2010年11月23日

ダンテ「学園都市か」2(デュマーリ島編 )

611 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:10:25.63 ID:gtxGI5co
―――

麦野『…………』

麦野は島の上空2000mの宙を浮遊していた。

背中から伸びる一対の紫の翼をゆっくりとしならせ、
左肩近くから浮かび上がっている青白いアームを不気味に揺らしながら。

彼女は今、『砲台』役をしていた。

滝壺『むぎの、22体の悪魔の集団を発見。まわりには誰も居ないから、砲撃して殲滅くれる?』

麦野『座標は?』

滝壺『標的の座標は―――』

麦野と滝壺の間では、単純な音声通信しかできない以上座標データを直接脳内に送り込むことはできない。
ただある程度の方向や位置を知れば、あとは麦野側が感覚を集中させて相手を捕捉できる為、特に問題は無い。


麦野『OK、捕捉した』


小さく呟いた彼女の周囲で光が煌き。

その次の瞬間。

太さ10m以上にもなる巨大な光の柱が放たれ、街に叩き込まれた。
着弾地点では高温の太陽のような光が激しく明滅し。
次いで一瞬だけ見える、白く球状に広がる衝撃波。

そして巨大な粉塵と爆炎の柱がぶち上がった。


麦野『命中』

滝壺『うん……OK、殲滅完了だよ』

612 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:17:11.76 ID:gtxGI5co

滝壺『ところで…………むぎの、』

麦野『何?』

滝壺『…………さっきから妙な反応がある』


麦野『…………もしかして、「島全体を覆っている」ような?』


滝壺『むぎのも捉えてた?これなんなのかな。「力の大気」みたいなもの?』


麦野『…………いや…………』

アラストル『いいや。これは「単体の悪魔」の力だ』

そこで少し言葉を篭らせた麦野。
そんな彼女に代わる様に今度はアラストルが口を開いた。

滝壺『…………え?全体に満遍なく広がってるんだよ?』

滝壺『それにこれが単体の悪魔のものだとすると、その悪魔、―――』


滝壺『―――むぎのとアラストルよりもかなり「信号が強い」って事になるよ?』


アラストル『そうだ。それが正しい。そのままだ』


アラストル『俺達よりも力が格上で、全体に満遍なく広がれる悪魔だ』


アラストル『高位の大悪魔で間違いない』

613 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:20:16.90 ID:gtxGI5co

麦野『やっぱり…………神とか王とかって言うクラス?』

アラストル『そうだ。力は俺よりもそれなりに格上だな』

麦野『……勝算は?』

アラストル『…………コイツがどんな奴なのか、見てみないとハッキリとは言えないが……』

アラストル『力だけで単純に見てみたらかなり「厳しい」な』

アラストル『この全体に広がっているように感じ取れる事からも、コイツが特異な力を持っている可能性も考えられる』

麦野『…………ただ、「厳しい」ってだけで「不可能」っつーわけじゃあないんだな?』

アラストル『ああ』


麦野『…………1%でも勝つ確率があるのなら充分。「簡単」な話ね』


麦野『どうってことないわ』


アラストル『お前、「人間にしては」本当にイイ女だな。ますます気に入った』

麦野『はいはいどうもどうも』


614 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:21:55.52 ID:gtxGI5co

滝壺『…………あ、もう一つ。この変な信号のせいで良く見えないエリアもあるの』

滝壺『街の…………下、地下かな、一部のエリアがノイズが酷すぎて』

麦野『位置は?』

滝壺『F9、D9とD10の全域、それと周囲のエリアにも広がってる』

滝壺『このエリア、ノイズの合間にさっき少しだけ別の信号も見えたよ』

滝壺『多分二つ……片方は何か変な感じで良く分からなかったんだけど、』

滝壺『もう片方は麦野と同じくらい強い信号』

麦野『……おい。わかるか?』

アラストル『…………いや。見えないな。俺にはこの広がっているデカブツの力しか確認できない』

麦野『…………直接行って確認するか……』

アラストル『ああ、そうした方が良いな』

滝壺『そのちょっと近くにつちみかどがいるから、戦う時は気をつけてね』

麦野『わかった』

―――
615 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:23:50.09 ID:gtxGI5co
―――

超高層ビルの合間に挟まれ佇んでいる、5階建ての小さなオフィスビル。
(小さな、と言ってもこの街の基準からであり、そのフロアは奥行き20mはあったが)

その3階のずらりと並んでいるデスクの間に土御門は立っていた。


土御門「(……………………何も無いな…………)」

このビルは、
インデックスの助けで浮き彫りとなった『大規模構造図』のランドマークの一つなのだが。

屋上から地下室まで一通り見て回ったものの、魔術のマの字も無い。
魔術的因子は欠片も無い、どこにでもある極々普通のオフィスビルだ。


土御門「(…………となると…………やはり街の地下構造か)」

各チームにもランドマークを調査させてはいるが、
恐らくここと同じく地上の構造物は無関係だ。

高層ビルから信号・看板等、ランドマークの種類が不規則すぎていたことから、
地上の物は関係ないと来る前から予想していたが、
こうして一つ確認してみてそれが確証へと変わった。

ただ。

大方、いや確信をもってこの結果は予想できていたが、実は何も備えが無い。

いや、備えようが無かったのだ。
北島の地下構造群は、地上の超高層ビル群の大都市よりも遥かに巨大。
そして学園都市の情報網を持ってしても、その深部の構造図は全く把握できていない。

この強襲作戦にあたっても、
情報が欠片も無いし情報を手に入れる手段も時間も無かった。


土御門「(…………ここに来て手探りか…………わかってはいたが面倒だな……)」


土御門「(どこかで構造図のデータを手に入れなければな……)」

616 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:25:02.91 ID:gtxGI5co

土御門「滝壺。聞こえるか?」

滝壺『聞こえるよ』

土御門「ランドマークに到達したチームは?」

滝壺『二つのチームが戦闘して遅れてるけど、他のチームは到達してるよ。それで今調査s」

土御門「地上の構造物は無関係である可能性大だ。調査する必要は無いと判断する」

土御門「ランドマーク直下の地下を調べさせろ」

土御門「『地下室』じゃないぞ?地下の構造物だ」

土御門「少し手荒でも構わない。別の構造物へ到達するまで、真下へ掘り抜いて行かせろ」

滝壺『うん。了解』

土御門「それと、俺の現在地から近いチームは?」

滝壺『「Charlie」かな。途中で戦闘が無ければ、3分以内にそこに行けるよ』

土御門「どのチームでも良い。一つ、すぐにこっちに寄越してくれ。ここの地面を掘り抜かせる」

滝壺『了解』

617 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:26:38.66 ID:gtxGI5co

土御門「あとレールガンに繋げてくれ」


滝壺『……はい、繋がったよ』

御坂『はいはい何?』

土御門「その前に一つ確認だ。お前の方からなら一応、視覚データ等の類はミサカネットワークに流せるんだな?」

御坂『できるわよ。流すって言うより、勝手に引っこ抜かれてくんだけど』


土御門「OK、頼みたいことがある。最優先でだ」

土御門「まず、ウロボロス社のネットワークに接続できる端末を探してくれ」


御坂『…………あ〜。わかった。抜き出してデータは何?』


土御門「北島の地下構造図。詳細なほど良い。恐らく最高機密の類だろう」

御坂『任せて。それとこういう場合って「構造図に乗ってない更に極秘な施設がある」ってのもお約束だけど、』

御坂『そっちの方も配線とか工事記録とか諸々のデータから解析して炙り出す?』

土御門「頼む。思いつく限りの方法で洗いざらい情報を掻き出し、それをミサカネットワークに」

御坂『おっけー』

618 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:28:14.87 ID:gtxGI5co

指令を出し、脳内で一通り今後の段取りを組んだ土御門。

土御門「………………」

脇のデスクに軽く腰掛、チームが来るのを静かに待った。

周囲の悪魔の状況は常に滝壺が『見て』くれており、
そして土御門の方でも気配を消して動いている為、
この島に来てからはまだ悪魔とは一度も交戦していないし遭遇もしていない。


そもそも実は言うと、彼は今まで一度も悪魔と直接戦ったことが無い。

この数ヶ月間で悪魔関連の知識はかなり豊富になった。
イギリス清教・学園都市側の中でもトップクラスだろう。


しかし、対悪魔に関する戦闘能力は一般人のまま。
捨て身の魔術攻撃でフロストかアサルトを一体倒せれば御の字という程度だ。

土御門「(…………きっついなやっぱり)」

今まで上手く立ち回り交戦は全て避けてきたが。

さすがに人間が完全アウェーとなっているこの島の最前線では、
それは非常に難しいのは明白。


土御門「(…………………………………………そろそろ本気で、『アレ』やるかどうかも考えておくか)」

619 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:32:07.13 ID:gtxGI5co
と、そうして思考を巡らせていたところ。

土御門「―――………………」

ふと、何かが動く気配。
このフロア内に、己以外の者の気配。

土御門「…………」

息を押し殺し、眼球だけを動かして薄暗い室内に目を凝らしつつ、
ゆっくりと腰の拳銃に手を伸ばした。

感覚的面から言えば、悪魔ではないようだ。
悪魔に殺気を向けられた際の独特の圧迫感が感じられない。

滝壺『「Charlie」の7名、今悪魔に遭遇して交戦中だから遅れるよ。恐らく4分30秒後にそっちに』

ヘッドセットから聞こえてくる『守護天使』の声が、その土御門の感覚を裏付けていた。
悪魔であれば滝壺が捕捉しているはずであり、言及してくるのが当たり前だ。
それに彼女の報告から、この気配が『Charlie』のメンバーのものでもないの確かだ。

土御門「…………」

悪魔でも学園都市勢でもない。

つまり考えられるのは―――。

とその時だった。

土御門「(……………………しまった…………)」

今度は突如、すぐ背後に感じる気配。

土御門「(…………こりゃ…………久しぶりだな……………………一本取られた)」

土御門ともあろう者が後ろを取られたのだ。
彼の顔に浮かび上がる、ちょっとした驚きと、
自身への呆れと降参の意が混じった奇妙な笑み。

そして、この土御門の背後をとったその気配から響いてくる、

「―――Freeze. Don't move」

アメリカ訛りの静止を命ずる英語。

620 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:34:18.03 ID:gtxGI5co
「手を離せ」

そして、抜きかけている拳銃から手を離せとの命令。

土御門「…………」

特に抗うそぶりも見せず、土御門は指示に従いゆっくりと手を離し。
その一方で感覚を研ぎ澄ませて周囲の情報を拾っていく。

後ろの男は、土御門から4m程のところから指示をしている。
恐らく、銃口をこちらに向けて即射殺できる体制で。

最初感じた気配の方向とは別だ。
つまり、土御門が捕捉できていない者が一人以上いる。

土御門「(…………用心深い…………かなりやり難いな)」

滝壺『つちみかど?今の声誰?』

土御門「(……まずいな)」

こっちの音を拾った滝壺からの呼びかけがくるものの、
土御門側は下手に喋れない。

変な仕草を少しでも取れば脳天をぶち抜かれかねないのだ。

土御門「(俺も毛嫌いしないで調整受けとくべきだったか……まあ今更か……)」

調整を受けていればヘッドセットいらずで脳内で会話できただろうが、
当然今更考えても仕方が無い。

滝壺『つちみかど?………………問題発生?』

土御門「(…………おう。発生しまくりだぜぃ畜生)」

滝壺『つちみかど?』

621 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:36:39.63 ID:gtxGI5co

「手を頭の上に」

土御門「(…………)」

指示に従いつつも、頭の中でこの場を切り抜ける策を模索するが、
妙案は一つも思いつかなかった。

体術で相手を拘束して『人盾』にして―――という案はまず論外。
相手が近付いてこない限りどうしようもない。
後ろの声の主は、口と人差し指以外を動かす気は毛頭無いらしい。

土御門「(…………)」

スタングレネードを即座に引き抜き起爆、という案もダメだ。
爆発まで数秒間の時間を有する為、その間に射殺されるのがオチだ。

では、拳銃を素早く抜き応戦するのは?
それも論外だ。

二人以上相手がいるのは確実なのに、その内の一人しか位置を把握していない。
一人射殺できても、その直後に即こっちも射殺されるだろう。

その『保険』の為にも他の者は姿を現していないのだ。


土御門「(……参った。学園都市のアホな『駄犬』共とは違うな…………)」


土御門「(ここは穏便に行くか)」

622 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:40:30.48 ID:gtxGI5co
指示をしてきていた男が後ろから歩み寄って来、手際よく土御門の腰から拳銃を奪い取り、
そしてヘッドセットも彼の頭からむしる様に外し取り。

「何者だ?」

土御門「……あ〜、いいか?説得力無いのはわかってるが、俺は怪しいもんじゃないぜよ?」

土御門「お前らの敵じゃあない」

伏せながら、後ろの男に向け声を飛ばす土御門。

「聞かれた事だけ答えろ。余計な口は開くな」

だがその土御門の言葉は完全に無視され、
男の淡々とした冷ややかな声が返ってきた。


「何者だ?……………………いや、学園都市から来たな?」


土御門「…………いんやあ。旅行者だ」

                       C I A
「……こういう話がある。『ラングレー』の連中の間で言われてるヤツだ」


「『日系の小洒落たガキが最新装備を所持してるのならば、学園都市のガキと思え』」

「それとな、俺らはさっき見た。学園都市の編隊がこの島に何かを打ち込んで行ったのをな」


土御門「………………………………ああ…………ああそうさ。そうだ。俺は学園都市の者だ」


「OK。単刀直入に聞く。何しに来た?」


土御門「『世界を救う為』だ」


土御門「いや……こう言った方がいいか。『化け物共から人間世界を守る為』だ」


「………………………………信じると思うか?」

土御門「『化け物』、あっちの方がお前らからしたら信じがたい存在じゃないか?」

「…………」

623 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:45:19.43 ID:gtxGI5co
「…………あの化け物の事、知ってるのか?」

土御門「お前らよりは良く理解している」

「では…………さっきからこの街の上にいるあの『紫の天使』は?」

「あれも機体群が現れた後に出現したが」

土御門「はは…………『天使』、ね。あれは俺の『同僚』だ」

「能力者ってやつか?」

土御門「『一応』な。アイツは能力者の中でも特に異質だ。アレが普通だとは思わないでくれ」


「…………」

その後、
何かを考えているのか数秒間の沈黙。

そして。

「…………………起きてこっちを向け。頭に手を載せたままだ。ゆっくり」

624 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:47:41.90 ID:gtxGI5co
土御門「…………」

指示に従いゆっくり振り返ると。

4m程離れた場所に、アサルトライフルを構えている屈強な男が立っていた。

銃口は土御門の顔真っ直ぐに向けられており、
人差し指も引き金に係り幾分か絞られている。

その銃、暗視ゴーグル、戦闘服の類は全て最新式。
学園都市製の装備もいくつか判別できた。

土御門「(…………)」

装備の類から、この兵士がどこの国のどのような部隊に所属しているのかはある程度わかる。

そして兵士の肩にある、
戦闘地向けの配色であるグレーのワッペンがその土御門の推測の確証となった。

星条旗だ。


土御門「(やっぱりアメリカ人か…………………………)」

土御門「銃を降ろしてくれ。学園都市と『お宅』は今同盟国として共闘中だろ?」

「学園都市は、同盟相手でも不利益とみなせば平気で消すらしいが」

土御門「……不利益ならばな。それはお前らも同じだろ」

土御門「それに俺達は今、利害は一致してると思うが?」

「どうしてそう思う?」

土御門「お前らが『化け物共とオトモダチ』とは見えないからな」


「…………………………………………良いだろう」

625 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:50:17.12 ID:gtxGI5co

再び数秒間の沈黙の後、そう呟いた男は銃を降ろした。

それに次いで、周囲の薄闇の中からもう三人ほど同じ軍装の男が現れた。

土御門「(計四人か…………いや、まだどこからか別働隊か何かが監視してるだろうな)」

土御門が見えている四人は、
一見銃を降ろし警戒を解いているようにも見えるが、いまだ彼の方へと意識を研ぎ澄ませている。

外見だけで内面では全く信用していない。

そして信用していないのにこう銃を降ろしてしまうということは。
そうしてもいい『保険』があるからなのだ。

土御門「で、どこだ?俺に狙いつけてる狙撃手は?向かいのビルか?」

ストレートにその部分へと突っ込む土御門。

「さあな」

それに対し、男は特に動じぬそぶりであしらった。

土御門「じゃあ…………早くヘッドセット返してくれ」

土御門「実は言うとな。今能力者の部隊がこっちに向かってきてる」

土御門「俺は結構な重要人物なんだ。その俺が突如通信途絶えたら、当然色々考えるよな?」

「……」

土御門「友好的に来てもらいたいなら返してくれ」

626 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:53:34.33 ID:gtxGI5co
「その前に最後に聞きたい。これの答えを聞いたら俺達はここから消えてやる」

土御門「…………何だ?」

「外から来たのなら知ってるか?我々の艦隊はどうなった?我が国はどうなってる?」

土御門「…………北大西洋に展開していたお宅の艦隊は全滅した。空母二隻も含めてな」

「…………」

土御門「で、お前さん達の国は本土防衛に専念するらしい」

「…………………………外の全体の状況は?」

土御門「……ヤバイぜい。あの化け物共が外でも徐々に暴れ始めてる」


土御門「このままだと人類が敗北し、最終的に絶滅するかもな」


土御門「で、それを止めに俺達が来た。何をどうするかは面倒だから聞かないでくれ」

「………………………………俺達にできることは?」

土御門「無い。ま、生き延びたきゃ、事が済むまでどこかに隠れててくれ」


「そうか………………………………ほら。返すぜ」


そして男は土御門に向けヘッドセットと拳銃を投げ渡し。


「邪魔したな」

部下に移動するよう手でサインを出しながらそう小さく呟き、
そしてフロアの奥の方へと歩んでいった。

627 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 00:57:59.08 ID:gtxGI5co
土御門は近くのデスクに軽く腰掛け。

ヘッドセットを頭に装着しなおし拳銃をホルダーに戻しつつ、
その男達の後姿を見送った。

土御門「滝壺」

滝壺『つちみかど。どうしたの?』

土御門「いや、生存者に遭遇しただけだ。アメリカ人だ。特に問題は無い」

土御門「それと、『Charlie』に『連中には手を出すな』と伝えておいてくれ」

滝壺『了解』


土御門「(……………………それにしても連中……良く生き残ってたな)」

米軍の壊滅前に浸入していたということは、
丸三日近く以上この地獄にいたことになる。

土御門「(恐ろしくタフだな………………俺の後ろ取ったのもマグレではないかやはり)」

土御門「(『ノーマル人間』としての『性能』は俺よりも上か……まあ、そりゃあそうだろうな)」

と、その時。


小さな風切り音と共に、一人のツインテールの少女が正に突然土御門の前に姿を現した。

そして少女は、土御門を見ながらこう小さく口を開いた。


黒子「…………『Charlie』。指定ポイントに到着ですの」

628 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 01:01:02.03 ID:gtxGI5co

土御門「(………………コイツッ……)」

現れた白井黒子に対し、頭の中で小さく驚きの意をこめて呟く土御門。
その突然の出現に驚いたわけではない。

その豹変していた雰囲気に対してだ。


土御門「(…………一線を越えたか…………『だが』―――)」


『恐怖や死を受け入れ、そして克服し戦士となる』、と一概に言っても様々なパターンがある。

上条のように煮えたぎった信念の炎を瞳に秘めた、堅実な闘士となるパターンや、
御坂のように外面も内面もほとんど人格変化は無いが、芯と器が非常に強固かつ大きくなるパターンなど。

上記の二人の例を含む、自分自身の核をしっかりと保持している系統は本当の意味で『強い』。

だが。

この白井黒子は。

土御門「(―――これはアブないな…………)」


目が『死んでいる』。

どう見ても、既に核も芯も『折れている』。


これは厳密に言うと『強さ』ではない。

解離性同一性障害(俗に言う多重人格障害)とかなり似ている『症状』だ。

恐怖や死を『克服』したのではない。

その凄まじいストレスから逃れる為に、無意識の内に『強い自分』を『演じ』、
極度の『興奮』と『麻痺』状態に陥っているのだ。

629 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 01:02:23.90 ID:gtxGI5co
このような『張子の虎的な強さ』というのは、実はかなり多い事例だ。
(どっちかというと、上条や土御門、御坂のような本当に『強い者』の方が少数だ)

土御門でなくとも、それなりに場数を踏み
こういう世界の者達を見てきた者ならば簡単に判別できるだろう。

このような者はどうなっていくか。

肉体の痛覚を失ったようなものだ。
それでは当然、ストレスを知らず知らずの内にどんどん溜め込んでいき。

限界の時が突然やって来る。

溜まりに溜まったストレスが一斉に爆発する時が。
今まで無視してきた負荷が全て一気に押し寄せてくる。

そして末路は廃人だ。

気付いた時はもう遅い。
仮面の下に隠れていた本当の心はボロボロに崩壊しているのだ。

その後は薬付け酒付けになり、過剰摂取でショック死したり。
重度の精神病棟に入れられたり。

最終的に自身の脳天を撃ち抜いたりなど―――。


土御門「(…………コイツはこのパターンか。そのうち『潰れる』な…………)」


決してこういう世界に馴染めない者もいる。
どんなに耐えようとしても、最終的に絶対に耐え切れなくなる者が。

いや、それがそもそも『普通』であり大多数だ。

この白井黒子もその一人であるというだけ。


土御門「(…………ま、これが普通の反応だよな。俺らが異常なだけで)」

630 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 01:05:39.14 ID:gtxGI5co

土御門「待ってたぜい」

デスクから腰を挙げ、ふざけてる風にも感じ取られる声を放った。
それとほぼ同時に、フロアの奥の方から『Charlie』チームの他のメンバーも姿を現した。

土御門「話は滝壺から聞いてるな。このビルの下、方法は何でも良いからぶち抜いていってくれ」

「どの程度まで?」

土御門「別の地下構造にぶち当たるまで。隔壁や金属板等はぶち抜いて良い」

「了解。Charlie 2、5、7、ぶち抜け。他は周囲に展開し警戒」

リーダーの指示を受け、それぞれ動き出すメンバー達。

と、その時。
土御門の隣をすれ違うかというところで黒子が足を止め。

黒子「…………放っておくんですの?あの武装した男達」

土御門「ん?ああ。好きにさせておけ」

黒子「……どんなに小さくとも、わたくし共の管理が及ばぬ存在は極力『処分』すべきと思いますの」

黒子「命を下していただければ、わたくし一人で即刻処分に赴きますの」

土御門「(……………………コイツ…………)」

土御門「……俺達の脅威にはならない。少なくとも俺はそう判断した」

黒子「ですがk」


土御門「―――聞こえないのか?『俺がそう判断した』」



土御門「―――何か文句あるのか?」



黒子「……………いえ……………………………了解」

631 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 01:08:57.65 ID:gtxGI5co

土御門「……お前、自分はあの四人を殺せると思ってるか?」

黒子「……ええ」

土御門「………………OK、質問を変える。お前はあの四人を殺したら自分はどうなると思う?」

黒子「……特にどうにも」

土御門「そうか。大した自信だな」

土御門「………………お前は予期せぬ狙撃を防げる力はあるか?」

土御門「着弾前のライフル弾に反応できて、それを防げる水準の恒常的な力だ」

黒子「……………………わたくしはありませんの」


土御門「じゃあお前はあの四人は殺せるだろうが、その直後に脳ミソぶちまけてるだろうよ」


黒子「……………………」

土御門「向こうは四人だけじゃないからな」


土御門「五人目以降が、一仕事終わらせて余裕こいてるお前の頭を打ち抜いてチェックメイトだ」

土御門「向こうからしたら俺もお前も。今この瞬間にでも頭撃ち抜けるだろうよ」

黒子「………………………………」

632 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 01:12:30.44 ID:gtxGI5co

土御門「殺し合いっつーのはな、能力や力だけで勝敗が決まるわけじゃない」

土御門「人数、配置、地形、作戦で千差万別、そして闇討ち・不意打ち・騙し討ち何でもありだ」

土御門「極端な例を挙げりゃ、レベル5だって無能力者に負けたり追い込まれる」

土御門「死んだ奴は知らねえが、惨敗して片目片腕と臓器の一部を失った奴なら知ってる」

黒子「…………」

土御門「……………………ずっとクソみてえな世界で生きてきた俺から言わせるとな、」

土御門「『見えてる物だけ』でリスク判断してしまう者は、確実にすぐ死ぬ」

黒子「…………」


土御門「特にお前みたいな、感覚が麻痺して『恐怖を忘れてる』奴はドンドン死んでく。ゴミのようにな」


黒子「…………」

土御門「恐怖を『克服』するのと『忘れる』のとでは全くの別物だ」

土御門「そして運よく生き残り続けたとしても、いつかその『ツケ』を払う」

黒子「…………」

土御門「今すぐには理解できないかもしれないが、心に留めておけ。いつかわかる」

土御門「じゃあ……さっさと行け」


黒子「…………了解」

633 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 01:13:37.00 ID:gtxGI5co

人形のような無表情、
生気の無い瞳の黒子は足早に離れていった。

土御門「……………………」

そんな彼女の遠ざかる背中を、
冷ややかな横目で見ていた時。


御坂『ねえちょっと。レールガンだけど、さっきの件で話が』

白井黒子とは違う、本当に『強い』女からの声がヘッドセットから響いてきた。


土御門「もう手に入れたのか?」

御坂『……そこがね、ネットワークに侵入して、最高ランクのセキュリティかかってる所見つけたんだけど……』


御坂『抜き出すの無理よ。不可能』


土御門「……いや、もっと時間をかければいk」

御坂『そうじゃなくて、物理的にそこのサーバーが破壊されてるのみたいなの』

土御門「………………そういうことか」

634 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 01:16:38.36 ID:gtxGI5co
御坂『んで、最後にそこに接続した回線のデータが残っててさ』

御坂『サーバー損傷時間から見ても、その最後に接続した連中が、』

御坂『おもっくそデータ引っこ抜いた後にぶっ壊したみたい』

土御門「…………」

御坂『それで残ってたデータ解析したら、接続した端末の型番とシリアルだけわかってさ、』

御坂『ミサカネットワーク経由で、妹達に学園都市のバンクとの照合してもらったのよね』

土御門「どこのか判明したのか?」

御坂「ええ」

                                US S O C O M
御坂『学園都市製の軍用携帯端末。「アメリカ特殊作戦軍」向けの特別仕様で、そこだけに納入されてる』


土御門「―――…………何?…………………………………………」

御坂『アメリカ軍がこの島に来てデータ引っこ抜いたって事になるけど…………って?土御門?』


土御門「…………待て、もう一度言ってくれ。どにへ納入されたって?」


御坂「アメリカ特殊作戦軍」


土御門「――――――」

635 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 01:19:12.42 ID:gtxGI5co

その納入先の名を聞いた途端、土御門は大きく目を見開き。


土御門「おい!!!!!さっきの米軍連中を探せ!!!!!」


窓の方へと駆けて行きながら声を張り上げた。

土御門「ここの掘り抜きは一時中断!!!連中を捜索しろ!!!!」

「……了解ッッ……聞いたな!!動け!!!」

首を傾げながらも土御門に従い、動くリーダーと各メンバー。


土御門「(クソ…………近くにいるとは思うが……)」

窓辺に立ち、薄闇の街のへ視線を巡らせて行く土御門。

まだ数分、あのアメリカ人達が近くにいるのは確かだが、周囲はコンクリートジャングル。
更地の半径300mと、ビル街の半径300mでは話が違う。

滝壺『どうしたの?』

御坂『いきなり何よ?』

土御門「説明は後だ。滝壺、普通の人間は感知できないんだな?」

滝壺『うん。ごめん。AIMかなにかの力放出してないとわからない』

636 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 01:22:07.04 ID:gtxGI5co

土御門『レールガン、レーダーは!?障害物の干渉はどれくらいだ!?』

御坂『こんな重厚な構造物まみれの街じゃ、さすがにあんまり広範囲は……』

結標『あー、私なら、障害物関係なく結構な範囲認識できるけど?』


土御門「よし、結標―――」


と。

その瞬間だった。


滝壺『―――あッ―――待っ―――!!!!!!!!!』

『何か』に気付き、声を張り上げた滝壺。
その声と同時に。


土御門「―――」


突如、土御門がいるこのビルが激しく揺れた。
まるで直下型の超大地震が発生したかのように。

―――
637 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 01:23:58.07 ID:gtxGI5co
―――

遡る事数十秒。

麦野は、土御門らがいる小さなビルから直線距離で1kmのところの宙にいた。
地上までは400m。

その彼女の真下の地点がちょうど滝壺が示した、
『島を覆う力の隙間から見えたり消えたりする何かがある』エリアの中心だ。


麦野『…………確かに何かあるな……』

アラストル『ああ…………とりあえず撃ち抜くのか?』

麦野『勝手にんな事をすりゃまた土御門にうるさく言われるわ』

アラストル『だからと言って、まさかノックして挨拶しながら行くつもりでは無いよな?』


麦野『当然。だから「うるさく言われる方」を選ぶわよ』


と、右手にあるアラストルの切っ先を眼下の大通りへ向たその時。

638 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 01:25:57.42 ID:gtxGI5co
麦野『―――』

ゾワリと感じる力。

今度は『何かある』程度ではなく、確実に感じた。
力が下から『浮上』してくるのを。

その一瞬後。


麦野の眼下、
大通りのアスファルトが大きく盛り上がり、火山の噴火の如く大爆発を起こした。

凄まじい衝撃波がビル街を駆け巡り、
大量の窓ガラスを一瞬で割ってはダイヤモンドのような破片を撒き散らしてく。

その爆発の中、膨大な量の粉塵の中を突き抜けて『金色の光の塊』が飛び出して来。
近くのビルの壁に『着地』した。


麦野『―――アレは―――』

その金色の光の主は、小さな体に大きな翼を生やした美しい鳥人のような悪魔だった。
何かと戦っていた真っ最中であったらしく、全身が傷だらけだ。
そしてその姿形は見たこと無いが、麦野はどこかで会った事のあるような感覚がしていた。

が。

『そんな事』など、今別に見つけたもう一つの『とある事』に比べたらどうでも良かった。


『別のもう一つ』。

それは眼下の粉塵の向こう。


街のど真ん中に穿たれた直径300m程の大穴の縁に立っている、一人の男。

上質なコート・スーツを纏い、逆立っている様な黒髪に口ひげ。


そして咥えている葉巻―――。

639 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 01:27:31.23 ID:gtxGI5co
その男の顔を見た瞬間。


麦野『ハッ――――――』


麦野は口を大きく横に引き裂き。
身の毛がよだつ様な、美しくありながらとんでもなく不気味な笑みを浮かべた。



麦野『―――――――――みぃぃぃぃつけたッッッ』



見間違えるはずも無い。
あの顔。
嫌と言うほど頭の中に焼き付けた男の顔。


麦野『――――――「アレ」、覇王とかってやつの力はまだよね?』


アラストル『ああ。どう見てもまだ力は宿っていない―――』


麦野『―――ということは―――』


アラストルでも手が出せないという覇王の力はまだ宿っていない。


つまり―――。



麦野『―――イ・ケ・る・わ・ね』

640 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/11/22(月) 01:30:54.51 ID:gtxGI5co

麦野『―――結標。私の有する総指揮権は一時的にアンタに移行する』

麦野『そのまま滝壺と全チームの保全管理を継続してろ』

麦野『土御門はさっさと離れろ』

結標『ちょっと……何があったの?』

麦野『―――大将サマを見つけたのよ』



麦野『―――アリウスだ』



結標『―――』


麦野『土御門、良いわよね?』

土御門『俺に聞く必要も無いだろう?やれるのなら―――』



土御門『―――問題無い。狩れ』



麦野『つーことでレールガン、ヒマだってんなら―――』



麦野『―――まぁぁぁぁぁぜてアゲてもイイわよォォォォッ!!!!さっさと来なァァッッ!!!!!』



御坂『―――うぉぉおぉぉぉおッッッッけーぇぇぇぇぇぇえええええええええ!!!!!!!!!!!』


―――
645 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/22(月) 01:39:38.73 ID:WBxRAB2o
前回の投下みて思ったけどやっぱり黒子は危ないんだな
黒子が慕うお姉さまだったら仲間が死んでそれを「他人」だなんて切り捨てたりしないよ
やっぱり麻痺してたんだな

646 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/22(月) 01:43:27.63 ID:x1KnqsEo
やっべ、ゾクゾクくる・・・

671 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/24(水) 22:38:02.59 ID:BZes6r.o
すみません。
諸事情により、今月一杯のSS投下は厳しくなりました。
次は遅くとも来月の3日までには投下します。

お詫びといっては全く大したもんでもありませんが、
強さに関してのレスがありましたので、いくつかザザッと箇条書きの捕捉を。


ただ、相手・相性や状況によって相対的に大きく変わったりしますので、

各キャラ間の強さ優劣を明確に言明するのは避けさせていただきます。

描写・設定まとめ的なものでご了承ください。


○一方とむぎのん
 黒義手一方とトリッシュの支援の無い麦ストルは、現段階では『大体』互角『あたり』、と考えております。


○ジャンヌ
 ステイル戦では本気のホの字も出してません。彼女にとってジャレた程度です。
 ベヨネッタが髪留めを外すのと同じような、覚醒マジモードがジャンヌにもあります。
 それと四元徳の一人を うっせー黙れ と足蹴にするレベルです。
 ベヨネッタを抜きにすれば、ジャンヌはアイゼン以来の最強の魔女となります。


○トリッシュ
 明確な優劣表現は避けると上にありますが、これは揺るぎ無い事なので言明します。
 義手一方と麦ストルは本気トリッシュの相手にはなりません。差は歴然です。

 ちなみに、本編時の強化一方は魔人化バージルを前にして、その余りの格の違いに戦意喪失しています。
 あのままバージルに挑んでいたら、トリッシュと『同じ様』に敗北してたでしょう。

 トリッシュと『同じ様』に、です。


○最強の変態達三名 ダンテ、バージル、ベヨ

 ダンテ視点からだとバージルの方が強いとありますが、
 実際の差そのものは、二人の総力の規模から見ればかなり小さいものです。
 その時の状況によって簡単に覆ってしまうレベルのもんです。
 そしてベヨ姐さんはこの二名と同じ、『これ以上の上が無い領域』です。
 三人ともカンスト状態だから比較も勝敗予想も意味が無い、といった感じです。


○レディ

 現行の段階でも上条をボコボコにできます。
 現在のより鍛え上がっている彼女ならば、準備万端完全フル装備で挑めば大悪魔の相手も普通に可能です。

672 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/24(水) 22:42:51.86 ID:BZes6r.o
○天界・魔界系上位の皆さんの『おおまかな力の格』
 人間目線からで俗に『神の領域』と言われる方々の大体のリスト

※『強さ』の序列ではありません。あくまで『力の格』です。
※上記の為、下の者が上の者に勝つことも普通にあります。
※各クラス内での名の並びは順不同です。
※大半の主要キャラは作中で力のレベルが変動したり、未描写の部分もあったりしますので明記しておりません。
※数分で書き出したので細部の正確性は乏しいです。『大体こんな感じ』という空気を読み取るだけにして下さい。


・唯一の創造神
完全体ジュベレウス

・魔界を含む全ての世界の支配者になれるクラス
完全体魔帝ムンドゥス 全盛期スパーダ

・魔界全土の支配者になれるクラス
覇王アルゴサクス

・大悪魔頂点クラス
ベヨとジャンヌの主契約悪魔  四元徳  ファントム(生前) 転生前の全盛期アイゼン
ねこキング  魔帝軍の最高峰の幹部 アスタロト等の10強

・大悪魔上位クラス
1魔具 グリフォン トリッシュ シェオル 魔界の各階層の支配者 ヘカトンケイル トリグラフ
魔帝軍の名だたる幹部  魔女と賢者の平均的な歴代長  天界の各派閥のトップ達・猛者達

・大悪魔中〜下位クラス
タルタルシアン ルシア 3魔具・ボス 4魔具・ボス 近衛隊等の魔女の精鋭集団
天界の各派閥の強者達(十字教の四大天使など)
ジュベレウス派の精鋭集団(上級三隊 熾天使・智天使・座天使) 


※力の格は強さに大きく影響しますが、必ずしも比例するという訳ではありません。
 筋肉量が同じでもプロ格闘家と普通の筋肉質な人では、その戦闘能力は比べるまでも無いのと一緒です。


どのクラスの悪魔(天使)と格上・格下・同格か、
と考えると、各主要キャラが大体どの辺になるのかが見えてくると思います。


では。
遅くとも来月初頭に。

712 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/03(金) 23:56:29.12 ID:amhKrRYo
遅れてすみません。


更なる他作品とのクロスについてですが、
クレイトスさん人修羅さんジーンさんの登場の可能性は0%と断言します。

アマ公はほんのt

ちなみに余談ですが、GOW勢の濃厚な登場を考えていた時期もありました。

SS内でのアレイスターとエイワスの古代ギリシャ神族関連の会話は、
実はGOW勢参入設定のほんの僅かな名残です。



では投下します。

※今日の分は、イギリス・ドーバー周辺の地名が一気に出てきます。
Googleマップで「イギリス ケント」と検索すれば、今回の一帯の地図が出てきます。

713 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/03(金) 23:59:18.26 ID:amhKrRYo
―――

対魔英仏海峡戦線 状況経過


時刻表記:グリニッジ標準時 


9:38

 イギリス清教 必要悪の教会 最大主教代理 統括官補佐、
 兼 第二軍団最高特務執行官 シェリー=クロムウェル、ドーバー市入り。

 同市域の守備に当たる英陸軍の2個連隊、
 必要悪の教会 第四特務戦闘団 通称『アニェーゼ部隊』、
 及びその他2個魔術戦闘団と1個騎士大隊と合流。


9:39

 英仏海峡に対魔結界が展開される。


9:41

 英内閣及び王室、
 第三級戦時体制(国家総力戦の危険性)から第一級戦時体制(国家存続の危険性)へと引き上げを発表。

 前日に発令されたサウス・イースト・イングランド南部と同じく、
 グレーター・ロンドン及びイースト・オブ・イングランド全域にも、民間人の北部への避難命令発令。
 その他の地域へは即時避難勧告発令。


9:52

 全英国軍最高司令官代理 第二王女キャーリサ、
 騎士団の1個連隊、王室近衛侍女の1個大隊、及び親衛騎士隊を率いカンタベリーの後方作戦指揮所入り。
 ケント州及びイーストサセックス州に展開している全軍の直接指揮を開始。

714 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:01:40.66 ID:WIgFSnIo
9:58

 女王エリザード及び第三王女ヴィリアン含む主な王室関係者、
 騎士団の1個大隊 及び 王室近衛侍女の1個中隊、
 英陸軍近衛師団の1個連隊による警護・護送を受け、エディンバラのホリールード宮殿へ避難開始。


10:12
 
 英仏海峡、フランス側沿岸より悪魔の進軍が開始。

 陸軍の各砲兵・装甲部隊 及び 各遠隔攻撃魔術部隊、
 防御弾幕射撃の開始、英仏海峡にて火網の総展開。

 海軍艦船・航空隊及び空軍航空隊も火力展開。


10:27

 英仏海峡に展開の火網、一部効果確認されるも有効打判定無し。
 火網及び外殻結界は突破される。
 ドーバー市域にて直接戦闘による水際防衛開始。


10:31

 ディール市域、フォークストン市域にて直接戦闘による水際防衛開始。


10:37

 続けてニューロムニーからラムズゲートまでの全沿岸線にて衝突。


10:51

 イギリス清教必要悪の教会 対魔課次席執行官 
 兼 第二特務戦闘団 『天草式十字凄教』教皇代理 建宮斎字、
 騎士・魔術師混成師団を率いドーバー市域に到着。

 シェリー=クロムウェル及び現地部隊と合流し展開、戦闘参加。

715 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:04:09.61 ID:WIgFSnIo
10:54

 ディール市域陥落。
 該当地域守備隊の被害は甚大。組織的戦闘の続行は不可。
 守備部隊の生存者に向け、後方に即時撤退命令が発せられる。

 ディール城の『駒』が破壊されたことにより、沿岸線の対魔結界破断。
 第一次防衛ラインとその結界を突破した悪魔、急速に周囲に進撃。
  

10:59

 建宮斎字、第一次防衛ラインを突破した悪魔を迎え撃つ為、
 『天草式十字凄教』及び連隊規模の騎士・魔術師混成部隊を率いドーバー市域より北上。

 ディール市とドーバー市間の中間、リングアルドの村近郊にて、ディール方面より進軍してきた悪魔と衝突。
 

11:04

 ディール方面から北上して来た悪魔によって強襲され、サンドウィック市域陥落。
 該当地域守備隊の被害は甚大。組織的戦闘の続行は不可。
 守備部隊の生存者に向け、後方に即時撤退命令が発せられる。


11:01

 騎士団長、
 騎士団の1個連隊と2個魔術戦闘団、イギリス海兵隊の一部部隊と英陸軍の1個連隊を率い、
 ヘイスティングス入り。
 同市域内の部隊と合流し、悪魔と戦闘開始。

 シェリー=クロムウェル、フォークストン市に移動。


11:14

 サンドウィック方面より北上してきた悪魔により、
 マルギット及びラムズゲート市域、完全包囲・強襲され陥落。

 両市域からの撤退成功部隊は無し。
 生存者報告無し。


11:15

 キャーリサ、ケント州ドーバー区及びサネット区の第一次防衛ラインの崩壊を宣言。
 前線にある全守備部隊に向け、自己判断での第二次防衛ラインへの撤退許可を発令。

 (第二次防衛ライン  北からハーンベイ、カンタベリー、アシュフォード、ヘイスティングスを結んだ線)

716 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:07:15.77 ID:WIgFSnIo

11:16

 シェリー=クロムウェル、フォークストン及びドーバー市域の全守備部隊へ撤退命令を発令。
 彼女自身はフォークストン市に、
 『アニェーゼ部隊』と英陸軍の一部部隊はドーバー市に、周辺部隊の撤退を支援するため残留。
 
 建宮斎字率いる連隊、各地からの撤退部隊を援護しつつカンタベリーに後退。


11:18

 フォークストン市にて純粋な高等悪魔が10体以上確認され、シェリー=クロムウェルがこれらを掃討。
 その際の戦闘により、フォークストン市北西部シェリントンの1km四方の市街地が消滅。


11:19

 ニューロムニー市域陥落。
 周辺部隊の撤退支援のため 残留していた隊の生存者報告は無し。


11:20

 キャーリサ、カンタベリーにある直接指揮下の部隊から精鋭を選抜。
 この選抜部隊と親衛騎士隊を率い、カンタベリーの南南東約10km バーハムの村にまで前進。
 撤退部隊の支援にあたる。


11:22

 騎士団長率いる隊、ヘイスティングス市域の悪魔の排除完了。
 同市域周辺を完全掌握。

 今回の対魔英仏海峡戦にて、英国側の初めての勝利。

 この際の騎士団長の行った掃討戦により、ヘイスティングス市東部 オア周辺約1km四方の市街地が消滅。


11:40

 ドーバー市完全包囲される。


現在、アニェーゼ=サンクティスらが率いる各軍混成部隊が、ドーバー城および地下トーチカを拠点とし抗戦中。
同市の死守を試みる。生存者は約700名。

フォークストン市にてシェリー=クロムウェルが単独で交戦中。

717 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:09:16.11 ID:WIgFSnIo

現在までの英国側の損害 (戦死・重度の負傷合計)

陸軍
 正規軍  約18000名
 国防義勇軍 約4000名

空軍   約560名

海軍   約2200名

海兵隊  約150名

イギリス清教魔術師 約4000名

騎士及びその従卒 約2600名 

王室近衛侍女 約180名 


民間人死者数 推定8000名
(避難命令無視、もしくは何らかの事情により避難できなかった者)



現在までの英国側の戦果

 現時点までに英国領に侵入した個体の32%を排除。
 英国に向けられた推定全個体数の2割。

718 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:11:17.60 ID:WIgFSnIo

今後の経過予想

 開戦前を100%とした場合、現時点の英国の組織的戦闘能力は71%。
 現状のまま悪魔の攻勢が継続された場合、8時間後に50%を割ると推測され、
 その後は急速に減衰。

 8時間後 ケント及びサセックス地方全域が陥落
       絶対防衛線の崩壊 

 10時間後 ロンドン陥落
        避難に間に合わなかった民間人の犠牲の著しい増加
        
 22時間後 イングランド及びウェールズ全域が陥落
        急速な悪魔の侵略により指揮系統の崩壊 組織的軍事行動が困難になる 

 28時間後 スコットランド全域が陥落
        事実上の国家機能完全喪失

 29時間後 北アイルランド陥落
        事実上の英国消滅        


現状のままであれば、30時間以内に英国が消滅する確率は98%と予測される。

予測される結果を避ける為には、
英国側からの戦況を変える何らかの攻勢手段が必要と判断される。


この状況打開の為、12:10に全ての戦線にて攻勢に転じる予定。

騎士団長率いる部隊が、
ヘイスティングスから一度英仏海峡に出た後にドーバー港に強襲揚陸。
同市の残存部隊を確保した後、同市域を完全掌握し周辺へ進撃。

同時にキャーリサが先頭に立ち、
カンタベリー及びアシュフォードから各部隊が前進。

ドーバー、フォークストン、ニューロムニー、ディール、ラムズゲートの奪還及び掌握の後、対魔結界の再構築。
そして態勢の建て直しを図る。


作戦成功率は45%とされる。
成功した場合、英国の存続時間は最低140時間延びるとされる。


―――
719 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:13:06.64 ID:WIgFSnIo
―――

ドーバー海峡の海岸に沿い聳え連なる、
『ドーバーの白い崖』で有名な20km近くにも伸びる石灰岩の崖。

その天然の防壁の中ほど、切れ目の所に位置しているのがドーバー港であり、
それを見下ろすように後ろの高台にドーバー城が聳え立っている。

この港街の歴史は、判明している範囲内では紀元前1500年頃にまで遡れる。

青銅器時代から海峡間の重要な交易点として機能。
古代ローマ時代には、ブリタニア属州の玄関となり大規模な港が構築され。

中世には現在のドーバー城が築かれ、魔術的強化も施され。
第二次大戦時には、『ドーバーの白い崖』全体がトーチカ化され長大なトンネルが彫り抜かれ。
冷戦時には、最深部に核シェルターが構築。

現代、つい数日前までは3万(市域全体ならば約4万)の人口を抱える、
英仏海峡側の主要な港湾都市の一つでもあった。


そして今は。

英仏海峡対魔戦線の最前、孤立した拠点。
約700人の人間が絶望的な抗戦を続けている陸の孤島だ。


いや、実際に武器を持って戦っている人数はもっと少ない。

半数以上が重度の負傷を受けた戦闘不能の者であり、
戦力として機能しているのは200人にも満たなかった。

720 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:15:54.50 ID:WIgFSnIo

ドーバー城及び『ドーバーの白い崖』の地下を走る、とある幅6m程のトンネル。

度重なる増築と改良により、
魔術的石積み構造と近代の強化コンクリート補強が入り混じっているアンバランスな様相の壁が延々と続き。

その長い長い空間をぼんやりと満たす、
天井と床の端に取り付けられている非常灯のオレンジの光。

アニェーゼ「…………」

その一画の壁際にて、アニェーゼは胡坐をかき座りこみ。

部下のアンジェレネによって、左腕に受けた傷の手当てを受けていた。

アンジェレネ「もう少しですっ。も、もうううちょっと待っててください」

血に汚れた小さな手をせかせかと動かし、手当てを行うアンジェレネ。

アニェーゼ「……アンジェレネ、もういいです。他の方を看てやってください」

アンジェレネ「…………え、ええッ?でもまだ痛み止めの(ry」

アニェーゼ「痛み止めはいりません。感覚が鈍っちまいますから」


アニェーゼ「シスター・アンジェレネ。こいつは『命令』です。下に降り、他の負傷者を」


アンジェレネ「……りょ、了解。シスター・アニェーゼ」

721 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:18:41.82 ID:WIgFSnIo

アニェーゼ「…………」

この数ヶ月でアニェーゼ部隊も魔界魔術を併用した戦い方を覚え、
戦闘能力はローマ正教に在籍していたときよりも格段に向上している。

だが、中にはさほど戦闘能力が向上していないのもいる。

この三つ編みの幼いシスター、アンジェレネもその一人だ。

彼女は、実は魔界魔術は一つも習得していない。
はっきりと言ってしまえば、ローマ正教時代となんら変わりが無い。

真っ向から悪魔と戦ってしまったら、一瞬で凄惨な結果になってしまうだろう。
まあ、天界魔術以上に人を選んでしまう魔界魔術の性質上、仕方の無い事でもある。


冷ややかに、そして鋭く上司としての言葉をぶつけられたアンジェレネ。
しょんぼりとした面持ちでアニェーゼの下去り、
下の階層へ続く方に向かって行った。


アニェーゼ「………………ふー……」

そんな彼女の小さな背中を見送りながらアニェーゼは小さくため息をし。

後頭部を壁に預け、薄暗いトンネル内に視線を動かしていった。

722 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:19:36.87 ID:WIgFSnIo

トンネル内を行きかう、英軍兵士や魔術師、騎士。

床に置いた通信霊装や無線機と話し込む者達。

どの者も皆、その衣服は乱れ薄汚れ、
極度の緊張の連続によって顔には疲弊の色が滲んでいた。


むせ返るような汗と血のにおい、二酸化炭素濃度が高い劣悪な空気。

トンネル内のあちこちから響いてくる負傷者の苦悶のうめき声。

手当てしきれず、手遅れだった者を『送り出す』祈りの言葉。


アニェーゼ「…………」

このトンネル内を満たしているのは、
無我夢中になって足掻く強烈な『生』と決して目を背ける事のできない『死』。

『死への絶望』と『生への願い』が入り混じった、ある意味究極の空間だ。


彼女は異様な不快感を覚える一方。

なぜか、奇妙な『芸術性』を感じてしまっていた。

723 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:20:28.69 ID:WIgFSnIo

アニェーゼ「…………」

と、彼女の意識は僅かな時間だけ、この現実から浮遊し切り離されていたが。


こう幼く見えても必要悪の教会 第四特務戦闘団、

                      アニェーゼ 部隊
指揮官である彼女の名を冠した通称『Agnese Company』の指揮官であり、
このドーバー城拠点における司令官の一人でもある。

このまま『逃避』している事など許されない。


響いてくる部下の呼びかけが。


「―――ニェーゼ」


彼女を『最前線』という現実に引き戻す。


「シスター・アニェーゼ」

724 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:21:53.92 ID:WIgFSnIo

アニェーゼ「…………」

彼女は数回、トルクが落ちていた意識を覚醒させるべく強く瞬きをした後、
壁に預けていた頭部を挙げ近くの部下の方を見。

「シスター・アニェーゼ。報告です」

アニェーゼ「どうぞ」

指揮官のそれに切り替わった顔で、淡々と先を促した。

「シスター・ルチアより 第一城壁北東部の結界補強完了。戦死2名、他負傷3名出ましたが戦闘可能」

「第一城壁北部は敵の攻撃が激しく到達できず、との事です」


アニェーゼ「シスター・ルチアへ。『シスター・カタリナの隊と合流し再度第一城壁北部の修復を試みてください』」


アニェーゼ「第一城壁が一部でも決壊してしまったら、奴らは一気に雪崩れ込んで来ます」

「了解。伝えます。シスター・アニェーゼ」


アニェーゼ「…………それと今の時刻は?」

「12:00ちょうどです」

アニェーゼ「……」

725 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:24:00.46 ID:WIgFSnIo

ヘイスティングスから騎士団長の部隊がここに到着するのは、移動時間を見積もって12:18。
ここドーバー城が橋頭堡であり、イギリスの反転攻勢成功の大きな鍵となっている。


ここが落とされてしまったら、騎士団長らの部隊は上陸する際、
悪魔達からの猛攻撃を正面から受けることになり多大なる損害を出してしまう。


そして第一歩目からのその大きな『つまづき』は、
このイギリス側の攻勢作戦をも水の泡にしてしまう危険性がある。


つまり最低でもあと18分、、ここを守り切らねばならない。


アニェーゼ「(……全く…………)」

戦略兵器級最高戦力であるシェリーが居座るフォークストンはともかく、

実質200人程度しか戦力の無い、
いつ陥落してもおかしくないこのドーバーの拠点にそこまでの重責をかけるとは。

軍事的観点からすると、
リスクマネジメントが全く成り立っていないと一蹴するべきであろうお粗末な作戦だ。

アニェーゼ「…………」

まあ、だからと言って怒っても仕方ないが。

それにこのような作戦が通ってしまうという事は、
既にイギリスがそこまで追い詰められているという事でもある。

今更どうしようもない。

726 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:26:42.71 ID:WIgFSnIo

アニェーゼ「…………」


求められている時間は、『たかが18分』。


『されど18分』、だ。


この状況下での『18分』、というのは短くて非常に長く、
そしてとてつもなく不安定で不確かな時間だ。

このまま18分特に問題なく守りきれるかもしれないし、
敵の攻撃の手が薄れ、援軍が来なくとももしかしたら24時間は守りきれるかもしれないし。

逆に突如、大量の純粋な高等悪魔が出現し数分で陥落してしまうかもしれない。


何が起こるかわからない。


いや。


こういう時こそ『何か』が起こるのが世の常だろう。


世の中とはそういうものだ。

727 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:27:31.90 ID:WIgFSnIo
普通に考えたらかなり確率が低いのに。
こういう時に限ってピンポイントに。


「―――報告!!第一城壁南部が決壊!!!ナイト・ファーガス含む少なくとも9名戦死、負傷者多数!!!」


その時、通信霊装の前の修道女が、アニェーゼの方を振り向き声を飛ばした。


「現在ブラザー・パトリックの指揮の下で交戦中ですが、もちそうにないと!!!!」


アニェーゼ「…………」

その言葉を冷ややかな顔のまま静かに聞き。
アニェーゼは心の中で呟いた。


ほら。やっぱり来やがったじゃないですか、と。


アニェーゼ「総員に告げてください……『動ける戦闘要員は地上に』」

アニェーゼ「『総戦力をもって「最後」の攻勢防御に転じます』」


アニェーゼ「それとカンタベリーの作戦本部にこう送ってください」


アニェーゼ「『陣地線崩壊 状況は絶望的 増援上陸までの橋頭堡維持は困難』」


アニェーゼ「『本拠点は陥落濃厚』、と」


―――
728 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:34:05.00 ID:WIgFSnIo
―――

5万の人口を有すフォークストン市。

その街は今、一面の廃墟と化していた。

破壊された建造物よりも、破壊されていない建造物を数えた方が確実に早い。
いや、そもそも破壊されていない建造物を探す時点でかなり苦労するだろう。


その廃墟の街の上、突如轟き瞬く大量の金色の稲妻。


そしてその直後に、
大地を裂き猛烈な速度で天に伸びる、数百本もの巨大な『黒い柱』。


それは太さ10m、高さは実に400にまで瞬時に達っする『腕』。

その巨大な腕の表面には、
良く見ると何本もの『大砲やミサイル』が突き出していた。

今、英仏海峡にて戦っている者達ならば、
あれが何なのかは一瞬で判別できるだろう。

人造悪魔兵器の『大砲やミサイル』だ。


ただ、この腕から生えているこれらの兵器は、
他の人造悪魔兵器とは違う点が二つある。


一つ目。

既に『死んで』いる。

二つ目。


 ゴーレム
『 傀儡 』化している。

729 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:36:35.41 ID:WIgFSnIo

大地から生えた数百の巨大な腕。
その表面の、総計万を超える大砲が一斉に火を噴き、ミサイルが放たれた。

廃墟と貸したフォークストン市の上空を彩る、凄まじい爆発の連続。
さながら濃厚な対空砲火の如く。

その規模は凄まじく、衝撃波や破片が街に降り注ぎ、散らばっている瓦礫を更に砕いては吹き飛ばす。
この地響きは遠くロンドンでも容易に観測できるほど。

そこらの下等悪魔ならば、一瞬で塵になってしまうレベルだ。

これほどの砲火、何に対して行われているか。


それは『いくつかの金色の稲妻』に対してだ。


効果は直ぐに現れる。


爆発の嵐の中、稲妻がぷっつりと途切れ、
その光の先端から大型の悪魔が姿を現した。


大量の魔の力を帯びた弾幕を浴び、
電撃の衣を引き剥がされてしまったブリッツだ。

730 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:38:28.01 ID:WIgFSnIo
数は2体。

『翼』をもがれてしまったブリッツ達。

その雷獣らが、人の耳でもわかるほどの苛立ちが篭った咆哮を上げながら、
大地に降り立とうとしたその時。


宙を舞っていた内の一体に向けて、
黒い大きな塊がどこからとも無く『砲弾』のように飛来してきた。


それは、良く見ると人型。


身長4m程の『黒い巨人』だった。


石なのか金属なのか、それとも肉なのか見分けの付かない、
無機質と有機質が混ざった異様な体表。

腕は二対あり、一対は通常の肩の位置から。
一際長く大きいもう一対は、背中から伸びていた。


その腕は体に比べてかなり大きく、
背中から伸びている方にいたっては、胴と同じくらいの太さと身長以上の長さを誇っている。


ブリッツはその奇妙な巨人の飛来に即座に反応し、角や全身から放電。
そして巨大な鍵爪の付いた両手を、その向かってくる巨人の方へとかざし。

極太の電撃の『柱』を放った。

731 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:39:46.63 ID:WIgFSnIo

だがその凄まじい砲撃でも、巨人から腕の一本を千切り飛ばしただけだった。

勢いが殺されること無く、
残る3本の大きな腕を持つ巨人はブリッツの下へと到達し。

二本の腕で、即座にこの電撃悪魔の体をがっしりと掴み固定。


『―――ウロチョロすんじゃねえ。チカチカ目障りなんだよ』


その時、巨人の内部からくぐもった女の声がブリッツに向けて放たれた。

そして次の瞬間。

ブリッツの返答を待たずに瞬時に、
(もっとも、ブリッツが人語で言葉を返せるかどうかは疑問だが)


巨人のハンマーのような三本目の腕が、この悪魔の頭部に向けて叩き降ろされた。

強烈な一撃がブリッツの頭部を叩き潰し、上半身を砕き。


残った下半身を猛烈な速度で地面に叩き落す―――。

732 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:42:40.01 ID:WIgFSnIo

その時もう一体のブリッツが咆哮を上げ、巨人の方へと電撃となり『飛翔』してきた。

いくらか電撃の衣を回復させたのか、
ブリッツは猛烈な速度で巨人の方へと突っ込んでくる。

とはいえ、その速度は雷速と比べたらかなり遅かったが。
まだ完全に回復しきていないのだ。


そしてそれが、この雷獣の『死期』を決定付けた。


巨人は宙で身を捻り、その方向へと上半身を向け。


タイミングを見極め、突っ込んできたブリッツへカウンターを放った。

凄まじい速度で交差しすれ違う、
黒い槌のような巨大な腕と、大きな刃を生やした雷撃を纏う腕。


巨人の拳はブリッツの上半身を叩き潰し吹き飛ばした。


同じくブリッツの巨大な凶刃が、巨人の胸部に食い込む
硬質な金属を引きちぎっているかのような凄まじい音を響かせながら、その黒い体表の一部を剥ぎ取り。


そしてそのブリッツの腕は、『上半身』という根元が消えてしまった為、
繰り出された慣性に従い砲弾のようにすっ飛んでいった。

733 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:45:31.78 ID:WIgFSnIo

地響きを打ち鳴らしながら大地に降り立つ、二体のブリッツを屠った巨人。

その巨人の胸元の部分は、
先のブリッツの一撃によってぱっくりと割れていた。


そしてそこから見える、
『人間の上半身の左側』。

獅子のような荒れた金髪、褐色の肌、
薄汚れたゴシックロリータの装い。

この者が、この街のあちこちに生えている巨大な腕の『主』であり、
そして人造悪魔達をも傀儡化し操っている張本人、


シェリー=クロムウェルだ。


彼女の上半身の右側は巨人の肉の中に埋もれており、左腕も二の腕から肉の中。

胴と同じく半分だけ露になっている顔、
その境界線はまるで彼女の皮膚と巨人の肉が溶け合っているかのように曖昧だ。

出現した人の身の部分が異形の存在から生えているように見えるせいで、
退廃的なコントラストを際立たせ、余計に不気味な雰囲気を増させていき。

更にその彼女の形相が、その威圧感をより強くする。

浮かび上がっているのは凄まじい憤怒の色。

祖国の地を蹂躙された事への激情。

纏っている『魔』の影響か、それとも人間が本来持つ『危うさ』の一面か。

人の目・人の顔であるにも関わらずシェリーの形相は、
とても人のものとは思えないほどに恐ろしくなっていた。

734 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:47:20.56 ID:WIgFSnIo
シェリー『……………………』

一体目のブリッツによって飛ばされた腕が、
軋む様な音を発しながら見る間に再生していく。

また別の地では、先ほど倒された二体のブリッツの躯を、
地面から生えている巨大な腕が『喰らって』取り込んでいた。


喰らえば喰らうほど力は増していく。

死骸から得られる力など、その悪魔が生きていた時の極一部にしか過ぎないが、
それでも『塵も積もれば山』となる。

そして先日取り込んだタルタルシアンのような大悪魔なら、死骸でも巨大な力を得られる。


それが彼女の魔術、『真の魔像』と化した『ゴーレム=エリス』。


彼女が『乗っている』この巨人も、この街の至るところに生えている数百本もの巨大な腕も、
皆全て彼女の『ゴーレム』の一部。

展開された彼女の力によって フォークストン市は全域が完全な廃墟と化したが、
それと引き換えに悪魔の手からは完璧に守られていた。


ゴーレム魔術は元々かなり高難度とされていたが、
今や彼女のそれは、もう『高難度』で片付けてしまうレベルではなかった。

『教皇級』という表現でも足らない。
『神の右席級』、『魔神級』、という表現でようやくしっくりくるか。


彼女の『ゴーレム=エリス』魔術は、
正に神話級・伝説級、いや『神の領域』と言うべき水準にまで到達していた。

735 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:48:07.60 ID:WIgFSnIo

これは、単に『悪魔の力を手に入れたから強くなれた』、という訳ではない。
シェリーの元からの魔術的才と優れた技術があってこそだ。

下手をすると、王室の者ですら処刑されてしまうほどの重罪を問われていながらも、
その才と引き換えに『ほぼ自由の身』と言う恩赦を手に入れたほど。

それほど彼女は、代えの効かない優れた魔術師なのだ。


また、彼女のような異端的な天才は、実は天界魔術には向いていない。


天界魔術は、扱いは簡単だがその分得られる力はには限度がある。

魔界魔術は、扱いが非常に難しい分得られる力は、理論上は上限無し。


つまり、シェリーのような人間は元々魔界魔術向きと言っても良い。
(逆に言えば、彼女のように非常に優れた者で無ければ、魔界魔術には到底手が出せない、と言う事だ)


シェリー『エリス、旨いか?』

半身を露にしたまま、小さく呟くシェリー。
もちろん、言葉を返してくる者はいない。
フォークストン市域にて、人語を話せるのは今はシェリーただ一人。


シェリー『―――そうだよな。まだまだ足らないわよね』


だが、シェリーは『会話』を続ける。
姿の無い、いや、頭の中の何者かと話しているかのように。


シェリー『まだまだ1%も喰い切ってないしな』


シェリー『我が祖国の地を踏んだ悪魔は、全部食べ切らなきゃあ、、、な。エリス』

736 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:53:23.25 ID:WIgFSnIo
シェリー『………………』

と、その時。

シェリーは『何か』に気付き、宙を見上げスンと鼻を鳴らした。

シェリー『(………………次が来た……か……)』

ゴーレムの『鼻』が、更なる悪魔の接近を捕らえたのだ。


シェリー『(……高等悪魔が3……いや4体か?)』


フォークストン市域の部隊が撤退し、
巻き添えの気兼ねなく『好き放題』暴れまわっているシェリー。

最初の内は人造悪魔兵器の集団がシェリーに群がってきていたが、
当然このシェリーには傷一つ与えることもできずに一蹴。
取り込まれ、人造悪魔兵器達はシェリーのゴーレムの肉と化した。

それ以降、このフォークストンには下等な悪魔達は寄り付かなくなった。
代わりに来るのは、少数の高等悪魔達。

悪魔側も少数精鋭で仕掛けてきてるのだ。
そして現に、シェリーにとっては雑魚の群れを相手にするよりも面倒だ。

特にブリッツのような超攻撃型の高等悪魔を、複数体同時に相手にするのはさすがにシェリーでも厳しい。
そもそも、パワー型のシェリーにとってブリッツは非常に相性が悪い。

それこそタルタルシアンを取り込んだ今なら、
そのパンチの一撃は下手な大悪魔を卒倒させる事も可能だろうが、
当たらなければ意味が無いのは当然だ。


数十分前にブリッツを10体程相手にしたが、その時は危険な瞬間がいくつもあった。
下手をしていたら普通に死んでいたであろう事も、だ。

シェリー『(…………チッ…………)』

737 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:57:04.04 ID:WIgFSnIo

シェリー『(……………………これは……?)』

と、そうして感覚を研ぎ澄ませていたところ。
彼女はまた別の何かを嗅ぎ取った。

悪魔とは『別』の存在だ。

シェリー『………………』

巨体を動かしその反応の方角、
夜とも昼とも言えない不気味な空の下の英仏海峡を見やった。

シェリー『(…………違う。悪魔ではない…………天界魔術……いや……)』

力の匂いは魔ではなく天界魔術と『どことなく』似ているが、微妙に違う。

シェリー『(…………待て……これは……ッ……)』

だが完全に未知のもの、という訳でもない。
『今』となっては悪魔よりも出くわす機会が無い性質だが、
このタイプの存在の事をシェリーは良く知っている。


シェリー『(―――神裂…………)』


『半天使になっていた神裂と同じ匂い』だ、と。

そう、既存の『薄い』天界魔術の力ではなく。



『純正』の天使の力だ。

738 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 00:58:48.40 ID:WIgFSnIo

シェリー『(……どうなってる?)』


『純正の天の力を纏った何か』が、海の向こうに。


神裂ではない。
確かに性質は同一だが、雰囲気が違う。

『別の個体』だ

ヘイスティングスから発った強襲揚陸部隊でもない。
それどころか、まずイギリスではないのは確かだ。

非常事態のため、シェリーの知らない封印されていた極秘の術式が起動されたとしても、
最高司令官の一人であるシェリーの元にも必ず一言あるはずだ。

イギリスでも悪魔でも無い、別の勢力の『何か』だ。

シェリー『…………騎士団長。到着までどれくらいだ?』

彼女は即座に通信霊装を起動し。
もう一人の最高司令官へと回線を開いた。

騎士団長『あと……約14分といったところだ』

シェリー『今は洋上か?』


騎士団長『そうだが?』

シェリー『…………何か、変わった事があるだろ?』


騎士団長『……そっちからでもわかるか?……海が穏やか過ぎる』

騎士団長『海上でも激しい交戦を予測していたが、まだ一体とも遭遇していない』


騎士団長『それと観測班からの報告だとな、異常な濃度のテレズマが海峡に充満してるらしい』


騎士団長『力を解放した際の神裂火織に匹敵する程の数値だ』


シェリー『…………』

739 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 01:01:57.83 ID:WIgFSnIo

シェリー『……悪魔でもない、我々でもない、第三の何かが英仏海峡に侵入してる、間違いないな?』


騎士団長『天の力を纏った何かが、な』


シェリー『…………』

騎士団長『……ローマ正教かフランスが、追い詰められて「最後の審判級」の術式か何かでも使ったか』

騎士団長『それとも、ドイツかオランダ辺りの「ヴァルキリー」共がついに何かやり始めたか』

シェリー『…………大陸側からの何かの報告は受けていないか?』

騎士団長『いいや。どの国内機関の情報部も、まともに機能していない。混乱状態だ』

騎士団長『今は国内の指揮通信網を維持保全するだけで精一杯だからな』

騎士団長『我々は今、自国周辺の外域に対しては盲目同然だ』

シェリー『…………だろうな』

シェリー『……とりあえず私はこれから「お客さん」の相手するわ。もう1分後くらいに接敵するしな』

シェリー『ドーバーの連中にはそっちから伝えといて。警戒するようにな』


騎士団長『ああ、そのドーバーの残留部隊なんだがな』

騎士団長『先ほどから応答しない。現在、斥候が確認に向かっている』


シェリー『………………………………そうか。わかった』

740 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 01:03:50.87 ID:WIgFSnIo

と、シェリーが通信回線を切断しようとしたその時。


騎士団長『――――――……待て!!!!』


シェリー『……何?』

通信魔術の向こうで、
確認が取れたのか?確かか?と騎士団長が部下と話す声が聞こえ。


騎士団長『………………この「異変」の原因の一部、判明した』

騎士団長『テレズマの解析が完了した。時間が無いから結論から言うぞ』



騎士団長『―――「ウリエル」だ』



シェリー『―――………………………………は?』


騎士団長『その核であろう「個体」の大まかな位置も判明した』



騎士団長『ちょうど今、ドーバーに到達するぞ』


―――
741 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 01:06:01.95 ID:WIgFSnIo
―――

一方その頃。

ドーバー城。

人造悪魔達の凄まじい砲撃、そして満を持して現れたかのような複数体の高等悪魔、
ゴートリングの強襲によって城壁は何重にも張った結界もろとも崩壊。

残留部隊は多大なる損害を出し、キープ(日本で言う『本丸』)に撤退。


そして今、その追い詰められつつある人間達と追い込みつつある悪魔達が、
キープ前の広場にて最期の戦いを繰り広げていた。

キープ唯一の門の前に固く陣形を組み、
様々な術式で悪魔の猛攻を何とか退けている魔術師や騎士達。

その後ろでは、門の封鎖の為の術式を急いで構築している魔術師達。


アニェーゼ=サンクティスはその最前線にて指揮を直接執り、
そして自身も直に杖を手に戦っていた。


ここを突破されてしまったら、後はもう手の内用が無い。
戦える者達はここにいる数だけ。

キープの中、
そしてその下のトーチカには負傷者しかいない。


門の封鎖が完了するまで、
なんとしてでも持ちこたえねばならないのだ。

742 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 01:08:52.10 ID:WIgFSnIo

人造悪魔兵器の砲撃や銃撃を、簡易の結界を出現させる防御魔術で防ぎ。
突っ込んでくる悪魔には、魔術の集中砲火。

それらを掻い潜ってきた悪魔には、近接武器のファランクス。


それでも、この陣を突破してきそうな個体には。


アニェーゼ「―――つァッッッ!!!!!!!!」

アニェーゼが放つような、
魔界魔術で異様なほどにまで強化された強烈な一撃をお見舞いする。

アニェーゼが手に持っている杖の先を地面に叩きつけ、
そして地面を抉るように一気に横に引く。

すると見えない巨大が何かが、その杖の先と同じ動きをする。
とんでもない威力で。

標的とされた悪魔は一度見えない何かに上から叩き潰され。
そして今度は潰されたまま真横へと引きずられ、見るも無残な姿と化す。


地面に穿たれた凹みは直径10m近く。
そのまま横へ広がった長さは40m、広場を横切り崩れた城壁にまで達する。

743 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 01:10:02.21 ID:WIgFSnIo

だがここまでの火力があっても、明らかに劣勢だった。
陣形を組んでいる者の数は一人、また一人と徐々に減っていく。

アニェーゼら残留部隊が門の前に集い、持ちうる全ての戦力を集結させているのならば、
もちろんこのドーバー周辺の悪魔達もここに一点集中する。

その火力・戦力の差は圧倒的。

アニェーゼ達が何とか守っているキープは一応原型を留めているも、
周囲にそびえていた堅牢な城壁は、今や跡形も無くなっていた。
ところどころに土台の廃墟があるだけだ。


アニェーゼ「(―――もちま……せんね―――)」


杖を振るい指示を飛ばしながら、アニェーゼもここにいる皆と同じ事を思う。
既に限界、いや、限界を超えている、と。

しかし誰も戦うことはやめなかった。

武器を持つ手が血にまみれ、触角すら無くなって来ても。

隣にいる仲間の血飛沫を浴びても。

隣の仲間の頭部が砕けても―――。

744 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 01:12:31.81 ID:WIgFSnIo

人は自身の死を悟った時は、妙に思考が冷静になる場合も多い。
そして余計な『飾り』を捨てた自身を認識し、やっと自己の深層心理を自覚できる。

アニェーゼの場合。
その極限の中で浮き彫りになったのは。


アニェーゼ「(―――天にまします我らの父よ)」


『信仰』だった。


両親を無くし路上生活を強いられ。
何もかもを失った時も、唯一手放さなかったこの『信仰』。


アニェーゼ「(―――我らから闇を払い給え)」


そしてその『信仰』は。
今、教義の中では『相反する存在』とされているものによって叩き潰されようとしていた。


アニェーゼ「(―――我らに闇に打ち勝つ力を与え給え)」


ゴートリングが翼を広げ。

キープの門の前に陣取る彼女達を、
囲み見下ろすように宙に浮いていた。


その数、12体。


アニェーゼ「(―――我らに。その御力を。遣わせ給え―――)」

745 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 01:13:45.02 ID:WIgFSnIo
一度に相手にするのは2体が限度。

一斉に12体も来られたら。

ここは屠殺場と化す。


アニェーゼ「(願わくば―――)」


アニェーゼは心の中で祈りを続けながら、
ゆっくりと見上げ、正面に位置しているゴートリングを見。


アニェーゼ「心半ばで散った我らが兄弟を。我らが姉妹を。かの御国へと導き給え―――)」


自身達に死を与えるであろうその魔を見。


アニェーゼ「(―――彼らから苦痛を払い給え)」


そして『天上』を見。


アニェーゼ「――――――アーメン」


最後に声に出し、小さく十字を切った。
それはゴートリング達が一斉に動いたのと同時だった。


そして。


その彼女の声が届いたのか。

届かなかったのか。


それを知るのは正に『天のみぞ』であるが―――。



―――天の力が『この場』に働いたのともほぼ同時だった。

746 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 01:14:41.58 ID:WIgFSnIo
『それ』は突然やって来た。

連続して響いていた破砕音・爆音が突如止んだ。

絶え間なく続いていた悪魔達の攻撃も。
そして異質な。

悪魔とはまた違う『異界』の威圧感。

アニェーゼ「―――」

アニェーゼは知ってる。
この感じの重圧は、前にも何度も味わっている。


天使化した神裂と同じだ。


悪魔達はその瞬間ピタリと動きを止め、みな上の一点を見つめていた。
その視線の先は、ちょうどキープの頂点あたり。

魔術師や騎士、そしてアニェーゼも振り返り、
背後のキープの頂点へと視線を向けた。



アニェーゼ「――――――」



その先にいたのは。


『人』、いや。


『人』と呼べるのかわからない、『人にも見える』何かが浮遊していた。

747 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 01:17:35.21 ID:WIgFSnIo

体は人間に見える。
黄色の、昔のフランス市民の庶民衣のような造形の衣服を纏った若い女性らしき姿だ。

口からは先に『十字架の付いた長い鎖』が垂れ。

その顔は白く、そして目の縁が異様に際立っていた。
厚く化粧をしているのか、それが地肌なのかは『わからない』。

というのも、この存在が人間かどうか『わからない』からだ。


瞳が、金色に輝いているのだから。


神裂のように。


ここが、この存在が人間かどうか判別しがたい一つ目の点だ。

そして二つ目は。


背中から伸びる、『三対六枚』の巨大な『黄金色の羽』。


長さは一枚、100m近くにまでなるか。
非常に高速に微振動しているのか、大気全体が共鳴のように揺らいでおり、
翼自体も残像の如く実体間が無い。


これらの、キープ上空にいる何かの風貌。

強いこの世の物質とは思えない感覚。


いや、正にそうだろう。
少なくとも人界の域ではない。


神裂と同じような域だろう―――。



―――『本物の天使』のような。

748 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 01:19:30.44 ID:WIgFSnIo

アニェーゼ「―――」

見上げていた者達は皆、
アニェーゼを含み目を丸くし呆然としていた。

あまりにも突然であり、理解しがたく。
皆思考停止していた。


悪魔達も、動きを止めジッとその何かを見つめていた。


そして。

その場の全員の視線を浴びる『何か』がゆっくりと口を開く。



『―――「我が光は神なり」』



脳内に直接響いてくる、発信源がわからないような。


異界特有のエコーのかかった声。



『子らには「天恵」を―――』



『―――悪には「天罰」を』

749 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/04(土) 01:20:23.92 ID:WIgFSnIo
そしてスッと右手を天に掲げ。


『「神の火」 「神の光」の名の下―――』



『―――裁きを―――』



そう告げると同時に、今度は右手を下ろし。

指先を地面に向けた。


その瞬間。


余りにも場違いな『心地よい風』が一体を優しく吹き抜け。

ドーバー城周辺にいた悪魔達が一瞬で『砕け散った』。


特に激しい破壊も無く、静かに。
数千、いや万に達していたであろうその全てが。


風に吹かれる砂のようにかき消され。


塵となる―――。


―――
750 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/04(土) 01:22:15.44 ID:WIgFSnIo
今日はここまでです。
次は早ければ6日辺りに、遅くとも8日までには。

752 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/04(土) 01:30:02.79 ID:SHEKvgEo
さすが俺のヴェントタンや!

753 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/04(土) 02:47:00.50 ID:NOfgOQw0
乙ですわ

そして他愛も無い雑談にも律儀に答えてくれる>>1はマジ天使

755 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/04(土) 12:10:31.52 ID:9uV70zU0
ヴェントでこんなえ激しいと
アックアさんどうなってしまうん

756 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/04(土) 18:42:27.05 ID:gQx1DADO
ガチで戦争だな…


ダンテ「学園都市か」39(デュマーリ島編)




posted by JOY at 12:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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