2010年09月26日

ダンテ「学園都市か」4(準備と休息編 )

691 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:17:04.95 ID:lbsjmzAo

アニェーゼ「…………」

ブラブラと、ホールの中を見て回るアニェーゼ。

アニェーゼ「まだですか!!!??」

そして一分おきくらいの感覚で声を張り上げ。

シェリー「うるせえ!!!!まだだ!!!話しかけんな!!!!!」

シェリーのイラつきの混じった声で一蹴される。


アニェーゼ「…………チッ」

軽く舌打ちをしながら、ヒマを持て余し歩きながら像を指でなぞったり、
あちこちを杖の先でコンコンと叩くアニェーゼ。

アニェーゼ「何も無し……ですかそうですか」

ブツブツと呟きながら。

692 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:18:35.74 ID:lbsjmzAo

アニェーゼ「…………」

そして何となしに、とある一つの彫像の前で立ち止まった。


鳥の頭蓋骨のような、奇妙な仮面を被っている女性像の前で。


アニェーゼ「……それにしても……なんでこう、どいつもコイツもボインボインのバルンバルンなんですかね」

アニェーゼ「嫌味ですかこれ。エロ過ぎですよ。これ掘ったのは相当なスケベ野郎だったんですかね」


ブツブツと相変わらず呟きながら。
彼女は杖の先で、その彫像を突っつく。

足元、太もも、腹部、そして。


胸の乳首辺りをツンツンと。


と、その瞬間。


『―――何をしおる小娘』


アニェーゼ「…………………………………へ?」

693 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:20:23.78 ID:lbsjmzAo

そしてタイミングよく、ちょうど登場するシェリー。

シェリー「こっちは終わったわよ。何か見つけたか?」

アニェーゼ「…………シェリー。今何か喋りやがりましたか?」

シェリー「…………は?」

アニェーゼ「い、いや……あのですね。さっき妙な声が……」


『うん?誰だそなたらは?』


アニェーゼ「ほ、ほら!!!!!!!!!!」


シェリー「―――!!??」


オイルパステルをスッと指先に出し、周囲を見渡すシェリー。
同じく杖を構えるアニェーゼ。

だが周囲には人影は無い。

気配も無い。

694 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:21:34.37 ID:lbsjmzAo

そして二人はようやく気付く。


『どこだ?そこはどこだ?どこから我に触れておる?』


その声の源に。


アニェーゼ「…………まさか……」

シェリー「…………」


二人は再び、目の前の奇妙な仮面を被っている彫像に眼を戻した。
その瞬間。


『答えろ。そこはどこだ?』


例の謎の声と共に、像の口が動く。

アニェーゼ「!!!!」


シェリー「―――下がれッッッ!!!!!!!」

695 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:24:10.18 ID:lbsjmzAo

響くシェリーの怒号。
それを聞き、慌てて離れるアニェーゼ。

そしてシェリーはすかさずオイルパステルで宙を切り、
まず魔像の一部分を引き出す。

一瞬にして彼女の全身が、黒く蠢く肉のような粘土のようなモノで覆われ。
身長3m程の、ごつい黒い人型の『悪魔』へと姿を変えた。

瞳の部分には赤い光が宿り、全身から禍々しいオーラを噴き出して。


シェリー『―――何者だ?』


そして、シェリーはエコーのかかった声を彫像に向け飛ばす。



『先に答えるのだ。そこはどこだ?場所は?どこの世界か?』


『周りはどうなっておる?』

696 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:25:13.51 ID:lbsjmzAo

シェリー『…………』

どうやら、この現象は通信魔術のような物の一種か。
相手は別の場所から、音のみを拾っているようだ。
少なくともこちらの映像は見ていないらしい。


シェリー『…………は、そんなに知りたいのなら見にきやがれ。姿を現せ』


『…………うん?……そうしたいところは山々なのだが、今こちらは色々忙しくてな…………』


『…………しばし待て。ちょいと聞いて来る』


シェリー『………………』

アニェーゼ「……………………なんか……緊張感の欠片もねえ奴ですね」

シェリー『黙って。罠かもしれねえ』

697 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:26:39.71 ID:lbsjmzAo

そして約20秒後。

『すまぬ。待たせたな、今行く』

アニェーゼ「―――」

シェリー『―――』

そんな一言が突然聞こえたと思いきや。

彫像の直ぐ前の空間に黒い靄のような物が一気に立ちこめ、
猛烈な速度で滅茶苦茶な渦を巻き始めた。

何本もの、回転方向が違う竜巻が合体しているかのように、その靄の流れが全くわからない。


シェリー『アニェーゼ!!!!もっと下がれ!!!!』

その異常な光景に警戒し、
連れに声を張り上げながら己自身も数歩後ずさりするシェリー。



その次の瞬間。


今度は靄が一気に晴れ、その中心から姿を現す一人の女。

その格好は真後ろにある彫像と瓜二つ。

鳥の頭蓋骨のような仮面を深く被り、襟元には黒い羽飾りがついたマントを羽織っている、
妙に妖艶な空気を醸し出していた。

698 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:27:42.48 ID:lbsjmzAo

シェリー『…………!!!!』

アニェーゼ「…………!!!」

更に一段と気を張り詰めさせ集中する二人。

だが、現れた女はそんな二人の闘気など全く気にもせず、
周囲をキョロキョロと見渡し始め。


『………………………………これは………………驚いたな…………』


ぽつりと。
誰が聞いてもわかる、あっけに取られた声を小さく発した。


『………………既に「現出」していたとは……………………』


そしてようやく。

『そなたら。ここはどこだ?どこの世界だ?』

仮面の女は、
ジッと身構えている二人の戦士へ向けて言葉を発した。

699 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:29:05.64 ID:lbsjmzAo

シェリー『黙れ。まず名乗れ。何者だ?』

『ああ、そうだな。我が名は―――』


アイゼン『―――第十代アンブラが長、魔女王アイゼン』


魔女。

その単語を聞き、二人の顔が一気に引きつった。
そんな二人に対し、アイゼンは手首の大量の腕輪をジャラジャラ鳴らしながら腕を広げ。


アイゼン『待て待て。そなたらと戦うつもりは無い』


アイゼン『少し話を聞ききたいだけだ』

アイゼン『そこの小娘。そなたも来い』

そして、50m程離れているアニェーゼに向け手招き。

それを見て、アニェーゼは杖を構えながら恐る恐る近付いていき、
シェリーの少し後ろについた。


アイゼン『さてと。もう一度問う。ここはどこだ?』


シェリー『…………イギリス……カンタベリー大聖堂の地下』

戦闘態勢を崩さぬまま、その問いに答えるシェリー。


アイゼン『ほぉう…………人間界か。これは真に驚いたな』

700 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:30:19.82 ID:lbsjmzAo

アイゼン『それで、いつからこの「神儀の間」がここに現出しておる?』

シェリー『…………神儀の間?』

アイゼン『何だ?そなたらコレが何か知らぬのにここにいるのか?』

アニェーゼ「………………どれの事を言ってやがるんですか?」

アイゼン『ここ。全て』

アイゼンがもう一度大きく手を広げ、周囲をみるように促す仕草を取った。



アイゼン『この聖堂全体が「神儀の間」だ』


シェリー『…………何かの儀式場か?』


アイゼン『「全て」の、だ。魔界の口の封印も、セフィロトの樹の構築も、人間界の器もその土台も』

アイゼン『更に封印されし人間界の力場も。その「全て」の主だった「儀」がここで行われた』


アイゼン『「今」の人間界の歴史は全てここから始まっている』


シェリー『………………????」

アイゼン『……まあいい。わからぬのなら。話せば長くなるしな。それよりもだ。いつからコレがここに?』

シェリー『…………記録によれば……1522年にここに封印されたらしい』

アニェーゼ『詳しい記録は残ってねえんですよ。それだけです』


アイゼン『…………誰がここにコレを?』


アニェーゼ『その名も残ってねえです』


アイゼン『………………ふむ……なるほど…………』

701 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:31:36.00 ID:lbsjmzAo

シェリー『魔女…………』

とその時。
ポツリとその単語を呟くシェリー。


アイゼン『ん?』

シェリー『お前「も」魔女か?』

アイゼン『そう、我はアンブラの魔女。それで。「も」というのはどういう事かな?』


アニェーゼ「しぇ、シェリー!!!!」

シェリー『落ち着け』


アイゼン『ふむ。何か魔女について思うところがあるようだな?』

アイゼン『我が同族に会ったことが?』

シェリー『お仲間かどうかは知らないけど、会った事はある』

アイゼン『ふむ……それはあれか?黒髪に黒縁メガネをかけていた者か?』

アイゼン『それとも銀髪で派手な赤い服を纏っていたか?』

アイゼン『どちらだ?』


シェリー『どっちでもないわよ。金髪だ』


アイゼン『………………………………………………うん?』


アイゼン『………………………今何と言った?』

702 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:33:23.75 ID:lbsjmzAo

シェリー『金髪だ』

アイゼン『金…………髪………………………』

金髪。
その単語を聞き、片手を顎にあて大げさな仕草で唸り始めるアイゼン。

アイゼン『……うん…………』

アイゼン『…………本当に驚いたな。まさか生き残りが他にいたとは』


アイゼン『名はわかるか?』


シェリー『…………ローラ=スチュアート』


アイゼン『……ローラ……金髪……ローラ……ローラ…………金髪……』

ローラの名を何度も呟き、再び大げさな仕草で思索に耽るアイゼン。
そして10数秒後。


アイゼン『わからぬ。誰だそやつは一体』


アイゼン『我が治世よりも大分後の者か、それとも名が残らぬ下位の者か?』


シェリー『…………は?』

アイゼン『いやすまぬ。そなたらに聞いてもわからぬだろうな』

アイゼン『まあいい。後で別の者に聞く』

703 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:35:03.67 ID:lbsjmzAo

アイゼン『……それで、そなたらはどうやってその者に会った?』

シェリー『上司だった』

アイゼン『ん?というと?』

シェリー『12時間前までイギリス清教最大主教だった』



アイゼン『なんと………………………………ハァァアアアアンッッッ!?』


アイゼン『そのような話は聞いておらんッッ…………聞いておらぬぞ!!!!!!!』


アイゼンは突如声を荒げ、シェリー達から目を背けるように己の彫像の方へと向き、
その前の空間へと軽く片手を翳した。

すると次の瞬間。
空間が裂けるように影が現れ、先程と同じような靄の塊が出現し。

アイゼンはその靄の中へ頭だけを突っ込み。


アイゼン『おい!!!!!!!!!少し手を休めろ!!!!!!!聞け!!!!!!』


アイゼン『そなたは知っておったのか!!!!!??イギリス清教の頭が我が眷属だったという事を!!!!!??』


そして『こちら側』、シェリー達がいるホールにまでガンガン響く大声で、
靄の向こうの誰かへと叫び始めた。

704 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:36:49.69 ID:lbsjmzAo

アイゼン『おい!!!!??ええい無視するな!!!!!!』

アイゼン『ハン!!??喋れ!!!!こんな時まで無口になるでない!!!!』

アイゼン『何?!!!今なんと言った??!!!!』


シェリー『…………』

アニェーゼ「…………」


アイゼン『「黙れババア」と聞こえたが!!!!!!???ハァアアアアアアン??!!!!!!』


アイゼン『答えろこの小童!!!!!いくらスパーダの息子であろうと許さんぞ!!!!我を誰だと知ってのその暴言―――』


アイゼン『―――ううううンンンッッッ!!!!!!???』

そして今度は、いきなり身を仰け反って、
その靄の中から頭を引き抜くアイゼン。
と同時に、凄まじい金属音と共に靄が一瞬大きく縦に歪んだ。


そして一瞬だけ。

一瞬だけ『青い光』が溢れ、その余波のごく一部が『こちら側』にも漏れ出し。


シェリー『―――後ろに!!!!!!』

アニェーゼ「―――やばッッ!!!!!!!」

莫大な魔の衝撃波がホール内に吹き荒れた。
シェリーは反射的に全面の魔像の装甲を強化し、
アニェーゼはその背中に飛びつきしがみ付いた為難を逃れた。

705 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 00:39:22.00 ID:lbsjmzAo

アイゼンは再び、すかさず靄の中に頭を突っ込み。

アイゼン『ふ、ふ、ふ、ふざけるな馬鹿者!!!!!!バーカバーカ!!!!アホたれ!!!!』

アイゼン『んな代物をこっちに放つなでないわ!!!!何を考えておるのだ!!!!!!』

再び向こうの誰かに向かって怒鳴り始めたが。

アイゼン『―――ま、待て!!!!わかった!!!わかった!!!一段落してからで良い!!!』

アイゼン『一段落してからで良いから後で顔を出せい!!!待て待て待て待て待て構えるな構えるな!!!!!!』

何かの『形勢』がまずくなったのか、
今度は相手をたしなめる様な口調で叫び始め。

アイゼン『待て待て待てその「量」は止せ!!!!溜めるな!!!溜めるでない!!!』


アイゼン『落ちt』


そして彼女が何か言いかけたところで再び、
先程よりも大きな金属音が響き渡った。

が、今度はアイゼンの体が『栓』の役割をしたおかげか、
その莫大な量の力はホール内には漏れ出てこなかった。

シェリー『…………』

アニェーゼ「…………」


その代わりと言ってはアレだが、
頭を突っ込んだままのアイゼンの体は力なくダラリと下がり、時折ピクピクと。


そう、死後痙攣のような動作をしていた。

アニェーゼ「…………何がしたかったんでしょうかね?」

シェリー『……知るか』

707 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/15(水) 00:40:36.11 ID:BswE4N6o
くっそわろた

708 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/15(水) 00:41:51.07 ID:CCcFrAAO
アイゼンなんか可愛いなww
乙〜

710 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/15(水) 00:49:22.53 ID:Ye1z8pMo
痴女王のキャラが完全にギャグキャラだなwwww



725 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 23:42:41.60 ID:lbsjmzAo

と、二人は首を傾げ、互いに目を合わせていたところ。

靄の向こう側から、蹴り出されるようにアイゼンの体が軽く吹っ飛び床に落ちた。

そのアイゼンの体。

顎から上が、綺麗さっぱり『無くなって』いた。
鋭利な、まるでレーザーにでも切り落とされたかのように滑らかに。


だが、シェリー達はそんな事になど注意を留める事ができなかった。

原因は、その黒い靄の中から突如姿を現した第三者。


その人物とは二人共面識は無い。


面識は無いのだが、この目の前の存在が誰かは一目でわかった。

ダンテと瓜二つの顔。
それでいて、弟とはかけ離れている冷徹な表情。
そして青いコートと長い日本刀。

これだけで充分だ。


シェリー『…………ッ…………!!!!!』

アニェーゼ「…………………な、なッ……!!!!??」


この目の前の男がバージルだと断定するには。

726 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 23:45:41.12 ID:lbsjmzAo

バージルは左手に鞘に納まった閻魔刀を持ち、その靄の中から半身出現させ。
シェリー達など完全に無視して、
ホールの中を軽く、その鋭く冷たい目で見回した。


次いでゆっくりと、残りの体の部分を靄の中からこちらへと移動させてきた。


シェリー『―――』

アニェーゼ「―――」

そして二人は見た。


バージルが右手で引き摺っていた『モノ』を。

彼は長い黒髪を握り締めていた。
その髪の束の先には。

全身に完全に致命傷である深い傷が刻まれている、
いや、刻まれていると言うよりは、半ば体ごと裂けかけている血まみれの女。

その女体が誰なのかも、二人は一目で判別した。

真っ赤に染め上がりながらも一応残っている白いTシャツ。

右腕『らしき』先に、包帯のような物で括りつけられている長い日本刀。


アニェーゼ「―――…………か…………!!!!!!!!!!


シェリー『―――……………………神裂ッッッッ!!!!!!!!!!』


それは見るも無残な姿の神裂火織『らしきモノ』。

727 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 23:48:17.10 ID:lbsjmzAo

どっからどう見ても死んでいる。

そしてその『遺体』を乱暴に、ゴミのように引き摺っているバージル。

彼は右手を開き、その髪の束を手放し。
血まみれの頭部らしき部分が、
湿った重い音を響かせながら床に落ちた。

明らかに。

明らかに、どう考えても友好的とは言い難い。

シェリーら二人は、体の底から噴き上がるどす黒い感情に突き動かされ、
鋭く睨みながら構え直すも。

シェリー『…………!!!!!!!!』

その場から一歩も動けなかった。
バージルを前にしているだけで。

その姿を見ているだけで、彼女達は完全に押し負けてしまった。

アニェーゼに至っては、顔中から冷や汗を滲ませ、
息を切らせてその場にへたり込んでしまった。


だがそんな二人など全く気にも留めずにバージルは。


バージル「一段落ついたが」


ポツリと。

少し離れた場所に横たわっているアイゼンの方へと言葉を飛ばした。

すると。

アイゼン『…………そなた…………覚えておけ……この小童めが……』

ムクリと起き上がるアイゼン。
欠けていた顎から上の部分は、いつのまにか元に戻っていた。

728 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 23:50:31.95 ID:lbsjmzAo

アイゼン『我が魔に転生しておらねば死んでおったところだぞ?』

アイゼン『覚えておけ。いつか必ず、必ずこの魔女王と称された我が力を(ry』

バージル「黙れ。無駄口を叩くな」

バージル「要点だけを言え」


アイゼン『―――…………う……ぐ……」


バージル「なぜ『神儀の間』が既に現出している?ここの位置は?」


アイゼン『…………現出している理由はわからぬ。ここの場所はブリタニ……』


アイゼン『いや今はイギリスか、カンタベリー大聖堂の地下だそうだ』

アイゼン『あの者らの記録によれば、1522年からここにあったらしいが』

バージル「…………」


その言葉で、バージルはアイゼンと軽く目を合わせた。

1522年。

それはアンブラの都が滅亡してからちょうど一年後。

729 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 23:51:50.89 ID:lbsjmzAo

アイゼン『どうやら、見たところだとココは外と剥離されているようだ。恐らくあの者らのセフィロトの樹も切断されておる』

アイゼン『完全に外界と切り離されておるココは。しかもこの封印式はどうやら魔に由来しておるな』

アイゼン『器用なものだ。物質的な干渉は通しつつ、力の干渉は全て切り離しておるとは』

アイゼン『これを行った者は相当の知識と応用力を有しておっただろう』

アイゼン『これならば、我等も天界も気付かぬのは当然だな』


バージル「現出させたのは天界の者では無い」

アイゼン『…………そうだ。実はな、イギリス清教の最大主教が我が眷属であったらしい』


バージル「…………」

アイゼン『そなたはその点について気付いておったか?』

バージル「いや」

アイゼン『ふむ…………まあ大方、生き延びた魔女の一人が、何らかの理由でここに現出させたといったところか』


アイゼン『とりあえずだ。我等が現出させる手間が省けたな』


バージル「…………その魔女、知っている者か?」

730 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 23:53:17.40 ID:lbsjmzAo

アイゼン『いや。だがそのような事ができる者は極僅か、調べれば直ぐに身元が割れるだろう』

アイゼン『諸長に聞けばすぐだ』

アイゼン『お、それとセレッサ達にも聞いておいてくれ。あの者らは何も報告してこんからな』

アイゼン『何か知っておるかもしれん』

バージル「…………その魔女はどうする?」

アイゼン『うん…………どの道捕えねばなば』

アイゼン『「神義の間」を現出させるには諸長の10以上の許可が要る。その者は明らかに掟に反しておる』

アイゼン『それにだ、状況が状況だけに勝手に動かれることがあれば困るからな』

バージル「殺すか?」

アイゼン『……ま、それは見つけ話を聞いてからだな。今のところは、掟に沿うと処刑が妥当だが』

アイゼン『なぜそのような事をしたのか、何の目的で現出させたかが気になるからな』

アイゼン『もしかしたら、一族の為良かれと思ってやった事かもしれぬ』

アイゼン『現出した時期も時期だしな。何かあるだろう』

アイゼン『見つけても直ぐに殺すな。我等の元に送ってくれ』

アイゼン『身内の問題は身内で処理する』


バージル「…………」

731 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 23:54:37.31 ID:lbsjmzAo

アイゼン『さてと…………そのローラとやら、今どこにいるかはわかるか?』

一度手を叩きながらアイゼンは、
シェリー達の方へと向き言葉を飛ばした。


シェリー『知らねえわよ………………おい……』

アイゼン『うん?』


シェリー『彼女を…………返せ』


シェリー『…………神裂をこっちに引き渡してもらう』


アイゼン『お、そういえばこの者もイギリス清教だったか』


バージル「……」


アイゼン『おおう、そうだそうだ。一段落ついたという事だがその者はどうなったのだ?』


アイゼン『結局死んだか?』

732 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 23:57:09.73 ID:lbsjmzAo

シェリー『…………!!!!』

飄々としたアイゼンの調子と、その言葉で魔像の拳を握り締めるシェリー。
その体は、芯から煮えたぎってくる熱く猛々しい思いで震えていた。

そんなシェリーの憤怒など全く気にもせず、

バージル「さっさと起きろ」

足元に横たわっていた肉塊に言葉を放つバージル。


いや。


シェリー『―――!!!!!!!!!!』

アニェーゼ「―――!!!!!!!!!!!』


ソレは、今やもう肉塊とは呼べなかった。

一体、いつの間に。

ほんの一瞬。
ほんの一瞬の隙に。

肉塊だったソレは、綺麗な神裂の姿に戻っていた。

今にも分離しそうな程の傷も、
全身に纏わりついていた血も跡形もなく消えていた。

この今の瞬間の映像だけを切り取れば、
ただ寝ているだけのようにも見える。

733 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/15(水) 23:58:09.47 ID:lbsjmzAo

アイゼン『ほぉう。やりおったかこの者は。さすがはそなたが目を付けただけあるな』

バージル「…………」


シェリー『………………か……神裂……?』

傷が治っている、という事は。

まだ神裂は生きている。
生きているのだ。


バージル「コイツを運べ」

アイゼン『うん?』


バージル「俺は『神儀の間』を『向こう』に移動させる」


アイゼン『おお、ん、頼んだぞ』

バージルの声に促され、神裂を意図も簡単にヒョイッと持ち上げて肩に乗せるアイゼン。
そして踵を返し、再び例の黒い靄を出現させた。

734 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/16(木) 00:00:07.62 ID:FwvNhDco

シェリー『―――…………!!!!!』

三度目の今はもうわかる。
あの靄は『門』、悪魔が使う移動術のようなモノ。

神裂がどこかに連れて行かれる―――。


遺体だけでも回収したかった。
彼女を帰したかった。


それが生きているのなら尚更だ。


このまま見過ごす事など決して―――。


そう思ったシェリーは、先ほど取り込んだばかりのタルタルシアンを解放―――。


『エェェェェェリ――――――!!!!!!!!!!!!!!』


―――しようとした瞬間だった。


「―――やめ―――」


耳に入る、聞きなれた女の声と。


喉元に伝わる、冷たい金属の感触―――。

735 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/16(木) 00:02:01.09 ID:FwvNhDco

気付くと。

シェリー『―――……ッス……ッ…………!!!!!!』

正面には抜き身の閻魔刀を構え、
その切っ先をシェリーの喉元に突き立てているバージル。

凶悪なその刃は、彼女の体を覆っていた黒い装甲を意図も簡単に、
まるで存在すらしていなかったかのように貫通し、生身の肌に軽く触れるところで静止していた。

シェリーは動いてはいない。

バージルが一瞬で距離を詰めてきたのだ。
彼女は一切目視できなかった。
その動きが全くわからなかった。


彼女は呼吸すらままならない程に、
その狂気の刃を前にして固まっていた。

一ミリも体を動かすことが出来なかった。

そんな中。


神裂「…………お願い…………します…………手を…………お引きになって…………下さい……」


アイゼンの肩の上からバージルへ向けて放たれる、
今にも途切れそうなか細い声。

736 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/16(木) 00:03:06.92 ID:FwvNhDco

シェリー『…………』

先ほど一瞬聞こえた声も、恐らく神裂のモノ。

バージルへ向けて、殺さないでくれという意味で放ったのか。
それともシェリーへ向けて、バージルに楯突くなという意味で放ったのか。


どちらにせよ、その一声がシェリーの命を辛うじて繋ぎとめたのは確かだ。


神裂「…………お願い…………します…………」


バージル「…………」

その言葉が届いたのか。

それとも単なる気まぐれか。

バージルはスッと閻魔刀を引き、
依然固まっているシェリーの横をすれ違いザマに。


バージル「二分以内にここから失せろ」


それだけ言葉を放ち、ホールの中心へと足早に進んでいった。

737 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/16(木) 00:05:38.88 ID:FwvNhDco

シェリー『か、神裂…………お前……一体…………』

神裂「事情はまだ話せませんが…………これは私自身の選択です…………」

アイゼン『話なら手早く済ませろ。ああ、そうだ、そなたら、今宵の事は決して他言する出ないぞ?』

アイゼン『己の命を縮める事になるからな』


神裂「あ…………信じてください…………これだけは約束します…………」


神裂「私は…………全身全霊をかけ…………私自身の戦いを成し遂げます…………」


アイゼン『そろそろ行くぞ。ほれ、そなたらも行かぬと死ぬぞ?』


アイゼンが少し急かしながら、靄の中へと消えていく。
肩に乗っている神裂も。

738 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/16(木) 00:07:18.72 ID:FwvNhDco

神裂「必ず…………あなた方を守り抜いて見せます…………!!!!!誓います…………!!!!」


そして。


神裂「どうか……!!!!……絶対に死なないでk―――!!!!!!」


シェリー『待―――!!!!!!!』


言葉を言い切る前に、神裂とアイゼンは靄の中へと姿を消し。
数秒後にその靄も消失した。

跡形も無く。


そして響く。


バージル「後30秒だ」


小さいながらも、突き刺さるように響くバージルの冷たい声。

次いでホール全体に、耳を覆いたくなる程の異質な耳鳴りが響き。
凄まじい量の青い光がホール内を満たし始めた。

739 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/16(木) 00:09:13.52 ID:FwvNhDco
シェリー『―――神裂ッ!!!!!!神裂ィ!!!!!!!!!』

例の黒い靄が消失しても尚、異常な耳鳴りの中その空間へと呼び続けるシェリー。

アニェーゼ「さっさと行きましょう!!!!!このままじゃこっちがやばいですよ!!!!!」

そんな彼女の、黒い装甲に覆われた手にぶら下がるようにしがみ付き声を張り上げるアニェーゼ。

シェリー『待て……!!!!神裂が…………!!!!』

アニェーゼ「彼女は強い!!!!!!!信じるべきじゃねえーですか!!!!!!!!!」


シェリー『だ、だが…………!!!!!!!』


アニェーゼ「こんな所で死んじまったら!!!!神裂にどの面下げりゃあいいんですかッッ!!!!!!!???」


アニェーゼ「シェリーィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!!!」


シェリー『―――』

そのアニェーゼの言葉と。
叫ばれた己の名で、シェリーはようやく動く。

腕にしがみ付いているアニェーゼを瞬時に抱え込み、
魔像の力で床を一気に蹴り、100m以上先にある扉の方へと跳躍する。

砲弾のように射出されたシェリー達は、そのままドアをブチ破って廊下の壁へとめり込んだ。


それとほぼ同時に。


部屋の中から凄まじい金属音と光が溢れ出し。
封印庫全体を大きく震わせた。

740 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/16(木) 00:13:04.66 ID:FwvNhDco

数十秒後。

シェリー「………………」

アニェーゼ「………………」

魔像化を解いたシェリーとアニェーゼは、
大きく凹んだ廊下の壁に寄りかかり床に座り込みながら、

反対側の破壊された扉の向こうを眺めていた。

視線の先の闇。

その向こうには先ほどまでの異質な空気も、重苦しい闇も消え失せていた。
廊下の仄かなろうそくのあかりが、さっきとは違い部屋の中にまで良く差し込んでおり。

奥には何も無かった。


何も。


あの巨大なホールは跡形も無くなっていた。

アニェーゼ「………………大丈夫ですよ。神裂なら…………きっと…………」

シェリー「………………」


そして二人はゆっくりと立ち上がり。

アニェーゼ「…………………………行きましょうか。こっちにはこっちで仕事が山積みですからね」

シェリー「…………………………ああ」

二人は一度、壊れた扉の奥へと目をやった後、
正面を向いて力強い足取りで廊下を進んで行った。

アニェーゼ「…………で、どうします?キャーリサ様への報告は?」

シェリー「…………タルタルシアンを手に入れたってだけ言えば充分よ。後は知らぬ存ぜぬで」

アニェーゼ「アイアイ」

743 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/16(木) 08:45:00.32 ID:8R/7/IDO
最近魔女パートばっかりだったから忘れかけてた
バージルめちゃくちゃ恐い

764 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:04:03.69 ID:lizh526o
―――

学園都市。
午後5時過ぎ。

季節は冬、外は既に薄暗くなり乾き冷たい風が吹く中、
第七学区ではあちこちに巨大な作業灯が聳え立ち、
瓦礫除去作業を行う多くの重機を煌々と照らし上げていた。

第七学区に刻まれた、先日の凄まじい戦闘の傷跡。
今現在、24時間体制で作業が行われている。

そんな第七学区の端、被害を免れたとある病棟一階の大きなフロア、
そこの長椅子の一つで、上条とルシアは並んで座っていた。

フロアの端にある、大きなテレビから流れてくる報道を見ながら。

先日の戦闘による、一般人の被害は負傷者は約8000人(魔の力による意識昏倒も含め)、
死者は3人、行方不明者は8人(生存は絶望的とされている)。

負傷者の数・都市の破壊規模からすれば奇跡的な程に犠牲者は少ない。
少ないのだが。


上条「…………」


やはり、上条当麻にとってはかなり心が痛む事実だった。
自分達の戦いで犠牲者が出た、それも一般の学生。

上条「クッソ…………」

こみ上げてくるやり場の無い怒り。

765 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:06:45.68 ID:lizh526o

だが、報道の仕方や世間の反応を見ると、この件はさほど重大視されていないようだった。
『平時』ならば、学園都市にてこれ程の規模の『テロ』が起こったとなれば、世界的な話題となるだろう。

だが今は違う。

世界はもうそれどころではない。
世間では、この程度の事など最早小さな因子に過ぎない。

WW3の中の小さな戦闘の一つとしてしか認識されていない。

学園都市の件も今やさらりとしか報道されず、メインは世界各地の戦闘状況。

上条「…………」

それがまた、上条にとってもどかしい怒りとなる。

彼は今の状況の全貌を掴んでいるわけでは無い。

だが、己がこの戦争の『本当の核』の場所に立っていることぐらいはわかる。
この戦争がタダの『人間同士の戦い』ではなく、もっと巨大な別の姿を持っていることも。

ステイルからも、午前中にいくらか話は聞いた。
ウロボロス社とローマ正教側に纏わる人造悪魔兵器の件、そして己達が戦っているちょうどその時、
ヴァチカン・フォルトゥナにても異界の力・存在による大規模な戦闘があった事を。

まだまだ全貌は掴めないが、上条ははっきりと認識していた。
己もこの戦争の『要因』の一つである、と。
この忌まわしい物語の主要登場人物の一人だと。


これは己の戦いでもある、と。

766 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:08:33.00 ID:lizh526o

上条「…………」

トリッシュからも話を聞くべきだろう。
きっと何かを知っているはず。
事実を知っていなくても、彼女の人間とは格の違う頭脳から導き出された推測や助言はかなり役に立つ。

あの『良くわからない作業が』一段落でもしたら、今日にでも上条は聞くつもりだ。
(何かの術式を解く、という話らしいが上条にとってはチンプンカンプンだった)

上条「…………」

そんな事を上条は考えながら、
横にいる赤毛の少女の方へさりげなく目を向けた。

ルシアはちょこんと座りながら、ジッとテレビの報道を見ていた。
その大きなクリッとした目を開き、報道の内容に集中しているのではなくテレビそのものを珍しそうに。

その瞳は一欠けらの濁りも無く純粋そのもの。
かといって、ウィンザー事件の時のように無感情ではない。

宿っているのは純粋な感情だ。
清すぎる心。

上条「…………」

上条はふと思う。
面白いもんだな、と。

悪魔が天使のような心を有しているとは。
(ここの天使と言う表現は、種族を指したものではなく概念的な例えだ)

インデックスの瞳にも少し似ている。

767 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:10:06.12 ID:lizh526o

こういう瞳の悪魔は、上条はこの二ヵ月半の間見た事が無かった。

ダンテやトリッシュ・ネロのような人間側に立っている悪魔、
更にステイル等の元人間の者でさえ、
その瞳のどこかには悪魔特有の影の部分が見え隠れしていた。

上条自身、己の瞳を鏡で見た時に感じる。

恐怖、絶望、力の渇望、底無しの闘争欲、そして人間には到底理解できない凄まじい狂気、
それらが不気味な光を放っている事を。
人間にとっては災厄そのもの、悪魔にとっては『真理』であるその影の面。

上条自身でさえこうなってしまった以降、戦闘を楽しんでいる自分がどこかにいる事を感じていた。
昨日の戦闘の時でさえ、上条は言いようの無い昂ぶりを感じていた。

フィアンマに魔弾を撃ち込み、彼の体が爆散する瞬間、
上条は不気味な快楽に浸っていた己をも認識した。


上条「…………」

だがこの隣の少女は、そんな感情など一切無いのだろう。
悪魔特有の気質が全く感じられない。

上条自身がこう思う。
元人間の俺よりも人間っぽいな、と。

なんという皮肉か。

忌まわしき人造悪魔として生み出された存在が、人間よりも遥かに高潔な心の持ち主だとは。

人々が当たり前のように感じ、その美しさや愛おしさを忘れかけているこの人間世界、
その姿を彼女は瞳一杯に捉え、そして本当の価値をしっかりと認識しているとは。

上条「…………」

768 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:12:25.85 ID:lizh526o

ルシア「?」

そう上条が考えていた最中。
ルシアが上条の視線に気付き、その愛くるしい瞳を彼の方へと向けた。

それに対し、上条は眉を軽く上げて笑い、
肩を小さく竦めて「なんでもない」と意思表示。

ルシアは軽く首をかしげながらも再びテレビの方へと目を戻した。

とその時。

ピクリと背筋を伸ばし、テレビではなくフロアの入り口の方をジッと見つめ始めたルシア。

上条「……?」

数分間、彼女はそんな調子で固まっていた。
不思議に思った上条が声をかけようと思ったその時。

上条「……ん?」

彼も廊下の方から近付いてくる、二つの人間の気配を察知した。
片方は上条が慣れ親しんだ気配。

上条「(御坂?)」

そして徐々に聞こえて来た軽い足音の後。


フロアに姿を現す、


御坂「あれ?」

佐天「あ!!」


二人の中学生。

769 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:14:06.46 ID:lizh526o

上条「おーっす」

ソファーに座りながら、御坂とその友達らしき人物へ向けて軽く手を振る上条。
その御坂の隣の子を以前見たことあるような気がしていたが、この時はまだ思い出せていなかった。

御坂「おー……ってアンタ、ここで何してるの?インデックスちゃんはどうしたのよ?」

御坂「っていうかその子は?まさか『また』…………」

どことなく不審げな表情をしながら上条達の方へと向かう御坂。

上条「な、なんだよっ……あー、この子はな……」

なぜかやや不機嫌になった御坂に戸惑いながらも、
上条は説明しようとしたその時。

佐天「ルシアちゃん!!!」

満面の笑みでルシアの方へと駆け寄っていく佐天と。

ルシア「さ、佐天さん!!!」

上条の隣で更にピンと背筋を伸ばし、笑顔を浮かべるルシア。



上条&御坂「…………はい?」

770 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:18:59.38 ID:lizh526o
〜〜〜〜〜

数分後。

首を傾げていた二人に、出会った時の状況を佐天は一通り説明し終えた。

佐天「…………って事で、昨日ここで知り合ったんですよ」

ルシア「そ、そうなんです」

その佐天の言葉に合わせ、すこし恥ずかしそうにも相槌を打つルシア。

上条「へぇ〜…………で…………その、御坂の友達か?」

御坂「うん、佐天さん。黒子繋がりで」

佐天「あ、佐天涙子です。どうも。お話は色々と御坂さんから……」

上条「俺の話?どんな?」

佐天「そりゃぁ、めちゃくちゃかっこ良くt」

御坂「え゛へェ゛ンッッ!!!!!」

その時、突如響く御坂の大きな咳払い。

佐天「あ…………そ、その〜とにかく強いって」

上条「?」

御坂「い、良いから、その子の事も紹介してくれない?」

上条「おおう、この子はルシアだ」

ルシア「は、はじめましてっ。る、ルシアです」

立ち上がり、ペコリと御坂に対して頭を下げるルシア。

御坂「(い……良い…………持って帰りたい……)」

上条「ダンテの同業者だ。この子もあk……え〜っと…………」

傍らのルシアを御坂に対して紹介する上条。
だが何かを言いかけたところで少し言葉を濁した。

771 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:21:16.83 ID:lizh526o

佐天「?」

上条「佐天さんもここにいるって事は、一応『関係者』だよな?」

御坂「え?あ、うん。普通に喋っても言いと思うわよ。佐天さん、セキュリティレベル満たしてるわよね?」

佐天「あ、はい(セキュリティ?良くわかんないけど多分OKっしょ)」

上条「おお、それなら良いか。この子は悪魔だ」

御坂「へぇ〜!」

佐天「(やっぱり……)」

上条「ステイルとか神裂よりも強いらしいぜ」

御坂「へぇ〜すっごいわね。アンタより強いの?」

上条「うーん、そこはやってみないとわからないなー。な?な?」


とその時。


ルシア「私の方がだいぶ強いです」


ルシアは疑問に対して事実を素直に答えた。


上条「……………………だそうです……」

その言葉を聞き、わかってはいたがどストレートではっきりと言われ、
少し肩を落とす上条。

772 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:23:03.30 ID:lizh526o

御坂「へぇ〜!具体的にどんくらい差があるの?!」

ルシア「わ、私はステイルさん・神裂さん二人を相手にしてちょうど互角でした」

御坂「なるほど……ステイルさんと神裂さんってルシアちゃんの見立てだとどのくらい?」

ルシア「えっと……ウィンザー事件時のステイルさんよりも、今の上条さんはやや劣ります」

上条「…………う……」

ルシア「ですがその差は極僅かなので、戦闘内容によってはどちらは勝つかはわかりません」

上条「だ、だよな!?つまり互角っていうk」

御坂「アンタはちょっと黙ってて。で、神裂さんの方は?」

ルシア「か、神裂さんはもっと遥かに強かったので、上条さんが勝つ事はまず不可能だと思います」

上条「………………う……ま、まあ神裂にはどう転んでも勝てないかな……」


御坂「まあまあ、そう気を落とさないでって!ねえねえ、ところで私ってどのくらい?!」


ルシア「…………そ、そうですね……確かレディさんから魔弾を貰ったんですよね?」

御坂「そうそう!」

773 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:28:37.32 ID:lizh526o

ルシア「その魔弾を一発でも直撃させられれば、上条さんに勝利する展開も望まれますが、」

ルシア「レディさんのような豊富な経験と鍛え上げられた感覚か、高度な術式による照準補正が無いと、」

ルシア「上条さんの今の身体能力ならば射線を読まれて簡単に避けられてしまいます」

御坂「…………」

ルシア「そ、そして一気に距離を詰められてすぐに決着がつきます」

ルシア「中近距離戦に持ちこまれた場合は、御坂さんでは上条さんの速度に全くついていくことができません」

ルシア「現状の御坂さんレベルが4人いれば上条さんを弾幕で圧倒できますが、一対一ではかなり厳しいです」


御坂「………………うう」


上条「ま、現実はそういうもんだ!な!御坂!落ち込むな!!!ははは!!!」


佐天「じゃあじゃあ私は?!」


上条「……」

御坂「……」

ルシア「…………あ、あの……」

佐天「……って、じ、冗談!!冗談ですよ〜もう!!」

御坂「だ、だよね〜!」

上条「ま、まあそうだよな!」

佐天「私は皆の友達ってだけで、か弱い非戦闘員ですもん!!」


ルシア「(友達…………友達……私の……友達……)」

774 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:31:31.36 ID:lizh526o

上条「あ、そうだ御坂」

御坂「何よ?」

上条「レディが来てるぜ」

御坂「うっそ!!?どこ!?」

上条「トリッシュの部屋に。今よくわかんない作業しているから、俺締め出されたんだけどな」

上条「インデックスも今その仕事やってる。でもそろそろ終わるんじゃねえかな?夜には今日の分は終わるって言ってたしな」

御坂「じゃ、じゃあ、会いに行っても良いのかな!?」

上条「お、俺じゃなくてルシアに……」

御坂「良い?!」

ルシア「あ、は、はい。良いと思います」

佐天「あ、あの〜…………私は……?」

御坂「佐天さんもおいでよ!レディさん紹介してあげる!」

上条「トリッシュにも紹介すると良いぜ?な?ルシア。『友達』だって」

ルシア「は、はい!!」

佐天「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔しちゃおっかな〜!」

上条「じゃあ、ルシア、二人を連れて行ってくれ」

775 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:34:31.05 ID:lizh526o

御坂「へ?アンタは?」

上条「お、俺はもうしばらくここにいるかな」

御坂「何で?」

上条「な、なんとなく」

やや顔を引き釣らせて笑う上条。
だがそんな彼に対し、鋭い声色で言葉を放つ御坂。

御坂「ダメ。大体にしてアンタがインデックスちゃんと別行動してる時点で問題ありなんだから」

上条「い、いや、護衛については問題ないだろ?ステイルとレディ、そこにルシアが加われば俺なんかよりも……」

御坂「そういう問題じゃないでしょーが。アンタはあの子の傍から離れちゃ(ry」

上条「あ、あのな!!!……じ、実はこ、これから別の約束があってな!!」

ルシア「?わ、私は聞いてませんが予定があったんですか?」

上条「(純粋で素直すぎですよルシアさん!!!)」

御坂「ですって。あ!!!アンタもしかして…………」

上条「ち、違うぞ!!!!良くまた女かって何だか言われるけど違うぞ!!!」

御坂「いや、そうじゃなくて……もしかしてレディさんが怖いとか?」

上条「―――!!!!!!!!」

776 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:35:52.25 ID:lizh526o

御坂「全く……や〜っぱり……」

上条「いやいやいやいやいやいやいやいや」

御坂「大丈夫だって。冗談だってあの人なりの。レディさんって結構優しいわよ?」

上条「いやいやいやいやいやいやいやいやあれはマジです」

御坂「……ルシアちゃん。当麻をさ、あの良く悪魔が使う魔法陣みたいので運べる?」

ルシア「あ、はい、できます」

上条「ちょっと待って待ってちょっと」

御坂「じゃあ、当麻を押さえつけて、それで(ry」

とその時。
ルシアと上条は、再び別の気配の接近に気付いた。

そしてその存在。

それは正に上条にとって助け舟だった。


フロアの入り口に姿を現す―――。



一方「あァ?」


一方通行。

777 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:38:54.56 ID:lizh526o

上条「おおおおおおおおおおおう!!!!!!!!!!!」

その場から一気に跳躍し、一方通行の脇に飛び込むように移動する上条。

上条「ま、待ってたぜアクセラレータ!!!さ、さあ行こうぜ!!!」

一方「アァ?!!!なン―――」

見るからに嫌悪感むき出しの表情で、
杖をつきよろめきながらも身を仰け反らせる一方通行。

上条「良いから調子を合わせてくれ頼む頼むマジで頼むお願いします」

上条はそんな彼に対し、高速で小さな小さな声の言葉を一気に並べた。

御坂「ちょっとアンタ達」

上条「い、いや、俺はアクセラレータと約束しててな!な?!な?!」

一方「…………」

御坂「……いや、当麻は黙ってて。本当?」

一方「まァ…………用事があるってンのは嘘じゃねェ」

上条「(おっけーおっけー!!!!!!!)」

御坂「へぇ……どんな?」

一方「俺がオマェにベラベラ話すと思ってンのか?」

778 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:41:01.38 ID:lizh526o

御坂「………………………そう。まあいいわ」

御坂「とにかく、できるだけ早く戻ってきなさいよ?」

上条「お、おう!!!わかった!!」

疑惑の目をしながらも、御坂はそのままルシア・佐天と共にフロアを後にしていった。
そんな三人の姿が消えた後。

上条「ふぅ〜〜〜〜〜〜〜!!!!いやぁ〜助かったぜ!!!」

一方「…………オィ、オマェあのガキの傍にいなきゃなンねェンじゃねェのかよ?」

上条「……ま、そうなんだけどよ。今だけは別だ今だけは……」

一方「アァ?オマェあンな事がつい昨日あったくせにまだンな事を(ry」

上条「ああ、そっち方面なら別に問題ないぜ。御坂とステイルがいるし、」

上条「更にもう二人、俺なんかじゃ手も足も出なさそうな強い奴がいる」

上条「今インデックスを狙うよりかは、俺かお前が一人で護衛している時を狙った方が楽な状況だぜ?」

一方「…………ハッ……つー事は、その二人はダンテのお仲間か同業者って所かァ?」

上条「そうだけど……なんでわかった?」

一方「こっち側につくそォいう連中ってのは大体そっち方面だろォがよ。別勢力にもンな野郎がいるンじゃたまンねェよ」

上条「あ〜、まあ確かにな。それにしても助かったぜ!お前が話し合わせてくれてな!」

一方「ちょォど良かっただけだ」

上条「…………はい?」

一方「オマェの右手を借りようってよォ、これから探そォとしてたところだ」

そこで一方通行は右手を顔の前当たりに挙げ、上条に見せ付けるように握っては開きながら、
不敵な笑みを浮かべた。


上条「…………な、なんの用でせう?」


一方「ちょっとした『実験』だ。付き合えや。なァに、すぐ終わるぜェ」

779 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:43:06.94 ID:lizh526o
―――

窓の無いビル。

アレイスターは、己の直ぐ前に浮かび上がっているホログラム画面を閲覧していた。

浮かび上がっている画面は三つ。

一つは、今行われている能力者部隊の調整作業の経過報告。
一つは、現在の世界情勢の様々な情報。

そしてもう一つは。

一方通行の進化により大きく変化した、学園都市全体のAIM拡散力場のデータ。


アレイスター「…………」

封印された力場から引き出しているのではなく、己自身の魂から力を放出し始め、
『生きたAIM拡散力場』の核へと変化しつつある一方通行。


『生きているこの力』を実際に見るのは、アレイスター自身も始めての事だ。
数千年振りに生れ落ちた、『人間界の天使の卵』。


彼の類稀なる頭脳は、間接的なデータだけで確実性の高いモデルを構築できていたが、
現物を実際に調べてみると少々誤差が見られる。

やはり計算上の理論だけでは、いくらアレイスターでも完璧なモデルは構築できなかったようだ。
まあ、それも当然。

ここからは人知を超えた、未知の領域なのだ。
それなりに確実性の高いモデルを構築できたのはアレイスターだからこそ。

それに、その誤差もどうってことは無い。

どれも少しの修正で事足りる。


しかし一つだけ。


一つだけ、とある懸念事項がある。


それは、この『誤差の原因』が調べられない事だ。

780 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:46:27.53 ID:lizh526o

想定モデルと、一方通行の『現物』との微妙なAIM拡散力場のズレ。
既存の、学園都市が有するAIM拡散力場への、一方通行の力場から来る影響。

そして『幻想殺し』、いや『竜王の顎』への小さな干渉。

全体に極僅かずつ見られる、このアレイスターの想定モデルとは一致しない微妙な誤差。

アレイスターならば、一ヶ月かければ全てを調べ上げられるのだが、
この通りその時間的余裕は全く無い。


アレイスター「…………」


状況的に、この点は見過ごすしかないだろう。
修正は簡単だ。
プランの障害とはまず成り得ない。

この小さな問題の原因はわからなくても、プラン成功の確率はほぼ全く変動しない。


『計算上』は全く問題ない。
この点は目を瞑るべき。

いや、残された時間的余裕を見ると、目を瞑るという選択肢しかない。


そうアレイスターの頭脳は答えを導き出し、そして判断を下した。
迷い無く。


しかし。


この判断が、後にアレイスターにとって最悪の事態を招く。

781 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:48:32.38 ID:lizh526o

勘や感情を一切信頼せず、己の類稀なる頭脳の、
正確な計算に絶大な信頼を寄せているアレイスター。

心があったからこそ彼は一度大敗北をし、
心を捨て頭で動くようになってからこそ、彼は勝ち続け再起を果たし、
そして今のこの局面にまで到達した。


二ヵ月半前からその『戦い』は苦しくなったが、
それでも彼は様々な手を冷静に講じて己の道を勝ち続けた。


悪魔、そしてスパーダ一族と言う、規格外の存在に揺さぶられながらも、彼は決して道を外さなかった。

確かに辛く苦しい『峠』だったが、
その一方で彼自身はそ、こを乗り越えつつある己のやり方に絶大な信頼を寄せていた。

あのスパーダ一族の介入があったにも関らず、プランの芯は瓦解せずにここまでやってきたのだ、と。

感情には一切左右されない、
この完璧な頭脳が彼の最大最強の強みなのだ。


だがアレイスターはまだ自覚していなかった。


この点が究極の弱点ともなり。


たった今、最大級のミスを犯してしまった事に。

782 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:50:22.96 ID:lizh526o

とその時。


「一方通行、彼はやはり興味深い」


どこからともなく、いや、彼の脳内に直接飛び込んでくる声。
それはアレイスターの守護天使、『エイワス』の言葉。

アレイスター「君か。彼がどうした?」


エイワス「系統はやはりハデスに似ているな。それとあの危うさと戦気はクラトス、アレスにも類似している」


エイワス「懐かしいな。在りし日の彼らの顔があの少年と重なる」


アレイスター「……君が『懐かしい』という表現を使うとはな」

エイワス「私にも一応は、君達で言う『感情』に比する意識反応はある」

エイワス「例え壊れた思念と記憶の集合体であっても、その残滓は在りし日のような反応を見せる事もある」

エイワス「それにだ。『生の力』は少なからず私にも影響を及ぼしているな」

エイワス「意思に反する終焉を迎えた死者は、どこの世界でも生者を羨むものだ」

エイワス「意味の無い『記号の集合体』であってもな」

783 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:52:23.26 ID:lizh526o

アレイスター「…………わざわざ私に対してその『表現』を使う必要は無い」

エイワス「そうか。まあそれはどうでも良い。表現の仕方など腐る程あるしな」

エイワス「話を戻すか」


エイワス「やはりあの少年がガイアの血族に似るのは、君がグノーシス式をベースに現出理論を構築した影響だな」


アレイスター「…………」

エイワス「グノーシス式は汎用性が高いからな」

エイワス「天の検閲を免れた因子が多々ある、数少ない理論の一つだしな。そのおかげで魔にも天にも応用が利く」

エイワス「扱いにくさと天の意志による十字教への同化によって、魔術世界一般では本来の姿を失ったがな」

エイワス「確か、君の『旧友』もグノーシス式をベースにしてたなかったか?」


アレイスター「君は何が言いたい?ガイアの血族に似た事への指摘か?」


エイワス「いや、批判するつもりは無い」

エイワス「それに心配には及ばない。かつての者達に似ることは合っても、本質は別物」

エイワス「あの少年は誰とも血の繋がっていない、新世界の『現初神』の卵だ」

エイワス「おめでとう。君は人間界の、新たな神族世代の第一子を、遥かな時を越えて誕生させた」


エイワス「やはり君は最も興味深い。私を楽しませてくれるな」


アレイスター「…………」

784 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:55:53.59 ID:lizh526o

エイワス「それとこれは私の戯言だが、あの少年はアキレウスとも重なる部分が多い」

エイワス「一体いくつの『偶像』をあの少年に重ねていたのだ?」

エイワス「君との関係性を見れば、ヘラクレスとも重なる」

エイワス「その場合、君はプロメテウスだな。君がこの『偶像』を重ねたのか?」


アレイスター「いいや。ヘラクレスの像とは重ねていない。勝手に現出しただけだ」


エイワス「なるほど……ヘラクレスは偶然であり、一方で必然か。君をこの闘争から『解き放つ』者だな」

アレイスター「…………」

エイワス「『君』は人間に『火と文字と知恵』を与え、つまり新世界へと導き、」

エイワス「そして『親』の怒りに触れ、磔にされ半永久的に肝臓を喰われ続けた」

アレイスター「厳密には『私』の相手は天だったがな。それに永遠に奪われたのは『全ての肉』だ」

エイワス「そうだったな。その苦痛の終焉を、この若き『ヘラクレス』は君に届けに来る」


エイワス「そして最期は。『皆』が『竜』に飲み込まれる」


エイワス「同じだな。君達は『歴史は繰り返す』と言ったが、正にその通りだ」

アレイスター「…………」

エイワス「人間界そのものが過去の『偶像』に囚われ、その歴史を再現しようとしている」


エイワス「古の人間界の『像』が、今の人間界へ重なり映し出されている」

785 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/21(火) 23:58:53.77 ID:lizh526o

エイワス「君はやはり天才だな。人間界そのものに『偶像の理論』を照らし合わせ、」

エイワス「その虚像の力を利用して、望む方向へと局面を運んでいくとは」

アレイスター「元の技術自体は2700年前にホメロスが確立させてある。私はそれを実用段階まで完成させただけだ」

アレイスター「それに『私如き』ができたのだ。魔界にはこの程度など、居眠りしながら構築できる者もいるだろうな」

エイワス「いや、『実像』とは別物の、『作られ与えられた世界』だからこそ、」

エイワス「『偶像』に仕立て上げることが可能だ」

エイワス「魔界や天界では、決して考えられぬやり方だ」

アレイスター「それは必要性が無いからだろう?この方式が通じるのは『今の人間界』だけだからな」

アレイスター「それにだ。偶像の理論自体、力なき人間界独自のやり方だ」

アレイスター「オリジナルの力が手に入らないからこそ劣化コピーで賄う、付け焼刃な子供だましだ」


エイワス「確かに、『偶像の理論』から生み出されるのは複製」


エイワス「あくまで再現。オリジナルとは別物。100%完全同一体ではない」


エイワス「だが、君は逆にそこを逆手にとったではないか」


アレイスター「……」


エイワス「再現度を抑え、己の手を加え、似ているようで全く別の帰結へと方向修正」

エイワス「全体像は似ていても、『竜』に今回飲まれる対象は別物」

エイワス「結末も違う。大いなる破壊により、大いなる時代を誕生させる」


エイワス「こういう君の発想が私は好きなのだよ」

786 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:01:35.11 ID:NgSVEzIo
エイワス「その『偶像』に重ねる事のできない、『幻想殺し』の手綱取りも見事だった」

アレイスター「周囲を固めれば、自ずと所定の位置に嵌り込んでくれる」

アレイスター「あの少年自身の思考回路は単純だからな。誘導は簡単な事だ」


アレイスター「ただ、この二ヵ月半の間はかなり厳しかったがな。半世紀振りに精神疲弊した事もあったよ」


エイワス「確かに。君があんな精神状態に陥ったのを見るのは久しぶりだったよ」

エイワス「だが君は着実に成し遂げてきた。数々の最大級のイレギュラーをも利用してな」

エイワス「そして過去の『偶像』にはもう囚われない、全ての因果と理を消去した新たな人間世界、」


エイワス「『ホルスの劫』の始点が、つい先日構築された」


エイワス「古の神々の『偶像』へと仕立て上げられた、あの少年の昇華でな」


エイワス「あと一歩だな。『エドワード』。君が思い描く未来まで」


アレイスター「『思い描く』、ではない。私が『見て知っている未来』を、だ」


エイワス「表現の違いに一々突っ込むな。言葉は違えど、私の認識は君と同一だ」

エイワス「まあ、やはり君は最高だ。よく縛された人の身でここまでやったな」

エイワス「君が舞台を整え、脚本を書いたこの『劇』ほど楽しいものは無い」

エイワス「過去の事実因子を組み込みながらも大幅加筆し編纂、全く新しい『神話体系の始まり』を君は書き上げた」

エイワス「君の目論見が成功すれば、後世の者達は君の名と共に、『今』というこの瞬間から始まっている『神話』を詠うだろう」

エイワス「ホメロスを越える偉業だな。あの『者達』は結局世界を変える事はできんかったからな」

エイワス「まあ、時期が悪かったという事も原因だが」

787 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:04:33.34 ID:NgSVEzIo

エイワス「それに君の守護天使となったおかげで、かのスパーダ一族の戦いも間近で見れた」

エイワス「見ていて楽しいよ。ここから更に私を楽しませてくれ」


エイワス「私にすら見えぬ、私ですら認識できぬこの大渦」


エイワス「その中央で、不測の事態に陥った君がどう動くかが見たい」


エイワス「非常に興味がある」


アレイスター「……その言い方、今後も何かあるように、何かある事を期待しているように聞こえるが?」

エイワス「何が起こるかはわからない。だが何かを期待しているのは否定しない」

エイワス「それにだ。状況的に見て何かが起こるのは確実だろう?」

アレイスター「……わかっている。ところでエイワス」

エイワス「何だ?」

アレイスター「……私の許可無しで勝手に現出するのは止めてくれないか?」

エイワス「声だけでもか?良いでは無いか。今くらい大目に見てくれ」

エイワス「私だって話し相手が欲しくなる時がある」

アレイスター「ヒューズ=カザキリで我慢してくれ。君が勝手に動くと様々な方面に影響が出てくる」

アレイスター「それにだ。もう少し我慢すれば『自由』だぞ?」

エイワス「ああ、あの『少年』との件か。いつだ?」

アレイスター「どうせ盗み聞き盗み見しているだろう?一週間以内だ」

エイワス「楽しみだ。それにあの少年の目に早く入ってみたいよ」

エイワス「私を『知った』彼がどんな反応するか、非常に興味深い」

788 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:06:00.81 ID:NgSVEzIo

アレイスター「一方通行には数日中に会わせてあげよう。彼も『ドラゴン』には会いたがっていたようだしな」

エイワス「楽しみだ」

アレイスター「だから(ry」

エイワス「わかったわかった。現出するなと言いたいんだろう?わかったよ」

アレイスター「そうか」

エイワス「ではここらでお暇させてもらおう。ちょうど君の『旧友』が通話したがっているようだしな」

アレイスター「…………」

とその時。
エイワスの声が途絶えたと同時に、
ホログラムに表示される、通信が届いてきたと知らせる通知。

その相手は。

通話元の場所は。


アレイスター「…………」


ウロボロス社、デュマーリ島の。


アリウスの専用回線。


アレイスター「………………」

無言のまま、脳信号で回線を開くアレイスター。

そして画面に表示される、豪華な椅子にふんぞり返りながら、

葉巻の煙を燻らせているアリウス―――。

789 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:08:15.22 ID:NgSVEzIo

二人の天才魔術師。

彼らはかつて若かりし頃、同じ魔術結社に属していたライバルであり学友であった。
お互いを切磋琢磨し合い、共に高みを目指していた。

だがある時。

この天才達の道は大きく分かれた。

一人は魔術世界からも姿を消し、
影で魔の力を追求し人知を超える究極の存在を目指し始めた。

もう一人は天の力を追求しその名を魔術世界に轟かせたが、
掘り当ててはならない『真実』を我が物にしてしまい、天の怒りに触れ。

そして途方も無い戦いの道を決意した。



そんな二人が今。


『最期の会話』として言葉を交わす。

半世紀以上昔、時に罵りあい、時に殴りあい、
そして時に笑いながら肩を組み合った男達が。


当時の感じに似た口調で。
半ば懐かしみながらも。


お互いの『死相』を見、そしてほくそ笑む。


相手の死を望みながら。

790 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:10:46.48 ID:NgSVEzIo

アリウス『…………アレイスター』


アレイスター「……………………意外だな。何の用かな?」

アリウス『いやなに、挨拶でもしておこうとな』

アレイスター「それはそれは。遺言でも伝えておきたいのか?」

アリウス『はッ、生憎死ぬつもりは無い。お前こそ身辺整理を始めた方が良いんじゃないか?』

アレイスター「………………整理する程の私物は無いんでな。まあ、するとしたらお前が死んでからにしよう」

アリウス『相変わらず寂しい男だな』



アリウス『―――エドワードよ』



アレイスター「…………君には言われたくないな。『ジョン』」


アレイスター「少なくとも私は一度伴侶を得ている」


アリウス『ふん…………そうだ、エド。どうやら俺に、今週中にでもプレゼントを贈ってくれるらしいな』

アレイスター「まあな。香典代わりだ。返送は受け付けんからな」

アリウス『…………はッ、ありがたく受け取っておこう。精一杯可愛がってやる』

791 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:12:18.23 ID:NgSVEzIo

アレイスター「…………それでだ…………そちらは順調か?」

アリウス『万事良し。問題は何も無い。お前は?」

アレイスター「こっちもだ。ただ、君という大きな問題があるがな」

アリウス『それはスマンな。同じ時代に生を受け、同じ時代を生きた事を呪え』

アレイスター「全くだ。ただな、一応君にも感謝している」

アレイスター「君がいなければ、学園都市はこんな短時間でここまで発展しなかっただろうしな」

アリウス『まあ、それは俺も同じだ。おかげで我が社はここまで大きくなれた』

アリウス『俺が設計した人造悪魔もな、その生産ラインはお前から貰った技術を一部使わせてもらってるしな』

アレイスター「それを言うならば、学園都市の初期の設備代も全て君からの資金提供だからな」

アレイスター「このビルの初期設計も、確か君のところからのモノだと記憶している」

アレイスター「私の延命措置技術開発の資金も、君が出してくれたしな」

アリウス『正にお互い様だな』

アレイスター「そうだな」

792 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:14:33.01 ID:NgSVEzIo

アリウス『…………』

アレイスター「…………」

アリウス『…………こうは思った事は無いか?俺とお前が「同じ側」に立っていたら、と』

アレイスター「…………」

アリウス『俺とお前。二人で共に歩んでいたら、正に不可能は無かっただろうな』

アレイスター「…………確かに、『目的』は即遂げられていただろうな」



アリウス『お前が俺と共にこちらの道を歩んでいたら、』

アリウス『そんな小細工をし、「展示ケース」に入らぬとも1000年の命は約束されていただろうに』


アレイスター「生憎、欲しかったのは寿命ではない。君のように力に渇望もしていない」


アリウス『それでは何だ?その「原石」とやらの「体」が欲しかったのか?』


アレイスター「……止してくれ……」


アリウス『名は何と言ったか?そこまでしてその女と一緒に―――』


アレイスター「―――黙れ」

793 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:16:36.51 ID:NgSVEzIo

アリウス『ふん…………お前はいつもそうだった。そこは昔から変わっとらん』

アレイスター「……何がだ?」

アリウス『常に冷静沈着、感情には一切左右されぬ、完全無欠の思考』

アリウス『心を捨て、神の視点から世界を見る達観者』

アリウス『意識体が人の領域から離れた超越者』

アリウス『―――そう思っているようだが、所詮お前も人間だ』

アリウス『どうした?その「肉体の能力」で「未来を視て」いる内に、己が他の人間とは存在が違うと思い込み始めたのか?』


アレイスター「…………何が言いたい?」


アリウス『そのままだ。所詮お前も俺と同じ。そこらの愚民共と同じ「タダの人間」だ』


アレイスター「…………」

                                      セ レ マ イ ト
アリウス『欲望、欲求、感情と完全に剥離し、「真の意志」に従っているだと?』


アリウス『お前はそう己に言い聞かせているだけだ』



アリウス『心の痛みに怯え、目を背け、鍵をかけて震えている負け犬に過ぎん』

794 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:19:22.99 ID:NgSVEzIo

アレイスター「…………」

アリウス『人間の俗世を忌み、その存在から目を背けた者が、』

アリウス『その人間達を全て理解して昇華させるなど笑止千万』


アリウス『お前は全てを理解していると自負しているだろうが、何もわかってはいない』

アリウス『お前の、人は個々の不可侵の「真の意志」を有しているという自論はある意味正しい』

アリウス『だがな、その「真の意志」が欲求・欲望とは隔絶すべき存在と言うのは間違いだ』

アリウス『常に揺らぎ続ける欲求・欲望・感情こそが人間の核。この人間界に生まれし者の真理』


アリウス『人間の「真の意志」とは、それらの混沌の中で構築される「願望」だ』


アリウス『「真の意志」とは、欲求・欲望・感情のまた別の姿。これらは完全に同一。剥離など不可能」


アレイスター「…………」


アリウス『お前は人間を舐めているのか?』


アリウス『―――貴様如き負け犬が、愚か者が「先導者」とは成り得ない』


アリウス『そして俺は違う』

アリウス『俺は「俺の全て」受け入れた』

アリウス『怒りも。憎しみも。喜びも快楽もその全てを』


アリウス『その上で俺は己の「真の意志」に従う』


アリウス『「人の身」で「全能」を』


アリウス『―――必ず「全能の人間」になって見せよう』

795 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:22:11.93 ID:NgSVEzIo

アレイスター「…………」

アリウス『お前の「夢物語」は終わる』

アリウス『確かに新たな時代がやってくるだろう』

アリウス『だがお前の言う、「ホルスの劫」などという時代は来ない』


アリウス『それは「亡霊共」の戯言に過ぎん』


アリウス『死した愚かな神々の、壊れた記憶と思念の混ざり合った残骸が吐き出した、ただの「幻想」だ』

アリウス『お前はそれらの「記号」を掬い取り、事実から目を背け、都合よく解釈したに過ぎん』


アリウス『お前の「視た」未来は到来し得ない。存在しない「幻」だ』

アリウス『現代の人間共が、お前の描く「神の領域」に昇華することはできぬ』


アリウス『更に言わせて貰うとな、お前のやろうとしている事は「人類の昇華」ではない』


アリウス『根拠の無い自己解釈に沿い、人間を異質な存在へと作り変えようとしているだけだ』


アリウス『人間ではない「ゴミ」へとな』

アリウス『人類の95%を生贄にしてな』



アリウス『そしてそれすらも建前』



アリウス『お前の真の目的は「復讐」だ』


アレイスター「…………」



アリウス『―――天界へのな』

796 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:24:09.40 ID:NgSVEzIo

アリウス『……とな、まあこれが―――』

画面の向こうでアリウスは葉巻を咥えながら、
己の前の机の上へ何冊も魔導書を乱暴に積み上げた。

それらはアレイスターが記した魔導書の写本。

『法の書』や『嘘の書』など。
様々な魔術結社や、ローマ正教・イギリス清教等が理解に多大なる労力を費やしてきたものの、
未だに一ページも正しく解読されていない代物だ。

アリウス『お前が書いたコレらの魔導書を読み―――』

そんな物らをアリウスは、まるで読み終わった週刊誌を投げ捨てるように、
無造作に積み上げ。


アリウス『―――お前の人生を見てきた俺の「一個人として」の感想だ』

葉巻の煙を燻らせながら、片方の眉を上げて小さく笑った。

アリウス『まあ、読み物としては中々であったな。それに面白い見方や概念もあった。術式の参考書としてもそれなりに役に立ったぞ』

少し小馬鹿にするように。

アリウス『倫理書、歴史書、思想書としては紙クズだがな』


アレイスター「……それは手厳しい評価だな」

アリウス『どうせ最後だからな。言いたい事は一応言わせて貰ったぞ?』

アリウス『少しでもお前の「アドバイス」になればな』


アレイスター「…………なるほど。それは嬉しいな。腐っても友情は残っていたという訳か」

アリウス『俺達の仲だ。死に行く友には花くらい贈っても良いだろう?』


アレイスター「ならば、私からも一応言わせてもらおうか」

797 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:28:46.42 ID:NgSVEzIo

アレイスター「私から見ればな、君のやっている事は『真の意志』ではない」

アレイスター「ただの『猿真似』だ」

アレイスター「愚かな猿が、樹の上の実をどうやって手に入れようか足りない頭を使って悩んでいるようにしか見えん」

アリウス『ほぉ…………』


アレイスター「私は私自身の理論を正しいと認識している。君に何と言われようが、私からすれば君の言葉が戯言だ」

アレイスター「ありふれた欲求・欲望・感情に『だけ』支配された存在はタダの『獣』だ」

アレイスター「君は獣、猿に過ぎん」

アリウス『…………』

アレイスター「確かに、『真の意志』の始まりが、人としての欲求・欲望・感情と密接に繋がっているという君の理論は面白い」

アレイスター「だが、『真の意志』に従い動くには欲求・欲望・感情は障害にしかならん」

アレイスター「それは陳腐な衝動にしか過ぎん」


アリウス『…………』


アレイスター「君はな、獣染みた低俗な欲求に従い、過去の遺物を奪い取ろうとしている『盗人』だ」

アレイスター「己自身の手では何も作り出せない」

アレイスター「過去の存在達が生み出した力を、その器を横取りし、そこに居座ろうとする『賊』に過ぎない」

アレイスター「そんな者が『全能』になどなれるか?答えは否だ」

アレイスター「奪い借りる事しか出来ぬ者は、『生みの親』を越えることは出来ない」

アレイスター「君がどんなに強大な力を手に入れようとも、その力の元の主を超えることはできない」

アレイスター「単純な力量ならば一時だけでも上回れるかも知れんが、格は越えられない」


アレイスター「覇王、スパーダ、魔帝、君が彼らの力に憧れ欲している限り、彼らを越えることは不可能だ」


アレイスター「はっきり言おう。君に全能になる資質は無い」

798 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:31:29.81 ID:NgSVEzIo

アリウス『…………ふむ』

アレイスター「君は先ほど、私に『事実から目を背けている』と言ったな?」

アレイスター「だが私から言わせれば盲目になっているのは君の方だ」

アレイスター「『オリジナルのスパーダの血』を目の当たりにし、その刃を身に受けてまでわからないのか?」

アレイスター「彼らが今まで、彼らの血がどれだけ『理』を容易く曲げてきたのかがわからないのか?」

アレイスター「君は、あれ程の存在に対して何かできると思っているのか?」

アレイスター「確かに、私の目的も困難な物だ。だが、達成の確率を示すデータによって裏打ちされている」

アレイスター「そして目的の達成の為には何が必要か、何をすればいいのかを私は考える」

アレイスター「目的の次に方法をな」

アレイスター「私はそれに従い歩んで来た。これからもそうしていく」


アリウス『…………』


アレイスター「だが君はどうだ?論理的思考から打ち出された答えよりも、感情・欲求を優先する」

アレイスター「この手法で目的を達成したい、この道を通ってあの場所に到達したい、とな」

アレイスター「目的と方法を同時に考え、しかもどちらも好ましい方向に捻じ曲げようとな」

アレイスター「わからないのか?その行動倫理の行き着く先は自滅だ。そのやり方は『スパーダの一族』にしかできん」

アレイスター「彼らのような、無意識の思念が世界の運命を変える程の存在であってこそ、初めて通じるやり方だ」

アレイスター「君は私を卑下し、己自身が人間のあるべき姿と自負している」


アレイスター「だが私から言わせれば、君の方が人間と言う存在を見誤っている」


アレイスター「愚かな過信だよ。身の程を知った方が良い」


アレイスター「君こそが思い込みと根拠の無い自信で、己の論理を固めているのではないか?」

799 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:33:26.84 ID:NgSVEzIo

アリウス『ハッ…………ハハハハハハ!!!!!!!』

アレイスターの話が終わった直後、アリウスは画面の向こうで豪快な笑い声を挙げた。

アレイスター「…………ふっ」

それにつられ、アレイスターも少しだけ口の端を細める。

アレイスター「ついでにもう一つ言わせるとだ、私のやり方では確かに人類の95%は死ぬが、」

アレイスター「君のやり方ではそれがほぼ100%ではないか。この点では五十歩百歩だと思うが」

アレイスター「いや、私はその95%の犠牲と引き換えに、残りの5%を超越者へと昇華させ『救う』が、君の場合は正に絶滅だ」

アリウス『ハハハ……いや確かに。それはご尤もだな……それにしても懐かしいなエド。あの頃のようだ』

アレイスター「…………確かにな。よくこう議論を交わしていたものだ』

アレイスター「何年ぶりかな、ジョン。君とこうして『罵り合う』のは」

アリウス『さあな。一世紀近くは経っていると思うがな。それにしても、やはりお前と議論を交わせば終わりが見えんな』

アレイスター「当時でも意見の一致はそうそう無かったんだ」

アレイスター「今更言い合っても、お互い納得し合う事など到底不可能だ」

アリウス『徐々に喧嘩腰になり、仕舞いにはお互いの論理の真っ向否定だ。あの頃と正に同じだな』

アレイスター「そしてそのまま殴り合いか」

アリウス『確かに。だが、あの頃とは一つだけ違う』

アレイスター「…………そうだな」


アリウス『あの頃は殴り合い。だが今は殺し合い、だ』

800 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:34:58.27 ID:NgSVEzIo

アレイスター「皮肉なものだな」

アリウス『人生とは面白いものだ』

アリウス『これぞ人間の世だ』

アレイスター「…………」

アリウス『一応最期に言っておくが、俺はお前を憎んでいる訳では無い。むしろ感謝している』

アレイスター「わかっているよ。私も同じだ。君はどう思っているかはわからないが、」


アレイスター「私は今でも君の事を友人だと思っている」


アリウス『ハッ、お互い共数少ない友人だな』


アレイスター「…………」


アリウス『…………ではせめてもの手向けだ』

アリウス『お前ができるだけ楽に死ねるよう、祈っておいてやる』


アレイスター「それは嬉しいな。私も君の死を称えてあげよう」

801 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/22(水) 00:36:58.33 ID:NgSVEzIo

アリウス『さて、もう二度と生きて顔を合わせる事は無いだろう』


アレイスター「ああ」



アリウス『さらばだ。エドワード=アレグザンダー=クロウリー』



アリウス『汝の上に速やかな、そして慈悲のある「死の祝福」があらんことを』



アレイスター「ああ。『達者』でな。ジョン=バトラー=イェイツ」



アレイスター「汝の上に、早急なる『穏やかな死の救い』があらんことを」


そして画面は消え、通信は途絶えた。

ここで終わった。
お互いの死を望む、旧友同士の最期の談義が。

アレイスター「……………………」

その漆黒となった画面を、アレイスターはそのまましばらく見つめていた。
表情を一切変えずに。

静かに。

沈黙したまま。

―――
804 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/22(水) 02:12:08.65 ID:J8T5GBU0
禁書&DMCの「設定の縛り」が邪魔に感じる位>>1の文章がチリチリする。
原作の制約全部取っ払って>>1が全力で突き抜けたらすげぇの書けるんじゃないだろうか。

今回も良かったです乙!!(`・ω・´)ゞ

805 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 09:32:30.08 ID:ZIlA22DO
『人間界の神、天使』っていう設定の時点で既にぶっ飛んでる
面白いね

807 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 12:41:05.27 ID:HLkHiwAO
喧嘩するほどってやつか…いいねぇ

808 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/23(木) 23:29:39.33 ID:8yy4CMAO
こいつらの会話聞いてなんだか微笑ましいと同時に哀しくなった。

811 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:21:55.93 ID:GQakPlQo
―――

学園都市。

午後5時過ぎ。

第一八学区。
とある研究施設の地下。

広大な空間の中ズラリと並ぶ、
様々な電子機器が取り付けられているリクライニングチェア風の椅子。

それらにデュマーリ島強襲作戦に選抜された能力者達が、
戦闘機パイロットのヘルメットのようなモノを被り座っていた。

夢を見ているかのように、皆が体を小さく動かしたり、指先を小刻みにピクリピクリと動かしながら。

それらの間を、端末を操作したりPDAに目を通しながらせわしなく行きかう白衣を着た者達。


今ここで行われている作業は、学習装置による能力の最適化・必要知識と技術の『インストール』だ。

ちなみにレベル5昇格予定の結標・滝壺は、更に特別な作業が必要な為別施設で調整が行われている。


そんあ地下空間の北側、管制室のような一室。

そこの大きな窓から、麦野は右手を腰のアラストルの柄に軽く乗せながら、
その隣で土御門は腕を組みながら、この広大な地下空間を見下ろしていた。

二人の後ろには大量の端末が並び、
数人の白衣の者達が業務的な言葉を発しながら淡々と操作している。

812 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:25:51.12 ID:GQakPlQo

土御門「壮観だな」

100を越える能力者達のインストール作業を眺めながら、ぽつりと呟く土御門。

土御門「毎度毎度思うが、良くやるぜよこの街は」

麦野「…………たった100ちょいよ?連中は2万体以上にもこういう事したんだからどうってことないわよ」

土御門「……まあな………………」


作業が始まってから3時間。
そろそろ終わる時刻。

ちらほらとインストールが終わり、
白衣の者達に促されて起き上がる能力者が見える。


土御門「…………そろそろだな」

麦野「…………」

土御門「この後は?」

麦野「コイツらは今日このまま、あの病院に叩き込む。そして明日の朝6時から、第二学区で能力測定及び演習」

土御門「…………へえ。ダンテ達と同じ病棟か?」

麦野「んなわけないでしょ。別病棟」

麦野「結標と滝壺は同じ病棟だけど」

813 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:27:39.62 ID:GQakPlQo

土御門「そうか……」

麦野「あ、そうそう、アクセラレータに伝えておいてくれない?」

麦野「ラストオーダーの書き込み作業、今日の26時から行うって通達があったわよ」

土御門「おう。じゃあアレか?結標と滝壺理后は明日からもうレベル5か?」

麦野「ミサカネットーワークに接続されればね」

土御門「ひょー、そいつはすげえぜよ」

麦野「で、アンタのこの後の予定は?」

土御門「あ〜、結標達の方を確認して……今日はそれで終わりだぜよ」

麦野「衛星写真の鑑定も終わったの?」

土御門「ああ。俺は何も見つけられなかった。明日にでもインデックスに見せる」

麦野「じゃあ今日の夜はヒマ?」

土御門「おう……ってもしや、俺を誘ってるのかにゃー?」


麦野「そうそう。一晩付き合ってくれない?」


土御門「ほっほーう…………いやぁ、俺には女がいるんだが、お前がどうしてもと言うのなら一晩だけ相手してやってもいいぜぃ」

土御門「で、俺とナニをしたいのかにゃー?まさか女王様プレイならぬ女帝様プr」


麦野「コイツらのデータ確認して配置決める作業と、その報告書の作成」

麦野「明朝までには仕上げるから」


土御門「………………………………ま、そんなもんだと思ってたぜよ」

814 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:30:14.66 ID:GQakPlQo

麦野「一つ言っておくけど、アンタとヤるくらいならアラストルとヤッた方がマシだから」

アラストル『だそうだ。小僧。残念だったな』

土御門「…………」

麦野「今日の……夜9時くらいに私の病室に来い」

土御門「へいへい……」

麦野「結標にも伝えておいて」

土御門「あいよあいよっと」

苦笑いし頭を掻きながら、部屋を後にしていった土御門。
その姿が消えた後。

アラストル『で、この俺と寝たいのか?ちょうど良い。俺も人間の女とそれなりにs』


麦野「勘違いすんな。土御門よりはアンタの方がマシ、」


麦野「で、アンタとヤるくらいなら死んだ方がマシって事」


アラストル『………………………………お前、女の方が好きなタチか?』


麦野「んな訳ねえだろうが」

815 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:34:57.16 ID:GQakPlQo

ぽつぽつとインストール・調整作業を終え、起き上がる能力者。
その中に常盤台の制服を着たツインテールの少女、白井黒子もいた。

黒子「…………っ……」

ゆっくりと身を起こし、台の上に座りながら体と頭の調子を確認する。

黒子「…………」

頭の中。

不思議な感覚だ。

今まで知らなかったあらゆる知識が、既に普通に頭の中にある。

より高度な応急処置の仕方、様々な兵器の扱い方や構造、
その威力やどれ程の遮蔽物があれば遮れるか、

戦闘時における動き方、デュマーリ島の位置関係やその全体図、
そして複数の悪魔の種類や弱点と戦い方、アリウスの顔まで。

黒子「…………」

更に能力についても感覚がかなり違っている。

目で見た瞬間、対象の座標位置が瞬時に認識できる。
計算で割り出すのではなく、視界に捉えた瞬間に正確に頭の中に浮かぶのだ。

しかも複数を同時に。
数値化せずともその位置や質量、体積をも即座に手に取るように完全に把握できる。

816 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:36:27.14 ID:GQakPlQo

今まで彼女が能力を使う際、
11次元上の座標、飛ばす物体の質量・体積、
それらを正確に割り出さなければならなかった。

そしてその作業には1、2秒ほどのラグが常に伴っており、また冷静な思考を必要とする為
精神的な面でもかなり慎重にならねばならなかった。

黒子「…………」

だが今は少し違うようだ。
まだ能力を試してはいないが、まずそのラグがかなり短くなっている事は確実だ。
手に触れたとほぼ同時に、即その物体を飛ばせるだろう。

恐らく同時に飛ばせる個数、その質量制限の上限も大幅に伸びている。

己自身のテレポートなら、超高速で何度も連続してできそうだ。

さらに緻密な思考を意識することなくとも即必要なデータを認識できる為、
精神が少し不安定な状況でもそれなりに使えるだろう。



また別の一画では。

絹旗「……」

絹旗が同じように台に座りながら、己の手を眺めていた。

817 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:38:33.71 ID:GQakPlQo
調子を確かめるように、手のひらを開いては握ってをゆっくりと繰り返す。

絹旗「…………」

窒素装甲。
体の表面数センチの範囲だけだが、大気中の窒素を自在に操り、
圧縮し装甲代わりにしたり、大質量の物体を持ち上げたり等もできる彼女の能力。

それらの特性が、全体的に大幅グレードアップしたようだ。

操作範囲は体表から20cm程にまで広がり、
掌握できる窒素量は、簡単な見立てだと約200倍にまで増加していた。
当然、圧縮密度も以前とは桁違い。

絹旗「…………」

『暗闇の五月計画』という、一方通行の演算パターンを参考にした、
最適化開発の被験者でもある絹旗。

その下地があったおかげか、かなりの能力強化が可能となったのかもしれない。

絹旗「…………」

ふと顔をあげると。
何やら複雑な表情で、頭を掻きながら近付いてくる浜面が目に入った。

絹旗はそんな彼に、小さな右手の平をおもむろに向け。

浜面「絹旗、お前も終わったk―――」

その次の瞬間。

浜面「―――んぐッッッッ!!!!!!!ごぁッ!!!!」

突如喉を押さえ、その場で苦悶の声を挙げながらもがき始める浜面。

818 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:40:44.75 ID:GQakPlQo

絹旗「(……圧縮した窒素の撃ち出しも可能、集中すれば射出後のある程度の操作も可能、距離は少なくとも5mは有効、ですか)」

絹旗はちょっとした人体実験で、別の新たな使い方を確認、
その数秒後、哀れな無能力者を窒素の縛から解放した。

浜面「げほぁッ!!!!がはッ!!!!…………クッソ!!!な、なんだってんだよ!!!?」

その場の床に膝を付き、むせ返りながらも言葉を吐く浜面。
そんな彼に向け、絹旗は台からピョンと飛び降りながら。

絹旗「超おおげさですね。大丈夫ですよ。超優しくしましたから」

浜面「お、お前か!!!何だよ!!!俺で人体実験しやがったのか!!?」

絹旗「ぎゃあぎゃあ喚かないで下さい。超みっとも無いですよ。ところで気分はどうですか?」

浜面「ん?あ…………まあ何か不思議だよな……知らない事をちゃんと知っているってのは……」

喉を軽く摩りながらも立ち上がり、言葉を返す浜面。

浜面「なんつーか、すっげえ違和感が……お前はどうだ?能力者だとやっぱもっとアレだろ?」

絹旗「私は過去に何度も経験してますから、超どうってことありません」

浜面「そうか……それにしても……何で無能力者の俺がこんな所にいるんだろうな」

絹旗「……知りません。でも超良かったじゃないですか。とにかく滝壺さんの傍にいれますので」

絹旗「まあ、私達の足を引っ張らないよう、せいぜい超頑張ってください」

浜面「……おう」

819 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:42:35.51 ID:GQakPlQo
―――

とある病棟。

廊下を進む、二人の高校生。
片や右手に不気味な篭手を付けている、
健康的でありながらもどことなく不気味なオーラを纏っているツンツン頭の少年。
もう一方は杖を激しく軋ませながら歩く、白髪の華奢な少年。

上条当麻と一方通行。

上条「……」

一方「……」

上条「……」

一方「……」

上条「なあ」

一方「あァ?」

上条「お前とこうして、平時に一緒にいるってのは初めてじゃねえか?」

一方「それがどォした?」

上条「いや……なんて言うかさ、お前の事良く知ってる気がしたんだが、よくよく考えてみるとほとんど関わり無かったなって」

上条「なんかな、なんで俺はお前の事こんなに信頼してるか、俺自身不思議なんだ」

一方「こンな殺人鬼野郎に、なンで大事なガキ預けちまったンかってか?」

820 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:43:42.78 ID:GQakPlQo

上条「殺人k……!!い、いや……!お前はそんな奴じゃあ……!!」

一方「変に気ィ使ってンじゃねェよ。気持ち悪ィなおィ」

上条「お、俺はな!!もうお前の事をんな風には……!!!」

一方「うぜェ。オマェがどォ思ってるかなンざ知ったこっちゃねェ」

一方「黙ってろクソが」

上条「…………」

一方「……」

上条「…………なあ」

一方「……今度はなンだ?」


上条「…………ありがとな。インデックスの事」


一方「…………………………………………チッ」

上条「……」

一方「……」

821 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:44:53.83 ID:GQakPlQo

二人は無言のまま、廊下を進み。
エレベーターに乗り込み。

そして地下4階に降り、再び長い廊下を進んでいく。
地上階の患者用のエリアとは違い、壁はコンクリートむき出し、
天井は様々な配管が走り、所々にあるドアも大きな金属製の無機質なモノ。

上条「ところでよ、何するつもりなんだ?」

一方「黙って来ィ」

そして一方通行はとあるドアの前で止まり、片手で押し開けた。


上条「……」


長袖の手首の先から出ているその漆黒の手。
光も反射せず、漆黒な為当然陰影も無い為、
質感が全く感じられない奇妙な手だ。

正に影自体が立体的になって動いている感じだ。

上条「そういえば、お前その手どうしたんだ?」

一方「どォなってンのかは俺が聞きてェよ」

上条「?」

不思議そうな顔をする上条を気にする風も無く、
一方通行は室内へと入って行き上条もその後に続いた。

822 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:47:08.54 ID:GQakPlQo
ドアの向こう。

そこは少し広めの、恐らく器材置き場として使われていた場所のようだった。
今は何も置かれてなく、ガランとしていたが。

その部屋の中央まで一方通行は歩き進んだところで立ち止まり。
手首で起用にチョーカーのスイッチ部分を押し上げ、咥えて能力を起動させ、
杖を部屋の壁際へと放り投げた。

上条「…………?」

一方「よし…………握れ」

そして上条の方へ向けて右手を差し出した。
握手を求めているように。

上条「……お、おう」

戸惑いつつも、上条は彼に促されて恐る恐る右手で握り返した。

その次の瞬間。

上条「―――!!!」

響く特徴的な、耳鳴りに似た金属音。
そして上条の右手に伝わってくる、幻想殺しが発動した時の感触。

だが。

一方「…………」

一方通行の漆黒の手は、まったく変わっていなかった。
通常の手と同じように、上条の右手をしっかりと握っていた。


一方「………………なるほどなァ」

823 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:48:44.92 ID:GQakPlQo

上条「…………お、おい…………これ一体……??」

一方「良いから離せ。いつまで握ってやがンだ」

上条「お、おうスマン……」

パッと手放す上条。
その開放された己の右手を、一方通行はまじまじと見つめた。

背中から噴出する黒い『影』、そしてその『影』で形成された杭は、
多少のラグがあったが以前上条の右手であっさり消されていた。

一方「……」

だが、同じように『影』で形成されているこの義手には全く変化が無い。
表面のちょっとした靄がかき消されただけで、腕自体には全く影響が無かった。

一方「……おィ」

上条「……な、なんだ?」

一方「オマェの右手、能力とかを消す際の条件とかあンのか?」

上条「あーっと……そうだな、俺もはっきりとは知らねえけどよ、経験上だと、まずデカ過ぎる力は消せない、」

上条「ただ、力の量が大きすぎてもそれが方程式とか何かで形を保っている存在ならば、」

上条「その方程式とかをぶっ壊して分解できる、ってらしいのと……」

上条「あ、そうだ、大前提が『生命体そのものには一切効果が無い』って事だ」

上条「生き物の『肉体そのもの』、またその生き物の『本来の性質』とかには全く効かないって感じだ」

824 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:52:05.85 ID:GQakPlQo

一方「…………」

大きすぎる力は消せない。
まずこれに該当するわけがない。

一方通行は上条の右手が処理できない程、
そこまで己の力が大きくない事は重々認識している。

上条が消せないというのは、それこそダンテやバージル、ネロの本気の斬撃や、
魔帝が放ったような赤い光の大剣等の、
この世界が簡単に壊れてしまう程の規格外クラスの代物に当たる。

それらと比べれば、この義手などオモチャに過ぎない。
力の総量では、余裕で上条の右手の許容範囲内なはずだ。

次に方程式の破壊。

一方「…………」

このやり方ならば、力の大小に関係なく作用するのだろう。
一方通行は詳しくは知らないが、恐らく魔帝の『創造』とかいう力が破壊されたのもこの作用だろうと推測した。

だが、上条の右手に握られた義手は変化なし。
何らかの方程式等や『能力による制御』等で、この形が形成されてはいる訳ではないようだ。

つまり、残るは。


一方「(肉体……ねェ……)」

825 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:55:26.92 ID:GQakPlQo

一方「…………」

この漆黒の腕の正体を解き明かそうと、上条の協力を得た今。
その謎の一部の答えが浮き彫りとなった。

消去法で導き出された結果。


一方「…………(『義手』じゃねェ…………)」


一方「(『俺自身』の……新しい『生身の腕』…………か?)」


少し信じ難い。
だが、こうして漆黒の腕がある時点で既に信じ難いこと。
最早彼は驚きはしなかった。

というか、薄々どこかで気付いていたかもしれない。

見た目や腕力は全く別物だが、感覚自体は生身の時とは何一つ違いが無いのだ。
それに黒い杭とは違い、能力のONOFF関係なく普通に存在している。
カエル顔の医師によれば、ミサカネットワークとも関係ないとの事。

それらの状況証拠がこう示しているように聞こえる。

一方「チッ…………」


これはお前自身の腕だ、お前自身の肉体そのものだ、と。

826 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:56:52.03 ID:GQakPlQo

一方「(……俺はどォなっちまうンだ?マジでバケモノになろォとしてンのかよ……)」

一方通行は己の状況に、彼らしくもなく少しだけ戦慄した。

こうしている時も感じる。
己が少しずつ。

少しずつ。

穏やかに、緩やかに。

この影に侵食され、徐々に肉体が『入れ替わって』きていることを。


一方「(…………チッ………………)」


そして彼は少し焦りを感じ、顔を顰めた。

もしかしたら、己に残された時間はもう僅かしかないのではないか、と。


果たして己は持ちこたえてくれるのだろうか?


打ち止め達を『解放』するまで、と。

827 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 17:59:15.87 ID:GQakPlQo

一方「……おォ、悪かったな。もォ済ンだぜ」

ベクトル操作で杖を引き寄せた後、
能力をOFFにしながらそっけなく言葉を飛ばす一方通行。

そのまま、杖を軋ませながら足早にドアの方へと向かって行った。

上条「…………待て…………あのよ……」

そんな彼の背中を、上条は呼び止めた。
何かを言いたげに恐る恐る。
上条もまた、一方通行の漆黒の腕を握った瞬間、とある異質な感覚を覚えていたのだ。

一方「あァ?」

半身だけ振り返り、横顔を上条の方へと向ける一方通行。

上条「良くわらんねえけどよ……お前のその手握った時な……」


上条「あいつの……フィアンマのデカイ手を触った時と同じ『感触』だったんだが……」


一方「…………それは正しいかもしれねェな……」

一方「あのクズ野郎曰く、『アレ』は俺の力の『上位互換』つゥ事らしィぜ」

上条「?……それってどういう……」

一方「俺が聞きてェよ」

それだけ吐き捨て、一方通行はそそくさと退室していった。

そんな彼の後姿を上条は怪訝な表情で見つめながら。

上条「…………上位……互換…………」

ぽつりと、その言葉を確認するかのように呟いた。

己が、その『上位互換』の『片割れ』を有していることなど露とも知らずに。

833 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 19:56:27.81 ID:GQakPlQo
―――

某大陸沿岸部の都市の一画に広がる、
広大なスラム街。

時刻は、あと数時間で日が昇る頃。
辺りはまだ深い闇に覆われ、点滅する街頭の淡い光が、
その犯罪都市の陰湿な姿をおぼろげに照らし上げていた。

その埃っぽく薄暗い街並みの一角に佇む、
一際不気味な空気を漂わせてあるバー。


ゲイツ・オブ・ヘル。


さまざまな犯罪組織・凶悪犯罪者が大勢潜んでいるこのスラム街の中でも、
この店にだけは手を出してはいけないという暗黙のルールがある。

やってくる客の大半が札付きの無法者。
それだけではない。

『普通では無い人間』、『人間ではない者』もやってくる。

834 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 19:57:46.66 ID:GQakPlQo

そんな店に今、常連の中でも特に規格外な客の一人が来店する。
そのドアを乱暴に開けた銀髪の白人男。

真紅のコートを靡かせ、分厚いブーツの靴底を打ち鳴らし、
ニヤニヤと掴みどころの無い笑みを浮かべかったるそうにカウンターへと向かう、
背中に背負っている大剣をもう隠す気ゼロの大男。

ダンテ。

ダンテ「よぉ」


そんな彼を、ワイングラスを磨きながらカウンター越しに一瞥する、
ダンテにも引けを取らない体躯の黒人の大男。


「……久々だな」


地の底から響いてくるような低い声。
タトゥーが掘り込まれているスキンヘッドにサングラス。
ワニ皮の分厚く重厚なコート。


この店のマスター、ロダン。



ロダン「ダンテェ……」

835 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:01:13.33 ID:GQakPlQo

ダンテ「悪ぃな。最近は予定が埋まっててな。顔出す機会が無くてよ」

薄ら笑いを浮かべたまま、ダンテはカウンターに片肘を乗せ、
これまた乱暴に椅子に座り込んだ。

ロダン「だろうな。お前さんの話は色々と聞いてるぜ」

ロダン「最近は随分と派手に動き回ってるらしいじゃねえか」

ダンテ「ハッハ〜、まぁな。とりあえず退屈はしてねえな」

ロダン「とりあえずだ……一杯いくか?それともストロベリーサンデーか?」

ダンテ「あ〜……まずはワインくれ。銘柄は任せる」

ロダン「よし……」

棚から一つ、赤ワインの1500mlボトルを取り出したロダン。

ロダン「こいつはどうだ?シャトー・ペトリュス 1947年もの。結構な上物だぜ?」

ダンテ「…………上物はよしてくんねえか?高えんだろ?」

ロダン「なぁに、一杯くらいは奢ってやる。久々だしな」

ダンテ「ハハッ。それじゃあ貰うぜ」

ロダン「どうせ毎度の如く、今日の分もツケにするつもりだったんだろう?」

ダンテ「まあな」

ロダン「だと思ったぜ」

836 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:04:43.47 ID:GQakPlQo

ロダン「OK……」

ロダンはそのボトルをカウンターに置き、ワイングラスを出そうと。

したその時。

ダンテは普通にそのボトルを手に取り、片手で弾くように手際よく栓を飛ばし。


豪快に『ラッパ飲み』し始めた。


ガブガブと。

ダンテ「…………っは…………結構旨えなコレ」

ロダン「……………………」

ダンテ「いやぁ、ありがとな。いいもん貰ったぜコイツぁ」

ロダン「……………………」

ダンテ「どうした?」

ロダン「…………ツケとくぜ。5万ドルだ」

ダンテ「んあ?じゃあ返すぜ。まだ一杯分しか飲んでねえから大丈b」

ロダン「お゛ぉ゛ッ??聞こえねぇな。今何て抜かしやがったお前さんよ?」

ダンテ「………………………………OK……ツケといてくれ」

837 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:08:32.58 ID:GQakPlQo

ロダン「…………ところでだ。今日は何の用で来やがった?」

ロダン「どうせお前さんの事だ。ただ飲みに来たわけじゃねえだろう?」

ダンテ「へっへ…………」

そこでダンテは腰に手を回し、
二丁の大きな拳銃をカウンターの上に乗せた。

その白と黒の拳銃が置かれた瞬間、
確かに大きめだが、そのサイズとは余りにもかけ離れた重い音が響いた。

ロダン「…………トリッシュのか?」

ダンテ「そうだ」

ロダン「相手はバージルだな?」

ダンテ「もう知ってんのか?速えな」

ロダン「当然だ。片やスパーダの息子、片やもう一人のスパーダの息子の相棒、かつての魔帝軍の重鎮」

ロダン「その激突は魔界でも噂されてるぜ?」

ロダン「ここからお前さん達兄弟の殺し合いに発展しねえかってよ、そう望んでる声が多い」

ダンテ「……へぇ……」

838 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:11:05.66 ID:GQakPlQo

ロダン「で、だ。コイツを直せって?こりゃあまた派手にやったみてぇだな」

ダンテ「そうだ。できそうか?」

ロダン「俺を誰だと思ってる。そうだな、15分もありゃあ作業は終わる」

ダンテ「何だ?随分速えな」

ロダン「こういう事もあろうかとよ、お前らの銃のパーツは一通りスペアを揃えてる」

ロダン「それにだ。『片割れ』が残ってるからな。術式構造もコピーするだけで良い」

ダンテ「そうか。そいつは良かった。でよ、他にも聞きてえ事があんだが」

ロダン「…………魔界の動きか?」

ダンテ「おう。アスタロトってのとトリグラフって野郎の事で、何か知らねえか?」

ロダン「…………お前さん達も連中の関与に気付いたか」

ロダン「二人共、覇王の元直下の幹部だった野郎だ。特にアスタロト」

ロダン「コイツ自身の力もデカイが、有する兵力も魔界きっての規模だ」

ダンテ「確かよ、今の内戦で良い線までいってるって聞いたが?」

ロダン「そうだ。現時点で魔界の10強の勢力の一つだ。更にその10強の内、四つの勢力がコイツに靡き始めてる」

ロダン「例の人間、名はアリウスだったか、その野郎が提示している覇王復活という餌が魅力的なんだろうよ」

ロダン「覇王の旗印の下、再び集おうとしてやがる」

ダンテ「…………」

839 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:12:21.71 ID:GQakPlQo

ロダン「そうなっちまえば、覇王シンパ共による魔界の統一も時間の問題だ」

ロダン「そうならなくとも、この10強の内の一勢力だけでも人間界に向かい始めれば、かなり危険だがな」

ロダン「そして少なくともアスタロトは、覇王復活のため軍勢を人間界に放とうとしている」

ロダン「もちろん奴自身が直接率いてな。どうやってその大軍勢を一度に送り込むかは知らんが、既に待機状態になっている」

ダンテ「…………軍勢を送り込む方法、俺は知ってるぜ」

ロダン「ほう?」

ダンテ「アリウスはな、親父が封じた魔界の大穴をも開けようとしてやがる」

ロダン「…………そいつはマズイな。そうなると一勢力どころじゃないぜ?

ロダン「魔界中のクズ共がそこを通って一気に押し寄せてくるぞ?」

ロダン「更に覇王復活とほぼ同時だろう?群がってきた連中は覇王の下で一気に統一軍に変貌するかもな」

ロダン「いくらお前さんでも、人間界にいる限りその物量を押し切ることは不可能だろうぜ」

ロダン「お前さんが人間界への負荷を気にしないのならば別だが」

ダンテ「……」

ロダン「随分とデカイパーティだな。バージルも動いてんだろ?こいつは面白いモンが見れそうだ」

ダンテ「まぁな…………まあ魔界の事はそんぐらいでいい」

ロダン「次はなんだ?」



ダンテ「天界の事でなんかねえか?」



ダンテ「『ファーザー=ロダン』さんよ」

840 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:13:48.57 ID:GQakPlQo

ロダン「………………………………参ったぜ。お前さんの口からその名が出てくるとはな」

ダンテ「ま、詳しい事は俺も知らねえけどよ。お前が『どこ生まれ』なのかぐらいは知ってるぜ?」

ダンテ「800万年前に魔界に来るまで、その『故郷』で『ふんぞり返ってた』のもな」

ロダン「……誰から聞いた?」

ダンテ「勘と風の噂だ」

ロダン「…………なるほどな。本当に油断ならねえ奴だなお前さんは」

ダンテ「で、『古巣』の事情はそれなりに知ってんだろ?」

ロダン「……ある程度はな。お前さんが最近顔出してる学園都市を……」

ダンテ「知ってるぜ。天界はあそこを潰す気なんだろ?」

ロダン「そうだ。四元徳が自ら軍勢を率いてな」

ダンテ「四元徳って野郎については?」

ロダン「少し前な、俺の知り合いに四人とも魔界送りされたんだが、二人がそこから脱出して復活してる」

ロダン「更に今、天界で『大食い』して力をかなり増強してるらしい」

ダンテ「大食い?」

ロダン「セフィロトの樹経由で吸い出された人間の魂、本来は天界の者達全員に平等分配されるんだがな、」

ロダン「今はこの二人が占有してるらしいぜ。たった一人の魔女に敗れた事がよっぽど悔しかったんだろうよ」

ダンテ「へぇ……」

841 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:16:11.68 ID:GQakPlQo

ダンテ「そうだ、後もう一つ聞きてえ」

ロダン「何だ?」


ダンテ「魔女」


ロダン「……」

ダンテ「お前の事だ、知ってるんだろ?バージルと魔女が一緒に動いてる事ぐれえ」

ダンテ「その四元徳ってのとジュベレウスをぶっ倒した例の女、ここの常連なんだろ?」

ロダン「……さぁて。どうだかな」

ダンテ「おいおいおい教えてくれよ」

ロダン「……OK、教えてやるが後だ。先にコイツを直してくるぜ?壊れたままの銃を見てると落ちつかねえ」

カウンターの上に置いてあったトリッシュの二丁の銃を掴み挙げ、薄く笑うロダン。

ダンテ「……OK、さっさと済ませてくれ」

842 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:17:36.58 ID:GQakPlQo

トリッシュの銃を手に、ロダンはカウンター後ろの部屋の方へと消えて行き。
ダンテは一人、カウンターにてワインボトルをラッパ飲みしていた。

そうして5分程経ったころか。

ダンテ「…………」

ピタリと動きを止め、少しだけ目を細めるダンテ。
その次の瞬間。

バーのドアが、来客を知らせる鈴の音と共に大きく開き。
そして入ってくる一つの足音。

ダンテ「……」

ダンテは振り向かずに、そのまま背後の足音を聞いていた。
その優雅な足音からして、スタイルのいい高身長の女、と即判別しながら。

ダンテ「…………」

そして足音の主は、
カウンターのダンテの右三席ほど離れたところに着いた。

それと同時に、ダンテは小さく笑いながら横目を向け。

ダンテ「ヒュー」

足音の主の、予想以上の『どストライク』な姿を見て、
思わず軽く口笛を吹いた。

843 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:19:20.06 ID:GQakPlQo

ダンテの右側、少し離れた所のカウンターに着いた女。

肌にフィットしている黒いボディスーツが、その抜群のスタイルを更に強調している。
端正な顔立ちに黒縁のメガネ、高く結っている長い長い黒髪、そして口元のホクロ。

咥えてる棒つきキャンディーを、愛撫するかのように口で弄んでいる。

全身から凄まじい妖艶なオーラを醸し出している。

ダンテ「(ン〜ン。最高だ)」

軽く口の端を上げ、斜めに顔を傾けながら、
その女の全身を舐めるように見回すダンテ。

恐らく最初から意識してたのか、
相手の女も艶やかな笑みを浮かべながら、ゆっくりとダンテの方へと顔を向けた。


ダンテ「Hello Beautiful」


薄く笑いながら、軽く挨拶をするダンテ。
それに対し女も棒つきキャンディーを含みながら軽く唇を舐め。


「Hey.Baby」


艶やかな声色で言葉を返す。
同じく小さく微笑みながら、誘うような妖艶な目つきで。

844 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:21:58.68 ID:GQakPlQo

ダンテ「…………」

「…………」

ダンテ「…………」

「…………」

小さく微笑みながら、
お互いの全身を舐めるように見る女と男。

「ねえ」


ダンテ「何だい?子ネコちゃん」

「ン〜、ロダンは?」


ダンテ「アイツなら席を外してるぜ」

ダンテ「今ここにいるのは俺とお前だけだ」

「ふふ……二人っきりって訳」

845 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:23:13.72 ID:GQakPlQo

「そう、とりあえずロダンはいないのね。は〜ん、喉乾いちゃった」

そこで女はそう呟きながら、
ダンテの手にあるワインボトルを流し目で見つめた。

意図を察したダンテは、スッとそのボトルを差し出すも。
当然、三席分も離れている為、手渡す事ができる訳が無い。
それどころか、ダンテは手を伸ばそうとせずに軽く突き出しただけ。

それでありながら、小さくボトルを振りほらどうぞと言いたげな表情。


女はそれを見て、小さく笑いながら椅子から降り。
キャンディーを艶かしく口に含みながら、ゆっくりとダンテの方へと歩き進み。

ダンテの隣の席に、身を寄せるようにして座りながら、
差し出されているボトルを彼の大きな手ごと握り締め。

ダンテの顔を見つめながら、そのままゆっくりと口に運び一飲み。

その時、ダンテはさりげなく女の馨しい香りを鼻に含んだ。

ダンテ「(ン〜ン…………こいつぁ『大当たり』だ)」


女は少し名残惜しそうに、ボトル口から唇を離し。

「ンハん…………結構な上物ねこれ。美味しい」

熱い吐息を交じらせながら、小さく笑った。


ダンテ「……ああそうだな。『旨い』ぜ」

846 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:24:25.40 ID:GQakPlQo

「それにしても……セクシーねアンタ。完璧」

ダンテ「お前もな。最高だぜ」

「でも私って、完璧すぎる男はあんまり好きじゃないのよねぇ」

ダンテ「へぇ、そうかぃ?」

「そう、だって完璧だったら『攻める』隙が無いじゃない?可愛げが無いし」

ダンテ「成る程な。だが難攻不落を『攻め落とす』のも面白いと思わねえか?」

「んは、それもそうね。でもアンタ、かなり『攻め落とす』の難しそう」

ダンテ「そうか?試してみなきゃわかんねえぜ?」


ダンテ「案外簡単に落ちるかも知れねえ。特にお前相手ならな」


「へぇ。どうすれば落ちるかしら?」


ダンテ「なぁに、難しい事は必要ねえ」

ダンテ「ちょっとばかし『運動』をするだけだ」

「ン〜ホットな『エクササイズ』、ね。二人っきりの」

ダンテ「ああ、二人っきりでじっくりな」

847 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:25:37.90 ID:GQakPlQo

「それで、アンタの事は置いとくとして、私を『攻め落とす』自信はあるのかしら?」

ダンテ「そいつも試してみねえとな」

「自信あるのねぇ?」

ダンテ「お前もそうだろう?俺の『動き』を『感じたい』んだろう?全身で、な」

「アナタも私を『感じたい』んでしょ?そして私の事が『隅々』まで『知りたい』んでしょう?」

ダンテ「まぁな。隅々まで、包み隠さず『全て』をな」

キャンディーをほお張りながら、グッとダンテに身を寄せる女。
ダンテも、手に持っていたボトルをカウンター脇に寄せ、彼女の腰に手をあてがう。
二人の顔の距離はわずか10cm。

相手の唇と瞳を交互にゆっくりと見ながら、
熱い吐息を交じらせる。

「ン〜欲張りね。そういうボーヤはオシオキしたくなっちゃう」

ダンテ「ヘッハァ、舐めてると痛い目見るぜ。火傷しても知らねえぜ?」

「大丈夫、熱いのダイスキだから」

ダンテ「OK、それなら火ィつけてやる。今までお前が味わった事のねえ火をな」

ベヨネッタ「一生かけても忘れられない火を。それで朝まで私を熱してちょうだい」

と、その時響き渡る。


ロダン「おい……お前ら」


地の底から聞こえくるかのような低い声。

カウンターの後ろのドアからロダンが顔だけ出し、
今にもそこで絡み合いを始めそうな二人を睨んでいた。

848 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:26:35.14 ID:GQakPlQo

「は〜い、ロダン。お邪魔してるわよ」

ロダン「ベヨネッタ…………お前さん達よ、場所をわきまえやがれ」

ダンテ「よお、見物しててもいいが、混ぜはしねえぜ?」

ロダン「馬鹿野郎。俺の店でヤルんじゃねえ。どっか他所に行きやがれ」

ベヨネッタ「だってさ」

ダンテ「仕方ねえ。ちょっとばかし移動するか」

ベヨネッタ「そうね」

二人はひらりと椅子から降り、

ダンテ「ロダン、朝までには戻る」

ベヨネッタ「私も」

そして並びながら、優雅に店内から出て行った。


ロダン「全く、本当にイカれてる連中だぜ」


ロダンはそんな二人の後姿を見送った後、
小さく頭を振りながら呆れがちに笑った。

849 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:27:14.12 ID:GQakPlQo

ゲイツ・オブ・ヘルのすぐ前。
街頭が照らす、薄暗く小汚い路地。

二人はそこに並び立っていた。

ダンテ「ふー……」

星が瞬く空を見上げながら、
真冬の大気中に白い息を吐くダンテ。

ベヨネッタ「…………冷えるわね」

ダンテ「だな。さっそく『暖める』か?」

ベヨネッタ「もちろん」

ダンテ「ヘッヘ…………そうか……」

ベヨネッタ「ふふ……」

小さく笑い、ふとお互いから目を逸らす二人。


その次の瞬間。


瞬時に。
神速でダンテは背中からリベリオンを引き抜き―――。


同時にベヨネッタは両手に派手な拳銃を出現させ―――。

850 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:29:53.07 ID:GQakPlQo

ぶわりと、路地の中を吹き抜けていく疾風。
それは衝撃波。

ダンテが振るったリベリオンの剣風。

ベヨネッタが身を翻した爆風。


その猛烈な風が止んだ時。


ベヨネッタの喉元にはリベリオンの銀の刃が突きつけられており。
その大剣と交差するように、ベヨネッタの二丁の拳銃がダンテの顔面へ向けられていた。

そして二人はニヤリと。
武器を向けたまま不敵な笑みを浮かべ。



ダンテ「ヘッハァ…………ビンゴ。たまんねえぜ」



ベヨネッタ「ン〜ンアンタも。『お兄ちゃん』よりもタイプ」


そして顔で笑いつつも凄まじい殺気を漲らせ、軽く言葉を交わす。


ダンテ「そいつは嬉しいぜベイビー。お前に会いたかったんだ」


ベヨネッタ「私もね。一度会いたかったの」

851 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:31:39.61 ID:GQakPlQo

ダンテ「知りたい事がある」

ベヨネッタ「何が知りたいの?」

ダンテ「全部だ。当然お前の事もな。『全て』、赤裸々に、だベイビーちゃん」

ベヨネッタ「はぁん初対面なのに積極的ねぇもう……」

ベヨネッタ「じゃあ私を『楽しませ』て。満足させてくれたら、欲しいモノをアゲル」

ダンテ「ヒュー、OK、そういうのは得意だ。忘れられねえ夜にしてやるぜ」

ダンテ「最高の夜にな」

ベヨネッタ「それはン〜、また火照ってきちゃった。早速クールダウン、頼めるかしら?」

ダンテ「生憎俺は熱することしかできねえんだ。悪いな」


ベヨネッタ「じゃあ暖めて。『蒸発』しちゃうくらいに」


ダンテ「ン〜ンお安い御用だぜ」


ベヨネッタ「さて……ここでヤるとロダンに怒られるから、場所移しましょ」

ダンテ「ああ。人気の無い所にな」

ベヨネッタ「そう、二人っきりになれるバショに」

ダンテ「早く行こうぜ。俺はさっきからギンギンなんだベイビー」

ベヨネッタ「ハァン慌てないで。前戯は丁寧に。ガツガツしてると見っとも無いわよ」

ベヨネッタ「ついて来て」

852 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/09/24(金) 20:33:21.53 ID:GQakPlQo

ダンテ「ヘッヘ、どこに連れてってくれるのかな。『ウサちゃん』」


ベヨネッタ「『魅惑の夢の世界』よ」


ベヨネッタ「つかまえてごらん、『アリスボーイ』」


そしてベヨネッタは天高く跳躍し、スラム街の屋根の上を一瞬で駆け抜けていった。


ダンテ「ハッハァ、まずは追いかけっこか。ン〜、良いねえ」


ヘラヘラと笑い、独り言を言った後。
ダンテも同じく跳躍し、彼女の後を猛烈な速度で追いかけていった。


星が瞬く中、スラム街の屋根を凄まじい速度で駆け抜けていく黒と赤の『魔』。


二人の顔には笑み。

だが、その放つオーラは凄まじい殺気に満ちていた。



朝まではまだまだ時間がある。


二人の怪物の、激しい激しい『デート』は始まったばかりだ。

―――
854 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/09/24(金) 20:35:43.62 ID:GoGy0bo0
遂に出逢ってしまったよ・・・

もうたまらんですよ乙!!!!!

855 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/25(土) 05:43:17.25 ID:wsAXq.AO
wwktkがとまらん!


posted by JOY at 16:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。