2012年03月18日

ダンテ「学園都市か」5(学園都市編)

582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:08:04.26 ID:5TAxSX5so
―――

この世のものではない、魂の熱をも奪い取る冷気。
それが一瞬にして第七学区の一画を包み、青色の異界の氷で覆い尽くす。

一方「(―――なンだこれは)」

飛び上がった上空から、
一方通行はそんな惨状を目にしていた。

いや、『これ』はほんの余波、おまけだ。

意識すべきメインの存在はこの氷原の中央にある、二つの凄まじい圧の源。

一方「―――ッ!!」

そのあまりにも強すぎる圧を直視してしまって、一方通行は瞬間眩暈を覚えてしまった。
何とか力の知覚の『瞳孔』を絞り、ホワイトアウトした視界を調節、

そして知覚を凝らしてようやくその源の存在を捉えた。


一方「―――」


正体は、激しくもつれ合って凄まじい力の衝突を繰り返している二頭の怪物。
この冷気の主であろう青色の『三頭の狼』と、緑色の光のオーラを纏う『獅子』であった。

人間どころか、この世のものとはあまりにもかけ離れた姿形と存在感。


魔帝との騒乱の際や、そしてトリッシュ達に覚えた感覚と同じ―――まさしく『純粋な悪魔』だ。


583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:11:27.81 ID:5TAxSX5so

有する力は純粋な塊。
先日のフィアンマとは違う、混じり気も騙しも無い正当型とでも言うか。

そしてその力の規模もまた、フィアンマよりも確かに大きい。

いや、『大きい』ではなく『格が違う』と言った方が正しいか。
力の大小以前にそのあり方からして別物、『それ』が具体的に何かはわからなかったが、
一方通行はそこに明確な『壁』の存在を感じた。

また、これは今はじめて覚えた感覚でもない。
例えば同じ悪魔の力と言えども、ステイルとトリッシュとの間にもそんな『壁』の存在を感じていた。

そして自身の中でもその『壁』は以前から見ていた。
触れることはできても越えるには高すぎ、打ち砕くには余りにも分厚く固い『壁』だ。

一方「……」

土御門かそれとも海原か。
誰が口にしたかは覚えていないが一方通行はこの瞬間、
このような規格外の存在を指したある言葉を思い出した。


『神の領域』、と。


具体的に説明することはできない。
悪魔についてはほとんど何も知らないし、人間には馴染みの無い『力』という概念も言葉にすることができない。

そもそも『神』の定義からわからない。

だがそれでも。

一方通行はこの時確信した。


この壁は『神の領域』とそれ以下を果てしなく隔てる、鉄壁の境界なのだと。

584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:13:40.62 ID:5TAxSX5so

と、その時。

ぶつかり合っていた二頭が離れた直後、両方ともふと動きをとめて、
真っ直ぐにこちらを見上げた。

一方「(まァ気付くよな)」

これに関しては一方通行自身もわかっていた。
この両手から常に力が駄々漏れで、目立ちすぎなのは自覚している。

一方通行はそのまま氷原の中へと降下し、
二頭と均一な距離を置いて、三角形を描く位置に降り立った。


一方「(…………)」


一瞬前までの力の嵐が嘘のような、どこまでも冷え切り静かな空気。
能力も何も無い普通の人間であったら一瞬で凍死する冷気。

ただ、ここでは物理的に冷え死ぬよりも、
怪物の圧による死の方が遥かに早いだろうが。


そんな死の世界の中、一方通行は二頭の怪物を見据えた。


ここでまず一番重要なのは、この二頭は学園都市、大きく言えば人間に対して敵性かどうかだ。
二頭同士が敵対しているのは周知の通り、
またここで戦っているという点から、『どちらか』が敵性なのも確実だ。

つまり考えられる状況は二つ。

片方がダンテ達のように人間の肩を持つ悪魔か、
それとも両方とも敵性なのか、だ。

そしてその答えはすぐに示された。


『下がれ小僧』


三頭の狼が敵意の篭っていない言葉をこちらに放ち、
獅子はこちらにも強烈な殺意を放つ。

585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:14:28.95 ID:5TAxSX5so

これは一方通行にとってかなり好都合だった。


充満している力の大気が、すでに反射幕を抜けてきている。
こちらも幕下に力の壁を張って、強引に力で押し返している状態だ。

あの『黒い杭』を出したとしても、この二頭と己の差はそんな小細工で縮まるものではない。
それ以前にカエル顔の医者の言葉を受けては、杭など使う気にはなれなかったが。

とにかく二頭とも敵性だったら、
はっきり言って彼にはどうしようもなかったのだ。

だが片側が、少なくとも人間には危害を与えないのならば。


一方「そォかィ。じゃァ任せたぜ」


ここは無理に割り込むのも無粋であろう。
一方通行が狼の声に従い、すぐさま後方に跳ね飛んだ瞬間。

再び怪物同士の衝突が始まった。

獅子が蛇腹状の金属に似た「たてがみ」を打ち鳴らしては、
緑の光の衣を纏い一気に狼に突進した。

それに応じ、狼も青く光る凄まじい冷気を放ち迎え撃った。

586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:15:44.63 ID:5TAxSX5so

一方「―――ッ!!」

彼の意識が追えたのはその初動だけであった。
あとにたて続く衝撃の連続、その激突の瞬間など全く見えない。

早すぎて、そして力の激突があまりにも凄まじくて意識がついていかない。


一方「カッ!!」


反射幕の下に更に分厚く形成した壁を打ち付ける力の衝撃波、
そして両腕の表面が削り取られていく感覚。

衝突が続く間の時間感覚はまるでわからなかった。
数秒にも感じれば数時間にも。

それこそ気のせいではなく、強烈な力によって本当にこの場の時空が歪んでいるのか。

と、そんな最中。
突然の時間感覚の正常化と共に衝突もふと止んだ。

そして再び捉えることができた狼と獅子の姿。

獅子は多少傷ついていたが、目立った大きななものは無かった。

一方の狼は。


一方「(…………!!)」


三つの頭のうち一つを失っていた。

587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:17:11.87 ID:5TAxSX5so

狼は明らかに押されていた。

確かに両者の力は拮抗しており、その力量の差は1%程度か。
100と99、ここまで近ければ『同じ強さ』といってもいいだろう。

しかし実際の戦いは、単純にパラメータの比較では通じない。

拮抗していれば、両者とも同じように消耗していく場合もある一方。
力量の1%の差で結果は天国と地獄に綺麗に分かれる場合もあるのだ。


一方「―――チッ」


それを見て一方通行は、すぐさま跳ねて狼の横へと降り立った。
対する狼の反応は先と変わらず、頭の一つが声を放つ。

『下がっていろと言ったはずだ小僧』

一方「あァ?黙って見てられるかよ」

『その程度の力でどうするつもりだ?』

一方「…………」

確かに神の領域の壁は越えてはいない。

しかし。

越えずとも、その壁に『触ること』が出来る位置にはいるのだ。


一方「うるせェよワン公―――」


ならば、さすがに1%以下なんてことはないだろう。


一方「―――黙って『足し』にさせろ」


その1%で差を埋められれば良いのだ。


そして2%になれれば―――圧倒的逆転も可能だ。


―――


588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:19:07.33 ID:5TAxSX5so
―――

紅い残像を引き、最強の魔剣士ダンテは動き出した。

初撃は真正面にいた大悪魔、
熊のような巨躯のその顔面へとリベリオンの突き―――スティンガー。

響くはエコーのかかった掛け声、発されるは真紅の光の衝撃。

この時の一撃は、
人間界を一撃の下に消滅させる魔帝の槍、それに等しき本気の刃だった。


例え大悪魔といえども、よっぽどの高位でなければたった一撃で死に直結するものだ。


最初の餌食となったこの熊のような大悪魔もまた、
そんな一撃に耐えられるほどの存在ではなく。

頭部を貫かれては大きく仰け反って、地響きを伴って仰向けに倒れた。
そのままダンテも『熊』の胸の上に降り立った。

ダンテ『なあにボケッとしてる?もう始まってるぜ?』

そして突き刺さったままのリベリオンの柄頭を軽く叩きながら、
周りの大勢の大悪魔へ向けて笑いかけた。


ダンテ『お前らもこの日を待ち望んでたんだろ?』


普通の人間が目にしたら、
それだけで卒倒してしまうような魔人の笑みを浮べて。

ただ、ここにはそんな弱者など存在しない。
いるのは、スパーダの血に底なしの憎悪を抱く黒き神々のみ。


ダンテ『―――ならよ、存分に楽しもうじゃねえか』


彼はその余裕溢れる挑発を受けた瞬間、一斉に動き出した。

589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:19:45.74 ID:5TAxSX5so

一体の『イグアナ』ような大悪魔が、
その爪による強烈な一撃を叩き込もうとダンテの背後に迫った。

瞬間、この大悪魔はダンテが反応しないところを見て、
彼の虚を付いたと感じていただろう。


しかし彼の虚を付けるものなど、ここには一体も存在していない。


ダンテはギリギリまでひきつけては、
相手が反応できない速度で後ろ蹴りを放った。

ギルガメスに覆われた『かかと』が砕き、
魔弾がぶち抜いていく。


一蹴りで二撃のカウンターにより、イグアナの顎は木っ端微塵。


また、その破片が飛び散る間もなく攻撃は続く。
ダンテは蹴りの慣性のまま瞬時に振り返り、背中越しにリベリオンを引き抜いて。


ダンテ『――YeeeaaaH!!!!』


そのまま頭の上から振り下ろした。

涼やかな金属音と共に『イグアナ』は一刀両断、
刃の余波はそのまま大地にも溝を刻んでいった。

590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:21:48.23 ID:5TAxSX5so

その直後、いや、ほぼ同時か、今度は左右両側から大悪魔が迫った。

それぞれ人間界の存在で現せば右は『狼』、
左は『大蛇』といえるような姿をしているだろうか。

似ているのは全体的な大体のシルエットだけで、実際はまったく別物であるが。

空間を滑るようにして突き進んでくる『大蛇』は四つに割れた口を大きく開き、
狼はしなやかな身のこなしで駆け迫り、同じように牙を剥き出しにする。


更にこの瞬間、ダンテに迫った刃はこれだけでは無かった。


正面から放たれてきた光の矢が、両断した『イグアナ』のその『隙間』を抜けてきたのだ。

そこでまずダンテは仰け反り、鼻先の上をスレスレに矢をやり過ごした。
そしてその倒した上体に続くように、両足を跳ね上げて。

宙で身を捻り、広げた足を風車のように回転。


右足で右から迫った狼を蹴り落とし―――同時に左足で左方の蛇を蹴り上げた。


もちろん衝撃の瞬間に魔弾もセットで。

そのまま右足で叩き落した『狼』の頭部に着地し、
着地して振り返りざまにリベリオンで薙ぎ、浮かび上がった『蛇』の胴を切断。


同時に再度、足から魔弾を放ち―――『狼』の頭部を撃ち抜き潰す。


591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:23:12.56 ID:5TAxSX5so

と、そこで続けて光の矢が飛来してきた。
しかも今度は巨大、さながら光のミサイルといったものか。

それは着弾と同時に、
三体の同胞の亡骸などお構い無しにその場を丸ごと吹き飛ばした。

しかし当然、彼が大人しくその破壊を受けているわけが無い。

ダンテ『―――Hum!!』

彼は瞬時に横へ大きく跳ねて、
当たり前のようにその破壊を免れていた。

そしてそれは相手も予想済みなのだろう、光のミサイルは立て続けに放たれていた。
しかも『ミサイル』はそう例える通り、その軌道を変えて彼を追跡してきていた。

その数は三発。


それを見て―――ダンテは笑った。


不敵に、不気味に、余裕たっぷりに、そして楽しげに。
彼は一発目をリベリオンで『切り落とし』、その場に霧散させた。


二発目は弾きいなし―――この時迫ってきていた横の『大きな蚊』のような大悪魔にぶちあてた。


そして三発目は―――打ち返した。


まるで、いや、まさにそのまま―――野球のスイングで。


放たれてきた速度を遥かに上回る勢いで、
光のミサイルは一直線に飛んで行き。


ダンテ『―――SeeYa!!!!Ha-Ha-Ha!!』


発射元の大悪魔に直撃、その体を大きくぶっ飛ばしていった。

592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:26:08.22 ID:5TAxSX5so

誰が見ても彼はどうしようもなく楽しそうであった。
実際、彼にとってこの戦いは最高のものであった。

狭い人間界では叶わぬ出力を発揮でき、また相手が魔帝や家族といった『重い存在』でもない。

一切の制約が無く、そして好きなように戦える場なのだ。
何よりも戦いを純粋に楽しむ彼にとってはまさに『天国』だ。

ここ数日の鬱憤の放散も兼ねて、彼のボルテージは最高潮に達していた。

一方。

彼と共にきたネヴァンとアグニ&ルドラにとっては、
やはりこの場は非常に過酷なものであった。

敵は同格どころか半分以上が格上、そして圧倒的な数の差。

神々、大悪魔である彼らでも、この場では所詮『一兵卒』でしかなかったのだ。


彼女たちの苦戦に気付いたダンテはマントを翻し、
周囲の大悪魔達を蹴散らしてネヴァンの隣に降り立った。


ダンテ『よお、キツイか?』


ネヴァン『正直ねぇ。あなたくらいよ、そこまで余裕なの』


そう答える妖艶な大悪魔、その身は傷まみれであった。
少し離れたところで激しい立ち回りを演じるアグニ&ルドラのコンビも、
その巨体はかなり荒んでいる。

593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:28:29.95 ID:5TAxSX5so

そんな双子を遠目にに見ながら、ネヴァンは横のダンテに囁いた。


ネヴァン『やっぱりあなたの鼓動が恋しいわぁ』


ネヴァン『ねえ、私あなたに骨抜きなのよ』


割り込もうとしてきた大悪魔を蹴り飛ばしながら、
ダンテは小さく微笑んで笑みを浮べて。

ダンテ『OK、来な』

淑女にするように、手を差し出した。
ネヴァンも上品な仕草でその手を取り。

その瞬間、妖艶な大悪魔はその姿をギターに変え。


ダンテが握り締めて、振り返りざまにまた迫ってきた大悪魔に振り下ろすと―――更に鎌状に形を変えた。


ダンテの力を帯びたネヴァン、相乗効果で彼女の力は爆発的に飛躍し、
その刃は比べ物にならないほどに鋭くなり。


紫の稲妻を纏う刃が、大悪魔の固い皮膚を切り裂いていき―――その魂をも刈り取っていく。

594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:30:31.44 ID:5TAxSX5so

とその直後。

ダンテの前に山のような巨人の大悪魔が立ちはだかった。

頭の高さは50m以上にもなろうか、大きさにふさわしくその力も、
周りの存在の中でも抜きん出ていた。

そんな巨体を見上げて、ダンテは
引き抜いたネヴァンとリベリオンの刃を一度打ち鳴らして。


ダンテ『こいつぁまたタフそうだ!』


その音色と同じ調子で軽快に笑った。


そこへ振り下ろされる、ダンテの体よりも大きい拳。
体躯に似合わずその速度はすさまじいもの。

横にすかさず跳ねたダンテ、その彼が立っていた場を丸ごと粉砕し、
更に彼を追って続けて何発も振り下ろされていく。

ダンテは全て紙一重で軽やかに交わしながら、
この連続する地響きに会わせて身を揺らしてた。

心の臓まで響く重音、
そして楽しげにのらりくらりとかわすダンテに苛立ってか、次第に加速していくペース。

それでいながら一切の狂いもよどみも無く刻まれる衝撃。
この大悪魔は生粋の武人なのだろう、
苛立ちと憤怒に急かされても、その攻撃の手は一切ぶれることが無く正確無比。


ダンテ『良いぜ!!―――良い「音」刻むじゃねえか!!』

595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:34:49.71 ID:5TAxSX5so

ダンテ『―――ネヴァン!!一発やるぜ!!』

その声を受けて、
彼の左手にある鎌状のギターから奏でられ始めるロック。


それはダンテが昔から良く聞く、お気に入りの一曲だ。


その曲に乗って、
彼はお次はこちらのターンとばかりに動き出す。

振そしてり下ろされて来る巨人の拳―――。


もし人間界で放たれれば、一瞬にして億単位の命を消し飛ばすその神の鉄槌を―――彼はあっさりと蹴り返した。


『巨人』が拳を下ろすたびに、彼は軽快な掛け声を放って弾き返し、
魔弾とギルガメスの衝撃をお見舞いする。

徐々に砕け、破片を撒き散らしていく巨大な拳。

そしての拳のリズムはいつしか、
曲にあわせたダンテが刻むものへと引きずり込まれていた。

596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:37:04.33 ID:5TAxSX5so

スパーダの息子のペースに飲まれている、
『巨人』がそう自覚したときには時既に遅し。

ダンテは、引き戻されるその大きな腕に鎌状のネヴァンを引っ掛けて、
『巨人』の体へと引き寄せて『もらい』。


慣性を利用して『巨人』の眉間へと跳びつき、目玉の一つへとリベリオンを突き刺した。
さながら地鳴りのごとき苦悶の咆哮を発する巨人。


ダンテ『ハッハ!―――OK!どうだ?!』


ビートにビートを返した魔剣士は、そんな至近距離から笑いかけて。


ロックと稲妻を迸らせる大鎌を『巨人』の首深く―――ネヴァン全体が隠れる程深くまで突き刺して。


ダンテ『こいつが「人間界のサウンド」だ―――!』



引き裂き。



ダンテ『―――中々「シビレる」だろ?』



―――首をもぎ落とした。

597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:37:49.21 ID:5TAxSX5so


ネビロス『いやはや凄まじい』

そんな最強の魔剣士と100を超える大悪魔の戦いを、
ネビロスは遠くに見ながらそう呟いた。

ネビロス『かの魔剣士の雄姿と重なるな。やはりかの血脈は濃い』

トリッシュ『それで』

と、そんな彼に向けてのトリッシュの声。
抱き上げられている腕の中から、同じくダンテの方を見ながら言葉だけを放った。

トリッシュ『策はあるの?どうやって彼の首級を挙げるつもり?まさか数で押し切れると?』

ネビロス『消耗させることは可能だろう?かのスパーダかの2000年前の連戦は疲弊したのだ』

トリッシュ『それでも最後に魔帝、その後に覇王も封印したわ。あなた達に彼ら以上の切り札はあるのかしら?』

まさかアスタロトじゃないわよね、と続けて小さく笑ったトリッシュ。
それを主への嘲笑と受け取ったのか、ネビロスはやや声を鋭くして。

ネビロス『武力は必要ない。複雑な策もいらぬ』


ネビロス『単純だ。貴様を盾にする』


トリッシュ『ああ、そう…………』

598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/23(火) 23:43:14.04 ID:5TAxSX5so

ネビロス『スパーダの息子、その「人の性質」によって形成された貴様への感情』

ネビロス『そして貴様の「容姿」』


トリッシュ『そう、彼の唯一の「弱点」ね。確かに』


ネビロスの言葉に続けて、その先をトリッシュが口にした。
ネビロスの手段は単純なものだ。
かつて魔帝がとった策とほぼ同一、ダンテの人の部分の弱みに付け入るのだ。

魔帝ほどの存在でなくともできる、実に単純明快な手段だ。

ただ、その一方で。


トリッシュ『でも「そのやり方」だけは、やめておいた方がいいと思うけど』


魔帝ほどの存在でも失敗する危険性をも孕んでいる。

現に魔帝の場合は結局ご破算、そして―――。


ネビロス『ふん、そこで見ているがいい』


トリッシュ『そう、なら頑張って。ああ、これだけは忠告しといてあげる』


と、ここでトリッシュはようやくネビロスの顔を見上げて。


トリッシュ『怖いわよ―――』




トリッシュ『―――彼が笑わなくなった時は』




ネビロス『…………………………………………』

彼方からは依然、圧を伴う轟音と共に聞えてきていた。
相変わらず軽快な、『笑い』混じりの掛け声が。


―――

600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/08/23(火) 23:46:47.75 ID:XRfq6IPLo
乙。しかしダンテ無双パネェ・・・想像の遥か上をエアハイクしよった・・・
それと一方さんとケルタンも頑張れ。死なないように頑張れ。>>1はもっと頑張れ。

602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/24(水) 00:38:27.46 ID:YhdJXcjDO
ダンテ無双過ぎワロタ

604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/24(水) 10:30:48.03 ID:BMLbgLiIO
強過ぎわろた
スティンガー最高や

605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/08/24(水) 20:41:39.25 ID:63zjDRbxo
乙。
笑わなくなったダンテさんはDMDの魔帝にノーダメージで勝ったりするからな……。

608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:25:20.17 ID:t1s3RUJCo

―――

突然のことだった。

周囲で戦いを繰り広げていた天使と悪魔たちが一斉にどこかへと消えて。
そして彼方、神裂が向かっていった方向にて突然出現したとてつもない量の圧力。

五和「…………」

なんという密度と量か、もはや言葉で表せない規模だ。
力の知覚など有していない、
『普通の人間』である五和でさえ本能的にはっきりと認識してしまうほどだ。

そしで今この階層を満たしている魔の大気は、
普通の人間の致死域を遥かに超えた濃度にまで達していたが。

五和「…………」

五和は左手にある槍、
仄かに熱を発しているアンブラ製の槍に目を落とした。

詳しい原理はわからないが、
この槍が周囲のそんな大気から身を守ってくれているらしいのだ。

五和「……」

ただそれも、あの圧の中心地からかなりの距離があるからで、
近づけば恐らくこの槍でも守りきれなくなるであろう。

そう、その圧力の中心地は、実は想像以上に距離があるようだった。
物理的な距離は数十km、いや、もしかしたら100km以上はあるかもしれない。

となるとこの『幻』の学園都市の外、と、普通に考えて位置づけられるであろうが。

五和「……」

この時はそう結論付けられなかった。
実際、五和も神裂と分かれてから5km以上も移動したのが、どこまで行っても街並みは『全く』変わらないのだ。

609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:26:34.10 ID:t1s3RUJCo

これは明らかにおかしい。

いくら巨大な学園都市といえども、区画ごとにその街並みはそれぞれ違うものだ。
それに五和は学園都市に何度も訪れているし、
地図も正確に頭に叩き込まれている。

その五和の経験と知識と、この周囲の光景が大きく食い違っているのだ。

五和「……」

もしかするとこの階層『全て』が『学園都市』の姿をしているのかもしれない。

当初は学園都市を正確に映し出していたのであろうが、
どれだけ瓜二つであろうが所詮ここは影、幻、水面に映った像に過ぎない。

そして水面の像が波紋で簡単に歪むように、
ここも圧力が加われば容易に変形する。

度重なる干渉と戦い、そしてとどめのこの莫大な量と密度の魔、
それによってこの階層は学園都市を中心として大きく『伸びて』しまったのだ。

五和「……」

そしてそんな現象が、
結果的に五和にとって好ましい状況をも与えてくれた。


階層が伸び広がりすぎて誰も五和に気付かない、という点だ。


あの圧の中心地に現れた多数の怪物、その一柱にでも見つかれば、
五和は一巻の終わりであったのだから。

610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:28:04.73 ID:t1s3RUJCo

それに彼女が普通の人間であることも、その点に上手く影響していた。
普通の人間となると、それなりに接近しなければ嗅ぎ取れないものだ。

ましてやここまで濃密な魔の中であれば、五和の匂いなど無に等しい。


これぞ力無き人間の、数少ないの有利な点だ。


今や誰も意識していない。
誰も見ていない。

そんな状況こそ、五和にとってまさにここから離脱するチャンスに見えた。

五和「……よし」

五和は右手にある黒い拳銃、上条の銃に一度目を向けては、
それを腰のベルトに挟むようにして差込み。

槍をアスファルトに突き刺して、
再び地面に人間界へと戻る魔方陣を刻み込んでいく。

そして槍を両手で握り、陣を起動―――しようとしたその時。


五和「!!」


―――ぽん、と。


突然の肩を叩かれる感触に、彼女が驚き振り返ると。


「今はやめておいた方が」


薄く笑う重武装の女、レディが立っていた。


レディ「―――下手に飛ぶと検知されて追っ手が出るわよ」

611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:29:45.63 ID:t1s3RUJCo

五和「―――け、検知?」

レディ「天使達は今、階層を跨いで動くものは全て追跡してるし、悪魔達もかなり活発になってる」

レディ「死にたくなかったらもうしばらくここに潜んでて」

五和「―――……!ですが……向こうが……!」

そこで五和は彼方の圧の中心地を指差した。

いつまでもここが安全とは思えなかったのだ。
もし更に魔の濃度が増したりあの中心地が近づいてくれば、と。

『ソレ』を表現する言葉が浮かばず言葉を詰まらせたが、
言いたい事は正確に通じたのだろう。

レディはクスリと笑って。

レディ「ああ、向こうは大丈夫だから」

五和「だ、大丈夫って……!」


レディ「―――ダンテが暴れてるの」


五和「…………ああ、そう……なんですか」


その名は『響き』だけでなんと力をもっているのだろうか。
敵には想像を絶する恐怖を植え付け、大悪魔にはその恐怖を超える憤怒を点火させ。

そして彼を知っている味方には有無を言わさずに安心を与える。

この時の五和の懸念もまた、
レディのそんな簡素な返しで瞬時に払拭されてしまった。

612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:30:48.33 ID:t1s3RUJCo


五和「…………なるほど」


レディ「ネヴァンと一緒に来たんだけれどね、生身の私が『あそこ』にいれたもんじゃないし」

とレディは肩を竦めながら、
なぜかその場にロケットランチャーを含む大きな装備を置き。

五和「……?」

古めかしい年代ものの小さなナイフと、
これまた古めかしい、厳重な拘束具の付いた『本』を取り出して地面に座り込んだ。

それを怪訝な表情で見る五和の視線を感じてか、

レディ「ただ黙って待ってるのもアレだし」

レディは本の何重にもある拘束を外していきながら言葉を続けた。

レディ「それにダンテでも、あの数を処理するにはさすがに結構時間がかかりそうだし」


レディ「ちょっと大掛かりな『罠』でも作るわ」


五和「わ、わな?」


レディ「プロの『フリー』デビルハンターはね、直接戦闘だけじゃないのよ」


レディ「大物が引っかかればいいのだけど」

今ひとつ要領を得ない五和をよそに、
レディはクスクスと笑い声を漏らし、サングラス越しに彼女を見上げて。


レディ「見たくない?『人ごとき』の技で―――『クソッタレな神共』が慌てふためく姿を」


―――


613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:32:23.63 ID:t1s3RUJCo

―――

業火を渦巻かせるグロリアス、そして稲妻を迸らせるグラシアス。
双天使は巨大な爪から光の尾を引いて同時に動き出す。


猛烈な速度で。


刃の重さは、先ほどのヴァラファールに比べたら軽いであろう。
しかしその速度は遥かに勝っていた。

上条とステイルは互いに背中を合わせ、
この天使達をそれぞれ真正面に捉えていたにもかかわらず。

上条「―――」

この初撃を防ぐにはギリギリであった。

また先の大悪魔に比べたら軽いとは言っても、
その鋭さは全く優しいものではない。

ステイル『がっ―――!!』

これまた強烈。

上条『―――ぐ!!!!』

受け流したステイルの炎剣は表面が削り取られていき、
弾いた上条の腕には、その力と衝撃が芯まで響いていく。

しかもそんな初撃を凌いだのも束の間、
天使はひらりと素早く身を翻して、続けて更なる攻撃を繰り出してくる。

目にも留まらぬ速度で立て続けに、まさに『嵐』。

上条とステイルには攻撃し返す余裕など無く、
そんな猛攻をただただ防ぐことしかできなかった。

614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:34:12.31 ID:t1s3RUJCo

ただ。

こうして背中を合わせて完全に守りに入った上条達、その守りはかなり堅牢だったらしく、
双天使も中々崩せないようであった。

絶妙なバランスの膠着状態へとなったのだ。

確かに状況的には双天使が遥かに優位なのだが、
彼らはその優位性を発揮できずにいた。

完璧なコンビネーションと速度で相手を翻弄する、それがこの双天使の十八番であるが、

こうして上条達が背中合わせに防御一辺倒、
つまりこの『篭城』がその十八番を結果的に見事に潰していた。

上条『ッ!!!!』

ただ、そこを今は抑えてるからといって、上条達が不利なのは変わりが無い。
『今』は膠着状態でこそあれ、
押される一方ではいずれこの防御が破られるのも目に見えている。

もちろん二人ともその最悪の結果は認識していた。

上条『クソ!どうにかなんねえか!?』

ステイル『今考えてる!!君も何か考えろ!!』

しかし、そう簡単に状況を打開する妙案が浮かぶはずもなく。
そしてこの時。

状況の打開には、彼らが何かをする必要も無かった。

『向こう』からやってきてくれたのだ。
それは業火と共に、突如この場へと乱入してきた。


ステイル『!!』


筋骨隆々とした立派な角を有する巨人。


上条『!』


炎獄の王―――イフリート。

615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:35:12.25 ID:t1s3RUJCo

上条達から30m程のところに現れた炎の魔人は、
双天使を見据えては一吼え。

凄まじい咆哮を放った。

その圧と共に周囲に業火が巻き上がり、
一帯を瞬時に炎獄の様相へと一変させていく。

それから逃れるように、
双天使は瞬時に後方に跳ねて距離を開け、互いに面を被った顔を見合わせて。

上条『……』

彼らは好戦的な悪魔達とは違い、
現状の目的に即さない戦いは極力避けるのだろう。

良く言えばとことん命令に忠実、悪く言えば『機械染みている』か、
双天使はすぐさま魔方陣を出現させて、この場から姿を消していった。

上条『―――……ふー……』

ステイル『…………』

一先ずの状況の好転、二人は体の緊張を解き、
歩み寄ってくる炎の魔人を見上げて。


ステイル『…………やあ。助かったよ。すまないね』


そしてステイルは、
再会した『親』へと礼の言葉を向けた。
そこで『親』から返ってきた言葉は。


イフリート『礼などいらぬ』


イフリート『例え出生が違えども、お前は我が眷属、我が子よ』

616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:36:48.26 ID:t1s3RUJCo

ステイル『……ああ……』

そんなイフリートの言葉に、
ステイルは思わず小さく笑ってしまった。

ごくごく嬉しそうに。

家族どころか親なんかいなかったも同然、
物心ついた時から清教施設で魔術修練の毎日だった彼にとって、

特に今の神裂に仕えている『素直な彼』にとって、
『眷属』『我が子』という言葉はとにかく刺激的で新鮮で。

そして暖かい響きのものだったのだ。


それが例え、繋がりの先が悪魔でもだ。


どの世界の生まれのどの種族かなんてことは、
今の彼にはどうでもいいことだ。

想いを寄せる女性はアンブラの魔女、その彼女を預けてもいいと唯一認めた男も悪魔、
そして最高の友であり『主』である女性は、人間から天使を経て悪魔になった存在。


上条はそんなステイルを横目に見ては笑みを浮かべ、
軽くその肩を叩いた。

ステイル『……なんだ?』

上条『はっは。いや、別に』

ステイル『………………………………ダンテみたいな笑い方は止してくれ』

617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:38:47.44 ID:t1s3RUJCo

上条『ほー、へっへっへ』

ステイル『…………アホ面下げてないで顔を引き締めろ。今はそれどころじゃないだろう?』


上条『顔を引き締める、その言葉そっくりそのままお返し―――』

と、上条がその言葉を言い切る前に。
この瞬間、上条自身の顔が一瞬にして引き締まった。


いや―――『凍った』というべきか。


『親』の接近、そして友好的とは言えないオーラを覚えて、だ。

その直後、かの存在の圧はこの階層全体にも届き、
ステイルの顔もまた同じく、そしてイフリートも即座に警戒の色を強めて。

そして彼らの視線の先、
虚空に浮かび上がる巨大な魔方陣と、迸る『銀』の光。

中から姿を現すのは猛々しい巨躯の大悪魔。

上条『―――ッ』


―――「彼」の親との『再会』は、ステイルのものとは違い―――張り詰めた緊張から始まった。


現れた悪魔は一度喉を鳴らした後、
『両目が潰れた』顔を上条の方へと向けて声を放った。


ベオウルフ『―――小僧、探したぞ』


不敵な笑みを混じらせて。

618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:43:33.70 ID:t1s3RUJCo

誰が見ても、
明らかにベオウルフが醸す空気は不穏なものであった。

銀の魔獣が悠然と歩を進めて始めると、
すかさずイフリートが、上条とステイルの盾となるようにして立ちはだかって。

イフリート『……何用だ?』

ベオウルフ『貴様に用など無いわ』

銀の魔獣は嘲笑混じりにそう返して、
イフリートと面と向かい合った。

ベオウルフ『退け。その小僧と話がしたい』

イフリート『この状況下で貴様を易々と通すわけにはいかぬ』


イフリート『まず何用かを言え。我があるz……ダンテの友に面するのはそれからだ』


ベオウルフ『……』

そこで数秒間、二体の大悪魔は至近距離で沈黙した。
互いに向け強烈な圧を放ちながら。

その隙間の密度はとにかく凄まじいもの。
鼻先が触れそうなほど近いのに、そこには目に見えない鉄壁の如き距離があり、

上条『……』

ステイル『……』

傍から見ている彼ら、特に上条にとっては『身内』の件であるにもかかわらず、
とても脇から割り込めるような隙間は無かった。

そんな、永遠にも思えてしまう静かな緊張の後。
ベオウルフが静かに口を開いて。

ベオウルフ『貴様らの騒動など我の知った事ではないが、まあいいだろう』


ベオウルフ『我は受け取りに来た―――授けた力の「代価」をな』


用件を告げた。
イフリート越しに、上条を盲目の目で見下ろしながら。

619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:46:14.53 ID:t1s3RUJCo

イフリート『―――「代価」、だと?』


その言葉を耳にして、
イフリートもまた嘲笑交じりにそう聞き返して。

イフリート『あれは我らがあるz……ダンテの意志の下結ばれた契約だ。この小僧に貴様が代価を要求する権利は無い』

ベオウルフ『否―――』

ベオウルフ『常に我が心は魔界にあり。我が誇りも魔界にあり。我が法も魔界にあり、そして我が忠義は我が武、牙と爪のみに捧ぐ』


ベオウルフ『ただの一度も、あの「混血」の逆賊を主と仰いだことなど無い』


イフリート『貴様……』


ベオウルフ『故にこれは、我とその小僧の間の契約だ』


ベオウルフ『我が力の理は魔界にある。その小僧の力もまた、魔界の理の下にある』

ベオウルフ『我はその理に従い、正当な権利を求めているに過ぎない』

と、ベオウルフは吐き捨てるように告げて。


ベオウルフ『―――そうであろう?』


再度上条を見下ろしてそう、
確認をとるように確かな声を放った。

上条『―――』

瞬間、ずくりと。

異形の手足そして見の内の力の根源、
魂の魔の部分が、ベオウルフの言葉に応じて疼いた。


―――『その通りだ』、と。

620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:48:03.83 ID:t1s3RUJCo

ステイルとイフリートの場合、

イフリートの意志はダンテの意志と同じであり、ダンテが代価を求めないかぎり、
ステイルにそれを払う義務は生じない。

トリッシュが使ったオーブの作用も強いとはいえ、
ステイルが瞬時に転生に成功したのも、そんなダンテの意志による部分が大きい。

だがベオウルフは違う。
彼は果てしない憎しみと屈辱の中、ダンテに使われ続けてきた。

つまりダンテと意志が同じわけが無いのだ。

その力は常に憎悪と怒りに満ちて攻撃的であり、

上条の転生の過程に魔が内面を貪り食う形で成長したのも、
ダンテの『保護』が無いために、怒りに満ち満ちているベオウルフの性質そのものが現れたもの。

そんな過程の上に今の上条の力があるのだから、
そこにベオウルフが代価を求めるのはやはり―――魔界の理にのっとれば―――正当なものであった。


そう、『代価』だ。


上条『……』

自分は今日ここまで何を支払っい、何を失ってきた?

そして代わりに何を得てきた?

あの日、バージルに己がいかに無力かを突きつけられて、
それまで築いてきた『自信』を全て失った。

異界と深くかかわったことで、『日常』の価値観を失った。

命乞いする者までをも殺め、
それに一時でも悦びを覚えてしまったことで『人』としての尊厳をも失った。


621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:49:39.89 ID:t1s3RUJCo


―――だが得たものはそれ以上だ。


今日までの道のりは確かにとてつもない苦痛、苦悩、困難に満ち溢れ、
そして今目の前に続く道の先もそんな障害で溢れている。

しかしそれとは比べ物に成らないくらい、得たものはとにかく多くて大きいのだ。


そして得たものの大半は―――このベオウルフの力があってこそのものなのだ。


そこに感謝が無いわけがない。

ベオウルフの過去の事情、
その記憶を追体験する形でまるで自分の事のように全てを知っている以上、
この上条当麻が何も思わないわけがないのだ。

それにベオウルフはこうして、話し合いという形でやってきた。

ベオウルフからすれば全て勝手にやられたことなのだから、
最初から上条を襲って何かもを力ずくで奪ってくことも出来たはずなのに。

上条『…………』


ベオウルフの言葉に対し、
イフリートもまた力強く返した。

イフリート『魔界の理か、ならば我も従おうか―――「力こそ万物の法」』


イフリート『―――すなわち我が力をもって―――貴様を殺すのもまた―――正当な権利だ』


全身から強烈な圧を放ち、そして戦意を研ぎ澄ませて。
だが甘ったるくて優しすぎて、恩着せがましいほどに人が好すぎる上条当麻が、
そのイフリートの言葉を許容できるわけが無く。


上条『―――ま、待ってくれ!』


また『第三の親』であり『自分』との契約を踏み倒すことなどもできるはずもなかった。

622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/26(金) 21:52:10.05 ID:t1s3RUJCo

イフリート『…………』

ようやく声を発した上条は、
イフリートの前へと出て、ベオウルフを見上げて。


上条『……わかった。払うべきものは必ず払う』


上条『で、でもよ、もう少し待っててくれないか?』

上条『俺は……今はまだやらなくちゃならない事が……』

と、そこで。

ベオウルフ『心配するな小僧』

ベオウルフが小さな笑い声を混じらせて告げた。

ベオウルフ『貴様の魂や、隷属を求めるつもりではない。力の返還でも無い』

上条に対しては、怒りや憎しみといった負の感情は抱いてはいない、と。


ベオウルフ『我は貴様を眷属として受け入れ―――貴様の牙と爪にも血族の忠義を誓い、貴様に更なる支援もしてやろう』


むしろ一族として認め、己が名に誓い助力をしようと。

上条『そ、それは…………』

そして続けて、ついに具体的に示す。

ベオウルフ『その上で、我が要求するのは―――』



ベオウルフ『―――「目」だ』



要求する代価を。
『潰れた目』で上条を真っ直ぐに『見下ろし』ながら。



ベオウルフ『―――その「両目」を差し出せ。我が「息子」よ』



上条『―――……』

―――

624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/08/26(金) 21:54:33.89 ID:YDhLhuBwo
あー、目か……そう来たか……。

632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/08/27(土) 02:00:35.42 ID:RcKak7tMo
片目にまけてくれないか?

633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/29(月) 10:26:11.12 ID:GYJbYH7g0
ベオの目はスパーダの血族にブチ抜かれたから再生しないだけで
ベオ上さんはそこそこのパワーなら頭ふっ飛ばされても回復すんじゃねぇの?

634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/08/29(月) 13:10:58.57 ID:OeQdVzjpo
違う違う。単純に目ン玉寄越せっていう意味じゃなくて、ベオウルフが失った「光」を寄越せっていう契約の代価。
後は>>1が今夜明かしてくれるだろう。

635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/29(月) 20:34:57.06 ID:MAdT1x62o

―――


上条『―――…………目』


目を寄越せ。

具体的に聞かなくとも、
上条はこの『代価』が何を意味しているかを瞬時に悟った。


―――強すぎる力による傷は永遠に癒えないもの。


魂の一部分を『完全』に破壊された場合、その部分が治ることは無く、
またそれによって喪失したものも二度と再生しない。

バージルに腕を落とされたトリッシュと同じく、
スパーダとダンテの刃によってベオウルフは『視覚』という存在を永遠に失った。

人界の生物風に言えば遺伝子レベルで破壊されたとでも言うか、『存在そのものの喪失』だ。

そこにただ眼球を取り替えたところで視覚は復活しない。
唯一の方法は新たな存在をまるごと保管することだ。

つまりこうなる。


上条が『代価』を支払った場合、
ベオウルフと入れ替わりに彼が『視覚』という『存在』をごっそりまるごと失う。



結果、上条当麻は――――――『失明』する。

636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/29(月) 20:38:42.23 ID:MAdT1x62o

イフリート『…………』

ステイル『―――な、な…………』

炎の魔人はより一層ベオウルフに対する敵意をつのらせ、
ステイルがその要求の内容に驚き呆ける中。

上条『…………』

上条は無言のまま、微動だにせずベオウルフを見ていた。
そして意識内ではこの大悪魔の記憶を今一度―――見ていた。


遥か過去から―――今に至るまでの記憶を。


『破壊』の象徴たる魔剣スパーダ、
その最凶の刃がかつてベオウルフに与えたのは、死を遥かに越える屈辱だった。

2000年前のあの日、ベオウルフは『呪われた』のだ。
力も、誇りも、自由も、意志も、全てを奪われる永久の生き地獄を味わえ、と。

それが、無謀にもスパーダに挑んだ彼に課せられた罰。
魔帝の人間界侵略に順じたことへの容赦のない報復であった。


『光』の属性たるベオウルフにとって、その『光』の喪失は単なる失明以上の意味を持つものだ。


スパーダの刃に敗して片目とともに大量の力を失った際、彼が築き上げてきた何もかもが崩壊をはじめ。
2000年後のダンテによってもう片方の目を失った時、残り火もあっけなく消されてしまい。

バージルによって己が存在の主導権を全て失った。


全てを。

637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/29(月) 20:39:37.41 ID:MAdT1x62o

この兄弟の隷属下にある間は一応、彼ら『主』の目を通しての『光』はあった。

しかしその光が、ベオウルフにとって救いになんかなるわけもない。
逆にそれが己が立場を否応無く突きつけ、常に彼を『新鮮な屈辱』に叩き落し続けていった。

上条『…………解放、されたんだな』

ベオウルフ『……』

そして今、そんな生き地獄から解放された彼には、
自分自身の『目』が必要なのだ。

在りし日の力を取り戻すためには自分だけの『光』が必要なのだ。
悪魔であるが故に、誇り高き武神であるが故にそこだけは譲れない。

ベオウルフ『……否。解放はいまだ不完全』

上条『…………』

そう、まだ完全に解放されたわけではない。
失った全てを取り戻すことで、ようやくマイナスからやっとゼロに戻ることができる。

そうしてスパーダの頸木から解き放たれてやっと―――2000年に渡る呪いから自由になる。


ベオウルフ『スパーダの一族は逆賊だ。その点は永劫に変わらぬ』

ベオウルフ『だが少なくとも―――可もなく不可もなく。我が個人的な感情は、はじまりの立場に戻ることを約束する』


ベオウルフ『小僧、貴様に免じてな』


上条『…………』

そしてベオウルフ自身も、そこには大きな妥協を決意している。
この2000年に渡る耐え難い屈辱については忘却の彼方に追いやろうと。

これぞ互い意識と記憶と感情を分け合った者へ向ける、
魔界風の、ベオウルフなりの精一杯の『誠意』なのだろうか―――。


ベオウルフ『―――「安い」であろう?』

638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/29(月) 20:41:40.31 ID:MAdT1x62o

『安い』、か。


上条『…………』


確かに、これほどの条件にこの代価は安いのかもしれない。

周囲の動きや状態は悪魔の感覚で手に取るようにわかるし、
今や目を閉じまたままでも問題なく行動できるのだから、慣れてしまえばどうってことはないであろう。

ベオウルフとは違い、力も性質も成熟しきっていないのだから、
今からでも充分柔軟に適応していくことができる。

悪魔として生まれたばかりの上条にとっては、失うものはかなり少ないのだ。


そう―――悪魔としては、だ。


ステイル『―――安い、―――だと!?』


その時、隣のステイルがたまらずにベオウルフに向かって吼えた。
さながら上条の『人間の部分』の声を代弁するかのように。


もちろん人間としてある上条は、人間としてこの世界を『見ている』。


そこで目が無くなれば、『目で見ていた』ものは当然―――消える。


上条『…………』

具体的に、上条の世界から何が消えるのか。

それはこの世界を彩る色だ。

それはこの世界を満たす煌く光だ。

それはこの世界の人々の、皆の、友たちの―――顔だ。


それは。


この世界で最も輝く―――インデックスの顔だ。

639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/29(月) 20:43:02.08 ID:MAdT1x62o


ステイル『―――ふざけるな!!いい加減にしろ!!』


聞いていて上条と同じ結論に至ったのだろう。
ステイルはまるで自分のことかのように激昂し、
前へ身を乗り出しては怒鳴りあげた。

ステイル『上条!!こんな馬鹿げてる話に付き合うな!!』

ステイル『イフリート!!何か言ってくれ!!』

イフリート『…………』

しかしイフリートは、
そんな息子の悲痛な声にただ沈黙を返すばかり。

ステイル『頼む!!イフリートッ!!!』

実はこの沈黙の答え、ステイル自身もわかっていたことだった。
上条がイフリートをおいて前に出た時点で、もう誰も割り込むことはできないと。

上条当麻とベオウルフの問題だ。
上条当麻が求めぬかぎり、周りの者達があれこれ干渉することなどできないのだ。

イフリート『…………』

それに今この瞬間、イフリートには何よりも集中すべき対象があった。

上条『―――』

ステイル『―――』

いつのまにか。

イフリートが見据える200mほど先にて、この炎の魔人やベオウルフと同じ背丈ほどの、
甲冑に身を包んだような格好の巨人が立っていた。

手には刃などは特に持ってはいなかったが、
かわりに腕そのものが丸太のように図太く、恐ろしげな突起がいくつもついていた。

その発される桁違いの圧を背に覚え、ベオウルフが振り向かぬまま。


ベオウルフ『―――サルガタナスか』


この歓迎しない第三者の名を口にした。

640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/29(月) 20:45:40.46 ID:MAdT1x62o

アスタロトの側近サルガタナス。
ネビロスに次ぐ、絶大な力を誇る勢力内のナンバー3。


イフリートが全身から力を放って前へと踏み出したのを見て、
この大悪魔は棍棒のような腕を一度大きく振るい、
小さな頭を左右に掲げては首を鳴らした。

両者間には、特に言葉は交わされず。

イフリートは即座にサルガタナスへ向けて突進した。
サルガタナスの意識をとにかく己だけに向けるためだ。

ステイル『!!!!』

上条『―――なっ!!!!』

そして始まる大悪魔の王同士の凄まじい激突。
業火に包んだ拳と棍棒のような腕の、あまりにも荒々し過ぎる殴り合い。

両者が繰り出す一撃ごとの衝撃が、階層全体を軋ませ歪ませていく。

ベオウルフ『奴は確かに我よりも強い。だがサルガタナスはそれ以上、遥かに強い』


ベオウルフ『一対一では奴に勝ち目など万に一つも無いであろう。ふはは、まことにいい気味だ』


そんな戦いに背を向けたまま発されたベオウルフの言葉、
それは正しかったらしい。

上条『…………!』

かなり下位の上条達でもわかるほどに、明らかにイフリートは押されていた。


ステイル『き、貴様……!!』

ベオウルフ『だが小僧、貴様が望むのならばここは一つ、我が助力してやってもいい』

上条『……』


ステイル『だったら!!だったら先にそうしろ!!』


ベオウルフ『悔しきことではあるが、今の我が向かったところで一切の足しにもならんわ』



ベオウルフ『ただ―――「光」を取り戻したら我なら―――話は別だがな』

641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/29(月) 20:47:34.20 ID:MAdT1x62o

そうほくそ笑んだベオウルフを見て、
ステイルの脳裏にふとある疑念が湧き上がった。

ステイル『―――貴様……!!貴様が奴を―――!!』

サルガタナスをここに呼んだのか、
上条当麻を急かすために、と。

上条『いや。ステイル。俺たちがここで踏ん張っているかぎり、どのみちこうなってたさ』

そこを上条が妙に落ち着いた声でやんわりと訂正した。
この時、ここでステイルは気付くべきだったかもしれない。

いや―――上条がこんな風に声を発した時点で―――既に『遅かった』か。

ステイル『あああクソ!!もう良い!!』

ステイルはそこに気付かぬまま、上条の肩を掴んで。


ステイル『今の君は飛べるんだろ?この階層からすぐに出て行くんだ。ここは―――』


そして見てしまった。


ステイル『―――僕とイフリートがどうにか……………………何だ…………「その目」は?』


上条『…………』


いつのまにか、上条の両目を縦断するように―――瞼の上に『古い傷跡』が走っていたのを。


ステイル『おい、まさか…………いや待て、冗談だろう?何をした?何を―――答えろ、何をした?!』


ベオウルフにあるのと同じ―――傷が。



ステイル『答えろ!!―――何を―――!?上条ォォォォオオオオオオ!!!!』

642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/29(月) 20:49:41.47 ID:MAdT1x62o

上条『……』

その目は『まだ』、光は捉えていた。
上条は真っ直ぐとステイルの顔を見つめた。

掴み揺さぶられる肩、そこにステイルの熱を覚えながら。

上条『…………』

怒りと戸惑いの色に染まるステイルの顔、
その向こうによみがえるのは、先ほどのイフリートと再会した際の表情。

初めて一族、家族という存在を認識して、素直に喜びに染まっていた彼の顔。

それが。


たったそれだけで


この場でベオウルフの話を『即断』するに充分な理由であった。


そもそも、ベオウルフの話を断る気も寸分も無かった。

ただ、できればもう少し時間を―――せめてもう一度、
インデックスの姿を目に焼き付けてからにしたかったのだが。


しかし状況が状況、ここで上条は『仕方の無いこと』だと認識してしまう。


上条『……』

もちろん、光を失うのは嫌だ。
嫌で嫌でたまらない。
できるのならば絶対に失いたくない。

二度とインデックスの笑顔が二度と見えないなんて、まさに悪夢以外の何物でも無い。

『上条当麻』として自己を完全確立している今は、そんな感情が尚更強いものだ。


643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/29(月) 20:51:14.08 ID:MAdT1x62o

しかし。

それでも。

どこまでもお人好しで自分を全く大事にせず、
恩着せがましいほどに優しすぎて短絡的な『上条当麻』が―――。


上条『―――おい、ステイル』


―――己が個人的願望を守るせいで―――


上条『―――なんて顔してやがんだ?』


―――友が笑顔を喪失するなど、許容できるわけが無かった。


ステイル『……っ…………』

どこまで行っても、どこまで追い詰められても。
やっぱりこの男はどうしようもないほどに、救いようがないほどに―――『上条当麻』だった。

ステイル『…………どう……していつも……そうなんだ?』

上条『もっと良い顔してくれよ。俺にとってお前の顔が最後なんだから』



上条『さっきなんて―――すげえ良い顔してたぜ』



そして上条は笑った。

ステイル『―――』

先ほど、ステイルの背中を叩いたときのように。
楽しそうに、どことなくからかうように軽く。

ステイルはただ、そんな彼の顔を見ているしかなかった。
何もできず、一言も声を発することもできず。


ただただ―――光を徐々に失っていくその瞳を見ているだけしか。

644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/29(月) 20:52:54.46 ID:MAdT1x62o

そんな上条の瞳と入れ違いに、ベオウルフの瞼の隙間から漏れ出す赤い光。

それに同じてその密度を増す全身の白銀の光、
ぎちりと金属が軋むような音を響かせて角が伸び―――体も一回り大きくなり。

瞼を縫い付けていたかのような傷が消失し。


そして開かれる―――赤き『光』を宿す目。


完全にスパーダの呪いから解き放たれたベオウルフ、
その神々しい勇姿は、イフリートにも全く引けを取らない存在感を放っていた。


上条『―――見えるか?』


ベオウルフ『誓いを果そう―――息子よ』


ベオウルフは上条への返答の代わりにそう告げて。
翼を大きく広げては眩しいくらいの光を撒き散らしながら、
すぐさまサルガタナスとイフリートの方へと向かっていった。

ステイル『……』

王達の激闘は、完全体となったベオウルフの加勢によって、
ステイルの目でもわかるくらいに一気に形勢が逆転。

上条『……』

上条もその変化を、悪魔の感覚でしっかりと認識していた。

645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/29(月) 20:54:08.72 ID:MAdT1x62o

上条とステイルが加勢するまでも無いか。

イフリートとベオウルフは、
意外なことにかなりコンビネーションが取れており―――いや、意外なことでもないであろう。

10年以上に渡って同じ男にこき使われ続けたのだから、
共通のリズムをもっていて当然だ。


二人は無言のまま静かに、並んでその圧倒的な戦いを『見つめていた』。


そんな中。


ステイル『僕はね……君のそういうところがどうしても気に入らない……』


ステイル『どうしてもだ……どうしても……』

ステイルが独り言のように、そうぶっきらぼうに口にした。
目はかの戦いに向けたまま言葉だけを放って。

上条『……』

彼の言いたい事は手に取るようにわかった。
上条自身重々承知のことだ。

深く考えない―――いや、違う、深く考えておきながら―――わかっていて、
自覚しながら時にこんな『単純』な―――『浅はか』とも言える道を選ぶ。


その信念は絶対に捻じ曲げないのに―――自分の事だけはすぐに諦めてしまう。

646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/08/29(月) 20:55:45.92 ID:MAdT1x62o

それを自覚している上で、上条は小さく笑って。

上条『……知ってるさ。俺自身、いつもここが気に入らない』

                          オレ
上条『でもよ、仕方ないんだ―――これが「上条当麻」だからな』


ステイル『…………………………』

半ば諦め混じりの口ぶりで返した。
そしてそう言いながら、頭の中でガブリエルにあった時の事をふと思い出して。
彼女が発した言葉に今一度納得した。

ああ、そうだよガブリエル、ずっと変わらないよ。
ミカエルだった頃からも、経てきた1000代以上の人生も。


上条当麻である今この瞬間までも―――『俺は何一つ変わっちゃいない』、と。


今の事も『上条当麻』にすれば特に変わったことではない。
普段通り、ごく当たり前のやり方―――『いつものこと』だ。


上条は無言のまま、静かにその瞼を閉じた。


知覚が一つ減ったことによって、
残りの知覚により力が向けられたためか、今まで以上に鼓動が良く響いて聞えてくる。

己のと。


暖かくて、居心地のいい―――インデックスのものが。


そしてもう一つ、今までなら聞えなかったであろう声を拾うことが出来た。

小さな小さな―――『心の中の声』が。


ステイル『(……………………………………………………ありがとう。上条当麻)』


―――

649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/08/29(月) 21:00:48.47 ID:9daXemLqo
上条さん……。

651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/08/29(月) 21:09:10.91 ID:lREOUTgAO
これって、上条さんの目の存在が消されてるんだよな
果たして再生の可能性はあるかどうか

655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/08/29(月) 22:27:27.88 ID:OeQdVzjpo
乙・・・まさに上条さんでした。

664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:29:38.80 ID:3rS9Fa1Ro
―――

禁書『―――』

何百も越えた果てのとある階層にてインデックスは振り返った。

彼女の視線の先には何もなかった。
これまた異質な階層の光景、深い紫色のガラスのような地面が続くばかり。

インデックスが見ようとしたのは、実はこの階層のこんな景色ではなかった。

彼女の『目』は、意識は、階層を遥か越えた先に向いていた。

一心同体となっている彼女にとって、
上条の身に起こったことは己が身へのものと等しい。

彼が光を喪失するのと同時に、彼女もまた気付き知る。
それがまた彼自身の意志で行われたことも。

彼は良くも悪くも筋を貫き通したのだ。
一切揺らがず、ただありのままの『上条当麻』としてのやり方で。

そしてそこもまた、インデックスが愛する彼の一面。
そんな彼の行為を否定する気など、彼女には全く起きなかった。


ただやはり―――光の喪失は悲しいことであるが。


665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:33:35.50 ID:3rS9Fa1Ro

上条当麻を『見つめる』、そんな彼女の目は今だ力強さを保っていたものの。
他の部位の状態は明らかに疲労一色に染まっていた。

額は汗ばみ、肩で息をし、吐息は熱を持ち、
また内面の意識も憔悴しきっており。

脇で屈むローラに至っては、まるでチアノーゼのように青ざめていた。


神裂『……』

そんな二人の状態は誰の目に見ても明らか。

もう限界だ。

撒いたと確証が得られるまでは停止してはならないも、
これ以上の強行軍もまた彼女達の命を危うくしてしまうのだ。

神裂『……少し休みます』

足を止めるのもやむを得ない。

幸いなことに、追っ手が迫ってくる気配も今のところは無く、
幾分か彼女たちを休める時間も確保できそうであった。

いや、もしかするともう撒き切っているのかもしれない、と。


神裂『―――……』


と、神裂が一瞬そんな事を考えたのも束の間、
まるでその考えを即否定するかのように。

一体の大悪魔が不意に出現した。

もちろん、こちらに対する敵意と殺意を抱いた招かれざる者だ。


666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:34:32.78 ID:3rS9Fa1Ro

古来から、今の歴史が『作り出される以前』からも人間界に干渉してきていたのか。
アスタロトの勢力については、正確性はともかくその名や存在が現代にも伝わってきている。

神裂『…………………………!!』

この時現れた大悪魔もまた、
彼女が人間として得てきた知識だけでも充分正体を判別できる存在であった。


―――牛に似た頭部に、巨躯で屈強な体つき。


アスタロトの配下となれば、
該当すると考えられるのはサルガタナス直下の三将の一、『モラクス』だ。


神裂『―――……ッ……!』

ここで戦うにはあまりにもリスクが大きすぎる、強大な大悪魔だ。
つまり本来ならば即座にまた次の階層へと飛ぶべきなのだが、
ただ現状はこの通り、そうもいかない。

背後の二人はまだまだ休息が足りず、
ローラなんか休息を設けてもこれ以上はもう無理かもしれない。


そうなると道は一つ。


神裂は左手、七天七刀の鞘の感触に意識を集中させていった。


667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:36:51.25 ID:3rS9Fa1Ro

とこの時。

その手に伝わる七天七刀の感触がなぜか、いつもと異なっていた。

いや―――異なっていたのは七天七刀の感触ではなく、神裂の側であった。
ここで神裂はやっと、その自身の状態の小さな異変に気付いた。

神裂『―――』


七天七刀を持つその手が―――『震えていた』。


自覚していた以上にステイルとの一件が、良くも悪くもかなりの『刺激』となっていたのだ。


的確な判断が必要とされる状況下に置いて、
客観的視点を保つことは非常に重要なことだ。


だが時と場合によっては、その離れた視点は―――気付かなくてもよかったことをも見出してしまうこともある。


神裂はこの瞬間、今まで経験した事がないくらいに―――『覚めて』しまった。
自分にのしかかっていた極度の重圧を認識してしまい、
まるで初めてそれを体感する赤子のように―――とてつもない恐怖を覚える。


己はなんという状況で、なんという綱渡りをしているのか、と。


今、何よりもインデックスが、守るべき存在がすぐ後ろにいる。
鼓動を、呼吸を、体温を背に直接感じるほどに近く。

そしてすぐ前に強大な力を有する『破壊』が立ちふさがっている。


そんな両者を隔てるのは自分だけ―――なんて状況なのだ、と。

668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:39:09.69 ID:3rS9Fa1Ro

普段の彼女であったら、この程度では決して動揺なんかしない。
だが今は、先のステイルとの件で『弱さ』が剥き出しにされたばかりだ。

殻の全てを剥されて、いわば神裂は『赤子』の状態に戻されたようなものだ。


ステイルとの一間、その直後はインデックスを追うことで一杯であったため、
そこで後回しにされてた―――『続き』が今ここで再回した。


魔術師で、元人間で、元天使で、悪魔で、そして一人の女。


赤子のように露にされ再確認させられた上で、七天七刀に宿る『力』がここで今一度問う。

お前は―――なぜ刃を振るうのだ?、と。

これはなんと馬鹿げた質問か、答えは決まりきっている。

神裂『―――ッ』

だが即答できない。

頭が真っ白になってしまう。
言葉が思い浮かばない。
具体的に描けない。

そんな瞬間でも神裂の鍛えられた本能は、
即座にモラクスの戦意に反応し、右手を柄に運んでいく。

しかしその握りの感触。

今まで通りなのに、なぜか強烈に覚える違和感。


彼女は漠然とこう感じた。

噛み合っていない、と。


刃と私が噛み合っていない。


『私』と『神裂火織』が―――噛み合っていない。


669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:40:30.06 ID:3rS9Fa1Ro

このままでは、このモラクスと戦えたものではない。

とにかく己の内面の状態を元に戻さなくては。
『弱さ』を厳重に閉じ込めて、殻で守らねば。

そう神裂は己を整わせようとするも、
強固になるのは緊張ばかりで、余計に消耗していくばかり―――。

神裂の意識は迷い困惑し、混乱の中に落ち込んでいく。

と、その時であった。



禁書『―――か、「かおり」!』



神裂『―――』


暗雲立ち込める神裂の意識内に走る、背後からの声。
その響きはまるで稲妻のように彼女の中に突き刺さり、
そして道しるべのように明確な光をともす。

この切迫した状況に対しての思わずの声だったのだろう、
インデックスとしては何かの深い意図を篭めたわけではない。

だが今の神裂にとっては、
それが何よりも変え難い大切な大切な一言であった。


そんな風に呼ばれたのは―――インデックスに下の名を呼ばれたのは、一体何年振りだったろうか。


神裂『…………』


そう、これだ、この声なのだ。
この一声で充分、ここにはっきりと証明された。


簡単だ、これが―――私の刃を振るう理由だ。


そのようにして彼女自身が、
『神裂火織』という問題に対する『答え』を再認識した瞬間――――――震えは止まった。

670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:41:51.07 ID:3rS9Fa1Ro

この『弱さ』とは、『神裂火織』の中心核だ。

『弱さ』と隣にあるからこそ、
自身の本質を見極めることが出来て―――大切な声も逃さずに聞くことが出来る。

一度『神裂火織』が『破壊』され、
『弱さ』が剥き出しになってリセットされたからこそ、
あの時にバージルの声を聞くことが出来て、今インデックスの声が聞こえた。


『弱さ』がバージルの返事を引き出し、『弱さ』がインデックスの声に意味を見出したのだ。


殻で覆う必要はもう無い。
これはこのままで良いのだ。


ただ純粋に―――あるがままであれ。


一切の淀みも余分なものも捨て去れ。


神裂『―――』


ありのままの己の本質を見つめろ。



それが声を聞き、そして―――『この絶大な力』を完全統制することを可能にさせてくれる。



先までの違和感が嘘のように手に馴染む、
七天七刀の確かな感触。

無用な『力み』がひいていき、呼吸は穏やかに。

そしてはっきりと聞える七天七刀の声。
その力の鼓動が聞える。


それはすぐに己のリズムと同期し―――全く『同じ』鼓動となる。



671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:43:04.01 ID:3rS9Fa1Ro

ここに『彼女』と『神裂火織』は完全に噛み合った。
バージルから授かった力を最適かつ最高の出力で引き出せ、余すところ無くここで発揮しろ―――。

彼女の醸す空気の変化を敏感に気取ったのだろう、
モラクスは一度低く鼻を鳴らした後に低く身構えた。


それがまた神裂にとっての号令ともなる。


彼女の動きは完璧なものであった。

柄を適度な力で握り、同時に方足を踏み出し。
力を練りこみ限界まで鋭く研ぎすまして。

滑るように、かつ神速で抜刀する。

それは今までで最も洗練され、最も美しく最も強く。
そして彼女にとって初めての―――バージルと『同じ刃』であった。


神裂『シッ―――』



唯閃――――――――――――『次元斬り』



鳴り響く甲高い金属音。
瞬時に走り過ぎ去っていく、細い青い光の筋。

今にも突進しようかといたモラクス、彼がその身を前に進ませることは叶わなかった。


いや―――『半分』を数メートル程度進めることはできたか。


一瞬の完全なる静寂の後。
神裂がゆっくりと納刀し、鍔と鞘口が重なる音が響いたとき。


モラクスの上半身が無造作に『滑り』落ちた。

その足元に、前のめりになるように。


672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:44:59.63 ID:3rS9Fa1Ro

神裂『はっ……あはっ……』

このような状況では常に自身を律する彼女でさえ、
これには笑いを零すさずにいられなかった。

鞘に納まった七天七刀を抱きしめ、その柄に額を当ててしばしこの成功を喜んだ。


文字通り初めての『次元斬り』に成功したのだ。


バージルの刃はこの身をもって覚えた。
本能に、更にその下の魂、自身の本質にまで深く刻み込まれた。
だが一発も、ただ一振りも、バージルと同じ刃を放つことはできなかった。

神裂の次元斬りがこの計画に必要不可欠なのに。

アイゼンは「魂に刻まれているのだから問題ない」、と言っていたのだが、
それでも神裂は人の子、己は使命を果たせぬのではとそこに底知れぬ不安を抱いていたのだ。

そこにこの成功だ。


ステイル!見ていましたか今の!
土御門!これが私の真の姿ですよ!
上条当麻!どうです私の刃は!


インデックス!これならあなたを―――。


場違いでもたまらない嬉しさに笑いながら、
インデックスとローラの方にゆっくりと振り返えろうとした時。



『―――モラクスを一発か。なかなかのものじゃないか』



その背後からそんな言葉が放たれてきた。
それも確実にインデックスでもローラでもない声が。

なにせ―――『男』の声だったのだから。


更にその『男』が、神裂にとって好ましい人物ではないのも確かであった。

非の打ち所の無い美声にもかかわらず、その音の下には明らかに―――


―――底なしのおぞましき悪意が聞いて取れたのだから。



673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:47:08.95 ID:3rS9Fa1Ro

神裂『―――』

緩んだ顔を一瞬でまた引き締まらせて神裂が振り返ると。

巨大な『龍』が至近距離にいた。
文字通りの目の前、その大きい頭部がインデックスとローラすぐ頭上にあるほどに。


そして声の主は、その龍の前足付近に寄りかかっていた。


白銀のゆったりとしたローブに身を包んだ、一人の『神々しいくらいの美男子』。
光溢れる金髪に、組んでいる腕に挟まっているこれまた煌びやかな『金の槍』

その表面的な姿は、まるでお伽の中に出てくる英雄や王子のように非の打ち所が無いものであった。


そう、『表面的』な姿は、だ。


神裂『―――』

この男を目にした途端、神裂は咽返るような、
筆舌に尽くし難い嫌悪感に襲われた。

少なくとも人間的な感覚を持ち合わせていれば、顔を歪めずにいられる者などいないであろう。
特別な知覚などが無くても、誰しもが本能的に悟れるはず。
見た目と中身がこれほどまでにかけ離れている存在なんで、神裂は今まで目にした事が無かった。


―――まさに吐き気を伴う醜悪さ。


そして神裂以上に近くにいるインデックスとローラは、
その男を見て固まってしまっていた。

彼女ら魔女二人は、この男の正体を知っていたのだ。


アンブラで育ち教育を受けた者なら、例外なく全員知っている―――この『男』の事を。

674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:49:11.42 ID:3rS9Fa1Ro

『それだけの力を持っていれば十分だ』


男は見るに耐えない『美しい笑み』を浮べながら、
そう馴れ馴れしい口ぶりで歩み寄ってきた。

左手に金の槍、右手で龍の長い首をなぞり伝いながら一歩また一歩と。

その接近がたまらなく不快であり、
そして絶対に許せない。

こんなバケモノを、決してインデックスに近づけてはならない―――。


『どうだ?俺に将として仕えないか?』


そんな男の申し出など無視して、いや、逆に返答するかのように。
男が、手を伸ばせばインデックスとローラに届くかというところにまで歩み寄ってきた瞬間。


神裂『―――シッ』


神裂は前へ踏み込んで抜刀した。

そしてインデックスの頭上を越えて、男の顔面目掛けて放たれる―――『次元斬り』。


それも斬撃だけではなく、その刀身で直接―――。


だがその渾身の一振りの手ごたえは鈍かった。
いや、ある意味かなりの衝撃があったとも言えるか。


神裂『―――――――――』


結論から言うと、神裂の刃は男に僅かな傷さえも与えることは出来なかった。
男は受け流したのでも弾いたのでも、白刃取りでもない。


七天七刀の切っ先を、ただ人差し指で―――引っ掛けて止めていただけだった。


675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:51:16.67 ID:3rS9Fa1Ro

神裂『―――なッ―――』

目の前で起きていることが理解できない。
あのモラクスを屠った刃が、いや、直接斬りつけたのだからそれ以上の刃が。

指で軽く止められている現実が。

そしてつままれている切っ先もびくともしない。
どれだけ力を篭めても1mmも動かない。


『そうだ、この刃だ。この刃を忘れた事は無い。「つわもの」共の憧れ、崇拝の象徴だった「破壊」の姿』


遅かったか、神裂はここでやっと認識した。
この男と己の間にある、桁違いの力の差を。

『魔界一荒々しくも誇り高く高貴、忌々しくも恋してしまうくらいに完璧な力』


『惜しい。これがかの魔剣士、もしくは息子達の一振りだったのであれば―――』


また、相変わらず馴れ馴れしく笑う男の口から。



アスタロト『―――このアスタロトの腕を簡単に飛ばせただろうな』



その正体を聞いては、これも納得せざるを得なかった。


神裂『―――…………』


アスタロト『せめてもう少し練りこまれていられれば―――』


アスタロト『そうだな、大体―――その「100倍」ほど、力の密度が高ければ―――この指くらいは飛ばせたであろうに』


そして男、アスタロトは、
つまんでいたその切っ先を軽く指で弾いた。


たったそれだけで、神裂の体が50mほど後方に飛ばされていった。


676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:53:09.60 ID:3rS9Fa1Ro

神裂『―――ッッぐ!!』

何とか体制を建て直して、
このガラスのような地面に手足を叩きつけて制動する神裂。

その時、声が聞えてきた。

アスタロト『―――さあて、やっと追いついたわけだが』


アスタロト『まず「どちら」からいこうか』 

聞くに堪えない声で綴られる、おぞましき『欲望』が。


アスタロト『ふむ―――こっちだ』


神裂『―――』


『こっち』がインデックスかローラかは、
神裂にとってさしたる問題ではなかった。

どちらでも同じだ。

どちらであろうが、手を出すのは絶対に―――。



神裂『あぁ―――ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!』


それはまさに咆哮であった。
彼女は更なる力を篭めて七天七刀を抜刀し。雄たけびとともに再びの次元斬りを―――振り返りざまに放った。


677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:54:49.33 ID:3rS9Fa1Ro

神裂の次元斬りによるところが大きいか、
それともインデックスとローラ、どちらかが動いたのか。

どれによる影響が一番アスタロトの行動の妨害となったのか、それはわからなかった。
そもそもそんな過去の状況分析も、この直後の神裂とっては意味が無いものであったが。

少なくとも神裂はこの時。

視線の先にある惨状を見て、
アスタロトが望んだ結果を変えられたとは到底思えなかったのだから。

再びの次元斬りの直撃を受けて、今度は大きく仰け反るアスタロト。
その衝撃か、それとも彼女を守るべく『誰か』に脇に除けられたのか、離れた場所に転がるローラの体。


そして。


龍の口、牙の隙間から突き出している―――白い修道服を纏った―――血塗れた『細い腕』。


神裂『―――』


頭が真っ白になるとは、まさにこのことだった。
神裂の何もかもがぶっつりと途切れた。

意識も、思考も。



―――希望も。

678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:55:58.39 ID:3rS9Fa1Ro

ただ。

幸いなことにそれは彼女の『早とちり』であった。
これには気づけと言う方が難しいが。

神裂の『希望』は間一髪のところで救われていたのだ。


さすがに完全、五体満足とまではいかなかったが。


直後、ローラの傍に降り立った赤い影。
それはジャンヌ。


そして彼女の腕の中には―――右腕の無いインデックスがいた。


神裂『―――ッ!!!!』


ジャンヌは屈み、そんな彼女をそっとローラに預けた。

彼女自身、自分で何を言っているかわからないだろう、
ローラがめちゃくちゃに喚きながら、インデックスを抱き取った。

その頃には神裂が滑り込むように、
ローラとインデックスの傍へ駆け寄っていて。

またアスタロトも顔を向けなおして。


アスタロト『―――ははは!!見失って半ば諦めかけていたんだがこれは良い!!!』


ジャンヌへ向けて真っ直ぐに笑った。

相変わらずおぞましく笑うその顔には、やはり傷一つついていなかった。
かすり傷どころか僅かな汚れさえ、ただの一つも。


679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:57:40.54 ID:3rS9Fa1Ro

アスタロトの関心は今やジャンヌにしか向いていなかった。
この怪物にとって、この場にいる他の者は『カス』にしか過ぎなかったのだろう。

このジャンヌが強大、最高の『食材』であるが故に尚更だ。

そんなおぞましい怪物の声に、ジャンヌは無言のまま振り向いて睨み、
同時にかかとの銃口を地面に打ち鳴らした。

その瞬間。

彼女の赤いボディスーツが、一瞬にして繊維状にまでバラけて、
その繊維が瞬時に彼女と同じ髪色へと変わり。


そして再び編みこまれて―――白銀のボディスーツへと変貌した。


その変身を経て、ここにジャンヌの全ての力が解き放たれた。

普段のままでも桁違いであったが、
今やそれとは比べ物に成らないくらいに圧倒的。

「長に相応しき」とされたそれらの力を銃口に篭めては、
静かにアスタロトへ向けて。


アスタロト『良く来てくれた!!「メインデッシュ」!!』



ジャンヌ『―――黙れクズ』



吐き捨てると同時に引き金を引いた。


そうして放たれた極太の光の柱は―――アスタロトの頭を一瞬で潰して。

更にその全身を木っ端微塵に吹き飛ばしていった。

680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 01:59:57.72 ID:3rS9Fa1Ro

飛び散る破片、溢れる光と衝撃。
そんな中、龍は彫像のようにただただ平然と佇んでいた。

醜悪な『美男子』の姿が後かなも無く消失しても。


そしてその爆轟ののちに響くのは悲痛な二つの声。

神裂『ああああ!!!!インデックス!!こんな―――……!!!!』

我を忘れてただただ嘆く神裂きと、
めちゃくちゃに喚くローラの、言葉にすらなっていない声。

インデックスの右腕は、肩口からまるごと無くなっていた。
その修道服は今や、まるで最初から赤色だったかのように完全に染まりあがっていた。

だがそれでもインデックスは、左手でやさしく子猫を守り抱き、
そして自身は痛みの声を挙げまいと懸命に口を噤み堪えていた。

そんな彼女の姿を目にして神裂は。


神裂『どうして―――私は―――!!私がいながらっ!!!!』


悔しくて悔しくてたまらなかった。

己はどこまで不甲斐ないのだろうか、と。

満身創痍で憔悴しきっているローラ、
悲痛な声でめちゃくちゃに喚くそんな彼女でも、
その金の繊維が的確にインデックスの傷の応急処置を行っていた。

でも己は見ているだけで何も出来ない。
守る、という自身の仕事を果せなかった。

出来て当たり前の事に、能天気にはしゃいでいた先の己に対して怒りがこみ上げる。
仕事の一つまともに果せない、こんな自分が憎くてたまらない。


こんな―――最も大切な存在までにも、こんな深い傷を負わせてしまって。


ステイルに、上条当麻に、一体どう顔向けすれば良いのか。
果たして、インデックスにどんな言葉で謝れば良いのだろうか―――。


681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 02:00:54.82 ID:3rS9Fa1Ro

気付くと。

神裂はとてつもない悔しさと怒りのあまり、
一瞬で大粒の涙を零してしまっていた。

そんな彼女を見上げて、
インデックスはその口をゆっくりと開いた。


禁書『……かおり、私は……大丈夫』


神裂『そんな…………私のせいで…………!』

自分なんかがインデックスの言葉を受け取る資格が無いと、
神裂は涙ながらに首を強く横に振った。

だがそんな彼女に更に背中越しに。


ジャンヌ『―――神裂。お前は良くやったさ』


彼女に落ち度など無いことを告げるジャンヌ。
そして続けて。



ジャンヌ『―――あとは私がやる』



ここの状況は未だ―――収束してはいないということも。


682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/01(木) 02:03:01.54 ID:3rS9Fa1Ro

その時、神裂・ローラ・インデックスの周りに、
どこからともなく銀髪の束が出現して。
周囲の地面に突き刺さり、ワイヤーのように延びて三人を囲むように一つの魔方陣を構築した。

ジャンヌ『全て終るまでそこから出るな。絶対にだ』

そう告げるジャンヌの右手には、
異様なオーラを纏う『日本刀』が出現しており。

そしてその視線の先、相変わらず平然と佇む龍の脇にて。


『これまた懐かしき名刀を―――!!』


肉塊が出現して、激しく蠢いて。


アスタロト『―――「アスラ」から生まれし魔剣の一つか!!』


再びあの醜悪な美男子の姿を形成した。


アスタロト『追いかけっこは終わりか?!』



ジャンヌ『そうだ―――ここが終点だよ―――「お前と私」のな』



ジャンヌはアスタロトを真っ直ぐに見据え、
完全な無表情で淡々と返した。



ジャンヌ『お前が喰らった私の家族―――その「全員分」のケリを付けさせてもらう』



冷ややかに、かつ鋭く。


一方でその身の奥深くでは、
一手に引き受けたアンブラの憤怒を滾らせて。

―――

685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/01(木) 02:23:40.88 ID:SNIvd5TDO
上条さんもインデックスさんも重傷とか……

688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/01(木) 07:15:11.73 ID:2vf3MEeSo
上条さんは目を失ってインデックスさんは腕を失って・・・
さらに一方さんは人間としての生活、打ち止めは一方との絆、浜面と滝壺は仲間を失ってるんだよな・・・
三主人公とヒロインがボロボロすぎて辛い

689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/09/02(金) 00:55:56.29 ID:Py4ojzKdo
思えば、初期の下級悪魔との戦いからのインフレがすごい

697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/07(水) 23:57:31.27 ID:ZppyRUSco
―――

一方通行の言葉に狼は軽く喉を鳴らした。

それは納得したものかそれとも苦笑、嘲笑か、
一方通行にとってこの異形の狼の表情を読み取るのは困難だった。

ただ、これだけはわかった。
狼には、こちらを拒否する気は無いことだけは。

やれるものならやってみろ、というスタンスなのだろう。

狼は言葉を返さぬまま、再び獅子へ向けて突進した。
その向こうの獅子もまた同じく。

そして再び激突する青と緑の閃光。


一方『……』


そこで一方通行は、まずは『毎度のごとく』目の前にある問題の解決法を探った。

そう、このような状況はここ半年のいつものことだ。
上条当麻、あの男と運命が交わってから常に、
そして加速度的に身の周りの『戦い』は苛烈を極めていった。

今や追いやられ窮地に立たされるのは当たり前、
その場で学び進化しなければ決して前へ進めないのもまた然りだ。

ということで、いつもの通り解決しなくてはならない問題、
その今回の内容は、怪物たちの戦いがあまりにも速過ぎて捉えられないことだ。

698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/07(水) 23:59:22.01 ID:ZppyRUSco

閃光と力の嵐としてしか認識できず、
狼や獅子の動きに全く意識がついていけない。

それも単に速すぎるというわけではない。

物質的な速度が横向きの指数であるのならば、
力の速度は縦向きの指数ともいえるか。

眼球で光を捉えて認識する、
その人間界ではごく一般的な『見る』という考え方ではどう転んでも見えないものだ。

つまりそこに必要なのは、力を―――神の領域の『見る』能力だ。


そして幸いにも、その力に対する知覚自体は―――ついさっき、少しばかり前に構築したばかりであった。


一方通行『―――……』

衝突の余波を避けるように少し後方に跳ねながら、
一方通行はその知覚の『調整』に集中する。

彼はこの時、今の状況を不幸中の幸いだと考えていた。

百聞は一見に如かず、まさにその通りだ。

神の領域の知覚を手に入れるには、
その『現物』が目の前に無いと話にならないのを彼は実感していた。

そこらの雑魚悪魔なんかは当然、
上条やフィアンマ相手でも、ここまでの『質』の力を見ることは出来ない。


また更に幸運なことに、
彼が今求めているものも具体的にイメージできていた。

これもまた過去のクソッタレな状況に陥った『おかげ』だ。
神の領域の知覚、その現物自体を彼は以前、その身に一時的に持っていたのだから。


そう、魔帝の一件の際のこと―――垣根帝督と接続していた時、求めているのはあの領域の知覚だ。

699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:00:26.14 ID:fwmlhSlao

あのバージルに血まで流させることが出来たあの時のだ。
今でも信じられない、まるで白昼夢の中にいたような感覚だが、実際にこの身に有していたのだ。
さすがに同一のレベルのものを手に入れられるわけは無いものの、欠片程度は再現できるはずなのだ。

上条と戦った際に漆黒の『杭』を自力で引き出したように。


今この戦いも、越えていくにはまた―――学び、そして進化しなければならない。


一方『―――ッ!!』


ビキリとこめかみに走る鋭い痛み。

この両手を構築している黒い物質、
それがこの身の侵食が加速していくのをはっきりと感じる。
根を伸ばしていくように血管を伝い、筋肉、臓物、骨、そして神経に浸透し『入れ替わっていく』のを。

『神の領域』と例える高みに近づけば近づくほど、加速して肥大化していく。
より高度な、より精密な、そしてより大きな力を求めるほど、この深淵の力が呼応し。

そして。


一方『(―――「見えて」―――きたな)』


閃光と力の渦の中、虚ろながらも微かに認識できた―――怪物たちの姿。

地面にはノコギリの歯のような『氷』が走り、
緑色の閃光と激突しお互いを砕いていく。

その青と緑の瞬きの中、獅子と狼は牙と爪の応酬をしていた。

双方の牙や爪が当たるたびに、
凄まじい衝撃とともに、青い氷と金属に似た質感の破片が飛び散っていく。


700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:02:21.04 ID:fwmlhSlao

一方『……』

充分とは言えないが、ひとまず微かにでも見えるようになれれば充分だ。

そこで次の課題は、こちらの攻撃が僅かでも相手に届くかどうかだ。

ここで思い出すのが、カエル顔の医者の言葉。
あの『杭』はいらない、この『腕』がある、と。

そう、この暴れ者の両腕が力の塊であり『精製所』なのだ。

あの怪物相手に手加減は無用。
一方通行はこの『手』が有する全ての力を完全な掌握化に置き、拳の先端に集束させて密度を高めて。

宙から徒手空拳で撃ち放つ。
彼が拳を振りぬくとそこから高密度の力の衝撃が放たれ、獅子へ向けて撃ち込まれた。

この一撃は、あの黒い杭の束で全力で突いたのと同じ程度の威力を有していたであろう。
だがそれが獅子の首あたり、金属板が連なっているようなたてがみに直撃した時は、『地味』の一言であった。

『弱い』というわけではない。ただ周りが『強すぎた』のだ。
周囲で吹き荒れている力と比べれば、その『衝撃弾』は小さな火花でしかなかった。

しかしそれでも、効果がまったくないというわけでもなかった。


意識外の外野から突然に首や顔を突かれたら、
どんな達人だって集中が途切れてしまう小さな瞬間が生じるものだ。


獅子も瞬間、この予想していなかった外野からの刺激に一瞬意識を奪われてしまい。
この苛烈な戦いの中でごく僅かな隙を見せてしまった。

それを狼は見逃しはしなかった。
いまや『二頭』となっている氷狼は、即座に前足で獅子の頭を横殴りにし、
金属板が連なったようなたてがみに、一つの頭部が食いつき一気に引き千切った。

そこに次いでもう一つの頭部が顎を開き。

たてがみを毟った箇所へ向けて、至近距離から氷を吐き放った。

701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:04:15.33 ID:fwmlhSlao

それは氷、と言うよりは質量をもった光のジェットであった。
それも高温ではなく超低音。

青色の光の塊が、進行方向にあるもの全てを砕き吹き飛ばしていき、
伝わる衝撃が何もかもを凍らせていく。

そんな超低音の噴射に至近距離から晒されて、
大きく弾き飛ばされていく獅子の巨体。

千切られ吐き捨てられた、『たてがみ』を形成していた『板』が、
その主の体を追うように吹っ飛んでいった。


一方『はッ―――』

主役でもなければ派手でもない、
むしろせこくてケチなやり方ではあるが―――これぞ『1%』の仕事だ。

フィアンマとの戦いの時、そこに現れた土御門で一気に形勢が変わったように、
脇役には脇役の、雑魚は雑魚にしかできない『大役』があるものなのだ。


ただ、99が+1で100になったからといって安心するのは早い。
相手も100であるのだから、ここからどう状況が転ぶかは半々というところだ。

短い歓喜の声を漏らした一方通行もそれは知っていた。
降り立った彼は、破壊された街を覆う『ダイヤモンドダスト』―――氷結した粉塵のベールの向こうにすぐさま意識を張り巡らせた。

狼もまた、その場から動かずにベール向こうの動きを静かに探っていた。

702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:06:04.37 ID:fwmlhSlao

とその時。
煌きのカーテンの奥から放たれてくる―――緑色の光の衝撃波。

一方『―――』

迫る光の波、一方通行にこれは見えていた。
だが『見える』のとそれに対処できるかどうかはまた別の問題。

彼は見えてはいたが、この時はまるで反応できなかった。

一方通行がやっと頭で状況を認識したのは、
目の前に出現した『氷の壁』が光の波を押し留めた後であった。

一方『―――!!』

まるで対応できなかった。

この氷の壁がなければ、あの瞬間に命尽きていたのだ。
これではお荷物状態、+1%ではなく『−1%』ではないか。

直後、狼と獅子は再び激突し爪と牙の応酬を再回していた。
両者とも、再び一方通行など意識外に退けてしまっているようだ。

一方『―――チッ!』

それも仕方の無いことか。
見えることは見えるも、有する力は先ほどの『ちょっかい』程度が限界なのだから。

あのような『ちょっかい』が効果を持つのは大抵一回目だけであり、
今となっては獅子にまた隙を生じさせれる可能性は限りなく低いであろう。

703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:07:53.01 ID:fwmlhSlao

ならば力を、と、そう簡単に手に入ったら苦労はしない。

フィアンマ戦の際に腕を捨てたようにすれば、
いくらかは力を増すこともできるであろうが、
今眼前で繰り広げられている戦いはその程度でどうにかできる水準ではない。

周囲には、この怪物たちが放つ莫大な力が渦巻いているが、それにも当然干渉はできない

当然これもまたバージルに洗礼を受けたあの時に初めて触れた、
反射幕を素通りしてくる・干渉できない類の力だ。

一方『クソ……!』

もし、もしこれが従来のベクトル操作の要領で、
もしくはこの両手の力のように己がものとして支配下におくことができれば、
今よりも遥かに強くあの狼を支援できるのに。

無理だとわかっていながらも。
彼は悪態を付きながら、眼前にある氷壁に手を触れた―――時。


一方『―――』


カエル顔の医者の「その腕がある」という言葉は、
「杭のかわりとなる」というのとは別の意味をも含んでいたのかもしれない。


『一方通行』、『触れた』ベクトルを操る能力。
そんな能力から昇華して噴出した漆黒の力。


その闇で形成されている『この両手』が今、初めて神の領域の力に『触れた』。


再びこめかみに走る刺激と同時に、
彼の中で何かが破裂した。

それは拘束具。
彼の意識を下層位階に縛り付けていた留め金。


解き放たれた彼の認識はこの瞬間、神域へと一気に跳躍し―――彼は『理解』した。


一方『―――――――――――――――』


これら神の領域の力が、そして自身の両手がいかなるものかというのを。

704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:09:20.98 ID:fwmlhSlao

バージル、魔帝、そしてこの狼と獅子。
またそこまでとはいかないものの、上条やフィアンマ、ステイルの使う力もそうだった。

神の領域、もしくは神の領域に届く類の力。

それらと『下次元』とでも言うか、この世界に一般的に溢れている多様なエネルギーとの違いを、
今までは『大きすぎる・次元が違う』などといった具合でただ漠然と考えるしかできなかった。

だが、実際にはそこに特に難解な理論などがあるわけでもなかった。
違いはごく単純。

『生きているか否か』だ。


神の領域の力は、明確な意志を持ってそれ自体が―――とてつもないほどに『強く』―――『生きている』のだ。


簡単に言ってしまえば、
他者の『魂』を直接操作できないのと同じなのだと。

バージルや魔帝、狼や獅子の力はもちろん。
フィアンマ、上条やステイルの力も『強く生きている』。


そして。


一方『―――……』


この漆黒の両手もまた―――『生きている』。


魔界やこの方面に詳しい者達の間では、
別の表現を使っているのかもしれない。

だがこの時の彼にとってはこの『生きている』という表現こそ、
様々な意味を含んで最もしっくりくるものであった。

705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:11:02.64 ID:fwmlhSlao

そのような認識。

今の周囲の状況下ではすぐ役に立ちそうも無いことであるが、
実際はそうではなかった。

逆に考えていけばその先に、この状況を好転させる答えがあった。


ここにある氷は、『生きている』のだから干渉できない。

一方『―――おィ!!』

では―――死んでいれば?



一方『―――――――――この氷を「殺せ」!!』



『生きている力』ではなく、『死んでいるの力』ならば?
彼は両手を氷にあてたまま、狼へむけて声を張り上げた。
獅子にも聞えることなど気にも留めず。

当然、獅子と戦っている狼にとっては返事をするどころではなかったが、
氷から、一方通行がそこに干渉を試みているのを悟ったのか。


一方『―――はッ!!』


彼はその手から、
氷がすぐに『死んでいく』のをはっきりと認識。

ここからはベクトル操作や、自分の力を制御する要領でいける、
まさに彼の―――『得意分野』だ。

706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:12:08.76 ID:fwmlhSlao

一方通行はその莫大な、桁違いの規模の力を的確に掌握していった。

一方『―――ッ』

強烈な負荷が圧し掛かり、全身の体組織が張り詰めていく感覚。
だが対バージルの際の垣根帝督とリンクした時に比べれば随分とかわいいものだ。

瞬間、氷が砕け散っては彼の両手の周囲で渦を巻き。

そして彼が指を弾くと、冷気の筋となり氷の刃を走らせていく。

その光景はまたしても獅子にとって予想外のことであったろう。
氷の支配権を明け渡した狼自身も意外であったに違いない。

戦いの手が両者とも一瞬止まった。


次いで獅子のわき腹に打ち込まれる氷の刃と、響く二つの咆哮。
一つは予期しない攻撃をうけた獅子の怒りの声。

そしてもう一つは、まるで―――一方通行を褒め称えるような狼の歓喜の声。

狼の頭部の一つが振り向き、
咆哮とともに夥しい量の氷を周囲に吐き散らした。


それは一方通行への『補給物資』であった。
全て彼が扱えるように『殺してある力』だ。

彼は天に掲げるように両手を挙げて、
周囲の大量の氷―――莫大な力を次々と制御下においていく。

707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:13:03.46 ID:fwmlhSlao

目は血走り血管は浮き上がり、肉と骨は軋んでいたも、
その顔には笑みが浮かんでいた。

ここまで桁違いの力を制御下に置いて、気持ちよくないわけがない。
垣根帝督とリンクした際も同じ高ぶりを覚えた。

人生の半分以上、ただただ力を追い求めていたこの身の性か。
状況や道理はおいておいて、ただただ純粋に滾り高揚するのだ。


一方『―――カカッ!!』


誰が見ても『悪』と言うであろう、歪んだ笑みを浮べながら、
彼はその両手を大きく動かして引いた。

すると一帯を包む冷気の巨大な渦が出現。
彼の手の動きに連動し、不気味にそして荒々しく蠢いていく。


それを仰ぎ見る獅子、
今やその一挙一動・雰囲気には明らかな―――焦燥の色が見えていた。

そんな獅子へとここぞとばかりに、
一気に畳み掛けていく狼、それに続き周囲からも冷気の筋が伸びていく―――。


この戦いの流れは変わった。


狼と獅子の『ど突きあい』、そこに更に加わる冷気の刃や衝撃波。
この状況に対して、獅子は一切の猶予も与えられなかった。
獅子の手にあった戦いの主導権はあっけなく朽ち果て。


―――あっさりと勝者と敗者が決し。


ここに終止符が打たれた。

708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:15:57.81 ID:fwmlhSlao

戦いはどれだけの時間行われていたのか。

数十秒、もしくは数分、十分以上なのかもしれないが。
時間が定まらない領域にいた一方通行にとって、それをすぐに知る術は無かった。

ただ、時間の流れが正常に戻った瞬間は彼もはっきりと認識したが。


狼の足元、地面に無造作に―――獅子の『首』が転がっていたあたりからだ。


この場を包んでいた高濃度の力も消失し、
周囲の世界はいつものものへと戻っていた。

一方『………………』

いや、一つだけ。
一方通行にとっては変わった点があった。

それはこの街を満たしているAIM拡散力場の認識だ。
今ならはっきりとわかる。


これは『死んでいる力』だと。


彼はそんな認識とこの冬の夜風の中、
両手にこの場に漂うAIMを操作し這わせながらふとあることを思い出していた。

土御門が先日手に入れた、
能力に関する資料の中にあったとある記述だ。

                                    グレイブヤード
その中で、能力・AIMの供給源のことを指して使われていた『 墓 所 』という言葉。


そして能力を形成するこのAIM拡散力場―――『死んでいる力』。

709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:17:17.51 ID:fwmlhSlao

一方『……』

この接点に彼が何かを見出さないわけが無かった。

力の認識と掌握、
まだまだ不完全だがやっと手に入れた神の領域の認識、
そして夢の中の垣根帝督の言葉と、この『死んでいる』AIM―――。


『小僧、良くやった』

一方『……はッ。雑魚が雑魚の働きをしただけだ』

のっしりと、歩む狼とそっけなく声を交わしながら、
一方通行は小さくほくそ笑んでいた。

彼の目には今、アレイスターが自分に何を求めているか、
その片鱗が僅かだが『具体的』に見えていたのだ。

彼はそこに有用性を見出していた。
どちらが上位が、それが今や完全に確定してしまっているアレイスターとこちらの関係。

そこに少しでも作用を及ぼすことができる一手になるかもしれない、と。


少しでも、僅かでもアレイスターの手から―――打ち止めを―――。


しかし。


その方向からアレイスターに近づこうとするには、
今やあまりにも遅すぎた。


迫る『その時』まで、すでに一時間を切っていたのだから。


―――


710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:19:42.30 ID:fwmlhSlao
―――

回転しながら空間を切り裂いていくノコギリ状の刃。

片方は疾風を、片方は紅蓮の光を引きながら、
巨躯の大悪魔の両肩に突き刺さった。

爆風に乗った炎が吹き荒れて、刃が食い込む組織を蝕み破壊していく。

その傷をうけて、地響きのごとき呻きをあげながら後方に倒れこむ大悪魔。

そこで彼が最期に見たのは、
そんな風に倒れかけていた時―――己が胸の上に降り立った真紅の魔剣士の姿であった。

魔剣士は、大悪魔の両肩に刺さっている魔剣を引き抜き。


大悪魔の首を挟むように交差してあて、そして―――引き斬った。


この想像を絶する戦場にて、また新たな神の首が転がり落ちた。

逆賊を討つべくこの地に集った百を越える神々、今やその半数が屍を晒していた。


ダンテ『―――Night-night,baby』


屍を背に地に降り立つ最強の魔剣士。
何人をも寄せ付けない、あまりにも圧倒的なその力がここに猛威を振るっていた。

しかしそんな狂気の戦士を前にしても、神々は誰一人退こうとはしない。

同志の血に染まる魔剣を携えながら、
嘲笑・挑発にも聞える軽快な声を発するその姿は、
むしろ彼らの憤怒に更に油を注ぎ込んでいくのだから。

711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:21:23.32 ID:fwmlhSlao

ただ誰がどう見ても、このペースでは魔剣士が消耗しきるよりも遥かに早く、
神々が全滅するのが一目瞭然ではあったが。

ネビロス『……』

当然ここを仕切るアスタロトの副将が、
黙ってそうなるのを見ているわけがない。

なにせネビロスの手の中には、あの魔剣士に対する最大の切り札があるのだ。


ネビロス『―――スパーダの息子よ!!』


そろそろだと見計らって、彼は声を張り上げた。


ネビロス『一切抵抗するな』


言葉はそれだけで充分であった。
あとはこの状況、このネビロスの腕に何があるかが全てを語るのだから。


ダンテ『……Hum』


魔剣士は笑い含む小さな声を漏らし、
この状況を分析でもしているのか小さく首を傾げた。

だがそんな猶予を与える道理など無い。
ネビロスは更に追い込みをかけるべく―――トリッシュの首を掴み。


トリッシュ『―――……ッッぐ……』


突きつけるように前に出した。


ダンテ『…………』

712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:22:57.87 ID:fwmlhSlao

魔剣士は無言だった。

数秒間押し黙った後、沈黙のままその場に両手の魔剣を突きたて、
そして背にかけていた片身の大剣も突きたてて。

静かに、ゆっくりと両手を広げた。

その間、魔剣士は一声も漏らさなかった。
僅かな笑い声でさえも。


ダンテ『………………』


一挙一動に常に掛け声をつけて、
事あるごとに一言置いていた饒舌な男が―――ただの一声も。

この場にいた誰しもがこの異様な空気の変化を感じ取り、
緊張の中魔剣士の姿を静かに見据えていた。

ネビロス『……』

もちろん、このネビロスも例外ではなく。
脳裏を過ぎるは、先ほどのトリッシュの言葉。


―――笑わなくなったダンテは―――。


だが、『そんなこと』に恐れをなしてしまう程度の弱者なんかではない。

この場にいる全ての存在が皆、
恐怖を遥かに超える憎しみと戦意を滾らせているのだから。

ここで躊躇う理由など一つも無い。

ネビロス『…………』

ついに念願の、悲願の復讐が果されるのだ。
この場に立ち会えて、更にこの場を仕切ることが出来るなんて、なんと幸運で名誉あることか。

ネビロスは静かに、自信に満ち溢れながら静かに頷いた。

その瞬間。
大悪魔達は、解き放たれた闘犬のごとく―――魔剣士に一斉に飛びかかり。


―――ここに『処刑』が始まった。

714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:25:07.93 ID:fwmlhSlao

魔剣士は一切抵抗しなかった。
殴り、叩きつけられ、斬られ、踏みつけられて。
先ほどまでの大立ち回りをしてた存在とは思えないくらいに、糸が切れた操り人形のように無力。

ネビロスはそんな光景を目にしながら、満足そうに笑い声を漏らして。

ネビロス『―――ふん、わかってはいたが、こうも易く落ちるとはな』

ネビロス『見えるか?何か言葉を遺すのなら今だ。すぐに後を追わせてやるからな』

腕の先に持つ、トリッシュへとそう吐き捨てた。
その首を掴まれたままの彼女は、途切れ途切れの声で言葉を返してきた。


トリッシュ『………………もし……彼が私を顧みなかったら……どうしたつもり?』


ネビロス『それが有り得ぬのがスパーダの息子、ダンテであろう。奴の行動原理は把握済みだ』


その問いに、ネビロスは自信たっぷりに返した。
ただその自信は儚くも。


トリッシュ『……だったらこれも……わかるでしょ?』


直後に、あっけなく打ち砕かれたのだが。


トリッシュ『彼が……ただやられっ放しなのも―――――――――有り得ないって』


勝利の確信と共に。



『―――その通り、俺は負けず嫌いでな』

715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:27:31.25 ID:fwmlhSlao

ネビロス『―――』

それはすぐ横。

耳元とも言える距離から聞えてきた『あの声』だった。


そう―――今、前方100m程のところで『処刑中』のはずの『魔剣士』の声だ。


直後。

トリッシュの首を掴んでいた彼の腕は、肘辺りで切断されていた。
そして彼女の体は、真紅の魔剣士の太い腕に抱き取られ。

ネビロスの体は一瞬で蹴り倒されて、胸を踏まれてその場に押さえつけられた。


ネビロス『―――なッ…………!!!!』


何が起きたのか、まるで理解できなかった。
この魔剣士が『ここ』にいるはずがないのだ。

『処刑』の方へと目をやると、
驚いて手を止めている将達の中央にボロボロのあの魔剣士が立っていた。

間違いない、あの魔剣士は―――スパーダの息子は『今』処刑中のはず―――


ネビロス『な―――何が?!これは―――??!!』


では『今』―――己を踏みつけているこの魔剣士は『何』なのだ?


716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:29:21.97 ID:fwmlhSlao

ダンテ『―――マジックさ』


魔剣士は見下ろしながら、『笑い含む』声でそう告げた。

ネビロス『一体…………??!!』

ダンテ『タネが知りたいか?』


ダンテ『ヒントだ。俺は「鏡」が嫌いなんだ』


ダンテ『―――ということでだ、出直して―――』


ダンテ『いんや待て。悪いがお前に限っては―――出直しも「ナシ」だ』


と、そこで。

魔剣士の声から唐突に―――『笑い』が消えた。
そして続いた声はこれ以上ないくらいに冷め切っていて。


鋭くて、どこまでも冷酷で―――神の強固な精神すら打ち砕いて、恐怖に染め上げる―――死の宣告。



      Get down here
ダンテ『ここでくたばれ』




ネビロス『―――』

ただ、ネビロスは幸いだったかもしれない。
彼がその比類なき恐怖に苛まれた時間は、ごくごく一瞬で終ったのだから。


次の瞬間。


ネビロスの体と魂は、下の地殻ごと―――斬り掃われた。
リベリオンの白銀の刃によって。

717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/08(木) 00:31:43.29 ID:NQNLJsYDO
ドッペルゲンガー?

718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:34:13.41 ID:fwmlhSlao

塵とかしたネビロスの破片が舞う中。

ダンテ『OK、損な役回りで悪いな。もう戻っていいぜ』

ダンテは、困惑している大悪魔達の輪の中央にいる、
もう一人の『自分』へ向けて声を放った。


ダンテ『―――ドッペルゲンガー』


その瞬間。

輪の中にいたダンテの姿が蜃気楼意の如くぼやけ、
残像のように光を引きながら姿を消していった。

そしてようやく、左腕に抱いているトリッシュの方へと顔を向け。


ダンテ『よう』

トリッシュ『少し遅かったけど、今まででは一番早かったし、まあ文句は無いわね』

ダンテ『ヒーローは遅れて来るもんだろ。それでだ―――生きてるか?』


トリッシュ『ええ、おかげさまで』


ダンテ『―――なら充分だ』

719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2011/09/08(木) 00:36:33.31 ID:fwmlhSlao

トリッシュは見るからに不機嫌な面持ちをしていたが、
これもまたいつもの事。

そんな普段調子の会話を交わした後、横に降り立ったネヴァンに、ダンテは彼女を抱き渡して。

ダンテ『ネヴァン。トリッシュを人間界に運べ』

そして再び、周囲の大悪魔達に向き合い。


ダンテ『ハッハ、さてとだ―――続きやろうぜ』


これまたいつもの調子で、そう声を放った。
まるで何事も無かったかのように―――笑いを含みながら。

だが今や周囲の大悪魔達にとって、『笑い声』にはもう聞えなかった。


何に聞えるか、敢えて言えば―――『死神の囁き』だろうか。


ただ何に聞えようと、彼らにとっては今更退くに退けない状況であった。


彼らはただただ己が死を感じながら、
後戻りのできない憤怒に身を委ねて戦うしかない。


人間界再侵略という旗を掲げた上に、この男に挑んだ時点で―――その運命は既に尽きていたのだから。


―――

723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/08(木) 00:39:57.87 ID:NQNLJsYDO
一方さんもパワーアップしてきたな
ダンテも相変わらずかっこよく決めてくれる安心感がある

724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/09/08(木) 07:59:11.73 ID:NKHFEf0no
ネビロスェ……勝つ所か良いように踊ってただけじゃねーかwwww

726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/09(金) 11:04:46.80 ID:bFWMN7iIO
ありゃー、ネビロスの奴死んじゃったか


ダンテ「学園都市か」6(学園都市編)




posted by JOY at 02:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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