82 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:08:53.59 ID:1O1gmDMo
Oct.16_PM 06:51


「三対二でしかもこの子を守りながら、か。きついわね」

三者三様の攻撃を一方通行が一人で捌く。
その影で打ち止めに被害が及ばないよう美琴がフォローする。

「ハッ、オマエはそのクソガキ連れてさっさと消えろ。邪魔だ」
「なによ、一人で戦おうっていうの? どういうつもり?」
「どォいうもクソも足手まといだっつってンのがわかンねェのか?」
「一人で三人相手にできると思ってんの?」
「オマエら足手まといがいなくなりゃ全力が出せンだよ」
「でもそんな事言ったって―――」


「―――俺もその案に賛成だ」


突如、二人の言い争いは第三者によって遮られる。

83 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:10:44.77 ID:1O1gmDMo
「……あン? てめェ、何しにきやがった」

一方通行は同じグループの人間がこの場に突然現れたことに驚きの声を上げる。

「は? えっ、あなたは?」

美琴は突然現れた男が、よく知る男の知人であったことに戸惑いの声を上げる。

「決まってるだろう、お前を助けに、だ」
「ハ? そンなもンいらねェっつってンだろォが」
「そう言うな。この場では打ち止めの安全が優先だろう?」

「……チッ」
「ちょ、ちょっと、一体何がどうなってんのよ」
「え、えっと、つまりミサカはどうしたらいいんだろう、ってミサカはミサカはパニックに陥ってみる」
「つまりここは俺と一方通行に任せて、打ち止めを連れて逃げろということだ」
「いきなり逃げろって言われてもね。……それに安全なとこなんかあるの?」

「この道をまっすぐ行け。すると広場に出る、そしてそこから北に延びる道を真っ直ぐ進め」

土御門は今自分が来た方向を指差し、簡単に指示を出す。

「は? 北に? それで何があるっていうの?」
「行けばわかる。急げ。お前もそれでいいな?」

土御門が目配せをすると、それに合わせて一方通行も軽く頷く。

84 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:12:57.72 ID:1O1gmDMo
「……わかったわ。とりあえずここは任せる。別にあんたがどうなろうが私の知ったことじゃないしね」
「……あァ、とっとと消えろ」

「それでも、この子にとってそれが必要なら、それを望むなら……あんたは生きなきゃいけないと思うわ」
「そォだな。……わかってンだよ、ンなことは」

「そう、ならいいわ。……任せたわよ。さ、行きましょ」
「……気をつけてね、ってミサカはミサカは心配してるんだから」

気をつけるのはお前らのほうだ、という言葉をぎりぎりで飲み込む。
去っていく二人の背中を見送りながら一方通行は抱いていた疑問を口にする。

「で、オマエが言ってた場所は安全なンだろォなァ? 何があるってンだァ?」
「何を言っている、この状況で安全な場所などどこにもありはしない。―――ただ、そこにはお前が最も信頼している人間がいる」

(―――信頼している人間だと?)
思いがけない言葉に一方通行は眉を顰める。
海原のことだろうか、いや、たとえ同じグループの仲間であっても海原のことをそこまで信用などしていない。

―――そうではない。どれだけ考えてもこの状況で信頼の置けるほどの味方など自分にはいない。

85 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:15:28.66 ID:1O1gmDMo
「ハッ、何言ってやがる。オレは味方なンざ信頼しちゃいねェよ」
「そうだろうな。―――ならば敵ならばどうだ?」

「あァン、敵、だァ? なンで敵なンかを……チッ。―――なるほどそォいうことかよ」

信頼している敵、という言葉に一方通行は一人の少年を思い浮かべ顔を顰める。
かつて学園都市最強である自分を倒し、クローンたちを救ったヒーローの姿を。

「そういうことだ。心配は無用だ」
「……話は済んだか? 行くぞ」
「そう慌てるなランサー。―――いや、クーフーリンと呼ぶべきか?」

突然呼ばれた真名に、ランサーの表情が変わる。

「―――てめぇ」
「はァ、クーフーリンだァ?」

「そのとおりだ。こいつらは人間ではない。過去の英雄が現界したものだ。まぁ体のある幽霊とでも思っておけ」

人間ではないというとんでもない言葉にも先ほどの奇妙な感触を思い出し納得する。

86 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:17:44.58 ID:1O1gmDMo

「へェ、人間じゃねェときましたかァ? クーフーリンってのはケルト神話だったっけなァ? ならあの槍は―――ゲイボルグだってのか?」
「ああ、あれは呪いの槍だ、気をつけろ。そのでかいのがヘラクレス、上に居るのがメディア、どちらもギリシャ神話だったかな」

「ほう、詳しいな。―――貴様、何者だ」
「別にたいしたことはない。もう聖杯戦争からは半年以上が経っているんだからな。少し勤勉な人間なら知っていてもおかしくはない」
「そうかい。……だがそんだけ詳しけりゃ勝てねえってのもわかりそうなもんだがなぁ」
「確かに俺の力ではどう頑張ってもお前を倒すことはできないだろうな、まぁ俺の話は基本的にこいつへの説明とアドバイスだ」

「は、なるほどな。―――で? 時間稼ぎはそろそろいいか?」

不適に嗤うランサーに対してキャスターは苛立ちをあらわにする。

「あなた! わかっていながら付き合ったの?」
「ああ、その方が全力で戦えそうなんでな」
「馬鹿なことを。……追いなさい、バーサーカー」

「■■■■■■■■■■■■!!!」

咆哮と共に巨人が跳ぶ。

「チッ、行かせるかよォ」
「―――いや、悪いがお前は俺の相手をしてもらおう」

その進路を塞ごうとした一方通行をランサーが襲う。
赤い槍が一閃、肩を掠めるとそこからわずかに血がにじむ。

「グッ、これもうまく反射できねェか」
「だから気をつけろと言っただろう。伝説の槍だぞ」

88 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:19:53.32 ID:1O1gmDMo
ランサーは槍を軽くくるりと回すと肩に乗せるように置き、ニヤリと笑う。

「ま、あの嬢ちゃんたちを追いたいなら先に俺たちを倒すんだな」
「ハッ、面白ェ、ぐっちゃぐちゃにしてやンよォ!」

ぶつかり合う二人を横目にキャスターはゆっくりと地面に近づき土御門に向かい合う

「さて、私の相手はあなたがしてくれるのかしら?」
「仕方ないだろう。とはいっても神代の魔女には役不足だろうがな」
「よくわかってるじゃない。今ならまだ見逃してあげることもできるわよ?」
「そうしたいところなんだがな。あいにくとそういうわけにもいかない。……それに、負けると決まったわけでもない」
「あら、あなた程度が本気で言ってるの?」

「さぁどうだろうな。とりあえず魔法名を名乗っておく、覚えておけ。―――背中刺す刃(fallere825)」
「行くわよ」

高速神言に対抗するため、キャスターが指を向けたときにはすでに土御門は折り紙を取り出し詠唱を始めていた。

「―――青キ木ノ札ヲ用イ我ガ身ヲ守レ(デクのボウどもせめてタテとしてヤクにタて)」
「―――業火(エトナ)」

二つの呪文がぶつかり轟音と共に辺りが土煙に包まれる。

89 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/19(日) 21:31:57.78 ID:1O1gmDMo
Oct.16_PM 06:59


人気のない闇の中を二人の少女が走る。
姉が妹の手を引きながら。

「えっと、ここを北って言ってたわね。……だいじょうぶ?」
「うん、まだいくらでも走れるよ、ってミサカはミサカはやんちゃをアピールしてみる」

美琴は体の小さな妹を気遣う。

「けどきついって言われても走らなきゃしょうがないか。……何が起こってるか知ってる?」
「ごめんなさい、ミサカが狙われてるってことぐらいしかわからない、ってミサカはミサカはうなだれてみる」
「そっか、まあそれならしょうがないわ。ていうかこっちに何があるかは知ってる?」
「うーん、それもわからない。なんだろうね、ってミサカはミサカは考え込んでみる」
「そりゃそうよね。あーもう、なんにもわからないわ。……信じてみるしかないか。それじゃ急ぎましょ―――」


「■■■■■■■■■!!!」


美琴がそう言いかけたとき遠くから咆哮が響き渡る。

90 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:34:27.38 ID:1O1gmDMo
「きゃああー、あのでかいのが追いかけてきてる、ってミサカはミサカはぶるぶると怯えてみたり」
「なんてこと。……まさかアイツ―――」

「―――お姉様。あの人は無事だよ、ってミサカはミサカは安心をお届けしてみる」
「そう、それは―――って別にあんなやつのこと心配してるわけじゃないのよ」
「うん、もちろんわかってるよ、ってミサカはミサカは意味ありげに微笑んでみる」

「ったく。……にしてもまずいわね。このままじゃすぐ追いつかれてしまうかもしれないわ」
「とりあえず行けるところまで走ってみよう、ってミサカはミサカは提案してみる」
「そうね、とりあえず行きましょうか」

そう言うと、美琴は打ち止めの手を取り、再び走り出す。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■」

明らかに先ほどよりも距離が近くなっていることに二人は気付いていた。
目的の場所に着くのが先か、追いつかれるのが先かという時間勝負。
だったはずだが、走りながら美琴は考えていた。
たとえ追いつかれるまでに目的地に着いたからといってどうだというのか。
学園都市第三位である自分が勝てない相手だとしたら、他の人になんとかすることなどできるのか。
ならば、自分がここに残り囮となって先に打ち止めを独りで行かせ、少なくとも足止めをするべきなのではないだろうか。

―――あるいは、可能ならばここで倒してしまうべきなのではないだろうか。

91 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:36:21.77 ID:1O1gmDMo
「……いや、それは違うわね」

そこまで考えてその案を否定する。
もしも一方通行が敗れたのだとしたら、自分の力では食い止められないかもしれない。
もしも一方通行から簡単に逃れてきたなら、自分もすぐに突破されるかもしれない。
もしもここで食い止めることができたとして、敵は他にもいるかもしれない。

(―――やっぱり一緒に行くしかないか)
そんな美琴の思考はそこで強引に終了させられた。

「■■■■■■■■■■■■!!!」

間近に聞こえた咆哮と建物が吹き飛ばされる轟音に、二人は追いつかれたことを悟った。

「うわぁぁあ、追いつかれちゃった、どうしよー、ってミサカはミサカはパニック状態になってみる」
「まずいわね。私から離れちゃ駄目よ」
「■■■■■■■■!!!!!」

雄叫びとともに、すぐ近くの建物の入り口が吹き飛ばされる。
その土煙の中から先ほどみた巨人がゆっくりと姿を現す。

「な、なるほどー、ショートカットしたんだねー、ってミサカはミサカは落ち着いたふりで分析してみる」
「■■■■■■」
「食らいなさいっ!」

美琴は右手を突き出してそこから電撃を放つ。

92 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:39:03.91 ID:1O1gmDMo
巨人はそれを手に持った無骨な剣で振り払う。

「■■■■■■!!!」
「……全く効いてないみたいね」

「お姉様、あいつ不死身みたいだよ、ってミサカはミサカは驚きの真実を告げてみる」
「いやいや不死身って、さすがにそれはないでしょ」
「でも、あの人は確実に殺してやったぜ、みたいな顔してたよ、ってミサカはミサカは真似して邪悪に笑ってみたり」
「……あいつで殺せなかったとなると私にも無理かもね。あとその顔はやめなさい」

「■■■■■■■■■■■■!!!!!!!」

突進してくる巨体を、美琴は打ち止めを抱きかかえてかわす。
着地と同時にポケットに手を突っ込みコインを一枚取り出す。

「■■■■■■■■■!!!」
「―――これなら、どうよっ!」

オレンジの光が突進してくる巨人に突き刺さる。
その凄まじい威力に吹き飛ばされた巨人は、建物に激突し、粉塵を巻き上げる。

―――しかし何事もなかったかのようにそのままゆっくりと立ち上がる。

93 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:42:21.44 ID:1O1gmDMo
「うわー、絶対絶命だー、ってミサカはミサカは右往左往してみる」
「参ったわね。これでも効かない、か」
「■■■■■■■■」

レールガンを放っても無傷で立ち上がってくる巨人を見て、美琴は改めて逃走を決意する。
だが傷を負わせることはできなかったとはいえ、レールガンをぶつければ相手は吹き飛ぶのは確かだ。
となれば、逃走のための助けになることは間違いない。

ポケットに手を突っ込むと、残りのコインの枚数を確認する。

「このまま逃げるわよ。近づいてきたらまたこいつで吹っ飛ばしてやるわ」

そういって美琴はまた打ち止めの手を取り走り出す。

94 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:49:32.49 ID:1O1gmDMo
Oct.16_PM 07:01


ランサーの槍での攻撃は基本的には突きによるもののみ。
ただしそれが神速であるからそれがわかっていても回避に専念していてさえ一方通行は全てを避けきることができなかった。

「―――はぁっ!」
「ちィっ」

穂先が掠めての一方通行の出血はすでに十にも及ぼうとしていた。
しかし、対するランサーも柄での払いは一方通行に通用しないことは感じていた。
つまりランサーにとってはいかに刃部分を当てるか、というだけの戦いであった。

「なるほどな、よくはわからねぇが、この刃先でなきゃお前には効かないみたいだな」
「あァ? だからなンだ? 結局当たらねェんだろォが」
「そいつはどうか、なっ!」

ランサーによる高速の連続突き。
まさに目にも止まらないといった速度の猛攻を一方通行はかすり傷を受けながらも紙一重で回避する。
十をはるかに上回るほどの刺突の末、一方通行が魔槍を掴む。

「……なンだと?」
95 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:53:50.82 ID:1O1gmDMo
しかし戸惑いの声を上げたのは一方通行。
その隙をついてランサーは一方通行を振り払い、再び距離をとる。

「発想は悪くねえが、残念だったな。てめえ今この槍を壊そうとしただろ? だがそれは無理だ」
「ふざけやがって、無理なわけねェだろォが」
「いや、こいつは特別製の神秘でな、存在自体が一種の幻想のようなものだ。―――てめえにゃ幻想は壊せねえよ」

幻想は壊せない、その言葉に一方通行の頭に一人の少年がよぎる。

(―――確かに、幻想を壊すのは自分の役目じゃねェなァ)
逆に一方通行はニヤリと笑う。

「だったら、てめェをブチ殺すだけだ。そのご自慢の槍も当たらなきゃ意味ねェんだよ」
「ああ、確かにただ突いているだけじゃ長引いてしまうだけのようだな」
「ハッ、だったらどォするってンだ?」

「―――この槍を使わせてもらうとしよう」
「あン?」

一方通行にはその言葉の意味はわからなかった。
ただわかったのはその朱い槍になんらかの凄まじい力が集まっていることだけだった。
一方通行が身構えるのと、ランサーが突っ込んで来たのはほぼ同時だった。

96 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 21:57:04.31 ID:1O1gmDMo
「―――その心臓貰い受ける。……刺し穿つ(ゲイ)―――――」

「あァ? なンだってんだ?」

それは一方通行から見て何の変哲もない突きだった。
今までのものとたいして変わることのない、問題なく避けることのできるはずの突きだった。

だが、それとは裏腹にこれは危険だと何かが訴えている。

「―――――死棘の槍(ボルク)―――――」

「がァァああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」

しかし危険を感じ余裕をもって避けたはずの槍は一方通行に突き刺さる。
呪いの槍は必中。
命中した、という結果に原因が付き従う。

「な――――に!?」

それに対して驚きの声を上げたのはランサーの方だった。
その驚きは心臓を抉るはずだった槍が、左の肩を貫いているだけに留まったことに対して。

「が――――ハッ、てめェ。クソが! ぐっ、ンだと!? 避けたはずだってのに」

―――だが当然のことながら一方通行はその奇跡に気づかない。

97 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:00:04.23 ID:1O1gmDMo
「貴様……そんなツラでこの槍をかわすほどのとんでもない幸運でも持ってるとでもいうのか?」
「あァ? 幸運だァ? ンなもン持ってるわけ―――」

そこでふと思い出した一方通行はおもむろにポケットに手を突っ込む。
そこから取り出したのは土御門に渡された幸運のお守りだった。

「護符、だと? ……なるほど、よほど高等な守りのようだな。だが―――」
「……こいつがなンだってンだ」

その紙は一方通行の手の中で燃えて崩れ去る。

「―――それでもう幸運は打ち止めだ」

ランサーは笑って言い放つ。
それに対して一方通行はただ呆然とその紙くずを眺めていた。

「……どうした?」

その様子を訝しげに見ながらランサーが声を掛けるも、一方通行にはその声は届かない。
様子を見ていると突然一方通行が声を上げる。

98 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:04:28.88 ID:1O1gmDMo
「ククク、ぎゃはははは、そォかよ、それでかよ。ぎゃはは、あひゃははははははははっ!!」
「ああ? ……なんだ?」

まるで気がふれたかのように笑い続ける一方通行を不思議そうに眺める。
その状況を一変させたのは空からの声だった。

「―――列閃(エレ・ヘカテ)」
「ぎゃはっ、ひゃはははははははははははっ!!!!」

その上空からのレーザー光を笑ったまま棒立ち弾き飛ばす。

「……これも効かないなんて」
「てめえ。邪魔すんじゃねえよ!」

ランサーは上空に居るキャスターを睨みながら怒声を上げる。

「あら、宝具をかわされたあなたに他に手があって?」
「別にかわされたわけじゃねえし、やつに守りはもうない」
「くきゃきゃ、そォかいそォかい。―――そォいうことだったのかよ」

ランサーは再び一方通行のもとに向き直ると叫んだ。

「てめえ、やる気あんのかよ!」
「―――あァ? ……あァなンだったっけ?」

99 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:08:37.77 ID:1O1gmDMo
一方通行は思い出したかのようランサーの方に向き直る。
その態度にランサーは憤りを吐き捨てる。

「……ふざけやがって」

そこで初めて一方通行は上空のキャスターに気づく。

「……あン? てめェ土御門のヤロウはどうした?」
「あのボウヤ? さあ、死んだんじゃないかしら。運がよければなんとか逃げ延びてるかもしれないわね」
「そォかい。チッ、使えねェ」
「あらあら、お友達が死んだっていうのに薄情ね」
「はン、別にそンな大層なもンじゃねェよ」

「で、どうする? 続きはやんのか?」

ランサーが二人の会話に割って入る。

「あァ、もう終わるがな」
「お前の死で、か?」

「いや―――オマエらの死で、だ」
「はっ、なら止めにさせてもらうぜ」

ランサーが槍を構え、再び力を溜める。
それを援護するかのようにキャスターが呪文を紡ぐ。

「―――圧迫(アトラス)

「効かねェよ。――――――――悪ィが、こっから先は一方通行だ」

100 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:11:27.17 ID:1O1gmDMo
それを一方通行はこともなげに無効化する。

「ぐっ、どうして効かないの。対魔力を持ってるわけでもないようなのに」
「どうでもいい、死ね。―――刺し穿つ(ゲイ)―――――死棘の槍(ボルク)―――」

先ほどと同じようななんの変哲もない突きが一方通行を襲う。
それを先ほどの焼き直しのように回避する。

「なん―――――だと!?」

先ほどと同じようなランサーの驚愕。
しかし今度はそれが一方通行に突き刺さることはなかった。
一方通行は今度は逃がさないようにその槍をがっちり掴む。

「どォした、えらく驚いてるみてェだが」
「馬鹿な。避けられるはずがない」
「てめェさっき言ったよな? 相当の幸運がなけりゃこの槍はかわせねェンだっけなァ?」
「……ああ。だがお前にはもうさっきのような幸運の護符はないはずだ」

「そォだな。あれがなくなるまでは全く気づかなかったぜ。―――まさか幸運にもベクトルがあるなんてなァ!」
「―――どういう意味だ?」

「オマエが知る意味のねェことだ。……ところで、クーフーリンはこンな槍を持っていながらなンで死ンだンだっけなァ?」
「……何が言いたい」

101 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:15:37.45 ID:1O1gmDMo
「そォでしたそォでした。そォ言えば、死ぬときはこの槍を持ってなかったンだよなァ!」

「ぐっ、―――がぁぁあああああああああっ!」

そういうと一方通行はその槍を持ちランサーを振り回す。
地面や辺りの建物に力の限り叩きつけると、ランサーの手からその魔槍が離れる。

その槍を持ち直し、吹き飛んだランサーの元へ神速で突進する。

「英雄を殺すには、その英雄の武器を使うのが一番ってなァ」

そしてそのままランサーが地に墜ちるよりも早く胸を一突き。

「がぁぁああああ、ごふっ! ……くそ、が」

ランサーはそれにより崩れ落ちる。
その一部始終を眺めていたキャスターは焦りを浮かべる。

「……そんな馬鹿なこと、人間がランサーを倒すなんて」
「次はオマエの番だなァ、どうしてくれようか」

「くっ、死になさい――――ヘカティック・グライヤー!」

キャスターは空中で大きく構えその手に持つ杖を一方通行に向ける。
するとキャスターの周囲に無数の光弾が浮かび、そこから極大威力の光線が撒き散される。

―――それはまさしく光線の雨。

102 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:19:16.07 ID:1O1gmDMo
それを全てかわしきることは一方通行にも不可能であった。
だが一方通行はその光線を弾き続ける。

「で、どォするンだ?」
「ぐっ、どうして? どうして効かないの?」
「効かないンじゃねェよ。……さて、イイ加減演算終わるぜ?」
「そんな馬鹿なこと! ……演算?」

「―――ほら、いくぞォ」

その一方通行の言葉と同時に状況は一変する。
その光線を正確に反射することは一方通行にも出来ない。
ただし、何度も見ていれば話は別だ。
どちらの方向へ返そうとすればどちらへ飛んでいくか。
ある程度のトライアンドエラーを行えば答えを出すのはそれほど難しくない。

「受けてみやがれェ!」

今までただ弾かれていただけだった光線は反射され、正確にキャスターの元へ突き進む。

「……うそ。―――瞬来(オキュペテー)」

自分の持つ盾では防ぎきれないと判断したキャスターはそれをギリギリ回避する。
息荒く呼吸するキャスターにどこからともなく声が聞こえる。

「―――場ヲ区切ル事。紙ノ吹雪ヲ用イ現世ノ穢レヲ祓エ清メ禊ヲ通シ場ヲ制定(それではみなさん。タネもシカケもあるマジックをごたんのうあれ)」

103 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:23:26.91 ID:1O1gmDMo
「なんですって?」 
「―――界ヲ結ブ事。四方ヲ固メ四封ヲ配シ至宝ヲ得ン(ほんじつのステージはこちら。まずはメンドクセエしたごしらえから)」
「この声は……さっきの魔術師? 生きていた?」
「―――折紙ヲ重ネ降リ神トシ式ノ寄ル辺ト為ス(それではわがマジックいちざのナカマをごしょうかい)」

確認はしていなかったがおそらく死んだだろうとたかをくくったのが失敗だったのだろうか。

「―――四獣ニ命ヲ。北ノ黒式、西ノ白式、南ノ赤式、東ノ青式(はたらけバカども。げんぶ、びゃっこ、すざく、せいりゅう)」

「あン、あのヤロウ生きてやがったのか?」
「くっ、なんてこと……」

キャスターは二対一というこの状況にもはや焦りを隠せない。
しかも一人には自分の魔術が通じない。

「―――式打ツ場ヲ進呈。凶ツ式ヲ招キ喚ビ場ヲ安置(ピストルはかんせいした。つづいてダンガンをそうてんする)」
「で、どォするよ。降参しますかァ? まァ許さねェけどなァ。ぎゃははははははははははは!」

―――いや待て。まだ終わったわけではない。
キャスターはわずかに冷静さを取り戻す。

「―――丑ノ刻ニテ釘打ツ凶巫女、其ニ使役スル類ノ式ヲ(ダンガンにはとびっきりきょうぼうな、ふざけたぐらいのものを)」

―――確かに自分の魔術は通じないが、あっちにだってこちらをを攻撃する手段はないはず。

104 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:25:10.22 ID:1O1gmDMo
「―――人形ニ代ワリテ此ノ界ヲ(ピストルにはけっかいを)」
「さァて、こないならこっちから行くぜェ?」
「―――釘ニ代ワリテ式神ヲ打チ(ダンガンにはシキガミを)」

確かに、キャスターの考えには一理あった。
一方通行は確かに素早いが、そう簡単に自分が捉えられることはないだろう。
それにこの程度の魔術師の攻撃であれば自分にとってはたいして脅威にはならない。

「……そうよ、何も問題ないわ。私には通じない」

「―――鎚ニ代ワリテ我ノ拳ヲ打タン(トリガーにはテメエのてを)」

―――ならばこの状況を維持したままあいつを倒す方法を探ればいい。時間はあるはず。

「俺の言ったことを覚えているか?」
「……あら、何かしら?」

何か魔術、あるいは道具でも使っているのか。
キャスターからは相変わらず土御門の居場所を掴むことができないでいた。

「仕方ない、もう一度名乗ってやろう。―――背中刺す刃(fallere825)。それが俺の魔法名だ」

そうして土御門は最後の呪文を紡ぐ。
それと同時にキャスターは振り返り己の盾を展開する。

105 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:27:16.60 ID:1O1gmDMo
「後ろっ!? ―――盾(アルゴス)」

土御門が放った、視界が消え去るほどの極大火力の魔術をキャスターの盾は容易に防ぎきる。

「ほう……やはり通じないか」
「ええ、どうにもサービスが過ぎたようね。黙って放てば良かったものを。まあどちらにしてもあなた程度の魔術では通じなかったでしょうけどね」
「知っている、だからこその赤ノ式だ。所詮これは目眩ましに過ぎない」

「……どういう意味かしら?」
「今だ、一方通行。―――――下から突き刺せ!」

その言葉に一瞬で反応したキャスターは先ほどまで下にいた一方通行に腕を突き出す。
しかし、その目は人影を捉えることはなかった。

「―――残念、上でしたァ!」

「がぁぁあああ、はっ」

その瞬間、朱い槍がキャスターの背中から突き刺さり胸を貫いていた。
土御門が魔術を放った瞬間、一方通行はキャスターを仕留めるべくすでに遙か上方へと跳躍していた。

「だから言っただろう。覚えておけ、と。魔術では自分の方が上だからといって思い上がるからそうなる」
「なんて、こと。……馬鹿ね」

そういえば、とキャスターは以前も魔術では遙かに劣る少女に敗北しそうになったことを最後に思い出した。

そのまま一方通行と共に地上に落ちると、キャスターは砂となって崩れ去った。
それと同時に血塗れとなった土御門もその場に崩れ落ちる。

106 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/19(日) 22:31:19.56 ID:1O1gmDMo
「―――で、それにしてもオマエはしぶてェな」

一方通行は胸を貫かれて瀕死のランサーに話しかける。
キャスターの大魔術にも巻き込まれることなくなんとか生存していた。
どうやったのか、あの状態で全ての攻撃を回避し、さらに壁に寄りかかり立っているランサーを見て一方通行はニヤリと笑う。

「は、それが売りでね」
「どォする。まだやるってェのか?」
「いや、もう無理のようだ。立っているのがやっとだ。お前こそ早く嬢ちゃん助けに行かなくていいのか?」
「そォだな……行くとするか」

土御門のほうを一瞥だけすると、二人の御坂を追って歩き出す。

「……ああ、そういえば、その傷なんだが」

ランサーが一方通行の左肩の傷を示していう。

「あァ、これか、確かに変な感じがするな。血が止まらねェ、がどォにもならねェってわけじゃねェ」
「それはこの槍の呪いのせいだろう。俺が死ねば呪いは消える。だがこの感じならじっとしてりゃあと数分程度じゃ消えねぇぞ」

「そォかよ。ならそれまでのンびり寝てやがれ」
「今すぐ殺せばすぐに血は止まるぜ? ……時間あんまりねえんだろ?」
「ハ、気付いてやがったか。ンなこと別にてめェにゃ関係ねェよ」

それだけ言うと朱い槍をランサーに放り投げ、一方通行は駆け出した。

107 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/19(日) 22:38:53.81 ID:1O1gmDMo
vsランサー、vsキャスター
ということできりがいいような気がするのでとりあえず今日はここまでにします

元々はキャスターは上条さんと戦う予定だったのを一方通行のところに強引にねじこんだので
どこか浮いてるような気がするのですが
違和感がないようなら幸いです

もちろん物理的にも浮いてますけど

108 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/19(日) 22:42:52.44 ID:gGj.eBo0
乙でしたー
サーヴァント相手に互角の一方さんチートだな
ていうか幸運にベクトルあったんかwwwwwwww

なんという…裏山 宝くじ当て放題じゃねえか…

115 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:16:40.24 ID:XfMBkFMo
Oct.16_PM 07:11


「いい加減に、しろっての!」

取り出したコインをレールガンとして巨人を吹き飛ばし、打ち止めの手を取り駆け出す。
反対の手をポケットに入れるとその手の感触に舌打ちをする。

―――残りのコインは一枚。

「はぁっ、はぁっ、もうちょっと、で、着くはず、ってミサカはミサカは、適当に願望を口に、出して、みるっ」
「だいじょうぶ? ……さすがにこれ以上はきついわね」

打ち止めの体力が尽きているのは一目瞭然だった。
むしろここまでよくもったな、と美琴は驚いていた。

「■■■■■■■■■■■」

「もう起き上がったか、ここからは私が抱えていくしかないわね」
「ご、ごめん、なさい、ってミサカはミサカは、お姉さまに頭を下げてみる」
「……もう。いいのよ、そんなことは気にしなくて」

そういって美琴は打ち止めの頭を軽くなでると、その胸に抱きかかえる。

「■■■■■■■■■■■■!!!」
「いけるところまで行くわよ」

116 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:19:05.25 ID:XfMBkFMo
美琴は追いかけてくる巨人を見て、ビルの側面に飛びつく。
鉄筋に磁力を通して地面と平行になりながら壁を駆ける。
巨人は少し戸惑った様子を見せるが、すぐに凄まじい跳躍で美琴に襲い掛かる。

「■■■■■■■■■■!!!!!!」
「ったく、でかいくせになんて身軽なのよっ!」

巨人の動きは速い。それは身軽というよりも俊敏とさえ言えるほどだ。
あわてて美琴が飛び降りると、巨人もそれに続き、手に持った斧剣を一閃する。

「■■■■■■■!!!!!」
「うわぁっ、危ないわね」
「はぁっ、はぁっ」

それを打ち止めを抱きかかえながらもなんとかかわす。
打ち止めにはすでに言葉を発する余裕もない。

「これなら、どうよ?」

美琴は周囲にあった鉄くずを集め巨人と自分たちの間に盾として配置する。
しかし、それを巨人は一瞬でなぎ払う。
それを予測していた美琴はそれには目もくれず一心駆け出す。
一瞬遅れて巨人も二人の後を追う。

「■■■■■■■■■■■■」

すぐにまた追いついた巨人の巨大な剣が美琴に向かって振り下ろされる。

117 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:22:08.73 ID:XfMBkFMo
その剣をかわしながらも美琴は気付いていた。
この巨人の動きは荒々しくも正確、この剣の軌道も確実に美琴だけを狙っていた。

(―――やっぱり。打ち止めは殺さないようにしてる?)

だからといってすでに打ち止めには体力が残っていないため、ここでできることはあまりに少なかった。
せめてもう一人いれば、と、他力本願のあまりにも愚かな考えが浮かんだとき、事態は一変した。

「……お姉様?」

声のしたほうに顔を向けると、そこには先ほど別れた少女の姿があった。

「黒子!? なんでここに?」
「もちろん風紀委員のお仕事ですのよ。ささっ、お姉さまここはこの黒子に任せて」
「助かったわ、黒子。この子をお願い」

「お、お姉様? ですからそちらの大きな方は私が―――」
「無理よ、こいつ私でも倒せないもの。―――お願い、黒子」

その美琴の言葉に黒子は驚く。
美琴が勝てないということもだが、それ以上にあっさりと美琴が負けを認めるなど聞いたことがなかった。
ひょっとすると想像を超えるような事態でも起こっているのだろうか。

118 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:25:11.46 ID:XfMBkFMo
「……不本意ですが、わかりましたわ。この子は風紀委員の本部にお連れします」

「―――待って。この子はこの道、あっちに連れて行って」

そう言って美琴は今まで進んでいた道の先を指差す。

「はぁ、それでどこへ行けばいいんですの?」
「わからない、けど行けばわかるわ。……たぶん」
「お姉様、それでは全然わかりませんのよ?」

「ごめん、私にもうまく説明できないの。……けどお願い、黒子」

そう言われても黒子は簡単に頷くことはできなかった。
ほとんど状況がわからなかったからだ。

この少女は何者なのか。
そこにいる巨大な男は何者なのか。
この道の先に何があるのか。
一体ここで何が起こっているのか。
ならば自分は何を信じれば良いのだろうか?

一瞬だけ目を閉じる。

―――そんなものは最初から決まっている。

119 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:27:56.62 ID:XfMBkFMo
「……はぁ、まったく。わかりましたわ。こちらのお嬢さんは任せてください。けど……」

そういって黒子は巨人に目を向ける。

「私は少しだけ時間を稼ぐわ。そうしたらすぐに追いかけるわ」
「絶対ですのよ。何かあったら許しませんのよ」
「ええ、だいじょうぶよ。私の力もこいつの力もわかってる。無理はしないわ」

そういって微笑む美琴に若干不安を感じながらも黒子は打ち止めを抱きかかえテレポートする。
二人が消えるのを見送った美琴は咆哮する巨人の方へと向き直る。

「■■■■■■■■■!!」
「……ありがとう、黒子。―――さて、じゃあ時間稼ぎのためにちょっとだけ付き合ってもらいましょうか」

美琴は周囲の砂鉄を集めると、巨大な剣を作り上げる。
巨人の大剣と見比べると、はぁっ、と小さく溜息を吐く。

「まぁ、まともに打ち合わなけりゃこれでいけるでしょ」
「■■■■■■■■■■■■■」

巨人が振り下ろした剛剣に、横から高速で振動する美琴の剣がぶつかり合う。
お互いの剣が擦れ合うことで凄まじい音が発生する。
だが巨人の剣は切れることもなくほんのわずかだけ軌道をずらし、美琴をかすめ地面に突き刺さる。

「ったく、なんて馬鹿力よ。……これで、どうっ?」

120 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:29:53.66 ID:XfMBkFMo
そう零しながら、美琴は素早く後ろへ跳ぶと、その剣を鞭のようにしならせながら巨人の方へと伸ばす。
それを防ぐように振り回された剣を避けるように曲がりながら巨人の胸に到達する。

「……そんな気はしてたけどね。効かないか。ったく」

しかしその剣は巨人の胸にぶつかると擦れ合うような甲高い音をあげながらも突き刺さることはなく止まっていた。
その結果を予測はしていたものの、実際に目の当たりのした美琴は肩を落とす。
その様子を見て勝ち誇ったかのように、巨人は咆哮し、突撃する。

「■■■■■■■■■■■■■■!!!」
「……仕方ない、あんまり使いたくはなかったんだけどね。ラストの一枚」

飛び掛ってくる巨人をかわすと、美琴は再び壁に取り付き、駆け上る。
そして、ポケットに手を突っ込むと、ポケットに残る最後の一枚を取り出す。
通常の力で打ち出せば、音速の三倍程度の速度でもたった50メートルで燃え尽きてしまう。
より速いスピードで撃ち出したのであればなおさらだ。

―――だが、至近距離で打ち出したならば距離は問題とならない。


「本気でぶちかましてあげるわ」

121 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:33:49.46 ID:XfMBkFMo
そこで美琴は一瞬ためらう。

(―――不死身って言ってたけど、そんなことありえるのかしら?)
通常のレールガンでさえ、直撃すれば有り余るほどの殺傷力。
それをさらに大きな力で放てばどうなるか。
今から自分が手にしている一撃は間違いなく殺すための攻撃。
敵とはいえ人を殺すということの意味。

しかし、打ち止めが言っていたことが事実であるなら、果たして自分程度の攻撃で死に至るだろうか?
うまくいけばダメージを与える程度に留まるかもしれない。

「……信じるわよ一方通行」

呟いてすぐに首を振る。
―――いや、ここにきて一方通行に罪をなすりつけるのは話が違う。
今からやることは自分の責任だ。もちろんその結果も。

ただ、願いだけはする。死なないことを。

「これが全開の超電磁砲よ、食らいなさい!」
「■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」

予想通り凄まじい勢いで地面から跳躍し、美琴に襲い掛かってくる巨人に右手を突き出し構える。
ギリギリまで引き付けて、その胸目掛けて手加減無しでレールガンを解き放つ。

「―――――吹っ飛べぇぇぇええええええええええええええっっっ!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

122 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:37:33.87 ID:XfMBkFMo
ビルの壁から下方に向かって放たれたそれは巨人を巻き込み地面に激突すると爆音を上げ地面を吹き飛ばす。
その轟音と煙から逃げるように美琴は先に行った二人を追いかける。
少しの疑問を抱いて。
走りながら一度だけ美琴は振り返る。

しかし、舞い上がった土煙で巨人の様子は一切確認できなかった。

「―――やりすぎ、た? ……ほんとにこれで死んでないのかしら?」

しばらくの時が経ちその場を覆っていた土煙が晴れる。
そこに残っていたのは、まるで爆心地のようなクレーター。

―――そして胸に風穴を開けて横たわる巨人の骸だけだった。

123 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:42:49.68 ID:XfMBkFMo
Oct.16_PM 07:18


「―――はぁっ!!」
「ふっ!」

二人の気勢とともに三本の剣による剣戟の音が響く。

「く、そっ!」
「どうした? そうらっ!」
「―――があぁぁああああっ!」

アサシンの刀に胸を切り裂かれるも、士郎は後方に大きく転がることでなんとか致命傷は免れる。
純粋な剣技の勝負ともなればセイバーに勝るとも劣らないその剣舞に士郎は追い詰められる。
一つ目の太刀を片手の武器でなんとか受け止めるも体勢は簡単に崩される。
さらに襲い掛かる二つ目の太刀をもう片方の武器で受け止める。
両の武器を弾かれたまま無防備での三つ目の太刀から命からがら逃げ延びる。

防戦一方、先ほどからこれを繰り返すだけである。

「ふむ、どうした。もう終わりか?」
「ぐっ、はぁ、は、あ――――まだだ。そう簡単には終われない」
「だいじょうぶ!? 士郎」

慌てて駆け寄った凛が視界からライダーから外さないようにしながら声を掛ける。
同じように士郎はアサシンに視線を向けたまま立ち上がり答える。

124 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:45:10.93 ID:XfMBkFMo
「……ああ、だいじょうぶだ、遠坂。まだやれる」
「そうか。それにしてもその剣、剣技、まさかアーチャーと同じものとはな。……だが、まだアーチャーには届いておらぬな」
「そうだな、俺はまだあいつには及ばない。けどできることはあるはずだ」

「それは先ほどからの時間稼ぎのことでしょうか?」

上条に近づかないようにしながら、かつ五和のフリウリスピアを巨大な釘一本で完全に防いでいたライダーが一気に距離をとり、なんでもないことのように言う。
確かに士郎はアサシンを独りで引き付けることを第一として剣を交えていた。

「なんだ、ばれてたか。……けどアサシンだってまだ本気じゃないんだろ? 前に見たときはもっと鋭かったはずだ」
「残念ながらそうではない。いや、全力でないといういうことは否定できぬがな」
「ん? どういう意味だ?」

「さて、理由はわからぬがな。おそらく原因は聖杯の起動の元となっている人間だろう」

聖杯の元の人間、という言葉に上条が反応する。

「なんだって。風斬がどうしたっていうんだ?」
「我らが復元されたときにおそらくは力があまり流れぬよう抵抗したのであろうな。つまりこちらの力は万全ではないということだ」
「なるほど、そういうことだったのか」

士郎はかつてアーチャーと戦っていたときに見たアサシンの凄まじいまでの斬撃を思い出す。
それと比べると今のアサシンはほんの少し動きが重く感じる。
上条は、その状況を確認するためにインデックスの方へと顔を向ける。

125 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:48:22.35 ID:XfMBkFMo
「うん、確かにそういうこともあるかも。ひょうかが抵抗できる状態にあるなら」
「……そっか、あいつも一緒に戦ってくれてるんだな」

「……なるほどね。それで、ならあなたもそうなの?」

凛は静かに佇むライダーに尋ねる。
冷静になって考えれば、確かに以前に見たライダーは体捌きはもう少し俊敏だったような気もする。

「そうですね。アサシンの言っていることは真実です。私も万全ではない。が、それだけでもありません」
「それだけじゃないってどういうこと?」
「簡単に言ってしまえば……あまり気乗りがしていません」

「……はぁ?」

ライダーのあまりにも突拍子もない言葉に凛は思わず気の抜けた声を上げる。

「やる気がないってことよね? ……それってサーヴァントとしてどうなの?」
「さて、そうでしょうか? ―――それでは仮にここにあなたのサーヴァントや、セイバーがいたらどうしたと思いますか?」

「それは――――」

凛は言葉に詰まる。

確かに単に聖杯を悪用しようとしているならアーチャーが協力するとは思えない。
ましてやセイバーならなおさらだろう。

126 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:50:56.08 ID:XfMBkFMo
「わかりましたか? 私のようにやる気のないサーヴァントがいてもおかしくはないでしょう」
「まぁ話はわかったわ。どうりで最初からべらべら喋ってくれるわけよね。……で、そういうことなら見逃してもらうってわけにはいかないのかしら?」
「そうするとあなたたちは聖杯を破壊するのでしょう? 自分が消えてしまうのを黙って見過ごすのもどうかと思いませんか?」
「そう、ならなんとか倒すしかないってわけね。……あなたは? アサシン」

「そうだな。私としてはせっかくこうしてここに呼ばれたからには、せめて楽しく果し合う、というのもまた一興であろう」

そう言うとアサシンは士郎へと刀を向ける。
対する士郎も双剣を構える。

「それでは、再び戦闘開始としましょうか」

硬直状態から口火を切ったのはライダー、地を這うような動きで凛に襲い掛かる。

「くっ―――このっ!」

一瞬で放った凛のガンドをこともなげに避けるとライダーは凛に蹴りを放つ。

「させませんっ!」

五和は瞬時に凛とライダーの間に割り込むと槍を盾にしてライダーの蹴りを受け止める。

「―――飛びなさい」
「きゃぁぁあああああっ!」

127 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:53:03.21 ID:XfMBkFMo
しかし、それでもその蹴りの威力に吹き飛ばされる。
ライダーはその反動を利用して後方へ飛翔すると空中で凛に向かって釘を投擲する。

「なっ――――?」

その一連の流れるような動作に驚愕の声を上げながらも凛は地面に転がりなんとか回避する。
その横で士郎は再びアサシンへ突撃する。

「よし、いくぞっ!」
「ふむ、来るがいい」

その士郎の双剣を一つの刀で簡単にいなす。
幾度かの剣戟の後、一瞬できた隙をついてアサシンが刀を振るう。

「く―――そっ」

しかし士郎はそれをぎりぎりで避わすことに成功する。

「ほう、少し慣れてきたか。いや、成長したと言うべきかな」
「……ふぅ、間一髪か。だけどこのまま同じ事を続けたんじゃ分が悪いな」

「ならば、こういうのはどうだ? ―――ぬぅうんっ!」

128 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:55:44.69 ID:XfMBkFMo
そういうとアサシンは一瞬で間合いを詰め、大きく刀を振りかぶり、力任せに一閃する。

「なっ―――がぁぁああっ!」

その衝撃に士郎は吹き飛ばされ数メートルほど地面を転がる。
力任せに叩き付けたせいか、アサシンの刀には多少の歪みが生まれ、一方、士郎の双剣は砕かれて消滅していた。

「くっ。なら―――投影開始(トレース、オン)」

距離が開いてしまったことを好機と判断した士郎は、瞬時に弓矢を投影する。
だが、それを構えるよりも早くアサシンが刀を振るおうと距離を縮める。

「ふっ、遅いな」
「―――衛宮さん下がってください!」

今まさにアサシンが切りかかろうというときに、五和が士郎に向かって叫ぶ。

「ぬっ?」
「―――七教七刃っ!!」

その場から急いで飛び退いた士郎を追おうとしたアサシンに七方向からの刃が迫る。



「―――――秘剣―――――燕返し」

129 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 20:59:00.67 ID:XfMBkFMo
それをほぼ同時といっていい速度で発生した三つの太刀が切り払う。

「なっ―――!?」
「なんだ今のは?」
「まさか、今の――――多重次元屈折現象? だとしたらそんなの魔法の域じゃない」

「……そのような大層なものではない、アーチャーのマスターよ」

その現象に驚きの声を上げる一同を前に、アサシンは極めて穏やかに告げる。

「……じゃあ一体何だって言うのよ」

「昔、戯れに燕を斬ろうと思いついたことがあってな。だがあいつらは思いのほか素早く、刀など所詮一本線にすぎぬ。空を自由に舞う燕を捉えられぬは道理よ」
「燕? で、それがどうしたって言うの?」

「―――生憎と、他にやる事もなかったのでな。一念鬼神に通じると言うが、気が付けばこの通りよ。燕を断つという下らぬ戯れはかような剣の牢獄を生み出すことと成った」

「……信じられない。魔術でもなんでもないなんて」
「とまあ私の切り札は今の秘剣なのだが、セイバーのマスターよ。そなたにも切り札があるのであろう?」

アサシンは見透かしたかのように士郎を見る。
士郎は一瞬だけ顔を顰めるとアサシンの問いに答える。

130 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 21:02:03.97 ID:XfMBkFMo
「……確かにお前の言う切り札にあたるものはある」
「ふむ、であろうな。ならば出すがよい」
「だけど多分これはお前には通じない。相性の問題で力の浪費にしかならないと思う。それに今この場では使えない」

「……そうか、それは残念だ」

アサシンは心底残念そうに言う。

「切り札? 衛宮にはそんなのがあるのか?」
「……ええ、あるわ。けど士郎の言ったとおりアサシンにはあまり効果がないでしょうね」
「相性って言ってたな。ならどうにもならないか」
「それに、これは予想だけど、あなたが傍にいると使えないと思うわ」

「……この右手、か」

その言葉に凛は頷く。
上条はその様子から広域に干渉する魔術なのではないかと推測して納得する。


「―――では、次は私が切り札を見せましょう」

そういうとライダーは唐突に、手に持っていた釘を自分の首に突き刺す。

131 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 21:05:43.34 ID:XfMBkFMo
「なっ!?」
「な――――に?」

そのあまりに異常な光景に一同は声を失う。
ライダーの首元から撒き散らされた血は、ライダーの前面に展開される。
それはやがて魔方陣として形を成していく。

「―――あ、あれは召喚なんだよっ!」

その状況にいち早く気が付いたのは少し離れた場所から見ていたインデックスだった。
その言葉にライダーが妖しく嗤うと、魔方陣が激しく輝く。

「みんな伏せたほうがいいかも!」

次に起こる光景を予測したインデックスが叫び、全員が咄嗟に地に伏せると辺りは光に包まれる。

―――爆音と閃光。
凄まじい衝撃が過ぎ去ったあと、空を見上げるとそこには真っ白な天馬にまたがるライダーの姿があった。

「あ、れは―――」
「天――――馬!?」

「―――さて、あなたたちにこの仔の疾駆を止められるでしょうか?」

132 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/09/20(月) 21:09:21.84 ID:XfMBkFMo
ライダーがそう言うと、ペガサスは凄まじい速度で天を舞うと急降下する。
そして地面すれすれをまるで光の線と見まがうような速度で駆け抜ける。
なんとかその直撃は免れるものの、その風圧に一同は吹き飛ばされ、地面を数メートル転がる。

「がぁぁぁぁあああああああっ」
「きゃぁぁぁぁあああああぁぁあ!」

しばらくの時間が経ち、巻き起こった土煙が収まる。
そして再び立ち上がり、身構えたときにはすでにライダーは先ほどと同じように空に留まっていた。
次の急襲に備えようとしたとき、ライダーが驚きの声を上げる。

「……まさか、対象の方から来るとは」
「ふっ、いつの世もままならぬものよな」

アサシンもそのライダーの驚きに同意する。
その意味を誰もが量りかねていると、後ろから声が上がる。


「―――いったい、なにがなんなんですの?」

どこかで聞いたような声に上条が振り返る。
そこには美琴の友人であり風紀委員の白井黒子の姿、そしてその胸に抱かれる打ち止めの姿があった。

133 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/20(月) 21:16:41.41 ID:XfMBkFMo
Oct.16_PM 07:25


一方通行は、闇の中を駆けていた。
能力使用モードは解除してあるために、その速度はとても速いとは言えないだろう。

この先もどの程度の敵が待ち受けているかわからない。
取り逃がした巨人を再び相手にしなければならないかもしれないし、先ほど倒したような敵がまだ他に居るかもしれない。
ただし、胸の内からは不安が消えなかった。

―――打ち止めは無事にあの男のもとへたどり着いただろうか。
あるいは自分が今からでも駆けつけるべきなのかもしれない。
そんな考えも頭をよぎる。
しかし、負傷して動けないという土御門の指示に従い聖杯を目指す。
聖杯さえなんとかすれば打ち止めが狙われる理由はなくなる、と。

簡単には説明を受けたが、一方通行には聖杯というものがいまいち掴めなかった。

―――聖杯。
確かに物語の中で、くらいであれば一方通行にも聞いたことがあった。
結局のところ、夢物語のような願望を実現する力、それが聖杯だ。
それは一方通行がどこかで聞いたことのあるイメージとそれほどかけ離れてはいない。

134 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 21:20:10.34 ID:XfMBkFMo
だがそれを土御門は破壊しなければならないと言った。
それに対する一方通行の疑問ももっともだった。
そんなものが悪の手に渡るならば一大事だろう。だが、それを善人が手に入れてしまえばどうだ?
確かにそれを私利私欲ではなく、世の為人の為に使える人間は少ないだろう。だが、居るのだ。
一方通行はそれを、善人を知っている。
ならば、その権利は悪用されないようにそんな善人に渡してしまえばいい。

だが、そんな一方通行の疑問に対する答えは否定だった。
土御門は答えた。―――聖杯が悪用されるのが問題なのではなく、聖杯が悪なのだ、と。
初め、一方通行はそれを聞いて倫理的、道徳的な話をしているのかと思った。
努力をするでもなく、そんな力に頼って容易く願いを実現する。それが悪だと。

―――そんなはずはない。
どんな風に手に入れた力だろうと、悪人が使えば悪になり、善人が使えば善になる。一方通行はそれも知っている。

しかし、土御門はそれも否定する。言うには、聖杯は既に狂っており、聖杯自体が悪用しかできない物だ、故に聖杯が悪なのだ、と。

悪用しか出来ない力、そんなものが存在するのだろうか?
言葉だけでは到底納得などできはしない。

そう言うと土御門は嗤いながら―――見ればわかる、とだけ言った。

「―――で、これが聖杯ってやつでイイのかな? じィさン?」

135 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 21:24:53.07 ID:XfMBkFMo
土御門の言ったとおりだった。
一目でわかる。これが良いもののはずがない。
一見して禍々しいその聖杯に眉を顰めながら、一方通行はその隣に静かに佇む老人に話しかける。

「そうじゃの、これが聖杯だ。……ふむ、先に辿り着かれてしまったか」

臓硯はその問いを穏やかに肯定する。

「そォいや、こっからどォすりゃイイか聞いてなかったぜ。とりあえず悪だっていうその聖杯ぶっ壊しゃイイのかァ?」
「ふむ、聖杯が悪、か。お主これがどういうものか知っておるのか?」

「―――あン? 詳しくは知らねェよ。なンだ? 一から説明でもしてくれンのか?」
「聞かせてやろうか? 話は六十年ほど遡ることになるが―――」
「はァ? オイオイ、いくらじじィが昔の長話が好きだっつったってそいつはさすがに度が過ぎンじゃねェか?」

「そうかそうか、ならば簡単に説明するとするかの。お主サーヴァントは知っておるか?」
「サーヴァント? あの英雄っつうやつらかァ? あァ、二匹ほどぶち殺してやったぜ」

威圧するために一方通行が吐いた言葉に、臓硯は一瞬反応するが、何事もないかのように話を続ける。

「遙か昔にな、至って普通の青年がその英雄になったことがあってな。その名をアンリマユと言う」

「―――アンリマユ? そりゃゾロアスターの悪神じゃねェか」

136 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga sage]:2010/09/20(月) 21:27:22.90 ID:XfMBkFMo
「いやいや、名前こそ同じじゃが全くの別物。わしの言うアンリマユは英雄に祭り上げられたごく普通の人間に過ぎぬ」
「なンだって普通の人間が英雄になンだよ。結局なンかご立派なことでもやらかしたンじゃねェのか?」
「そうじゃ、アンリマユは反英雄という形で悪を引き受けることで英雄となった」

「……あン、反英雄だァ?」
「いわゆる悪をなす英雄のことよ。アンリマユこそが、アンリマユのみが悪、そうして悪を押し付けることで、であるならば他の者は悪ではないということが確立される」
「なるほどなァ、存在自体が悪であるくせに、存在することで他の全ての者を救ってるっつゥわけか」
「そういうことだ。故に聖杯は狂ってしまったということだ」

「話が見えねェぞ、それと聖杯がどう関係あンだよ」
「聖杯が願望機だということは知っておるか。この中に入っているのだ。そのサーヴァント、アンリマユが。―――この世全ての悪であれという願いが」

「……そォいうことか。つまりその願いを叶えちまってるわけだから、その聖杯こそが―――」
「―――そう、この聖杯こそがアンリマユ、この世全ての悪だ」

そこまで聞くと一方通行はチョーカーのスイッチに手をかける。


「ハッ、イイぜ。要するに、だ。これはこの世全ての悪と―――――クソったれの悪党との戦いってわけだ」

士郎「禁書目録?」 上条「サーヴァント?」 2



posted by JOY at 22:46| Comment(1) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Fate組が脇役過ぎてつまらん。
Posted by at 2010年12月28日 00:24
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