2011年03月04日

球磨川『学園都市?』3

1 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/29(土) 12:31:53.89 ID:iFKyUDNi0

禁書×めだかのクロス作品です。

前スレ 球磨川『学園都市?』
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294924694/

あらすじ的なの

球磨川が絶対能力進化計画の中止を『なかったこと』にし、死んだはずの妹達が蘇る。
打ち止めをさらわれた一方通行、黒子を傷つけられた美琴が打倒球磨川のため動き出す。

負能力というマイナスの能力に目覚めた佐天、ミサカ9982号、天井が立ち塞がるが、
何とか球磨川の元へ辿り着く。

そしてその事件当日の朝、学校へ登校した上条を待ち受けていたのは友人である姫神と青髪ピアス。
彼らもまた凶悪な負能力を保持していた。

人吉瞳という助っ人ともに上条は二人と戦う決意をする。

不幸(マイナス)と幸福(プラス)が交差するとき物語は始まる――

2 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/29(土) 12:43:05.89 ID:iFKyUDNi0
負能力まとめ

佐天涙子
能力名【公平構成(フェアフォーマット)】
レベル【マイナス4】
効果【対象の身体能力、演算能力などを佐天基準にする】

ミサカ9982号
能力名【狂痛回廊(インストーラー)】
レベル【マイナス4】
効果【感覚委託】

天井亜雄
能力名【破綻理論(サイコロジカル)】
レベル【マイナス3】
効果【現象の不安定化】

球磨川禊
能力名【大嘘憑き(オールフィクション)】
レベル【マイナス5】
効果【全てを虚構にする】

以上です。青髪、姫神は作中で説明していきますので

13 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/29(土) 22:38:11.66 ID:NYo14NJu0
「こんな現実はどう殺す?幻想殺し!!」

もう青髪は上条を親しくカミやんとは呼ばない。

それは明らかなる宣戦布告であり、この場を戦場と変える合図だった。

叫びと共に地面は再び沈下し、風が吹き荒れ、雷が降り注ぐ。

圧倒的で、絶対的で、絶望的な負能力をふるう青髪に、上条は己の持つ右手一本で立ち向かう。

地面を戻し、風を止め、雷を受け止める。

だが、一向に青髪の元へはたどり着けず、ベクトル操作による攻撃で間を開けられてしまう。

それでも上条はひるむことなく突進を続けた。

その姿はまるで、戦時中の特攻隊のように自らを省みるものではなく、傷つきながらも一歩一歩前進をする。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

上条の雄叫びが木霊する。

今、上条を支えているのは信念でしかなかった。

あの日、あの大嘘憑きに否定された自分の信念。他人を殺してまでも自分の想いを貫き通す信念。

誰かを助けたいと思う信念だった。

14 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/29(土) 23:01:26.47 ID:NYo14NJu0
「無駄や!」

青髪は猪突猛進を続ける上条へ、薙ぎ払うように右手を膝元から上げ空を切ると、

地割れなどと生易しい表現では現しきれない勢いで地面が爆発した。

「レベル4最強クラスの念動力や!その捲り上げた地面を壁にする!!」

空中で強固な土壁を形成し、まるで一つの部屋のようなものを造り出し、そのままそこへ上条を閉じ込める。

当然、青髪はこれで動きを止めれたとは思っていない。幻想殺しの前では、能力で作った壁の強度など関係はない。

だから青髪はそのまま平衡戦場の能力で雨雲を呼び寄せ、大雨を降らせる。一瞬の足止めと、目隠しが出来ればよかったのだ。

「常盤台の超電磁砲が勝てんかったのは能力の使い方を間違えとっただけや、知ってるやろ?水は電気をよく通す」

土壁が幻想殺しの効果によって土に還らされ、上条の視界が戻った先では両手に電気を帯電させた青髪が待っていた。

「くそっ!」

慌てて上条は右手をかざすが、電撃は上条を目標としていなかった。

「目標はそこや」

それは上条の足元に出来た深い水溜り。

青髪の意図に気が付いた上条は急いで水溜りを消そうとするが、人間の動作より遅い電撃があるはずもない。

「っがあぁぁぁああ!!」

結果、水溜りに落とされた雷撃は上条の体へ伝導しその身を焼きつけた。

15 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/29(土) 23:19:43.89 ID:NYo14NJu0
この戦いで初めて膝をつく上条。

「なんや、気を失っとらんのか。そこで寝むっときゃあ幾分ましやったのになぁ」

「っは!どこかのビリビリ娘のおかげで電気には耐性ができてるんだよ!!」

「そーか。んじゃ炎ならどうや?」

そう言った青髪の両手には巨大な火の玉が形成される。

「発火能力!?いや、あれは……」

その炎は単なる発火能力のものではなかった。それは上条がインデックスと関わりを持ち始めて戦った魔術師の技。

「イノケンティウスってゆうらしいわ。まぁ記憶を亡くした君には分からんやろうけどな」

炎が集まり人の形を作り出す。

「やれ」

青髪の短い一声で炎の悪魔は上条へと襲いかかる。右手で形を崩しても何度も蘇り、上条の体を焼く。

「ぁあぁああああ!!」

上条を抱くようにして全てを燃やそうとするイノケンティウスをもう一度右手で殺し、一瞬形が崩れた隙をつき脱出をする。

追撃に備え右手を構えた上条だったが、既に炎の悪魔は居なかった。

代わりに二メートルを超える日本刀を、抜刀の構えで待ち受ける青髪の姿。

「七閃……」

そして、そこから繰り出された七つの斬撃(正確にいえば七本の鋼糸)が上条の体を切り裂いた。

19 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/29(土) 23:41:29.54 ID:NYo14NJu0
「っぐ……」

先程と同じように膝をつき息を切らす上条だったが、最早軽口を言う元気などは残っておらず、満身創痍だった。

「圧殺!」

青髪は攻撃の手を休めない。

三度上条が対戦したことのある人物の技、黄金錬成で頭上に2トントラックを出現させそのまま落下させる。

なんとか右手を上げることのできた上条はトラックを打ち消すことが出来たが、あまりのダメージに倒れこんでしまった。

「ラスボス前はこうやってボスラッシュがあるのが当たり前やで?ダウンするのはまだ早い!!」

倒れた上条のすぐ側に空間転移で移動する青髪は右手をそっと上条の足首へ伸ばすと、がっしりと掴んだ。

そして、その掴んだ足首は徐々に腐敗を始めたのである。

ぐじゅる、ぐじゅると。

「っ痛!!」

足を思い切り振り回し、無理やり青髪の手を除け、上条は異変を感じた足首へ右手を伸ばした。

そこで腐敗は止まりかろうじて皮膚の表面だけが腐るだけとなった。

「荒廃した腐花(ラフラフレシア)。これはボク等と同じ病院に通ってた子の負能力や」

上条を逃したにも関わらず慌てる様子も見せず能力の解説をする青髪は両手の平を上条に向けるように立っていた。

「すごいで、この手は。生物・無生物問わず全て腐らせてしまうんやで……気体すらもな」

上条は自身の内部に起きた異変を察知したところで青髪の言葉の意味を理解した。

「要は毒ガス攻撃ってか……」

服の袖で空気を直接吸わないようにして、風通りの良い所まで移動する。

さらなる追撃が来ると思っていた上条だったが、そこで一つの疑問が頭を過ぎる。

22 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/29(土) 23:54:53.95 ID:NYo14NJu0
「なぁ……青髪……」

自分を呼ばれ、攻撃の手を止める青髪。どうやら質問をする機会が与えられたようだ。

「今、負能力も反映させたんだよな……どうして球磨川の負能力を使って勝負を決めない?」

上条は球磨川の負能力の効果は知らないが、

始めに青髪が説明したことが真実ならば、球磨川の持つ負能力は青髪の平衡戦場よりも厄介な能力なはずだと考えた。

なのに、青髪はそれをしない。

「良い所に気がつくなぁ幻想殺し。でもな、球磨川さんの【大嘘憑き】は幻想殺しと相性が悪いんや」

「その右手の効果のせいで、大嘘憑きは全く意味をなさんからな」

全てを虚構に返す大嘘憑きは確かに無敵だが、それはあくまで効果が対象に効いたらの話である。

神の加護さえ打ち消してしまう幻想殺しの前では、上条に傷一つつけることが出来ない。

だから平衡戦場で様々な能力を使って追いつめた方が効率的なのだ。

「それに、ボクはあの負能力を反映できん」

それは意外な言葉だった。

全ての平行世界を司る青髪が、反映できないという事は皆無なはずである。

「ホンマ不気味やであの人は。どの平行世界にも存在しぃへん、彼はこの世界にしか居ないんや」

無限ともいえる平行世界に存在しない男。球磨川禊。

「だから、あの人が関わった出来事はボクでも先が読めんし、どうする事も出来ない」

せやから、と続けて青髪は呟く。

「せやから、カミやんにはあの人と関わってほしくないんや」

23 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/30(日) 00:05:48.13 ID:rpHhZSIR0
「…………」

確かに、今目の前の男はそう言った。

そのたった一言が、上条の抱いていた疑問を全て繋げ確信へと導く。

「なんだよ……」

この最悪な男は。

「そういう事だったのかよ……」

平行世界を操る力を持ちながら、今まで普通の生活を送ってきたこの男は。

「全部、俺の為だったんだな……」

どこまでも不幸(マイナス)で、どこまでも不器用なこの男は。

「ありがとうよ、青髪」

……どこまでも優しい(プラス)な男だった。

思えば、これほどまでに圧倒的な力を持つ青髪を敵に回してここまで生きて居られるはずもないのだ。

上条は優しく微笑む。

「また呼んでくれたよな、カミやんって」

それは、目の前の不器用な男なりの不器用な伝え方だった。

「だから、お前も助けてやる!球磨川を倒してまた普段の生活に戻ろうぜ!!青髪ぃ!!」

だから上条は、今は全力でこの喧嘩に挑む事にした。それが、上条なりの答えなのだろう。

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/01/30(日) 00:24:11.85 ID:IEmva8KAO
ナニコレ
最高なんだけど

25 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/30(日) 00:24:38.80 ID:rpHhZSIR0
「……全く、暑苦しい男やな……カミやんは。頼むからボクに負けたら大人しゅう帰ってや!!」

そう言って青髪は楽しそうに笑みを浮かべる。

「幾ら良いこと言ったってボクは手加減せぇへんで!!」

青髪の背中に天使のような純白の翼が生え、そしてそのまま空高く跳びあがった。

「おいおい!幾らなんでもそりゃあ反則だろ!!」

「第二位の能力!どうせカミやんは厄介事に巻き込まれていつかは戦うやろ、予行練習や!」

青髪はそのまま空中で両手をかざすと、風が吹き荒れ手の中に青白く光る球体が作り出されていった。

「第二位と第一位のコラボレーションや!」

徐々に体積を増やし膨張する球体の正体を、上条は知っていた。

「プラズマか!」

あの時、一方通行が最後の決め技として作成したものと同じプラズマの球体。あんなものが右手以外の部位に当たったら骨も残らず蒸発してしまう。

「げ・ん・き・だ・まってなぁ!!」

青髪は孫悟空よろしく、膨れ上がったプラズマを思い切り上条へ叩きつける。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

対する上条はそれを右手で迎え撃つ。

白い光がお互いの視界を奪っていった。

27 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/30(日) 00:32:52.18 ID:rpHhZSIR0
閃光の光によって一時的に奪われた青髪の視力が徐々に回復していき、プラズマを落とした場所を見つめる。

そこには、右手を突き出したまま立っている、親友の姿。

「あは、あはははははは!!」

思わず笑ってしまう青髪に唖然とする上条。

「ホンマなんやねん自分?反則やでその右手」

「お前ほどじゃねえよ」

空から降りてきて羽をしまった青髪に上条も笑う。

「なぁ、カミやん。ちょっと昔話聞いてくれん?」

笑みを浮かべたまま話し始める青髪に、上条は黙って頷いた。

「さっきちょろっと話した通り、ボクぁ球磨川さんのこと昔からしっててなぁ」

そして、青髪は語り出した。十二年前の出来事を。

29 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/30(日) 00:58:48.09 ID:rpHhZSIR0
「箱庭総合病院っちゅうボクらみたいな異常な子供を集めて検査する施設があってな、ボクと球磨川さんはそこで出会ったんや」

「学園都市の縮小バージョンって感じでな、もう気づいてると思うけどボクの負能力はそのころからあったんや」

姫神のように、球磨川に後押しをされて負能力に目覚めたのではない。青髪はそんな幼少の時代からこのマイナスと付き合っていたのだ。

「その頃のボクは好き勝手にこの能力を使ってて、気に入らん事は取り換え、未来を先読みして危機を回避してきた」

「平行世界がどんなことになるかも分からずにな」

「塵も積もればなんとやら、って奴や。当時いちばん身近な世界しか把握できんかったボクはその世界を滅ぼしてもうた」

「ホンマ、あの時の映像は今でも夢にでるわ」

青髪はそう言って首を横に振る。

「で、何回か目の通院の時に待合室の椅子に座ってたボクの隣に気味の悪い人形を持った球磨川さんが座ってな」

「『へぇ、君からはなんだか僕に近いものを感じるよ。きっと何かを終わらせてここに来たんだね』って言いよった」

「正直、その言葉だけで救われたわ。だって自分と同じような人間が居るんやで?安心しんほうがおかしいやん」

「そこから懺悔するように全てを話した。そしてら球磨川さんは一言『気にする事ないよ』って言ってくれた」

「『その世界はこの世界じゃないし、そんな世界は無数にある。だから君は悪くない。負の力を持った不幸な君はそれをしてもいいんだよ』」

「『その力をもっとうまく扱えれば、もっと沢山の世界に干渉できる。そうしたらまた僕の処へ来てね』」

「『君と、【あの男の子】と【あの女の子】と僕が居れば、何だってできるんだから』」

「・・・・・・そう言って去って行った」

30 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/30(日) 01:01:32.68 ID:rpHhZSIR0
「それからこの学園都市に来るまで、色んな世界を滅ぼして生きてきた。なんの罪悪感も感じずにな」

「でも、カミやんに会って気がつかされたんよ。不幸に振り回されながらもひたむきに生きる姿を見てな」

「結局は自分の心一つでプラスにもマイナスにもなれるっちゅうことにな」

「だから、人を不幸(マイナス)にするあの人の所へカミやんは行かせないんや」

全てを話し終え、青髪はゆらりと拳を握り胸の前に持っていく。

「負能力も、能力も打ち消すんなら拳で勝負や。言っとくけどボクは強いで」

その言葉に上条も同じように構える。

「上条さんは潜ってきた修羅場の数ほど強くなってるんですよ。お前だろうが、球磨川だろうがこの右手で倒してやるさ」

じりじりと滲み寄りながら距離を詰めていく。

そしてお互いの拳が届く距離になった瞬間――

能力も負能力もない、ただの喧嘩が始まった。

32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/01/30(日) 01:04:20.45 ID:EkDZ/x4oo
ただのどつき合いってアツイよな

34 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/30(日) 01:14:14.14 ID:rpHhZSIR0
今日はここで終了です。

青髪戦に対して腑に落ちない方も居ると思いますが、
これは青髪を敵として登場させると決めた時から描いていた戦いなので、僕の中ではこれが一番しっくりきています。
当然、青髪を本当の外道にするって案もあったんですが、
どこまでもマイナスでありながらどこまでもプラスっていう存在にしたかったんでこういうキャラ設定にしました。
普段の青髪にこんな裏設定があったら燃える。

さて、めだか世界と禁書世界が徐々に繋がってきました。
前スレでもあったように球磨川が二年生設定なのはこの構想上必要な為でして、
これでようやく思い描いた終わりへと物語を進めていけそうです。
始めはフラスコ編と戦挙編の合間に球磨川が来て、そこで生徒会も乱入って話にするつもりでしたが、それだと禁書でやる意味がないなぁと思い、
現在の形になりました。

50 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/30(日) 19:05:18.44 ID:rpHhZSIR0
―――――――――――――――――――――――――

「あら、こんな所でお昼寝?」

グラウンドの中央で仰向けで倒れ伏す少年に、声をかける小柄な少女。

お互いに身体は傷ついている。少年は打撲が多く、少女には裂傷が多い。

「なんや、姫神ちゃん負けてもうたんかいな」

話しかけらた少年は、少女へ顔を向けることなく高く上がった太陽がいる空を眺めていた。

少女はその言葉に胸を張って答える。

「母の愛の前ではあの程度の過負荷は無意味なのよ」

「なんやそれ……善吉クン、やったか?元気しとる?」

善吉。それは少年に話しかけている少女の息子の名前。

「元気も元気。相変わらずめだかちゃんの為に奔走してるわ」

「あの子の相方は大変やろうに、よぉやるわ」

「そうね、毎日毎日文句ばかり言ってるわ」

「それでも、離れんのやろ?あの二人はそういう間柄や」

「……そう、ね」

「人吉先生がよぉ見とらなアカンで。善吉クンじゃなくあの子をな」

「それは警告?それとも忠告?」

「どっちともや」

「でしょうね」

そこで一度会話が途切れる。つい先程までの戦いが嘘のように穏やかな日差しが差し込み、空を仰ぐ少女は少し目を細める。

52 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/30(日) 19:22:13.31 ID:rpHhZSIR0
「よかったの?上条君を行かせて」

少し躊躇うように瞳は少年に尋ねるが、返答はない。

「貴方の過負荷なら、例え上条君自身に使用できなくても勝てたでしょうに」

「同じ事を言わせてもらいますわ。先生もカミやん止めるつもりで来たんやないん?」

そこで、再び沈黙が流れる。それを破ったのは勢いよく状態を起こし立ち上がった少年だった。

「殺すことはできても、勝てんかったよ」

「なるほどね」

「幻想殺しが、って訳やないで」

「分かってるわ。たぶん私も貴方と同じ理由よ」

確かに瞳は上条を止めるつもりでこの場所へやってきた。そして初めから殺すつもりのない少年に上条をぶつけたのもそのため。

彼の負能力なら十分に上条を止める事が出来ると思ったからだった。

それでも、二人は上条を止められなかった。否。止めなかった。

「カミやんなら何とかする、って思ってまったからなぁ」

「ええ、間違って思ってしまったわ」

幻想殺しを持つ彼なら、揺るぎない信念を持つ上条当麻なら、例えあの球磨川と相対してもマイナスに落ちないだろうと思ってしまったのだ。

「もし彼が過負荷になったらどうする?」

「っは!決まってるやないですか。ボクぁカミやんの親友やで」

そして少年は力強く瞳を見つめてこう言った。

「間違った友達を導いてあげるのが親友としてのボクの役目や」

その言葉に優しく微笑んだ瞳。

少し冷たくなってきた風が少年の青髪を揺らしていた。

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/30(日) 20:54:56.95 ID:xOcLjW9K0
青ピさんが優しすぎて涙が止まらん…

62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/01/30(日) 21:36:29.03 ID:EqKLS3OAO
今気づいたけど青ピの最後のセリフって前スレで上条が青ピにいったセリフと同じなんだな

65 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/30(日) 22:49:19.21 ID:HSkKCCfF0
御坂が研究所に突入し、一方通行が球磨川に敗北する数時間前には上条は既に研究所内へと入っていた。

それなのに御坂が球磨川と邂逅した場に上条が居なかった理由。それは不意打ちによる催眠ガスの攻撃によって意識を失って別室に居たためである。

場面はとある研究所の一室。球磨川と佐天涙子の会話から始まる。

「球磨川さんの言うとおり、初春や御坂さん、白井さんは私を見捨てませんでした」

「自らが不幸(マイナス)になってまでも、私を助けてくれた……」

嬉々として球磨川にそう話す佐天。現状が理解できないのか御坂達は呆然と二人を眺めているだけだった。

『でしょー?だから涙子ちゃんは一人ぼっちじゃないんだよ。お友達が居るし何より僕が居るんだから、さ』

『うっかりお友達を殺しちゃっても僕が全部なかったこと”にしてあげるよ』

『さて、ところで君達はどうしてこんな所まで来たのかな?涙子ちゃんを保護するのが目的じゃなかったの?』

『それとも、そこの風紀委員さんの敵討ちとか?嫌だなぁそれはさっき水に流したじゃないか』

『とりあえずこっちにおいでよ。お茶でも飲もう』

両手に螺子を携えたままおいでおいでと手招きをする球磨川の元に佐天と9982号は歩み寄る。

「佐天さん!!」

その友人の姿に思わず初春が叫ぶ。その叫びに佐天は一度振り返り微笑を向け、すぐに球磨川の元へと行ってしまった。

同時に振り返った9982号も御坂に何か言いたげな目を向けたと思えば踵を返しさっさと歩いていってしまう。

「……」

初春と白井は目の前の光景に立ち竦んでいるままだったが、御坂だけは何かを考えるよう腕を組んでいた。

「佐天さん!妹さん!こっちに戻ってきてください!」

「そうですわ!もうわたくしの敵討ちなどどうでもいいですから、一緒に帰りましょう!」

二人の悲痛な叫びも佐天には届いていないのか、歩みを止めることはなく球磨川の隣に立つ佐天と9982号。

67 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/30(日) 23:02:27.27 ID:HSkKCCfF0
「球磨川さん、ありがとうございました」

佐天はそう言うと深々と頭を下げる。球磨川はそんな佐天の行動に少し意外そうな表情を浮かべた後、

身振り手振りを含めて『気にしないでよ』と答えた。

そんな姿をじっと見つめる9982号。

「それと、ごめんなさい」

頭を上げたと同時に、白井にされたように球磨川の後ろに周り、両腕を球磨川の両脇から通しがっしりと拘束した。

『えーっと……なに?涙子ちゃん式の謝罪方法?』

佐天の行動に首をかしげる球磨川はさして抵抗をしようともせず、佐天に質問をする。

「球磨川さんのおかげで、普通の能力とはちょっと違いますが、力を手に入れることができました」

「球磨川さんのおかげで、何も考えずにこの負能力をふるう事ができました」

「球磨川さんのおかげで、本当の意味で皆と友達になれました」

「だから心から感謝しています。でも……」

佐天が言葉を紡ぐ中、9982号はナイフを取り出す。

『!!』

初めて、球磨川が動揺の表情を浮かべる。

「皆は私のために不幸(マイナス)になってくれた……だから、今度は私が幸福(プラス)になって皆と同じ場所に行きます」

「佐天さん!」

佐天と9982号の意図にようやく気がついた御坂が慌てて駆け寄ろうとするが、

9982号が脹脛にナイフを突きたて痛みを御坂へ委託することで、足を止めた。

68 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/30(日) 23:20:08.98 ID:HSkKCCfF0
「っつ……ミサカも球磨川禊へ伝えたいことがあります、とミサカは痛みを堪えつつ言葉を発します」

「アンタ……!!」

自らの妹へ言葉をかけようとするが、痛みのせいでうまく考えがまとまらない。

「再びこの世へ戻していただき、感謝しています。感情を残していただいて感激しています」

「貴方がお姉様とミサカを戦うように仕向けなければ、このような感情も生まれなかったでしょう」

「自分の為、そしてなにより他人の為に何かをしたいという気持ち――これがあの時お姉様を奮い立たせた感情なのですね」

「だから、ミサカも佐天涙子と同じ考えです。ミサカは、再び生まれたミサカ達は全員で幸せ(プラス)になりたい、と」

「全てを元に戻してくれた貴方に対し、刃を向けるのは心苦しいですが観念してください」

『い、いやだ……助けてよ……死にたくない』

涙目で懇願する球磨川など無関係にギラリと刃を光らせ、ナイフを振り上げる9982号。

二人は、自らの手を汚してまでもこの男を排除しようとしたのだ。

「駄目です!!」

その瞬間、初春が渾身の力を込め叫ぶ。

一瞬9982号の動きが止まった瞬間白井が空間転移で球磨川と9982号の間へ割り込み、思い切りナイフを蹴り上げ弾き飛ばす。

そして、跪きながら御坂がナイフを威力が弱くなっている電撃で破壊した。

「風紀委員として、一人の人間としてそのような行動は見過ごせませんの!」

白井が激昂する。

「アンタ達の気持ちは分かるけど、それはやりすぎよ。せいぜい一発殴るだけにしなさい」

「ま、その殴る役目は私のものなんだけどね」

不適な笑みを浮かべて御坂は立ち上がる。痛みはもう無い。

そして狼狽する球磨川のそばまで近づいた。

69 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/30(日) 23:35:13.24 ID:HSkKCCfF0
『美琴ちゃん、でよかったよね……ありがとう助かったよ……』

先ほどの攻防に驚き、手を離してしまった佐天の拘束から逃れた球磨川は、両膝を床につきながら御坂に感謝の言葉を伝える。

『まったく、驚いたよ……まさか二人がこんなことをするなんて……』

冷や汗を流しながら、信じられないといったように首を横に振る球磨川。

「ずいぶんと二人を信用してるみたいね」

冷たい氷のような言葉を球磨川に吐く御坂。

『当たり前じゃないか!成り立てとは言え二人は僕と同じ過負荷(マイナス)で負(マイナス)で敗北者(マイナス)なんだぞ!!』

『それがこんな行動にでるなんて、まるで悪夢だよ!!』

『もう何も信じられない!!せっかく悪役になってまで皆の仲を取りまとめようとしてあげたというのに!!』

『なんで僕ばかりこんな目にあわなければならないんだ!!なんで大事な仲間に裏切られなきゃいけないんだ!!』

今度は急に立ち上がり怒号を撒き散らす球磨川の姿に、御坂は少し疑念を抱いた。

御坂はこの球磨川という男は人を人とも思わない人でなしで、仲間だのなんだのという感情は持ち合わせていないと思っていたからだった。

それがどうだ。目の前にいる男は二人を大事な仲間と称し、挙句は全ては自分たちの為に悪役に徹していたというのだ。

御坂は、辛そうに叫ぶ球磨川の姿を見て、少し同情をしてしまった。

『一方ちゃんだって急に僕に襲いかかって来たから仕方なく攻撃をしただけなんだ!』

『だからこうして直ぐに戻(なお)してあげるつもりだったんだよ!』

そう言って球磨川は倒れ付す一方通行の体へ手を添える。すると刺さっていた螺子は消えうせ、一瞬のうちに傷が治っていった。

『だから、これ以上僕を責めないでくれ!攻めないでくれ!』

とうとう球磨川はその両目から涙を零してしまう。

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/01/30(日) 23:37:48.87 ID:5lajYA6DO
いい台詞きたー

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/01/30(日) 23:44:59.90 ID:fcpn2FkOo
球磨川節キター

72 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/30(日) 23:45:58.50 ID:HSkKCCfF0
「お姉様……」

そんな球磨川の姿を見て、最初に口を開いたのは白井だった。

「この殿方は抵抗するつもりは無いみたいですし、今後風紀委員で監視をつけるように申請します。なのでここは……」

「黒子?」

被害にあった白井の口からそんなことを言われてしまえば、御坂は何も言い返せない。

「もちろん、許すつもりはありませんわ。しかし無抵抗の相手をこれ以上責めるのはいささかやりすぎかと」

「それに、そうすれば誰も傷つきませんわ」

暴力を暴力で返すのでは何も解決にはならない、と白井は言いたいのだろう。

目には目を、ではいずれ世界は盲目になる。と言った言葉があるようにその先に待っているのは破壊の物語でしかない。

確かに白井の言うとおり、佐天は帰ってきたし、妹達は全て無事。これ以上ない状態ともいえた。

「皆がいいって言うなら、私はそれでかまわないけど……」

御坂が周りを見渡すと、全員が頷いた。それを確認すると御坂は大きなため息をつきもう一度球磨川を睨み付ける。

「今回は見逃してあげるけど、二度と同じようなことはしないこと!いいわね!」

「もしこの警告を無視したら、全身全霊でアンタを焼いてやるわ!!」

『わかった……二度とこんなことはしないよ』

伏し目がちに了解する弱弱しい球磨川の姿をみて、完全に御坂の中に戦意は無くなっていた。

74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/01/30(日) 23:51:37.09 ID:mvuXRddDO
いい台詞を言ってからが本番だぞ……

75 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/30(日) 23:55:49.16 ID:HSkKCCfF0
「はぁ……なんか拍子抜けね。黒幕がアンタみたいな三下だと」

「まぁいいじゃありませんか、一応アンチスキルに連絡を取ってこの方の身柄を拘束するまでは監視しておきましょう」

「はい、それでは通報は私が」

「球磨川さん、ありがとうございました。それとごめんなさい。もう一度言っておきます」

「球磨川禊。貴方に頂いた命は決して無駄にしません、とミサカは決意を表明します」

全てが終わったと、少女たちは思い思いの言葉を口にする。

だだっ広い研究室内にはさっきまでの殺伐とした雰囲気が嘘のように、朗らかなムードが流れていた。

「おっねぇさまー!寮に戻ったら約束を果たしていただきますわ。ぐふ、ぐふふふふふ」

「だぁー!それは忘れろー!!」

「お姉様、ミサカはアイスが食べたいです、とミサカは物欲しそうな表情を浮かべます」

「あー!そういえば一週間も休んでるから宿題がやばい!!」

「大丈夫ですよぉ佐天さん。私がしっかり教えてあげますから」

それは、とても微笑ましい光景だった。

そんな中、球磨川が口を開いた。

『美琴ちゃん、ひとつだけお願いがあるんだ』

「……なによ?」

怪訝な表情を浮かべ、球磨川のお願いを聞くことにする御坂。

『この外部メモリのプログラムを調整中のミサカちゃん達に使ってやってくれないかい?それで全ての調整が終わるんだ』

76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/01/31(月) 00:05:33.08 ID:5o3hU1KTo
嫌な予感しかしねぇ………

77 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/31(月) 00:05:45.17 ID:D011MshU0
「怪しいわね……」

『本当だ、信じてくれよ僕を』

メモリを受け取りそれを摘むようにして持ち上げじっと観察する御坂。

「大丈夫ですよ御坂さん。どんな用途のプログラムか分かりませんが私が解析しますから」

「その花頭が解析したら、無害かどうかをミサカが判断します」

「は、花頭って……!!」

「初春さんやアンタが判断してくれるんなら問題ないわ。分かった、やってやるわ」

『ありがとう。調整室はC棟にあるからね』

御坂は初春と9982号を連れて部屋を後にしようとする。

「お姉様わたくしもいきますの」

「御坂さん、私もついていきます」

球磨川と同じ空間に居たくないと無意識に思った白井と佐天も同行すると名乗りを上げる。

「じゃあコイツの監視はどうすんのよ?」

さすがに球磨川を一人にしておくことはできないと危惧した御坂の問いに白井は手錠を取り出して答える。

「これで拘束しておけば問題ありませんわ。では参りましょう」

「じゃ、すぐ戻ってくるから変な真似しないでよね」

球磨川を支柱に手錠で拘束し、御坂達は部屋を出ようと球磨川に背を向ける。

当然、その時球磨川が口元を歪めた事に誰も気がつかなかった。

81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/01/31(月) 00:14:44.78 ID:ok8F66RAO
クマーこええよ

83 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/31(月) 00:21:26.84 ID:D011MshU0
「えーっとC棟は左で」

最後尾についた白井の声が途中で途絶える。

異変に気がつき全員が振り向いた瞬間、背中に螺子を螺子込まれ顔面から倒れこむ白井。

「!!」

いつの間にか、御坂達の真後ろには螺子を持った球磨川が凄惨な笑みを浮かべていた。

「アンタ!手錠を!!」

『だめだよ、あんなもので僕を拘束した気になっちゃ。ついこの間「金田一少年の事件簿」を読破した僕の気分は地獄の傀儡子なんだからね』

よく分からない例えを出しながら螺子を9982号、佐天へと突き刺す。

9982号は負能力の委託対象を無差別に設定していたのか、それとも一瞬で気を失ってしまったのか御坂や初春に痛みが伝わることは無かった。

あっという間に、残りは二人となってしまう。

「さっき約束したことを忘れちゃったのかしら!?」

佐天が気を失ったことにより公平構成の効果も解除されたのか、体中から放電しながら御坂が声を張り上げる。

『約束は覚えてるよ。二度としない、でしょ?だからこうして一度はしたのさ。いや三回さしたから三度かな?』

「初春さん!逃げて!!」

その言葉に初春は直ぐに廊下を走り抜けていく。

御坂の言葉は「私を置いて逃げろ」という意味ではなく「電撃に巻き込まれるから逃げろ」という意味だと理解したからだった。

倒れ付す三人に電撃が当たらないように、御坂は壁に含まれる鉄へ磁力を発生させ壁走りで部屋の中央へと移動する。

『カッコいいね。人生で一度は言ってみた台詞だよ。でもそれって死亡フラグじゃないかな?』

再び両手に螺子を出現させた球磨川は御坂と向き合う。

「確かに死亡フラグよ。ただしアンタのね。後悔しなさい!佐天さんを先に気絶させなければ私の能力は制限できてたことを!!」

ポケットからコインを取り出し、球磨川へと向ける。

それは、御坂の最強技の構え。

「いっけえええええええええええええええええええええええ!!」

そして、出力最大の超電磁砲を球磨川へと放射した。

85 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/01/31(月) 00:31:34.97 ID:D011MshU0
球磨川さんが高遠ファンだと暴露したところで今日はここまでです。
え?球磨川さんはジャンプしか読まないって?嫌だな、金田一はコミックだからセーフなのさ。

結局、佐天さんや9982号はあの時点で改心していたってオチ。
で、仲間思いの球磨川さんがあっさり二人を刺した理由も元から仲間と思っていなかったからです。

なんというか、名瀬ちゃんを勧誘失敗して古賀ちゃん襲わせた時の感じ。
こうなるのも球磨川さんの想定内。

実は、過負荷(マイナス)と負能力(マイナス)の使い分けがありまして、禁書側は負能力、めだか側(ひとみちゃんだけだけど)は過負荷。
球磨川さんは両方使うって感じでいます。

あれ?青髪過負荷って言ってたかも……


存在証明さんの扱いがアレな感じがするのが否めませんが、これは西尾作品なら誰かがやらなければならないのです。

姫神サンが錆白兵で裏6がノイズ君でヤバイ。


存在証明の攻略方法は、瞳ちゃんが言ったとおり母の愛でごり押ししたからです。

瞳「子供も生んだことがない子供が、母親の存在証明を奪えるわけ無いでしょうが!」

こんな台詞があったとかないとか。



それでは、いよいよ始まりましたラストバトル。
最後に笑うのは誰なのでしょうか?

『それじゃ、また近いうちに』

89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/01/31(月) 00:36:49.63 ID:THhVJNrAO

過負荷と負能力はなんで違うのかなって思ってたけどソーユーことだったのか
姫神さんはやっぱり空気の方が輝くね

90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/01/31(月) 00:52:36.75 ID:iyaHcvhv0
姫神は空気かわいい

133 :気を取り直して投下します ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/01(火) 00:23:23.87 ID:8/QW8FZE0
御坂の放った超電磁砲は床をえぐり、青白い閃光と共に球磨川に向け進んでいく。

発射されたと視覚で捕らえると同時に着弾している程のスピードで飛んでくるコインを球磨川がかわせる訳もなく、

あっけなくその右脇腹を打ち抜いた。

貫通したコインが壁へ激突し、轟音が鳴り響く。

高熱を伴う超電磁砲が直撃した傷口は焼け焦げ、出血はしないが、その代りに人体を支える骨と、生命活動を維持するための内蔵が剥き出しになる。

当たり前だが、そんな傷を負ったらまずは助からない。事実、球磨川は両手に持った螺子を離し、そのまま倒れこんでしまう。

思わずそんな光景に息を呑む御坂。自身が超電磁砲を放った結果、目の前のグロテスクな光景がある。

これまで彼女は人に向け超電磁砲を放ったことは何度かあるが、その全てが消されるか、反射されてしまいこのような事態にまで発展したことはない。

人を殺した。

彼女は改めて自分の能力の強大さを確認すると共に、後悔の念に押されてしまっていた。

何もここまですることはなかったのだろうか、少し冷静になって威嚇程度でもよかったのではないだろうか。

今となっては後の祭りだが、怒りに身を任せて行動してしまった自分を責める。

そんな、混乱している御坂は一つだけ失念していた。

目の前のこの男は、どんな傷を負ったところで回復し何度でも立ち上がることができるということを。

だから、ほぼ無意識のうちに球磨川に近寄ってしまった時点で、球磨川の心配をしてしまった時点で、“大嘘衝き”の術中だった。

それは、負能力だけだという話ではない。

球磨川はあえて悲惨なシュチュエーションを作り出すことによって、御坂への攻撃を開始していたのだ。

そして、自らの螺子が届く距離まで近づいた御坂にめがけ、今度は思い切り物理的な攻撃を仕掛ける。

既に球磨川の痛々しい傷はもうない。御坂は攻撃に気がつき慌てて回避しようとするが、球磨川の螺子は的確に人体の稼動範囲が一番狭い腹部を狙っていた。

もはや、避ける事は不可能な距離。命中必須の攻撃だった。

が、それは突如飛来した無数の石つぶてにより叶うことはなかった。

「なァンで敵に同情してンですかァ?御坂美琴(オリジナル)」

134 :気を取り直して投下します ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/01(火) 00:23:53.03 ID:8/QW8FZE0
球磨川と御坂が同時に声のした方へ顔を向ける。そこには気を取り戻した学園都市最強の一方通行が口元を歪め、愉快そうに立っていた。

「超電磁砲の音か……ちょいと目覚ましにしてはデカ過ぎる音だなァ」

面倒臭そうに頭を掻きながら言う一方通行に球磨川が意識をそらした隙に、御坂は距離をとり一方通行の隣まで移動する。

「助かったわ」

「甘ェんだよ、しっかり相手が死ぬまで攻撃をやめるんじゃねェ……こんな感じになァ!!」

御坂の礼など一蹴し、ダンッと思い切り右足で床を踏みつける一方通行。するとその箇所がひび割れ無数の破片が宙に舞い球磨川に襲い掛かる。

「さっきはバッテリー切れで何もできなかったがな、なぜか今は充電満タンだァ!!一瞬で素敵なオブジェに変えてやンよ!!」

「御坂美琴(オリジナル)!!砂鉄の剣だァ!」

その言葉を聞き、破壊され地面が剥き出しになった床から砂鉄を磁力で集め剣を形成させる。

「拡散させて逃げ場を奪え!」

「分かってるわよ!!」

鞭のように球磨川へ向け砂鉄の剣を伸ばし、上空で拡散させ竜巻のように形を変え球磨川を包み込む。

『わぁお、これは流石に死んじゃうなぁ』

しかし球磨川は慌てた様子を見せず、右手を砂鉄の竜巻に向け差し出す。

その瞬間、御坂の制御が聞かず元ある地面へと還っていく砂鉄。

そして飛来する破片には両手を万歳の姿勢から一気に下へ振り下ろす事で全段叩き落した。

135 :気を取り直して投下します ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/01(火) 00:24:25.67 ID:8/QW8FZE0
「なっ!!」

全てを無効化した球磨川を見て二人は驚愕の声を上げる。

「磁力が……」

「ベクトルが……」

「消えた!?」

御坂が操作していた砂鉄からは磁力が消え、一方通行が放った破片に存在するベクトルもなくなってしまい、停止したのだ。

二人が思い浮かべるのは一人の少年。全ての異能を殺す右手をもつ上条当麻の顔だった。

『幻想殺し、とはちょっと違うけどね。僕の大嘘憑きは殺すんじゃない、無くすんだ』

そんな二人から思考を読み取ったように言葉を発する球磨川の両手には再び螺子が握られている。

『ねぇ一方ちゃん……充電満タンなら何だって?美琴ちゃん。教えてあげなよ、誰が一方ちゃんの傷を戻(なお)したのかを』

『ベクトル操作?超電磁砲?いくら君たちが強い(プラス)の能力を持ったところで』

『僕の弱さ(マイナス)の前じゃあんまり意味がないんじゃないかなぁ?』

『知ってるでしょ?どれだけ桁が多いプラスの数字だって、マイナスを掛けてしまえばそれはプラスじゃなくなるって事ぐらい』

球磨川は言葉を終えると、一気に駆け一方通行の眼前へと迫る。

完全に虚をつかれた一方通行は簡単に懐へ球磨川の侵入を許してしまい、美琴も対応に遅れてしまう。

137 :気を取り直して投下します ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/01(火) 00:25:20.38 ID:8/QW8FZE0
『こんなふうにね』

笑顔のまま右手に持った螺子を一方通行の腕へ螺子込もうとする球磨川に対し、一方通行は回避する素振りを見せない。

「は!反射膜ができてンだ、そんな螺子なンぞはじき返してやンよォ!」

先の天井戦の時のように今の一方通行は能力を十全に使用できる。だから今度こそこの攻撃は反射される筈だった。

「避けて!!」

思考がオンになった御坂が叫び、反射的に避けた一方通行は球磨川の魔手から逃れることができた。

そして二人揃って球磨川と距離を取る。

「なに言ってンだ!オリジ」

「さっきアンタが言ったじゃないの!ベクトルが消えたって。つまりアイツは反射膜さえ無視できるのよ!見なさいその腕を」

その第一位の頭脳でよく考えなさい、と御坂が叫ぶ。

一方通行は言われて自分の腕を確認すると、反射膜で守られているはずの服が螺子によって破れていたのだ。

確かに、避ける瞬間に演算に異変があった事を思い出す。

「おいおい、まさしくあのムカツク三下みてェじゃねェか」

「それ以上よ。アイツは右手だけだけどコイツはどうやら全身でそれができるみたいだから」

「……なるほどなァ」

改めて目の前の敵のでたらめさを再確認する一方通行。そんな話し合いをする二人に球磨川は無邪気な笑みを浮かべながら螺子を消し口を開いた。

『じゃあそろそろ僕の能力を教えてあげるよ。週間少年ジャンプじゃもはや通例となっていると言っても過言ではないからね』

とはいっても学園都市に来て結構名乗ってるんだけどね、と前置きをおいて。

『球磨川禊、高校二年生。過負荷、いや負能力名は【大嘘憑き(オールフィクション)】マイナスレベル5。気になる効果は……』

言いながら球磨川は一方通行の服を指を指す。すると破れた箇所が元通りに戻る。

そして、球磨川は自身の抱える負能力の効果を口にした。

138 :気を取り直して投下します ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/01(火) 00:25:50.94 ID:8/QW8FZE0




『全てを虚構にする事ができるんだ』





149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/02/01(火) 02:10:43.57 ID:BcuwpfUAO
球磨川さんがチートすぎて生きるのがつらい

171 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/02(水) 00:03:35.61 ID:eHpA63SU0
仕事の合間に、姫神と青髪の能力紹介をば。


姫神秋沙
能力名【存在証明(アイデンティティ)】
レベル【マイナス3】
効果【自身や第三者の存在証明を忘れさせる】

簡単に言えば、そこに居る理由を忘れさせる事で極端に影が薄くでき、さらに記憶からも消えてしまう負能力です。
他人へ使用した場合は今現在対象がここに居る理由を忘れさせる事ができ、戦意などを喪失させてしまう。
青髪も「能力に当てられる」と言っているので、実際は使用というより無自覚に効果が出てしまうのかもしれません。

西尾作品における《戦闘シーンスルー》という通例に該当してしまったのも、この負能力のせいかもしれない。
ごめんよ……


青髪ピアス(本名不明)
能力名【平衡戦場(アナザーシャフト)】
レベル【マイナス5】
効果【平行世界を掌握し、現行世界へ反映させる】

平衡戦場は平行線上の言葉遊び、のつもり。
平行線→二本の線→もう一つの線(軸)→アナザーシャフト。
マイナスであり、プラスでもある青髪の二面性も平行線とかけている、つもり。

青髪「戦争を終わらすためには力の拮抗が必要や。だから僕の負能力で戦場のバランスをとる!」

なんて事をこのss内の心優しい青髪は思って平衡戦場と名付けたのかも。

無限にある平行世界を把握しているため、未来予知、過去を知る事が出来る。が、誤差が多少ある。
平行世界の設定を現行世界へ反映出来る為、言ってしまえば【世界が崩壊する世界】を反映すれば終焉を作り出せる。
上条戦では地盤の反映、能力の反映、天候の反映などをしたが、それ以外にも何でも反映できる。
因みに、反映した世界には現行世界の設定が反映されるか、設定自体がなくなったりする。

裏技として、平行世界の住人を現行世界に呼び出す【もう一人の自分(ドッペルゲンガー)】なんてものもある。
実は当初【上条に負けなかった一方通行】と【実験に協力的な御坂美琴】という、上条に殺意を持った状態の二人を呼び寄せて戦わせるという
流れにするつもりだったんですが、それだと上条さんが死ぬ姿しか想像できなかったので中止。
青髪が実は良い奴設定を生かすためにも没にしました。

173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/02/02(水) 00:17:55.39 ID:GouTdtZAO
>>171
青ピの能力に発動条件はないのか…
ヘタ錬を遥かに越える凶悪さだ

199 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/02(水) 22:22:39.55 ID:GLcprDJ70
全てを虚構にする事ができる。

それが球磨川禊の欠点(マイナス)であり過負荷(マイナス)であり不能力(マイナス)の正体。

悪意も善意も渾然一体とし、全てを無に返す。

傷をなかったことに。汚れをなかったことに。距離をなかったことに。視力をなかったことに。筋力をなかったことに。

磁力を、ベクトルを、努力を、理性を、知性を、結果を、過程を、記憶を、生を、死を、世界を。

森羅万象を虚構にする能力。

『それが大嘘憑き(オールフィクション)』

その言葉に学園都市が誇る二人の超能力者は言葉を失い、驚愕していた。

「勝てるわけ……ないじゃないの……」

思わず御坂の口から漏れる諦めの声。一方通行も口にこそ出さないが、似たような意見を持っていた。

自身の持つ長所が、能力が、存在証明が通用しない相手にどう立ち振る舞えばいいのだろうか。

『とは言っても、まだまだ無くしたての欠点だからね。把握してない部分も沢山あるんだよ』

だからまだ諦めないで、とあろう事か二人を励ますように、しかしどこか愉快そうに話すのは絶望の象徴である球磨川。

『黙ってないでお喋りしようよー。それとも僕みたいなのとは喋りたくないのかな?』

『やれやれ、いくら僕がモブキャラみたいな顔立ちだからって差別するのはよくないと思うな』

『僕だって君たちと同じ人間なんだからさ。仲良くしようよ』

ピースサインを向けて屈託のない笑顔を浮かべる球磨川に対し、いまだ口を利けないでいる二人。

200 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/02(水) 22:23:12.39 ID:GLcprDJ70
「よォ…御坂美琴(オリジナル)」

「なによ」

一方通行が御坂へ囁く。

「こりゃァ勝ち目がねェかもしンねェなァ。いっそ二人そろって逃げるかァ?」

「冗談。佐天さん達を置いて逃げるわけないじゃない」

「さっき敗北宣言したのはどなたでしたっけェ?」

「勝てなくても、止めるのよ」

「ふゥン……」

コソコソと話す二人が囁き会っている姿をじっと眺めている球磨川。

「それなら、一つギャンブルに出てみようじゃねェか」

「え?」

「よく聞けェ」

そして、一方通行から持ちかけられたのは一つの作戦。

だがそれは作戦とは到底いえる物ではなく、仮説を前提に置いたいわば希望だった。

伝達が終了し、いくらか驚いた表情を浮かべる御坂だったがしっかりと頷き了解をする。

201 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/02(水) 22:24:10.05 ID:GLcprDJ70
『作戦タイム終了かい?それじゃどっからでもどーぞ』

「ハハ!」

余裕を崩さずノーガードで迎える球磨川に、一方通行は短く笑う。

「後悔しないでよね!」

御坂がそう叫ぶと共に二人の作戦が実行された。

『わぁお!ミナデインみたいだね!!』

御坂から放たれた無数の雷をまるで河川敷から花火を眺めているかのように暢気に待ち受ける球磨川。

それをあえて避けず全身で受け止め、自らの体を傷つける。

『あれぇ?なんだか体が動かないぞ』

雷の熱で服が焼け、露出した皮膚の所々が焼け爛れても笑顔を崩さない。

「そのまま死んどけェ!糞野郎ォォォォ!!」

一方通行は絶叫しながら先ほどの攻撃と同じよう無数の崩れたコンクリート片を飛ばす。

これすらも受け入れ体中の至る所に穴が開き、右腕にいたっては引きちぎれて肩から伸びる数本の筋繊維で繋がったままぶら下がっていた。

「く……」

その光景に思わず目をそらそうとするのは御坂だった。

いくら攻撃が無効化され傷が治るとはいえ人間が壊れていく様は直視するには耐えがたいものである。

「攻撃をやめんじゃねェ!!」

202 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/02(水) 22:29:06.53 ID:GLcprDJ70
「くっそおおおおおおおおおおおおお!!」

一方通行の叱咤により、球磨川を“殺す”決意を固めた御坂は磁力で床から一本の鉄骨を取り出し、球磨川の心臓めがけて飛ばす。

『それは避けなきゃ不味いかなぁ』

的確に球磨川の左胸、つまり心臓めがけて飛来する一本の鉄骨。

残った左手で頬を掻く球磨川は苦笑いを浮かべ、傷もそのまま横にそれて回避をしようとするが、

頭上に浮かぶ自らを覆い隠すほどの鉄板に気がつく。

「悪ィがこの攻撃は一方通行だァ。進入も回避も禁止ってなァ……」

一方通行は口元を歪めながら自らの右手の親指だけを立てて首元を切る素振りを見せ、そのまま手首を返し親指を下に向ける。

その先にある球磨川の運命と、この悪魔のような物語を締めくくるように言葉を添えて

「ジエンドだ」

遥か上空から勢いよく球磨川へ落下を始める鉄板。

鉄骨は回避できるかもしれないが、その傷ついた体では大きい動作ができないのか、球磨川は鉄板を見上げる。

『う、おおお!死ぬ!これは死ぬ!くそおおおおおおおおおおお!!』

そうして巨大な鉄板は、叫びをあげる球磨川へと落ちていった。

203 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/02(水) 22:30:44.73 ID:GLcprDJ70
一方通行の作戦とは、天井戦と同じく物量で攻めきるという単純なものだった。

大嘘憑きの効果範囲、発動条件などはわからなかったが、

磁力とベクトルを別々になかったことにしたことから、複数の事柄を同時に虚構にすることはできないと一方通行は考えた。

それならば、回復をする暇を与えず全力で攻撃を続ければいい。回避をする間を与えず全霊で殺せばいい。

それが、もはや希望ともいえる一方通行の考えた作戦の全貌だった。

この作戦において、一方通行や御坂は最初の一撃を与えることを課題としていた。

多面攻撃を仕掛けたところで、最初の攻撃と同じようになかったことにされるのが落ち。

だから一撃さえ与えれば動きを止めれ、なおかつ回復と回避の二つの処理を与えれる。

その後は、弾幕のように攻撃を繰り出せば勝機はあると思っていたため、球磨川の油断した状態は正直二人にとっては僥倖といえたのだった。

勝てる。

二人は落ち行く鉄板を眺めつつ少し安堵していた。

事実、処理に追われた球磨川はこうして鉄板の下敷きになろうとしているのだから。

この作戦は成功といえよう。

だが。

『なんちゃって』

だが。それは仮説が正しかった場合の話である。

206 :きぬはた荘を超見てました ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/02(水) 22:54:56.39 ID:GLcprDJ70
球磨川はそう言って、鉄板と鉄骨、それに体の傷を同時に虚構にし何食わぬ顔で立ったままだった。

「なっ!!」

目の前の光景に信じられないといった声を上げるのは御坂。

一方通行は自らの希望を打ち砕かれ苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべている。

『同時に消せないと思った?』

球磨川は相変わらず笑顔を浮かべているが、二人にはそれがただただ不気味に見える。

両手には何も持たず、背筋を伸ばした良い姿勢のままスタスタと早足で二人へと歩み寄りながら言葉を続ける。

『二人のレベル5なら何とかなると思った?』

その言葉はまるで呪詛のようで、何かの呪いのようで。

『僕が攻撃を受けたから、切実な表情を見せたから殺せると思った?』

二人の足を地面へ縫い付ける。

『どれだけ自分達が重要な役回りだと勘違いしてたのかな?恥ずかしげもなく』

これが恐怖、これが絶望、これが過負荷。

『この物語に主人公は一人だけ。悪役も僕一人だけ。それ以外は舞台袖へ下がって頂戴』

207 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/02(水) 22:57:42.16 ID:GLcprDJ70
二人は逃げるという選択をしなかったことを後悔していた。

『一方ちゃん。どうだい?これが殺される恐怖だよ』

一方通行は何も言えない。最強と呼ばれ無敵を目指した少年ですら目の前の最悪の前ではただの人間だった。

『美琴ちゃん。今から僕がミサカちゃん達の敵討ちをしてあげるね』

御坂は立ち竦む。その胸にはただ恐怖と後悔の渦が巻いているだけで他には何も考えることができない。

『心配しないで。ミサカちゃん達を殺した犯人と仲良く戦っていた君も、仲良く殺してあげるから』

そして笑みを浮かべたまま螺子を取り出した球磨川。

その螺子はプラスを螺子伏せる象徴。

その螺子は巨悪なマイナスの権化。

その螺子は二人の終わりを告げる物。

『それじゃ、天国で会おう』

球磨川は螺子を振り上げる。

二人は思わず目を瞑り、その時を待つだけだった。

208 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/02(水) 23:07:39.30 ID:GLcprDJ70
振り下ろされる螺子が刺さる音だろうか?ドゴッという鈍い音が御坂の耳に飛び込んできた。

おそらく一方通行が刺されたのだろうと、恐る恐る瞼を開き状況を確認する。

「え……?」

螺子伏せられた一方通行の姿を想像していた御坂は目に映った光景を疑った。

無理もない。倒れているのは一方通行ではなく、球磨川禊だったからだ。

そこにはさっきまではこの場に居なかった人物が息を切らしたまま、振り切った拳を伸ばしている少年が一人。

一方通行も目の前の人物に驚き、どこか不機嫌そうな表情を浮かべている。

当然だろう。その少年はかつて一方通行を撃破した少年なのだから。

そして恐らく少年に殴られ吹き飛んだであろう球磨川は対照的に嬉しそうな表情を浮かべていた。

「ふざけんじゃねぇぞ……」

ゆらりと腕を下ろし、球磨川に向けつぶやく少年。

「何が過負荷だよ。何が負能力だよ……」

その姿からは抑えきれない怒りが漏れているのがわかる。

「関係ない人まで不幸にして、不幸から抜け出そうとした人まで巻き込んでんじゃねえよ!!」

とうとう少年は叫びだしてしまった。

211 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/02(水) 23:25:17.02 ID:GLcprDJ70
「テメエ知ってるんだろ!?御坂の友達が自分の感情抑えてまで友達でいようと努力してたことを」

「必死になって能力者になろうと頑張ってたことを!」

「それだけじゃねえ!妹達がどんな気持ちで死んでいったのか、生き残った奴等がどんな決意で今を生きてるのか!」

「必死に今を生きてるんだよ!死んでいった妹達のことなんざ一瞬たりとも忘れてねぇ!」

「御坂だって同じだ!苦しんで、悩んで、涙を流して、葛藤して、それでも前向いて生きてるんだ!」

「どれだけ不幸だろうと、どれだけ欠点だらけでも皆幸せになろうって必死にもがいてんだよ!!」

「一方通行があの日から何をして過ごしたのかも知ってんだろうが!」

「許されるつもりはねえって十字架背負って、命を懸けて打ち止めを、妹達を救ったんだ!」

「死んで許されるならコイツはとっくに死んでるはずだろうが!?でもこうやってコイツ生きてる」

「そうやってどうしようもない現実に抗って、もがいて生きてる奴等をテメエは何で不幸にしようとしやがる!」

「どうしようもない運命(マイナス)を持っちまったアイツだって頑張ってんだろうが!」

「後悔して、懺悔して、それでもアイツは笑ってるんだ!!」

「どうしてそれが分からない!?なんで分かろうとしねぇんだよ!!」

213 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/02(水) 23:40:17.65 ID:GLcprDJ70
「なんでテメエはそれを邪魔することができるんだ!!」

少年は叫ぶ。

それは、球磨川に弄ばれた者達の気持ち。

平等を望んだ佐天涙子の願い。

一万回死んだ妹達の痛み。

それを受け止め生きる妹達の重み。

過酷な運命を背負う御坂の悲しみ。

許されることのない一方通行の苦しみ。

存在証明を無くした姫神の悩み。

巨大な負を抱えながらも懸命に生きる青髪の想い。

それを全て、目の前に居る大嘘憑きに向けぶつける。

それは少年の――

上条当麻の心からの言葉だった。

「立てよ最悪(本物)。俺の最良(偽者)で正してやるよ!」

見下ろす球磨川に向け上条は右拳を突き出す。

「テメエが何でもなかった事にできるって言うんなら……全てを不幸にすると言うんなら――」

214 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/02(水) 23:41:05.81 ID:GLcprDJ70






「その幻想をぶち殺す!!」





327 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/04(金) 22:41:09.50 ID:20P0evo80
『…………』

上条の言葉に球磨川を始め誰も口を開こうとしない。

静寂が、場を支配する。

『はぁ……』

それを破ったのは、球磨川の漏らす溜息の音。

『何でそんなことができるのか分からないって、上条ちゃん、そんな当たり前の事を言わないでほしいな』

やれやれと首を振るう球磨川に対し、上条は言葉を出せなかった。

激昂するわけでも、言い訳をするわけでも、ない。

ただ球磨川は興が削がれた様に先ほどまでの笑みを消し、ただただ上条に対し落胆をしているように見えた。

『人間が、人間を理解するなんて不可能に決まっているじゃないか。それとも上条ちゃんは読心能力でも使えるのかい?』

『使えないよね、だって君はそんな利点のある能力者じゃない。どう足掻いても殺すだけの人間だから』

『第一、そんな能力を持っていたとしても本質的な意味では理解することなんてできない』

多勢に無勢のこの状況で、御坂に追い詰められた時よりも不利なこの場面でも、球磨川は淡々と言葉を吐き出す。

命乞いの嘘もつかず、適当な理由を並べるわけでもない。

真正面から上条の言葉を否定する。

329 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/04(金) 22:42:43.52 ID:20P0evo80
『分からないのに、分かってもらおうとするなよ』

「っつ!!」

その言葉に後頭部を殴られたかのようなショックを覚える上条。

ゆらゆらと視界が揺れる。

『そこに居る打ち止めちゃんや花飾りちゃんから聞いたのか知らないけど、それだけで僕達(マイナス)を理解したつもりだった?』

球磨川の言葉で御坂と一方通行は入り口にへと目を向ける。

「打ち止め……」

「初春さん……」

そこには心配そうな眼差しで上条たちを見つめる二人の少女が居た。

実は上条がここに来れたのは初春がC棟の妹達の調整室で眠る上条を発見したからだった。

その途中、ビーカーに閉じ込められていた打ち止めを発見した二人は、幻想殺しでビーカーを破壊、救出しこの部屋へと向かったのだ。

球磨川が言う様に、上条がこれまでの経緯を把握しているのは二人が現場に向かう中、彼に説明したからである。

330 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/04(金) 22:43:15.42 ID:20P0evo80
『いいかい、上条ちゃん。人間が他人を理解したって思うのは他人と同じ意見を持った時か、他人を自分色に染めた時にそう思っちゃうんだよ』

「…………」

球磨川の話に何を言い返すわけでもなく、ただ公演を聴く一人の観客のように黙り込む上条。

『例えば同じ趣味を持っていたとき。例えば同じ相手を好きになったとき。例えば同じ敵を前にしたとき。そうだね、後は……』

そして球磨川は再び仮面のような笑顔を浮かべ、こう言った。

『自分の思想を無理やり相手に押し付けて、それが正義だと思ったとき、ぐらいかな』

『例えば、今までの上条ちゃんが“敵”にしてきたみたいにね』

数々の相手に振るったその拳と言葉は球磨川には届くことはなく、逆に上条の信念を再び揺らがすことになった。

「……でも、だからって目の前の人を助けない訳にはならねぇだろうが!!」

登場したときのように吼える上条だったが、どこかその言葉は弱く感じてしまう。

「皆が幸せになりゃあそれが一番だろうが!!」

もはや上条の言葉は誰かを正す為のものではなく、今にも倒れそうな自身の体と信念を支える為のものだった。

『皆が幸せに、か……』

「そうだ!」

球磨川はそんな上条に対し再び深い溜息をつく。無感情な無表情を浮かべ上条を見つめる目は、もはや落胆ですらなく哀れなものを見るそれだった。

ガシガシと頭を掻き、面倒くさそうに球磨川が言った言葉は、上条の主張を打ち砕く。

『でも、その皆ってのに僕は入ってないんだろう?』

もう、どんな言葉も球磨川には届くことがない。この場に居る人間は例外なくそう思った。

331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/02/04(金) 22:43:34.97 ID:dNkH7KmAO
さすがクマー

334 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/04(金) 23:09:25.01 ID:20P0evo80
『涙子ちゃんも、ミサカちゃんも、天井ちゃんも、姫神ちゃんも……あぁ青髪ちゃんは少し違うけどさ』

『みーんな僕に感謝してくれたよ』

『心のどこかに抱えた感情を受け入れてくれたことが嬉しかったんだろうね、誰も彼女達に目を向けなかったんだろうね』

『能力者(プラス)が、生きている者(プラス)が、成功者(プラス)が、人気者(プラス)が』

『僕達(マイナス)に少しでも気をかけてくれたら、こうならずに済んだかもしれないというのに』

球磨川の言葉は止まらない。

球磨川の過負荷は止まらない。

『涙子ちゃんがどんな気持ちで能力者を見ていたのか』

『ミサカちゃん達がどんな気持ちで死に、今を生きているのか』

『天井ちゃんがどんな気持ちで成功しようと努力していたのか』

『姫神ちゃんがどんな気持ちで存在証明を探していたのか』

『青髪ちゃんがどんな気持ちで今まで生きてきたのか』

『他人は理解はできないけど、上条ちゃんは他人をちゃんと理解しようとしたのかな?』

『いいよ、上条ちゃんが全部自分の思い通りに事が運ぶと思うなら、他人を無理やり幸福(プラス)に導こうとするなら』

『そのふざけた現実をぶち殺してあげるね』

336 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/04(金) 23:10:47.22 ID:20P0evo80
「っ……そ、それは」

『それは、なんだい?上条ちゃん。何か間違いがあったら教えてほしいな』

弱弱しく言葉に詰まる上条。もはや、自分の信念など音をたてて崩れ落ちていた彼の足は、小さく震えていた。

それは恐怖でも、畏怖でもない。

純粋に上条当麻が否定された為だった。

「何をビビってるのよ!!」

と、今にも崩れ落ちそうな上条にかかる一つの叫び。御坂の声だった。

「例えそれが偽善でも、間違いでも、自己満足でも私達がアンタに助けられたことは事実なのよ!!」

妹達を巡る事件の時、自らの命を差し出してまでも実験を止めようとした御坂を救ったのは紛れもない上条の言葉。

「そうだよ!ヒーローさんのおかげでミサカ達はこうやって生きてるし、あの人も変われたんだから!」

姉の言葉を続けるように、小さな体を震わせながら打ち止めも叫ぶ。

打ち止めの言葉に、一方通行は小さく舌を打つ。

「そうだァ三下……悪党は主人公に負けるってのが物語のお約束だろうがァ……」

どこかバツが悪そうな表情を浮かべながら一方通行も上条へ言葉を送る。

「その通りです!」

初春も、それに続く。

「だからアンタは今まで通り――」

思い切り息を吸い、御坂が上条に向けて伝えた言葉は。

一人で何でも抱え込む素直じゃない彼女が今まで誰にも伝えられなかった言葉だった。

それは。

「私達を助けてよ!!」

助けてほしいという、願いだった。

337 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/04(金) 23:23:16.03 ID:20P0evo80
『あらら、嫌われたもんだね。まぁいいかこんな役回りは僕の役目だからね』

声援を浴びる上条を他所にどこからか取り出した螺子を構える球磨川。

『ちょっと長々と話しすぎちゃったね。ここは週間少年ジャンプみたいに戦って決着をつけようか』

立ち尽くしたまま動かない上条に、襲い掛かる球磨川。そしてゆらりと挙げた右手で球磨川の螺子を掴む。

その瞬間、球磨川の螺子は消滅してしまう。

「わかったよ球磨川……」

そして空いていた左手で拳を握り、球磨川の顔面へと叩きつける。

衝撃で仰け反り、顔面を押さえながら悶絶する球磨川に向け、上条は決意の言葉を投げる。

「俺は、お前を助けない」

球磨川は一瞬でダメージをなかったことにして、醜悪で、凄惨な笑みを浮かべる。

それは上条がこの部屋に来たときと同じ、どこか嬉しそうな笑顔。

『そう、それでいいんだよ。これで心おきなく戦える』

「ああ、何の気兼ねなくな」

向き合う上条にもう迷いはない。

「俺は、俺の幻想を守る為にこの拳をお前に振るう」

『そう。だったら僕はただ何となく君を螺子伏せることにするよ』

「いくぜ、大嘘憑き」

『おいでよ、幻想殺し』

446 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/06(日) 23:14:09.35 ID:pkRzaC0/0
上条と球磨川の戦いは平行線を辿っていた。

上条が与えるダメージはすぐに“なかったこと”にされるが、

逆に球磨川の螺子での攻撃は全て幻想殺しによって打ち消され、上条へダメージを与えることができない。

だが、それでも上条が絶対的に不利だった。

上条の攻撃が全てなかったことにされるのに対し、球磨川の攻撃は当たってさえしまえば確実にダメージを与えることができるのだ。

幻想殺しでは傷まで消すことはできない。

説得は届かず、暴力でさえ制圧することができない現状では、いずれ上条が負けてしまうのは明白だった。

『いい加減に諦めなよ、上条ちゃん』

「お前の指図はうけねぇよ!」

そんなことは上条は分かっている。だが拳を振り回すことを止めない。

周りにいる御坂達も助太刀はせず、ただ二人の行く末を見守っているだけである。

なぜだか二人の間に割って入ろうという気にはなれなかったのだ。

447 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/06(日) 23:14:39.19 ID:pkRzaC0/0
『それじゃ、こういうのはどうかな?』

球磨川はポケットから螺子を取り出し、上条へと攻撃を仕掛ける。

それは先ほどから何度もあったシーンで、そのつど上条は螺子を消しカウンターを決めていた。

「何度でも消してやる!!」

上条は迫りくる螺子に思い切り拳を握り締めた右手を振りぬく。そこで螺子は消滅する――

はずだった。

「ぐぅっ!!」

消えるはずの螺子はそのまま上条の右拳へ突き刺さり、痛みで上条は顔をゆがめ、思わず幹部を抑えながら蹲ってしまう。

『幻想殺し殺しってね』

そんな上条へ追撃は行わず、距離を開けて楽しげな笑みを浮かべたままそう言った。

『確かに今までの螺子は消せたかもしれないけど、普通にホームセンターで売ってたその螺子は消せないよねー』

「テメェ……!!」

球磨川が攻撃に使用した螺子は、能力によって出現させたものではなく紛れもなく現実の物。

わざわざポケットから出したのがその証拠である。

『さて、もう閉演の時間かな。こうやってヒーローが負ける物語もなかなか乙だよねぇ』

今度は螺子を能力によって出現させ、上条へ歩み寄る。

『呆気なかったね。まぁ流石に“彼女”みたいなのは例外か』

球磨川が指す彼女とはいったい誰なのかなど上条に分かるはずもない。

それは過去に球磨川が通っていた学校から武力によって撤退を余儀なくされた相手。

球磨川が『大嫌い』と証する黒神めだかという少女のことだった。

448 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/06(日) 23:15:57.61 ID:pkRzaC0/0
『それじゃ、また明日とか』

そういって蹲る上条へ振り下ろされた巨大な螺子は、そのまま右肩を貫いた。

「っがああああああああああああああああ!!」

飛び散る鮮血と共に上条の叫び声が部屋の内部に木霊する。

『あは!いい声だねかみじょ……痛!』

もう一つの螺子も振り下ろさんとした球磨川が、飛来した電撃を浴び苦悶の声を上げる。

流石に黙ってみている訳にはいかないと判断した御坂の放ったものだった。

「させないわ」

その言葉に一方通行も臨戦態勢をとる。けして敵わないと知っているが、せめて少しでも時間を稼ごうとしたのだ。

『おいおい、美琴ちゃんはこういったラストバトルには手出し無用ってのが暗黙の了解なのを知らないのかい?空気読めよ』

火傷を負ったまま目線を御坂へとずらし、ゆらりと体を御坂に向ける。

『観客のままだったら手出しはしないつもりだったけど、しかたないよね。舞台に上がったんなら容赦はしないよ』

ゆっくりと御坂達に歩み寄ろうとした球磨川だったが、足首を何かに掴まれ前進を止める。

ふと視線を落とすと、血だらけの右手で球磨川の足首を掴む上条が居た。

「お前の相手は……俺だろうが……」

息も絶え絶えになりながらも、その右手に加える力は増すばかりである。怪我をしているのにもかかわらず、球磨川が振りほどけないほどに。

『……離しなよ、上条ちゃん』

どことなく早口でそう話す球磨川に上条はあることに気がつく。

「なぁ球磨川。お前、その火傷を消さないのか?」

その言葉に一瞬場の空気が止まる。

今まで好き勝手なタイミングで傷を消してきた球磨川だったが、今は傷どころか服の汚れさえ消えていない。

相手に対し何かしらの意図がない限り即座に傷を消してきた球磨川だったからこそ、上条はその違和感に気がついたのだ。

今も何かしらの思惑の上で傷を消さないのか――

449 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/06(日) 23:16:59.39 ID:pkRzaC0/0




「傷を、消せないのか――」





452 :もう直接書いて落としていきます ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/06(日) 23:28:06.82 ID:pkRzaC0/0
傷を消さないのではなく、消せない。

全てを虚構にする大嘘憑きにはあってはならないこと。

球磨川にとってイレギュラーもいいところだった。

「そうだよ、青髪も言ってたじゃねえか……この右手の前じゃ大嘘憑きは意味を無さねぇって」

――その右手の効果のせいで、大嘘憑きは全く意味をなさんからな

それは上条の親友である青髪の言葉。

確かに幻想殺しの特性を考えれば当たり前のことだった。

御坂の手を握れば電撃は放たれず、一方通行の反射膜さえ形成できなくなる。

今にして思えば、幻想殺しを無かったことにしなかった時点でこの答えに辿りつかなければならなかった。

“強制力は幻想殺しの方が上”ということに。

へへ、と不適な笑い声を漏らしながら上条は球磨川の体を支えにする様にゆっくりと立ち上がる。

当然、右手で触られたままなので螺子を出現させることはできない。

「さて、ようやくラスボスの攻略方法がわかっ!?」

いざ反撃開始、というところで上条の言葉が止まる。その原因は球磨川の表情だった。

弱点がばれて困惑するわけでもない。

追い詰められて泣き顔になるわけでもない。

今頃気がついたのかと呆れた表情なわけでもない。

不気味な笑みを浮かべているわけでもない。

球磨川はただ、怒っていたのだ。

453 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/06(日) 23:38:04.01 ID:pkRzaC0/0
球磨川が学園都市に来て、始めてみせるはっきりとした『怒り』の感情。

その表情は修羅のごとく、上条を怯ませるには十分なものだった。

『そうだね、どうも大嘘憑きが発動できないみたいだ』

冷静に喋る球磨川だったが、やはり今までのような人をおちょくるような感じは見受けられない。

冷静すぎるほど冷静なのだ。

『まぁある程度は予想はしてたよ、でもいざ結果が出ると落ち着いてはいられないみたいだ』

上条の右手は現在、球磨川の左肩に置かれている。

払いのければきっと怪我を負った上条の右手などすぐにどかせるだろう。だが球磨川はそれをしない。

『よく頑張ったね、上条ちゃん。これで五分と五分……いや上条ちゃんのほうが有利かな?』

コロッと表情を笑顔に変える球磨川はそう言って上条を見つめる。

『だから、“久しぶり”に喧嘩をしてあげるよ』

言うが早いか球磨川の右拳が上条の顔面へと振りぬかれる。

「っが!」

だが、懸命に右手を握り締めて倒れようとしない上条は、そのまま柔道の組み手のように手を返し球磨川の学ランを巻き込む。

これでちょっとやそっとじゃ上条の手は離れない。

454 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/06(日) 23:41:10.61 ID:pkRzaC0/0
「おらぁ!!」

叫びながら上条は左拳で球磨川を殴りつける。

『痛いじゃない……か!』

球磨川も同じように殴り返す。

上条が殴る。

球磨川が返す。

上条が蹴る。

球磨川が返す。

上条が頭突きをする。

球磨川が返す。

そのやり取りが数分続いた。

二人の顔面は腫れ上がり、息を切らしている。

どこかその姿は、友人同士が喧嘩をしているように見えた。

457 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/06(日) 23:50:04.68 ID:pkRzaC0/0
「いい加減……倒れろよ!!」

上条が殴る。

『上条ちゃんこそ!!』

球磨川が返す。だが、上条に比べて既にその拳には力が入っていない。

体ひとつで数々の修羅場を潜って来た上条と、大嘘憑きによって難なく事を収めてきた球磨川との違い。

それは経験地と体力。そして純粋な身体能力の差だった。

無論、球磨川がひ弱というわけではない。彼はいわばエリートと呼ばれても遜色の無い潜在能力の持ち主である。

しかしそれでも、上条には敵わなかった。

上条の左拳が球磨川の顔面を殴りつけた瞬間、上条の右手に負荷がかかる。それは球磨川が倒れようとしている証だった。

右手を離された球磨川はドサリと仰向けに倒れてしまう。

『あーあ負けちゃった』

「傷を戻さないのかよ」

『いいよ、なんだかどうでもよくなった』

「そうかい」

そんな会話を交わす二人を御坂達は心配そうに眺めている。

球磨川はあっさりと約束を反故する。それは身にもって学んだことだったからだ。

458 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/06(日) 23:59:29.88 ID:pkRzaC0/0
しかし、球磨川は一向に傷を戻す気配はみせない。いっそ清々しい表情を浮かべているくらいである。

『なんだか週刊少年ジャンプみたいだね。青春を感じるよ』

「こんな青春はごめんだね」

『そうかい』

もう球磨川には戦う意思はない。上条は会話を交わしながら確信した。

「球磨川、ここは見逃してやる。だから約束をしろ」

『いいよ、今の僕はどんな不平等条約だって守る気持ちだからね』

立ち上がることをしない球磨川に対し、見下ろしながら言葉を続ける。

「お前が壊した物や、傷つけた人を元に戻せ」

『分かった』

「俺たちの前に姿を現すな」

『分かった。僕は君たちの前に現れない』

「それだけだ」

そんな口約束を取りつけたあと、球磨川は口を開いた。

『了解だよ。上条ちゃん一つだけお願いを聞いてくれないかい?僕を立ち上がらせてくれ』

「傷を戻せばいいじゃねえか」

『この傷はできればそのままにしておきたいんだ。戒めのためにもね』

その言葉にどこか納得できない様子の上条だったが、すこし間を空けた後左手を差し出した。

そして、球磨川がその手をとろうとした刹那――

爆発音が鳴り響いた。

462 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/07(月) 00:20:24.04 ID:12GWCCFK0
「なんだァ?」

突然爆発した研究所の天井。その異変に一方通行が怪訝な表情を浮かべる。

一方通行だけではない、初春も、打ち止めも、御坂も、上条も、そして球磨川でさえも現状を把握できていなかった。

「よぉマイナス第一位。殺しに来たぜ」

そしてこの場に居る誰でもない声が響き渡り、同時に真っ白な羽が舞い落ちてくる。

それは打ち止めを閉じ込めていたビーカーを作成した人物の能力によって作り出された未元物質の羽。

レベル5第二位、垣根帝督によるものだった。

「なんだぁ?どいつもこいつもしけた表情しやがって。心配すんなお前らは殺さねえよ。第一位お前もな」

風穴の開いた天井からまるで天使のような羽を羽ばたかせながら降りてくる垣根はそう言った。

どこかのホストのような姿に天使の羽とはシュールな光景だが、この状況下笑う人間は誰も居ない。

「なンですかァ?このメルヘンホストくンはァ?」

垣根が放った言葉は一方通行の逆鱗に触れた。お前は簡単に殺せる、そういった意図を感じたためだ。

ベクトル操作で垣根をしとめようと演算を開始したところで、突如それが中断する。

球磨川の負能力ではない、これは――

「バッテリー切れだよってミサカはミサカはあなたに教えてみる」

バッテリー切れだァ、と一方通行は言おうとするが言語機能さえ上手く働いていないようで言葉を紡ぐことができない。

465 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/07(月) 00:25:42.26 ID:12GWCCFK0
『上条ちゃん。ごめんね傷を戻すよ』

球磨川は差し出されていた手をとることは無く、自らの傷を戻し立ち上がる。

『みんなを連れて先に逃げて』

「……わかった」

球磨川の提案にいくらか驚いた上条だったが、頷き御坂達の下へ走っていく。

「おいおい、ずいぶんと余裕だな」

『まったく、余りに想定通りで逆にテンション下がっちゃうよ』

垣根と向き合った球磨川はやれやれと首を横に振る。

『どうせ統括理事長さんの差し金でしょ?』

「まぁ俺を動かせるのはあの野郎くらいだしな。ちなみに今日は暗部の垣根帝督じゃなく、あくまで一個人への依頼としてを受けて来た」

『ふぅん』

「その態度、ムカついた。テメェはグチャグチャ殺してミンチにしてやるよ」

そして垣根は両翼を広げ臨戦態勢をとる。

そんな中、気を失っている佐天を初春が、9982号を御坂、そして一方通行は上条が担ぎ避難を始める。

最後に部屋を出ようとした上条は一度振り返り球磨川を見る。すると球磨川も振り返り微笑んだ。

『もう君の前に現れることは無いけど、こんなことで償いができるとは思わないけど……』

球磨川ははっきりとこう言った。

『できれば僕とまた友達になってくれると嬉しいな』

466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/02/07(月) 00:27:02.71 ID:qZQD+PCWo
てっきり一方さんは大嘘憑きで全部治ってると思ってたのに・・・

467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/02/07(月) 00:30:31.64 ID:rhTD5/HAO
久しぶりにかませポジションのていとくんを見た

468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/02/07(月) 00:30:38.42 ID:RfwCuU9AO
クマーがこんなに優しいのはきっと上条さんが…

469 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/07(月) 00:36:56.79 ID:12GWCCFK0
球磨川は上条の返事を聞くことができなかった。

それは垣根の放った無数の光る羽が部屋中を破壊し、轟音を鳴り響かせたためである。

『ずいぶんとメルヘンチックだね。垣根ちゃんのイメージには合わないかも』

「安心しろ、自覚はしている」

螺子を取り出し応戦する球磨川だったが、遠距離からの攻撃に垣根へ近づくことはできない。

羽が球磨川を打ち抜くが、すぐに元に戻す。

先の上条との戦いのように平行線を辿る二人の戦い。

『それならその似合わない羽はなくしてあげるよ』

被弾する羽など気にも留めず、球磨川は前進し、宙を舞う垣根へ螺子を投げつける。

垣根はそれを羽で防ぐが、球磨川の目的は攻撃ではなく羽を消すことにあった。

「な……!」

驚愕の表情を浮かべてそのまま地面へと落ちる垣根。その落下点のすぐ傍には球磨川が螺子を持ち待ち構えていた。

『これで終わり?垣根ちゃん』

「っへ、テメェの特徴の無い面に戦意をそがれただけだよ」

慌てる様子も無く垣根は軽口を叩く。

そんな垣根に球磨川は無邪気な笑顔を浮かべ「それじゃ怒らしてあげるから本気出してよ」と前置きをし口を開く。

『お前、なんだか冷蔵庫の中に入ってそうな顔してるよな(笑)』

垣根はブチ切れた。

470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/07(月) 00:38:51.55 ID:5XzMJ6+60
冷蔵庫www

472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/02/07(月) 00:40:24.85 ID:zNTh+y2SO
そのネタ使うのかwwwwww

474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/02/07(月) 00:46:02.68 ID:Sk18M2pQ0
感動したぜ。これがメルヘンの無い世界か。

475 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/07(月) 00:46:27.89 ID:12GWCCFK0
「ぶっ殺す!!」

垣根はそう叫び、羽を作成。高く飛び上がる。

『学習能力が無いなぁ。そんなに堕天使ごっこをしたいのかい?ひょっとして垣根ちゃんって中二病?』

「うるせええええええええええええええええええ!!」

怒りに任せ先ほどの倍以上の羽を降り注がせる垣根。その衝撃で粉塵が舞い視界が奪われる。

そして視界が晴れてきた時、そこに居たのは無傷の球磨川の姿だった。

『もういいや、飽きたから死んじゃって』

そう言って球磨川がつまらなさそうに螺子を構えた瞬間、一筋の光が走り――

球磨川の右頭部が消し飛んだ。

「誰が一人だけっていったにゃーん」

頭部の四分の一が無くなった球磨川だったそれは無残にも倒れ、どこからか現れた一人の女に蹴り飛ばされる。

「おせぇんだよ、第四位。死ぬか?」

第四位と呼ばれた女は顔を引きつかせ、球磨川の死体を何度も踏みにじる。

「あぁ!?こんなダセェ野郎に我忘れてた奴は何処のどいつだ!?」

「俺の未元物質で姿を消してやったろうが。もともとこういう作戦なんだよ」

「っは!上からの命令じゃなきゃぜってぇテメェなんかとは組まなかったよ」

「俺もだよ」

477 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/07(月) 00:49:40.55 ID:12GWCCFK0
「とっととしたい回収して、この研究所破壊しておさらばすんぞ」

「指図すんな。私は先に帰るから後よろしく」

女はそういい残すとさっさと研究所から出て行ってしまった。

一人残された垣根は球磨川の死体を担ぎ上げると、穴を開けた天井から飛び立ち空中から未元物質を降り注がせ研究所を破壊した。

478 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/07(月) 00:55:23.14 ID:12GWCCFK0
研究所外部。脱出した上条たちは突如崩壊を始めた研究所をぼんやりと眺めていた。

誰も何も口にしない。

この戦いには勝者も敗者も存在しない。ただ、上条たちは徒労感を感じているだけだった。

「まぁだこんな所にいたのかよ」

そして突如投げかけれた聞き覚えの無い声。いや性格には御坂だけは知っていた。

「麦野……!」

かつて一度だけ戦ったことのある相手を前に放電する御坂。

「おいおい、こんなところで戦う気は無いわよ。であんた達は何をしてるのさ」

両手をあげ万歳をする麦野に上条が答える。

「球磨川を待ってる」

その言葉に一瞬首を傾げた麦野だったが、すぐに腹をかかえて大爆笑を始める。

麦野の姿に一同は困惑を覚えるが、麦野が言った言葉ですべてを理解した。

479 :1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga]:2011/02/07(月) 00:55:54.17 ID:12GWCCFK0




「あぁ?なにめでたいこと言ってんだよ?アイツなら死んだよ。私が殺したよ」




球磨川『学園都市?』4




posted by JOY at 10:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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