2011年05月06日

上条「ん…? サイレンの音?」5

1 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:17:10.12 ID:IlG4AtQX0

   〜ここまでのあらすじ〜

 学園都市に、赤い雨が降る。
 朱の呪いに蝕まれ、主の呪いに祟られて、変貌を遂げた人間達。
 残された者達は、ただ生き残る為、足掻き、抗う。

 忽然と姿を消した、禁書目録。
 事態を打開する切欠を探し、奔走する上条当麻。
 打ち止めを護る為、戦い続ける一方通行。
 救われぬ者達を救えなかった、神裂火織。
 禁書目録の影を追う、ステイル=マグヌス。
 幻のシアワセに包まれて微笑む、御坂美琴。

 激突する黒と白。街を焼く霹靂と劫火。禁書目録の行方。全てを救う為の選択肢。

 少年少女達の意志と行動は、絡まり合い、結びつき、やがて歪な輪を成していく。
 迎えるべき結末へ向け、終わらない物語が紡がれる。


 絶望に満ちた世界で、彼らはその最期に何を見出すのか―――――


 素晴らしい保管・まとめWiki様
 http://www44.atwiki.jp/sirenindex2/

   過去ログ
 (1つ目)
 http://ex14.vip2ch.com/news4gep/kako/1267/12675/1267543003.html
 (2つ目)
 http://ex14.vip2ch.com/news4gep/kako/1275/12751/1275155181.html

2 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:17:29.67 ID:IlG4AtQX0

 三行あらすじ

・上条当麻
 禁書目録どこー?みんなどこー?
 何か皆変になってたからSGBしたけど効果無い。
 神裂とステイル曰く禁書目録がカギだ!禁書どこー!

・禁書
 天地救之伝。
 サイレン。
 神の花嫁、呪の祭祀。

・一方通行
 打ち止めは俺が護る(キリリッ
 電気は大切にね(ビリリッ
 かんざきさんじゅうはっさい(笑)

・神裂
 一人だけ何か分かってる感じ。
 隠れ巨乳(とついでにシスコン金髪)は死んだ。
 若白髪(笑)

・ステイル
 禁書どこー?
 火葬祭り。
 超電磁砲vs魔女狩りの王。

・御坂
 黒子ォォォォッ!
 くろ……こ………
 とうまくんちゅっちゅ♪

3 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:21:34.23 ID:IlG4AtQX0


恥知らずにも……帰って……参りました……


ただただ申し訳ない、その一言です。
最早それ以外に何も言えません。何も言いません。
無用なコメントはせず、ただ粛々と書き溜めを投下していきたいと思います。

一年以上もの時間をかけて、ようやく完結しそうなこの駄文の連なり。
かつて途中まで見て頂いた方は、どうか最後までご覧頂ければ、恐悦至極、歓喜の極みです。

4 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:22:30.03 ID:IlG4AtQX0


  神裂 火織 / 23:25:29 / 第二学区



 神裂と一方通行は、向かい合う。
 二人の距離を阻むのは、尚も降り続ける赤い雨のみ。

一方通行「――――ぎ、ヒ」

 一方通行は、笑う。犬歯を剥き出しに、頬が張り裂けるほど、大きく、禍々しく、笑う。

神裂「――――」

 対する神裂は何も言わず、ただ見つめる。
 目前の敵を。排除すべき敵対象を。救われるべき『だった』少年を。


 そして、動き出す。




        終了条件1:『一方通行』から逃げる


5 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:23:01.55 ID:IlG4AtQX0

神裂「――――『七閃』」

 神裂の右手が、宙空に振るわれる。
 何も見えない、何も無い筈の空間に振るわれた手の動き、その意味を、一方通行は瞬時に感じ取った。

一方通行「ひハ」

 ひゅいん、と小さな風切り音。

 間を置かず、一方通行の立つ周囲の『赤い水』が撥ね飛び、その下の地面が音を上げて割れ砕ける。
 
 視認できない程に細く、しかしアスファルトの地面を容易に砕く程に強靭な鋼糸。
 それが、総勢七本。
 一方通行の柔肌を切り裂かんと、空を裂いて迫り来る。

神裂「……!!」

 だが勿論、そんなモノが一方通行に通じる筈も無い。
 魔術で強化された鋼糸は、まるで繊細な絹糸のように、一方通行の肌に『弾かれ』た。
 同時に、『七閃』によって抉り飛ばされた地面の欠片も、それが当然と言わんばかりに、一方通行の身体に触れた傍から跳ね飛ばされる。

 それを見て、神裂は、決して驚愕しない。
 『その程度で勝負が決まる筈がない』事は、初めから解っていた。

神裂(魔力の流れは、感じられない……まあ、当然でしょうが。
    つまり、『コレ』は……)

 この少年の持つ、異能。
 神裂達の用いる『魔術』とは異なる、もう一つの人間の可能性。

 神裂は、『超能力』に関する知識をほとんど持たない。
 元より魔術の世界にのみ生きてきた彼女には、それを理解出来るほどの余裕も無い。
 『一方通行(アクセラレータ)』――――『ベクトルの変換』という、この少年の能力も、例え説明されたところで半分も解りはしないだろう。

6 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:23:29.18 ID:IlG4AtQX0


神裂(七閃が通じない、とすれば……!)

 神裂が次の攻撃へ移ろうとした、瞬間。

一方通行「――――ヒャ、ハハハハハハハハハハハハハハハハァァァァァァ――――ッッッッ!!!!」

 さながら、海上を滑走する舟艇のように。
 狂笑を帯びた少年が、神裂目掛けて突進する。

神裂「ッ!!」

 脚力のベクトルを集中させ、抗力を逆利用し、空気摩擦、足元の赤い水の抵抗さえも自身の推進力へと転化する。
 一般人にすら劣る体力しか持たない一方通行は、しかし自らの異能を以て、聖人と同等の速度をも生み出し得る。
 その突進は音速をも凌駕する、まさに砲弾の如き勢いだ。

 しかし、聖人と同等の速度であるならば。
 聖人である神裂には、その攻撃は、決して見切れないモノではない。

 神裂を引き裂こうとするように伸ばされた少年の両腕。
 それを掴み取って、捩り折れるだけの身体能力を、神裂は有している。
 微塵の容赦もなく、冷徹に、ただ破壊するだけの覚悟も、既に出来ている。

 そして、神裂は少年の両腕を――――

神裂「が……ァッ!?」

 ――――掴め、ない。

 皮膚に触れようとした瞬間、神裂の両手指の方が、接触を拒むかのように、ねじ折れた。

7 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:23:56.15 ID:IlG4AtQX0

 神裂は直感する。少年の異能、その強大さ。
 全てを掌握し、全てを拒絶する、その能力の一端を垣間見た。

神裂「ぐ、ぅっ!!」

 否、たかだか『指が折れた程度』で、隙を見せてはならない。
 真に危険なものは、今まさに神裂へ触れようとする、その毒手。

 咄嗟、その場に屈み、両手をかわす。
 大きく空振った手は伸ばされたまま、少年は無防備に空いた腹に神裂の身体を抱え込む形となった。

 突進の勢いは失われていない。
 少年の体勢そのものは隙だらけではあるが、その『全てを弾く』身体が、神裂へと近付いて来る。
 神裂にとって絶好の機会であると同時に、未だ危機は脱し切れていないのだ。

 攻撃を阻む異能の壁。七閃を以ても破れない、絶対防壁。
 単純な打撃を、たとえ全力で打ち抜いたところで、効果がある保証は無い。
 しかし、攻撃の為の魔術式を練る間も無い。
 ならば。

 神裂は、突進してくる一方通行から飛び退き、僅かに後退して。

神裂「は、アアアアァァァッ!!!!」

 全力で、地面を殴りつけた。

8 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:24:32.23 ID:IlG4AtQX0

 轟音と共に、地が揺れる。
 まるで滝を逆流させたような、莫大な規模の水飛沫。
 アスファルトの地表が割れて、剥き出しの土が雨浸しの街路へと飛び散る。

 後には、隕石が衝突したかのような、直径十メートルほどのクレーターが出来あがった。
 クレーター内には、ざぶざぶと周囲から赤い水が入り込んでいく。

一方通行「!!?」

 突如足元を奪われた一方通行は、驚くより他に無い。
 突進の勢いが失われ、宙に在った身体が落下を始めても、足は地面を掴めない。
 結果、受身の取り方など知る由も無い一方通行は、無様にも、赤い水溜まりとなったクレーターの中へと叩き付けられた。
 無論のこと、ベクトルの反射によってダメージはおろか服の汚れ一つ無いのではあるが。

一方通行「ギ、がァァァァァァァァッ!!!!!!テめェェェェェェェェェエエエエアアアアア!!!!」

 怒りに吠える一方通行の視界に、神裂は、いない。

 地面を殴りつけた直後に、神裂は跳んでいた。
 真上、およそ三メートルほど。一方通行の、頭上に。

9 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:24:59.98 ID:IlG4AtQX0

神裂「――――抜刀、奥義――――」

 折れた指を無理矢理に動かして、腰の鞘に収められた刀を握る。
 呼吸を整え、気勢を正す。
 『場』に掛けられた呪いの圧力を逆用する魔術式も、既に構築済み。

 狙うは、首。
 触れるだけでもへし折れそうな、細く長い、白百合の茎のような、首。

 容易く何度も放つ事の出来る『技』ではない。

 この一撃で、確実に、殺す。


神裂「――――『唯閃』――――!!」


 白銀の閃光が、奔った。



10 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:25:29.29 ID:IlG4AtQX0

一方通行「――――」

 彼の素首を両断せんと襲いかかった、刀閃は。


 ――――目標を断つ事無く、弾き、飛ばされた。


神裂「そ――――ん、な」


 天使の威光をも叩き斬った刀は、白百合のような頚首を斬り裂けず。
 その白い肌に、一筋の血を這わせるだけの傷をつけただけだった。

11 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:25:57.57 ID:IlG4AtQX0

神裂「――――、」

 けれど神裂の茫然は、一瞬だけだ。

 此処は戦場。相対すは、最強の異形。
 見せつける暇など、刹那すらも有り得ない。


 血。一筋の、血。

 全霊を込めた一刀でも、たった数ミリの、小さな傷しかつけられなかった。

 しかし、ならばこそ、その傷が、その細首を呑み込んでしまうまで、斬り続ければいい――――!


神裂「唯、閃――――ッッ!!」

 更にもう一度、唯閃を放つ。先と、寸分違わず同じ場所に。
 それもやはり、ほんの僅か傷を広げただけで、同様に弾き飛ばされる。

一方通行「見ィィィィつけたァァァァァッッ!!!!」

 一方通行は、漸く頭上の神裂を発見し、嬉声を叫ぶ。
 神裂の身体は、ゆっくりと、吸い込まれるように落ちていく。
 クレーターの中に立つ、一方通行の下へ。

12 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:26:29.05 ID:IlG4AtQX0

 身体に亀裂が走るような、錯覚。
 聖人の力を『限界以上に』引き出す唯閃は、莫大な負荷をもたらす諸刃の剣だ。
 それ故の、抜刀術。一刀、決殺。

 それでも、神裂は、手を休めない。

神裂「あ、アアアアアアアァァァァァァァァァッッッッ!!!!!!」

一方通行「が、ぐ、ゥガッ!??」

 唯閃。唯閃。唯閃。唯閃。

 一方通行の首の、同じ箇所を、何度も何度も何度も斬りつける。

神裂「――――オオオオォォォォッッッッ!!!!」

 その首が落ちるまで。その首を落とすまで。
 何度も何度も何度も何度も何度も。
 血反吐を吐き散らし、内臓を捻り上げられながら、ただ、目の前の異形を殺す為に。

 小さな傷は、積み重なり、その口を次第に広げていく。
 垂れ流れる血の筋は、少しずつ太くなる。


神裂「――――!!!!!」


 しかし、事の終わりは、呆気なく訪れた。


 一方通行の首は、斬り飛ばされるまでもなく。
 神裂が、力尽きるまでも、地に着いて一方通行に捕まるまでもなく。

13 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:27:00.39 ID:IlG4AtQX0



 ただ、神裂の刀が、砕け折れただけのことだった。


 一方通行が裂かれる前に。神裂が潰れる前に。

 神裂の七天七刀が、異能と魔術の全力衝突に、耐え切れなかった。



 少し考えれば簡単な事だ。
 一方通行の『反射』は、二つの例外を除けば、絶対的な防御壁であることに異論は無い。
 核爆発だろうが原子破壊だろうが、ベクトルさえ存在する攻撃ならば、彼は全てを反射する。
 そう、『魔術』という別世界の摂理と、とある少年の『右手』を除いて。

 唯閃が一方通行に僅かとは言え傷を負わせることができたのも、それが『魔術』という、一方通行にとって未知のベクトルであったからだ。
 僅かに『反射し切れなかった』威力を、その身に受けてしまった、というだけの話。
 本来の唯閃の威力――――海を割り、山を裂くほどの威力の内の、少年の肌に数ミリの傷を付ける程度の力だけ、『反射し切れなかった』。

 しかし逆説、その『残り』の威力、その膨大な攻撃力のほとんど全てを、彼の異能――――『一方通行』は、反射して、或いは逸らしていたのだ。
 反射する先は、その攻撃の元、つまり、七天七刀。

 如何に、その刀が霊験灼たかな術式兵装とは言えど、聖人の全力を用いた一撃の威力を直接その刀身に跳ね返されて、無事で在り続けられる訳も無い。
 間隙も置かずに幾度となく痛めつけられ、結果として砕け折れてしまったのは、何ら不思議の無い、当然のことだった。


14 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:27:30.94 ID:IlG4AtQX0


 空中にあった神裂の身体が、落下を始める。
 諸手を挙げて待ち構える、一方通行の下へ。
 刀を失い、成す術も失った神裂が、落ちていく。

神裂「――――っ」

 それでも、神裂は、諦めない。

 死ぬ訳にはいかない。諦める訳にはいかない。
 ここで神裂が絶望してしまえば――――きっと、この世界にはもう、絶望しか残らない。

 それに。

一方通行「キキキカカカケカコカキキカケコケキキカココケケケククキコキカカカカカカカカカ!!!!!」

 たとえ、どう足掻いても絶望しか見えない世界だろうと。
 それでも足掻き続ける一人の少年がいる。
 だから、神裂火織は、諦めない。


 悪魔の両手が、神裂へと迫る。
 そして、その手が神裂を捉える寸前、神裂は、七天七刀の残骸を投げ捨てた。

神裂「『七閃』……!!」

 魔力を帯びた七本の鋼糸が、再び振るわれる。
 鋼糸は、まるで意志を持った生物のようにうねりながら、一方通行へと襲い掛かる。

 しかし、その攻撃が一方通行に通用しないのは、既知の事実。
 故に、神裂の狙いは、単調な直接攻撃ではなく。

一方通行「ぐガァッ!?」

 その、足元。
 一方通行が立つ、地面剥き出しのクレーターを、七閃により更に抉り崩す。
 爆ぜるように散る水飛沫と砕けた足場に気を取られ、一瞬、一方通行の視線は下方に落ちる。

15 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:28:00.94 ID:IlG4AtQX0

 神裂は僅かに躊躇い、覚悟を決めた。

 そして、体勢を崩した一方通行の顔面を、強く、蹴り飛ばす。

神裂「がッアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」

 全てを『反射』する、鉄壁の異能。
 それを蹴り飛ばしたのだから、当然のように、その威力は神裂へと跳ね返る。
 人一人程度なら、数十メートルは吹き飛ばせるであろう、聖人の一撃。

一方通行「あ、ァン?」

 一方通行が気付いた時にはもう遅い。
 神裂の身体は、『自分自身の蹴り』によって、蹴り飛ばされる。
 そしてその狙い通り、自ら弾き飛ばされることで、一方通行の魔の手から逃げ果せたのだ。

 だが、その代償は決して安くない。
 蹴りを放った右足は、悲鳴のような激痛を神裂の脳髄に訴えている。
 折れているかどうか、非常に微妙なラインではあるが、どちらにせよ暫くはまともに使えまい。

 そして、距離を取ったとは言えども、精々が数十メートル。
 一方通行の機動力の前には、ゼロにも等しい距離でしかない。

神裂「ぐ、う、おおおおおおおオオオオオッッ!!!」

 痛みを堪え、神裂は鋼糸を手繰る。
 距離が離れたこの一瞬、この瞬間を無駄にする訳にはいかない。
 綾取りのような手捌きで、神裂の周囲にとある『形』が造り上げられていく。
 
 しかし。

神裂「っが、ふぁ……!?」

 それを見透かしたかのように、神裂の全身が、『何か』に押し潰された。
 ギチギチ、と見えない何かに縛り上げられるように。

 その『攻撃』の主は、言うまでも無く、一方通行だ。
 神裂からは姿も見えない、未だクレーターの底にいるはずの、一方通行による攻撃。

16 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:28:28.37 ID:IlG4AtQX0

一方通行「ゲヒ、ひ、ひ、ひ、ひは。
       ヒハハハハハハハハハ。ハハハ。ハ。は。ハハ。は。」

 それは、『風』だ。空気の流れ。空気の、『ベクトル』操作。

 否、それだけではない。
 如何に強力な気流だろうと、ただの風だけで聖人たる神裂にダメージを与えるなど、不可能だ。

 一方通行が操作したベクトルは、『重力』。
 空気に働きかける重力――――即ち、『気圧』の操作。
 万物が生まれた時から知らず知らずに背負い続ける巨大な負荷を、何倍にも増加させたのだ。

 圧縮された大気は、神裂の全身を均等に圧し潰していく。

神裂「ぎ、ぐ、が……ぁっ、っ、っ!!!!」

 それでも神裂は、腕を振るい、指を振る。
 夥しい量の血を流し、赤い雨に打たれながら、尚も動く。


 やがて、手繰られ続けた鋼糸は、神裂を覆い囲むように、一つの空間図形を象った。

 ――――立方体。

 神学的にも重要な象徴となる、『四角形』のみで構成された立体図形だ。
 四大天使を初めとする十字教的意義、四大元素を象徴するとされる魔術的意義等々、挙げればキリがない。

 そして、この時。
 神裂がこの立方体に込めたモノは。

18 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:28:57.84 ID:IlG4AtQX0



神裂「――――その象は、『死』を齎す」



 『死』の受諾。『四』の受諾。
 『四』を迎えて。『死』を迎える。
 『死』に包まれて。『四』に包まれる。

 死に憑き。四に着く。
 ただそれだけの、何の事もない、言葉遊び。
 魔術などとは程遠いように思える、子供染みた願掛け。


 魔術には様々な理論体系が存在する。
 当然ながら『数』を利用する魔術、『言霊』を利用する魔術も、中には存在するのだ。
 故に、この『四角』という形象を用いて、『死覚』を持ち出すという魔術の形も、有り得なくは無い。

 だがしかし、鋼糸によってその場しのぎ的に形作られた立方体程度では、決して強い『意味』、即ち魔術としての必然性など持ち得ない。
 故に神裂の行使したそれは、恐らく此処でさえなければ、何の意味も持たないモノだったであろう。


 此処――――『不死の呪い』に満たされた世界でさえ、なければ。


19 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:29:23.20 ID:IlG4AtQX0



 『死』を受け入れる、ということは。

 『不死』を拒絶する、ということだ。



 然して、魔術は成された。

 神裂の周囲に溜まり溜まっていた『赤い水』が、爆音とともに、弾け散る。
 それはまるで、爆弾と化した神裂が爆発を起こしたかのようにも見えた。

 爆ぜた水粒は、竜の爪撃の如く、四囲のあらゆる物体を破砕する。
 固いアスファルトに覆われた地面でさえも抉り砕き、泥土を噴き上げる。
 雨によって湿っている空気の中でも、赤い霧と土煙が舞い漂う。

一方通行「!!??」

 その震動と衝撃は、漸くクレーターから脱出した一方通行の元にも到達し、勿論全て『反射』される。

 だが、その数秒後に、一方通行は気が付いた。
 敵の目論見に。
 『舞い上がった霧煙に姿を隠す』という、単純明快な戦法に。

20 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:29:53.98 ID:IlG4AtQX0


神裂「ここは、一旦退かせて頂きます――――」

 水と泥の煙の中、神裂の声が木霊する。

 爆発したのは、神裂の周囲の赤い水だ。爆発の中心にいた神裂も、当然無事では済んでいない。
 そもそもが、『死』を受け入れる――――『自壊』、『自爆』を意図した魔術なのだから、神裂本人が無傷では術式の意味が成立しない。
 だが、それを微塵にも感じさせない声で、神裂は一方通行に語りかける。

 一方通行は即座に『風』を操り、霧煙を吹き飛ばすが、如何せん巻き上げられた泥土が多量過ぎ、視界は未だ晴れない。

神裂「――――だが、貴方は必ず、私が殺す」

 そしてその『風』の操作は同時に、尚も続いていた『気圧』の縛めから、神裂を解き放ってしまった事に他ならない。
 それに一方通行が気付いたのは、神裂の、忌々しげな捨て台詞が聞こえた直後だった。

一方通行「ッルせェェェェェェェェェンンンだヨおォォォァァァァァ!!!!!」

 嵐のような暴風を繰り、燻っていた煙を、降り続く赤い雨諸共、根こそぎ吹き飛ばす。



 だが、もうそこに、神裂火織はいなかった。

 たださあさあと、赤い雨だけが、流れ続けていた。


21 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:30:22.85 ID:IlG4AtQX0


一方通行「――――ひ。ヒヒ。ひひひ。ひひヒヒヒ」


 道を遮る敵も、視界を遮る物も、何も無くなった街路の片隅で。

 つい十数秒前にあげた怒声も、巻き起こした烈風も、忘れ去ってしまったかのように。
 一方通行は、笑う。

一方通行「ひひヒひヒャふひゃひフフひヒひゃひヒャヒひひゃひゃ
      ひひゃヒヒひゃひフひフヒャヒゃひひヒャヒフャヒゃひゃ
      ひひふフふひふふひふヒヒひゃひヒャひフふひゃひヒ」

 笑い続ける。




        終了条件1達成(エピソードクリア)


22 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:31:39.18 ID:IlG4AtQX0


  上条 当麻 / 23:30:41 / 第一学区


 上条当麻は、辿り着いた。

 体は赤い雨に濡れ、今に気絶しそうなほど息を切らし、
 全身擦り傷切り傷打撲に覆われ、なけなしの体力を振り絞って、辿り着いた。

 崩壊を抜け、変異に抗い、嘆きを呑み、苦痛を払い、犠牲を踏み、絶望を超え、恐怖を倒し、
 ようやく、ココに辿り着いた。

 惨劇の中心。異界の深奥。混沌の原初。
 全てを終わらせる、最後のステージ。


 直径にしておよそ五メートルはある、赤い水溜まり。
 中央に立つ上条の姿が、ハッキリと、その水溜りに映し出されている。

 赤い水に創り上げられた、深紅の水鏡。
 鏡は、異界の入り口を示すシンボル。
 その赤い水鏡は、まるで煉獄の入り口のように。禍々しい深紅が、奈落の底まで続いているように見えた。

23 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:32:13.10 ID:IlG4AtQX0

 そして、その煉獄の中に。
 銀髪のシスターの姿が、上条の姿と共に、映し出されている。

 現実の上条の隣には、誰もいない。
 しかし、水鏡の中には、彼女がいる。

 禁書目録。Index-Librorum-Prohibitorum。
 十万三千冊の魔道書を手にする、一人の少女。
 世界を壊せる、一つの魔神。

 禁書目録は、何も言わない。
 淀んだ瞳で、鏡の中から上条を見つめ返してくる。


上条「――――やっぱり、お前はそこにいるんだな、インデックス」


 誰に話しかけるでもなく、上条は、一人呟いた。
 悲しそうな眼。けれど、燃えるような意志(ちから)を込めた瞳。

 上条は、右の掌を、大きく開く。


24 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:32:38.42 ID:IlG4AtQX0


上条「初めて会った時に、言ってたよな」


 ――――地獄の底まで、ついてきてくれる?

 少女は、そう言った。


上条「俺の答えは、あの時と変わらねぇ。
    地獄の底までついていくなんざ、ゴメンだよ」


 ――――地獄の底までついて行きたくなけりゃあ、地獄の底から、引きずり上げてやるしかねーよなぁ

 だから、少年は、そう思った。


 地獄のような戦いを何千回経たとしても、今日という絶望を何万回繰り返したとしても、その答えは、変わらない。

 少なくとも、今、少年がそこに立っているのは、たった一人の少女を救う為だった。

 そして、救われなかった世界の全てを救う為に。

 いつかの時と同じように、いつもの時と同じように。
 命をかけて、たった一人の少女を地獄から引きずり上げる為に、世界の全てを救う為に、上条当麻は立っている。
 それはきっと、どちらを優先するべきという事も無く、その少年の中で、二つは同じ事なのだろう。

 禁書目録を救う。世界を救う。理由も無く、信念も無く。
 ただ、上条当麻は、救いたいと思うから。命を懸けて救う価値があると思うから。


25 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:33:07.46 ID:IlG4AtQX0

 上条は、開いた右手を、赤い水鏡に叩きつけた。
 水鏡はまるでガラスのように、バギン、と音を立てて、砕け散る。

 砕けた水鏡の奥に広がっているのは、赤い世界。煉獄のインフェルノ。

 上条は右手を強く握りしめ、その煉獄へと堕ちていく。

 インデックスを救う為に。この惨劇の幻想を、打ち壊す為に。

26 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:35:39.43 ID:IlG4AtQX0

今日の分、ここまで。続きは明日、必ず投げます。
以下、おまけ。


登場しなかった超能力者(レベル5)の末路一覧

第2位
→原作通り、未元物質製造機として順調に活動していたが、
  第二学区の停電の際、余波を受けて生命維持装置が停止。
  誰にも気付かれずひっそり死亡。
  赤い水の影響を全く受けておらず、屍人化することはなかった。

第4位
→『アイテム』勢と共に奮闘するも、
  最終的に屍人化した浜面・絹旗の攻撃から、滝壺を庇って死亡。
  屍人化後、滝壺も自分の手でブチ殺して、皆で仲良くやってます。

第5位
→屍人化した人間の精神に感応し続ける内に、それらに共鳴するように呪いに蝕まれる。
  赤い水の危険性が理解できた頃には、既にその精神は崩壊寸前。
  その後間もなく、屍人化。赤い水の影響ではなく、精神感応により呪いに触れ続けてしまったことが原因。

第7位
→偶々、事件発生時に学園都市外へと出ていた為、今回の事件には無関係。
  全てが終わった後、超大規模地盤沈下により土砂まみれの廃墟と化した学園都市跡地に、一人、帰還する。

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) [sage]:2011/04/19(火) 20:37:20.71 ID:p/xJI3Bn0
乙!ずっと待ってた!
ていとくんww

29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/19(火) 20:40:59.81 ID:wyzHdLqGo
ずっと待ってた
削板さん…根性で何とかしてくださいよ…
ていとくん何してるんすかwwwwwwww

上条さんて記憶喪失じゃなかったけ?

30 :◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/19(火) 20:47:43.22 ID:IlG4AtQX0
>>29


あっ


(´;ω;`)ブワッ

ここに来て痛恨……
しかも超初歩的な設定ド忘れ……

すいません。許してください。
地獄云々だけ無かった事にしてあげるか、もしくはノリで言っちゃったんだね、みたいな目で見てあげてください。

39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/19(火) 23:46:54.97 ID:SuI1d46SO
そぎー次作の主人公フラグじゃね?

50 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:03:43.91 ID:4yKkTVSq0


  上条 当麻 / 23:30:25 / いんふぇるの



 ――――気が付くと、上条当麻は其処にいた。

 地獄のように紅く、天国のように朱い、異界の中に。

上条「此処は……」

 足元には、どこまでも続く草原。
 所々に点在する三角錐形の岩のような物体を除けば、視界を遮るものは見当たらない。
 三百六十度、どの方向を見渡しても、地平線まで見通せる。

 頭上には、曇天の空。
 赤く染まった雲が、今にも落ちてきそうなくらい、不穏な模様を描いて浮かんでいた。

上条「……ああ、そうか。そういうコト、か」

 何かを納得し飲み下すように、頷きながらひとりごちる。

 彼は、思い出す。
 此処が何処なのか。どうして自分が、此処にいるのか。

      ・ ・ ・ ・ ・ ・
 自分が何をしたのか。
           ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 自分は此処で、何をすべきなのか。


51 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:04:18.77 ID:4yKkTVSq0


 そして。

上条「――――また、会えたな。インデックス」

 目の前に凝然と佇立する、少女を見る。

 少女と、その胸に抱えられた、『首』を、見る。

禁書「――――」

 彼女もまた、虚ろな瞳のまま、上条を見返す。
 『首』もまた、無機質な瞳で、上条を見つめる。

上条「今度こそ、絶対に、救けてやるから」

 改めて、その覚悟を口にする。
 すると不思議に、上条の全身に力が漲った気がした。
 錯覚に過ぎないと解っていても、上条にはそれが有難く思えた。

 上条当麻は、この少女を、この世界を、救わなければならないのだ。
 例え何があろうとも。

 そう、その為に、彼は――――


52 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:04:47.06 ID:4yKkTVSq0


禁書「――――ォ、ォ」


 その時初めて、ひたすらに沈黙を保っていた禁書目録の口が、厳かに開かれた。


禁書「――――ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ―――」


 それは、始まりを告げる音。

 サイレンのような、咆哮。

 その音は、世界を揺らすように。

 少女の口から。

 少女が、その両手に抱えた、『首』の造形物から。

 鳴り響く。啼き喚く。


 上条当麻は、右手を握る。

上条「来いよ、禁書目録(インデックス)。
    お前も、『呪い』も、この世界も、そのサイレンも。
    こんなふざけた幻想、全てまとめて――――」

 神浄討魔は、右手を握る。


上条「――――俺のこの手で、ぶち殺してやる――――!!」



        終了条件1:『禁書目録』を倒す



53 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:05:16.40 ID:4yKkTVSq0


 禁書目録は咆哮する。
 その小さな口から、この世全ての呪怨を吐き出すように。

上条「インデェェェェェェェェェェェェェェェェェェックスゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!!!」

 己を鼓舞するかのように雄叫びを上げて、上条は走り出す。
 立ち尽くす禁書目録の下へ。

 狙いは、禁書目録が胸に抱えた、『首』。

 理由は無い。理由は無いが、上条はそれが、その『首』こそが、真に打破すべきモノである事を直感していた。
 全てを壊す為の、要の楔。
 それが恐らく、あの首だ。

 一体、それが何であるのか、どのような魔術的意味を持つのか、何も分からない。
 だが。

上条(どんなモノだろうが関係無ぇ――――俺の右手で、ぶち壊す!!)

 上条は走る。

 しかしそれを、禁書目録が拒絶する。

禁書「ォォォォォオオオオオオオオオオオォォォォゥゥゥゥゥゥォォォォォオオウウウウウゥゥ」

 鳴り続けるサイレンの音に、僅かな変化が起きた。
 歌のトーンを変えるように、禁書目録の声がうねる。

 魔術――――それも恐らくこの異界でのみ通用する、異形の魔術、だったのだろう。

 駆ける上条の足元の地面が、突如塔のように隆起して、上条の身体を貫こうと襲い掛かる。

54 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:05:57.09 ID:4yKkTVSq0

上条「ッッ!!」

 無論、その攻撃は『幻想殺し』が掻き消す。
 突き上げる土の塔に右手が触れた瞬間、塔は弾けるように崩れ去った。

 上条の脚は止まらない。
 更に、禁書目録へと迫っていく。

禁書「ゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウゥゥォォォォォオォウウウウゥゥゥゥォォォオオオオオ」

 サイレンの音は更に調子を変えて、異界の摂理を歪めていく。
 空間がガラスのような音を立てて歪み、罅割れる。
 しかしその歪みも罅割れも、『幻想殺し』は全て打ち殺す。

 音を立てて壊れていく異界を背景に、上条は走る。
 その脚を止める事は、出来ない。

 もうあと数歩で、禁書目録に手が届く距離だ。


禁書「オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
    オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
    オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
    オオオオオオオオオオオオオオウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
    ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ」

 一際大きなサイレンと共に、禁書目録の目がカッと見開かれる。

 空間の歪みは、最高潮に達している。
 今にも、異界そのものが崩れて無くなってしまいそうな程に。

禁書「ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
    アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
    アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
    アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 禁書目録は、己の全てを、世界の全てを絞り出すように、吠えた。
 その呪いは形を成し――――禁断の魔術へと、昇華する。

55 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:06:38.78 ID:4yKkTVSq0


 バキィン、と鋭い音がして、彼女の目の前の空間に、巨大な亀裂が現れた。


上条「――――っ!!!」

 その亀裂に、上条は見覚えがない。
 『今の上条』にとって、それは初めて目にする魔術である。

 しかし、上条の身体が、そこに刻まれた本能が、その亀裂に、強大な危険を感じ取っていた。

上条(亀裂の中に、『何か』いる……!!)

 裂けた空間の向こう側。自分たちの知る世界でも、異形の住まう異界でもない、何処か。
 その向こうに座す、想像及ぶべくもない、『何か』が、上条を、見ていた。

 瞬間。
 巨大な光の柱が、亀裂の中から放たれた。

上条「ッッ!!!??」

 上条は咄嗟に右手を突き出し、その光を打ち消そうとする。
 だが。

上条「打ち……消せない……っ!?」

 光の柱と『幻想殺し』は、互いに拮抗したまま、動かない。
 柱の勢いに押され、上条の足が初めて止まった。


 『堕辰の殺息(ドラゴンブレス)』。

 呪を帯びた竜の咆哮。
 全てを殺し、全てを壊す、禍つ魂の波。


56 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:07:12.28 ID:4yKkTVSq0


上条「ぐ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!!」

 目一杯に右手を押し込むが、光の柱には打ち勝てそうにも無い。

 同時に、上条の体力にも限界が見え始めていた。
 ギリギリと、波が右手へめり込んでいく。

 それでも、上条当麻は諦めない。

上条「この、程度で」

 光の向こう側。
 そこからでは見えない少女の姿を、頭に描く。

 いつも隣にいた彼女の顔を。
 虚ろな目をした彼女の顔を。

 とても大切な、彼女の顔を。

上条「絶望してられねーんだよオオオオオオオオォォォォォッッ!!!」

 バチィィッ!!と、火花が散るような音。
 上条は、迫る光の柱を『かわして』、柱の右側面へと躍り出た。
 上条の右側、十数センチスレスレを、抑えを失くした光の柱が貫いていく。


 『堕辰の殺息』と『幻想殺し』が拮抗しているというのなら、少なくとも『幻想殺し』をかざす間は、直接光を受ける事は無い。
 押し飛ばされそうな圧力を耐えつつ、あえて『横』へと移動する事で射線を外したのだ。


57 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:07:55.68 ID:4yKkTVSq0


 だが勿論、こんなものは、ただ一瞬攻撃を凌いだだけに過ぎない。
 狙いが外れていることを知った禁書目録は、間髪置かずに、光柱を真横に薙ぎ払おうとするが……

上条「遅いッ!!」

 そこで再び、『幻想殺し』に阻まれる。
 斜め前方に突き出された右手が、しかと光柱の攻撃を防いでいた。

 そして同時に、上条は光柱から離れ、禁書目録へと近付くように、斜方に走る。

 一度逃れても、再び照準を合わされれば、結局は同じ事の繰り返し。
 故に、禁書目録が照準を定められぬように、横軸への動きを入れつつ、近付く。

 しかし、身体全体で回避する上条とは違い、『堕辰の殺息』は禁書目録の顔向きだけで照準を合わせる事ができる。
 ほんの数秒もあれば、再び正面に捉えられることは間違いない。

 だが、その数秒の猶予を、上条は与えない。

 元より、『堕辰の殺息』が放たれた時点で、歩数にして二、三歩ほどの距離しかなかったのだ。

 ――――既に上条の拳は、禁書目録へ届く位置にある。


上条「――――これで、終わるんだな」


 力を込めて、大きく一歩、踏み込む。
 禁書目録の懐へ。
 上条は覚えていない、いつかの時と同じように。

 そして、その右手に、ありったけの力を込めて。

 『首』を、殴り飛ばした。

58 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:09:41.25 ID:4yKkTVSq0

 首は大きく宙を舞い、そのまま空中で弾け散った。

 まるで空気を入れ過ぎた風船のようだ、と益体も無い事を上条は思う。


 サイレンの咆哮は止み、世界の綻びが少しずつ修復されていく。
 禁書目録は、目を見開いたまま、身動き一つしない。

上条「――――」

 上条の膝が、ゆっくりと地に付いた。

 力は出し切った。全てやり切った。

       ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 これで、自分のした事は無駄ではなかった――――そう、言えるだろうか。

 そんなことを考えながら、禁書目録を見る。

 呆然と、ただその場に立ち尽くす、少女の顔。


59 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:10:15.15 ID:4yKkTVSq0



 それが、突然。

 ギョロリ、と。
         ・・・・
 禁書目録の目が、裏返った。



60 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:11:37.69 ID:4yKkTVSq0


上条「え――――?」


禁書「オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
    オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
    オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
    オオオオオオオオオオオオオオウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
    ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ」


 上条の驚きは、いつのまにか再び現出した『堕辰の殺息』に塗り潰される。

 再び歪み始める世界。再び鳴り響くサイレン。


 気付けば、目の前には既に、光の波が迫っていて。

 もう、遅い。




 ――――上条当麻は、その右手だけを残して、跡形も無く消滅した。



        終了条件1達成(エピソードクリア)



61 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:17:58.45 ID:4yKkTVSq0



                        →Continue to the last(first) loop......



62 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:21:29.18 ID:4yKkTVSq0
アーカイブ

・『堕辰子(だたつし)の首』
異形の神、『堕辰子』の頭部。異変の根源。
魔術的な力は全く感じず、幻想殺しにも反応しなかったが、『もう一人の禁書目録』が手に入れた事により、本来の力を取り戻す。
前日の夜、上条が第七学区の道端で拾って持ち帰った。

63 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:23:17.45 ID:4yKkTVSq0


  禁書目録 / 0:00:00 / 第七学区



 異形の神。堕ちた魚。
 この世の理を超ゆるモノ。闇那基の欠片。
 終わらない世界。繰り返す絶望。
 全てを呪う呪い。総てを祟る祟り。

 サイレンの音。堕辰子の声。



 ―――ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ―――



       サ イレ  ン    ガ  キコ    エル      ――――



 『それ』は、世界を丸ごと包み込むようにけたたましく、少女の頭の中に鳴り響いていた。

 少女の頭の中にだけ、鳴り響いていた。

64 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:23:49.16 ID:4yKkTVSq0


 学園都市、第七学区。
 上条当麻の住まう、安アパートの一室で。
 イギリス清教の誇る魔道図書館『禁書目録』は、一人、その『音』を聴いていた。

 その『音』に、蝕まれていた。



 ―――ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ―――



 ――――『天地救之伝』と呼ばれる、一冊の『原典』がある。

 それは一冊の『邪本』であり、一冊の『聖典』であり、一冊の『魔道書』であり――――、一冊の『絵日記』である。
 始まりと終わり、アルファとオメガ、因と果を記した物語。
 人ならざる者の肉を食み、常世の呪いを受けた一人の少女が綴った、物語。

 巡り廻る世界の反復を経て、その呪の書は、今、一人の少女の記憶に封じられている。
 その他十万と三千の魔本と共に、禁書目録に綴じられている。

 それは、ただそこに在るだけでは、何の異常も異能も持たない『原典』。

 しかしその『原典』は、正にたった今、その本来の『呪い』を解き放っていた。
 上条当麻が、何気なく『拾って』きた、とあるモノに、呼び起こされるように。


65 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:24:39.14 ID:4yKkTVSq0


 十万三千冊の原典を収める『禁書目録』という特異。
 十字教の『信仰』と言う名の防壁。
 それらは、決して弱くない。

 しかしそれらを以てしても尚、その呪いを、その祟りを、抑え込むことは出来なかった。


 禁書目録は。
 十万三千冊の汚濁をその内に抱えた魔神は。

 たった一冊の『原典』により、その精神を完膚なきまでに殺し尽くされた。
 たった一匹の『神』により、その全てを絡め取られ、祟り尽くされた。


 禁書目録の目には、もう何も映らない。
 何も感じない。何も想わない。何も言わない。何も聞かない。何も、できない。


 いつかどこかで、一人の少女が願った。
 絶望を繰り返し、悲劇に生き続けた少女は。
 ただ一つの目的を、たった一つの目的を、果たす為だけに。
 『彼女』の願いは―――――。



 ―――― コ ■  呪 ■    ヲ       解  ■  テ 。



66 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:25:07.05 ID:4yKkTVSq0


 全てはこれより動き出す。

 形を得た呪いは世界を歪め、終わらない物語が始まっていく。

 神の花嫁にして呪の祭祀。インデックス。
 捧げられた神体。首。
 異形の住まう街。学園都市。

 その全てが、まるで仕組まれていたかのように作用して、原初の呪いを再現する。

 人を変貌させる、赤い水。
 神の成り損ない、屍人。
 街中に鳴り響く、サイレン。
 永遠に廻る、円環の世界。

 ――――――、堕辰子。



 
 ―――ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ―――



 そして、サイレンの音が―――――


67 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/20(水) 18:26:20.18 ID:4yKkTVSq0
ここまで。
今日中にもう一つ……いけるか……?

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/20(水) 19:22:38.40 ID:S/Z8H3FbP

戻ってきてたのか久しぶりだなおいまた寝つきが悪くなるな
さらっとアイテムのその後書いたけど登場の予定無しか

しかし削板の紹介で元の学園都市に対する影響出てて地味にネタバレになってる気が

79 :◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/21(木) 13:58:53.16 ID:pl1RQQST0
>>69
多分本編ではその辺りを書く事は無いと思うので問題無しです。


時々質問があった、その他の主要人物の末路

アレイスター・クロウリー、エイワス
→詳細不明。
  存在次元座標が不明確な彼等が、果たしてこの異世界に取り込まれていたのかどうかも、分からない。

  →(隠しシナリオ)■■■ / --:--:-- / 虚無

浜面仕上
→超能力者第4位の項も参照。
  『アイテム』総出で徹底抗戦の構えを示していたが、屍人達の物量攻撃に押され、絹旗が負傷。
  その絹旗と二人で別行動中に絹旗屍人化。屍人化した絹旗を殺す事が出来ず、あえなく殺害される。
  後に、別行動していた麦野と滝壺を襲撃。皆仲良くぱらいそ状態。

冥土返し
→大挙して押し寄せる屍人の群から逃げる為、病院の地下施設へ。
  赤い水の呪いを解明しようとするが、時間が足りず、やがて『妹達』の襲撃に遭う。
  彼女らに殺されること、そして屍人として甦ることを拒否し、特殊な薬物を用いて自身の身体を隈なく溶解・液状化させ、自殺。

『グループ』
→結標:全てが狂った世界に絶望、能力を用いて自殺。
  エツァリ:屍人化した妹達に包囲され、殺害される。

風斬氷華
→能力者の屍人化によるAIM拡散力場の変質、そして『場』にかけられた呪いの圧力により、存在が崩壊。


122 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:29:12.51 ID:v+B69Ny90



  上条 当麻 / 20:54:30 / 第二学区



        終了条件2:『御坂美琴』を倒す


 上空から撃ち下ろされる無数の雷撃。
 一般人なら、一撃受けただけでも即昏倒は免れ得ない威力はある電撃だが、
 しかしそれらは、一つたりとも、放たれた目標へと直撃することはない。

 上条当麻の『幻想殺し』と、ステイル=マグヌスのルーン魔術によって、命中する以前に掻き消されてしまうのだから。

上条「ステイル、頼みがある」

 上条当麻は、空中の『敵』を、御坂美琴を見つめながら、傍らに立つステイルに話しかける。

上条「――――コイツは、俺に任せてくれ」

 上条の表情に、先程までの捨て鉢の風はない。
 何処か悲しげで、けれど、強い覚悟を湛えた顔だ。

ステイル「…………」

 ステイルとしては、それは承服し難い頼みだ。

 目の前の化物が、上条当麻の元友人であった事は、先程の上条の咆哮を見ても容易に窺い知れる。
 となれば、その友人相手に、このお人好しの少年が果たして『殺し合い』を演じ切れるのかどうか。

 ステイルは、神裂の言葉を思い出す。
 異界を脱出する為の手がかりになりうるかも知れない、『幻想殺し』という特異。
 それを、むざむざとこの場で失うような真似は、出来ない。


 そして何より、『かつての友人を己の手で傷付ける』という行為が。
 どれ程残酷な物であるか、ステイルは知っている。


123 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:29:37.43 ID:v+B69Ny90

ステイル「だが……」


上条「ステイルッ!!!!」


 驚くほどの大声で、上条が叫ぶ。
 咄嗟の事に、ステイルは、何も言えなくなった。

上条「……頼む……!」

 二人が話している間にも、上空からの攻撃は続いている。
 魂を失った御坂美琴は、容赦の欠片もなく、上条達を殺そうとする。

上条「アイツは……俺が、止めたいんだ」

 上条の言葉に、偽りの色は無い。

 上条当麻と御坂美琴の関係性は、ステイルには分からない。
 否。きっとそれは、当の二人以外にはさっぱり分からない類のモノだろう。

 友人のようであり、他人のようであり、競敵のようであり、恋人のようでもある。

 そんな御坂美琴を、もう戻ってこない御坂美琴を、上条は信じ続ける。

 必ず元に戻してやる、と誓ったのだ。


124 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:30:50.11 ID:v+B69Ny90

ステイル「……ああ、いいだろう。なら、此処は任せたぞ、幻想殺し」

 ステイルはそう言って、中空を飛行する御坂に背を向けて、走り出した。

ステイル「僕はこの屍人達の『指令塔』を探しだす! お前は、この電撃使いの相手をしていろ!」

 神裂から『頭脳屍人(ブレイン)』なるモノの存在は聞いている。
 それを倒せば、変異体となった屍人達は動きを止めるらしい。
 ルーンによる周囲探索魔術を使えば、精々が十数分で居場所を突き止められるだろう。

御坂「…………」

 御坂は、走り去っていくステイルの後を追おうとはしない。

 四対の複眼を宿したその顔は、ハッキリと、上条当麻にだけ、向けられている。

上条「――――御坂、美琴」

 上条は、名前を呼ぶ。
 無駄とは知りつつも、ほんの少しでも、何か言葉を返してくれないだろうか、と希望を抱きながら。

御坂「…………」

 しかし、返ってきたのは、殺意と敵意。
 電撃の槍が、砂鉄の剣が、上条へと襲い掛かってきては、幻想殺しによって粉々に砕かれていく。

 上条は、それを見て。
 今度こそ、覚悟を決めた。


 そして、その場から、走って逃げ出した。


126 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:31:57.29 ID:v+B69Ny90

御坂「!!!」

 御坂は慌てて上条の背へと雷撃を放つが、上条は振り向きもせずにその雷撃を打ち消した。
 そして、逃げる。全力で、後ろを振り返る事無く。

御坂「ク、アアアアアアアアアアアァォォォォォッ」

 一声、獣のような甲高い声を上げて、御坂は上条の後を追いかけ始めた。


127 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:33:43.25 ID:v+B69Ny90



上条「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ」

 上条は、荒れる呼吸を必死に抑えつけながら、走っていく。
 『目的の場所』へ。先程見かけた、あの場所へ。

 恐らく、御坂は上条の後ろを追ってきているだろう。
 だが上条は、建物の陰を巧みに利用して、身を隠しながら移動している。
 単純に電撃を放っても当たらない上に、上手くいけば完全に見失わせる事も出来る。
 路地裏で不良たちを相手に喧嘩していた上条だからこその、逃亡術である。


 当の御坂美琴はと言えば、上条の姿を精一杯追いかけている、という訳では無かった。
 空を飛んで、一直線に、ゆっくりと移動している。
 それは、『どうあっても最後には追い詰める事が出来る』という余裕なのか、それとも別の思惑があるのか。

 御坂は、じっくりと、袋小路に獲物を追いこむ猫のように、移動していく。


128 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:35:38.24 ID:v+B69Ny90


 そして数分後。
 建物の合間を縫う路地裏ばかりだった通り道に、変化があった。

 視界の開けた広場のような場所に、御坂は辿り着いた。
 上条の姿は見えない。

 目の前には、巨大な『送電塔』がある。
 インフラ設備の発達した学園都市では非常に珍しい建物だが、高度百メートル超のこの鉄塔が、第二学区近辺の送電システムの中枢を担っているのだ。
 もっとも、自分一人で『電気』を生み出せる御坂には、どうでもいいモノなのかもしれないが。

 御坂は周囲を見回す。
 やはり、上条は見当たらない。

 だが、その存在は、間違いなく『感じる』。
 あと数秒ほどで、おおよその位置も特定できそうだ。


 御坂美琴は、AIM拡散力場をソナー波のように反響させる事で、周囲の物体を探知できる、という副産物的能力を持っている。
 通常なら、その探知はあくまでも物体の『外形』や『動き』だけを探知するものであり、詳細な判別まで出来るほどの精度はない。

 しかし、こと上条当麻に関しては、話が違う。

 上条当麻は、幻想殺しによってAIM拡散力場を打ち消しながら行動する。
 それは逆に言えば、『AIM拡散力場の反射が無い地点』即ち『上条当麻の居場所』、という事実に繋がる。

 上条は知るべくもない事だが、生前の御坂美琴が上条との遭遇率を上げる為、無意識の内にその事実を理解し、利用していたのだ。
 故に御坂は、『上条当麻の居場所』は、『何となく』分かってしまうのである。

 AIM拡散力場がどうこう、という理論的な解釈など必要としない。
 ただ肌に覚えた感覚だけで、御坂は上条をどこまでも追い続ける事が出来る。
 それは、屍人になっても変わらない。
 御坂美琴は、屍人になった今でも、ツンツン頭の少年の事を覚えているのだから。


129 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:36:10.33 ID:v+B69Ny90



 その時。

 ――――ガクンッ、と。

御坂「ッッ!!??」

 危なげなく飛行していた御坂の身体が、突然大きく揺らぐ。
 いきなり全身に重りを乗せられたような、ガクンと身体が落ちる感覚。
 慌てて体勢を立て直そうとするが、上手くいかない。

 それもそのはずだった。
 御坂の身体は、ガッチリと捕らえられていたのだから。


 御坂の『真上』から落ちてきた、上条当麻によって。


上条「――――捕まえたぜ、御坂」


 上条は、両手で御坂の身体を掴んで、背負われるようにして空を飛んでいた。

 それを振り解こうと暴れる御坂は、全く訳が分からないままである。
 後を追っていた筈の上条当麻が、唐突に空から落ちてきて、御坂を捕らえてしまったのだから。

130 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:37:38.09 ID:v+B69Ny90

上条「バカとケムリは高いトコが好き、ってなぁ!」

 御坂がまともな思考能力を有したままだったなら、当然のように理解できていた筈だ。

 上条は、地上高百メートルはあろうという『送電塔』を利用して、御坂に急襲を仕掛けた。
 脇に設置されていた点検用エレベーターを用いて、御坂の飛行高度のおよそ十メートルほど上へと移動。
 御坂が近付いてきたタイミングを見計らって、狙いを定めて飛び込んだのである。

 御坂の身体を掴むことに失敗すれば、当然のように墜落死するだけだ。
 空を飛ぶ人間を、その上空から飛び降りて捕まえる、と言うとまるで神懸り的な行為にも思えるが、実はそうでもない。

 御坂はAIM拡散力場によるソナー探知を行っていた影響もあり、ゆったりとした速度で、直線的に移動していた。
 具体的には、『上条の存在を感じた方向へ、ゆっくりと身体を動かしていた』のだ。
 つまり、有る程度までは御坂の方から上条へと向かって来てくれる上に、ゆっくりと動くものだから、その狙いも付けやすい。
 上条の行動は、決して成功率の高いモノとは言えないが、それでも奇跡と呼ぶほどに実現性の低いモノでもなかったのだ。

 勿論、上条は全て計算ずくで行動している訳ではない。
 御坂のAIM探知の原理も知らない上に、屍人の行動パターンを見切っているというワケでもない。
 ただ単純に、上条は己の直感だけを信じて、命を投げ出したのだ。
 それが結果として、御坂美琴の捕捉を可能とする道であったというだけの話だ。


御坂「シイイイイイアアアアアアアアアア!!!!!」

 バタバタと暴れる御坂だが、元々上条に抑えられている上に、空中で体勢も不安定なものだから、中々上手く振り解けない。

 肝心の電撃能力で上条を攻撃しようとしても――――

上条「無駄だぜ、御坂。俺の右手がお前の身体に触れている以上、お前は自分の身体から放電する事はできない」

 ――――幻想殺しに、阻まれる。

131 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:38:14.48 ID:v+B69Ny90

御坂「――――!」

 上条は、右手で御坂の身体を掴んだまま、左手で、御坂の頭を思い切り打ちつける。
 グラリ、と御坂の身体が揺らいで、高度が落ちる。

 だが、まだ御坂は倒れない。
 上条は、再び拳を振りかぶる。

上条「御、坂アアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」

御坂「ギ、イィィィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

 ズガン、とまた一撃。
 上条の拳は、確実に御坂の意識を削ぎ落とす。


 それでも御坂は、まだ止まらない。
 『超電磁砲(レールガン)』の力は、こんなモノではない、と示しつけるように。


 御坂の身体から発せられる電撃は、幻想殺しに砕かれる。
 ならば、御坂の身体以外の場所から発生する電撃ならば。

 天から落ちてくる、雷ならば。

 この状態からでも、上条当麻に、攻撃できる。

 ゴロゴロ、と不穏な空気がいつのまにか周囲に立ちこめている。
 元より、雨雲はこの学園都市全体を覆っているのだから、それを雷雲と化すことは容易い。
 本来の御坂美琴の能力ならば、晴天時であっても関係なく雷鳴を轟かす事が出来るのだから。
 多少の劣化はあれど、この状況であれば、雷を操る事はそう難しい話ではない。

132 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:38:56.37 ID:v+B69Ny90

上条「…………!」

 その時既に、上条は、落雷攻撃を予見していた。
 何せ、事あるごとに勝負を挑まれ、一方的に攻撃され続けてきたのだ。
 御坂美琴の戦い方など、嫌というほど熟知している。

 上条が幻想殺しを使って雷を防げば、その瞬間自由になる御坂の身体から電撃が放たれる。
 雷を防がなければ、当然のように感電死の結末しか無い。


 しかし上条は、そんなことに構いなく、拳に力を込める。
 幻想殺しは、御坂から手放さないままに。


 上条には、解っていた。

 だからこそ、『此処』へと誘き寄せたのだ。

133 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:40:30.95 ID:v+B69Ny90



 そして、遂に。
 学園都市中に響き渡る程の轟音と閃光を伴って。

 稲妻が、奔った。




 瞬間、上条の世界が白く染まり、あらゆる音が消失する。

 落雷の衝撃はそれほどに凄まじい。
 有る程度慣れているとは言えど、やはりそう何度も受けたいモノではない。

 そんなどうでもいい事を考えながら、上条は緩んだ拳を握り直す。

134 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:41:01.20 ID:v+B69Ny90


 ――――上条は、まったくの無傷なままで、御坂の背を掴んでいた。


 雷は、上条と御坂の下へ落ちる事は無く、そのすぐ傍に落ちていた。

 すぐ傍にあった、『送電塔』に。


 『地上高百メートル以上はある鉄塔』。

 それがつまり、そのまま避雷針の役割を果たした、というだけである。
 落雷は、上条と御坂の下へではなく。
 すぐ傍に在った鉄塔へと誘導され、そのまま地面へと伝わって拡散してしまった。
 
 恐らく、雷の直撃を受けた送電塔は機能停止してしまっているだろうが、それも今は関係の無い話だ。


 本来ならば、御坂美琴は、避雷針など無視して落雷の位置を強引に定める事が出来る。
 だが、それはあくまでも御坂美琴が万全の状態だった時の話。

 屍人化による演算能力の低下。
 上条の拘束による肉体的負荷。
 幻想殺しによる誘電能力の妨害。
 これらの状況下で、むしろよくぞ落雷を具象化出来た、という点を褒めるべきだろう。

 『超電磁砲』は、腐っても超能力者第三位である、というだけの事だった。


135 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:41:42.95 ID:v+B69Ny90


 もう御坂に打つ手は残されていない。
 あとは上条が止めを刺すだけだ。

上条「――――」

 上条は、御坂の顔を見る。
 変わってしまった、どうしようもなく変わってしまった顔を、目に焼き付ける。

上条「――――必ず――――」

 再び、その言葉を口にする。
 そうすることで、許してもらえるなどとは思わないが、それでも。
 ただ、上条当麻は、御坂美琴を救いたいと思うから。

 その言葉を、その誓いを、決して忘れない。



 そして、最後の一撃を、その後頭部に叩き込んだ。





        終了条件2達成(エピソードクリア)


136 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:42:11.22 ID:v+B69Ny90




ステイル「…………」

 ステイルは、呆然と立ち尽くしていた。

 ようやく見つけた、頭脳屍人の目の前で。

 隙だらけの恰好で、最早何も目に入らぬとでもいうような表情で。

 『彼女』の変わり切った姿を、見ていた。


ステイル「…………は」

 そして。

ステイル「は、はは。はは。は。ははははは。ははははははははっ」

 狂ったように、笑いだす。


ステイル「クソくらえだ、神サマ。貴方の愛した世界は、こんなにも絶望に溢れてるじゃないか」

 何かを悟った様な顔で、ぼそりと呟いた。
 その呟きも、雨音に紛れて消えていく。


 ステイルの右手に握ったルーンを記すカードから、炎柱が生み出される。
 摂氏数千度の炎は、人間であれ人外であれ、一瞬で焼き尽くす劫火の剣だ。

 それを、大きく上段に構えて。

ステイル「――――さようなら。もう二度と、その顔は見たくない」

 振り下ろす。


 正真正銘の化物になった、月詠小萌の頭へと。


137 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/24(日) 23:51:33.20 ID:v+B69Ny90
以上。
一番初めの神裂シナリオの時にちまっと張った送電塔フラグ回収。

あと多分6シナリオくらいで終了の予感。
頑張ります。

141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/25(月) 00:48:23.15 ID:PG7lNquA0
おお…
上条さんいつにも増してアクティブだ!美琴…ご冥福を。
あぁ、あと6個のシナリオで終わりかぁ…。
アイテムの成れの果てとかちょっと気になる…。

142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/04/25(月) 17:19:54.65 ID:fnzWfiV/0
このSSのおかげで、
友達を大事にしよう。そう思った俺がいる。

144 :◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:10:33.13 ID:qQqqSV/f0



  一方通行 / 21:33:20 / 第二学区



 第二学区内にある、『警備員(アンチスキル)』の訓練所の中。
 一人の人間が、戦っていた。
 多勢の屍人達を相手取り、たった一人で、抗っていた。


一方通行「ク、ソッタレエェェェェェェェェェェッッッ!!!」


 彼の名は『一方通行(アクセラレータ)』。
 あらゆる攻撃を弾き返し、あらゆる防壁を打ち破る、最強の能力者。

 しかし彼は今、この日始まって以来、最大の危機に直面していた。
 正に鬼気迫る形相で、ひたすらに襲い来る屍人達を薙ぎ払う。
 いつもの余裕と狂気を湛えた笑みも、そこには見られない。

 その戦況だけを見れば、何の危機も感じられない、一方通行の圧勝にしか見えない。
 消耗戦、或いは消化試合とすら言える程に、屍人達が一方通行を打倒し得る余地は一片も見当たらない。

一方通行「後から後から群がってきてンじゃねェぞオラアァッッ!!」

 しかし、一方通行は焦っている。
 恐れている。
 最強たる彼の、たった一つの懸案事項に。

145 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:10:58.70 ID:qQqqSV/f0


一方通行「『充電』、できねェェェだろォォォォォがァァァァァァァァッッッ!!!」


 数十分前、一方通行は、手近な建物内に這入り込んで、チョーカー型電極の充電を行おうとした。
 しかし、それは容易く失敗に終わってしまった。

 何故か、どの建物の、どの電源を使っても、電極を充電する事が出来ない。

 そこで初めて、一方通行は気が付いた。
 少なくとも第二学区の全域、もしかするとその近辺まで含め、一切の電力供給が停止している事に。

 原因は解らないが、恐らくこの混乱の中で送電関係のシステムに異常が出たのだろう。
 記憶によれば、第二学区には旧時代さながらの『送電塔』があるという話だったが……


 この『警備員』の訓練所内には、自家発電による電力供給を行っているフロアがある。
 何とか、そのフロアまで辿り着けば、充電は出来るのだ。
 しかし、雪崩のように押し寄せる屍人達が、それを許してはくれない。

 バッテリーの充電中は、電極を使う事は出来ない。即ち、その間は完全な無防備状態に陥ってしまうのだ。
 故に、追ってくる屍人達を完全に倒し切って、少なくとも一時間程度、安全な時間を確保しなければならない。


146 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:11:25.20 ID:qQqqSV/f0


一方通行「邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ死に損ない共オオオオオオオォォォォォォッ!!!!!」

 一方通行は、惜しげも無く能力を使って、周囲に集る屍人達を吹き飛ばす。
 吹き荒れる暴風。絶対防御の反射壁。鉄塊の如き拳撃。
 それらは全て、時間制限付きの、限定的な『最強』状態の成せる業である。

 惜しげも無く、という表現は正しくない。
 より正確に言えば、一方通行は出し惜しむほどの余裕も無い。
 屍人の群れの圧倒的な物量は、並大抵の能力者では太刀打ち出来ないレベルの戦力である。
 それは、一方通行の凶悪な頭脳と戦闘スキルを以てしても、能力無しでは決して無事でいられない程に。


 ――――そして何より、彼の背後には、『打ち止め(ラストオーダー)』がいる。


 今も尚、少女は眠り続けている。玉のような汗を流して、僅かに呻き声をあげながら。




        終了条件:『打ち止め』を護り抜く



147 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:14:59.83 ID:qQqqSV/f0



 殺す。殺す。殺す殺す殺す。殺す殺す殺す殺す殺す。

 肢体を抉る。屍体を殺す。死体を壊す。
 目に写る全ての敵を、耳に響く全ての唸りを、消し尽くす。

 超威力の打撃。
 飛来する弾丸、異能の全反射。
 地面を抉り出す土砂飛礫。
 体液逆流を用いた人体破壊。
 気流操作による竜巻。
 高電離気体(プラズマ)の生成。

 己の考え得るありとあらゆる殺戮方法を。
 己の持ち得るありとあらゆる破壊方法を。

 ただただひたすらに、群がる屍を、集う死体を、壊して殺す。

 見る見るうちに砕かれ裂かれ、倒れていく屍人達。
 一方通行達の居る建物も、当然無事では無い。
 フロアの天井は半ばまで砕かれ、窓ガラスは例外無く粉砕し、床も壁も傷が無い場所を探す方が難しい有様だ。

 それでも、一方通行は暴れ続ける。壊し続け、殺し続ける。

 大切な少女を護る為、絶対に、護り切る為に。


 一方通行の暴虐の嵐のただ中で、ただ一人、打ち止めだけが眠っていた。


 ――――その呻きと、苦しみの表情が消えている事に、一方通行は、まだ気付いていない。

148 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:15:28.49 ID:qQqqSV/f0



 そしてようやく。
 周囲の居た無数の屍人達の全てを、一体の『捕り逃し』無く、殺し終えた。

 数百体はいたであろう屍人の群を、たった一人で、殺し尽くした。

 ちょうど、その時。

 ピピッ、と小さく無機質な電子音が鳴った。

 身体から、力が消える。
 そのまま、一方通行は身体のバランスを保てず、その場に崩れ落ちた。

 電極のバッテリーが、切れたのだ。

一方通行「――――」

 運動能力も、言語能力も、思考能力も失った一方通行は、築き上げられた屍体の山の中で、芋虫のように這い蹲った。

 言葉にならない呻きをあげながら、一方通行は屍体の間を這って移動する。
 向かう先は、決まっている。
 電極の充電よりも、この場からの離脱よりも、何よりも優先して、

 一方通行は、少女の下へ、這っていく。


149 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:15:55.33 ID:qQqqSV/f0


 しかし、意外な事に、それほどの時間もかけず、一方通行は這うのを止めてしまった。

 打ち止めが、立っていた。
 惨めに地を這う自分の、すぐ目の前に。

 汗に濡れた髪がしだれて表情は見えないが、間違いなく、彼女自身の足で、立っている。


 それを見て、一方通行は、大きく安堵した。


 ――――護り切った。

 打ち止めを。
 一方通行にとって、何よりも大切な、一人の少女を。

 彼は、護り切ったのだ。



        終了条件達成(エピソードクリア)



150 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:16:23.71 ID:qQqqSV/f0



一方通行「……っ…………っ……」

 言葉は出ない。
 しかし、ズルズルと地を這って、打ち止めの下へ行く。

 手の届く距離まで辿り着くと、左足に力を込めて、一方通行は立ち上がった。

 そして、目の前の小さな躯を、抱き締めた。
 強く、強く、抱き寄せた。

 打ち止めは、何も言わない。
 一方通行も、何も言わない。

 ほんの数秒、静かな時間が、二人の間を流れていく。



 その静寂を破ったのは、少年の呻き声だった。


一方通行「――――ア、ァ?」


151 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:16:51.00 ID:qQqqSV/f0




 一方通行の腹部に、刃物が、突き刺さっていた。




 言語能力を失った彼は、目の前の事実に、ただ疑問の呻きをあげるしかない。

 何故、何が、誰が、何時。
 そういった疑問を、何一つ言葉にできず、一方通行は、ドサリと床に倒れる。

 『ベクトル反射』という異能の壁を失っている以上、ただの包丁さえあれば、一方通行を殺す事は出来る。
 そして、今この場で、『敵のいなくなった』この場所で、そんな事が出来るのは、ただ一人だけ。



 ――――打ち止めは、何も言わず、血で汚れた砂鉄のナイフを、握り締めている。



152 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:17:18.72 ID:qQqqSV/f0


一方通行「ア…………ア……」


 無残に、無様に、悲惨に、凄惨に、一方通行は己から溢れ出した血の海へと、体を沈める。

 その顔には。
 驚愕と、悲壮と、絶望と――――そして、ほんの少しだけの安堵。


 自分がどうなろうと。

 他人がどうなろうと。

 ――――打ち止めさえ、無事でいるなら、それで良い。

 その顔は、そう言いたげな、そんな顔だった。


 斯くして、少年は少女を護り抜き。
 そして、護り抜いた少女に、殺された。

 少女は、赤く染まった顔に笑みを浮かべ、少年の死を喜んだ。

 少年が、『此方側』へと、足を踏み入れる事を、喜んだ。


 少女と少年は、苦しみの無い世界で、悲しみの無い世界で、生きていく。

 久遠の生と永久の安らぎを得て、二人一緒にいつまでも、生きていく。


153 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:17:55.12 ID:qQqqSV/f0


  ステイル=マグヌス / 22:18:51 / 第二学区


 ステイル=マグヌスは、曲がりなりにも『必要悪の教会(ネセサリウス)』の一因を任せられた、天才魔術師である。
 弱冠十四歳にして、現存する二十四のルーンを完全に解析し、更に新たな力有るルーンを六つも開発した才能の持ち主だ。

 そして、『必要悪の教会』――――『対魔術師』を目的とする、イギリス清教第零聖堂特区。
 そこに属するということは、つまり『魔術師殺し』を任務とする、戦闘のエキスパートでもある、ということ。
 特にステイルは、ルーンを用いた多彩な炎魔術、切り札でもある教皇級魔術『魔女狩りの王(イノケンティウス)』、その他様々な戦闘補助の術式も使う、万能型の魔術師だ。

 一度は、あの『幻想殺し(イマジンブレイカー)』をも追い込んだほどの魔術師。
 自己に満足せず堕落せず、研鑽を重ね、磨き上げてきた、力の結晶。

 例え、この街に蔓延る屍人が、銃器と異能を携えた不死の化物であったとしても、遅れを取るとは思えない。

 『我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)』という魔法名の通り。
 それほどに、ステイル=マグヌスは、強大な魔術師だ。



 しかし。
 世界は広い。上には上がいる。

 学園都市には、そんなちっぽけな規格を遥かに超えるた人外が、存在する。


154 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:18:20.57 ID:qQqqSV/f0


ステイル「――――何、だ、コレは」

 それはまるで、黒い嵐のようだった。

 その『何か』が触れた途端、『魔女狩りの王』が粉々に砕け散る。
 再生しようとする炎を、さらに覆い包むように黒の奔流が襲う。
 ズタズタに引き裂かれた『魔女狩りの王』は、完全に抑え込まれてしまった。

 その『黒色』を薙ぎ払おうとした炎剣は、まるで煙で出来た剣のように霧散してしまう。
 摂氏三千度の炎を更に超える、異形のオーラ。

 まるで話にならない。
 途方も無い、力の質の差。

155 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:18:53.10 ID:qQqqSV/f0


 そして。

 黒い嵐の向こうから。
 その力の主が、姿を現した。


 雪のように白く染まった髪。
 血のように赤く染まった瞳。

 年の瀬は10代後半だろう。
 一般的な男性と比べてもさほど高くない身長と、幼さを残す顔立ちが見て取れる。
 だがその顔も、狂気に彩られ、美しい赤色に浸されていた。
 目からは血を垂れ流し、口からは狂ったような笑みが零れている。

 ステイルは、その少年を知らない。
 知っていれば、その場から逃げ出していただろうか。少なくとも、戦おうとは、しなかっただろうか。


 それは、学園都市二百三十万の頂点、超能力者(レベル5)第一位。
 『一方通行(アクセラレータ)』と名付けられた、最強の一。


156 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:19:18.83 ID:qQqqSV/f0


 彼は今、屍人と化し、化物と化していた。

 黒の翼を操り、全ての形有る物を無に帰す、化物に。

一方通行「く、ひ。ひひひ。ひ。ひひひひ。ひひひひ。ひひ。」

 化物は、化物らしく、気の触れそうな声で、笑った。

 異能の黒嵐を背負い、世界の闇を引き摺って、一歩ずつ、ステイルへと近付いてくる。


ステイル「く……ッ!!」

 大規模な魔術を構築する余裕は無い。
 即時発動できる炎剣魔術で迎撃し、その後体勢を立て直す。
 ステイルは、咄嗟にそう考え、己の懐から、ルーンを描いたカードを数枚取り出す。


 けれど、『カードを懐から取り出す』という、それだけの動作ですら、眼前の化物にとっては遅過ぎる。


一方通行「――――fkjlas死vhdhnfr」


 一瞬、ノイズのような音が聞こえて。

157 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:19:44.47 ID:qQqqSV/f0





 視界が。


 真っ黒に。


 染まった。




158 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:20:21.44 ID:qQqqSV/f0


 ステイルが目を開けると、暗く淀んだ曇天の空だけが見えた。

 どうやら、仰向けに倒れているらしい。
 身体は、動かない。上半身も、下半身も、感覚を失ったかのように、ピクリとも反応しない。
 先程まで身体全体に漲っていた魔力も、最早雀の涙ほどしか感じ取れなかった。

 黒翼の化物は、どこかへ消えていた。
 この状態なら、止めなど刺しても刺さなくとも同じだ、と思ったのか。
 そして実際、そうなのだろう。

 ステイルは、ゆっくりと目だけ動かして、自分の身体を見る。


 ステイルの身体は、上下二つに引き裂かれていた。

 ビニール袋を破いたように、力任せに断裂させられていた。


 夥しい量の血液と、惨たらしく潰れた内臓が、べちゃべちゃとだらしなく腹からはみ出している。
 消化器系が裂けてしまったのか、汚物のような匂いが酷い。

 だが、それらも全て、赤い雨に流されていく。
 流されて、消えていく。

159 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:20:48.24 ID:qQqqSV/f0


ステイル(――――ああ、死ぬのか)

 何の疑いもなく、自然に、そう思った。
 思わざるを、えなかった。

ステイル(それなら、せめて、最後に――――)


 ぺちゃり。

 足音がした。ステイルの、すぐ傍で。

 ステイルは声を上げる力も無く、目だけを動かして、その来訪者を見る。


 そこには。

 聖母のような笑みを浮かべた、『禁書目録(インデックス)』が、立っていた。

160 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:21:15.33 ID:qQqqSV/f0


ステイル「――――」


 ステイルは、声も出ず。
 倒れ伏したまま、少女を見上げる。

 いつ現れたのか、どこから現れたのか。
 今まで何をしていたのか、今何をしようとしているのか。
 聞きたい事は山ほどあったが、ステイルにそれを尋ねるだけの力はもう残っていない。

 呆然と立っている少女を、呆然と倒れたまま見上げるだけしか、できない。


 赤い雨が、止め処なく零れていくステイルの血を洗い流していく。
 血液と同時に、自分の命も流れ出していくような錯覚。いや、実際に、命そのものが失われていることに違いは無い。
 もうあと数分を待たず、ステイルの魂はこの世から離れていく事だろう。

 赤い雨は、少女と少年の間を分つように、さあさあと降り続ける。
 少年は、何も言えない。少女は、何も言わない。

 神々しくすらある、その美しい顔と、流れるような銀の髪。
 身に着けられたフードとローブは、赤い雨に染まり、本来の純白はもうほとんど見えていない。

161 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:21:45.52 ID:qQqqSV/f0


 そこで、ふと、違和感があった。


ステイル「……?」


 何かは分からない。
 けれど、何かが、おかしい。
 そんな気が、した。

 ステイルはその違和感について考えようとしたが、止めた。
 恐らく、考えてすぐに分かるようなモノでもない。

 それよりも、今はただ――――この聖女に、見惚れていたかった。

162 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:22:25.21 ID:qQqqSV/f0


禁書「………………」

 禁書目録は、何も言わず、すたすたと歩いて来て。
 ステイルの傍らに落ちている『それ』を、ゆっくりと拾い上げた。

ステイル「ぁ…………ぅ」

 それは、ステイルが上条当麻の部屋で手に入れて、持ち歩き続けていた物。


 ――――『首』の、造形物(オブジェ)。


 先の黒翼の一撃を受けた際、ステイルの懐から転がり落ちたモノだった。

 ステイルは知らない。
 その『首』が、一体どのような存在のモノであるのかということを。
 その『首』が、この異界にとって、この異変において、どれほど重要なモノであるのかということを。



 禁書目録は、丁重に、慎重に、その『首』を胸に抱え込む。

 そしてようやく、にっこりと笑った。

ステイル「――――っ」

 その笑顔は、美しかった。

 死に際のステイルが、残り僅かな寿命を、更に縮めてしまうくらいに。
 まるで人間の顔とは思えない、妖艶な美しさ。

163 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:22:52.39 ID:qQqqSV/f0


 その笑顔を目蓋の裏に焼きつけたまま、ステイルは目を閉じる。

 もう、指一本動かす力も残っていない。
 恐らく、数秒後には呼吸も止まり、心臓も止まるだろう。
 閉じた瞳も、自ら閉じたと言うよりは、力尽きて自然に閉じられた、と言った方が正しい。


 それでも、最後に残った僅かな時間、彼は最後の祈りを、最後の感謝を、天に捧げる。
 心から祈った事も、感謝した事も無い、クソッタレの神サマに、今更ながら、本当の意味で祈りを捧げる。

 祈る事も、感謝する事も、決まっている。

 ステイル=マグヌスの全ては、一人の少女の為にあるのだから。



 ――――僕が最後に目にするのが、僕の最後を目にするのが、この子で良かった。



 神に、感謝を。

 少女に、祝福を。



 そうして、ステイル=マグヌスは、静かに息を引き取った。



164 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:23:43.52 ID:qQqqSV/f0


  神裂 火織 / 23:25:29 / 第二学区



 神裂と一方通行は、向かい合う。
 二人の距離を阻むのは、尚も降り続ける赤い雨のみ。

一方通行「――――ぎ、ヒ」

 一方通行は、笑う。犬歯を剥き出しに、頬が張り裂けるほど、大きく、禍々しく、笑う。

神裂「――――」

 対する神裂は何も言わず、ただ見つめる。
 目前の敵を。排除すべき敵対象を。救われるべき『だった』少年を。


 神裂は知る由も無いが、一方通行の能力――『ベクトル変換』――は、既に失われていた。
 今の彼には、世界を把握し演算し尽くす程の力も、それを援けてくれるモノも無い。
 学園都市最強の能力者は、今や只の動く屍同然だった。


 しかし神裂は、ただじっと、様子を窺うしかなかった。

 例えその事実――――能力の喪失を知っていたとしても、そうする他無いだろう。
 そもそも神裂は、『一方通行』を知らない。その存在、能力、何もかも。
 つまり、神裂が何もせず黙ったままで一方通行を見据えているのは、その力の恐ろしさを知っている為ではなく。

 ただ彼女の中の『何か』が、目の前に立ち塞がる異形に、畏れを抱いていたからだ。

 何の力も持たない痩せ細った少年に。『神の使い』にすら正面切って相対した聖人が。
 自ずから動きをかけられないと思う程の、畏れを抱いている。


 そして数秒後に、その畏れが間違いではない事を、神裂は目の当たりにする。

165 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:24:11.40 ID:qQqqSV/f0


一方通行「――――…………thgsllk死jhfds打js止k」


 何かを、呟いた声。
 『聖人』の並はずれた聴覚でなければ聞き取れないような、か細い、ノイズのような、音。


 直後。


一方通行「ォ、アアアアアアアアアアアアアォォォォオオォォォォォォ!!!!!!!!!!!」

 咆哮と共に。


 ―――――白い異形の背から、黒い異能の翼が飛び出した。





        終了条件2:『一方通行』を倒す



166 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:24:42.82 ID:qQqqSV/f0


 それは、堕ちた天使のような、宵の漆黒。

 黒翼は爆発的に周囲へと広がっていき、激突した物を例外無く吹き飛ばす。
 強化耐震内骨格を持つ高層ビルが、まるで砂城のように崩される。

 異能と呼ぶ事すらも、恐れ多い。
 それは紛う事無く、神威(テンシ)にも匹する、天上の力。
 ただの人間が扱うには強大過ぎる、異界の摂理。


 翼は、固形として生えているのではなく、何らかの力が噴射して形作られているようだ。
 黒い邪気の塊は、『天使の力(テレズマ)』と比べても何ら遜色無いほどの力に満ちていた。
 まるで、己が内に溜まっていた闇を噴き出すかのように、轟々と空にうねりを作っている。

 それはまるで、嵐のようだった。
 全てを無に帰す、黒い、嵐。

167 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:25:09.57 ID:qQqqSV/f0

 神裂の身体が、ひとりでに打ち震える。

 一方通行の力に対する畏怖から来るものではない。
 その震えは、神裂自身が、その内から溢れ出さんとする力を抑え込もうとする震え。

神裂「――――ぉ」

 神裂は、黒翼の威光をただ黙って見守っていた訳ではない。
 それは、充填時間。
 『聖人』の身体機能を目覚めさせ、己の全てを戦闘用へと造り変える為の。

 腰を低く、脚を広げ、足裏で地を掴む。
 体軸を固定、関節支点を意識下に、駆動系を掌握する。
 眼(マナコ)は敵へ、殺気は内へ、気魂は鞘へ。

 それは、居合の立ち。

 ―――――『唯閃』の、構え。


神裂「おおおおおおおおおオオオオオオオォォォォォォァァァァァァァァァァッ!!!!」

 押し込めていた呼吸と共に、全身に溜め込んだ力を全て解放する。
 全身、全霊、全速、全力の抜刀。全を一へと練り上げた、唯一至高の抜刀戦闘術、『唯閃』。
 銀紅に輝る刀身は、一条の光と化して、黒翼へと襲来する。

168 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:25:36.38 ID:qQqqSV/f0

 斬、と切断音。

 カタチのない力の塊である黒翼。
 しかし元より『唯閃』は、『そういったモノ』を斬る事に特化した術式だ。
 為す術も無く斬り落とされた黒翼は、一方通行という手綱から切り離され、霧のように空へと溶けて消えていく。

 だが、落とされた翼は一枚のみ。
 かの屍人の背には、まだ黒翼がもう一枚――――

一方通行「ヒ、ハ」

 ――――もう一枚、だけではなかった。

 数十枚の黒翼が、いつの間にか、その背中から生えている。
 その全てが、先ほどと同じく、触れる事すら恐ろしい程の気に満ちている。

 神裂はそれを見て――――しかし何ら動揺することなく、再び刀を振るう。

神裂「ふ……ッ!」

 唯閃。
 更に一枚、黒翼が落とされる。
 勿論、黒翼とて只斬られる為に在る訳ではない。。

一方通行「ヒヒヒハハハハハッヒハハヒアハヒハハッヒヒヒヒヒヒヒヒハハハハハハ!!!!!」

 狂笑と共に、今まで一方通行の背で留まっていた黒翼が、一斉に神裂へと襲いかかった。
 音速をも超えた速度で、無数に枝分かれした翼が神裂へ飛来する。
 触れれば死。余波だけでも、四肢をもぎ取るには充分過ぎる。

169 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:26:11.41 ID:qQqqSV/f0

 しかし神裂は。
 その音速の翼を、神速の刀を以て、凌駕する。

神裂「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッ!!!!!!」

 斬。斬斬斬。斬斬斬斬斬斬斬――――。
 あらゆる角度で襲いかかる黒翼を、一歩も動かないまま、全て迎え撃つ。

 降り注ぐ黒槍の雨。断ち刻む銀の閃光。
 舗装ごと地盤が抉れ、黒嵐の余波が街を圧し潰す。
 二人の周囲の建物は、今にも全て崩れ落ちそうなほどに戦慄き、震動している。


神裂「―――――…………ッ」

 神裂の口から、血が一筋、垂れ落ちた。

 一度刀を振るう度、神裂の筋肉は音を立てて断裂し、骨は軋んで罅を付ける。
 内臓は迫り上がって血反吐を湛え、全身の活力は段々と失せていく。

 元より唯閃は、人の身には余る力を十二分に引き出し、振るう為の術式だ。
 抜刀居合の形式を取っているのも、『一撃必殺』が使用の原則であり、絶対条件だという理由がある。
 その唯閃を息つく暇も無い程に連発すれば、『たかが聖人』でしかない神裂の身体が崩壊するのは、当然の帰結でしかない。

 『聖人』でしかない神裂と、学園都市最強最高の能力者『一方通行』との絶対格差。
 それは、神裂の予感以上に大きく、圧倒的な格差であった。

 黒の槍衾と、銀の弾幕。二つの力は、鬩ぎ合うように拮抗を保ち続ける。
 だが、その力の主である二人は、対照的に、神裂は既に全身から血を噴き出す重傷体、一方通行はほとんど無傷である。
 屍人化している一方通行は、多少の傷は瞬く間に治癒し、体力の限界も無いのだ。

 時間をかければかけるだけ、神裂の勝機は限りなく小さくなっていく。

170 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:26:37.63 ID:qQqqSV/f0


神裂「は―――――ふ……ッ!!」

 一際力強く刀を振るい、迫っていた黒翼をまとめて弾き返す。
 僅かに生まれたその隙に、神裂は即座に跳躍し、その場を離脱した。


 これ以上、正面切ってあの翼と打ち合うのは不可能だ。
 かつて、サーシャ=クロイツェフに宿った『神の力』と対峙した時と似た状況。

 しかし、あの時と決定的に違うのは、この少年を『倒さなければ』、『勝てない』、ということ。

 仲間を信じ、時間を稼いでいれば『勝てた』、あの時とは違う。


 神裂が跳んだ直後、数瞬前まで神裂の身体があった場所は、黒翼によりその地盤ごと抉り取られ、破壊し尽くされていた。

 改めて、黒翼の脅威を確認する。
 アレには、欠片とて触れる事は許されない。

 神裂は手近なビルの側面へと『着地』する。
 だが。

神裂「く……っ!!」

 その後を追いかけて、黒翼が襲い掛かる。
 回避を選択した神裂に、迎撃の準備は出来ていない。
 間一髪のところで、再び跳躍し、また別のビルディングへと跳び移る。

 狙いを外され、ビルに打ち付けられた黒翼は、優に五十階層はあろうかというビルを呆気なく砕き折り、崩落させた。
 そして尚も、獲物に喰らいつく猟犬のように、神裂を追ってくる。
171 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:27:07.29 ID:qQqqSV/f0

 神裂はビルからビルへと跳び移り、黒翼をかわし続ける。
 その都度その都度、高層ビル群は積木の塔のように、叩き壊され、崩れ去っていく。
 傍目からは核弾頭でも爆発したかと思われるような、膨大な量の土砂が舞い上がり、赤い水が津波のように周囲へと流れ出る。


 神裂とて、ただ逃げ続けるワケではない。
 ただ逃げ続けるワケにはいかないのだ。
 この少年を『倒す』事が、本来の目的なのだから。


 近辺のビルを粗方崩し尽くして、最後に一つ残った超高層ビルに脚を掛けた神裂は、渾身の力を込めて、上空へと跳び上がった。
 一方通行の、黒い嵐の中心の、ちょうど真上に位置するように。

 これでもう、後戻りはできない。


 雨。赤い雨。
 神裂の身体を濡らす、血のように赤い、呪の滴。

 ほんの数瞬。神裂は、宙空で動きを止める。

 この雨を止められるのは、この呪いを祓えるのは、きっと、『彼』だけだから。
 私は此処で、命を懸けて、この異形を倒す。異形と『彼』が出会ってしまう前に。

 きっと、それが、神裂火織の役割なのだろう。


172 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:27:36.63 ID:qQqqSV/f0

 そして神裂は、ウインクするように、パチリと左眼を閉じて、地上の一方通行を見定めた。
 おおよそ、直上の位置へと身体を運ぶ事が出来ている。

 ――――あとは、墜ちるだけ。

 神裂の身体が、ゆっくりと重力に流される。
 下へ、下へ。諸手を挙げて待ち構える、一方通行の下へ。

 ダァンッ!!と何もない空間に、地を蹴るような音が響く。
 神裂は更に加速する。墜ちていく。

 高度およそ三百メートル。
 特殊な空間移動術を用い、『空を蹴った』神裂は、流星の如く、一方通行へと突き進む。

 傍目から見ても、そのまま狙い撃ってくれと言わんばかりの、無謀な突貫。
 当然、一方通行がみすみす見逃す筈も無い。
 数え切れないほどの黒翼が、空中の神裂を突き殺さんと殺到する。

神裂「おおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォッッッッ!!!!」

 その無数の黒翼を、無限の刀閃が抑え込む。

 とうに限界を迎えている神裂の身体は、その限界を超え、尚も刀を振るう。

 斬り、払い、裂き、打ち、流し、いなし、薙ぎ、逸らし。
 黒の嵐の中、流星は速度を落とすこともなく、ただ一直線に突き進む。

173 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:28:06.26 ID:qQqqSV/f0

一方通行「くかきけこかかきくけききこけききくくくキキカキクコククケクカキクコケクケクキクキコキクコカ─────ッ!!」

 高度、百メートル。

 この異界の夜闇を丸ごとその背に抱え、怪物は笑っていた。
 嬉しそうに、楽しそうに、歪な笑顔で。

 神裂とは、まるで正反対。
 眼を血走らせ、体中から血を噴き出し、死に物狂いの形相を湛えた神裂とは。

神裂「――――ッ!!!」

 声は枯れた。
 肉は裂けた。
 骨は砕けた。

 それでも、意識だけは手放さない。刀だけは、手放さない。

 肉薄する黒の槍を、一つ残らず叩き斬る。
 直撃すれば、否、掠るだけでも致命傷は免れ得ない、黒禍の翼。


174 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:28:35.12 ID:qQqqSV/f0


一方通行「ク、カ」

 高度、五十メートル。

 あと、少し。あと少しだ。
 もうあと少しだけ近付けば。
 墜ちる勢いと、残る全ての力を使い、あの異形を両断する事が出来る。

 一方通行と神裂との空間を阻む黒翼を斬り払い、その上で一方通行自身に致命傷を与える事の出来る、射程距離。
 あと僅かに一秒ほど、近付く事が出来れば。
 神裂の、勝ちだ。


 けれどその一秒は、決して許されない猶予だった。

一方通行「カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカkkkkカカカカカカカ
       カカカカカカカカカカカカkkkkkkkkkkkkカカカカカカカカカカkカカカカ
       カカカカカカカカkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkk」


 其処から先は、一方通行。

 ――――侵入する事は、許されない。


 神裂の周囲を取り囲むように襲い掛かっていた、黒翼。
 その全てから、数え切れないほどの全てから。
 薔薇の茎から突き出た棘の様に。大樹の幹から分かれた枝葉の様に。
 新たな無数の黒翼が突き出して、神裂を襲った。

175 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:29:02.78 ID:qQqqSV/f0

神裂「ッッ!!!!」

 熱く滾る意識を、更に強く、更に鋭く。
 眼前の事象を認識し、眼前の攻撃を掌握する。

 その右眼に視る黒翼の、その左眼で観る黒翼の。
 僅かでも威力の浅い層目掛けて、身体を投げ出すように、飛び込んでいく。

 見開いた右眼に捉えた、黒翼―――既に黒塊と言った方が適切か―――の、針の穴ほどの間隙。
 その隙間を唯閃で抉じ開け、己の体を躍らせる。
 漆黒の暴風雨の中を、更に遠く、更に深く、潜り込む。墜ちていく。

 1秒を100万に分割する程の圧縮された意識。
 1ミリを100万に切断する程の集中された身体操作。

 神裂の身体は、その瞬間、聖人という領域を遥かに超えた高みへと達していた。



 しかしその力を以てしても、限界を超えた限界を以てしても――――

 ――――黒の怪物には、『一方通行』には、届かない。


176 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:29:37.80 ID:qQqqSV/f0


 ざくり、と音がしたような気がした。

 聞こえる筈の無い音だ。
 それは恐らく神裂が、その目で見た光景から想像した音を、幻聴しただけだったのだろう。


 ほんの、ひとかけら。
 ほんの、一本の、細い黒翼が。

 神裂の右腕に突き刺さる。


 ――――たったそれだけで、神裂の右肩口から先が、根こそぎ消し飛んだ。


177 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:30:05.42 ID:qQqqSV/f0

神裂「――――」


 神裂は声も無く、半ば忘我の中で、その光景を見た。

 右腕がなければ、唯閃は使えない。


 唯閃は、抜刀術を原理とする戦闘術式だ。
 特殊な予備動作、鞘走を必要とする、剣術の極意。

 片腕での抜刀術も、勿論存在はする。
 存在はするのだが、それは例えば小太刀を用いた抜刀であったり、下半身と体幹を利用した高等技術の産物であったりする。

 加えて、神裂が失くしたのは、刀を差した腰と逆の側――――つまり、刀を抜く為の腕。
 それを失った上、空中の不安定な体勢で、七尺の刀身を持つ野太刀を用いた抜刀術など、限りなく不可能に近い。
 否――――今この瞬間に限るならば、それは、絶対に不可能だ。


 故に、勝敗は此処に確定した。
 神裂は己の武器を失い、残らず粉微塵になって、墜ち逝くだけ。

 墜ち逝くだけ、の筈だった。


178 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:30:32.49 ID:qQqqSV/f0


神裂「――――ああ、残念でしたね」


 それなのに。
 神裂の眼は、まだ死んでいない。


神裂「せめて、頭を粉微塵(コナゴナ)にしていたのなら、貴方の勝利は揺るがなかったのに」


 歌でも歌うように、そう告げたかと思うと。

 神裂の腕が、右腕が、失くなった筈の右腕が。


 ぞぶり、と。
 身体の内側から、肉を押し上げるように、再生した。



神裂「腕を一本落としたぐらいでは、何の支障にもならないんですよ。
    私は良く知っています。
                 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
    何せ、朝からずっと、こういうモノ達と戦い続けていたんですから―――――!!」


179 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:31:01.08 ID:qQqqSV/f0


 失った筈の右腕が、刀を掴む。
 ギチリ、と握られた刀の柄。フゥ、と紡がれる呼気。
 張り裂けそうな程に見開かれた右眼が、一方通行を射抜く。

 気が付けば、神裂と一方通行の距離は、二十メートルほどに縮まっている。
 それは、充分過ぎるほど、射程距離の圏内だ。
 唯閃の、射程距離。


一方通行「ケ――――」

神裂「遅いッッ!!」


 残る黒翼が神裂に襲い掛るよりも速く。
 残る黒翼が一方通行を護るよりも迅く。


神裂「――――唯、閃――――!!」

 昏い夜闇の空を斬り。赤い雨の滴を裂き。
 無限の黒禍を断ち。無量の黒嵐を刻み。

 刃が奔る。

 黒銀の刃が、奔る!


180 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:31:41.73 ID:qQqqSV/f0



 唯、一閃――――その一刀は、異形の首を両断した。




 其は、七つの天を抜く、七尺の刀。


 其は、神を裂く、熾天(セラフ)の剣。


181 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:32:15.32 ID:qQqqSV/f0


 一方通行の切り離された頭部が、地面に転がり落ちるのと同時。

 グチャッ、と醜い音と共に、神裂の身体は地面に叩き付けられた。


神裂「が……は、ァ……ッ!」

 骨格や筋肉は元より、内臓の大半も落下の衝撃に耐えきれず圧潰してしまっている。
 脳髄や神経系にも重大なダメージが残っているのは間違いない。

 しかし、そのダメージも、次第に治っていく。
 治る筈の無い傷も、痛みも、嘘のように消えていく。

 神裂の身体に刻み込まれたダメージ全て。
 赤い雨に打たれ続ける神裂の、異形と化した身体に残るダメージは、全て、消えていく。

神裂「――――ヒ、トの身に、及ばぬ、程の、『聖人』の身ですら及ばぬ程の、異形の力」

 赤い雨は、降り続く。
 全てを洗い流すように、ざあざあと、降り続く。

神裂「それに、力、及ばせる為に、は――――私自身が、異形に、化わるしかない」

 神裂の目から、つぅー、と一筋、赤い滴が垂れた。

 口の端から、さらに一筋。
 涙のような赤い滴は、零れた傍から、赤い雨と混ざって見えなくなった。

182 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:33:39.23 ID:qQqqSV/f0

神裂「例え、もう二度と、戻れなくとも。
    例え、もう二度と、笑えなくとも。
    例え、もう二度と、泣けなくとも。
    例え、もう二度と、彼らに会えなくとも。
    例え、もう二度と、あの場所に、帰れなくとも」

 人を捨て、心を棄てても。
 ただ、この一方通行という異形を破壊する為だけに。

神裂「ただ、この瞬間だけ。
    貴方を斬り伏せる力が必要だった。
    でなければ――――」

 でなければ、どうなっていたのか。
 分からない。
 それでも、何故か、どうしても、『それ』が必要なのだ、と神裂は直感していた。

 この場で、この時に、この白髪の少年を打ち倒す事は。
 この絶望を終わらせる為に、皆を救う為に――――『世界の結末』を迎える為に――――必要不可欠の、条件だったのだと。



 赤い雨。
 倒れ伏す異形が、二つ。

 勝敗はここに決し、因果の輪は繋ぎ直された。
 最後の『条件』を達し、物語は結末へと収束する。



        終了条件2達成(エピソードクリア)



183 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:34:12.03 ID:qQqqSV/f0


 暫しの後、傷を完治させた神裂は、ゆっくりと立ち上がった。
 黒く煌めく七天七刀を拾い上げ、ツカツカと、一方通行の屍体へと近付く。

 見事に斬り断たれた首は、もう暫くは再生する事もないだろう。
 だが。


神裂「――――」


 神裂は、その脚で。
 落ちていたアタマを、ぐしゃりと踏み潰した。


 何も、言わず。
 それが当然のように。

 続けて、肩。腕。胴体。脚。
 ぐしゃり。ぐちゃり。ぐしゃり。ぐちゃり。
 踏み、潰し、踏み、潰す。

 聖人の脚力で踏み砕かれた骨は粉々になって飛散した。
 潰れた脳漿は、赤い雨に混じって見えなくなる。
 時折、足裏に付着した肉片を払い除けるように、神裂は軽く足を振るう。


 神裂の脚が止まった頃には、かつて少年だった肉の欠片は、その半分ほどが雨に流されて何処かへ消えていた。


 これで、この屍人が再び立ち上がるには、全身を丸ごと再生させなければならない。
 しかし、聖人のように『身体構造そのものが違う』ならばまだしも、あくまでも人間の範疇を生きていた少年に、
 数時間程度で全身を再構成する能力が備わるとも思えない。

 つまりは、この白髪の悪魔の脅威は、ほぼ完全に無くなったと見ていいだろう。
 神裂は静かに胸を撫で下ろす。

184 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:34:40.34 ID:qQqqSV/f0

 その時、走り寄ってくる気配に、神裂は気が付いた。
 異形の気配。
 即座に斬り殺そうと刀を構えるが、その屍人の姿に、思わず手を止める。

 今まで、崩れたビルの瓦礫の中で隠れて見ていたのか、小さな、少女の姿の屍人だった。
 年齢にしておよそ十歳ほどの、愛らしい少女。
 顔から赤い涙を流す、化物の少女。

打ち止め「――――ア、ァァ、クセラ、レェタ」

 神裂にとっては全く意味の分からない言葉を呟きながら、少女は少年の屍体へ駆け寄る。
 否、少年だった肉の欠片へと、駆け寄る。

 そして、その傍に屈みこみ、肉の欠片を拾い集め始めた。


打ち止め「ああ、あああああ、アアアア、アアアアああアあア」


 少女は、呻くような声を出しながら、肉片を拾う。
 少年の欠片を、少年だった欠片を、拾い続ける。

打ち止め「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 拾い続ける。
 もう二度と会えない少年の欠片を。
 赤い涙を、流しながら。

185 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:35:09.23 ID:qQqqSV/f0

 神裂は、それを見て。

神裂「――――」


 無表情で、少女の首を、刎ねた。


 容赦無く。
 少女の姿をした化物を、殺した。



 ごとん。
 小さな異形の頭が、地に落ちる。

 げしゃり。
 神裂は、それも踏み潰した。

 さらさら。
 赤い雨が、少女の頭だった肉片と、少年の身体だった肉片を、洗い流していく。

186 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:35:35.21 ID:qQqqSV/f0

 神裂は。
 何も、言わず。


 後には、少女の首から下だけの屍体が、残された。


神裂「――――…………」


 そして神裂は、その場を後にする。
 異形の身体を引き摺って。
 赤い涙を、流しながら。

 全ての終着点、異界の中心へと、向かう。

 黒銀に耀う刀を、神を裂く刀を、その手に携えて。


187 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:37:50.55 ID:qQqqSV/f0
以上。

正直、この唯閃神裂vs黒翼一方だけが書きたくてこのSSを書き始めたのです。
実際書いてみると自分の文章力と想像力に阻まれてしょっぱ過ぎる戦闘シーンになっちゃいましたけど。
それでも自分は、満足です。

……どうでもいいコメントでした。
ナメック聖人・神裂火織さんじゅうはっさい、みんな応援してね!

189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/25(月) 20:43:27.93 ID:14ew5t6m0
乙です
ステイルさんは屍人化しないの?

190 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 20:49:17.59 ID:qQqqSV/f0
>>189
します。
ですが、死体がかなりズタボロにやられちゃってるので、屍人化して再生までしてると、行動可能になるまで2時間弱はかかっちゃうんです。
ので、ステイルさんが屍人として大暴れする頃には物語は終わっちゃってるという悲しい事実。
大人しく眠らせてあげておいてください。

191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/04/25(月) 20:53:19.28 ID:L85BDTlZo
うおおお、乙…!
一方さんの役割って要は雑魚掃討だったのかな

192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/25(月) 21:05:12.32 ID:mbXbYmy2P

これ神裂は屍人になってないんだよな?
一方さん結局屍人化するのね

193 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/04/25(月) 21:14:26.63 ID:qQqqSV/f0
>>191
一方さんの役割は、それとは別に、もう少し重要なのがあります。
『黒翼を発現した状態で神裂に敗北する』というのが条件なのですが、詳しい事は次のシナリオで。
ちょろっと描写の中に伏線として入ってたりしますが。

>>192
神裂さんは既に半屍人化してます。
が、精神汚染の方には術式による防護を施してあるので、有る程度までは耐えられる状態です。
でもこれ以上赤い水を摂取し続けるか、あと数時間も経つかすれば、自我を失って完全な屍人に成り下がります。
一方さんの屍人化は決定事項ですが、『電極のバッテリーが残っているかいないか』が分岐点になっています。
電極バッテリーが残っていると条件1(ベクトル操作使用)、残っていないと条件2(黒翼使用)にそれぞれ分岐します。

199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/04/26(火) 01:25:30.82 ID:JKqMFTtm0
やべぇ、思わず涙が…

228 : ◆VnIAQij.pM [sage saga]:2011/05/05(木) 13:11:38.34 ID:aSF68Knr0
すいません、作業が遅れてます。暇を見つけては頑張って書いてます。

>ステイルの違和感
いや、それはフードに関するもので間違い無いです。
でも実際に結末を変えてしまうような重大な伏線とかじゃなく、分かってればちょっと驚くかな、程度のネタなのです。

>神裂さんいろいろ
1.何かナメック聖人化したんだけど?
 聖人としてのポテンシャルの高さが第一の要因。
 『赤い水』の汚染を事前に受け入れ、魔術的に『不死力』をサポートする体勢を作り上げていたのが第二の要因。
 当然ながら、一般の屍人にはあんな超速再生はできません。
 独力でナメック再生した上条さんに比べれば……

2.途中で片目瞑ってるのは?
 『幻視』=視界ジャックにより、閉じた左眼に一方さんの視界を写しています。
 それは同時に、視界だけでなくその体感覚(聴覚・嗅覚・その他諸々)も共有するということ。
 これにより、黒翼の攻撃予測範囲を、可能な限り精密に割り出しています。
 ホントはその辺も詳しく書こうと思ったんですけど、まあノリで突っ切ればいいか、ってことで書いてません。

3.黒光りする七天七刀
 黒翼を斬り続ける事で、その属性を刀身に宿した状態になっています。
 『神(或いは竜)を殺す事で、神(竜)殺しに成った』という伝承に基く、化物殺しの作り方。




posted by JOY at 06:44| Comment(7) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
…あれ?
続きマダー?
Posted by at 2011年12月30日 11:49
気になるじゃないカー続きはよー
Posted by at 2012年06月20日 02:35
後一歩だったのに・・・。
エタっちまったんだよなぁ・・・。
Posted by at 2013年06月20日 17:07
 流石にここまで堕ちてしまったら
続き書く気なくなるわ。

結論: 作者はBad End好き

というか、これ、ひぐらし方式ですよね。
Posted by 東方とある好き at 2016年10月12日 20:05
 流石にここまで堕ちてしまったら
続き書く気なくなるわ。

結論: 作者はBad End好き

というか、これ、ひぐらし方式ですよね。
Posted by 東方とある好き at 2016年10月12日 20:05
きっとSDKがみんな終わらせるさ
Posted by at 2016年12月08日 13:21
上条さんあっけなくタヒんだの悲しい
続きはよ
Posted by at 2019年09月27日 23:57
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