2012年03月24日

ダンテ「学園都市か」10(学園都市編)

308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/10(木) 00:41:48.77 ID:YXw5gbk1o

―――

アグニ『ダンテ。まだ待つのか?』

ルドラ『ダンテ。まだ動かないのか?』

プルガトリオ、学園都市を映し出すとある階層にて。
ビルの壁面にしがみ付きながら、その双子の大悪魔は屋上にいるダンテに問いかけた。

もし彼らの肉体に頭部があれば、
ダンテから見てちょうど淵から突き出ているように見えるだろうか、
小さな子供が覗き込んでいるような姿勢だ。

もちろん、その筋骨隆々とした巨体を抜きにした場合の例えだが。

ダンテ「ああ。待つ」

落ち着かない双子にさらりとそう返す、足組み寝そべるダンテ。

彼らとは対照的に、静かに目を閉じているその佇まいは、
今にも寝入ってしまうのではというくらいにリラックス状態だ。

アグニ『いつまでだ?』

ダンテ「さあな」

ルドラ『わからないのか?』

ダンテ「ああ、わからない」

309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/10(木) 00:43:00.59 ID:YXw5gbk1o

アグニ『……』

ルドラ『……』

簡潔明瞭に即答され沈黙する双子。

その肉体に頭部は無く声のトーンも一定、
彼らの本体である魔剣の柄先の顔も見えないとなれば、その感情を読み取るのは難しい。

ダンテ「……」

だがある程度この双子と過ごせば誰でもが、
そんな無表情な彼らの感情を読み取ることができるようになる。

いや、厳密には読み取るのではなく『推測』か。

彼らはとても単純なのだ。
思考は常に直線的で、ダンテほど近しくなれば
その行動どころか次の一語一句までほぼ完璧に予想できる。

ダンテ「…………」

故にダンテは彼らの『おしゃべり』が耐え難い。
ろくに意識せずとも簡単に一語一句正確に予測してしまって再生し、
一歩遅れて本物がこだまのように同じ言葉を発する。

それのなんと、なんと騒々しいことか。

そんなやかましい合唱を防ぐに最も有効なのは、

彼らの単純な思考が話を拡大させていく前に、きっぱりと明言して出鼻を挫く。
つまり今のように受け答えすることだ。

310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/10(木) 00:43:54.15 ID:YXw5gbk1o

確かに付き合いが悪い態度ではあるが、
アグニ&ルドラ相手にはこのくらいがちょうど良い。

それにただ聞き流してわけではなく、
質問に対しては本当の事を返している。

アグニ『何を待っているのだ?』

ルドラ『何が来るのだ?』


ダンテ「さあな。わからない」

これも嘘ではない。
いつになったら何が来るのか、ダンテもわかってはいないのだ。

ただ。

その『何か』こそが、
この筋書きの核への入り口になることは確信していた。

ネロが魔剣スパーダを折ったことで、この『クソッタレな筋書き』はより雑に、
『本線』が浮き彫りになるのも躊躇わないくらいに大胆な『修正』をかけてくるはず。
塞き止められた水が溢れ支流を作るかのように、必ず別の形で莫大なストレスが噴出す。


その噴火口に飛び込み、突き進んだ先にこそ―――ぶっ壊すべき『何か』があるのだ。


311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/10(木) 00:45:17.88 ID:YXw5gbk1o

そして噴火は今や秒読み段階。

ダンテ「―――」

瞬間、ダンテは異様なざわつきを覚えて跳ね起きた。
今までには無い衝撃が電撃のように全身を走ったのだ。

それは彼のような領域、『筋書き』の存在を認識した者にだけ聞こえる、
この現実と呼ばれる『生』の世界が軋む音。


筋書きの『修正』が開始される音。


たった『今』、その始点として『何か』が『どこか』に現れたのだ。

その衝撃はもちろん他の超越者達にも到達していく。

魔界の深淵。
煉獄にて作業の傍ら、互いに顔を見合わせる―――。

バージル『…………』

ベヨネッタ『…………』

―――最強の魔剣士と最強の魔女。

そして。

プルガトリオの魔界に近い階層にて。


ネロ「……何だ……今のは……?」


アリウスを倒した後、
アスタロトの軍勢の残党狩りを再開していた『最強の人間』にも。

312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/10(木) 00:47:55.14 ID:YXw5gbk1o

そうしてダンテは立ち上がり。

ダンテ「ハッ―――ハッハ!!」

鋭い笑い声を発しながら、
確認するかのように両手両足の魔具と魔銃を軋ませる。

これまでは準備体操、さあここからだ、と。

巨大な流れは今、重要な局面を迎えたのだ。
それは最終ステージへと繋がる大きな布石。


『筋書き』と複雑に絡み合っているスパーダの血の宿命と、バージルの判断と魔女達との行動、
対する己の考え方とネロの選択。


そして今現れた―――『何か』。


役者と舞台は全て揃った。


ダンテ「―――トリッシュ!!準備は良いか?!」


この先には一体、
どんなクソッタレな展開が待ち受けていることか。

繋がりの向こうで見ている相棒へ声を飛ばしながら、
ダンテは嬉々としてビルから飛び降りた。


―――


313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/10(木) 00:49:12.28 ID:YXw5gbk1o
―――

ミ カ エ ル
上条当麻は戦慄していた。
この身その魂の主導権を握る人格―――豪胆かつきわめて聡明な王を。

なぜ上条は戦慄しているのか。
それらの特徴を有しているのならば『優れている王』の範囲では、と普通は捉えられるであろうが。

実は王の特徴はそれだけでは無く、以下のことを更に有していた。


―――欲深く、嫉妬深く、傲慢で、倫理観は完全に欠如―――。


すると賢王は一転、『知性豊かな暴君』という最悪の君主像となり。
ここにもう一つ、『無邪気』というある特徴を加えると。


誰しもが戦慄する暴虐の君主、竜王となる。


かの暴虐なる王は、知性と力を持った『子供』そのものだった。

彼は崇高な目的意識など有してはいない。
更なる力の入手や勢力拡大といった、具体的な願望も無い。

彼の行動を掌握しているのは、ただ純粋な―――『娯楽欲』だ。

そしてとことん無邪気であるが故に、
それは今の人間の価値観からすれば常軌を逸しているほどだった。

興味惹かれ意外性があり刺激が強ければ、『何でも』構わないのだ。

314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/10(木) 00:51:26.08 ID:YXw5gbk1o

喜びなどといった快楽は当然、
怒りや悲しみ、恐怖といった絶対的な負の感情、
更には己の死でさえ、彼にとっては娯楽欲を充足させる『嗜好品』。

怒りや恐怖を抱かないというわけではない、
彼らもまた、生命の危機に瀕したり圧倒的な存在を前にすれば、その顔を引きつらせて恐れおののく。

そんな負の感情を彼らは娯楽として認識し求めるのだ。

俗な表現をすれば、とんでもなく恐ろしいホラー映画を見て怖がりたがるようなものか。
これだけならば今の人間にだって良くある傾向で、特におかしなものでもないが。


その娯楽を空想虚像ではなく、現実に『際限なく』求めるとなれば間違いなく異常であろう。


フィアンマという人間として、戦い、そして学園都市で予期せぬ敗北を味わったのも、
彼の根底の思念にとっては『意外性のある刺激的な展開』なのだ。

そんな狂った価値観と聡明な思考が組み合わさればどうなるか、その結果は自明の理だ。
問題を十二分に理解しながら、解決しようとはせずに更に効率よく油を注ぎ、
更なる『刺激的』な出来事を引き起こそうとする。

竜王は愚鈍ではない。
己にどうしようも無いほど酔狂していながらも、決して盲目ではない。

現実は嗜好品の塊、故に周囲にある小さなありとあらゆる存在が、彼の娯楽になり得るのだ。
瞬間の己の一挙一動、更には仄かな一風から雨の一雫までも。


彼は己の根底にある『娯楽欲』に忠実に従い、その力と知能をもって周囲全てを『嗜好品』にしようとする。


少し見方を変えれば―――『機械的』とも言えるくらいに。

315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/10(木) 00:53:44.21 ID:YXw5gbk1o

かつては、魔界による侵略が目前に迫っても尚、
圧倒的な魔の力に恐怖し絶望する、それも『楽しみ』。

           カ ル コ ス
最下層の人間、『青銅の種族』の中から魔女・賢者という集団が台頭してきた際も、
彼らの力が巨大化するまで敢えて放置し事態を複雑化させて『楽しみ』。

魔界に抗うどころか敢えて優柔不断な姿勢でその綱渡りを繰り返し、
更に状況を悪化させて、それによって生じる人々の苦痛や争いを『楽しみ』。


そしてその先にある滅亡をもすら『楽しもう』とした―――狂気の王。


だが当時の人間界内における価値観では、
そんな竜王の人格も別段異常なものとしては特に認識されてはいなかった。

竜王とは、太古の人間界のあらゆる面を凝縮し抽出した『パンドラの箱』的存在。

つまりこの竜王から垣間見えるは、
天界によって解放される前までの『本当の人間界』の姿。

当時の人間界の中では、秩序だって明確な目的を掲げた魔女や賢者の方が異端であり、
他の大多数の神族は、竜王ほどでは無いにしてもこのような『狂った』価値観のもとに動いていたのだ。

そんな当時の人界が、天界の目にはどう映るか。
それはまさに狂気に満ち溢れた世界だ。

天界の価値観からもってすれば、
その世界は目を覆いたくなるほどに何もかもが狂っていた。


魔界が『暴力』ならば、人界は『混沌』の世界だった。

316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/10(木) 00:56:54.67 ID:YXw5gbk1o

善悪、正否、白黒を明確にしようとする天界にとって、
その情景は魔界以上に見るに耐えない世界であった。

故に天界はそれを問答無用で『悪』と断じ、武力介入を決意し、そうして一人の戦士が―――。

   ミ カ エ ル
―――上条当麻がその任の要となり竜王に挑むこととなった。


混沌に苦しむ下層の人間達を解き放つ、その大義の下に。


無論、後世の人類にとってもその存在は『悪』にほかならない。
天界によって界の基盤を再構築され、
天の倫理観・価値観の元に現代世界は成り立っているためそれは当然である。

また現生人類は、魔女賢者から一般人までその全てがかつて虐げられていた最下層の人間、
『青銅の種族』の末裔であるのだから、例え天界に植えつけられた倫理観が無くとも、

古の神族が絶対的にして永遠の『悪』であることには変わりないのだ。


それは決して災害なんかのような、『仕方ないもの』ではない。


苦痛・絶望・死を楽しむために求めて、そして無邪気に笑う。
それを最下層の人間から見て『悪』以外に何と呼べるのだ。

己が負の感情や死までをも娯楽と判定する、そんな機械的な―――ただ『純粋な悪』、それ以外に何と。

317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/10(木) 00:59:06.64 ID:YXw5gbk1o

   ミ カ エ ル
故に上条当麻は戦慄する。

そんな古王の復活に。

楽しむために人間界を潰すのも厭わなかった竜王が、
創造、具現、破壊、その三つ創世主の因子を有して再誕することに。

それがどれだけ危険なことなのか。
三つの因子を統合し、かの創世主に並びそして超える『真の全能』と成った時。

この怪物は、全ての現実をどんな『嗜好品』に換えてしまうのだ?

    ミ カ エ ル
そして上条当麻は絶望し、憤怒した。
絶対に力が渡ってしまってはならない者に、究極の力が集ったこの皮肉な現実に。


一体何の『因果』でこんな―――こんな上手い具合に『最悪の展開』になるのだ、と。


「―――」

と、そう上条当麻の思考が至った―――その瞬間だった。

三つも創世主の因子を有したからか、『彼』はそこで認識してしまう。

フィアンマ                                
竜王がその領域に到達するということは、一心同体である彼の思念もまた同じく。
本来、何人も知ることの無い存在を上条は知ってしまうこととなった。


『現実』を構成する因果の連なり、それを支配する―――『筋書き』を。

318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/10(木) 01:00:46.22 ID:YXw5gbk1o

それは、いち個体の何者かの意志によるものではなかった。

無数の者の願望が集っては流れを形成して、
誰かが統率せずとも同じ方向へと向かう大河。

川筋を決められるジュベレウスが存在しない今、
その流れを支配しているのは、全宇宙、無数の生者の『無意識下』の本能的思念だ。

とはいえ、その集合体は明確な方向性を定めることは無い。
それぞれ世界やその中での立場でまさに千差万別で、統一など成されるはずもない。

その無数の願望の中で特に共通すること、
それが更に単純化されたものが、その時その時の流れの向きを決定していく。

そして今、ジュベレウスも魔帝も滅びこの混迷きわまる情勢。
先の見えない不安の中における流れの向きは。


―――三度、『絶対的英雄』を求める。


一度目、魔界とその他全ての世界の間で行われた、終わりの見えない戦争の終焉させる英雄を。
二度目、他全ての世界を飲み込む勢いの魔界の拡大、それを終焉させる英雄を。


そうして今もまた同じく、この『不安定な状況』を終焉させる英雄を。


「―――」


その英雄とは誰か。


それはもちろん―――スパーダの血族だ。


319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/10(木) 01:05:06.13 ID:YXw5gbk1o

誰しもがそう考え、そう望む。
上条自身も例外ではなくそう願う一人だ。

ダンテ、バージル、ネロ。
皆が皆、彼らスパーダの血に絶対的な英雄性、
もしくはいかなる存在にも打ち勝つ最強性を、彼らの姿に見ているものだ。

人界側の者達にとってはもちろん、
他の世界の者達からしても、魔界の拡大を防ぎ魔帝覇王を打ち倒した英雄の血族であり。

魔界の者達からしてみても、
裏切りに対する怒りよりも前にまずスパーダの力への最強性の認識と、それへの崇拝があった。
だからこそ、裏切られたことに対して異常なまでの怒りを覚えるのだ。


―――そう。

これが、この『最悪の展開』が生み出された原因だった。
どの世界の者達の願望にも共通している点は、

スパーダ血族の英雄がここでまた躍り出て、
『どういった形』であれ、この混迷する状況を終焉させること。


つまりは、いかなる思いであれ、今この状況において『全ての意識』がスパーダの血族に集中しているのだ。


―――そんな願望は、『願望のまま』であったのならば特に問題は無かった。
こうして上条当麻が衝撃を受けることも無い。

しかし実際は、願望はその範囲には留まらず一人歩きして。
絶対的な影響力を有する『筋書き』となって現実に作用していたのだ。

このように。


英雄を、絶対的な英雄たらしめるためには――――――小さな希望の欠片一つすらない『絶望の舞台』と。


―――『最強の敵』が存在しなければならない―――、と。


320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/10(木) 01:08:09.70 ID:YXw5gbk1o

「―――」

ミ カ エ ル
上条当麻はこの筋書きの存在に只ならぬ恐怖を覚えて拒絶する。

その『筋書き』とは、もう理解を超えてしまっている概念域だった。
それまでの価値観を持ち出すのも場違いな領域であるため、
これが正しいのか間違っているのかも判断がつかない。

しかし。
ありのままの上条当麻の感情だけは、素直に―――きっぱりとこの筋書きを拒絶した。


ふざけんな―――んなもん納得できるわけがねえ―――何余計なことをしてやがる、と。


『どうしようもないからこそヒーローを求める』のと、
『ヒーローを出すために世界をぶっ壊しにかかる』はまるで意味が違うのだから。

ただそんな上条当麻に対して、『もう一人の彼』は真逆の反応を示した。


       フィアンマ                 オ モ チャ
筋書きは『 竜 王 』にとっては―――最高の『嗜好品』に見えたのだ。



『―――我が真名を魂に刻め。今宵から全宇宙の不変の真理となる言霊を―――』

彼は知っていながら。

『その輝きは、旧世界を焼き払う黄昏の光であり―――新世界を鋳造する暁の光』

あえて筋書きに沿い、
むしろこの騒乱をより複雑に、かつ巨大化させようとする。

                フィアンマ
『その響きは―――――――――「 焔 火 」だ』


なぜか、それはもちろん、
こうして乗りに乗ってその『役』になりきっている通り。


筋書きに沿った方が――――――――――――『楽しそう』だから。


理由はただそれ『だけ』だ。


―――

322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(大阪府) [sage]:2011/11/10(木) 01:10:31.28 ID:mYvt0pbro
フィアンマさんマジ暴君

324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/10(木) 01:11:16.39 ID:tFb3+BODO
スパーダの一族はどのような判断を下すのか

342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:05:12.57 ID:xxUCz63jo
―――

一方『何しやがった?!何をッ―――』

皆で倒したはずのあの男の姿を目にして、一方通行はアレイスターに詰め寄った。
足蹴にしていた彼の体をベクトル操作で宙に放り、
その胸倉を黒き腕で掴みあげて。

一方『―――なンであのカマ野郎が?!上条はどォした?!アイツはどこに行った?!!』

乱暴に揺さぶりこの理解し難い状況の説明を求めるも。


一方『―――答えろアレイスターァァァッ!!』


アレイスターは呆然としたまま。
瞬き一つせずに目を見開いては、あの中性的な男を見つめ続け、
まるで一方通行の言葉など届いてはいない様子だった。

そんな時。


『―――上条当麻ならここにいるぞ』


『ご親切』にそう告げてくる高慢な声。

一方通行はアレイスターの胸倉を掴みあげたまま、その声の源へと顔を向けた。
一閃するかのごとく鋭い視線を飛ばし、横目に睨みつけて。

その視線の先4m程の位置、そこには例の中性的な男。
一方通行の鋭い視線に彼は不敵な笑みを返し、己が胸に指先を当てこう言い放った。


『―――俺様が上条当麻だ』

343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:07:47.12 ID:xxUCz63jo

からかっているのか、と。
常識の範囲内ならばその言葉を聞いて一蹴するであろうが。

たった今あの男の一連の登場の仕方を見、
その力の動きも観測した一方通行にとっては、ただの妄言なんかには到底聞えなかった。

一方『―――…………』

そう言い放ったあの男は、こちらの言葉を待っているのか、
高慢さが滲む薄ら笑いを浮べたまま黙っている。

一方通行は一度大きく深呼吸しては興奮した気を沈め。
アレイスターを、あの中性的な男とは反対の方向に放り捨てるように降ろして。


一方『…………フィアンマ、つったか?オマエの中にアイツがいるのか?』


今度こそその身も振り向かせて、正面から向かい合った。
と、そこで彼が放った声、その問いの内容よりもまずは『呼び方』に引っかかったのか、

相手は露骨に不機嫌そうな表情を浮べてこう続けた。


『フィアンマ、か。確かにそれは俺様の今の真名ではあるが』


『お前のその言霊は、「青銅の種族」として生きた最後の一世しか指していない』

もはや面目など気にならないであろう、
聞いている方も清々しくなるほどに突き抜けた酔狂っぷりで。


『真の俺様を指すのならばこう呼べ。「焔竜神王フィアンマ」、と』


一方『はッ……相変わらず口が減らねェ野郎だ。いンや、それどころかウザさ五割り増しか』


竜王『フン、まあ、「竜王」でもいい。お前等の乏しい記憶力でもこれならば大丈夫だろう』

344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:09:39.72 ID:xxUCz63jo

一方『……知るか。オマエの「ただしいおなまえ」なンざどォだっていいンだよ』

一方『それよりも質問に答えてくれねえェか?竜王さンよ』

嫌味を篭められても一応『竜王』と呼ばれたことに満足したのか、
竜王は再び笑みを浮べながら「そうだったな」と髪を掻きあげて。


竜王『俺様の中にいる、という考え方は少し間違っている』


竜王『俺様が上条当麻、その言葉のまま受け取ってくれ』

一方『あァ?』

竜王『大昔にちょっとした事があってな。その際に彼と同化してしまったのさ』

竜王『その頃から俺様達は「同一人物」であり、この「青銅の種族」として生きた千世代の間が「片割れ」同士であっただけだ』

一方『…………』


竜王『だから、上条当麻を構成していた人格は俺様自身でもあるのだ』


一方『―――オマエそのものが上条当麻だァッ?』


とそこでこれ以上言葉を続かせないとばかりに、
耐えかねた一方通行が強く声を発した。

竜王の言葉は、どうやっても納得できないものだ。
竜王がもし上条の姿のままであっても、これだけは間違いはしない。

この竜王という人格が、
己の知っている上条当麻という男であるわけがない、明らかに別人だ。

345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:12:51.92 ID:xxUCz63jo

一方『―――黙って聞ィてりゃ好き勝手言ィやがってよォ』

その下種な姿と口、そして明らかにあの『フィアンマ』として覚えている人格が、
己が上条当麻だと自称するのは不愉快極まりない。


竜王『おいおい、そんな言い方は無いじゃないか。インデックスを取り戻すために「共」にバージルに挑んだ仲だろう?』


一方『………………………………おィ。いい加減にしろよ』


インデックスを攫おうとした人格が、インデックスを守った男を自称するなんて。
許し難いにも程がある。

そんな風にして怒りに滾る一方で、彼は冷静にこの竜王の言葉も分析していた。

竜王の声、表面的な言葉には真実も含まれているのであろうが、
その根底にある意図は明らかに『冷やかし』だ。

挑発し茶化しているだけ。隠そうともしていないので明らかだ。
ここから更にこちらを逆撫でするために、誇張や嘘を平気で混ぜてくるとも考えられる。

となれば。

この竜王の声は今、真剣に耳を傾ける価値など無いに等しい。
そこから上条を『取り戻す』方法のヒントを得るのは困難だ。

そうして状況を分析した彼の考えは、このような結論に至った。

やはり―――まずはアレイスターから聞くしかない、と。

それはつまり。


一方『……チッ……』

なんと『胸糞悪い』展開か。


アレイスターはまだ『殺すわけにはいかない』。



この背後にいるどれだけ憎んでも憎み足りない『クソ野郎』を―――『絶対に守らなければならない』ということだ。

346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:15:01.79 ID:xxUCz63jo

そして同じく。
これまた癪なことに、この竜王を殺すことも出来ないのだ。


上条とフィアンマが『同一人物』、
それがどんな仕組みで成り立っているのかわからない以上、あの男を殺すという選択など有り得ない。

一方で、アレイスターを連れてここから離脱するという選択も危険だ。
これまた何もわからない以上、最初から竜王を完全に放置する選択をするわけにもいかない。

今ある選択肢は一つ。
この男をできるだけ傷つけないように素早く制圧すること、それだけだ。

一方『(……クソッタレ)』

なんとも面倒極まりない状況か。
更にこの竜王も、一筋縄ではいかないのは明らか。

ただの『フィアンマ』として相対した前回とは、人格と表面的な姿形は同じであるが、
同一なのはその点だけだ。

他の要素は全くの別物、規格外もいいとところだ。
こうして対峙しているだけでも、その存在や力の異質さを肌に覚える。

しかもその存在を構成している要素は単一なものではなく、
様々なものが混ざっているように見えた。

一方『……』

悪魔のものから、能力者や己と同じ力の他、
海原から覚えていたまた別系統の匂い、

そしてそれら『三つの系統が融合している』―――独特な上条当麻の匂いも、確かに存在している。


だが最も色濃く、その割合の多くを占めていたのは、


去年の『あの日』、異世界上で繰り広げられた魔帝とスパーダの一族の戦い、
その戦場を満たしていたのと同じ強烈な『匂い』。


そう、魔帝やダンテ達と『同一』にして飛びぬけて圧倒的な力だ。

347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:16:32.67 ID:xxUCz63jo

なぜこの男からダンテ達と同じ匂いがするのか。
その理由なんか想像すらつかなかったが、それでもこれだけはわかる。


この竜王は紛れも無い―――『怪物』だと。


竜王『―――まあ、お前の話は後で聞いてやる』

と、ここで。
気を張り詰めらせる一方通行とは対照的に、これまた潔いくらいに高飛車な表情と声で。


竜王『その前に、「彼女」と話をさせてくれないかな?』


竜王は彼の背後のアレイスターを指差した。
その肉体は『美しい女性』である彼を。

竜王『―――おっと失礼。その「麗しい姿」でついつい』

続けて『わざとらしく』そんな言い訳をして。


竜王『では改めて。そこの「彼」、アレイスターと話をさせてくれないか?』


一方『…………』

その言葉に応じる理由など無かった。
具体的な用件はどうであれ、動機が悪意に満たされているのは明らか。

一方通行は声にしてではなく、その身に纏う張り詰めた戦意で返事を示した。
そんな彼を目にしては、竜王はため息混じりにこれまたわざとらしく苦笑いを浮べて。

竜王『おやおや、お前達はどうしてそうすぐ野蛮な方向に物事を考える?』

一方『隠してるつもりか?プンプン匂ってるぜ。雑な殺意がなァ』

そして次の瞬間。


竜王『なるほど、前回よりも随分と―――感覚が洗練されているようだな』


―――『オレンジ色の光』が瞬いた。

348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:19:38.77 ID:xxUCz63jo

両者の間は僅か4m。
彼らほどの存在にしてみれば、
物理的には『距離』なんて言葉で表すのも馬鹿馬鹿しい程度の空間。

しかしそれは物理的な観点のみの捉えだ。


人界の古王と、人界の新たな王に相応しき領域の者。


そんな両者の圧倒的な力がひとたび放たれれば、
その空間は途方も無く危険で濃密な領域となる。

刹那。

竜王のすぐ頭上の空間から放たれた―――夕日色の光の筋。

一方通行の頭部、ちょうど眉間目掛けて真っ直ぐに伸びていく。
いや、放たれた時には既に『着弾していた』。
見切ることなど不可能とも思えるほどの速度だ。

しかし。

物理領域においてどれだけ速かろうが、例えそれが光速に等しかろうが、
物理領域から飛び出してしまっている今の彼らにとっては大した意味を成さない。

『速い』か『遅い』か、この神の領域でそれを決める要素はただ一つ。

『力のあり方』だ。

どれだけの量を篭められるかのパワー、どれだけ集束させて高密度を維持できるかのテクニック、
そしてその攻撃に的確な『意思』を載せられる精神力と判断力、
それらによって形作られる力によって全てが決まるのだ。

そうして開戦の狼煙たるこの初撃については。


一方『―――』


一方通行に軍配が上がった。

349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:21:46.01 ID:xxUCz63jo

光が着弾したのは、彼が己が顔の前にかざしていた左手の平。

その蠢く闇を貫くことはできず、
光は斜め後方へと強引に向きを変えてられて、壁にバスケットボール大の穴を穿った。

弾きいなされても尚その集束は維持されたまま、
一切の余波も衝撃波も生じさせずに、不気味なまでに滑らかな切り口の穴を。

そのように捻じ曲げた光を横にすれ違うようにして、
一方通行は前へと瞬時に踏み込む。

全身の漆黒の闇から、真っ赤な火の粉を散らしながら―――。

ここで―――距離は3m。

と、それとほぼ同時にして、竜王の掲げた右手先に新たな光が出現、
莫大な力が一気に集束しては、オレンジ色の『光剣』を形成し。


それを手にしては、そのまま振り下ろすべく竜王もまた前へ―――距離は2m。


一方通行はそれを見ては更に姿勢を落とし。
次いで竜王の首元を掴み押さえ込むべく、引いて『溜めていた』右手を―――凄まじい速度で突き出した。

しかし。

この二合目で勝ったのは。


一方『ぐッ―――!』


今度は、振り下ろされた竜王の刃であった。

350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:24:22.69 ID:xxUCz63jo

それは一瞬のタイミングの遅れと、
『速度』を決定付ける力の僅かな甘さが招いた敗北だった。

次の瞬間、一方通行の右手首から先は―――切り落とされていた。

一方『―――』

更に彼の目が捉えるは、竜王の左手に出現していた光剣。

その切っ先はまっすぐにこちらへと向いており、
今にも喉元へと突き上げられる直前だった。

だが。

状況的に必殺であったはずのその三合目は、竜王の思惑通りにいかなかった。

振り下ろされたばかりの竜王の右手、
その手首を一方通行が上から押さえるようにして掴み。

一気に引き寄せたからだ。


―――瞬時に再生させた『右手』で。


竜王の刃、その力の密度は確かに凄まじいものであったが、
一方通行から右手の存在を奪う水準にはあと少しのところで達していなかったのだ。

その右手で一気に引き寄せられ―――両者の距離は1m。

突き上げられた竜王の左の切っ先は、一瞬の差で一方通行の喉を捉えきれず。
彼の耳の後ろ、その黒く変質している髪先を掠り落としていくことしかできなかった。

竜王『―――ッ』

この時の竜王は、左手は振るわれたばかり、右手は押さえ込まれているという状態。

そう、一つの攻撃の失敗が、この無防備な瞬間を生み出してしまっていたのだ。
彼には、周囲からの『光』による対応という選択も確かにあったのだが、

この瞬間を見逃さずにして一瞬にして伸びてくる―――漆黒の左腕には到底間に合うものでは無い。

だが―――かの竜にはまだ別の選択肢があった。

一方『―――!』

その瞬間。
一方通行が掴む彼の右手首が突然、「ばちん」と『弾け切れた』のと同時に。


竜王の体が―――消失した。

351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:27:01.61 ID:xxUCz63jo

それは『前回の戦い』でも多用していた―――『瞬間移動』。

いや、あの時よりも更に洗練されているか、
魔術や能力による『まがい物』ではなく正真正銘の空間移動だ。


竜王は消失しのたと全く同時にして―――彼の背後に出現していた。


その左手の刃で、彼の首を切り落とす瞬間の体勢で。


だが前回とは格が違うのは、一方通行もまた同じであった。

瞬間、彼は一瞬にして今の竜王の行動の把握し。
進化した知覚を最大限に稼動させて、相手の力の動きを感じて、
そこから『飛行先』の先読みを行い―――難なく読み切る。


故に、竜王が飛んだ先で目にしたのは―――翼で弾き上げられ、軌道を逸らされる己の刃。

この闇の主の首を落とすはずだった光剣が、
またしても、同時に屈んだ一方通行の髪先を掠るだけに終り。

次いで、振り向きざまに放たれてきた黒き裏拳が彼の視界を覆った。

竜王『がッ―――』

顔面に拳を叩き込まれ、
足が宙に跳ね上がるまでに仰け反りかえる竜王の体。

だが、彼の体がその莫大な衝撃で吹っ飛んでいくことは無かった。

次の瞬間、彼が弾き飛ばされていくよりも速く。
更に身を翻した一方通行が半ば殴るようにして竜王の胸倉を掴み。


そのまま床に―――叩き落したからだ。


一瞬にして割れて陥没する床、
しかしそこから破片が飛び散る事すら始まらないうちに、
間髪入れずに一方通行の翼が踊り。

そして一気に竜王の全身へと絡まっていき。


竜王をその場に固定し―――制圧した。

352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:28:55.92 ID:xxUCz63jo

圧倒的な力の炸裂によって界が軋んだものの、
物理領域まで届いた衝撃は、大地とビル全体をやや強く震わす程度のもの。

床は大きく割れ陥没してしまったものの、顕在化した破壊の跡はそれだけ。

半ばぶっつけ本番で、しかも打ち止めが同じ学区内にいるという状況で、
これほどの力を振り回すことにはいくらかの懸念もあったが、
どうやらほぼ完璧に統制し切ったか。

最初から最後まで力の集束は維持でき、ほとんど余波を生じさせずに済んだようだ。

一方『―――…………ッふゥッ』

腰を落とした姿勢でその竜王の胸倉を押さえ込んだまま、
一方通行はその安堵の意味も篭めて、一区切りを示す息をついた。

そんな彼を見上げて。


竜王『ッは……殻を破ったばかり、その力を到底扱いきれるとは思っていなかったが』


苦痛を滲ませながらも、
未だに不敵な表情のままの竜王が声を放ち。

竜王『十二分に使いこなしているじゃないか。「竜王として」の俺様をここまで圧倒するとは』

そして高らかに叫んだ。

竜王『―――なあエドワード!!本当に良い「駒」に仕上げたな!!』


奥にて、膝をついているアレイスターへと向けて。


竜王『―――その「駒」に守られる気分はどうだ?!はははは!!』



竜王『それも「その体」の「仇」からな!!』

353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:31:47.65 ID:xxUCz63jo

一方『―――』

そんな竜王の言葉が放たれた途端、
一方通行は確かな気配の変化に気付いてその顔を向けた。

アレイスターへと。

瞬間、抜け殻のようになっていた彼の気配に、
いや、それ以前に元から『中身』の無いまるで機械のようなあの男に。

微かに―――ほんの微かに、『生々しい熱』が生じたのを敏感に察知したのだ。

しかもそれはどす黒くて強烈な、
こうして僅かな分だけでも瞬時に把握できる、一方通行が良く知っている『熱さ』。


そう―――『憎しみ』だった。


竜王『これは傑作だ!!聞えているのだろうエドワード!!どんな気分だ?!』

竜王『是非聞かせてくれ!!礼として俺様は「ローズの歯ごたえ」を聞かせてやるぞ!!』

明らかに挑発し侮辱している竜王の言葉、
当事者ではない一方通行ですら耳障りの忌々しい声、それが連なっていくたびに。



竜王『お前の「妻」の魂を引き裂いた俺様の爪から、「駒」に保護される気分は?!ははははは!!』



一方通行ははっきりと感じ取った。
俯いているアレイスターのその背に、全身に、色濃く重なっていく『憎悪』の影を。

今まで一度たりとも、
人間性の欠片も覚えなかったこのアレイスター=クロウリーに。


一方『…………ッ!』


生々しすぎる程に煮え滾った感情を。

354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:33:29.41 ID:xxUCz63jo

―――そして。


その体の仇。

お前の妻。

魂を貪った俺様。

それだけの言葉で、
竜王とアレイスターの間にあった過去の因縁はおおまか予想が付いてしまう。

一方『―――…………つ……ま……』

素直で純真な一方通行、
そんな根が露になっている今の彼としては、絶対に知りたくも無かった過去が。


竜王『知りたいか?聞きたいか?この男の哀れで無様で罪深き所業の全てを―――』


一方通行の反応を見て、ここぞとばかりといった調子でニッと笑い、
これまた明らかに冷やかしの声を放つ竜王。


その時―――これはマズイ、一方通行は瞬時にしてそう状況を分析した。

ここはあのまま『動かないで』いて欲しかったアレイスターが。


面を遂に挙げて―――竜王を真っ直ぐに睨んでいたからだ。


―――その瞳を血走らせて。


竜王『あの男は昔―――』

そして彼は、そう口を開きかけた竜王の言葉を。



アレイスター『――――――――――――黙れ―――』



静かながらも、鋭いその一声で封じた。

355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:34:55.51 ID:xxUCz63jo

竜王『ほお……これはこれは……』

そんなアレイスターの声に、
これまたわざとらしく嬉しそうな声を漏らす竜王。

対して一方通行は真っ直ぐにアレイスターを睨み、強烈な威圧感を放つ。

一方『―――アレイスター。黙ってろ』

しかし。

その制止の声にアレイスターが応じる気配はなく、
床に転がっていた銀のねじくれた杖を手に取り。


一方『やめろ―――止せ』


一方通行が他の翼を大きく広げ、
武力行使の意思を示しても、彼は留まる気など微塵も見せず。


一方『―――おィ、こィつは最後の警告だ』


そして立ち上がった。
その瞬間、容赦なく一方通行の翼が伸び、
アレイスターを再制圧―――。

―――するはずだったのだが。


一方『―――』


伸びていくはずの翼が―――根こそぎ『切り落とされていた』。

いつの間にか周囲の宙に出現していた―――『真っ赤』な光の筋に。



竜王『さてと、そろそろ俺様も―――「新しい力」を試させてもらうぞ』



356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:36:15.03 ID:xxUCz63jo

何が起きたのか。

それを把握するどころか、
こうなる僅かな兆しすら全く知覚出来ず。

一方『―――』

続けて更に間髪入れずに。

彼がわき腹に強烈な衝撃を覚えた瞬間、
その身が一気に吹っ飛ばされてしまった。

何が起き何で攻撃されたのか、彼がようやく知ったのは、
そうして壁に磔にされてからであった。


一方『―――ッかァァァア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!』


腹部を貫通していたのは―――『赤き光の槍』だった。

今の今まで竜王が行使していたものとは明らかに違う、
そして桁外れの力が篭められている凄まじい刃―――。

その刹那。

一方通行の思考は、この『赤き槍』の姿を過去の記憶の中にも見出す。

―――どこかで、どこかで見たような。

いいや、はっきりと覚えている。
あんな代物を忘れるわけも見間違えるわけもない。

あの赤い、赤い光の『矢』。

一方『なッ―――』

去年のあの騒乱の際。


あの異世界の決戦の時―――かの魔帝が使っていた―――。


一方『―――なンでコレをッ―――オマエがァァァァ゛ァ゛ッッ!!!!!!』


ダンテ達に雨のように放っていた―――無数の赤い『光の矢』だ。

357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:38:46.88 ID:xxUCz63jo

響く、苦悶に染まりあがった一方通行の怒号。
そして彼の問いに返されたのは言葉ではなく。


立て続けに放たれた―――同じ六発もの『赤い矢』だった。


それらが一気に、彼の腹、胸、そして首へと突き刺さっていく。

一方『―――ァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!』

その魔帝の力による激痛と衝撃は、まさに今まで味わったことのないもの。
あまりの刺激に耐えかねた彼の咆哮は、内臓が口から飛び出してしまうか、というまでの勢い。
そんな、磔になっている彼の様子を見て、

竜王『はは、これまた驚いた。馬鹿みたいに頑丈だな』

いつの間にか自由の身になっていた竜王が、呆れがちに笑った。


竜王『これは魔帝の矢だぞ?そこらの大悪魔なら一撃で即死しかねない代物だ』


竜王『いくら俺様でも、「竜王だけ」としてだったら、立て続けに七発も浴びれば声すら出ないものなのだがな』


竜王『さて……お前に昔話を聞きかせるところだったかな?』


そうして再度、『昔話』を始めようとしたところ。


アレイスター『―――黙れと言っただろう』


またしてもアレイスターがその声を遮った。

358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/13(日) 03:44:34.03 ID:xxUCz63jo

竜王はそんなアレイスターの顔をまじまじと眺め、「ふむ」とわざとらしく声を発しながら、
お馴染みの酔狂しきった高慢な笑みを浮べて。

竜王『一端の責任感はまだ健在だったか』


竜王『真の大罪を背負うのは己のみ、如何なる形であれ、他者の記憶に残り偲ばれる事は拒絶する―――』


一方『―――やめろアレイスタァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ!!』


闇や翼をいくら伸ばしても赤き光の筋に切り掃われ、両者には欠片も届きもせず。
その咆哮も、もうアレイスターには届いていなかった。
彼がどれだけ大きく叫ぼうが、憎悪に滾る男の熱は冷めず。

それどころか、ますます激しく荒々しく噴き上がっていく。


竜王『―――そんなところかな、お前のケジメは。全く、非業の魔術師であり親であり夫であり一人の男だな。泣かせるよ』


アレイスター『黙れと言っているのだがこの腐れ竜が。私に用があるのだろう?』

竜王『ああ、そうだ、お前に用があったんだ。エドワード』


一方『―――――――――逃げろッッ!!逃げやがれッッッ!!』


ダメだ、これではダメだ―――上条を取り戻すためには、あの男が必要なのに。
万回殺したとしてもまだ殺したり無い、そんな男でも。

絶対に―――絶対に生きていてもらわなければならないのに。


アレイスター『…………………………………………』


それこそ今この瞬間においては―――打ち止めたちと『同じくらい』に、失ってはならない命であるのに。


一方『――――止せェエェェェ゛ェ゛ェ゛ェ゛!!』


そんな一方通行の叫びも虚しく。
竜王とアレイスターの姿は次の瞬間。

彼の目の前から消失した。


―――
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(茨城県) [sage]:2011/11/13(日) 03:47:53.77 ID:L71GXJ8y0
しかし赤い矢6本ってスパーダ血族レベルじゃないと無理だな

362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) :2011/11/13(日) 05:06:30.27 ID:13ObDqDR0
つか一方さんどんだけ頑丈なんだよwwwwww
ダンテたちでさえ耐えられるのは5本が限度とか言ってなかったっけ?

364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [sage]:2011/11/13(日) 12:59:06.78 ID:xxUCz63jo
紛らわしくてすみません。
ダンテ達でも危険なのは『赤い大剣』の方で、四発以上直撃すれば死ぬという代物ですが、
フィアンマが今回使ったのはそれではなく、魔帝がバッシバシ大量にぶっ放してきてた小さい光の矢です。

385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/17(木) 03:04:26.36 ID:ex0W4kCWo
―――

19世紀末、ある魔術結社に二人の若き魔術師がいた。

片方は物静かで紳士的、もう片方は活発で傲岸不遜と、
その人格は似ても似つかない正反対のものであったが、

一つだけ、彼らの間には『彼ら同士』にしかない共通点があった。


非凡なる頭脳を有していたことである。


これもまた不思議な縁か、
それとも『何か』が明確な意志の元にそうしたのか。

1000年に一人、いいや、その程度では収まらないほどの才が同じ時代に生まれ、
魔術界へと入り、同じ結社に属し、そして肩を並べていたのだ。

そうして、対等に知的共有できる相手が互い以外にはいなかった彼らの間に、
他には無い特殊な関係が形成されるのも当然の成り行きか。

それは実に奇妙な『信頼関係』。

生活スタイルも価値観も、
付き合う人の種類もまるで違うにも関わらず、
彼らは互いを最も理解し唯一の『親友』であり『ライバル』と認め称え合う。

そして互いに理解しきっているが故に相容れず、
彼らの間は常に一定の緊張感で満たされる、というものだった。

それだから、結社の同士達の目にはまさに犬猿の仲に映り、
そんな二人の一触即発の緊張に周囲は常に気をもんでいた。

当の二人にとっては最も気兼ねなく接することができる相手であるのだが、
喧嘩腰に聞える魔術談義が白熱し、実際に殴り合いにまで発展することもしばしばあっては、
周りからは到底『親しく』見えるわけも無いのである。

386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/17(木) 03:05:57.56 ID:ex0W4kCWo

ただ彼らのこの奇妙な関係は、その密度に反比例するかのように短いもの、
僅か二年の間だけであった。

いいや、近い内に別の道を歩むことになることを互いに感づいていたのかもしれない。

だからこそ、周囲からは犬猿の仲と認識されるくらいに、
その思考をとにかく吐き出しては激しくぶつけ合っていたのかもしれない。

そうして二人が出会って二年が過ぎた頃、彼らの道は遂に別れることとなる。

活発で傲岸不遜であった一人は、次第に『魔界魔術』に傾倒していき、
その力に魅せられては天界魔術に見切りをつける形で突然離団。
更には魔術界の表舞台からも姿を消し。


人間の―――『力』を証明するために、ただそれだけに己が才と人生の全てを賭す。


そして物静かで紳士的であったもう一人もまた、
唯一対等な者がいない結社には、これ以上身を置く意味も無いと結社を離れ。
その才を惜しみも無く発揮し、魔術界を席巻し、革命を起こす―――そんな『隠れ蓑の裏』で。


一人の特別な女性と出会い、そして彼女の力から『真実』を知り。


古の天の英雄に共感し心酔し、かつその手段を否定して。


人間の―――『未来』を手に入れるために、ただそれだけに己が才と人生の全てを賭すようになる。

387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/17(木) 03:08:40.12 ID:ex0W4kCWo

―――ただ、と。

『今』になって『彼』は再認識する。

人間の未来を手に入れる、
その理想をただただ純粋に追い求めることができていたのは、60年前までだったのだ、と。

一度完全なる敗北を喫したとき、
エドワード=アレグザンダー=クロウリーなる人物は、
もう素直に前に進めなくなってしまっていたのだと。

アレイスター『……』

その人間性は全ての喪失に耐えられるほどに強くは無く、
中身はどす黒くなってしまったのである。

だからこそでもある。
二度目のプランを進めるにあたって、己から人間性の全てを除外したのは。

だが。

ここでもまた彼はようやく気付いた。
そのような人間性から完全に逃れること、絶対になどできないのだと。

いくら外装を取り替えても、
こうして根源の魂から絶え間なく噴き上がってくるのだから。

ミカエルに心酔し、そして―――ある女性を愛した『人間の男』のままの魂から。


アレイスター『…………』


怒りが。

憎しみが。

抗いようも無いほどに強く。

389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/17(木) 03:12:09.92 ID:ex0W4kCWo

意識内にて、最後に交わしたあの友の声が再び木霊する。


『―――お前の真の目的は「――」だ』


その言葉に今の彼は「そうだ」と返す。


そうだジョン―――その通りだ。


その点については君が正しかったよ、と

60年前のあの日から、この魂を突き動かしていた最大の原動力は理想を遂げることではなく―――


―――怒りだ。


   ローズ
―――『彼女』を奪った全ての存在への、と。


今まで対していた敵は天界。
彼女の仇とはいえ、その関与はあの状況を整えたという『間接的』な範囲に留まっている。
それ故だろう、魂の奥底に渦巻いていた憎悪は、理性による封印を破ることは無かった。

アレイスター『……』

しかし今や違う。

対面している存在は―――『直接的』に手を下した者。

その『行使の手』で彼女を噛み砕いた神の右席。
彼女を侮辱しその死をあざ笑う古の怪物だ。


彼の激情は今や、理性で抑えきれる範囲を遥かに超えていた。

390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/17(木) 03:15:16.86 ID:ex0W4kCWo

彼はもう諦めていた。
己を律することは止めた。

プランも終わりだ。

敗北したのだ。
この『二度目』もまた、完全に敗北し失敗した。


もう良いのだ。
もとより生に執着は無く、後悔はあれど未練など一欠けらも無い。
二度も敗北して、もう三度目に挑む気力も無い。

どうしようもなく疲れて、どん底まで絶望して、
二度と色を落とすことが出来ないくらいに憎悪に染まってしまった。


そして感情に再び身を委ねてしまったからこそ認識する―――これまでの行いに対する、桁違いの『罪の意識』と。


とてつもない『失望』。


元から人の命など全く気にしていない人格だったアリウスとは、決定的に違う。

本来のアレイスターは、古の英雄に思いを馳せ、一人の女性を愛し、
そして人間の未来を救おうとした『馬鹿正直な理想家』なのだ。

そんな彼が耐えられるわけも無い。


この60年の間に犠牲にしてきた存在―――大勢の子供達の『命』が、全て『無意味』だったことに。


己の行いはただ―――事態をかき乱し―――


救うはずの人類を―――更なる窮地に追い込んでしまったのだと。

391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/17(木) 03:16:47.43 ID:ex0W4kCWo

そうして絶望と失望に打ちひしがれて、憎悪に身焼くアレイスター
そんな彼に今できることはただ一つ。

それは些細な『後始末』であり、今や己にしかできないこと―――竜王を廃することである。


竜王『―――ッ』


アレイスターと竜王、次の瞬間に彼らが立っていたのは、
学園都市の薄暗いビルの中ではなかった。

黄昏色の光に満たされた大気、空。
黄金の縁取りが施された、延々と続く白亜の石畳。
そして崩れかかった、金銀煌びやかな装飾過多の列柱。


アレイスター『―――覚えているな?』


そこは古の人界に存在していた神族の界域、
その中でも最上層の『人界王』の間であり。


そして―――――――――竜王とミカエルが共に滅んだ地であり。


アレイスター『―――この場所を』


60年前、先代の右方と―――ローズが死んだ地。

392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/17(木) 03:18:59.85 ID:ex0W4kCWo

そこはアレイスターによって、
かの『界域』が学園都市の『中』に限定的に『再現』されたもの。

そう、『再現』だ。

それもアレイスターが再現しているのはこの風景だけではない。

かつてある時、そこで行われた出来事―――。


―――ミカエルが竜王に喰われ、融合し、そして竜王の思念を破壊して自滅させるに至るかの決戦。


その過去の『事象』をまるごと『今』に重ね合わせているのだ。

竜王『―――』

これこそ60年前に『行使の手』を打ち破った、
竜王の力に対するアレイスターの究極の切り札。

『彼女の目』が竜王の力から正確無比なる記憶を引き出し、
アレイスターの業で偶像となり『再現』される。


効果はもちろん文字通り―――過去の正確な再現。


かつてと同じようにして、
『竜王役』の思念は破壊されその力で自滅するのである。

そしてこれまた同じく。


代償として『ミカエル役』の魂も―――飲み込まれて共に死ぬことになる。

393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/17(木) 03:20:21.90 ID:ex0W4kCWo

だがそんな代償も、
今のアレイスターにとっては何の障害にもならない。

むしろ彼はある種の悦びを覚えていた。

竜王『―――これは―――』

なぜなら。

一度目、人界を救うためにミカエルが。

二度目は、己を生かすためミカエルをローズが演じ。

この三度目にて。


アレイスター『……これも覚えているだろう?』


己が演じるのだから。

どういった形であれかの英雄、
そして妻と同じ『時間』と『苦痛』を体感できることは、

この瞬間の彼にとって唯一の―――そして最期の光であった。


アレイスター『―――この―――「右剣」を』


394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/17(木) 03:23:41.18 ID:ex0W4kCWo

竜王は突然切り替わった周囲を見、
そしてアレイスターの『右手』を見て、その目を大きく見開いた。

煌々と輝く彼の右手―――そこに握られている白金の『光剣』を。

              ツルギ
それはミカエルの剣の偶像である。

かつて、かの偉大なる英雄が振るった十字教最高の刃。
更にあの決戦の際には、大任を果すべく天界のあらゆる力が集積されていた極限なる『右剣』。

この刃をもってミカエルは竜王に挑み、
喰われると同時にその魂を貫き、竜の思念を破壊したのだ。

そんな刃が、アレイスターの魂と意識と―――類まれなる『業』が許す限り、最大限にまで再現される。

アレイスター『―――ぐ―――がッッ―――!!!!』

その身を震わせるのは想像を絶する負荷。
しかし彼の意識が鈍ることなど無かった。


―――果てしなく強い憎しみと怒りが、その命続く限りは眠ることなど許してはくれなかったのだから。


彼は己の魂や体の悲鳴などお構い無しに、
全ての力をこの術に注ぎ込んでいく。

墓所はもちろん魔界からも、
もう隠れる必要も無いのだから天界からさえも、力を強引に引き出して。

395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/17(木) 03:25:23.77 ID:ex0W4kCWo

そうして。

彼の類まれなる技術と、莫大な力が集束したとき。

この術式の『強制力』は、
まさしく大悪魔・神の域と称される『世界への干渉権』をも手に入れて。

たちまち周囲の現実に―――偶像を上書きしていく。


竜王『こ―――』

竜王が何かを言おうと口を開きかけた瞬間、
その『前世』のフィアンマと言う人間の姿が―――剥がれ―――飛び散っていき。


かつての決戦の時と同じ、『竜』の真の姿へと変じさせられる。


黄昏色のたてがみのある竜の顔に、体表を覆うはさながら黄金の如く煌く鱗。

隆々とした胸板に、鉤爪のあるたくましい腕。
しっかりと床を踏みしめるこれまた屈強な獣脚。

そして後方に大きく開き伸びる―――翼と長い長い尾。

力図強く悠然としているその立ち姿は、まさに『竜人』とも言えるか。

心奪われる神々しさに満ち溢れながらも、
装飾過多の域に達している煌びやかさは、一方で形容し難い嫌悪と不安を抱かせる―――。


―――混沌の竜王。

396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/17(木) 03:27:45.27 ID:ex0W4kCWo

刹那。

黄昏色の光の衣を、炎のように揺らめかせながら。
力ずくで真の姿を暴かれた竜王は、
同じく光が篭る『竜の目』でアレイスターを真っ直ぐに見た。


かの時に抱いた驚きと怒りもまた、正確に『再現』されているのであろう、

アレイスター『―――はッはははは―――!!!!』

異形の瞳にそれらの感情を見て、アレイスターはたまらず笑った。
苦痛に顔を歪めながら、憎悪と絶望を滲ませて。



ミ カ エ ル
上条当麻。

彼の思想に共感して、彼の英姿に心奪われ、
そして彼に成り代わってその理想を現実にしようとこの生涯を費やした。

志半ばで敗北し、掛け替えの無い存在を失っても、
それでも何度も己に自問し再び立ち上がった。

何があっても絶対に立ち止まるわけにはいかない、
何のために妻がミカエル役を自ら引き受けて己を生かしたのだ、と。

そうして二度目も60年かけて挑んだが。


結果はこのザマだ。

現実は懲りない彼に突きつけた。

お前は―――本物のミカエルになどなれやしない、と。


お前はどれだけ足掻こうが―――『生涯ただの一度も勝てやしないのだ』、と。

397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/17(木) 03:29:48.69 ID:ex0W4kCWo

―――ならば、と。

彼は最期に望む。
それができぬのならば。

せめて。
せめて、最期に一度だけ。

                  ミカエル
思いを馳せた、かの偉大なる『英雄』を演じ切らせてはくれないか、と。


アレイスター『―――はッ!!!!』


アレイスターはねじくれた銀の杖をその場に放り捨て、
『右剣』を一度大きく振るっては。


愛する妻の体で、尊崇するミカエルを演じて―――竜王へ向けて踏み切った。


できることならミカエルの抱いた理想を、その一片でもこの手で成し遂げたかった。
例え『ゆめまぼろし』でも。


一時の『幻想』でも良かったから―――。


―――それがローズの願いなのだから。




しかし、彼に対する現実の仕打ちはどこまでも冷酷だった。
彼のその最期の望みですら、返答は。


更なる『絶望の上書き』だった。

400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/17(木) 09:34:53.20 ID:O469SRyDO
竜王ってガチでドラゴンだったのね


406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県) [sage]:2011/11/19(土) 23:41:17.84 ID:vXph7klJo
人間界壊れたらどうなるの?

407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(北海道) [sage]:2011/11/20(日) 00:08:49.98 ID:voailGHuo
人間界以外でも存在できる連中除いて人類抹消。
侵攻の目的を見失った魔界と、守る物のない天界との一方的な消化試合。
その後魔界内での玉座争い。ただし、以上はスタイリッシュ勢が無干渉だった場合。

408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [sage]:2011/11/20(日) 01:59:06.77 ID:qEQJ4VGio
>>406
>>407プラス、人間界の崩壊が免れないとなったらダンテ達でも他の世界に退避していないと危険です。
俗に言う大悪魔の領域に達していれば消滅はしませんが、
そのまま崩壊する人間界に残っていると虚無に放りだされて、魔帝が封印されていたのと同じ状態に陥ります。

409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 01:59:51.41 ID:qEQJ4VGio

駆ける一つの女体。
駆ける一人の男。

そして突き出される光り輝く天の剣。

その刃の前進には抵抗など無かった。
前へと突き進んだ勢いはそのまま、一切衰えることなくするりと。

竜の鱗に覆われた胸部に沈み―――そして貫通し―――背から切っ先が頭を出す。

そうして、アレイスターの魂はその刃を通り。
竜王に飲み込まれると引き換えに、怪物の思念を崩壊させる。

古の決戦を60年前と同じように、絶対的な強制力の下に完全再現する。
竜王役はミカエル役と共に自滅する、その完全再現からは神の領域の存在ですら逃れられない、

アレイスターの全ての技術と業が結集した、完璧にして究極の魔術。


人界の神を殺す――――――『神浄』の術式。


――――――そのはずだったのだが。



刃が竜王の胸を貫いた、それ以降は―――。



アレイスター『―――………………………………………………なぜ―――』



―――再現が『止まっていた』。



410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 02:02:13.99 ID:qEQJ4VGio

ここまできても、
彼の腕は些細な勝利すらをも掴み取ることはできなかった。
最後の最後まで、彼の運命は決して微笑むことは無く。

一回限りの究極の切り札は、その効果半ばで完全に停止してしまっていた。

これで全ての気力が失われた、そう言ってもいい。
アレイスターはこの状況を前にしては、
絶望と失望『だけ』の表情を浮べて、硬直し唖然とすることしかできなかった。


そんな彼に向けてか、これまた酔狂した独り言なのか。


竜王『―――「俺様を倒す」』


竜は仄かに瞳を輝かせながら、連なる牙の間から音を漏らした。
左手先の爪で、胸を貫いている刃をなぞりながら。


竜王『ただそれだけのために、天の力と技術の粋を集めて生み出された刃』


竜王『ミカエルの右腕に埋め込まれし、「俺様にしか効果が無い聖剣」―――』


そして今度こそ、
確かにアレイスターへと向けた声であった。



竜王『―――そうだ。お前への用はこれだ。俺も「これ」が確認したかった』

411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 02:06:51.25 ID:qEQJ4VGio

そうして竜王は、
その異形の顔でもはっきりと読み取れるくらいに『微笑み』。

竜王『そこまできわめて特化してる性質ゆえ、この「聖剣」に関することでは俺様も確証が持てなくてな』

竜王『例えこうして三神の力を持っていようが、直に俺様の魂に作用しかねない代物なんだよ。この剣は』

そう続けて、今度は刃を指で叩いた。
目障りだといった風に、大げさに目を細めて。


竜王『そうだ、この剣は俺様の唯一の弱点なのだ』


竜王『―――だが実に喜ばしいことに』

と一転、ここでまた演技がかった笑いを浮かべ。

竜王『二度とその弱点に怯えなくとも良いということが今証明された』


竜王『完全体である俺様の思念を崩すには、完全なる聖剣が必要』


そして今度は強く刃を握り締めながら。
鼻先同士が触れるかというくらいまでにその竜の顔を向き合わせて、強く確かにこう続けた。


竜王『だがお前でも、かの聖剣の完全再現は不可能であり』

          オリジナル
竜王『そして「ミカエル」は俺様と同一体』


まるで裁きを言い渡すかのように。


竜王『つまり今、何人たりとも―――』



竜王『―――この三神の力を突破せずして―――俺様の魂に届くことはかなわないのだ』

412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 02:08:22.67 ID:qEQJ4VGio

アレイスター『……ッ』

竜王『はは―――なぜ60年前と結果が違うのか、』

竜王『それは俺様がオリジナルであり完全体である一方、お前は本物のミカエルでは無いからだ』

竜王『その「女の目」で正確無比な情報を引き出しても、お前の魂程度では、完全なる聖剣の依り代の役は果せなかったということだ』


竜王『―――再現は再現。所詮はまがい物の域を出ない』


竜王『同じまがい物や、60年前の俺様のように不完全体には効果を発揮できるであろうが』


竜王『生憎―――今の俺様はまがい物でも不完全体でも無い』


アレイスター『―――そんな―――はずが…………』

そんな竜王の口から放たれた理論は、
アレイスターの認識とは全く異なっていたものだった。

確かに60年間のあの時は、半ば即席染みた短期間でこの術式を作り上げた。

だがその後の60年間の緻密な解析、更にこの10年間、幻想殺し、
すなわち『竜王の顎』という現物を前にしてのより正確な研究で、怪物の力の性質は全て調べ上げて得たデータは、

この『神浄』の術式は、
竜王の力に対して完璧な作用を有していると確かに裏打ちしているのだ。

413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 02:11:39.35 ID:qEQJ4VGio

油は、その量をどれだけ増やそうが、
火を投げ込めばたちまち引火するという性質は変わらないように。

不完全体であろうが完全体であろうが、
竜王の魂である以上絶対にミカエルの聖剣の効果からは逃れられない。


『神浄』の術式は『絶対に効果がある』のだ。


だがいくら、アレイスターがそう断じても。
確かなデータと証拠を元にどれだけ完璧に、確実に、非の打ち所なく「こうだ」と叫んでも。


目の前の『現実』は、そんな『幻想』をぶち壊すには充分すぎる威力を持っていた。


竜はあざ笑う。
隠すことも無く、そんなアレイスターをあからさまに嘲笑する。

竜王『確かにお前は良くやったよ。お前は、俺様自身の次に俺様の力の性質を理解しているだろうな』

怪物は刃を握っていた手を離すと、今度はアレイスターの首を掴みあげて、
その顔を更に前に突き出して。


竜王『着眼点も良かった。プランとやらは中々良く出来ているものだ。素直に感心するよ』


竜王『しかしお前はたった一つだけ。重大なミスを「犯し続けた」』

牙をむき出しにして彼の耳元で囁いた。



竜王『「人間的な感性」無くして―――』



竜王『理解しきれるとでも思っていたのか?―――――――――人の王であり「祖」である俺様の全てを』

414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 02:14:42.32 ID:qEQJ4VGio

アレイスター『―――…………―――』

そう、アレイスターの認識は確かに正しかった。
彼の揃えたデータはどれも正確無比なもの。


問題なのは、それだけでは『足りなかった』ことである。


彼をここまで成功させた『やり方』。
人間的な感覚の一切を廃した徹底した論理実証主義。

人の感情すらも完全に数値化することも、彼にとっては不可能なんかではなく、
現に一方通行を筆頭に大勢の人々の人格をこうして操作してきた。

だがそれも『可能である』だけで、決して『完全』なんかではなかったのである。

竜王『お前は、俺様の顎も行使の手もただの「力の塊」、「道具」として見ていなかった』

竜王『上条当麻とフィアンマという二つの魂、それらと切り離して考えてしまい、』

竜王『その人間性が力に及ぼす影響や、力の相互干渉について正確に認識することができなかった』

アレイスター『…………』

竜王『確かに、お前が「AIM」と呼ぶ我等神族の残骸の力そのものは死んでいる。またそこには如何なる意志も含んではいない』

竜王『しかしな、単に意志を保有していないだけで、外部の意志の影響を受けないというわけではない』

竜王『例え死んでいようが、意志を与えれば、または影響を受ければ、ただの残骸の力であろうがある程度の意志を宿せるのだよ』


竜王『お前自身、その証拠は現に目にしていたじゃないか。「エイワス」や「ヒューズ=カザキリ」として』


アレイスター『…………ッ』


竜王『お前の言い方をすれば、「彼女達」はただの記号の集合体、プログラムか』

竜王『はははは、俺様には確かな「人格」にしか見えんがな。特にヒューズ=カザキリは、現世を生きている人間と何ら変わらない程に』


竜王『人の王であり祖としてここに保障してやってもいい。あの「小娘」は、紛れも無く人間と呼ぶに相応しい思念だぞ』

415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 02:17:21.73 ID:qEQJ4VGio

そこで竜王は少し頭を引いては再び向き直り。

竜王『だが愚かなことに。人間的な感性を廃していたが故に、お前はその点に気付けなかった』

竜王『目の前で人間性に溢れた者達が干渉しあい、運命を捻じ曲げる物語を紡ごうとも、それでおもお前は見向きもしなかった』

竜王『それがお前が犯した最大にして唯一の失敗さ』

竜王『それでもある程度はこうして騙し騙しやってこれたが』

アレイスターの失敗、どの実像をここに明確に明示し弾劾した。

竜王『やはり全てが露になってくるこの佳境では誤魔化し切れず。結局、あの「ハデスもどき」の最後の進化を見誤ることとなる』

「プラン」、それは確かに完璧だった。
的確で非の打ち所の無い計画だ。
しかし。

その手綱を握るアレイスター自身が不完全だったののである。

だからこそ、つい先ほど、ほんの僅かなイレギュラー因子が原因で、
一方通行へのこれまでの操作が一瞬にして打ち崩されたように。

アレイスター『―――ッ』


竜王『そしてこの術式だ。そんな欠如したお前自身の認識で、俺様の人間性に直接影響する聖剣の性質を―――』


そして今、こうなったように。


竜王『―――完全に具体化できるわけもないだろう?』


失敗し敗北した。
そう、術式は『完璧』だったのにも関わらず。

アレイスターが不完全であったから―――。

416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 02:20:35.91 ID:qEQJ4VGio

それはアレイスターにとって、これまでの半生の全てを否定されるに等しい事実だった。

感情の類を完全に己が内から廃し、血も涙も無い鉄の人形となり。
ただただ目的のため理想のためにあらゆる犠牲を払ってきたその60年間、それが―――。

全て―――『最初』から過っていたのだ、と。

元から成功するはずが無かったのだと。

緻密に計算した正しいと思われた行動も、当然の如く全て裏目に出て。
中途はあたかも上手くいっているように見せかけて、結果は確実に最悪なものを引き寄せるのだ。


アレイスター『―――あッ…………』

―――どうしてだ、と。

どうしようもない、己という存在への更なる怒りと絶望と失望に沈み、
これでもかとばかりに苛まれていく。

―――しかしそれだけでは物足りないとばかりに。


竜王『おっと待て。お前の「罪」はこれだけではないぞ?』


竜はアレイスターの顔を覗き込むようにして、更なる残酷な真実を告げようとした。


竜王『もう一つ教えてやろう。厳密には、俺様が復活したのは「今」ではない』

竜王『完全体に戻ったのが今であるだけで、この意識が覚醒したのはもっと前―――』

倫理観が未だ定まっていない子供のような、純粋であるからこその残虐さか。

更なる絶望に落ちるアレイスターが見たい、
そんなただの『好奇心』を満たすためだけに。


竜王『―――「60年前のあの日」、あの瞬間だよ』

417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 02:24:40.70 ID:qEQJ4VGio

アレイスター『―――』

一瞬、その竜王の言葉を理解できなかった。
いや、正確にはもう理解したくなかった、か。

だが彼の意識はここまでのストレスに晒されても、
皮肉なことにその聡明さが陰ることは無く。

知らなかった方が良かった―――あまりにも残酷すぎる真実を聞いてしまう。

竜王『60年前のあの瞬間、この術式の再現によって、俺様の意識は「竜王として」存在していた』

竜王『そしてそのまま忠実に再現されていれば、竜王の魂はまた破壊され、その意識と記憶は再び完全に封じられ、』

竜王『1000代繰り返してきたようにまた一人の青銅の種族として輪廻する』

竜王『しかしこのとおり、この術式の再現性は不完全だ』

竜王『その時は、俺様が不完全体であったこともあって力の暴走による自滅には追い込めたものの、』


竜王『魂への影響は表層の記憶を飛ばしたのみ。そして「その状態」のまま―――俺様は輪廻したのだよ』


それはすなわちこういうこと。


竜王『俺様の意識が「竜王として覚醒」したのは―――60年前。お前がこの術式を使ったあの瞬間だというわけだ』


アレイスター『―――』

この状況の原因、
竜王を蘇らせたのは紛れも無い―――アレイスター自身であった、と。


竜王『だからお前に礼を言っただろう?俺様を復活させてくれて感謝する、と』


しかも結果として。


竜王『ローズを捧げてまでしてくれてな』


―――最愛の女性の命と『引き換え』にする形で。


418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 02:26:10.63 ID:qEQJ4VGio

その事実を認識した瞬間。
彼の意識は絶望の底へと向けて更に加速していく。

アレイスター『…………はァっ……―――!』

感情は爆発し。

鼓動が高鳴り、胸の中で不快な感触渦を巻く。
空気を求めて喘ぎ、呼吸が加速し、吐息には熱が篭っていく。

竜王『そして記憶無くとも意識と本能が存続している以上、』

竜王『輪廻した俺様が、自ずと「聖なる右」の完全なる力と「幻想殺し」を求めたのもまた必然』

体中が火照り、
その熱で揺らがされているかのように視界が霞んでいく。


竜王『前世の「右方のフィアンマ」も、その実は単なる記憶喪失状態であっただけで、厳密にはそのまま俺様だったということだ』


神浄の術式が完全に砕け、聖剣は霧散。
竜王が手を離すと、彼はそのまま白亜の床に跪くようにして落ち。


アレイスター『―――ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛―――!!』


彼は身の内を焼く絶望に耐えかねて咆哮した。

419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 02:32:04.46 ID:qEQJ4VGio

己の何もかもが憎かった。

彼女の命と引き換えにのうのうとここまで生きてきた己が、
己の存在そのものが憎くてたらまらない。

60年前のあの時、己はおとなしく死んで、彼女を生かし逃がしていたら―――結果は変わっていたのか。
少なくとも、こんな最悪の状況になんかにはなってはいなかったのかもしれない。


己は一体何をしたのだ。
己は一体、この世界に何を残したのだ。

ただぶっ壊しただけだ。
この手で、彼女も理想も何もかもを自ら破壊してしまっただけ。

ミカエルがその身と引き換えに打ち倒した竜王を―――再び解き放っただけ。

人類の確かな未来を手に入れようとするつもりが。
引き寄せた未来は、天と魔の衝突に巻き込まれるという人類終焉のシナリオと―――古から蘇った悪しき混沌。

人類を解き放つことはできず、逆にパンドラの箱の中身を解き放ってしまう始末。

アレイスター『―――ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ―――……!!

叫びながら内では「なぜだ」、と。

アレイスターは自問する。
なぜお前は生まれた。

エドワード=アレグザンダー=クロウリー、なぜお前は誕生したのだ、と。

しかしそんな問いになど答えは返ってこない。
ただ告げられるのは。

竜王『因果はもとより、己が運命からすらも見放された、人界の不運不幸の全てを背負ったかの如き哀れな男よ』

竜王の口からの冷酷にして残酷な―――。


竜王『人は、誰もお前を許しはしない。誰もお前に同情などしない。誰もお前に慈悲など与えやない』


―――否定しようの無い事実。


竜王『誰しもがお前に失望し、誰しもがお前を憎み恨む―――そうだ。ローズさえもな』

420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 02:34:01.61 ID:qEQJ4VGio

竜王『結果としてお前は人類を裏切り。ローズを裏切ったのさ』

アレイスター『―――ア゛ア゛ッ…………あぁ……』

竜は俯く彼の傍に屈み耳元で告げる。
その声には欺瞞と嘲りが満ちてはいるが、紡がれる言葉は真実しかない。

竜王『常に勝者であり挑戦者であり続け、スパーダの一族と刃散らしてまで己が望みを成し遂げたアリウスともまるで違う』

アレイスター『……………………』

まさにその通り。

あの友のように己の芯を貫けなかった。
ありのままの己を、その全てを受け入れることが出来なかった。

この耐え難い感情を制する強さは無かった。


竜王『お前は一度も因果を味方につけることはできぬまま』

そう、一瞬たりとも英雄になどなれず、演じることら叶わず。

竜王『ただの一度も勝てぬまま』

そう、如何なる戦いにも最後の最後には無様に敗北し。

竜王『ただの一度も救われぬまま』


そう、どんな運命にも英雄に救われることも無く―――。



竜王『失意と絶望と後悔の中で死ぬのだ』



―――ここで終るのだ。

421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 02:35:23.29 ID:qEQJ4VGio

次に何が起こるか。

竜王によって、『神浄』の術式と共にこの身ごと消し飛ばされるのだ。

俯き地しか見えていなくともわかる。
竜王の腕に出現しているであろうあの魔帝の矢によって、
周囲がぼんやりと『赤く』照らされているのだから。


アレイスター『…………』


哀れで愚かで不運で罪深い、人類最高の天才であり魔術師。
そんな彼の最期の言葉は。


アレイスター『………………………………………………………………すまない……ローズ………………』


亡き妻への、無念に染まった謝罪の言葉。

ただそれだけだった。

直後、周囲が『赤き光』に満たされて。
強烈な衝撃と共に全ての近くが途切れ。



そしてあっけなく終った―――。

422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 02:35:53.55 ID:qEQJ4VGio

―――はず、だったのだが。




アレイスター『…………』

不思議なことに、意識は今だ存続しており。
一瞬の知覚の途切れも、次の瞬間にはすぐに回復していた。

アレイスター『…………』

見えるのは白亜の床に、『赤』。

それも赤は赤でも、魔帝の矢の光ではなく―――カーテンのようにたなびく、『真紅の皮革』。


見上げると。


カーテンの正体は『真紅のコート』で。


その上に見えるは『銀髪』に―――肩に載っている『白銀の大剣』。


そう、眼前にあったのはまさしく。


アレイスター『…………………………』



正真正銘の『英雄』の背中だった。

423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/20(日) 02:38:54.75 ID:qEQJ4VGio

だが。

『救われた』彼の内を満たしたのは歓喜ではなく、
安堵でも救済でもなかった。

アレイスター『なぜだ……なぜ…………』

こみ上げてくるのは。


アレイスター『なぜ「今頃」になって―――ッなぜだ?!なぜあの時―――私達の前に現れなかったッ?!!!』


怒り。

                            お 前 ら 
アレイスター『なぜ60年前のあの日に―――「スパーダの一族」は私達の前に―――…………ッ?!!!』



己と言う存在をこの世界で躍らせる、『気まぐれな現実』への憤怒だった。


アレイスター『―――……なぜだ……?!…………なぜ……私とローズは…………今の時代に…………生まれなかった…………』


その男の叫びに、英雄は背中越しにさらりと告げた。
一切の感情が除かれた、平淡で冷ややかな声で。


『―――何をやっても常に遅れ、時にはどうしようもねえくらいに完全に手遅れになる―――』



                               ヒーロー
『―――悪いな。そういうクソッタレな存在なんだ。「英雄」ってのは』




―――

425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/20(日) 02:42:31.63 ID:O9qVEwRDO
やべぇ、ダンテかっけぇ
あとアレイスターさんカワイソス、ワロエナイ

430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/20(日) 04:20:18.30 ID:qJGROxU8o
乙です
今更だけど人間界の神って基本的にはギリシャ神話の神々なのかな?

435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [sage]:2011/11/20(日) 15:07:14.47 ID:RX4KuQFHo
>>430
アレイスターがプランのベースにしたのがギリシャ系というだけで、人間界の神はギリシャの神々だけではないです。
例えばアレイスターの妻のローズの「目」は、エジプトのホルスの性質であったりなど、
人工能力者達はみなギリシャ系ですが原石はそうとは限りません。

神話・信仰のどれが人界系か天界系か、大まかに分けると以下の様に。

人界系
メソポタミア神話系、エジプト神話系、ギリシャ神話系など

天界系
旧約・新約、インド神話系、ケルト・北欧神話系、メソアメリカ系、日本神話など

古代に広く栄えたが紀元後には衰退、
現代では一般的に信仰として存続していない、といった特徴があれば基本的に人界系、

紀元後に栄えて、または現代でも広く信仰されているという特徴があれば基本的に天界系、
かつ唯一神教であれば確実に天界系となります。

ただ、阿修羅やケルベロスは実は悪魔だったりなど、
細かい点では伝聞と真実が異なっていたりしている通り、これはあくまでも大雑把なグループ分類です。

436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/20(日) 17:27:35.92 ID:O9qVEwRDO
作者さんアンタすげぇよ

438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(徳島県) [sage]:2011/11/20(日) 22:01:34.52 ID:eaDYVIg70
じゃあ世界三大宗教は天界系ってことになるな

キリストとかブッダは天界からの使者だったのか?

443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(京都府) [sage]:2011/11/21(月) 11:40:23.15 ID:R1TXV0x6o
竜王にも一方さん≒ハデスみたいな固有の名前があるんですか?
ミカエルとの絡みだと赤龍としてのサタンっぽいけど、そうすると
天界か魔界になりそうだし

444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [sage]:2011/11/21(月) 20:53:57.59 ID:vqBMy5J6o
>>443
当SSにおいては、竜王は「サタンのモデル」といったところです。

実はこれも阿修羅やケルベロスと同じく、
現代に残る伝承が必ずしも完璧な真実を語っているわけではない例の一つとなります。

「竜王含む人界神の過去は全て葬る」という天界の立場の時点で、まず後世の人間達が実像の全貌を知り得ることは叶わず、
(そもそも「人界神」が存在していたことすら知るのは至難)

僅かな情報ですらも短いスパンで世代が入れ替わっていく人間世界、その目まぐるしい歴史に揉まれて改変されていき、
かつ天界の意識操作で都合良く誘導されてしまった結果、

また悪魔という言葉は、大多数の一般の人々にとっては「魔界の生命種」というよりも
「神と人の敵対者であるとにかく悪しき存在」という認識の方が強いため、
そこも混同されて竜王=神と人の敵対者≒悪魔(サタン)という解釈で現代まで記述されてしまった訳です。



※ちなみにここから以下は、本筋にほぼ全く絡まない完全な蔵入り設定ですが、
 イエスと釈迦の名が出たので、ついでということで彼らに繋がる歴史を。
※かなりかなり長いです。

現代では一切の情が入る余地の無い天界と人界の上下関係ですが、
かつては天照達の例のように、天界神が人界に降りて友として関わっていた時期がありました。

しかしある時、「世界の目」の発見によるジュベレウス派の管理方針の変更に伴い、
人間界と天界の物理的な接続は遮断、上下関係を絶対的なものにするため、天界神と人間の直接的かつ友好的な接触を一切禁じます。

そこで天界は、人界内で大きな力が必要とされる作業を行う際は、
特定の人間に力を与えて「使者」とし、天の御業を代理させるという手法を取るようになります。

それがアブラハムをはじめとする「預言者」やメタトロンなどいった者達です。

とはいえ当時の関係も完全に冷え切っていたわけではなく、
それら「使者」の人選は、才能はもちろんですがその他に人徳や、時には暖かい愛情によって加味されていました。
更に中には眷属として天界に受け入られる者もおり、
特にメタトロンなんかは大出世に出世を重ね、元々人間だった経験もあってセフィロトの樹の責任者を任されるに至ります。

しかしこのような関係も、ずっと続くことはありませんでした。

天界神が離れたことによる影響と人間界生まれの魂の本能によってか、
ある時、古代メソポタミアをはじめとして各地で人界神信仰が再燃し、文化の成熟と共に人界神へ近づく学問研究も加速、
最終的には、アレイスターの話でも少し出たとおり古代ギリシャのホメロス達が人界の真理にまで到達してしまいます。

当時の人間界を取り巻く状況は、明日にでも魔界の侵略が始まってもおかしくないものであり、
「世界の目」が存在している人界を失うわけにはいかないジュベレウス派からすれば、
管理体制を崩しかねない人間の探求は、すぐにでも解決せねばならない緊急事態だったわけです。

結果的にはホメロス達は失敗したものの、その後も人界信仰とその学問の波は衰えることは無く、
マケドニアの拡大によるオリエントとの融合、ヘレニズム文化の確立拡大、アレクサンドリア図書館などでの更なる学問探求が進み、
また東では焚書坑儒などの儒教思想弾圧、

西ではギリシャ文化を受け継ぐローマの覇権拡大、
それによるケルト信仰などの天界系他信仰の同化吸収など、天界にとって人界内の状況は更に悪化していき。

遂にジュべ派が「おい良い加減どうにかしろ、これ以上悪化したら武力でもう一度人界洗浄すんぞ」と、
それぞれの下位派閥に圧力をかけるに至り、

それで執られた大規模かつ徹底された「管理強化策」によって、魂のみならずその根底の思想、
価値観や倫理観といった要素も全て「天界風」に「再修正」され、現在の状態へと繋がることになります。

そして当時、その「管理強化策」の使命を与えられた「使者」が、
釈迦やイエスといった現代に続く信仰の直接的な「始まりの者」でした。

そのような背景の元、紀元0年から約±400年の期間中に、
人界神信仰は最盛期を迎えると同時に即座に天界系に廃絶され、
もしくは乗っ取られる形で吸収同化されその後は急激に衰退していくことになります。

ちなみにイエスと釈迦は両者とも各派閥の神に愛された「人間」ですが、
彼らは本筋には絡まないので、天の使者となる詳しい経緯は明確に設定していません。

ただ諸々の事からすると、釈迦はアレイスターと同じく魔神の領域の超弩級の天才で、自力で真理に到達して天に見初められた、
イエスは天に愛されたマリアが生んだ半人半天の選ばれし子(天界視点では管理強化策の要)、といったところが妥当でしょうか。


ということで、ここに設定厨の>>1の余談、長々とお目汚し失礼致しました。
またこれらは全て、あくまでも当SS内における設定です。

445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(群馬県) [sage]:2011/11/21(月) 21:33:23.62 ID:LZ7vxWHl0
設定が凄過ぎるwどれだけ考えてるんだよw

448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 00:48:47.71 ID:29n8M7ZDO
>>444
設定厨だとしても、ここまで長い話なんだから裏設定がどっさりあっても不思議ではないわ
欲を言えば、この物語が終わった後(長く続いてはほしいが)にでも、語られなかった設定を聞きたいな……

あと質問なんだが、インデックスのパワーの量はどれくらいのレベルなんだ?今後の展開に関わるようなら答えなくていいけど

451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [sage]:2011/11/24(木) 02:01:36.56 ID:c9WGBkWGo
>>448
現時点におけるインデックスが扱える規模は、『量だけ』ならば下位の大悪魔、ケルベロスなどをも越えています。
ただ彼女は、力の量がそのまま戦闘能力にはならない特に良い例です。

インデックス(妹)は魔女の戦闘訓練の一切を受けておらず、かつ彼女の性格上、戦うという行為自体にまるで向いていないため、
扱える総量がずっと小さいローラにも徹底的に押されしまった通り、物量ゴリ押しが通用しない相手だとどうしようもありません。
当然、ケルベロスなどが相手となれば戦いにすらなりません。

452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:02:15.07 ID:c9WGBkWGo
―――

一方『―――がァッ……!!』

魔帝の矢により壁に磔にされてしまった少年、
一方通行は未だその縛から脱せずにいた。

胸から胴に連なって突き刺さる七本もの矢、その中の一つを両手で握り引き抜こうとするも。
麻痺とも言えるか、絶え難い激痛によて力も意識もかき乱されて『力む』ことができない。

一方『……ッンンン゛あ゛ァ゛!!クソがッ!!ァァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!』

情けなく痺れ震えるだけの己が手に、
彼は口から血の如き『黒い飛沫』を吐きながら罵った。

こうしている間にもアレイスターの命が失われかねないのだ。
いいや『かねない』ではない、このままでは確実に失われる、一方通行はそう確信していた。


今の一方通行の目には、一目瞭然だったのだ。
こちらの声などまるで聞かず立ち上がったアレイスター=クロウリー、

その姿はまるで鏡を見ているくらいにまで―――『同じ』だったのが。

『ついさっきまでの己』と。


そう―――『死ぬため』に戦おうとしていた大馬鹿野郎と。


一方『アレイスターァァァァァ!!』

453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:04:01.61 ID:c9WGBkWGo

と、無駄だとわかっていながらももがいていたその時。
先ほど彼が壁をぶち抜き入ってきた穴から、恐る恐るといった歩みで一人の少年が姿を現した。

「……?!」

海原光貴、いや。

『化けの皮』はもう脱ぎ捨てている褐色の肌に、
スーツを纏ってはいるも普段とは違いタイ無しでラフな格好のこの場合は、『エツァリ』と呼ぶべきであろう。

一方『―――海原ァッ!』

ただ、常日頃から呼びなれた名はそう簡単に変えられるものではない。
特にそこまで意識をまわせる余裕など無い彼にとっては。

エツァリ「―――!―――これは……一体何が……?!!」

オレンジの光を宿す瞳に真っ黒な髪、顔は普段の状態を遥かに通り越して蝋人形のように『生気が無い白さ』、
その上を浮き上がった血管のごとき走る黒い筋、そして蠢く闇に覆われている全身。

そんな変貌していた一方通行を一目見て、エツァリは一瞬警戒と躊躇いの色を見せたものの。
すぐに意を決するかのように表情を引き締めては彼の傍へと駆け寄った。

一方『……こィつをっ……!!抜け!!』

エツァリ「わ、わかりました!!」

そして言われるがまま、彼の体を貫いている矢の一本を握ろ―――うとしたが。


エツァリ「つ゛ァッ―――!!」


刹那、光が瞬き、彼の手が勢い良く弾かれてしまう。

苦痛の声を漏らし弾かれた右腕を押さえるエツァリ、
その右手の平の半分が火傷したかのように酷く爛れていた。

454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:05:55.39 ID:c9WGBkWGo

エツァリ「……ッ!!何ですかこれは?!」

これは予想できた結果であろう、なにせ魔帝の矢だ。
肉体はあくまで生身の『ノーマル人間』であるエツァリが触れる訳が無いのも当然のことか。

エツァリ「―――とても自分には―――!!」

一方『……ッチッ!』

そんな結果を目の当たりにし、一方通行は即座に思考を切り替えて。


一方『クソッ!!俺は後にしろ!!今はアレイスターだ!』


エツァリ「アレイスター?!彼があなたをこんな―――?!」

一方『……ンぐッ……いやッ……!!』

エツァリ「何があったんですか?!ではあの男がまた何かを企んでいるのですか?!」


一方『違ェ!黙って聞け!!アレイスターが上条の命綱だ!!奴を守れ!!』


エツァリ「………………は?…………上条さんの……命綱?」

上条の命綱、その言葉から伺える事情を瞬時に悟ったのか、
その褐色の肌でも目に見えて一気に青ざめていくエツァリ。

一方『そォだ!!とにかくアレイスターを―――!!』


と、その時。
突然、ここに新たな第三者の声が響き渡った。


『―――――――――アレイスターは大丈夫だ!』

455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:06:48.60 ID:c9WGBkWGo

一方『!』

エツァリ「!」

それはちょうど一方通行の正面だった。
一瞬にして警戒姿勢に移行して振り返るエツァリの視線の先、

その宙の空間から突然噴出す炎―――そして。


ステイル『―――ダンテが今向かった!!』


中から飛び出してくるは―――ステイル=マグヌス。
更にそれだけではない。

次いでビル全体が大きく振動し―――左側からは『白銀の巨獣』、右側からは『炎を纏う巨人』。

それぞれが壁を『ぶち破って』中へと入ってきたのだ。

それもとてつもない力、

一瞬にして「間違いなく大悪魔、それもかなり高位」、
だと確信できるまでに濃厚な大気を纏って。

一方『―――ッ!!』

刹那、これはエツァリにはもちろん、一方通行にとっても最悪の事態に見えた。

力量は己の方が上か、この大悪魔二体を相手にしても楽でもないが、確実に勝てるであろう。
しかしこうして動けない以上はどうしようもない。
ステイルやエツァリがどうにかできる相手ではないのも一目瞭然。

彼ら二人は蹴散らされ、己は嬲り殺される―――と、一方通行の頭脳は瞬時に状況分析し、
そんな最悪なシナリオを導き出したも。

それは杞憂だった。

456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:08:22.44 ID:c9WGBkWGo

数秒後、次に覚えるは炎の巨人からのステイルと、
白銀の巨獣からの―――上条と同じ力の匂い。

そしてそれを裏付けるように。

ステイル『―――心配するな!!彼らも味方だ!!』

駆け寄ってきたステイルがそう口にした。

ステイル『―――イフリート!ベオウルフだ!』


イフリート『ダンテは我が呼び寄せておいたぞ』


ステイル『向こうはダンテに任せろ!』

一方『―――ッ……』

ダンテが向かった、この状況下でそれ以上に耳に良い言葉があるか。
さすがに安心したとまでは言えないものの、
それでもこの焦燥感を一先ず抑えるには充分だった。

そうして一方通行が小さく息を吐いたところ、次いでのそり、と。

慌てて脇へ退けていくエツァリと入れ替わるようにして炎の魔人が彼の前に出て屈み、
これまた大きな、彼の腕よりも太い指で、魔帝の矢の尻を摘んだ。

イフリート『耐えよ小僧。少々痛むぞ』

そしてそう告げて。

一方『―――ガァアアアアアアアアッ!!!!』

とても丁寧とは言えない手付きで引き抜いていく。
もちろんその痛みは『少々』なんかではない。

457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:10:27.17 ID:c9WGBkWGo

響く一方通行の叫びなど気にもせず、次から次へと引き抜いていくイフリート。
赤き矢は床に落ちた瞬間、まるでガラス細工の様に砕け散り消えていく。

そんな作業の傍ら、エツァリはステイルに向かい。

エツァリ「上条さんに何があったのですか?!知っているのですか?!」

ステイル『……彼は復活した竜王の一部になった!!』

一瞬、その褐色の肌の少年を見てステイルは目を細めたも、
すぐに悪魔の感覚で一方通行の仲間の『海原』であると認識してそう放った。
一方通行にも聞えるように声を張り上げて。

エツァリ「リュウオウ?!」

一方『ッツン゛ン゛ァア゛ァ゛ッ!!!なンッ!!だよあィつァァァァァァッ?!』

ステイル『詳しくは知らない!昔に死んだ神としか聞いていない!僕だってさっき聞いたばかりの話だ!』

イフリート『竜王か。昔に耳にした事がある。人間界に君臨していた古き王だ』

イフリート『だが名しか知らぬ。天界が囲い込む以前の人間界など、悪いが誰も関心など持っておらんかったからな』

そこでそう、横から補足するイフリート。
炎の魔人は最後の一本を放り捨てて、

イフリート『貴様はどうだ?』

これまで沈黙していたベオウルフの方へと横目を飛ばした。
だが白銀の巨獣はその問いかけには言葉を返さず。


ベオウルフ『……小僧。そのアレイスター、と言う輩が「我が息子」の命運を握っておるのだな?』


解放され床に膝をついている一方通行に向けて声を放った。
まるでその場にお互いしかいないように、真っ直ぐと彼を見据えて。

458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:13:56.61 ID:c9WGBkWGo

その刹那。

一方『………………』

彼は妙な感覚を覚えた。
巨獣のこちらを見据える『視線』、その源の―――赤く輝く『瞳』。

あの目をどこかで良く知っているような―――そんな感覚を。

いや、これはそんな『あやふや』なものでは無かった。
あの『目』を間違えるわけが無い―――


一方『……おィオマエ……上条に「何をした」?』


確信した少年は問い返す。


一方『なンでオマエが―――アイツの「目」を持ってやがる?』


その身からただならぬ一触即発の気配を醸し、
目を見開き修羅の表情へと豹変させて。
するとベオウルフはこう即答した。


ベオウルフ『ふん。親と子の「契り」を交わしたまでだ』


その変わらぬ態度を見て、一方通行は真っ直ぐとベオウルフを見据えたまま。
脇のイフリートへ向けて声を放った。

一方『…………よォ、おたくやケルベロスっつったかァ?あの三つ頭の犬コロは問題ねえが』


一方『―――こィつは信用ならねェ。絶対にだ』


対しベオウルフも牙の隙間から、
明らかに嘲りと敵意の滲む笑い声を漏らして。

ベオウルフ『当然だ。その小僧は味方と言ったが、我はそのつもりは無いからな』


ベオウルフ『誰が貴様ら下種な人間共に肩入れなんぞするか』

459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:16:13.02 ID:c9WGBkWGo

一方『―――はッ。言ゥじゃねェか』

そんなベオウルフの『素直な態度』と返答で、一方通行は確信した。
上条との明確な関係がわからない以上、即座に殺すわけにもいかないが、
この信用無い巨獣は今すぐに手足でももぎ取って行動不能にしておくべきだ、と。

そう長く見張っていられることなどできない。

状況が状況だ、いくらダンテが向かったからといって、
「そうですか」とおとなしく待っていられる訳も無いのだから。

と、そうして一方通行が立ち上がった時。

ステイル『―――落ち着くんだ!!大丈夫だアクセラレータ!!』

ステイルが駆け、彼の前に割り込み。

ステイル『確かに僕の言い方が悪かった!!ああそうだ、彼は僕等の味方では無い!!』


ステイル『だが「上条の味方」だ!!これだけは確実だ!!』


そして一方通行の胸倉を掴み、こう声を放った。

ステイル『それに今はそれどころじゃない!!アクセラレータ!!他にも重要な話がある!!』

一方『……あァッ?!』

ステイル『―――海原!!君もだ!!』

エツァリ「……じ、自分もですか?!」


ステイル『―――ああ!!君も必要だ!!』

460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:19:39.02 ID:c9WGBkWGo


そうして半ば強引に、二人の返答など待たずに一方的にステイルは言葉を連ねていった。

最初、一方通行はベオウルフやアレイスターが気になって仕方が無かったが、
ベオウルフは己が見ている、アレイスターの状況もダンテとの『繋がり』を通して見ている、
何か問題があったら知らせるというイフリートの言葉でようやく納得し、
やっと耳をしっかりと傾け始めた。

ステイルの口からは放たれる話、
その内容は『陽炎の学園都市』―――虚数学区上で会った風斬氷華なる少女との話と、

一方『垣根……だとォ?』

エツァリ「……彼が?」


―――垣根帝督という胡散臭い男から聞いた、天界の侵攻に備える『策』とやらだった。


ステイル『これは彼の言葉を丸暗記したものだ。学園都市側の者としての意見を聞きたい』

一方『……虚数学区を実体化させて展開か。すまねェが、俺は「界」がどォのこォのって話は良くわからねェ。海原』


エツァリ「殻となった虚数学区が壊れない限り『本物の学園都市』には被害は及ばず、」

エツァリ「かつフル稼働のヒューズ=カザキリも加勢してくれるとなると悪い策では無いですね」


エツァリ「ただその策の実現には、いくつか解決しなければならない問題が」

エツァリ「まず一つ目、大悪魔の領域の莫大な力を持つ「能力者」が必要ですね。AIMを扱うわけですから悪魔の方では代わりは出来ません」

そう告げながら、その例を示すようにイフリートとベオウルフを横目で見やるエツァリ。
そこに一方通行はこう声を放った。


一方『俺ができそォだな』


エツァリ「本当ですか?」

一方『あァ。多分いける。どォやらアレイスターは、俺にこの世界をまるごと掌握させるつもりだったらしィからな』

一方『現に、そこのイフリート達よりも俺の方が「馬力」はあるしなァ』

461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:22:17.27 ID:c9WGBkWGo

エツァリ「では……次の問題はその『像』の具体化ですね……どうやって界を被せる形で実体化させるか」

一方『海原。オマエの魔術とやらでどォにかならねェのか?』

エツァリ「無理に決まっているでしょう。自分の魔術は天界系ですよ?」

エツァリ「それに今話してる次元の理論だってここ半年の付け焼刃ですし、とてもぶっつけ本番でAIM用の『方程式』なんか組めません」

一方『じゃァどォすンだ?』

エツァリ「……一番現実的な方法は、ミサカネットワークと滝壺さんに「設計」してもらい」

エツァリ「接続しているあなたが増幅させて実体化、といったところなのですが…………」

とそこで、エツァリが急に口ごもってしまった。
それを見て首を傾げるステイル、そして対して―――

一方『…………ッ』

思い当たる節があって、表情が固まる一方通行。

エツァリ「今はなぜか通信が出来ないのですよ。土御門さんとも」

エツァリ「彼は自分以上に魔術科学両方に精通していますから、意見を聞きたいのですが」


一方『…………悪ィ、最低限の維持機能を省いて俺が凍結遮断しちまったンだ」


462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:24:52.84 ID:c9WGBkWGo

それは正に、あの強襲部隊にとって矛を封じられているに等しい状態だ。
各々の能力強化はもちろん、何よりも滝壺の部隊全体の掌握があるからこそ、
地獄とも呼べる魔窟のど真ん中に飛び込んでも、正確に任務を遂げ帰って来る一つの『生きた戦闘集団』となるのだ。

だがその機能が喪失されているとは。
更に、その状態に左右されない最大戦力―――麦野とアラストルを失っているともなれば。


エツァリ「何ですってッ……!!つまり今の彼らは演算支援も受けていないということですか?!」


それを知った彼が、思わず声を荒げてしまったのも当然の事か。
しかし。

一方『すまねェ……黙っていたのも悪かった。シスターズから負荷を取り除くにはこォするしか無かったンだ』

エツァリ「…………ッ」

簡潔に述べられるその理由も、これまた咎められるものではなかった。
それに今までに無いくらいに素直に、真摯に謝る一方通行にも驚きを覚えたのか。

エツァリ「そうでしたか……すみません、事情を知らずに」

エツァリもすぐに己を落ち着かせて、そう謝り返した。

一方『いや、良ィンだ。少し待て、再構成して連中との回線だけ修復する』

エツァリ「……急いでください。それとステイルさん」

エツァリ「魔術師の拒絶に関しては、あなたがどうにかできるかもしれない、という事でしたが……?」

463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:27:02.11 ID:c9WGBkWGo

0930事件の例から見ても、恐らく実体化した虚数学区内では、
魔術師にかかる「拒絶」反応は凄まじいものになるであろう。
それに高濃度のAIMで人間界が満たされてしまったら、全世界にも影響が及ぶはず。

つまりこの街にいるエツァリやショチトルを含む、天界系魔術師全員の命を奪いかねない死活問題なのだ。
その問題については、ステイルによると彼の側で対処するという話であったが。

ステイル『もうこの話は伝えてある。僕が虚数学区を出た瞬間から、神裂との繋りが回復しているからな』

エツァリ「神裂さんが?」

いざエツァリが具体的に聞くと。


ステイル『ああ、だが……最終的な判断をするのは神裂の上のバージルだ。だから確実にどうにかできるとは…………』


エツァリ「バージル……?!が……神裂さんの上?!ちょっと待ってください話が見えないのですが?!」


一方『―――バージルだと?おィ?何の話だ?』

とんでもない名が、
そのステイルの口から飛び出してくることになった。

ステイル『……すまない、僕も黙っていた。実は、もう「拒絶」とかの話じゃないんだ』

そこで彼は申し訳無さそうに額に手を当てて。
魔術師であるエツァリにとっては更に突拍子も無い、出来の悪い冗談のような事を口にした。


ステイル『今、僕達はバージルの下に属していてね……神裂はセフィロトの樹の全切断を命じられているんだ』

464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:31:15.55 ID:c9WGBkWGo

エツァリ「セフィロトの樹の……せ、切断?」


ステイル『ああ。今ちょうどその作業の最中だ』

ステイル『全切断だから、もちろんその中にはテレズマの供給線も、能力者に供給させないための拒絶機能も含まれてる』

ステイル『だから拒絶は起こらないだろうが、通常の天界魔術も全て使えなくなる』

エツァリ「……………………これもですか?」

そこで脇のホルスターに収まっている原典の本体を見せるエツァリ。
ステイルは眉を顰めてやはりといった具合で。

ステイル『ああ。天使や神と「直接」繋がってでもいない限り無理だ』

エツァリ「……………………」

ステイル『僕はもちろん、事情を知った神裂も今、同じくテレズマの供給線だけは残したいと「言っている」』

ステイル『残しておいて使えれば、それだけで魔術師という戦力が増えるし、』

ステイル『怒った天界が「蛇口」を閉めてテレズマを流し込まなくなっても特に実害は無いからね』


ステイル『だが決定権はバージルにある。僕達はその彼の判断には干渉できない』


ステイル『魂で主従関係が結ばれているからね。魔のそういう繋がりは絶対的なんだ』


エツァリ「……まあ、……ならば仕方ないでしょうね。ここで何を言っても」

465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:37:24.33 ID:c9WGBkWGo

バージルが判断する、その言葉は、
ダンテがアレイスターの所へ向かったというのと同じく、
否応無く納得せざるを得ない絶対的な響きを有していた。

エツァリ「……とにかく、全世界の天界魔術師が死なないだけずっとマシですね」

それにそもそも、ステイルの話は悪いことではない。
拒絶が無くなることはまず確実なのだから、先ほど想定していた状況よりもむしろ良くなっている方だ。

ステイル『それにこの面子なら、まあ増援が無くとも何とか凌げるかと思うけどね』

一方『戦力なら俺がいるしヒューズ=カザキリも加勢するしなァ』

ステイル『もちろん僕もいるし、作業が終ったら神裂も、そして何よりも魔女も来るぞ。ダンテに引けを取らないね』

一方『はッ!そィつは良ィじゃねえか!』

イフリート『我もいるぞ。そして我がダンテの友らもな』

そうして続いたイフリートの声に、
一方通行はニヤリと不敵に笑い。


一方『この面子に学園都市の損害を気にしなくて良ィってンなら―――充分じゃねェのか?おもックソ暴れてやンよ』


エツァリ「ふっ…………いけますか、いけますね」

釣られるようにして、エツァリも小さく笑い返して。


エツァリ「それとこの際、『私情』は抜きにしてくださいね」


一方通行の顔を真っ直ぐに見てそう言い放った。
薄く微笑みながらも、鋭く制するような声色で。

一方『……』

『私情』という言葉、それは半ば不意打ちで返された言葉であったが、
それが指す意味を一方通行は瞬時に悟った。


打ち止めとの関係―――彼女と頑なに距離を置こうとしていたことか、と。

466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:39:59.26 ID:c9WGBkWGo

虚数学区の展開は、要となる一方通行とミサカネットワークの連携が重要になってくる。
エツァリは、その連携を如何なる理由があろうと滞らせてしまうことは無いように、と告げていたのだ。

ただ、そんな彼の懸念も今や杞憂に過ぎない。

一方『あァ、わかってる。心配するな』

確かに一方通行は、今でもその問題については色々思うことはあるものの。
もう考え方もその結論も、これまでとは真逆なのだから。

そう。

今はもう、あの少女から―――


一方『「アレ」はもう…………やめたからなァ』


―――逃げやしない、と。


言葉少なくも、その一方通行の確かな反応を見て納得したのか、
エツァリは小さく頷いてそれ以上は言葉を発しなかった。
そうして一方通行は勢い良く立ち上がり。

一方『おィ!!アレイスターはどォなってる?!』

イフリート『大丈夫だ。今アグニがこちらに連れてくるぞ』

ベオウフルを見張るようにして向かい合っていたイフリートへ向かい、
状況を確認するべく声を放った。

一方『よしッ。それとあの「竜王」とやらを殺してねェだろォな?ダンテ』

イフリート『それも問題は無い。きゃつがあの小僧でもあることも気づいておる』

すると。

一方『そォか。できれば縛り上げるでもしてココに連れて来てもらいてェンだが、頼めるか?』


イフリート『―――…………ううむ。それがな…………』


なにやら急に口ごもり、その瞬間。


突然の―――凄まじい『地響き』が周囲を襲った。

467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:42:30.18 ID:c9WGBkWGo

否、それはただ『地響き』と呼べる代物ではなかった。

一方通行『―――!!』

厳密には『力の振動』だった。
床やこのビルはもちろん、大気も、物理的には一切変わりない。
激しく揺れているのは『力』だ。

ステイル達が醸す魔、エツァリの天、そして一方通行のAIM。
それらの力の次元においてだけ、何かが大爆発したかのような衝撃が襲ってきたのだ。

エツァリ「!!」

ステイル『なッ!!』

一体何が起こったのか、少なくともその表面的な事象はすぐに認識できた。
イフリートがこのビルに入ってくる際に穿った、
穴と言うよりも最早一面まるごとを剥ぎ取ったかの如き壁の側。


その向こうに広がる『学園都市の上』に、その場にいた全員が見た。


巨大な―――太さ数百メートル、高さはkm単位に及ぶであろう『黒い塔』が―――


―――天へと向けて勢い良く伸びつつあったのを。


『地面を割って学園都市から』、ではない、『学園都市の上から重ねられて』、だ。

塔の『幽霊』が現れた、といった表現がまさに適しているか。

勢い良く突き上がる塔に吹っ飛ばされるように、
50m以上にもなろうかという巨大な瓦礫や土砂の塊が飛び散るも。
『学園都市の地面』は割れもしていなければ、ビルも何も変わりなくそこに建っている。

だからこそ『幽霊』、まるで巨大な立体映像が投影されているような光景である。
質感も距離感も明らかに現実離れしており、どの学区の上に重ねられているのかすらもまるでわからない。
そもそも、物理領域にて明確に位置づけられるものではないのかもしれない。

さながら蜃気楼の如き、近づこうとしても絶対に到達できない『幻影』だ。


だが実際は、それは決して幻影なんかではなく―――『別位階上』に実際に存在していた。


一方『……!!』

皆が肌で確かに感じ取っていた。
この学園都市に重なる『界上』に出現した、あの黒き塔の存在を。

468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/24(木) 02:45:49.40 ID:c9WGBkWGo

目を疑う光景に一方通行、エツァリ、ステイルが言葉を失う中。
傍にいた二柱の大悪魔は、それぞれの反応を見せていた。

イフリート『あれは……』

ステイル『……………………知っているのか?』

イフリート『…………直接は無いが……ダンテの記憶の中に垣間見た……まさか……なんと……』

炎の魔人は、驚きと嫌悪の滲む声でそう呟き。

白銀の巨獣は笑った。
異形の怪物そのものといった、地響きを伴う笑い声を発して。

ベオウルフ『竜王とやらも随分愉快な事を考える!!』

嫌悪は同じくも、一方でイフリート違って可笑しそうな色を滲ませて。


ベオウルフ『よもやこの忌々しい「塔」を再顕現させるとはな!!』



ベオウルフ『バージル!!ダンテ!!貴様ら兄弟の墓場に似合いの舞台ではないか!!』



一方『―――おィ!!なンなンだよありゃァ?!』


ベオウルフ『知らぬのか?!「我等」人界に残りし魔達の牢獄であり―――!!』


ベオウルフ『―――かつて、魔剣スパーダの「芯」が封印されていた領域へのかの「階段」を!!』


エツァリ「な……?!なッ……?!」

ステイル『おい!!イフリート!!答えろ!!向こうで何が起こってる?!』

そうして半分激怒し半分笑う、そんな奇妙な調子で昂ぶるベオウルフの言葉に続き、
遂にイフリートが口する。


イフリート『あれは……』


かつて、二人の若き魔剣士が剣を交え、その『宿命』を決定付けた―――。





イフリート『……………………………………………………テメンニグルの塔だ』





―――あの『始まりの塔』の名を。



―――

471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) :2011/11/24(木) 03:03:15.61 ID:ySr3ZK2p0
創造か具現で顕現させたのかな?
面白さが加速していくな!
乙です!!!

474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(兵庫県) [sage]:2011/11/24(木) 06:30:46.28 ID:jfEGMGaS0
舞台をテメンニグルにする処がこの>>1は最高にわかってるぜ乙乙乙!

477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(北海道) [sage]:2011/11/24(木) 09:17:17.90 ID:FOphHowro
お疲れ様です。まさかテメンニグルを持ってくるとは・・・その発想はまじで無かった。
そしてインデックスと神裂はまだ切ってたのか。さすがに時間かかる。


ダンテ「学園都市か」11(学園都市編)




posted by JOY at 01:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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