2012年03月18日

ダンテ「学園都市か」1(学園都市編)

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [sage]:2011/05/29(日) 16:25:51.19 ID:OL+FuFJro
「デビルメイクライ(+ベヨネッタ)」シリーズと「とある魔術の禁書目録」のクロスです。

○大まかな流れ

本編 対魔帝編

外伝 対アリウス&ロリルシア編

上条覚醒編

上条修業編

勃発・瓦解編

準備と休息編

デュマーリ島編

学園都市編(デュマーリ島編の裏パート)←今ここのはじめ(スレ建て時)

創世と終焉編(三章構成)

ラストエピローグ


22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/02(木) 23:56:27.84 ID:8NCaMGgCo
―――

遡ること数時間前。

学園都市、現地時間18:10時。

窓の無いビル、大きな水槽の壁面内側にはホログラム映像が浮かび上がっていた。
映し出されているのは、第23学区から飛び立つデュマーリ島へ向けての編隊。

護衛のための戦闘機と無人機、
そして能力者を積んだ輸送機が続々と飛び立ってゆく。

そんな映像を、アレイスター=クロウリーは静かに眺めていた。

と、その時。

「大勢の運命を背負って、この世の地獄へ戦いに行く。年端もいかない子供達が」

水槽の前、5m程の所に立っていた初老の女性がそう口にした。
学園都市総括理事会の一人、親船最中が。

アレイスター「君が不快に思う原因の倫理は所詮、人が勝手に作り出した人の社会のみに適用されるルールだ」

アレイスター「今の状況に当て嵌めるのは場違いも良い所だ」

アレイスター「この人の社会の外のルールは常にシンプル。力を持つ者が戦う。『今回』はそれが彼らだったに過ぎない」

そう返されてきた一連の言葉に、
親船はふんっと鼻を鳴らして。

親船「随分と饒舌だこと。以前お会いした際はそれはそれは無愛想でしたのに」

嫌悪感を少しも隠さずにそう言葉を返した。

23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/02(木) 23:58:01.45 ID:8NCaMGgCo

アレイスター「5年振りか。君は随分と老け込んだな。美容整形は受けんのか?20歳は若返り寿命もその分延びるぞ」

親船「まさか、あなたから美容整形を進められるとは。あなたも本当に『一応』人間でしたのね」

アレイスター「……さて、世間話はこの辺で止め本題に入ろう」

その話の切り替えと同時に水槽内のホログラムが消え、
今度は親船の前に浮かび上がった。

映されているのは正規命令発行用の画面。


アレイスター「学園都市総括理事長令 第3号、私、アレイスター=クロウリーは、」


そしてアレイスターが口を開くの同時に、
その言葉が画面に入力されていく。


アレイスター「ここに学園都市行政権、及び『軍』とアンチスキルの指揮権を理事長代行、親船最中に委譲する」


アレイスター「ただし、『プラン』に付随する諸権限は例外とする」

アレイスター「それら残りの権限は『プラン』が完遂次第、全て親船最中に委譲し、私は理事長を辞する」


言葉を連ねた後、最後に彼が右手指を小さく動かすと。

その動きに連動して画面にもサインが書き込まれ、
続けて親船も指でなぞるようにして署名した。

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:01:23.92 ID:DdeePM8ko

アレイスター「これで晴れて君が理事長代行、この街の最高指揮官だ」

委譲が完了してすぐさま。

親船「第一級警報発令、状態はデフコン1、シェルターへの市民の避難を開始します」

親船はアレイスターの声を無視しては、
続けてホログラムの端末を操作し命令を下した。

親船「全理事会員は、今現在この街が置かれている状況を『熟考』の後、理事長令に同意の署名を」


親船「『熟考』した上で、それでもこの決定に納得できない場合」


親船「その意思を示してください。こちらも相応の姿勢で対応します」


そして強い口調でそう締めくくった。

アレイスター「委譲する前に、利己的な理事会員を罷免しておけば良かったかな?」

親船「どの道変わらないでしょう。この期に及んで己の欲望を優先するような者は」

そんな親船の言葉を裏付けるかのように。

親船「その点は、彼らを指名したあなたが一番ご存知でしょうに」

ホログラムに表示される各理事会員の署名は、全員分は揃わなかった。

ただ、その点については親船も充分想定内。
彼女が掃うようにして手を振った瞬間、ホログラム映像が消え。

親船「出ます」

そう呟くと、親船の隣に一人のテレポーターの少年が出現して彼女の肩に手を置いた。

親船「これ以上、この街の子供達を巻き込まないで下さい」

アレイスター「犠牲が0とは約束できんが、私のプランが滞りなく進んだ場合は、『ほぼ全員』生き残る。そこは保障しよう」

親船「……」

最後は言葉を返さず、アレイスターを見据えながら。
親船はテレポーターによって運ばれていった。

25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:02:59.64 ID:DdeePM8ko

「『この街』の子供達はほぼ全員」

と、その直後。
壁際の薄闇の中から、白衣を着た男がアレイスターの言葉を繰り返しながら歩み出てきた。


「能力開発を受け、セフィロトの樹から外れかかっている者は生き残る」


そして、アレイスターの口からは出なかった事柄を『補填』して。


「犠牲はセフィロトの樹に繋がっている世界全ての者達『だけ』」


水槽の前、4m程のところで立ち止まりアレイスターを見据えた。

アレイスター「君はそれを承知の上であの日、私を生かした」

アレイスターはそう言葉を放った。
その男、カエル顔の医者に。

カエル「…………わかっているよ。忘れたことは一時も無い……あれから60年、常に頭にあり続けた」

アレイスター「…………」


カエル「…………エドワード。ジョン。そして僕。人々は決して、僕等を許しはしないだろうな」

アレイスター「構わんよ」



アレイスター「許しは請わん」



―――


26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:04:29.14 ID:DdeePM8ko
―――

第七学区、とある寮1階の入り口。
そこの壁に、ステイル=マグヌスは腕を組んで寄りかかっていた。

ステイル「……」

思い出せば半年以上前、
この寮の一画にてとある男と戦い、豪快に殴り飛ばされて敗北した事がある。

あの時は思ってもいなかったであろう。

『あの男』こそ、インデックスにとって―――。

ステイル「…………チッ」

そこまで思考が及んだ瞬間、ステイルは小さく舌打ちをしたが。
それは別に不機嫌を示すものではなく、
素直ではないこの男の精一杯の『喜び』の仕草であった。

ただそこには少々、人間らしいささやかな『羨ましさ』も混じっていたが。

ステイル「……………………長いな」

上階にいるであろう上条とインデックス。
インデックスの衣類などを取り行くとのことだったが、少々時間がかかり過ぎでは。

そう思うも、彼女達が何をしているのか確認する気も、
そして急かす気も特には無い。

ステイル「…………」


それこそ、彼等が男と女の一線を越えたとしても、だ。

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:05:34.94 ID:DdeePM8ko

口では文句を言い、心の表面を嫉妬で埋め尽くすだろうが、
本音では祝福し絶対に彼等の間の邪魔はしない。

ステイル自身がそう決めているし確信しているのだから。

ステイル「…………」

まあ、それ以前にあの男が今一線を超えられるわけも無いが。

良くてキス止まりだろう。

そうしなければインデックスの命が無い、となれば彼は迷わずするだろうが。
そうでなければここぞという時でヘタれ、結局事を済ますことは適わず。

自身の欲求には変に厳しく、そして自信も無い。

有事には最高のヒーローになるが、平時にはどうしようもない馬鹿少年。

例えインデックスに迫られたとしても、
実年齢はわからずとも外見上から未成年と捉え、
そして何よりもシスターであるという事を『振りかざして』、彼は逃げる。

上条当麻とはそういう男だ。

まあそれも、人を想い大切にする『彼らしさ』だ。

ステイル「…………」

そういう男だからこそ、
安心してインデックスを預けていられるのではないか。

一線をいつか越えるにしても、それまではとことん大切にしてもらおうではないか。

28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:06:52.27 ID:DdeePM8ko

もし彼がこうではなく、己の欲望にどこまでも忠実な男であったら。

その場合は、まず誰よりも神裂が黙ってはいなかったはずだ。

インデックスを預ける、なんてイギリスからの通達を聞いた途端、
何から『ナニ』まで叩き切る勢いで怒り狂っていたことだろう。

神裂。

ステイル「…………」

巡らせた思考の中で彼女の名を響かせ、そして顔を描く。
彼女がここにいたら。

もし今も、隣に立っていたら。

上条とインデックス、今の二人を見て神裂は何を思うだろうか。

それはきっと、笑ってくれていただろう。
己のように捻くれた態度ではなく素直に。

ステイル「…………」

凛々しく微笑んでいる彼女の横顔が、脳裏を過ぎる。
長い長い鞘を手に、黒く艶やかな髪を靡かせて。

勇ましくて気高き友の姿。


そして―――動かなくなった姿。


胸に愛刀を突き立てられて、静かに沈んでいったあの光景―――。

29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:07:47.40 ID:DdeePM8ko

そんな、脳裏に焼きついている亡き友の姿に浸りながら。

ステイル「………………ふーっ……」

小さくため息をついては、星が瞬く夜空を見上げた。

デュマーリ島へ向かう、複数の航空機の爆音が奮わせる冬の大気。
そこに白い吐息が蒸気のように立ち昇って行く。

空高くにて響く爆音を省けば、周囲は静寂そのもの。

この第七学区は、先日の戦闘以降住民が立ち退かされており無人。
気配は上条とインデックスのものしか無く。

それはそれは静かなものであったが。

ステイル「…………」

突如、その静けさをけたたましくかき乱す音が響いた。
それは街頭などに備え付けられているスピーカーからのサイレンの音。

ステイル「(……警報か)」

その大きな音にステイルは一瞬眉を細めたものの、特に気にもしなかった。

なにせ今は戦時下、
サイレンが鳴るくらい別におかしいことでもないだろう。

だが、その直後。
別に聞えてきたとある『音』が、ステイルの平静を乱した。


それは脳内に響いてきた、


ローラ『おい―――聞えたるか?』


ステイル「―――ッ」


元最大主教、ローラ=スチュアートの声。


30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:09:38.14 ID:DdeePM8ko

ステイル「アーク……!」

            アークビショップ
今までの癖でついつい最大主教と口にしかけるも。

ローラ『あるじ様と呼べ。我が「使い魔」ステイル』

すぐさまローラがそう遮るように言い。


ローラ『追っ手が「この街」に既に着きたるの』


ステイルの反応を待たずに話を進めた。

ステイル「……追っ……手……?」

そのローラの声には、どことなく焦りの色が滲んでいた。
いつもの飄々とした余裕が無く、早い口調は苛立っているように感じられる。

ステイル「……」

また、ローラの「この街」という言い回し。
それは彼女が既に学園都市に来ている、という事を匂わせる。

そして追っ手も彼女に続いて学園都市へ。

そんなところであろう。

ステイルは瞬時にローラの言葉から状況を読み取り、
この突然の上司の登場に驚きつつも、冷静に思考を進めるも。

ステイル「して追っ手とは、イギリス清教の者ですか?」

次のローラの言葉で、その思考が一瞬停止する。



ローラ『いえ。我が「同胞」でありけるのよ』



ステイル「―――」


31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:10:38.34 ID:DdeePM8ko

ローラが言う『同胞』。

それはつまり魔女。

ステイル「―――ッ……!」


魔女が既に来ている―――だと?


バチカンでの戦い、そして先日のフィアンマ戦におけるインデックス。
その光景と魔女達の姿が脳裏に蘇る。

今のステイルにとっても『化物染みた』、あの魔女の力。

そこに続くローラの言葉が、更にステイルを焦燥させた。


ローラ『「使い魔」も連れたる。それと私のみならず、禁書目録をも狙いたるようなの』


ステイル「―――」


インデックスも標的―――だと?

ローラ『これ以上の接続は探知される。じきに合流したるわ。それまで「堪えろ」』

ステイル「―――堪え……ろ?!待―――待て!」

そしてローラはステイルの言葉になど聞く耳も持たず、
そう早口で告げた後。


ローラ『くれぐれも警戒を怠ること無き、よ』


ステイル「おい―――!!!」


一方的に会話を打ち切った。


ステイル「―――…………ッ……」

―――

32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:12:23.09 ID:DdeePM8ko
―――

学園都市、とあるビルの屋上。


ジャンヌ『禁書目録の位置、特定した』


神裂「……どこです?」

その淵にて神裂は、通信魔術先のジャンヌに問い返した。
冬の夜風に、高く結った長い黒髪を緩やかに靡かせつつ。

爆音が轟く下に広がる夜景を望みながら。

ジャンヌ『あー、第七学区の……』

手元にある地図と照らし合わせているのか、
ジャンヌはまるまる読み上げる口調で住所を告げてきた。

神裂「……」

覚えのある住所を。

神裂は静かに、
告げられた第七学区へ向けその視線を動かした。

白い作業灯と、最低限の街灯の光が点在する暗い一画へ。


神裂「……」


この通信を共有している五和が、
斜め後ろにてその顔を強張らせているのを感じる。

だが、神裂はその点については言及することもなければ意識するそぶりも見せず。
暗い第七学区を見つめながら、淡々と言葉を続けた。


神裂「助かります。それでローラ=スチュアートの方は?」

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:19:38.06 ID:DdeePM8ko

ジャンヌ『ある程度位置は絞れた。じきに確保できる』

神裂「そうですか」

ジャンヌ『それとお前に言っておくことがある』

そうジャンヌは言うと、一度咳払いして。


ジャンヌ『禁書目録だが幻想殺しと一緒にいるようだな。すぐ近くにはイギリスの炎の悪魔もいる』


神裂「……」

五和「……」

先日あんなことがあったばかり。
二人がインデックスの傍を離れることはまず無いのも当然。

充分予想していたことだ。

元々、神裂は上条とステイルにも協力を仰ぐつもりだ。
面と向かって丁寧に話しさえすれば、彼等はきっとわかってくれるはずなのだから。


そう、丁寧に話をできさえすれば。


こちらの言葉を聞いてくれれば、の話だが。


続くジャンヌの言葉は―――。


ジャンヌ『そしてローラと炎の悪魔が通信を交わした痕跡があったが、明らかに「契約関係」の上のものだ』


神裂のその展望をあっさりと―――。


神裂「……ということは―――まさか―――」



ジャンヌ『はっきり言うぞ。あの炎の悪魔はローラの「使い魔」―――「敵」として考えろ』



―――破壊した。

34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:21:51.01 ID:DdeePM8ko

神裂「―――」


五和「―――……!!!なっ……!!!」


ジャンヌ『下手な望みは持つな。ある程度の意思の自由はあるが、最終的に主に従いざるを得ない。それが使い魔だ』


神裂「……」


ジャンヌ「『お前』もわかるだろう?」

神裂「……」

そう。

ステイル自身がどう思おうと、
主であるローラがこちらを敵として認識している以上、そこはどうしようもない。

それは神裂自身この身をもって知っている。
なにせ今は、バージルの使い魔という属性なのだから。

主であるバージルのやり方で、
今の神裂には主従関係による支配的な縛りは一切無いが。

それでも神裂がバージルの意向に反する行為を行い続ければ、
最終的に『バージルの子』たるこの力は、神裂火織という人格を食い潰し傀儡とするだろう。
(ただバージルとなれば、その前に直接ケジメをつけに神裂の元に現れるだろうが)

ジャンヌ『じゃあ、しっかりな』

言葉の調子を変えぬまま、そうジャンヌとの通信は終わった。


神裂「……………………」

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:23:16.42 ID:DdeePM8ko

直後。

五和「あの―――!」

五和が背後から何かを言いかけたも。

神裂は即座に振り向き、鋭い視線でその口を制した。
いや、目で制すまでも無かったかもしれない。

五和はその神裂の顔を見た瞬間に、
既に言葉を詰まらせていたのだから。

不気味なほどに冷たい無表情を。

それは完全な―――。


神裂「私は正面から行き、『まず』は話し合いを試みます」


話し合い、という言葉が余りにも不釣合いである冷酷な『仕事の顔』。


神裂「五和、あなたは後方に周り―――」


神裂はその顔のまま、
淡々と事務的に五和に命令を告げた。


神裂「―――交戦準備を整え待機を」



五和「……了解」


五和は頷いた。

張り裂けそうな想いに胸を圧迫されながらも、
一方では戦士としての揺ぎ無い覚悟を決め。

五和はジャンヌから授かった槍を、胸に抱くようにしては強く握りしめて。

―――

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:24:06.72 ID:DdeePM8ko
―――


キスした瞬間に覚えた不思議な感覚。


不思議だが決して不快ではなく、むしろ心地の良い感覚。


彼女の『存在』を感じるのだ。
外からの知覚ではなく『内側』から。

それがゆっくりと、全身へと染み渡っていく中。


上条「…………」

上条は彼女に心奪われて、言葉を失っていた。

淡く光を帯びているような艶やかで柔らかい青い髪。

陶器のように清廉な肌。
やや赤みを帯びている頬。
滑らかな首筋。

透き通る瞳。

甘い香り。

柔らかい唇。

上条「……」

まるで言葉が出ない。

腕の中で、やや恥ずかしげに微笑むインデックス。
この存在を語る言葉は、上条は持ち合わせていなかった。

37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:24:56.63 ID:DdeePM8ko

上条「―――……」

もう何も考えられない。

上条にとってのインデックスの魅力は、
下階で待つ『誰か』の予想を遥に超えていたようだ。

彼の鉄の如き自制心ですら、
彼女の存在の前にはすぐに錆び朽ちてしまい。


インデックスを抱いたまま、ゆっくりと押し倒す。

ベランダの床に緩やかに倒れた瞬間、
彼女は小さな声を漏らすも、言葉を発さず無言のまま。

他に発された声といえば、
スフィンクスが跳ねるようにして、二人の間から脱した際に挙げたものだけ。

三毛猫は室内のベッドの上に飛び乗り、
「お構いなく」とでも言うように二人に背中を向けて丸まった。

そしてインデックスは上条に覆いかぶさられる形になったも。

禁書「……」

抵抗の色など一切見せず。

更に恥ずかしげに少しうつむきながらも、
心地よさそうな面持ちで彼の顔を見上げていた。

上条「…………」

そんな彼女の少し乱れた前髪を、撫でるようにして整え。
頬に指を伝わせ。


彼女の瞳を見つめながら上条は再び、顔をゆっくり近づけ。


インデックスが応じるようにして静かに目を瞑った―――その時。




聞き覚えのあるサイレンが鳴り響いた。

38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:26:45.01 ID:DdeePM8ko

上条「……」

禁書「……」

上条はピタリと硬直し、インデックスが瞼をぱちりと開き。
驚き鳴きわめいてはスフィンクス。

そして聞き覚えのあるサイレンに重ねて、『あの日』と同じく。


『第一級警報及び第一級戦時態勢が発令されました』

『市民の皆さんはアンチスキル及びジャッジメントの指示に従い―――』

『最寄のシェルターへ迅速に避難してください。繰り返します―――』


機械的なアナウンスが繰り返し流れていく。

そんな音が街全体に響く中、
二人は鼻先を軽くぶつけてはおかしそうに笑い。

上条「…………そろそろ……戻ろうか」

インデックス「うん」

二人はもつれるようにお互い茶化しながらも、
立ち上がっては服についた塵を払い。

上条はインデックスの衣類が入ったバックを肩にかけ、
インデックスはスフィンクスを胸に抱き。

部屋を後にし、寮の階段を降りて行き。


そして寮の入り口にいる、ステイルの姿を捉えた。


上条「おーわざわざ来てくれたのか?病院で待っててって言ったのに」

39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:28:42.46 ID:DdeePM8ko

もしかして待っちまったか?、と上条はやや申し訳なさそうに。
そしてインデックスも気まずそうに苦笑するも。

ステイル「…………ん?あ、ああ、別に構わないよ」

当のステイルは心ここにあらず、といった風。

狐につままれたような面持ちだ。
いや、慌てて平静を装っているようにも見える。

上条「……」

まさか悪魔の感覚で、上での『一部始終』を見ていたのでは、と上条は一瞬思うも。
もしそうだとしたら、彼の意識は真っ直ぐこちらに向いているはずだ、

だが今ステイルの意識は、
どう見ても己とインデックスには向いていない。

上条「……おい。何かあったのか?」

すかさず上条は敏感に『何か』を感じ取り、
雰囲気を切り替えてステイルにそう問うたが。

ステイル「いいや。気にするな」

ステイルはそれでも言おうとはしなかった。

禁書「……」

上条「そうか……」

さすがに納得したわけではないが、
彼が今は言わないと決めたのならば無理にそれを穿ることもない。

インデックスは未だにステイルを訝しげな目で観察していたが、
上条はすぐに切り替えて。


上条「じゃあ戻ろうぜ!腹減ったしな!」


そう一行を引っ張るように促した。

40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:32:52.62 ID:DdeePM8ko

片側三車線の大通り、多様なデパートや店が並ぶこの大通りは、
普段ならば今の時間でも充分人で賑わっている。

だが今は軒並みシャッターが閉じ、
大きな道路を走る車は一台も無く、寂しそうに信号が黄色く点滅していた。

サイレンが響くそんな無人の街の中、
何気ない会話を重ねながら三人は歩き進んでいく。

ステイル「このサイレン、確か……」

禁書「ダンテといた時にいきなり鳴ったんだよ」

上条「魔帝の件の時にな。避難命令だよ」

ステイル「ああ、聞き覚えがあるよ。僕がこの街に到着した時も鳴っていた。その後すぐに止んだけどね」

ステイル「話に聞くと、前回の事をうけてシェルターは随分と強化されたとか」

上条「ああ。かなりの予算つぎ込んだらしいぜ」

上条「魔帝の時はだだっ広いところにスシ詰めだったらしいが、今のは普通に二、三ヶ月は暮らせるくらい快適だとか」

禁書「全市民分の個室を確保したって聞いたんだよ」

一方通行の下、厳密には教師でありアンチスキルの黄泉川宅に居候していた際に聞いたのだろう、
インデックスがそう補足した。

ステイル「すごいな。ロンドンにもあれば……」

ステイルはそこで思わず、
今までの癖でそう考えてしまったが。

ステイル「…………はっ……」

すぐさま、小さく呆れたように笑った。
今の己は『反逆者』であることを思い出して。


41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:34:31.10 ID:DdeePM8ko

気付くと空の轟音は止んでいた。

第23学区から飛び立った編隊は、
もう遥か彼方へ行ってしまったようだ。

上条「………………土御門。御坂」

静かになった空をふと見上げながら、上条は友の名を口にした。
そして名も知らない他100名余りの者達の存在を思い浮かべながら。

上条「あいつら、大丈夫か……な」

そう、寂しげに呟いた。

禁書「…………うん。きっと戻ってくるよ」

その上条の言葉に、
同じく見上げたインデックスが優しげな口調で。

ステイル「…………土御門がいるしね。まず心配は無いだろうさ」

ステイルも夜空を見上げながらそう続けた。


そして、三者が視線を降ろしたその時。


彼等は目にした。



いつのまにか20m程前方、道路の真ん中に立っていた―――ひとりの女。



鞘に納まった長い長い日本刀を手にした黒髪の『元』聖人を。

42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/03(金) 00:39:26.79 ID:DdeePM8ko

奇しくも状況は、
かつて上条が体験した『とある日』をなぞるかのようであった。


同じこの場所で同じ人物に―――同じように冷酷な眼差しを向けられて―――出会った『あの日』を。


ただ、あの時と違う点もいくつかある。


「人払い、今回は必要ありませんでしたね」


女がぼそりと、言及したその点と。

目を丸くして硬直しているステイルと、
上条の右手を不安げに握りしめるインデックスがいる点と。



赤く光っている女の―――神裂火織の瞳。



ここに綴られる神話の役者は。

友の価値を失ってから知った炎の悪魔と、友と斬り合う覚悟を決めた元聖人。

幻想殺しを有する少年と、能力者の壁を越えて神域へと昇華しつつあるレベル5の少年。

己の出生を知らぬ幼い魔女と、一つの願いを胸に生き延びてきた魔女。


そして、ここに綴られる神話の書き手は。


孤高の天才魔術師と―――太古からの復活と『全て』を求める強欲な『竜』と。



観測者の目を持つ『最強の魔女』と、アンブラの精神を具現化したかの如き『最高の魔女』と。



―――最強の兄と最強の弟と―――新たな伝説へと成る息子―――。



――――――――――――――――



           学園都市編



――――――――――――――――



『表』では、望む『未来』を守るべく少年少女が地獄へ向かった頃。


『裏』では、纏わり付く『過去』を振り払うべくの戦いが始まる。



―――

46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/06/03(金) 02:40:42.05 ID:Pbp0CXek0
未消化伏線で言えばこっちがメインルートと言えなくもないんだよな乙!

47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/03(金) 06:21:40.91 ID:BdRre+HAO
ここで伏線回収かぁ…

50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/06/05(日) 15:39:00.50 ID:8QtUkwXM0
やべぇ…テンション上がってきたwwwwww

51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 22:18:00.43 ID:g5k8u3BLo
―――

東の空が白け、
広大なスラム街にも徐々に光が差し込み始めている。

その街の中にあるとある小さなバー、ゲイツオブヘル。

ここは今、店閉まいの時刻を向かえていたが、
一人の客がいまだに図々しく居座っていた。

そのカウンターにふてぶてしく座っている馴染みの客を、
いや、何食わぬ顔で『戻ってきた』男を、
マスターはカウンターに両手の平をつきながら。

ロダン「……ほぉう」

わざとらしく大げさな表情で見ていた。


ダンテ「よう」


ロダン「まだ30分も経ってねえが。『誰かさん』が用事ができたとかで出て行ってからな」


ダンテ「へえそうかい。なんかくれよ。喉乾いたぜ」

カウンターを人差し指で叩く、
他人事のようにそ知らぬ顔のダンテ。

ロダン「お客さんよ、もう店閉まいの時間なんだが。お帰りになってくれねえか?」

ダンテ「あー、それなんだがな」

そこでダンテは。
ロダンに対抗するかのようにこれまた大げさに肩を竦めて。

ダンテ「ちょいと状況が変わってな、『足』が無くなっちまって『お帰り』できなくなった」

ロダン「人造悪魔のお嬢ちゃんはどうした?」

ダンテ「ルシアちゃんはちょうどさっき、デュマーリ島に行ったらしい」

ロダン「ほう、そいつは難儀だな……それでだ。それはお前さんがここに居ることと関係あるのか?」

ダンテ「…………」

ロダン「…………」


ダンテ「お前が俺を送t」


ロダン「失せろ」


52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 22:21:53.18 ID:g5k8u3BLo

そう一蹴したロダンは、
ダンテに背を向けてはカウンターの後ろを整理し始めた。

ダンテ「おいおい、つれねえな」

ロダン「お前さんが自分でやれば良いだろうが」

ダンテ「俺は二度とやらねえって決めたんだ。アレは向いてねえ」

ロダン「知るか」

ダンテ「ヘイ、いいじゃねえか。パッと俺を飛ばすだけだパッてな」

ロダンは続けて、今度はいそいそとカウンターを布巾で磨き始めたが。

ダンテ「ま、それとついでに天界の知り合いにもちょっくら口添えしてくれりゃあ、俺としては言うこt」

ロダン「―――待て」

そのダンテの言葉を耳した瞬間はたと手を止めて、
彼の声を遮った。

そしてダンテの方へと向き直り。

ロダン「…………お前さんよ、天界の連中と会うつもりか?」

そう、確かな口調で問うた。
そんな関心を示したロダンを見て、ダンテはニヤリと笑みを浮かべ。

ダンテ「ああ。良い機会だから一度話してみたくてな。お前が居てくれりゃあ随分と助かるんだが」

肘をカウンターに載せ、ロダンの方へと身を乗り出して。

ダンテ「大昔は良く慕われてたんだろ?『ファーザー・ロダン』さんよ」

それに対抗するように、
ロダンも肘をついては身を乗り出して睨み。


ロダン「……何度も言ってきたが、今一度言わせてもらう」


ロダン「俺は中立だ。どの勢力にも加担はしねえ」

53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 22:23:51.55 ID:g5k8u3BLo

そうはっきりと告げて。

ロダン「さっさと出ろ」

ロダンは再びカウンターを磨き始めた。

ダンテは鼻を軽く鳴らしては、
カウンターに肘を乗せて頬杖をし。

ダンテ「そうかい。じゃあいくつか答えてくれ。満足したら出る」

ロダン「……とりあえず聞いてやろう」

ダンテ「お前は何で堕天した?」

ロダン「何度も言っただろう。退屈だったからだ」

ダンテ「……それだけか?ちゃんと答えるまで出ねえぞ」

ロダン「…………奴らとソリが合わなかった、それもある」

ダンテ「奴ら?」

ロダン「四元徳だ」

ダンテ「へぇ……人間界に来たのは?」

ロダン「制限隔離された中で形成された人間の技術。これに未知の拡張性を見たからだ」

ロダン「まだまだ未熟だが、力との併用・応用次第ではとんでもねえ『ツール』になる」

お前さんの銃なんかがその最たる例だな、とロダンは続けた。

54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 22:27:43.56 ID:g5k8u3BLo

ダンテ「へぇ……中立にこだわるのは?」

ロダン「面倒だからだ。特定の勢力に肩入れすれば、いつか必ず窮地に陥る」

ロダン「例えば、どんな強大な勢力でも必ず終わりが来る。ジュベレウス、そして魔帝の天下のようにな」

ロダン「その後はどうなる?天界ではイカレタ四元徳共の狂信的な粛清、魔界では後釜を巡っての大内戦だ」


そこでロダンは再び手を止めてはダンテの方へと向き。


ロダン「んな騒動に巻き込まれるのは『もう』ゴメンだ」


ロダン「だから俺は分け隔てなく売る。悪魔にも天使にも、悪魔を殺す道具も天使を殺す道具も」

ロダン「俺の店で作られた武器が、完璧に動作すれば満足だ。俺は黙々と武器を作り研究したい、それだけだ」

ロダン「俺、もしくは俺の店を潰そうとする奴等だけが敵、それ以外は敵も味方もねえ」


ダンテ「まるで退職して趣味に浸るジジイだな」


ロダン「否定はしねえ。俺は一線から引退したからな。それでまだ話は続くのか?」


ダンテ「ああ、次が最後だ」

そう言うとダンテは一息ついて。


ダンテ「要は、店のためなら戦うんだな?」

55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 22:29:17.08 ID:g5k8u3BLo

ロダン「……そうだ。俺は俺の店を守るためだけに動く」

ダンテ「なら、店を壊そうとする連中は潰さなきゃな」

ロダン「ああ。もちろんだ」

ダンテ「この店がある街を壊そうとする連中も潰さなきゃな」

ロダン「…………ああ」

ロダンはここで、ダンテのその物言いで彼の意図を悟ったが。

ダンテ「となると、この街が属しているこの国を」

時既に遅し、流れを逆転させる余裕はもう無く。

ロダン「この国が属している人間世界を」

ダンテの言葉を否定できる道理も無く。

ダンテ「ああ、そうなるとだ。今回の騒動は」


ロダン「……黙って見ているわけにはいかねえ、ってか」


ロダンはそのスキンヘッドの頭に手を当てては、
諦めがちに笑った。

そんな彼を見て、ダンテは無言のままニヤけて両手を広げた。

その仕草は「これで俺の話は終わりだ」とも、
「俺の言葉に何か間違ってることはあるか?」とも取れる。

いいや、両方の意が篭っているのだろう。
ダンテは、広げた手を再びカウンターに載せては身を乗り出し。


ダンテ「『諦めな』、ファーザー・ロダン。まだ引退には早えってこった」


ロダン「…………」

ロダンはしばらく言葉を返さずそのまま押し黙った。

何か思考を巡らせているのか、
ゆっくりとした一定のリズムでカウンターを人差し指で叩きながら。

そして。


ロダン「………………仕方ねえ」


ダンテ「ハッハー、決まったな。そうだ楽しめ」

56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 22:38:20.56 ID:g5k8u3BLo

ロダン「だが言っておくからな。俺は何も気分で引退を決め込んでるわけじゃねえ。理由もしっかりある」

ロダン「実際、天界にいた頃に比べりゃ、今の俺は酷く衰えている」

ロダン「恐らく全力で戦えるのは一瞬だけだ」

ダンテ「なあに。お前に『獲物』は分けねえから心配するな」

ロダン「それともう一つ」


ロダン「お前さんの親父さんがなぜジュベレウス派の行動を黙認したか、それは良く考えてあるんだろうな?」


ダンテ「ああ」

ロダン「俺がお前に協力すれば、スパーダの一族はジュベレウス派と完全に敵対することになる」

ロダン「天界と和解する道は―――」


ダンテ「―――無くなると思え、だろ?」


そこでダンテは半ば立ち上がっては再び身を乗り出して。


ダンテ「わーかってるってロダンちゃん。君は、本当はそこが気がかりだっただろ?んん?」


手の平で一度、カウンターを掃い叩いてそう言った。
いかにも愉快気に、からかいの笑い声を混ぜて。


ロダン「…………………………」


ダンテ「それに和解できなくなるのは『ジュベレウス派の天界』とは、だろ?」

そしてどかりと、再び椅子に座り直してダンテは続ける。


ロダン「……」

ダンテ「問題があるなら潰して別の派閥に『交代』させればいい」

ダンテ「言ってたじゃねえか。天界も一枚岩じゃねえって。お前みたいな奴も残ってるんだろ?」

ダンテ「ソリが合わなくともしぶしぶ従ってる連中が」

ロダン「……天界と話したいってのはそれか?」


ダンテ「あー、さあな。話すことは会ってみてから決める」


ダンテ「ジュベレウス派ととことんやり合うかどうか、もな」

57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 22:41:34.01 ID:g5k8u3BLo

ロダン「……そうか。一応、これは肝に命じておけ」

ロダン「ジュベレウス派は、ジュベレウス信奉への自己犠牲心に『溢れすぎて』イカれてる連中だ」

ロダン「決して譲歩せず、決して妥協せず、決して敗北を認めず、目的を達するためには手段を選ばない」

ロダン「もしお前さんと正面から敵対した場合は、連中は必ず人間を人質にする」

ロダン「そしてお前さんが折れるか死ぬかしないと、最終的には本当にセフィロトの樹で人間の魂を引き抜く」

ダンテ「わかってる」

ロダン「真正面から武力で来る魔界とはまた違うからな。状況を見誤るんじゃないぞ」


ダンテ「なあに―――人間社会と似たようなもんだろ」


ダンテは相変わらずの軽い調子で、
ロダンの問いにそう答えていった。


ロダン「……ふふん、まあな」

ロダンはカウンターを磨き終えると、
背後の棚の整理を再開し。

ロダン「いくつか、状況を確認させてもらおう」

背を向けつつ話を続けた。

ロダン「バージルのやろうとしている事に横から割り込む、それが一応、お前さんが明確にしてる、数少ない『確かな』目的だな?」

ダンテ「まあな」

ロダン「つまり、お前さんとしても天界の門は開いて欲しい」

ダンテ「そうだ」

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 22:45:38.03 ID:g5k8u3BLo

ロダン「では、学園都市に降りる天界の軍勢はどうするつもりだ?」

ロダン「いくらお前さんでも一人では無理だろう?学園都市を破壊しないように全て押さえ込むってのは」

ダンテ「考えてあるさ。心配するな」

ロダン「…………魔界の門はどうなんだ?それも開かせるのか?」

ダンテ「バージルが必要としている以上当然だ。ま、そこも考えはある」

ロダン「魔界の軍勢もか?」

ダンテ「それはもっと簡単だ。天界と違って魔界にはいつでもいけるだろ。こっちから乗り込んで先に『大将』共を狩っちまえば良い」

ロダン「……ほう」


ロダン「じゃあバージルの息子にはどう説明するつもりだ?」


ロダン「放っておくと、天界の門も魔界の門も何から何まで潰しかねないぞ」

ダンテ「ああ。このままだとバージルとぶつかっちまうだろうな」

ロダン「状況を説明するのか?」

ダンテ「しない。したらしたで面倒くせぇ」

ロダン「じゃあどうする」

ダンテ「説明はしない。だが承諾してもらう」

ロダン「ん?」


ダンテ「素直に頼むのさ」


ロダン「……………………まあ、その辺はお前さんに任せておこうか」

59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 22:51:52.29 ID:g5k8u3BLo

その会話を交わしている間に一通り店の作業が終わり、
ロダンはカウンターに両手をのせてダンテと向かい合い。

ロダン「さて、OK、まずはどこに行くつもりだ?」

ダンテ「魔女の根城に行けるか?魔界にあるんだろ?そこにバージルもいると思うんだが」

ロダン「『魔女の煉獄』か、確かに魔界にあるが……」


ロダン「『魔女の煉獄』はその名の通り、魔女の怨念が積もり積もって形成された『閉鎖領域』だ」


ロダン「魔女共の思念に受け入れられない限り、入ることはできねえ」

ダンテ「……入る方法は他には無いのか?」

ロダン「ああ。魔帝統一時代でも治外法権だった領域だからな。ま、実質は実害が無い小さな辺境だということで放置されてただけだが」

ダンテ「じゃあソレは後回しだ。先に天界の奴に会おうじゃねえか」


ロダン「ならば『プルガトリオ』だな。あそこの天界に近い領域なら、天使共が大勢たむろしてる」


ダンテ「『狭間の世界』か。良く話は聞くが行ったことはなかったな」

ロダン「いやいや。お前さんだって数え切れないほど行ってるはずだぜ」

ダンテ「そうなのか?」

ロダン「悪魔が獲物を引き込んだりする際に良く『プルガトリオ』を使う。常套手段だろうが。もしかして知らなかったのか?」

ダンテ「へえ。今知ったぜ」

ロダン「……お前さんって奴は、本当に良くわからんな。『気味が悪い』くらいだ」

常識を知らぬ癖に、何人も気付かなかったことを容易に見出してしまう。
そんなダンテの『得体の知れなさ』を再度認識しながら、ロダンはため息混じりに笑った。

ダンテ「おっと、その前にとにかくネロだネロ」

と、そこでダンテは椅子から跳ねるようにして立ち上がり。


ダンテ「ネロを拉致するぜ」


―――


60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 22:53:12.06 ID:g5k8u3BLo
―――

神裂火織。

死んだと思われていた彼女が生きていた。

それは非常に喜ばしいことなのに。

この相容れぬ距離感は一体。

なぜ―――こんなに空気が張り詰めている?


上条「…………」


そんな疑問を抱いても、まるで納得できなくとも。
とにかく否定はできなかった。

研ぎ澄まされた直感が嗅ぎつけた、この明確な『戦意』を。

神裂の姿に安堵と喜びを抱く一方、
鍛えられた本能は、その姿を見て自動的に体を警戒状態へと移行させる。

脇のインデックスが握る右手、そこから彼女の緊張も伝わってくる。

そして逆側の隣にいる、ステイルの緊張も空気を伝って。

上条「……」

いや、ステイルはそれだけではなかった。
喜びと戸惑いと緊張は上条と同じだが、それ以上に彼は。


上条「ステ……イル?」


どうしてお前はそんなに―――『敵意』を滲ませているんだ?

思わず彼の横顔を見て、上条は心の中でそう呟いてしまった。

ステイルはどう見ても、戦意を捉えた本能だけはなく。
心までもが戦闘態勢に入っていたのだ。


そしてそれに呼応するかのように。

共鳴するかのように、輝きを強める神裂の瞳。

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 22:54:37.51 ID:g5k8u3BLo

上条「(―――だめだ―――)」


理解が把握できなくとも、肌で感じる。
これはだめだ、とにかくだめなんだ、と。

このままだと悪循環、負の方向へと転がっていく。

何がどうなるか、具体的にはわからないがこれだけは簡単に悟れる。

酷いことが起きてしまう、と。


だが何もできなかった。

あの神裂の佇まいを見てしまった瞬間、上条は何もできなくなってしまっていたのだ。

特に構えをとるどころか警戒すらしていない、リラックスしているように見えながら。

どこからどう踏み込んでも、間合いに入った瞬間に切り捨てられてしまう、そんな鉄壁の隙の無さ。


上条「―――……」


冷たく無機質な完璧さ。


まさしく―――。


禁書「………………バージル」


禁書目録としての目を持つインデックスが呟いた。


禁書「……あの力の組成…………9割以上……バージルと同一だよ」


その瞳で捉えた、
的確で具体的な答えを。

63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 22:56:57.71 ID:g5k8u3BLo

その確かにされた事実は、状況を好転させたりなどはしない。

むしろこの緊張をもっと強くして。
更に状況を負の方向へと転がしていく。

上条とインデックスの緊張を張り詰めさせ、
ステイルの目を鋭くさせていき。

神裂「―――インデックス、ステイル、上条当麻」

彼等の名を口にする神裂の無機質な声が、更に場の空気を軋ませる。

ステイル「…………神裂……」

瞬き一つせず彼女を見据えているステイルから搾り出された声も。

神裂「はい」

ステイル「……生きていたのか」

二人が交わすこの声は、本来は喜びに満ち溢れていなければならないのに。

神裂「……はい。正確には、あの時確かに一度死んでいますが」

ステイル「転生、したんだな」


神裂「はい。ステイル―――あなたと『同じ』ですよ」


ステイル「ああ、―――『同じ』だな』

ここで放たれた声には情など欠片もなかった。

そして。

ステイル「ところで、僕達に何か用があるように見えるが」



神裂「はい。インデックスに協力していただきたいことがありまして」



神裂のその言葉で、場の空気が一変した。


ステイル「協力…………そうか―――」


特に。



ステイル「―――『やはり』。インデックス、か」



ステイルの醸すオーラが―――。

64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:03:13.32 ID:g5k8u3BLo


いまやステイル自身、この衝動は抑えられなかった。
身の内から湧き上がる敵意を。

確かにローラの話や今の神裂を見れば、警戒も必要な相手であることもわかるが、
それだけでは生成し得ないこの過剰の敵意。

ステイル「―――」

生きている神裂を前にして心の底から嬉しいのに。


本当に、涙が出てしまうほどに嬉しいはずなのに。



彼女の凛々しい顔がどれだけ―――『恋しかったか』というのに。



それを力ずくで捻じ伏せてしまう―――奴は敵だ、戦え―――殺せ、という衝動。


これは別に謎の衝動では無い。
ステイル自身、大本の原因はわかっていた。


己は使い魔―――『魔女の奴隷』なのだから当然の事。


ローラ=スチュアートに体のみならず、心をも奪われているのなら。
いや、『なら』ではなく確実に奪われていた。

なにせ今のステイルにとって、ローラはインデックスと『同じ』。


頭では別人だとわかっていても、惹きつけられた心は―――嘘がつけなかった。


 インデックス
『ローラ』が戦えというのなら―――ステイルは戦う。

65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:04:53.56 ID:g5k8u3BLo

神裂「……まず話を聞いていただけませんか?」

聞くべきだ、彼女の話を聞くんだ、
という声が心の隅で発されるもすぐに衝動に押し潰され。


ステイル「その前に説明してくれ―――」


最悪の答えを彼女から引き出そうとする。


神裂はきっと正直に答えてしまう。


そしてその答えを聞いてしまったら、もう後戻りはできないのに。

それを聞いてしまったら『敵』だと―――。



ステイル「―――君の力から、バチカンにいた『あの魔女の匂い』がする理由を」



―――『確定』してしまうのに。



神裂「―――……転生の際、彼女達の『協力』がありましたから」



そしてその答えを聞いた瞬間。

ステイルの脳内に『愛おしい声』が響き。


  インデックス
『「 私 」のために戦え―――我が使い魔よ。さあ―――』


ステイル「―――」

彼を押し留めていた最後の箍がゆっくりと。

軋みながら弾け切れていく。

66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:07:14.06 ID:g5k8u3BLo


ステイル「―――君達は離れてくれ」


直後、ステイルのその手、腕から炎が湧き上がり、
上条とインデックスは後ろへと慌てて身を引いた。

上条「おい……!待て―――ステイル!とりあえず神裂の話も―――」

インデックスを庇うような体制のままの上条、
彼が飛ばしてきた言葉を最後まで聞かずに遮っては。


ステイル『誰も信じるなと言ったはずだ』


紅蓮の瞳を向け、そしてエコーのかかった声でそう突きつけた。


ステイル『―――だから「僕達」から離れろ。今すぐに』


僕達、と自分も含める精一杯の『抵抗』も篭めて。


その時。


神裂「ステイル、私の話を―――」


禁書「すている!―――話を―――」


上条の腕の中から叫ぶインデックスの声と。

神裂「―――ステイル!!!」

無機質だったのが、その時だけ僅かに熱を帯びた風に聞えた神裂の声と、
目の覚めるようなインデックスの声。

それが一瞬だけ、ステイルの動きを止めるも。

直後『脳内』に直接響いてきた、


『―――私のために戦って!』


『インデックス』の声が彼の背中を押した。
『ここにいるインデックス』ではない、『彼女の声』が。

その瞬間、ステイルは全身から炎を吹き出しては魔人化。


角のある炎の衣と、手先には炎剣を形成―――。

67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:10:02.45 ID:g5k8u3BLo

上条はインデックスがいる以上、
その場を離れざるを得なかった。

咄嗟に彼女を抱えた上条が離れた直後、
吹き荒れた魔界の業火が何もかもを溶解させ、周囲は一瞬でオレンジの灼熱の海に変わったのだから。

神裂「―――っ」

その時、神裂が前へと一気に跳び出した。
それはステイルを無視して上条を追う軌道であったが。

直後、彼女の前の『炎の中』からステイルが出現しては立ち塞がった。
体を炎にして先回りしたのだ


この一帯は今や、ステイルの『体の中』。


神裂「…………そう……ですか」

灼熱の飛沫をあげなから、ステイルの前20m程で停止した神裂は
何かに納得したかのように小さく呟き。


鞘に納まっている七天七刀の柄へ、添えるように手をかけた。


神裂『―――わかりました』


そして声にエコーがかかり、輝きを増す瞳と。


淡い『青い光』を纏い始める体。

68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:11:59.94 ID:g5k8u3BLo

ステイル『―――』

もう止まらなかった。
もう後戻りもできない。
もう選択は無い。


戦う、その一本道のみ。


いくら上条が庇ってくれてるとはいえ、インデックスに万が一あることを考えて、
さっきのような追い払い方は絶対にしてはならないのに。

でも己はやってしまった。

どうかしている。
どうにかなってしまっている。

『どうしてこんな―――』


なんとか全うでありつづけた一部の心が、
衝動の荒波に揉まれながらも懸命に叫んでいるが。


『僕はどうしたら―――僕はどうなって―――僕は一体何を―――僕はなぜ―――わからない』


到底、流れを曲げる力など無かった。


『教えてくれ、上条』


『教えてくれ、土御門』


『教えてくれ、インデックス』


『教えてくれ―――』


そんな懇願の声をあざ笑うかのように、
戦いの火蓋はあっけなく切られ。


『助けてくれ―――』


次の瞬間には、炎剣と七天七刀の鞘が衝突する。


明確な殺意を帯びて。



『――――神裂』



―――

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:16:26.25 ID:g5k8u3BLo
―――

スフィンクスを抱えて丸まっているインデックス、彼女を腕の中に抱き、
上条は懸命に遠ざかっていた。

後方で荒れ狂っている炎から。

当然着替えの入ったバッグなんかも持っている場合ではなく、早々に手放し。

道路を壊す事もやむなし。

一歩一歩アスファルトを大きく砕くほどの力で地面を蹴っては、
インデックスが耐えられる範囲の最高速度で飛び進む。


上条「―――」


だがその行動とは逆に、意識は離れるどころか後ろに向いたまま。

ステイルと神裂に。

あの二人が本気で殺しあうなんて―――絶対あってはならない。
誰よりもインデックスのために戦い続け彼女を守ってきた二人なのだ。

そんな二人が―――。


上条「―――」


しかし。

あの瞬間は離れるしかなかった。
離れなければ、インデックスもステイルの業火に巻き込まれていたのだから。

防衛としてまた魔女の力が発動するにしても、
再び彼女をあんな状態にさせるなど論外。

下手な刺激は絶対に与えられないのだ。

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:23:25.80 ID:g5k8u3BLo

だが、一旦離れてここから戻る、という選択もある。

むしろ今の上条はそれを考えていたのだが。
そこで大きな問題にぶち当たった。


禁書「―――戻ろうよ!!!」

腕の中で上条の襟元を強く掴んでは、
グイッと顔を近づけて。

禁書「―――とうまっ!!!戻らなきゃ!!!」

そう叫ぶインデックスの声をも、黙って無視しなければならない問題が。

上条「……」

一帯は業火に包まれているであろうから、
インデックスを中に連れてはいけない。

となると当然、
二人を止めに行くのならば彼女を外に置いて行く必要がある。


禁書「―――止まってよ!!!止まって!!!!!」」


上条「―――」


そして当然、それは不可能。


状況が状況、彼女を一人にしてはいけない。
それは絶対に避けなければならない。

何が何でも、だ。


インデックスに上条一人だけでは、戻ることなどできなかった。

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:25:16.79 ID:g5k8u3BLo

と、その時。

上条「―――」

大通りの向こうに一つ、
見覚えのある人影が飛び出てきたのが見えた。

長い槍を頭上に掲げ、
目立つように腕を振っている女性。


上条「い、―――五和?!」


禁書「―――あっ!」

上条は即座に両足でアスファルトを削り飛ばしては、
急ブレーキをかけて豪快に止まった。

五和「―――上条さん!!」

舞い上がった粉塵に少し顔を背けながらも、
二人の下へと駆け寄ってきた五和。

五和「―――っ……」

とそこで、彼女は上条の前にきて急にピタリと立ち止まった。
インデックスの顔を見ては、驚きの色を浮べて。


五和「……ぁ…………本当に……最大主教と……」


そしてそう呟いた。
それとほぼ同時に。

禁書「…………その槍……」

こちらはやや訝しげな表情で五和の槍を見ながら。

72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:28:02.58 ID:g5k8u3BLo

上条「……!」

インデックスの反応の意味はわからずとも、
五和の方はすぐに上条は悟った。

ローラ=スチュアートとインデックス、
両者のとんでもない類似性を直に『気付いて』驚いているのだろう。

五和もまた、
何らかの方法でローラ=スチュアートが纏っていた『偽装の認識』を破っていたのだろう。

上条「五和!」

ただ、彼女が戻るのを黙って待っている時間は無い。

五和「あっ……!す、すみません!」

びくっと体を揺らしては、五和は慌てた調子で。

五和「プリエステスとステイルさんは……やっぱり……!!」

上条達が確かに二人しか居ないこと、
そして背後で立ち上る業火を見てそう続けていたところ。

上条「………………」

ステイルと神裂、合流した五和。

そこで上条は思い当たった。


五和がいる今なら、『戻れる』のではないか、と。

73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:30:54.93 ID:g5k8u3BLo

ステイルと神裂を止める間、インデックスは五和に守ってもらうのだ。

さすがに大悪魔などを相手にすればどうしようもないものの、
五和だってかなりの手錬れだというのをウィンザー事件の時に再確認している。

彼女も信頼できる強さを有している。


五和「あの―――」


上条「細かい話は後に!」

五和が何かを口にしかけたところで上条は言葉を被せ、

上条「まずはステイルと神裂を止める!」

禁書「ついて来るんだよ!!」

上条の言葉に力強く頷いては。

五和「―――はい!!」

五和も言おうとしてたこともそれだったのか、
特に戸惑うことなく彼女も強く頷いた。


そして一行が踵を返し、夜空を照らし挙げる業火の方へと向か―――おうとしたその瞬間。


「―――だめよ」


立ち塞がれた。


そこに響いた四番目の声、いつの間にか背後にいた魔女。



長い長い、金色に輝く髪をふわりと靡かせている―――ローラ=スチュアートに。

74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:33:36.54 ID:g5k8u3BLo

三人はまさにその瞬間、言葉を失っていた。

ローラが背後に突然現れた、という事と。
『偽装の認識』をもう纏ってはいない彼女の姿を見て。

特にインデックスは、完全に頭が真っ白になっていたらしく。


禁書「……あなたは………………あなたは…………」


目を大きく見開いてはじっと。


禁書「…………『夢』で…………」


吸いつけられるようにしてローラの顔を見つめていた。

と、その時。

五和が一瞬で凄まじい形相になって動く。
彼女はフリウリスピアを握りこんで、その切っ先をローラへ向け―――ようとしたが。

両手で槍の柄を掴むことすら叶わないほどに早く。

五和「っ―――」

ローラが右手に持つ、青いフリントロック式拳銃の口が五和に向いていた。

上条「―――っ」

それを見て咄嗟に。

左手で腰から黒い拳銃を引き抜いては、
上条もローラの頭に突きつけて。


上条「なっ……何してやがる!!!降ろせ!!!!」


だがローラは余裕たっぷりに。


ローラ「―――果たして撃てるのか?んん?」


そんな彼をあざ笑った。



ローラ「―――『想い人』を」



その左手が力み、激しく震えている上条を。

75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:34:45.99 ID:g5k8u3BLo

当然。

上条「―――………………!!!!!」


上条には引き金が引けるわけが無かった。

頭ではわかっていても。

心が判別できない。
同じと認識してしまう。

この目の前のローラとインデックスが『同一人物』だと。

上条「うるせえ!!!!降ろすんだよ!!!降ろせ!!!」

息を荒げていくら叫んでも、それはハリボテ。
どう足掻いても彼がローラに危害を加えることなどできなかった。

彼がインデックスを想う限り、永劫に。

五和「上条さん!!!逃げてください!!!早く!!!!早くっ!!!!!」

そして半ば叫びながら五和はそう上条に言葉を放つも。
それも彼の性分上、不可能なこと。

上条「…………!!!!」

その時、ローラは。
いかにも耳障りといった顔で五和へと顔を向けては、ジロリと睨んだ。

そして。

ギチりと、ローラの拳銃の引き金が軋み―――。



ローラ「―――邪魔でありけるのよ。『ネズミ』は」



―――魔弾が放たれた。


だがその魔弾は、五和の魂を刈り取りはしなかった。
直前に標的が変わったのだ。


それは、一気に後方から伸びてきた―――『銀髪』のウィケッドウィーブ。


この時、一瞬で形相が変わったのは―――今度はローラの方であった。

76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:37:51.65 ID:g5k8u3BLo

上条「!!!!」

五和「―――!!!!!」

その突如起こった出来事は、
上条ですらまともに認識できない程の速度で。

そして上条を遥かに超える規模の力が爆発的に吹き荒れては激突した。


ローラは瞬時に振り向むいては両手両足から、
まるで舞うような挙動で魔弾を立て続けに放ち、地面を蹴って空高く跳ね飛んだ。

放たれた大量の魔弾が、どこからともなく現れたウィケッドウィーブに叩き込まれていき。
鉄線が弾け切れるように、銀髪がどんどんぶち切れていく。

しかし焼け石に水とはこのこと。

ローラの弾幕などものともせず、
ウィケッドウィーブは再生どころかさらに増強・加速されて彼女へと伸びていく。

ローラ『―――Ha!!』

それへ向けて、今度はローラもウィケッドウィーブを放つ。
金髪で形成された巨大な足が虚空から出現しては、彼女の動きに連動して放たれ、
銀髪の束を弾き飛ばしていく。

だがそれでも状況はまるで好転しない。

ローラ『チッ―――!!!!』


彼女の放つウィケッドウィーブの威力はそれはそれは並外れていたが、
この銀髪はまさに桁違いだった。

遥かに上回る力と規模の前に、ローラは見る見る追い込まれていき。


そして上方の気配に気付くが、既に遅し。

77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:39:24.87 ID:g5k8u3BLo


ローラ『―――』


この銀髪の主、真っ赤なボディスーツを纏った『正統派』最強の魔女がすぐ真上にいた。

くびれた腰を更に捻り、
長くしなやかな足を溜めて―――今、この瞬間に蹴りを放つ姿勢で。


ジャンヌ「―――Yeeaaa!!!!」


そして放たれた蹴りが、
振り向いた瞬間のローラのわき腹に食い込み。

彼女は衝撃で声を漏らす暇さえなく、その強烈な一撃で沈み。

下方に待ち構えていたウィケッドウィーブに叩き込まれた。


それは本当に一瞬の出来事。

上条達が地に伏せることすらできなかった程。


そしてその一瞬で、ローラは捕縛されていた。



五和「―――ジャンヌさん……!!」



ジャンヌ「―――また会ったな。ローラ」



―――ジャンヌの圧倒的な力で。

78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:40:47.25 ID:g5k8u3BLo

ローラ「………………………」

地面の上に仰向けに横たわる姿勢で、
ローラは頭上に立っているジャンヌをジロリと見上げていた。

銀髪のウィケッドウィーブにきつく巻かれながら、無言のまま。

ジャンヌ「……悪いな。状況が整理できるまで拘束させてもらうぞ」

ローラ「………………………」

それでもローラは無言。
キッと口を引き締め、目を細めて睨み上げていた。


上条「な、な…………」

禁書「え…………え!?」

当然上条とインデックスは状況がまるで掴めず。

ジャンヌ「五和。状況を説明してやんな」

そこで彼等二人に話をするよう、
促しつつジャンヌが振り向いたその時。


彼女がインデックスの顔を『直に初めて』見た瞬間。


ジャンヌ「――――――――なっ―――」



禁書「…………?」



ジャンヌは完全に硬直してしまう。



ジャンヌ「―――メアリ―――いや―――ローr」



これが、彼女がここで犯したたった一つのミス。
この正統派最強の魔女にできた唯一の『隙』であった。

そして当然。

ローラはこの瞬間を見逃さなかった。

79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/07(火) 23:47:22.89 ID:g5k8u3BLo

ニッと、ローラが笑った刹那。


禁書「―――ッ゛」

上条「!」

インデックスの体がビクンと跳ねた途端。
直後、どこからともなく溢れ出した『青い髪』のウィケッドウィーブが、周囲を一気に覆い尽くした。

ジャンヌ「―――!!しまっ―――」

そこにいる者達が皆、お互いの姿を確認できないほどの密度で。
いや、実際に一時的に全ての知覚を完全遮断していた。


そしてこの青髪の舞は瞬時に終わる。


『全て』をまんまと運び去った上で。

ローラもインデックスも。
上条も五和もまるごと全てを。


晴れ上がり、青い髪が姿を消した後には、
ジャンヌと彼女のウィケッドウィーブしか残っていなかった。

上条・インデックス・五和がいた場所は、
地面ごとおおざっぱに抉り取られて消えており。

ローラが巻かれていた空間は蛻の殻。

ジャンヌ「クソッ―――!!!!!」

そしてそのウィケッドウィーブの束の淵には、今しがたつけたばかりのキスマークと。
金髪で編みこまれた「Dear Janne」という言葉が添えられていた。



ジャンヌ『―――ロォォォォラァァァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!!!!!』



後に響いたのはとてつもない怒号。


ミスを犯した不甲斐ない己。
そして己を舐めてコケにしているローラ。

それらへの憤怒に駆られたジャンヌの、
腹の底から放たれた化物染みた咆哮であった。


―――


84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 13:40:28.58 ID:qpa7IMCBo
―――

天は漆黒の空、地は黒い『霧状』の浅い海。
そんな光景が広がる魔界の奥底の一画、煉獄の中に、ぽつりと二つの円形ドームが並んでいた。

一つは魔女の歴代長の像が並び立っている霊廟。

もう一つは、カンタベリー大聖堂の地下から運び出された『神儀の間』。
『今の人間界』に深く関わった存在らの像が連なっている巨大な神殿だ。


そしてこの神殿のホールの中央には今、
小さな円テーブルを挟んでチェスに興じている二人の魔女がいた。

安価な俗っぽいソファーに寝そべって、キャンディを咥えているベヨネッタと。
精巧な彫刻が施されている玉座に座す魔女王アイゼン。

二人は黙々端端と駒を動かしては、
作業が始まる時間までの暇を潰していた。

アイゼン『ほう。人間界侵攻に備えてアスタロトとその軍がプルガトリオ入りしたらしい』

どこからかリアルタイムで情報を仕入れているのか、
駒を動かしながらアイゼンが魔界10強の一柱の動向を口にした。

ベヨネッタ「ふうん」

それにベヨネッタは、特に関心無さ気に相槌を打つ。
口の中でキャンディを転がして、その柄を唇で振りながら。

魔界10強が一柱、恐怖公アスタロト。
アリウスのパトロンであり、覇王復活と人間界侵攻を目論む強大な存在だ。
そしてアスタロト本人のみならず、配下のその勢力も絶大。

良くも悪くも様々な方面へ強く影響を及ぼす。
魔界における諸勢力へは当然、ここ一連の騒動で神経質になっている天界もだ。

むしろ、悪魔達が大挙してプルガトリオに進出したとなれば、
天界は到底黙ってはいられない。

85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 13:43:11.63 ID:qpa7IMCBo

『プルガトリオ』。


水面に映る月の姿のように、各世界の像が投影されて交差する領域、
それが『プルガトリオ』、『狭間の世界』。


虚無に投影されて形成している領域のため、果てが無く無限に広がる世界だ。


その遥かなる奥底では、
各世界の像が無秩序に混ざり合った混沌とした光景が広がっており。

逆に各世界に近い階層では、その世界と瓜二つの光景が広がっている。
例えば人間界に特に近い領域では、人間界そのままの空間が形成される。


更に、全く同じ物理的世界の像が形成されるほどに近ければ、
間接的に干渉することも可能である。

そして人間界には直接行けない天界の存在は、この作用を上手く利用して来た。
この最も人間界に近い階層を陣取り、ここから間接的に手を下すのだ。

ただ、このやり方は最終手段であり、
セフィロトの樹などといった制御機構でも解決できない問題のみに限るが。

その『問題』の最たる例といえば、当然魔女であろう。

天使達はここを拠点として魔女に間接攻撃を仕掛け、
乗り込んできた彼女達を迎え撃つ。

魔女にとっても天使の本体を直接殺せる領域であるため、
彼女達は自らプルガトリオに乗り込んで行ったのだ。

そうやって熾烈な戦いが幾多も繰り広げられ。

それでも魔女勢力に決定打を与えることはできなかったため、
四元徳の判断で特例中の特例として、天界の門が開かれて軍勢が直接降り。

アンブラの都が滅んだ後、
このプルガトリオの人間界に近い階層は完全に天界の勢力化になった。


そんなところに、今のこのアスタロトの進出である。

人間界侵攻が目的なのだから、
プルガトリオ内の人間界に近い階層に向かうはず。

となると。

天と魔の者達の衝突が避けられないのは当然となる。

86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 13:52:29.24 ID:qpa7IMCBo

ベヨネッタ「それじゃやっぱり戦争が始まるの?」

ベヨネッタはチェスの思考の傍ら、そう問い返した。
これまた関心なさ気な、そっけない声色で。

アイゼン『場合によっては太古以来の衝突に発展するかもしれぬな』

襟元を飾っている黒い羽毛をゆっくりと撫でながら、
ベヨネッタの手を待ちつつ答えるアイゼン。

スパーダが人の味方についた2000年前は、天界は参戦せずに様子見、
アンブラの魔女との闘争も、直接悪魔と戦った事例は極僅かでどれも小競り合い程度。

まとまった規模の天界と魔界の衝突となれば、セフィロトの樹が形成される以前の出来事、
『常闇ノ皇』と呼ばれる存在に率いられた一大勢力と天界の天津神一派との戦争以来となり。

天界と魔界の総力戦となれば、
全盛たるジュベレウスが軍を率いていた遥か太古の昔、かの魔界との『ファーストハルマゲドン』以来になるのだ。

ベヨネッタ「へぇん。そーれはそれは面白そうじゃないの」

ベヨネッタは駒を動かしてソファーに寝そべり、
神殿の高い天井を仰いではふふんと笑みを浮べた。


アイゼン『行ってはならぬぞ。そなたはここで重要な任があるのだからな』


そんな彼女をジロリと仮面の中から見える瞳で睨んでは、
アイゼンは戒めるように声を放った。

すぐさま駒を動かしながら。

87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 13:54:46.25 ID:qpa7IMCBo

ベヨネッタ「はいはいわかってマスマスはいはい」

そのアイゼンの一手がよほど厳しいものであったのか、
ベヨネッタはむくりと起き上がってはチェス板に面と向かって。

アイゼン『そなたには何度言っても足りぬからな。目を離すとすぐどこかに消えておる』

ベヨネッタ「……ここでの作業片付けたなら……行っても良いでしょ」

アイゼンの言葉にそっけなく返しながら。
目を細めてはチェス板を睨み、尖らした口でキャンディの柄を転がし始めた。

アイゼン『ハン、構わぬが、そなたが自由になる頃には既に事は終わっておると思うぞ』

そんな彼女の様子を見てアイゼンは得意げに笑ってはそう続けた。
背もたれに寄りかかり、襟元の羽飾りを悠々と撫でつつ。


アイゼン『総力戦に発展する可能性は極めて低いしな。魔界が一塊になっての全面戦争は起こりえん』


アイゼン『覇王を討ち漏らさぬ限り、な』


そして仰ぎ見るようにして横を向き言葉を飛ばした。

ホールの北端、一際大きなスパーダ像の台座に寄りかかっている―――


アイゼン『のう?そなたが討ち漏らさぬ限り』


―――バージルへ。


バージル「……」

88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 13:56:48.29 ID:qpa7IMCBo

バージルは相変わらずの冷たい表情のまま、
右手首に嵌められている銀色の腕輪を眺めていた。


琥珀色の時計版がついている骨をモチーフにした造形、『時の腕輪』を。


アイゼンの言葉が間違いなく聞えてるにもかかわらず、
完全に無視し続けて。

アイゼン『ハッ。相変わらず無愛想な男よ。父親と母親の硬質な面のみを抽出したようだな。全く』

アイゼン『やれやれどうしてこうも極端な者ばかりなのか。力ある者達の子孫は』

ベヨネッタ「『グランマ』、ちょっと黙ってて」

一人話を続けるアイゼンに向け、顔を上げぬままベヨネッタはそう言い放った。
苛立ち混じりの鋭い口調で。

しかしそれは逆効果だった。

アイゼン『グランマだと?ふん。事実上不死の我らにとって年齢などなんの尺度にもならぬ』

アイゼン『外見だって安定期を越えれば、変わりなど無いわ』

アイゼン『むしろ、やや童顔な我の方がそなたよりも若く見えるかもしれぬな』

アイゼン『のうバージル!セレッサよりも我の方が若く見えるだろう!?うん!?』

火に油を注いだかのように、アイゼンの話がみるみる加速していく。

ベヨネッタ「ねえ黙っててってば」

アイゼン『まーた反応せんのあの小童めが。女っ気の欠片も無い奴め。人を虜にする魔女の血を本当に受け継いでおるのか?』

アイゼン『そういえばジャンヌもジャンヌだ。歴代最高峰たる魔女の癖して、あそこまで色気が無いとはいかなることか』

アイゼン『その点、全身から溢れるそなたは良い魔女になったな。まあ、ややハレンチ過ぎr』

ベヨネッタ「黙れつってんだろ糞婆」

89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 13:58:51.60 ID:qpa7IMCBo

ベヨネッタがそう吐き捨てながら、ようやく駒を進めた直後。


ジャンヌ『アイゼン様』


通信魔術によるジャンヌの声が、虚空から響いた。
ベヨネッタとは違う、アイゼンへの並々ならぬ厳かな敬意を篭めた声が。

アイゼン『お、噂をすればとやらだ。ローラ=スチュアートを捕えたか?』

アイゼンは相変わらず仮面の下から薄笑いを覗かせ、
ベヨネッタは不機嫌そうに口を尖らせていたが。


ジャンヌ『いえ…………それが……』


そのジャンヌの口ぶりで、場の空気が変わる。

バージルはスッと顔を挙げ。
ベヨネッタはピクリと目尻を動かしては細めた。

そしてアイゼンは真顔なのかまだ笑みを浮べているのか、判別がつかない『不確かな』表情に。


ジャンヌ『…………捕え損ねました。完全な私のミスです』


アイゼン『ふふふ、さすがは天界どころか我らの目をも逃れてきた程。精強優秀なアンブラの子であることは間違いなさそうだな』


ジャンヌ『そこに関してもう一つあります………………………………禁書目録をも奪われました』



アイゼン『…………………………ほう……うん……ふむ……』

90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 14:04:16.79 ID:qpa7IMCBo

その瞬間、バージルが台座にもたげていたその身を起き上がらせた。
素早く閻魔刀の鞘を手に取って。

だがそんな彼を、アイゼンは緩やかな視線でなだめる様に止め。

アイゼン『どうせそなたの事、傷一つつけまいとして向かったところをつけこまれたのだろう?』

ジャンヌ「…………その通りです」

微笑しているとも見える表情のまま、
ゆっくりとチェス板に手を伸ばしては一つの駒を取り。

アイゼン『ならば次は』

こつん、と叩くように置いては一手を下して。



アイゼン『殺めるも已む無し』



さらりとそう口にした。


アイゼン『話ができる程度に生きてれば良し、としておったが仕方あるまい』


ジャンヌ『……………………』


アイゼン『人間時間で50分以内に「障害」を全て「排除」し、禁書目録を神裂に合流させておけ』


そして同じ涼やかな調子で告げた。


アイゼン『それが成されなければ、我が出向き手を下す。よいな?』


ジャンヌ『…………わかりました』

91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 14:06:41.41 ID:qpa7IMCBo

アイゼン『して、どこに禁書目録を連れ去ったのかは把握しておるのか?』


ジャンヌ『はい。プルガトリオに。人間界に近い階層のどれかに逃れたかと』


アイゼン『ほおう。ならばこれを念頭に入れておけ。アスタロトの軍勢がプルガトリオに進出したらしい』

アイゼン『当然、人間界寄りの階層を目指しておることだろう。では励め。早急なる報告を待っておるぞ』


ジャンヌ『……はい』

ベヨネッタ「…………」

ジャンヌとの通信がそこで終わったところで、
さて、とアイゼンは玉座から立ち上がり。

アイゼン『仕舞いだ。片付けておけ』

ベヨネッタ「……じゃっ私の勝ちってことでOK?」

アイゼン『なあに寝ぼけておる。良く見ろ』

軽く指を鳴らしては床に魔方陣を出現させて、
己の玉座を沈ませて片付けて、バージルの方へと歩いていった。


アイゼン『聞いたな。人間時間で50分、これまでに我らも作業しておくぞ』

アイゼン『そなたも「絶頂の腕輪」の最終調整を済ませておけ』

そう離れ際に、背中越しに告げながら。


ベヨネッタ「…………………………………………げっ……チェックメイトかよ……」



そしてぼそりと呟く、
食い入るようにチェス板を睨んでいるベヨネッタの声が静かに続いた。


―――

92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 14:08:44.11 ID:qpa7IMCBo
―――

学園都市。

とある病棟の一室。

キリエ、ルシア、佐天を『見送った』ばかりの二人、
トリッシュとレディが無言のまま佇んでいた。

トリッシュはシーツをマントのように羽織ってはベッドに腰掛け、
レディは病室の角にある椅子に足と腕を組んで座っていた。

交わされる言葉は無い。
二人とも押し黙り、病室の中を重苦しい空気で満たされていく。

キリエ達三人が拉致されたことは一応、
銃でダンテを繋がりをもっているトリッシュが彼に事情を伝えたが。

トリッシュ「…………さて……私達はどうしましょ」

それだけだった。

今、ここでできることは。
キリエ達は完全に手を離れ、ここにいる彼女達からは一切干渉できないのだ。

レディ「…………何も無いわね」

沈黙を破ったトリッシュに、
レディは呟くようにして声を返しては。

窓向こうの闇夜の学園都市、そしてその夜空を見やった。

街中には少し前から鳴り始めていた避難を促すサイレン、

空からは複数の爆音が響いていた。

レディ「…………」

レディが見知っている二人の少女を乗せた、
地獄へと向かう編隊の轟音が。

93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 14:10:13.45 ID:qpa7IMCBo

とその時だった。

トリッシュ「―――」

トリッシュが何かを感じ取ったのか、ピンと背を伸ばしては目を大きく見開いて。

レディ「―――」

次いでレディも気付いて立ち上がったその瞬間。
窓の外の夜景が、突如紅蓮の光りで溢れ。

遠くにて巨大な噴炎が一斉に巻き上がっては、一つの区画ごと飲み込み。

そして大地を伝ってきた衝撃波が、
病棟を大きく揺るがした。

トリッシュ「あれは―――」

まぎれも無くステイル=マグヌスの炎。

トリッシュがその言葉を言い切る前にレディは、
壁際に置いている巨大なバッグの方へと駆けては屈み、すばやく『準備』をし始めた。


嬉しそうにほくそ笑みながら。


バッグから取り出した格子状の拘束具で固定されている魔導書を、鎖で腰の後ろにひっかけ。
銃の弾倉が入っているポーチを腰の両側へと素早く装着していき。

30cm近くの黒い杭が差し込まれているベルトをブーツ、更に前腕に手甲のように巻き。

サブマシンガンのベルトを交差するように肩から襷がけ。

手榴弾やその他霊送の類が入った小さなリュックを背負い、
反対側の肩の後ろには、短いソードオフショットガンの入ったホルスターを。

そしてロケットランチャーに巨大な弾を装填しては。


レディ「『フル』で持ってきた甲斐があったわね」


レバーを引き、仰々しい駆動音を立ててニヤリと一笑い。

94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 14:12:14.78 ID:qpa7IMCBo

トリッシュ「見越してきたかのようね」

そんな準備の良い完全武装のレディを眺めつつ、トリッシュが目を細めてボソリと。

トリッシュ「少しガツガツしてみっともないんじゃない?」

レディ「仕方ないじゃないの。最近は欲求不満なの」

トリッシュ「まず、彼が戦ってる相手が何者なのk」

レディ「はいはいはいOKOK大丈夫だから。怪我人は黙って寝ていなさい」

トリッシュの小言染みた言葉を流して、
レディはサブマシンガンの片方を手に取ると窓に向けて一連射。

高度な術式が施された魔弾は、
学園都市製の強化防弾ガラスをいとも簡単に突き抜け。

続けてロケットランチャーを大きく引いては。

レディ「Si―――Ha!!」

ハンマーのように振って、亀裂が入った窓を叩き割った。


そして破片散らばる窓枠にひょいとあがり。


レディ「変な事しようとするんじゃないわよ。どう見ても自覚している以上に弱ってるから」


サングラス越しにそうトリッシュに言いつけをし、
返答を待たずに飛び降りて夜の街に消えていった。


トリッシュ「………………わかってるわよ」


―――


95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 14:14:38.63 ID:qpa7IMCBo
―――

「…………あァ?」

ふと気付くと、
そこは奇妙な場所であった。

見慣れた学園都市の街並み、ではあるのだが、
まるで『陽炎』のように像がぼやけ揺れている。

明るさと色合いは、
昼と夜を混ぜたかのようななんとも居心地の悪いもの。

「…………ンだここは?……あの夢じゃあねェな……」

かつて己が殺めた、
『空洞の目』をした大勢の妹達に見つめられるあの夢を思い出すが。

確かな共通点は、この独特の不安感のみ。

そもそもこうして『夢なのか?』とはっきり疑念を抱ける時点で、
いつもとは大きく違う。

妙に意識がはっきりしているのだ。

まさしく普通に起きているかのよう。

「…………」

ふと思う。

まさかこれは現実では?

以前の彼ならありェねェと一蹴しただろうが、今は違う。
天界や魔界、そして現実離れした存在を現に知っている。

何らかの影響で、一瞬で世界が変わってしまったのかもしれない。

もしかするとダンテのような規格外の存在の力で、
巻き添えを喰らって気付かぬう内にもう死んでしまっているのかもしれない。

と、思考を巡らせていくが。

次にこの奇妙な世界で起きた出来事、



『よう。「メインプラン」』



『とある男』と再会したことが、
やはり『現実ではない』と彼が決定付ける大きな証拠となった。

ただそれも、すぐ後に認識が甘かったと言わざるを得なくなるが。

96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 14:17:32.64 ID:qpa7IMCBo

「―――オマエは…………」


背後から響いてきた、聞き覚えのあるその声に。
一方通行はすぐに振り向き、彼の姿を見た。

長めの茶髪に、スーツを着崩したホストのような格好の男を。

『元気にしてたか?』

男はポケットに手を突っ込んでは、
その端正な顔が台無しになる程にニヤニヤと下品に笑った。

「……チッ……夢の中にまで、オマエのその胸クソ悪ィ面を見るなんてなァ」

彼は舌打ちをしては、
こんな苛立つ幻想を作り出してしまう己の脳を恨んだが。


『ああ夢、夢か。確かに「コレ」は夢だな。テメェにとっては』


「……………………あァ?」

そんな男の、意味深な言い回しに違和感を覚えた。

『おっとそんなに身構えなくて良い。俺は別にテメェを憎んだりはしていねえ』

彼の目が鋭くなったのを警戒されたと捕えたのか、
男は今度はいかにもな表情で爽やかに笑みを浮かべ。

『「こっち」に来て様々なことがわかってな。俺がこのザマになったのは俺の自業自得だとも知ったし』

ポケットから右手を出しては、その己を手を見つめ、
ゆっくりと顔の上にかざして。


『俺がやってた事も、まるでムダだったというのもな』

「(………………こィつ)」

その口ぶり、言葉を聞いた彼の意識の中に、
ふと一つの推測が沸いた。


『メインだろうがサブだろうが、アレイスターの手の上にいる以上、「結果」は同じだって事だ』


「(俺の意識とは―――)」

かつて己が叩き潰して『脳だけ』にしたはずの『この男の映像』が。

今目にしているレベル5第二位―――


『要は、俺は見誤ってだ訳だ。アレイスターの大きさを』


―――『垣根帝督』が、己の意識とは全く違うもので成り立っているのでは、と。


「(―――完全に隔絶してやがる?)」


己の深層意識が形成した像ではない?、と。


97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 14:19:56.73 ID:qpa7IMCBo

それを裏付けるかのように。

垣根『色々「メガネちゃん」に聞いたんだ。ああ、メガネちゃんってのは「ここ」の「先客」な』

垣根は彼の今の意識などに一切影響されず、そのまま話を続けていく。

垣根『この世界の構造、俺達の力の本質、魔術、魔界、天界の存在』

垣根『俺達はどれだけ井の中の蛙だったか。外を知らずに、狭い底辺世界で足掻いていたってわけだ』

「…………ハッ。テメェがどれだけ『世間知らず』だったかは俺も去年気付いたぜ」

推測が徐々に確信に変わる中、彼の方からも言葉を交わらせていく。
反応を見て更に正確に判断するべく。

垣根『スパーダの息子を知った時はそれはそれは驚いたな』

垣根『その直後に、接続したテメェの「起動」で脳を少し持ってかれちまったけどな』

「……そィつは悪かったな。全部焼き潰しておけば良かったか?脳だけだと惨めだろ?」


垣根『いや、今となってはその必要は無い。「もうすぐ」残りも焼かれるんでな』


「―――……何だと?」


垣根『俺はもうすぐ死ぬ』

「―――焼かれて、だと?」

『焼かれて』、そう、ここが重要であった。
あの魔帝の件の時と『同じよう』に焼かれるのか、と。


垣根『ああそうだ。前と同じようにな。今度は全部もってかれる』


「―――」

そしてあの時と同じように焼かれるということは―――同じようにミサカネットワークに接続し―――。


98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 14:23:10.45 ID:qpa7IMCBo

と、そこでその内面が表情に滲み出ていたのか。

        ラストオーダー
垣根『ん?「最終信号」の今回の調整、テメェも許可したんじゃなかったのか?』

垣根が肩を軽く竦めながらそう聞いてきた。

「…………」

それは確かに。
しぶしぶだが、彼女に手が加えられることを了承した。
アレイスターのプランが、学園都市を窮地から救う策だと聞いて。

具体的な内容はいまだ教えられていないが。

「……あれはソレのための調整か?」

垣根『ソレだけじゃないがな』

「……俺とオマエをまた繋げて、アレイスターは何をするつもりだ?」


「またあの―――『黒い羽』を俺に生やさせるのか?」


その彼の問いに、
垣根はニヤリと薄笑いを浮かべては。

垣根『それ以上だ。次はそこから更に「先」に進む。革新的な「進化」がテメェに起こる、らしい』

愉快気にそう告げた。


「…………」

進化。

その言葉を受けて、彼は己の両手にふと目を降ろした。
肘から先が黒い両手を。

垣根『詳しくは知らない。メガネちゃんから聞いただけだ。そのメガネちゃんも、「同類」から聞いただけらしいしな』

その彼の次なる言葉を予測してか、
垣根はそう先に答えては。

垣根『だがただ一つ、俺でも保証して言えることがある』

続けて告げた。


垣根『テメェのその体の変質が「完了」するってことは確かだ』


一つの確定事項を。

99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 14:25:41.06 ID:qpa7IMCBo

その言葉を受けた彼は、
数秒間ほど己の両腕を見つめて。

「……はどォなる?」

垣根『あん?なに?』

「……ラストオーダーはどォなる?」

そのまま声だけを垣根に飛ばした。

垣根『知らんよ』

垣根は即答しては、呆れがちに溜息をついて。

垣根『……こんな時まであのガキかよ。自分がどうなるかに興味は無いのか?』

「…………じゃァ聞こォか。俺はどォなる?進化とやらが『完了』したら」

垣根『アレイスターが必要としているのは、その進化が完了した力と器のみ』

垣根『テメェの人格は消去するつもりだろう。必要ないらしいからな』

「……つまり俺は死ぬのか?」

垣根『死ぬとも言えるな。永遠に目覚めない眠りにつく、といった感じか』

垣根『実は俺も同じだ。脳が全て焼かれるよりも前に、俺はAIMごとテメェに取り込まれて自我を失うからな』


「……なるほどなァ。『結果は同じ』、か」

そこで、先ほど垣根が口にした表現の意図に気付いた。
プランのメインだろうがサブだろうが、文字通りその結末は同一なのだと。

100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 14:29:21.03 ID:qpa7IMCBo

そんな、己の両手を眺めたままの彼を見ていて。

垣根『随分と落ち着いているんだな』

垣根がつまらなそうに口にした。

「ハッ。ここ最近は色々あったからなァ。図太くもならァ」

それに対して、彼は吐き捨てるように返した。

垣根『つまんねえ。リアクションは重要だろうが』

「悪ィな。焦っても意味が無い時くらいはわかるよォになってきたからな」

垣根『ふん。今は落ち着いて考えて状況分析をってか』

とその時。

「―――……っ」

突如、この陽炎の街の像が大きく乱れ始めた。
映像に激しくノイズが走ったかのように。

垣根『誰かがドでかい力を学園都市の中で解き放ってるな、そのせいでこの街のAIMが乱れてるみたいだ』

そして垣根の姿も大きく乱れていた。

「……誰かが?」

垣根『ああそうだ。話したかった事がもっとあったが、これじゃあ仕方無いな』

乱れている像の垣根は、いかにも残念そうに溜息をついては。


垣根『「外」が騒がしくなって来たぜ。「起きた」方が良いんじゃねえのか?、一方通行』


一方「…………そうか」


垣根『哀れな第一位。またすぐに会える。そして次が最期だろうなあ―――「お互い」にとって』


そしてそう別れを告げかけたところで。

垣根『って待て待て。これだけは言っておかねえと』

何かを重要な事を思い出したのか、慌てて早口で


垣根『フィアンマとかいったか、あの優男が死んだ瞬間から、「ここ」が妙にshjさjdssakdsd』


だが間に合わなかった。
垣根の言葉は途中でノイズの音となり。

一方「―――」

一気に暗転、この夢は終わった。

101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/11(土) 14:31:00.36 ID:qpa7IMCBo

一方「……」

瞼を開くと、見慣れた無機質な天井が見えた。
仰向けのまま、首を横に向けると同じく見慣れた広い部屋の光景。

グループが所有しているアジトの一つ、
そこの中にあるソファーに寝そべっていた。

一方「…………」

寝起きの目を眩しそうに細めながら、むくりと身を起こす。
外からは壁を越えて聞える、非常事態を告げるサイレンの音と。

一方「…………」

漆黒の両腕の肌で感じる、表面が焼け付くような触感―――。


―――戦いの『熱気』。

                   サ ブ
一方「……だからオマエは万年第二位なンだよ』

最後に肝心な部分を言い損ねた垣根に悪態を付きつつ、
前にあるテーブルから水の入ったペットボトルを手に取り。

能力を使わずの『馬鹿力』で蓋を弾き飛ばしては大きく二口ほど飲み。

まだ残りが残っているそのペットボトルを
明後日の方向に投げ捨てては立ち上がった。


一方「クソの役にも立たねェチンピラが」


そう再度、垣根へ向けて吐き捨てて。


―――

107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/12(日) 12:30:02.93 ID:BQpLQipAO
まさかの垣根の登場に俺歓喜

112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/17(金) 23:53:07.45 ID:cEjIRFJfo
―――

暗赤色の空の下の薄闇。
殺風景なその風景が陽炎のように揺らぎ、実体感がどことなく怪しく空間。
朽ちた白亜の柱が転々と、白い靄がかかった地面に連なっている。

ネロ「…………………………………………………………………………」

その傾いた柱の一つに、ネロは寄りかかり腕を組んでいた。
目を細めて難しい顔をして。

彼の3m程前には、地面に倒れている柱に寝そべってる叔父。

ダンテ「……」

無言のまま手を広げるようにして、ネロに話の先を促すダンテ。
少し離れたところの柱には、
二人の会話に耳を傾けているロダンが寄りかかっていた。

ここ魔界に非常に近いプルガトリオの階層にて今、
『拉致』したネロを交えての話し合いが行われていた。

その内容は、ダンテが一通りを『頼んだ』ところまで進んでいた。

ネロ「…………何度も悪いが。今一つ理解できないから、もう一度確認させてもらう」

しばらく押し黙っていたネロがそう口を開いた。
難しい表情で低い声色のまま。

ダンテ「おう」

ネロ「あんたの俺への要望は、覇王復活と魔界・天界の門の開放を済ませるまでアリウスに手を出すなと」

ダンテ「そうだ」


ネロ「そして『なぜ』は聞くなと」


ダンテ「OK、その通り」

ダンテは相変わらずのふざけたノリで、
ぱん、と手を叩いては大げさに頷いては満足そうに笑った。

113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/17(金) 23:53:48.43 ID:cEjIRFJfo

そんな彼の態度に堪らずと。

ネロ「あんた―――ふざけてんのか?」

ネロがやや早口で言葉を放った。
声色は低く確かなままであったが、その調子には明らかに困惑と苛立ちが滲んでいる。

ダンテ「いいや。思いっきり真面目だぜ」

だがネロのその苛立ちに気付いているにも関わらず、
全く気にする風もないダンテ。

ネロ「そうかい、じゃあマジでイカれちまったのか?」

ダンテ「ハッハ、俺がイカれてるのは今に始まったことじゃねえだろ」

ネロ「ああそうだったよな全くよ」

彼の変わらぬ態度にネロは投槍に言葉を返しては、
額に右手を当てて俯いて。

平静を保つためか一度、大きな溜息を付いた後。


ネロ「…………親父が関わってるんだろう?」


ゆっくりと確かめる口調でそう問うた。

ダンテ「……」

同じく低い声であったが、
今度は重く存在感のある覇気が篭められて。

114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/17(金) 23:55:28.62 ID:cEjIRFJfo

ネロ「俺が状況を知っちまえば、俺は絶対に黙っていられねえ」

ダンテ「……」

ネロ「あんたはそう考えてるんだな?」

ダンテ「……」

ダンテは何も答えなかった。
柱にだらしなく寝そべり空を仰いでは、薄い笑みを浮べているだけ。

そしてその薄ら笑いが元々の鋭い目つきをより一層鋭利に、
かつ不穏な存在感を際立たせている。

ネロ「……」

ネロは知っている。
そんな佇まいも、ダンテの『真面目な時』の意思表示の一つだと。

一見すると無視を決め込む風でありながら、
実は表情豊かに答えを示しているのだ。

顔を挙げて直接見ずとも、その様子はありありと肌でわかる。

ネロは『答え』を受け取っては言葉を続けた。

ネロ「……まあ、そいつは当たってる」

ネロ「間違いなく俺はそっちにも顔を突っ込むだろうな」

とそこで。

ダンテ「……俺はお前ら親子の問題には口を出さない」

ダンテが空を仰いだまま口を開いた。
表面上は気だるそうでも、その中には確かな熱が篭められている声色で。

ダンテ「お前がバージルに勘当されようが溺愛されようが知ったこっちゃ無え」


ダンテ「だからお前も『兄弟』の問題には口を出すな」


ダンテ「これは『俺達』の問題だ」


ネロ「…………」

と、そこでダンテはむくりと上半身を起こしてはこう言い直した。


ダンテ「いやまて、違うな、これは『俺達の世代』の問題だ」

115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/17(金) 23:56:51.00 ID:cEjIRFJfo

ネロ「世代……」

ダンテ「俺達は『これまで』を。お前達は『これから』を。それがお互いの領分だ」

ネロ「…………」

          スパーダ
ダンテ「俺達は『 親 』の『尻拭い』をしなくちゃなんねえ」


ダンテ「だがこれがまた難儀でな、色々なのが山積みでそれも全部がただの『やり残し』の作業じゃねえ」

ダンテ「大事なところがスパーダすら把握しきれていない、あやふやなもんまであると来た」

これまた大げさに肩をすくめ、
眉を顰めては笑いつつダンテは言葉を続け。


ダンテ「しかもそれが一番重要な件で、『解釈』は俺達にまるごと任されてるんだぜ?笑っちまうだろ?」


ハッと笑い声を挙げて、
倒れこむように再び柱に寝そべって。

そして。


ダンテ「『俺達の親』の尻拭いだ」


ぽつりと吐き捨てるようにそう呟いた。


ダンテ「甥やガキにやらせる訳にいかねえだろうが」


笑いを含んでいない、小さな声で。


ネロ「……」


116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/17(金) 23:58:46.83 ID:cEjIRFJfo

そんなダンテの言葉を聞いて、
ネロは数十秒間押し黙った後これまた大きく溜息をついては。

ネロ「……あんたも親父と根は一緒だ。自分勝手すぎるってな」

頭を掻きながら、諦めがちに口を開き。

ネロ「だったらやっぱり……一番『まとも』な俺が許容するしか無いじゃねえか」


ネロ「わかったよ。仕方ねえ。承知した」


そして一先ずの納得の意を示した。
親兄弟の馬鹿馬鹿しくなるくらいの頑固さは重々知っているネロとしては、
ここはYESと頷くしか無かったのだ。

いいや、もしNOとする選択肢があったとしても、
ダンテの言葉を聞いたネロはそんな選択は選ばなかっただろう。

何よりもこの親兄弟を信頼しているのだから。

ダンテ「おう」

ネロは柱からもたげていた身を起こし、
立て掛けていたレッドクイーンをその背に背負った。

ネロ「それで親父とあんたが今向かってるのは、そのスパーダがやり残した仕事なんだな?」

ダンテ「ああ」

ネロ「…………対するあんたの心持はまあまあわかったが……親父はどうなんだ?」

ダンテ「見ている『もの』は同じだ。だが『解釈』の仕方が俺とは丸っきり違う」

とそこでダンテは手を広げて、ネロをジロリと見やった。
聞くなと言わんばかりに。


ネロ「あああそうそうわかったわかったよ、これ以上は聞かねえ」

117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/18(土) 00:04:09.40 ID:bEXiuiEWo

ロダン「話はついたな」


そんな二人の話し合いが終わるのを見て、
ロダンが二人に近づきつつ声を挙げた。

ロダン「OK、ではそうと決まったらまずこれを見てくれ」

その彼の声に合わせて、ダンテとネロのちょうど間の中空に、
金色の魔方陣が出現し。

ダンテ「お、何だこれ」

そして『球状の映像』が出現した。
映し出されているのは、静まり返る薄闇の中の巨大な都市。

ロダン「デュマーリ島の今の映像だ」

ダンテ「生中継か?どうやってんだ?」

ロダン「『セフィロトの樹』に侵入して盗み見してる」

ダンテ「ひゅー、さすがだな。どこまで見れる?範囲は?」

ロダン「んなもん今はどうだっていいだろうが、重要なのは彼女がいるってことだ―――」

ダンテの言葉を切り捨てて、
ロダンがパチリと指を鳴らすと映像は一気に都市の『地下』へと潜り。


ロダン「―――フォルトゥナのお姫サマがな」


広大な、とある地下空間を映し出した。


ダンテ「あ、悪ぃ、これまだ言ってなかったぜ」


そこにいる三人―――ルシアと佐天と。



ネロ「―――……ッ?!!キリエッ!!!!!!」



そしてキリエを。


118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/18(土) 00:07:10.57 ID:bEXiuiEWo

ネロが形相を変えてダンテの方へと振り向き、
その口から噴火の如く声を。

ダンテ「待て待て待て待て、まず話を聞け」

発しようとしたした瞬間、ダンテは柱から飛び降りてはそう彼の言葉を封じ、
なだめるように両手の平を向けてどうどうと続けた。

ひとまず声を荒げはしなかったものの、
鼻息荒くダンテを睨むネロ。

ロダン「大丈夫だ。アリウスは彼女を殺しはしない」

ロダン「覇王の力など諸々を手に入れて万全の準備が整うまでは、絶対に彼女に手を出しはしないはずだ」


そこでロダンが横からそう告げた。


ロダン「奴はな、『愛する者を救うが為に修羅となるネロ』を求めている」


激流のように猛烈に駆けていく衝動。
彼女が『まだ生きている』という希望があるからこそ、衝動は攻撃性を強めより焦燥し怒りに満ち溢れる。

しかしキリエが死んでしまっては、そんなリアルタイムな衝動は終わってしまう。

確かに愛する者を奪われた怒りは濃く強いものではあるが、覇気も動きも無い。
落ち着いて『冷めて』しまっているのだ。


ロダン「お前さんの『生』に対する激情、それを欲しているようだな。あの男は」

ロダン「『最も力が漲っている瞬間』のお前さんと戦いたいらしい。全く命知らずな野郎だぜ」


ネロ「…………ッ」

119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/18(土) 00:09:51.93 ID:bEXiuiEWo

そのように新たな情報と状況を告げられて、
喉元まで込みあがっていたネロの怒気もとりあえずは徐々に押さえられていく。

ダンテ「それにな、キリエちゃんを助ける前にお前にやってもらいたい仕事があるんだなこれが」

そこでダンテがそう話に加わって来た。

ロダン「以前、フォルトゥナの地獄門が開いて悪魔が雪崩れ込んだな?」

ネロ「……?……ああ」

いきなりのその確認に意図かつかめずとも。

ネロはかつての記憶を思い出しては小さく頷いた。
教皇サンクトゥスの引き起こした騒乱の際、
フォルトゥナの空を夥しい数の悪魔が覆い尽くしたあの光景を。

そして次の瞬間。

ロダンが指を鳴らして切り替えたその映像に同じ『光景』を見た。

ネロ「―――」

いや、『同じ』ではない。


ロダン「アスタロトのこの第一陣『だけ』で、あれの1万倍以上の規模だ」


規模が桁違いであった。
魔界のどこかなのか、見渡す限りの多種多様の悪魔が地表を多い尽くし、
空もどこまでも多い尽くしている。

ネロ「―――なんだよこれはっ……」

ロダン「プルガトリオに悪魔が大挙して侵入を始めた。人間界に近い階層に向けてな」

ネロ「―――」

ロダン「魔界の門が開けばその瞬間、最初にこいつらが一気に人間界に雪崩れ込む」

ロダン「そうしたらまずは、復活した覇王がいるデュマーリ島にアスタロトをはじめとする首脳が集う」

ロダン「そして覇王が魔界の統一王として名乗った瞬間、他の十強、諸侯の勢力がその旗の下に続き」


ロダン「デュマーリ島から人間界侵攻が『再開』されることになる」

120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/18(土) 00:12:15.87 ID:bEXiuiEWo

ネロ「……」

最初は戸惑ったものの、次第に落ち着いたネロは、
最終的にジッと黙ってロダンの言葉を聞いていた。

ロダン「最終的には間違いなく魔界の全戦力が加わる総力戦となり、2000年前の侵攻以上の同じ規模となるかもな」

ロダン「そして人間界が戦場となった時点で、お前さん達でももうどうにもならないだろう」

ネロ「…………」

そう、このシナリオ通りになってしまったら、
最終的にはどうしようもなくなる。

フォルトゥナだって、襲撃してきた悪魔の規模からすれば被害は最小限に抑えられたものの、
結局あそこまでの廃墟と化した。

この規模では、人間界に進入されたら『無事では済まない』どころの話ではない。

進入してきた悪魔達を全て排除できる頃には、
とうの昔に人間界は完全に滅亡しているだろう。

ネロ『個人』としては悪魔に負けることは無い。
しかし人間勢力は完全に敗北する。

ネロ「……」

そこを考えると話が徐々に見えてくる。

人間界に進入された時点でこちらは敗北。

となるととるべき手はただ一つ、
人間界に進入する前にこの軍勢を『解決』することだ。

『前回』の勝利を導いた、スパーダと同じ戦法で。


ネロ「……つまりだ、俺がやることは―――」


ダンテ「戦場が人間界に移る前に、連中のど真ん中に殴り込み―――」


先手をとり―――。


ダンテ「―――アスタロトの首を獲り、奴の軍勢を魔界へと追い払う」


―――出鼻を挫くどころか完膚なきまで『叩き潰す』。

いつの間にか、再び柱に寝そべっていたダンテがそう横から核心を告げた。


ダンテ「奴等はお前の『獲物』なんだしな」


ニヤリと薄ら笑いを浮べて。

121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/18(土) 00:16:42.75 ID:bEXiuiEWo

ネロ「…………はっ……」

ダンテのその言葉を聞いては、ネロは目を細めて乾いた笑い声を漏らした。

学園都市の病室で、
アスタロトとトリグラフ達は己の獲物だ、とした事を思い出して。

そして別に今もその気は変わっていない。
ネロは右手を力ませては、その指の骨を鳴らして。


ネロ「ああ、さっさとやろうじゃねえか」


そう『快諾』した。
ネロの言葉を聞いたロダンは、サングラス越しにニッと笑い。


ロダン「お前さんが成し遂げればアスタロトの軍は瓦解し、他の十強や諸侯は様子見に入り」

ロダン「その間にお前さんがアリウスを覇王ごと潰し、助けた彼女と共に島を後にする」


ロダン「これの成功に重要なのが『速度』だ」

次は注意する点を告げていく。

ロダン「人間界みたいに界への負荷は考えなくて良い。プルガトリオは基盤が虚無だからな。決して壊れはしない」

ロダン「だがこれだけは覚えておけ。プルガトリオ内からでも、人間界に近い階層では物質領域限定だが人間界に干渉できる」

ネロ「……」

そこまでで、ネロは彼の言わんとしている事を把握。

人間界に干渉できる階層では、その戦いの余波が人間界に達してしまうのだ。
物質領域限定とは言っても、解放された魔剣スパーダのその破壊は想像を絶する。


つまりはタイムリミットは魔界の門の開放ではなく、
アスタロトの軍勢が干渉階層に侵入する前、ということなのだ。


122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/18(土) 00:18:01.87 ID:bEXiuiEWo

ロダン「プルガトリオ内の行き来の仕方はわかるか?」

ネロ「ああ、あんたに拉致された時に『式』は見た」

ネロはロダン達から少し離れては、地を足で軽く叩いた。
すると赤い魔方陣が彼を中心として浮かび上がる。

そして、ダンテとは違って一応使えるからな、と続けて。

ネロ「苦手だが、ま、負荷を考えなくて良いのならいくらでも使える」

ロダン「人間界に近い階層なら俺が迎えに行ってやる」

ネロ「ああ、頼む」

そう頷いては背中のレッドクイーンの柄を握り、
刃の背を肩に乗せてイクシードを噴かす。


ネロ「OK、一発ぶっ飛ばしてくるか」


続けてネロの足元の魔方陣の光りが増して。


ネロ「ダンテ、一つだけ聞かせてくれ」

と、そこで思い出したようにダンテの方へと振り返り。


ネロ「親父は、『これ』をどうするつもりだったのか。あんたは知ってるのか?」


そう問うた。

己達がここに気付づかずに動いていなかったら、
果たしてバージルはどうするつもりだったのだ、と。

己達が動かない場合において悪魔達を追い払う計画があったのか、それとも。


この問題には目を瞑り、人間界の多大なる犠牲をも厭わないつもりだったのか。


ただ目的のために、と。

123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/18(土) 00:20:52.43 ID:bEXiuiEWo

そんなネロの疑問にダンテはさらりと答えた。

ダンテ「物事ってのは、最後には治まるところに治まる。誰しもが思っている以上に、物事の連なりってのは『規則正しい』からな」

確かに声色はさらりとしていたが、妙に意味深な言い回しで。

ネロ「……」

ダンテ「あいつは知ってるのさ。『結果』を。俺と同じくな」



ダンテ「今回の結末は、『過去をなぞりつつ新しい英雄談』になるってな」



ネロ「――――――――――――」


それは表面上は漠然としてて唐突な言葉であるが。
スパーダの孫にあたるネロにとっては、『強烈』な具体性を一瞬で帯びる言霊。

ダンテのその言葉が電撃のようにネロの意識内を走っていく。
過去をなぞる、その部分が突如閃光を発するかのごとく思考の底で主張する。

そう、今この状況はダンテの言葉通りではないかと。


魔剣スパーダを手に。

人間界侵攻というこの良く似た状況で。

同じ戦法で魔界の軍勢に挑もうとしている。


まるで、いいや『まさしく』―――スパーダの生き様をなぞるかのよう。

そこまで思考が至った瞬間。

ネロは『なぜか』戦慄した。

理由は良くわからないが。

これが、なぜかとてつもなく恐ろしい事だと感じてしまったのだ。
そしてダンテがそれに準じるようにぽつりと続けた。


ダンテ「―――それが果たして本当に良いか悪いかは別として、な」


そう、またもや意味深に。


124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/18(土) 00:23:01.79 ID:bEXiuiEWo

ネロ「―――…………」

ダンテ「『そこ』がな、あいつと俺の『解釈』の違いだ」

ダンテ「バージルは『そこ』に気付いてはいるが、問題視はしていない」


ダンテ「俺は『そこ』が核心だと思ってる」


ネロ「…………俺は……」

続けられたダンテの言葉を飲み込んで。
少し黙った後、ネロは口を開きかけたが。


ダンテ「焦るな。お前もいずれ『実感』するさ」


ダンテ「そしてそこでどう解釈するかも、お前次第だ。好きにするがいいさ」


ネロ「………………………………」


ダンテは相変わらず寝そべって空を仰いだまま。
そんな彼をしばらく無言のまま眺めていた後。


ネロ「ああ、そうさせてもらうぜ」


彼に背を向けてはそう言葉を返して。


ネロ「好きにやらせてもらう。俺の気の向くままに―――」


そして魔方陣に沈んでいき、姿を消した。


ダンテ「―――ああ、気まぐれのままに、な」


その返されたダンテの声を聞かずに。

125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/18(土) 00:25:08.40 ID:bEXiuiEWo


ロダン「いいのか?もっと詳しく話してやっても良かったんじゃないのか?」

ネロの姿が消えた後、
ロダンはコートのポケットから葉巻を取り出しては火をつけながら。

ロダン「お前さんと同じような視点で『問題』を捉えたようだが?」

煙を煙突のように上方に吐き出しながら、声のみをダンテへと放った。

それに対し彼は答える。

ダンテ「いんや―――『同じ』じゃあないぜ」

同じく相手を見ずに空を仰いだまま。

ダンテ「似ていても根本的な部分が違う」



ダンテ「あいつは『人間』だからな」



そして空を仰いだまま、言葉を続けた。



ダンテ「ま、…………せいぜい気張れよ、ボーヤ」



今度はロダンではなく、『これから』を担う若き青年へ向けて。


いかにも楽しげに。

愉快気に。

そしてどことなく僅かに。



―――寂しげに。



―――



134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:10:35.28 ID:sDAaF+n5o
―――

噴き荒れる灼熱の炎が、第七学区の一画を飲み込んだ。
物質領域のみならず、魂までを焼き焦がす炎獄の業火が。

並び立っていたビル街は一瞬で溶解し、通りとの境目はもはや判別不能。

オレンジの液体へと姿を変えたコンクリートや鉄骨が、
混ざり合っては火の粉を巻き上げて『川』を形成。

炎獄と見まがうほどの禍々しい様相へと、あたりの景色が豹変していく。

そしてその中、炎となって駆け巡る悪魔『イノケンティウス』、ステイル=マグヌス。

実体化しては炎となりを繰り返し。
領域の中を縦横無尽に移動し、業火の柱を放っては両手先にある炎剣を振り抜く。

その超高速で繰り出されてくる刃を、
七天七刀の鞘で防く神裂火織。

彼女の体は、衣状の青い光に包まれていた。
周囲の景色とのギャップで、まるでオアシスのように涼やかに。

そして涼やか清廉なのは風貌だけではない。
靡く長い髪、しなやかな体、そしてその身のこなしも全て無駄なく洗練されたもの。

神裂『―――シッ』

彼女は全く苦を感じさせずに、
ステイルの繰り出す炎の刃を弾いては鞘を滑らせて打ち流していく。


ステイル『―――オォオオオオオオ!!!!』

この場で彩られる二人の衝突は、
それはそれは壮烈なものであった。

135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:12:14.34 ID:sDAaF+n5o

刃と鞘が衝突するたびに、凄まじい衝撃が空間を揺らす。

猛々しく燃え盛る炎そのもの、修羅の形相のステイルの攻撃はより苛烈に、
『主である魔女』の意志をうけて更に攻撃的に熱と圧を帯びていく。

神裂『―――』

足元に気配を感じ、後方へと瞬時に跳ねる神裂。
直後に、一瞬前まで立っていたその地から吹き上がる巨大な火柱。


そしてその火柱が。


噴出した炎が形を変え、一瞬で『構えているステイル』へとなる。


神裂『―――ッ』

瞬間、後方へ跳ねた体制のままの神裂めがけ、
ステイルの左の炎剣が振るわれた。

神裂は即座に見切り、鞘先で上方へと弾く。

振るわれた炎の刃はとてつもなく重く、
衝突で刃の力が漏れ出しては、強烈な衝撃を周囲にへと撒き散らしていった。

二人を中心として、
足元のオレンジの海がクレーター状に吹き飛ばされ―――るそれよりも早く。

ステイル『―――カッ!!!!』

そんな短いステイルの息継ぎと同時に、右の炎剣で突きが放たれた。
先の一振りを上方へと弾いた直後の、腹部ががら空きとなっている神裂目掛けて。

136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:15:04.92 ID:sDAaF+n5o

神裂『―――』

神裂と良く慣れ親しみ、何度も手合わせをしてきたステイルだからこその、
彼女の隙を狙った一撃。

どんな風に打ち流しどんな軌道をとりどう立ち回るか、
ステイルはそれを良く知っているのだ。

もちろん彼女も即座に反応し、
長い長いその鞘をバトンのようにくるりと回して逆側の先端、
その柄先で打ち流すも。

完全に防ぐことは叶わず。

鞘と激しく擦れ合い、放たれた炎剣の突きは軌道を逸らされるも。
切っ先が彼女のわき腹を焼き抉っていく。

神裂『―――ッ!!!!』

魔の炎はそのわき腹だけではなく、
全身へと焼きつく痛みを走り巡らせる。

歯を食いしばっては、
『音にならない呻き』を漏らしつつ彼女は後方に更に跳ねた。

その時―――前方のステイルの姿が再び炎となり消失。

神裂『―――』

彼の次なる出現地点を割り出すべく、
彼女は瞬間的に今まで培った経験を『直感』で分析。

ステイルの戦闘行動、戦闘時の思考の仕方、そして彼の直感の動き方まで全てを。

ステイルは神裂の戦闘テンポを隅々まで知っている一方、
同じく神裂も良く知っているのだ。

次にステイルが形を成したのは神裂の斜め右後方であった。
炎剣を構え、即座に攻撃を放てる体制で。

しかし彼は先手を取れなかった。


神裂の回し蹴りが一『足』先に放たれていたのだから。


出現したステイルを、
彼のその顎先の未来位置を正確無比に予測して。

そして―――叩き込まれた。

137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:18:42.38 ID:sDAaF+n5o

ステイル『―――ごァ゛ッ―――』

そんな潰れた呻き声を漏らして、
上半身を大きく仰け反らせるステイル。

神裂は振り抜いた足を戻しては軽く一回転して。
続けて鞘の突きを放った。

仰け反っている彼の腹部へと。

鈍くもとてつもない衝撃を伴ってめり込む鞘先。

そして次の瞬間。

強烈な二撃をストレートに受けてしまったステイルの体は、
凄まじい勢いで弾き飛ばされていく。

だが彼の体が地に、
そのオレンジの灼熱の海にぶち込まれることは無かった。

直後。

神裂は引き戻した鞘を腰に構えては柄を握り。

僅か1cmほどだけ刃を抜く。
するとその瞬間、少しだけ見えた刀身から青い光が迸り。


漏れ出したそれらの光が一瞬で伸び―――糸状となり、周囲に走る。


『七閃』。


走る線は従来の『鋼糸』ではなく、バージルから授かった力による『斬撃』が姿を変えたもの。

青い光の筋が瞬く間に格子状に走り、
伸縮しては網のようにステイルを包み込み。

そして神裂が指で引くような動作と連動して絞られ。


ステイル『―――』

ステイルを拘束して縛り上げた。

両足を纏めて縛り、腕は両側に広げるようにして。


そう―――十字状に吊るし上げて。

138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:20:25.97 ID:sDAaF+n5o

ステイル『―――!!ぐッ!!!ア゛ア゛ア゛ッ!!!』

目の周り、顔、首筋に筋繊維と血管がありありと浮き上がるほど、
力んでは潰れた咆哮を挙げて暴れるステイル。

だが光の糸はびくともしない。

むしろ彼がもがくたびにその締め付けを強め、彼の肉を抉っていく。

神裂『おとなしくした方が良いですよ』

そんな彼の『足元』へと神裂は歩み進み、
冷酷な無表情のまま彼を見上げた。


神裂『抵抗するほど、この糸は拘束力と切れ味を増していきますので』


その神裂の言葉を聞いて、ステイルの動きがぴたりと止まった。
ただ、それは諦めたのではなく。
ましてや抵抗の意志が潰えたわけでもなく。


ステイル『…………ナメて……いるのか?』


そう神裂を見下ろした彼の声は潰れ、地響きの如き音。

尋常じゃなく力んでいるためか、
首の動きは油の切れた機械のようにぎこちなく。


神裂『―――……』

そしてその彼の顔をはっきりと見た瞬間、神裂は息を呑んだ。
決して表情には出さぬも。

彼女の呼吸がその一瞬、止まった。


真っ赤に光り輝くも虚ろな、
極度の異常な興奮状態で自我が朦朧としているその瞳を見て。

139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:23:22.89 ID:sDAaF+n5o

植え付けられた戦意に抗えず精神の独立性を失い。
疑念を抱くことすら許されず、ただただ主の意志に沿う傀儡。

これが魔女に心を奪われた者の末路。

だが、彼はまだ完全に傀儡とは化していなかった。
もう『手遅れ』なのだがステイル=マグヌスの意志は確かにそこにあった。


なぜ今もあんなに力み、苦痛に喘いでいるのか。


なぜなら、今だに彼は全てを魔女の意志に明け渡しきってはいないのだから。
ステイル=マグヌスという往生際の悪い男は、いまだに内側で無謀な戦いを続けていたのだ。


神裂『―――』

そしてそこに気付いてしまった瞬間。
彼女の鉄壁の仮面の下、心の奥底。

硬く硬く、何度も心の中で言い聞かせて何重にも固めた『覚悟』に。


その難攻不落の城塞に大きな亀裂が一筋―――。


今、己は妥協することは許されない。
主たるバージルが掲げる目的のため、障害は確実に排除する。

だがそこに、神裂の個人的願望が混じっていないとなれば答えは否だ。

なぜバージルが、神裂を傀儡化せずにその自我をそのまま残したのか。
そのはっきりとした理由は彼女はわからないが、これだけは確かだ。


己が抱く想いが、信念が、バージルの目的にも沿うものであると認められた、ということだけは。


その想い、それは。

『救われぬ者に救いの手を』

世を守り。

人を守り。

友を守る。


何よりも大切な『友』を。


彼等が望む未来を、そして彼等の『生きる未来』を。

140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:24:48.95 ID:sDAaF+n5o

そのためだったら何だってする。

そう胸にして生まれ変わりここに来た。

今までとは違う、これは『真実』を知った上での本当の戦い。
望んでいた戦い、望んでいた場。

バージルに仕え、彼の目的の成就の一手を担い、
そして個人的に己が望む未来をも引き寄せるため、この自分自身の意志をもって刃を再び手にした。


そうしてきたのに―――。

ステイルが完全に傀儡化していたら。
もしくは己が傀儡化していたら、どれだけ『良かった』だろうか。

神裂『―――』


考えては駄目だ、考えるな、と悪魔の心が声高く戒めてくる。
しかし人の心の思考が留まらない。

ここに来る前に押し殺して、完全に隠しこんだ想いが再来する。
何重にも縛したのに、いとも簡単に引き千切って肥大化する。

一時の緩み、一瞬の迷い、一縷の甘さが、彼女の整えられた内面を連鎖崩壊させていく。


人の心とはなんと不安定なのか。
一体どれだけ揺れ動けば、その情念を収まらせてくれるのか。

感情的で、直情的で、道理が通っていない願望は留まるところを知らない。


バージルの気高き僕として仕事は確実に成す、そう、『使い魔』の己がこの障害の排除を望む。


その一方で。


バージルに存在を認められたこの『人』の心が諦めきれない。


『友が生きる未来』―――『ステイルが失われない未来』をも。


どんなに鉄壁の覚悟を決めても、
元から彼女がこれに抗えるわけが無かった。

どれだけ精神を鍛えて戒めて、固く決意しても関係が無い。



最も近き友への、インデックスそして―――ステイルへ想いは本来。



その『城塞』の内側にあるべきものだったのだから。

141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:28:11.61 ID:sDAaF+n5o

どうすればいいのか。

どうしたら。


我が主よ―――教えてください―――私は一体―――。


神裂『―――』

だが声は聞えない。
柄を握っても、主は黙ったまま。

声は何も聞えない。

逆に聞えるのは。


ステイル『―――……抜かない気か?』


地響きの如く低い『友』の声。

神裂『―――』

そしてその声を耳にして、『直感』が余計なことをしてしまう。
良く慣れ親しんだステイルの思考を完璧にシミュレートして『しまって』。


ステイル『…………刃を…………抜かないまま……』


―――刃を抜いて―――いっその事―――


瞬時に頭の中に正確に構築されたステイル像が、声を重ねる。
魔女の意志に潰されて発する事を許されなかったであろう、彼の『本音』を。


ステイル『………僕に……』


―――僕を―――



ステイル『……勝てるとでも……?』



―――殺してくれ―――



神裂『―――』

142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:29:50.18 ID:sDAaF+n5o

神裂『―――』

その表情はいまだ冷静を保っているも、
いまや神裂の内面は乱れに乱れてしまっていた。

このまま彼が縛されていてくれれば、どれだけ良かったか。
ジャンヌがローラを捕らえ、ステイルの契約を解除させることも可能であっただろうに。
時間があれば確かな解決法を見出せていたであろうに。

だがしかし。

最も彼女が安心して背中を預けられるこの男は。


当然、この程度で縛し続けられる程弱くは無かった。


ステイル『オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!』


一際大きな咆哮と共に、彼の全身から業火が溢れ出し。
『七閃』の糸が一本、また一本と弾け切れていく。


神裂『(待って―――!!)』


焦燥する思考が一気に回転を増す。
とにかく解決策を見出すために。


『次元斬りで破断しては?』


閻魔刀のクローン、『子』としても良いくらいにその力を与えられたこの七天七刀。
セフィロトの樹に手を入れるため、その『破断』の性質を特に濃く受け継いでいる。

その力を使えば、ステイルと魔女の繋がりを切断するのも可能か?

ウィンザー事件の際にアリウスの技によって、ルシアに繋がれ囚われたネロ、
その繋がりをバージルが斬り捨てた時のように。

いいや―――これは不可能。

神裂はその『繋がり』が認識できないのだから、斬りようが無い。
ウィンザーの件は、バージルの超越した感覚と識別眼があったからこそのもの。


到底、神裂にはできない芸当であった。

143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:31:10.88 ID:sDAaF+n5o

そんな無駄に終わった思考の間に。

ステイル『オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!』

糸が全て弾け切れ。

ステイルは縛から抜け出して、神裂の前に着地した。

今まで以上の熱と力をその身に帯びて。
噴き荒れる『光』の爆風と渦を巻いて舞う火の粉。

そして。

彼は低い姿勢のまま神裂を凄まじい形相で見据え。


ステイル『―――神裂ィィィィィィィ!!!!』


口から炎を吐き出して叫び、
彼女めがけてその溶けた大地を踏み切った。


神裂『―――』

その咆哮を神裂ははっきりと覚えていた。
つい最近にも耳にしていたことを。

同じ声色で、同じ言葉を。

バチカンで。

ベヨネッタに串刺しにされて横たわり、意識が薄れる中で。


こちらに向かってくるこの声と言葉を―――。


―――力強く呼びかけてくれた彼の声を。


あの時、言葉を返せなかった。

そして今も言葉を返せず。



代わりに返したのは。



神速の一振りであった。

144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:32:51.47 ID:sDAaF+n5o

幸か不幸か。
武人としての体は即座に反応する。

神裂の迷いなどお構い無しに、防衛本能が突き動かす。

瞬時に柄に手をかけては軽く握り。


そして前に踏み込み。


すれ違いざまに抜刀。

以前とは比べ物にならない程の、莫大な力を篭められた七天七刀は、
青い光の軌跡を描いては鋭い金属音を響かせて。

ステイルの首、左側半分を切断した。


ステイル『―――』


神裂『―――』


『悲しき』ことに、それは完璧な必殺の一振りであった。


刃はその一撃で彼の魂へも到達し。

直後、まるで頚動脈からの血飛沫のように。

傷口から真っ赤な炎を噴出しながら、ステイルは倒れこみ。
突進の慣性のまま溶けた大地を抉り飛ばして吹っ飛んでいった。

145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:35:28.75 ID:sDAaF+n5o

そしてそのステイルの体がようやく止まった頃。

神裂『―――ッ―――!!』

神裂の冷徹な仮面が遂に『崩れ』を見せる。
直後、彼女はハッとした表情となり。

ステイルの方を勢い良く振り向いては、
大地に倒れこんでいる彼を見て。

神裂『……ステ……イル?』

呆然とした調子でそう彼の名を発した。

当然、ステイルは反応しない。

彼の体から迸っていた光は消え、
魔人化が解けた事で体の組成が基本形状に戻ったのか、
首から放出していた炎が本物の血へと変わっていた。


神裂『―――…………』


数秒間、神裂は動けず硬直していた。

怖くて、怖くて。

彼の生死を確認するのが。

だがその時、ステイルの体がピクリと動いたのを見て。

神裂『―――』

即座に彼女はその場を蹴って、
文字通り彼の元へと飛んでいった。

146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:38:38.04 ID:sDAaF+n5o

熱してた魔の力が途絶えたからか、
周囲は物理法則では考えられない速度で冷え固まっていく。

そんな固まりかけの地に横たわっているステイル。

彼のすぐ横に神裂が滑り込むように着地しては、
鞘に納めた七天七刀を脇に置いて彼を抱き上げた。

膝の上に彼の上半身を引き寄せ、左手で彼の頭を支えて。

神裂『―――…………ッ…………』

そして何か声をかけようとするが言葉が出なかった。
ステイルの『毒気』が抜けたような、穏やかな顔を目にしてしまって。

彼はそんな、彼女のぎこちない顔を虚ろながらも涼やかな目で見上げて。

ステイル「…………何も……わからなくなった……何も…………」

優しく語りかけるように口を開き始めた。

ステイル「僕自身すら……信用できなくて……」

その声は今にも消えそうなほどにか細くも。
そこには確かにステイルが『いた』。

神裂『…………』

魔女の意志から解き放たれた彼が露になっていた。


ステイル「だが……良かったよ…………」

ステイルはゆっくりと右手を挙げては、
己の頭に回されている彼女の左手先にあて。


『救われぬ者』に差し出された手に。


ステイル「どうやら……君だけは……」


そして言葉を続けた。

神裂の瞳と。


ステイル「―――……君のまま……だったからね……」


彼女の頬の上辺を―――そこに毀れだした一筋の雫を見て。


神裂『―――』


この瞬間、神裂の中で轟音が響いた。


心を固めた城塞が、あっという間に崩れ落ちていく轟音が。

147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:40:24.75 ID:sDAaF+n5o

やっと真実を知って、本当の戦いに乗り出し始めたばかりなのに。

こんな早々に失ってしまう。

最も失いたくない存在の一つを。

しかも己が手で。


最も並び立って共に戦いたかった友を、この手で。


耐えられない。

どれだけ冷酷に徹しようとしても。

根の優しさを偽れない。

善良な心を持つ、人をこよなく愛する女だから。
『聖人』に相応しい清廉な者だからこそ。

耐えられない。

神裂の顔を覆っていた仮面は砕け散り。
彼女の顔は感情に溢れ大きく歪み。


神裂『―――あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!』


放たれた叫びはどこまでも悲痛な色を滲ませて。
彼女はステイルを抱き寄せて。

そして右手で七天七刀を取っては、その柄先を額に当てて願った。

絶大な力を持つ主へ、何とかしてこの男への救いを与えてくれるよう。


救われぬこの不幸者への救いを。

148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:42:13.38 ID:sDAaF+n5o

抱き寄せている手から胸、首元を伝わってわかる。
ステイルの体からみるみる力が抜けていくのを。

ステイル「…………イン……デックス……を…………」

耳元で発せられるステイルのか細い声。
聞きたくない。

最期の言葉なんて聞きたくない。

耐えられない。

耐えられなかった。

そして彼女は、いまだ声を発さぬ主に二つ目の願いを望む。
その頬を濡らして、額に当てている刀に願う。


己の傀儡化を。


この自我を奪ってください、と。


耐えられない―――私はあなたに成れませんでした。


あなたが求める強さは―――私にはありませんでした。



私は―――悪魔に成りきれませんでした、と。




そして願いは受理された。



『二つ目』ではなく―――『一つ目』の願いの方が。

149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/06/21(火) 01:43:42.95 ID:sDAaF+n5o

神裂『―――』

その瞬間、柄を握る手に熱を感じ。
直後、意識内にイメージが湧き上がり。

こう告げた。


―――己が転生した際と同じ事をしろ―――。


神裂『―――』

主から届いたのは、たったその一文。
だが神裂にとってはそれで充分だった。

そう、同じ事をすればいいのだ。

煉獄にてバージルが―――死んだ神裂に行ったことと同じように。

死を『許さず』に捕えてしまえ。

力ずくで従属させてしまえ。


縛して隷属させてしまえ。



―――使い魔にしてしまえ。



神裂は迷わなかった。


人の心の『わがまま』に一切抵抗せずに身を委ねた。


確かにこれは非常に身勝手な行為だ。
神裂自身、そんなことは充分自覚している。

だが今もし、その点を誰かに指摘されていたら。
神裂には似合わずとも中指立ててこう返しただろう。



『クソ喰らえ』、と。



―――

ダンテ「学園都市か」2(学園都市編)




posted by JOY at 01:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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