2012年03月24日

ダンテ「学園都市か」11(学園都市編)

484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 02:53:18.87 ID:9fD6OnLMo
―――

学園都市の『界上』に限定的に再現されている『人界王の間』。
延々と続く黄金の縁取りがなされた白亜の石畳に、大気を満たすは黄昏色の光。

人間界本来の夕暮れとは色具合は似ていても本質はまるで違う、
篭められているのは退廃的な終末感と享楽的な狂気で彩られた混沌だ。

そんな、何もかもをコントラスト強く浮かび上がらせていくオレンジの光に。

ダンテ「…………」

ダンテは煩わしそうに目を細めながら、正面10m、割れた石畳に埋まっている『竜』を見ていた。

ここに飛び込んだ初撃で頭を『斬り飛ばし』、
更に蹴りの連撃を加えて胴を粉砕して石畳に叩き込んだ竜、周囲には破片と肉片が混じり広く散っている。

そして背後からは途切れ途切れの、言葉にならない悲壮な呻き声。

膝をつき蹲っている男、アレイスター=クロウリーのやり場の無い怒りと悔しさに満ちた声である。
周囲は無風、割れた石畳の欠片が落ちる小さな音のみ、そんな中で彼の慟哭が一際大きく響いていた。

そんな彼に対しては、ダンテは特には反応を示してはいなかった。

その面持ちは一見すると何を考えているのかわからない無表情、
よくよく見ると僅かに薄ら笑いが滲んでいる、非常に冷ややかなもの。


つまりは彼の『真顔』だ。


彼のその『真剣身』の原因はもちろん、
目の前のあの『竜』から覚える―――様々な匂いや感覚だ。


ダンテ「…………」


そう、良く見知った力や親しい者。


魔帝と『創造』、父と『破壊』。


そして―――上条当麻。

485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 02:54:20.24 ID:9fD6OnLMo

ダンテ「よお、いつまでオネンネしてる?客に挨拶も無しで寝てるつもりか?」

リベリオンで肩を軽く叩きながら、ダンテはこれまた平淡な声を放った。
いつのまにか肉体の損壊部が元に戻っていた竜に。

竜王『…………無茶を言うな。お前の不意打ちを受けたんだぞ』

すると瓦礫を除けながら上半身を起こす竜。
いかにもつらそうにゆっくりとぎこちなく。

そして大きく翼を広げては一度羽ばたいて。

竜王『やあ、ダンテ。俺様は初めてではないが、「この状態の俺様」は初めてだな』

穴からようやく出てその淵、ダンテの前5mほどのところに立った。


ダンテ「みたいだな」

そんな竜を改めて見て、ダンテは片眉を細めた。
魔帝の力や上条当麻がこの竜に含まれていると確信したのだ。

今のは傷の『治癒』ではなく、ダメージが一切蓄積されていない状態への『己の新規作り直し』。
つまり『創造』の働きだ。

そしてこの竜という存在、肌に覚える感覚はまさに上条当麻そのものだ。
ダンテの確かな感覚は、この目の前の存在を上条当麻であると明確に認識しているのだ。

姿形、そして数語交わしただけでもわかるくらいに人格が違っていても、魂は確実に彼のものでもある、と。

ダンテ「………………」

そう状況の一端を把握した瞬間、
彼のこの場における、ある一つの選択肢が潰れた。


今ここでぶちのめす、という最も単純明快な選択が。

486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 02:57:30.13 ID:9fD6OnLMo

だがそれは充分予想は付いていた。
具体的にはともかく、このような手を出しにくい状態になることはわかっていた。
今挑んでいる本当の敵、『筋書き』が、そう簡単にコトを終らせてくれるわけが無いのは当然。

現状ではまだまだ『弓の弦』の引きは甘い。

         ストレス
この程度の『世界の困窮』では、筋書きが望むような絶対的な『一矢』は放てないのだ。


現段階では、ダンテもコトを終らそうというつもりではない。
(もちろんもし可能だったのならば、さっさと片付けるが)

今の目的は、流れのど真ん中へ飛び込み割り込むことだ。
そしてどうやらその目的は達された様か。


この流れに新たな、かつ大胆な変化をもたらす筋書きの『修正点』、それが今―――目の前にあったのだから。


間違いなくこの―――竜だ。


ネロが魔剣スパーダをへし折る、そんなとんでもない事態に釣り合い、
そして上回るために、これでもかとばかりに重要な要素が集められている。

魔帝と父、加えて恐らく覇王、そして―――上条当麻、と。

ダンテ「……」

そう。
上条当麻という存在もまた、
ダンテにとっては大義的・個人的の両方で『とある意味』を持っていた。

487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 02:59:10.29 ID:9fD6OnLMo

竜王『さて、何から話そうか……』

ぱきりと、陶器の像が砕け散る光景を逆再生したかのように。
竜の外皮の上をどこからともなく出現した『殻』が覆っていき。

竜王『話したいことはかなりあるのだが、いかんせん、今は時間も限られているしな』

そうして竜はその異形から、一瞬にして人間、赤毛の華奢な男の姿へと変じた。
これまた陶器のように整った顔は、傲慢と嘲笑を隠しもせずに鋭い笑みを浮べている。

そんな中性的な容姿を、ダンテは細目で訝しげに眺めて。

ダンテ「なら俺が聞いていいか?」

竜王『構わない』


ダンテ「『お前』は上条当麻か?」


そうして単刀直入、そう簡潔に核心の一つを問うた。
竜はやはり察しがいいな、と小気味良さそうに口角を上げては。


竜王『そうだ。俺様は上条当麻。魂は完全に同一』


竜王『俺様の死は、上条当麻の死でもある』

ダンテ「………………へぇ」

488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 03:01:49.46 ID:9fD6OnLMo

現状では手を出しにくいという原因には、
もちろん『創造』という厄介な力が存在もあるが。
上条当麻という存在のよるところも大きい。


上条当麻。

かの少年は失われてはならない。
生い立ちや力の差はあれど、その本質的な意味はネロと同じ。

これからの人間世界を守るであろう、『次代』の強き意志の一つ。


受け継がれる『正義』の一欠けら。

                               ボーヤ
己の全てに換えてでも守り遺さなければならない『子供達』の一人である。


ここでそんな存在を、仕方の無い犠牲と割り切ってもろとも殺すか。

そう、確かにそうせざるを得ない状況か。
かつてネロが神像に取り込まれた時のような状態とはまるで違う。

竜の魂は上条当麻そのもの、完全な同一人物。
客観的に見ると、ダンテの記憶にある『上条当麻という少年』は―――死んでしまったも同然であろう。
すなわち『今まで通り』―――『手遅れ』なのだ。

ここからダンテが専念するべきなのは、更なる被害の拡大を防ぐため、
創造を打ち破り竜を殺す、ただそれだけ。

そしてそれが成されれば、この騒乱の大部分は収まるだろう。

しかし。

それでは今までと『同じ』―――単なる『受身の現状維持』でしかないのだ。

根本的には何も解決しておらず、一歩も前には進めない。
そしてスパーダの一族、その血の破滅的な力が『救い』として称えられ、
それを維持するために、たびたび避けようの無い絶望的なイベントが繰り返される未来が続くことになる。

つまりは、ここで今まで通りのやり方で解決してしまったら。


そのあり方が―――揺ぎ無く『再肯定』されてしまうということだ。

489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 03:03:07.37 ID:9fD6OnLMo

ダンテ「……」

当然。

今のダンテは、そんなこれまで通りのやり方をするつもりなど無かった。
ネロはそんな筋書きを真っ向から拒絶し。
ダンテは筋書きをぶっ潰すために今ここに立っているのだから。

そう、今この状況こそ、
ダンテとネロの選択と筋書きの流れの向きが、『初めて』真っ向から対峙した瞬間だ。

これこそ筋書きの明確な、ダンテ達へ向けての『反応』だ。


スパーダの一族が、スパーダの力を否定し捨て去ることは許さない。

そしてスパーダの一族ではない者が、スパーダの意志を受け継ぐことはできない、させない。
スパーダの一族ではない絶対的英雄など、必要ない、認めない、と。


『そんな者達』など、こうして舞台装置の一つにしてやろう、と。


つまりこの『修正点』の本質は―――筋書きからの『宣戦布告』。

万物を統べる因果、その全体意志には逆らえぬと、
反逆者に首輪を再認識させるための。

それはそれは付け入る隙の無い、ダンテの弱点を的確に抑えた一手であった。

このような状態に置かれれば、
普通ならば怒りを覚えるか、または焦燥し絶望するか。

しかしこれを認識したダンテがまず最初に示したのは。


ダンテ「―――ハッ」


―――笑み。

490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 03:03:50.70 ID:9fD6OnLMo

やはり相変わらずの薄いものではあったが、
瞬間、彼はこの場で初めてはっきりとした笑みを浮べたのだ。

それはそれは危うい戦気と昂揚―――『期待感』が滲んだ、見た者を戦慄させる不敵な笑い。

獲物を眼前に捕捉した獣、戦いを生業にする闘士そのものの瞳。
この男には、追い込まれて消沈する『神経』など存在していない。


困窮に陥れば陥るほど、彼の原動力たる魂は熱く噴き上がる。


不可能だと?、上等じゃねえか。
上条当麻、必ずお前を臭え竜の口の中から―――引きずり出して。


クソッタレな筋書きは綺麗さっぱり消し飛ばしてやるよ、と。


竜王『―――…………はは、これは恐ろしい』

一瞬、そんな顔と瞳に捕捉されていた竜は、
その端正な顔を僅かに引き釣らせた。

竜王『聞いてはいたが、やはり実際に相対すると凄まじいな』


ダンテは「そうか?」といった風に少し肩を竦めて。
肩に載せていたリベリオンを降ろしては足元に突き立て、その柄に肘を載せながら。

ダンテ「創造、どうやって動いてるんだ?」

そして左手で顎先をさすりながら、まるで何気なく雑談するような声色でそう問うた。
ただもちろんそれは表面的な部分だけで、
その全身からは強烈な威圧感が一定して放たれていたが。

ダンテ「ボーヤの右手に収まってたのはまあ薄々気付いてたが、それでも徹底的にぶっ壊れてるはずだぜ」

対して竜はそのダンテの圧で火照った熱を冷ますように、一度大きく息を吐いて。

竜王『アリウスさ』

その目をダンテの背後下、
アレイスターの方に向けながら、かの魔術師の名を口にした。

491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 03:06:30.25 ID:9fD6OnLMo

竜王『彼はその「負け犬」とは違い、本当にとんでもない男でな』


竜王『覇王とスパーダの力を「生きた状態のまま」で統合し、器に組み込み完全に己がモノにしてしまったのさ』


竜王『そんな彼の器さえあれば、創造も具現も負荷は全く気にしなくて良い。問題なく稼動する』


竜王『そして創造の破損部は、具現を組み合わせる形で修復した』


そうして右手をポケットに突っ込み、
左手で得意げに髪をかきあげて言葉を続ける。


竜王『創造と具現は、元はある同一因子からの派生系だからな』

竜王『違いは精神領域か実体領域か、作用原理が異なっているだけ。その差異は魔帝と覇王の性格によるところか』

竜王『そこだけを除き、他の点はほぼ同一だ。共に絶対的な己の存続を約束し、広範囲に絶大な影響を及ぼすまさに支配者に相応しい力』


竜王『またそうした側面から「保身」の意味も強いため、使用者には比較的優しいものだ』


と、そこで竜はふとわざとらしく眉をしかめて、
「だがな」と一度話を区切って。
左手をふと顔の高さにまで掲げて。


竜王『まあ少し話変わるが、逆に―――』


紫とも赤黒いとも言える『光』を灯した。


竜王『―――「破壊」はとんでもなく扱いにくいな。「やはり」』


492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 03:12:35.98 ID:9fD6OnLMo

そんな、笑み交じりにも辛そうな顔を見せる竜に、
ダンテは「そりゃそうだろう」といった表情を浮べて。

ダンテ「昔、俺も気ぃ狂いかけたからな」

ダンテ「免疫の無い『赤の他人』が、親父のモンそのまんま入れちまえばキツイに決まってるさ」

絶え間なく際限なく湧き出してくる力。
ダンテも過去に一度、その『破壊』の性質の境地にまで到達しかけた。
かつてマレット島で、覚醒した魔剣スパーダを手に魔帝と相対した際にだ。


余分なものを何もかも取り払い、ただ純粋な力の亡者と変貌する―――『真魔人化』。

ダンテ自身、あのまま『破壊』に身を委ね続けていれば、
自我を失い『闘争の獣』へと変じてしまっていただろうか。
だからこそあれ以来、ダンテは魔剣スパーダを使おうとはしなかった。


竜王『本来、まことの創世主の因子とは創世主のみに許される力だ』

破壊の負荷に苛まれているのか、
竜は小さく歯噛みしながら更に言葉を連ねていく。

竜王『その力を創世主ではない者が扱うには、ある程度「薄める」必要がある』

竜王『創造や具現は、現に創世主たる力をコンパクトに簡素化したものだ』

竜王『魔帝や覇王は現実家だからな、そんな彼らの性格上、発現する創世主の因子もまた使い勝手の良い形となる』


竜王『しかし同じ創世主の因子でも―――「破壊」は違う』


竜王『スパーダはただ純粋に力を求めた。己が保身も野望も一切無く。力だけをな』


竜王『結果、発現した「破壊」は―――全く薄まることなく―――創世主のそれとほぼ同一のものであった』


竜王『それがどのような意味なのかはわかるな?』

ダンテ「…………『まことの創世主の因子とは創世主のみに許される力』、か」

竜王『その通り。いくら超越者とはいえ―――創世主ではないスパーダには手に余る代物だったのさ』


竜王『故に彼自身ですらその身に収めておくことに耐え切れず、魔剣スパーダとして分離させることとなる』

493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 03:16:42.27 ID:9fD6OnLMo

ダンテ「…………」

それが魔剣スパーダの誕生の物語。
初めて聞く、それも相手からして真偽不明の逸話。
だがそれが真実であったとしても何ら不思議ではない。

いいや。

むしろ、真実はこうでなければ筋が通らない。

ダンテは知っている。
スパーダが何よりも、そして唯一恐れていたものこそ―――己の力だったのを。

魔界の門の錠に己の半身を惜しみなく使い、
更に魔剣スパーダもただ封印するだけではなく三つに分解までする。

そんな己の力に対して一片の未練も愛着も感じさせない様は、
フォルトゥナの地獄門ですらを、故郷魔界への情緒から残してしまったような男の行いとは思えないものだ。

だが。

この竜の話でその糸は全て繋がる。
その過去の父の行動も、ダンテ自身の魔剣スパーダを使った時の体験も。

二つの魔剣を双子の息子達に授けてしばらくの後、父がふと姿を消した―――その理由も。

そうして、母は父をこよなく愛していたにも関わらず――――――失踪した彼を一切探そうとしなかったのも。


ダンテ「Humm」

諸々の記憶から、随分と前から薄々はそうであろうと思ってはいたが、
やはり第三者からの筋の通る情報がなければスッキリしないものだ。

そこをようやく埋める確信を手に入れられて、
顎をさすりながらダンテは小さく喉を鳴らした。

長年、その頭の片隅を占有してきた『もどかしい問い』と決別できるのだ、と。

その一方で少し名残惜しいが、
今までもどこかで抱いていた、一縷の『期待』とも別れなければならないが。


ダンテ「…………………………………………」


そう、―――『父は既に死んでいる』、そうはっきりしたのだから。

494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 03:20:37.86 ID:9fD6OnLMo

ダンテ「それにしてももの知りだな「じいさん」、一体いつから生きてんだ?」

竜王『創世記からさ。創世主の座に君臨していた頃のジュベレウスの御業も、直に目の当たりにしてきた』

竜王『そういえば、俺様の自己紹介がまだだったな』

と、そこでふと思い出したかのように、
竜は左手に灯していた破壊の光を収めては改めてといった面持ちで。


竜王『我が王号は「人王」にして――――神号は「 竜 」』


これまた、いや、これまで以上に酔狂して声高に仰々しい名乗りを始めた。


竜王『そして全宇宙、因果の新たな主に成る――――――「唯一にして全て」』

竜王『―――我が真名を魂に刻め。今宵から全宇宙の不変の真理となる言霊を―――』

しかしこの名乗りは、今の相手には大層たまらなかったものだったらしく。

竜王『その輝きは、旧世界を焼き払う黄昏の―――』


ダンテ「ふはっ……はっ―――おいおいちょっといいか?自己紹介くらいもうちっとサクサクやってくれ」


思わず噴出して笑い堪えるダンテに遮られてしまった。

竜王『……………………』

ダンテ「拝むたびにんなコテコテの前置き聞かされるなんてたまんねえぜ。『ありがたみ』も薄れちまう」

あからさまに不機嫌な表情を浮べる竜とは対照的に、
彼は小刻みに肩を揺らしながらお返しとばかりに言葉を連ねていく。

軽く飄々と、普段と同じの半笑いの冷やかし声で。

ダンテ「ママに教わっただろ?人と話すときは要点をわかりやすくってな。ん?何?教わってねえのか?」

ダンテ「じゃあパパにこう教わらなかったか?ケンカの時に言葉で自分を飾る奴は―――」

しかしその言葉の最後には。


ダンテ「―――案外大したことはなかったりするって、な」


笑みは含まれてはいなかった。
ただその表情の変化は、竜の目に映ることはなかった。
なぜならその直前。

竜王『―――』

彼の端正な顔にダンテの無骨なブーツの裏――

495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 03:25:36.76 ID:9fD6OnLMo


―――正面蹴りが叩き込まれていたのだから。


確かにこの竜を倒す選択なんて、現時点ではまず有り得ない。
しかし確保するかしないかはまた別の話である。

強烈な一撃を受けて竜の頭部は砕け散り―――首から下が、放られた人形のごとく吹っ飛んでいく。

いや、厳密にはその一行動の合い間に『三撃』加えられていた。

一撃目はダンテの靴裏。
二撃目は瞬時に出現したギルガメスの鋭い歯車。
そして三撃目は、そのギルガメスに組み込まれている拳銃からの魔弾。

はじけ飛んでいく竜の体は最初に穿った床の穴の上を越え、
そしてその規模をも遥かに越える穴を100mほど向こうに穿った。

ド派手に石畳を捲りあげ大量の欠片を撒き散らして。

その様子を前に、ダンテは魔剣を引き抜いてはたんっと颯爽と前へと踏み出し。


ダンテ『アグニ。ルドラ』


魔人化し、かの双子の大悪魔の名を口にした。

すると瞬間。

咆哮染みた声を轟かせながら、すぐ上方の虚空から呼ばれた双子が出現、
アレイスターの盾となる位置に、石畳を割って豪快に降り立った。

そうして彼らにアレイスターを任せ、ダンテはクレーターに降り立つ。

竜はクレーターの底にて、崩れた石畳に埋まっていた。
出ているのは手先と足のみ、胴部分は全て瓦礫の下、
先ほど砕け散った頭部だけは埋まってはいないか。

ただその事実も、創造によって即変更。

竜王『……ッ……二度も不意を突くか』

瓦礫の下から放たれるは、無いはずの口からの声。

ダンテ『ハッハ、ケンカに不意打ちもクソもねえさ「王サマ」』

そして『新造』されたのは頭部のみならず。


竜王『はは―――それも尤もだな』

『翼』もだ。
刹那、瓦礫を一気に吹き飛ばすようにしてその下から大きな竜の翼が出現―――


―――薙ぎ振るわれたその両翼から、無数の魔帝の矢を放った。

496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 03:30:01.39 ID:9fD6OnLMo

懐かしい、いや、これを見たのはつい半年前、
懐かしむほどの時間など経過していないか。

ダンテ『―――Ha!』

ダンテは小気味の良い声を漏らしては、この壮絶な弾幕へと真っ向から飛び込んだ。
無数の魔帝の矢、それらが壁となって押し寄せてくる光景はまさに圧巻か。

しかし。

表面的にはそうは見えても実際に飛びこむと、この竜のと、本物の魔帝のそれとは大きく異なっていた。

本物の魔帝が放つ弾幕は一見無造作に見えても、
実は一本一本隅々までまで意識が行き届いていて、その起動は全て計算ずくであった。

一本避ければ別の一本のコースへとどうしても出てしまい、その一本を弾けば、
今度はその手が届かないコースで別の一本が、といった具合にだ。

だが竜のこれは、『ただのばら撒き』だ。

数多く放たれているだけで、その実は無秩序、
コース修正もなくただ真っ直ぐにしか飛ばないため、突破ルートは簡単に複数見出せてしまう。


ダンテはその中の一つ、あえて幅が狭いルートを選び身を投じた。

頬を、首を、脇を、無数の矢が凄まじい勢いで掠めていく。
だがどれも数cmいや数mmというところで当たらない。

身を捻り、ギリギリながらも正確無比に、
紙一重ながらも余裕たっぷりに赤き魔剣士は抜けていく。

更にここで彼特有の遊び心か。
彼はあえてルートを外れ、わざと矢のコースへと身を投じ。

ダンテ『――Siii―Ha!!』

身を回転させては左足、右足と連蹴りで掃い―――最後に魔弾で蹴散らし、完全に弾幕を突破。

そして。

竜王『―――』

新造されたばかり、かつ瓦礫からちょうど出たばかりの竜の顔へ目掛けて。


今度はリベリオンの刃を突き立てた。


同時に両足でその胴体を踏みつけつつ。
もちろんその足は『一蹴三撃』という凶悪なもの。

そんなこれまた豪快過ぎる着地に、クレーターは一際大きく深く陥没した。

497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 03:33:41.84 ID:9fD6OnLMo

魔帝の矢。
これには特に、マレット島における戦いの際に幾度と無く苦しめられた、
『イカれてるダンテ』でさえもが『嫌いな』攻撃だ。

だがそれもこの通り、使用者次第。

ダンテがかつて苦しめられた原因は、もちろんその威力が凄まじいこともあるが、
魔帝の豊富な経験と極められた戦闘技術によるところもかなりの比重を占めるものだ。

ダンテ『まだまだ甘いな。力に遊ばれてるぜ』

確かにその力の規模だけでも充分脅威ではある。
だが同じく力が桁違いで、かつ戦闘技能も極められている相手、
例えばこの通りダンテなどが相手では、そう簡単に通用などしないのも当然の事である。

だが。

だからといって、充分脅威であることが打ち消されることもない。

技術、経験など時には関係なく、
インフレした量の力というものは存在するだけで、何人にとっても一定の脅威であることもまた真理。


リベリオンで再び瓦礫の底へとぶち戻した竜へそんな軽口を飛ばしていたところ。

ダンテ『―――』

ふと気配に気付き、ダンテがその面を挙げると。


正面上方にて長さ5m近くにもなる、赤い―――『光の大剣』が浮遊していた。


これもまた、つい最近に嫌と言うほど見たものだった。
平時の人間界ならば、一撃の下に消し飛ばせる規模の―――圧倒的な『力の塊』。


かの魔帝の―――絶なる刃だ。


次の瞬間。
これを見たダンテの一言を待たずして、大剣が打ち出された。

498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 03:38:41.45 ID:9fD6OnLMo

迸る閃光、激突する赤と赤の力。

衝撃に晒された石畳は広範囲にぶっ飛び、いいや、削り取ってしまったかのように綺麗さっぱり蒸発。
欠片一つ飛び散らず、滑らかな擂鉢上の地面へと変貌する。

だがこれも漏れ出したほんの僅かな余波によるものにしか過ぎない。
放たれた莫大な力は、同じく莫大な力の篭められた極なる『一突き』によってほぼ全て相殺されていた。


ダンテ『―――ふッはッ―――!』


総出力の力を集め極限まで圧縮して。
それを載せて叩き込む、シンプルかつ最大火力のダンテの十八番、『スティンガー』。

彼の白銀の刃は強烈な『魔の熱』を帯びて、周囲を蒸発した爆心地にて金属音を奏でていた。

ダンテが先か、それともリベリオンが先か、この場合いはもう関係ないであろう。
『仇』の力を受けた刃の高鳴りに同じく、ダンテも思わず昂揚した声を漏らす。

                                    ヒメイ
この衝撃、この痺れ、このリベリオンの刃から響く歓喜の『共鳴』。


頭では魔帝は死んだとわかっていても、
この身を流れる父と母の血が沸騰していく。

―――ぶっ殺せ、クソ野郎をぶっ殺せ、と。

だがそんな魅惑の闘争心にのせられるほど、彼の理性は弱くも無い。
ダンテは即座にそんな危うい声を遮断して竜の方へ。

今の隙に脱し、10mほど前方に立っているあの華奢の男へと目を向けた。

499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 03:41:44.43 ID:9fD6OnLMo

竜王『つッ―――はっはァ!!』

興奮しているのか、口を引き裂くようにして短くも大きな声を発する竜、その姿形は既に新造されていた。
魂にも器にもダメージの痕跡も全く無い。

ダンテ『……』

対照的にすぐに己を落ち着かせたダンテは、
冷静に今の一連の状況を分析していく。

今の攻撃は確保を試みたものであったが、どうやら確保することもかなり難しいか。

その力の使い方は到底及ばないものの、その総量は紛れも無く魔帝に匹敵、いいや。
覇王とスパーダの片割れをも吸収している今はそれ以上か。

そんな莫大な器上で創造が稼動している限り抑え込むことなど不可能、
身を縛しようが今の通り力の放出を留める術は無いようである。

ダンテ『……』

これは面白いといえば面白いが、一方で面倒臭い、
それがこの結果に対するダンテの率直な心境だった。

さて、ではここからどうするか。

気まぐれ気の向くままに進むことは変わりないが、
それでもある程度の向きと目的を定めておく必要がある。

まずここでこのまま戦い続けていても、上条当麻を引きずり出す方法が見つかるとは思えない。
バージルの件もあるためあまり長くダラダラと付き合ってもいられない。
そして兄のみならずもう一度、あの黒髪にイイ体の『素晴らしい魔女』とも接触したい。

無論、イイ女であるからではない、
彼女もまたバージルやネロと同じ重要な世界の要素であると直感しているからだ。

と、竜に相対する傍ら、ダンテが頭の半分では思考を巡らせていたところ。
同じくして思考を巡らせていたのか、竜がふと何かを思いついたような笑みを浮べて。



竜王『……この戦いが含む意味、お前にとっては人間を守るためというだけでは無いな』

500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 03:46:20.29 ID:9fD6OnLMo

ダンテ『……』

一瞬、唐突に何を言い出すかと思ったがすぐにダンテは気付いた。
恐らくこれが具現という力の作用の一つか、と。

どういったものかは、ある程度は話に聞いている。
ウィンザー事件もあって、
トリッシュの言いつけで否応無くそれなりに学び研究せざるを得なかったのだから。

だた。

トリッシュ『他者の精神、記憶へと侵入し干渉、干渉できなくとも全て覗き通すことができるみたいね。嫌な力。デリカシーがないわ』

こうして繋がりを介してトリッシュが補則してくれるのならば、
別に自身が学ばなくとも良かったのでは、ともダンテは一瞬思ってしまうが。


竜王『スパーダの血族。その世界の歪みたる、因果に食い込む「宿命」を清算する戦い、か』


竜王『自らの存在が、大乱を誘発させる潜在的な原因であると考えての、な』


竜王『具体的には、人間界の時間軸を「塞き止めている」バージルと魔女の本拠へととりあえず殴りこみたい、違うか?』

ダンテ『…………へぇ。便利な力だな。まあそんなところだ』

そしてこれまたいつもの事。
嫌悪を示したトリッシュとは反対に、
まるで意地になって対抗するかのようにある程度の許容の反応を見せるダンテ。

竜は可笑しげに小さく笑いこう続けた。


竜王『ならば、少しお前手助けをしてやろうか』

501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 03:51:05.63 ID:9fD6OnLMo

ダンテ『……Humm』

そこでピクリと。
笑み交じりに、わざとらしく訝しげに眉を細めるダンテ。

竜王『俺様が考えるに、こんなことをやってのけられる場所は「神儀の間」しか考えられない』

竜王『「神儀の間」とは俺様が倒された折に建立された神域の一つだ』

竜王『かの神域にて魔女とその側に付く魔、賢者と天界の間で誓約が交わされ、セフィロトの樹の原型が築かれ、そして2000年前』

竜王『戦勝の英雄たるスパーダが、諸神らの前で人界と共に生きることを誓った』

そんな彼に対して、
竜は右手を肩の高さに掲げて得意げに続けていく。

竜王『とまあ、概要はそんなところだが、重要なのは今、バージルはかの領域を完全に支配しており』


竜王『彼の意志無くして、何人も不可侵ということだ』


ダンテ『……』

竜王『お前でもな、もちろん俺様でもだ』

そしてこれまた大げさな表情を浮べて。


竜王『だが一つだけ。彼の意識外からかの領域に侵入できるルートがある』


竜は不気味にほくそ笑んだ。
その端正な顔を醜悪に歪め、享楽的酔狂に満ちた息を吐いて。


竜王『お前にとっては懐かしいものであろう』


そうして。
竜が掲げた右手を軽く振り下ろした―――その瞬間だった。

光が溢れ―――竜の姿が一瞬で忽然と消え。

入れ替わるようにして、延々と続く白亜の石畳の果てにて―――突然、地を割って巨大な『塔』が出現した。

ダンテ『……』

幅数百m、高さは数kmにも及ぶであろう『黒い塔』。
その姿まさしく。

今でもダンテの脳裏に焼きついているあの―――テメンニグルの塔そのものであった。

502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 04:02:48.60 ID:9fD6OnLMo

竜王『―――そう、テメンニグルの塔だ』

そしてこれも具現の力の一つなのか、
この場には存在していないにも関わらず、そして『繋がり』なども形成してもいないのに。

トリッシュのそれと同じように直接意識内に響いてくる声。

竜王『人界に踏み入った魔達の牢獄であり、魔剣スパーダの「芯」の封印領域へと繋がる「階段」』

竜王『だがな、それらは「アレ」の本質ではない』

ダンテ『……』

どこかへ離脱してしまったのだろうか。
ただダンテは、そんな竜の突然の逃走にも特に動じはしなかった。
創造が機能している以上、逃げる気になった竜を留めておける方法など現状は無いのだ。

竜王『アレはかつて魔女の手によって、神儀の間と共に建立された「神域」の一つ』

そうして、声のみとなった竜の言葉が続いていく。


竜王『本来の機能は―――あらゆる領域へと繋げられる―――「門」だ』


竜王『築かれた当初の目的は、魔界による侵略の際に異界から直接増援を引き出す、というものであった』

竜王『ただ結局、その主目的では使われ無かったがな。開門に必要な力が莫大過ぎることもあって―――』


ダンテ『―――ハッ。長ったらしいご講釈はもう充分だ。要はなんだ?』

と、そこでダンテは耳障りとばかりに目を細めて、
そう単刀直入に切り返す。

竜王『……ふん。要はだ。お前がかの塔に血を注いだ時、門はお前の望む場へと開く』


竜王『お前はバージルの下へと到達できる。一切の障害無くな』

503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 04:08:07.23 ID:9fD6OnLMo

ダンテ『……』

これは一体―――如何なる意図があるのだろうか。
じっと塔を遠めに眺めながらそう、ダンテが意識内でふと思うと。

竜王『現時点において、お前と俺様の利害は一致してるのだよ』

竜が口を開き、これまた『ご丁寧』に述べてくれた。

竜王『俺様は、筋書きの従うことを決めた。だがな、なにもその目的に同調したわけではない』

竜王『俺様が求めるのはその「過程」だ。意外性に満ち溢れ、あらゆる刺激を有する激動の物語。それを見、体験したいのだ』

竜王『筋書きは、ただ俺様とお前が死力尽きるまで激闘を繰り広げること、そしてお前が「上条当麻を殺す」結果を望んでいる』


竜王『だがそんな流れなど、お前は望んではいないし何より―――つまらないだろう?』


竜王『そして俺様も―――まだ終らせたくはない。更に愉快な展開にしたい』


ダンテ『…………Humm』

竜、その人格はどうにも信用ならず、
そして何よりも生理的に気に喰わない。

『ムカつく』野郎だ。

だがそんな人格とは相反して、
その良し悪しはともかく吐かれる言葉は全て合理的。

それにこれまた『腹立たしいこと』に。
ダンテの冴え渡る直感が、竜の言葉は全て真実であると揺ぎ無く肯定していた。

ダンテ『…………』

504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 04:19:29.85 ID:9fD6OnLMo

トリッシュ『一端退きましょう、ダンテ。イマジンブレイカーの坊やの件もあるし、これは良く考えなくちゃ』

内から、一時退却を促すトリッシュの声が共に思考の中に響く。
彼女の言うこともごもっとも、それが『普通』の考えであろう。
先行きが読めず、かつ複数の未解決の問題が積みあがっていれば、
誰でも一先ず歩みを止めて状況を分析しようとするものだ。


だが生憎―――ダンテは普通じゃない。


彼は正真正銘『イカれている』。
どうしようもないくらいに常軌を逸して、他の悪魔とも人間とも違って何かが『ズレている』。


竜王『再びかの塔を昇り、己の血で扉を開け』


それこそ『ダンテ』が『ダンテ』たる個性であり、
そして―――筋書きに気付き反旗を翻す、という『狂気の沙汰』へ至った種だ。


竜王『お前の宿命が決定付けられたかの塔の門の先で―――』


つまりはこの『狂気の沙汰』を昇華し貫くことこそ―――筋書きをぶっ潰すに至るのだ。


竜王『―――お前の宿命の決着が待っているであろう』


それに竜の言葉通りならば。


竜王『そして―――「全」へと成っている俺様もその先にな』


『上条当麻』も塔の先にいるということだ。
これはもう、ダンテにとってこの『挑発』を断る道理など無い。


ダンテ『―――ハッハッッ!!面白え!!乗ったぜそのゲーム!!』


進んで飛び込み何もかもを盛大にド派手にぶち壊す。
宿命の本質へと到達するこの戦いは、まさにこれまでを再度なぞる集大成。

そうだ。

何だってそうだ。


   クライマックス
―――『最 期』はこうでなければいけないものだ。

505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 04:28:31.09 ID:9fD6OnLMo

そうして。

魔人化を解いては、ダンテは一ッ跳び。
マントと翻してアレイスターの盾となっていたアグニとルドラの傍へと降り立ち。

ダンテ「聞えてたな!そういうことだ!俺はもう一度あの塔に登る!」

アグニ『我らも共に』

ルドラ『我らも同行を』

ダンテ「良いぜ!来な!『思い出巡り』だ!」

そうして、猛々しい喜びの雄たけびを上げる双子を傍らにダンテは歩き進み。


ダンテ「…………よお、お前も来るか?」


因果からダンテがもぎ取った命、アレイスターへと言葉を放った。
哀れで罪深い彼は相変わらず俯き、廃人のようにただ呆然としている。

だが。

ダンテ「お前に何があったのかは知らねえ。だがこれだけはわかるぜ」

ダンテ「お前は因果とやらに吐き捨てられたってな」

因果。捨てられた。
その言葉を投じられた瞬間、僅かにアレイスターの肩が動き。


ダンテ「どうだ? んなクソッタレな『お前の筋書き』―――ぶっ飛ばしたくはねえか?」


そして微かに、『動き』のある硬直を見せたが。
それでも結局は、彼は立ち上がるそぶりは見せなかった。

506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/27(日) 04:31:11.04 ID:9fD6OnLMo

そんな彼を見て、ダンテは両脇の双子へ向けて声を飛ばして。

ダンテ「………………おい、どちらか、コイツを学園都市に戻してきてくれ」

アグニ『ふむ、では一先ず兄の我が』

ルドラ『ふむ、では我が先にダンテと共に行こう』


ダンテ「なあ、アレイスター。お前の宿命を潰せるのは、お前しかいねえんだ」


アグニがその巨体をアレイスターの傍に屈める傍ら、
まるで何気なくの独り言のように、あっさりとした声色で連ねた。

ダンテ「『英雄』ってのはそりゃあ表向きは大勢を救えるが、それはあくまで表向きでしかない」

無数の救うべき命が、
どうしても『手遅れ』となりその手をすり抜けてきた者としての言葉を。


ダンテ「―――20年も『ヒーロー屋』やってりゃ、嫌でもわかるぜ」


ダンテ「『宿命』ってのから本当にそいつを救えるのは―――そいつ本人だけだってな」


彼らの屍の上に立っている―――『血まみれ』英雄としての言霊を。


ダンテ「何が言いたいかわかるか?要はな、」



          ヒーロー
ダンテ「本来、『英雄』ってのは―――誰でもなれるもんだってことだ」



アレイスター「…………」

それらの響きが、この男の内にどこまで浸み込み。
どんな波紋を描くか、それを明確にこの場で知る術は無かった。

だが。
確実に、何らかの波紋を生じさせたのは確かであった。

アグニに連れられ、彼の姿が消える際にダンテは見た。
アレイスターのその拳に力が僅かに戻り―――握り締められたのを。


ダンテ「ハッハ。まずはステップ1はクリアだ。そうだ―――その通り―――」


そしてダンテは小さく笑い。


ダンテ「―――ぶっ飛ばすには、はじめに握り拳を作らなきゃあな」


彼方の塔へとその面を向けた。


―――


515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:22:18.39 ID:FyE4RatUo

―――

何もかもから隔絶された領域、虚無の彼方にて。

神裂『…………』

禁書『…………』

互いにしっかりとその手を握りしめながら、
二人は静かに待ち続けていた。

眼下に広がる大樹は、5%ほどの線を残してほぼ二分されている。
インデックスの正確な解析のもと、神裂が次元斬りで少しずつ切り離していったのである。

今頃天界は大騒ぎであろう。
セフィロトの樹、そのシステムを全てチェックし、何とかして侵入者を見つけ出そうとしているはずだ。
しかし見つかるわけが無い。

こうして虚無から刃を振るっているのだから。
彼女達は一切邪魔されること無く、ここから悠々と切断していったのである。


そしてその残る『枝』は―――人間への各種テレズマの供給線のみ。


彼女達は今、その供給線を前にして作業の手を止めていた。
ステイルからの報告を踏まえての、テレズマの供給線に関するバージルの判断を待って。

516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:25:14.95 ID:FyE4RatUo

ただ。
神裂は、己とステイルの要望が通るとはどうにも思えなかった。

バージルからすれば天界魔術師など微々たる存在であろう。
いてもいなくてもさして変わらない、いや、むしろ彼の性格からすれば、
余計な事をされないよう供給線も切り力を奪った方が良い、と考えるかもしれない。

そもそも計画は当初から、セフィロトの樹は全切断する方針。
ここで供給線だけを残すよう要望する神裂やステイルの方が、その計画から逸れてしまっているのだ。

テレズマの供給線を残して、実際的な利点は何がある?
計画をここで変更するに足るものがあるか?
むしろこのまま計画通り全切断し、天界魔術を人界から一掃してしまった方が、
多くの争いの原因を根絶することができて良いのではないか?

そう返されてしまえば、神裂とステイルは何も言えなくなってしまう。
『理由付け』の殻は全て剥ぎ取られてしまい、こう曝け出されてしまうのだから。


根は単なる『私情』、『己が育った世界、そして今も仲間達が所属している世界を失いたくないであるから』、と。


しかしそうした『私情』を抱いてしまうのも、人の心を持つものとしての性である。

どれだけ小さくとも確かな機会と理由を手に入れてしまったら、
誰しもがその私情を叶えることを試してみたくなってしまうもの。

それが例え、拒絶されるとわかっていてもだ。


神裂『あのう!聞えますか?!答えを!』


神裂『お願いします!!どうか―――!!』

517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:28:07.05 ID:FyE4RatUo

沈黙を通す主に向け、再度声を放つ神裂。
そんな彼女とは対照的に。

禁書『…………』

傍らのインデックスは、
この件に関しては未だ明確な意志を示さずにいた。

彼女は少し俯きながら下唇を噛み、じっと押し黙ったまま。

神裂『……っ』

魔女の身としてはセフィロトの樹の全切断、
天界と人界の完全決別はまさに悲願であろうか。

更に二度目の人生も魔術世界で道具として良いように扱われて、
天界魔術が引き起こした騒乱の数々を目にしてきた彼女からすれば尚更か。

と、そんな自身の思いの一方。

神裂やステイルの立場でもしっかりと考えているのだろう、
一切口を出そうとはしない。

神裂『…………』

しかし彼女、インデックスはいささか不器用で素直すぎるところがある。
彼女自身は隠しているつもりなのであろうが、繋がりを介すまでもなく、
その表情や佇まいで心情は丸わかりだ。

一度、そんなインデックスを見て。
神裂と繋がりの先にあるステイルは、やはり己達の私情が過ぎていたと認識して。


神裂『………………す、すみません。やっぱり―――』


そう、バージルへ向けて声を発しかけた時。
ほぼ同時に、そして鋭く鮮烈に。



バージル『――――――好きにしろ』



声が放たれてきた。

518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:31:11.97 ID:FyE4RatUo

神裂は一瞬、己が耳と意識を疑ったが、
それは確かにバージルの声だった。

普段どおりの冷ややかで無感情な声色である。

神裂『―――な、ほ、本当ですか!』


バージル『二度言わせるな』


神裂『―――は、はい!すみません!!ありがとうございます!!』


ダメとわかってはいても、何事も言ってみるものである。
バージルはここにはっきりと、その声と繋がりをもって神裂達の要望を許可してくれたのだ。

しかしこれで万事良しというわけでもない。
もう一人、その前にはっきりとした答えを聞かねばならない者がいる。

神裂『―――……インデックス。私はあの線だけは残したいと思っています』

神裂はそうしてインデックスへと向き求めた。
この判断についての確かな、彼女自身の答えを。

神裂『あなたは……どう思っていますか?』


禁書『……………………わ、私は…………う……うぅん……』


と―――その時だった。

アイゼン『―――そなたら、少しよいか』

突然、この場に割り込み二人の意識内に響くアイゼンの声。

アイゼン『いまやセフィロトの樹は陥落したも同然、そればかしの供給線など、いつでも人間界からでも切断できる』

アイゼン『だからそれらの是非を論じるのは後にせよ。今はとにかくはよう戻って来い』

その声は少し張り詰めているか、神裂にはどことなく、
アイゼンのいつもの余裕が全く含まれていないように聞えた。

禁書『……?』

インデックスも似たような印象を抱いたのか怪訝そうな表情を浮べており。

神裂『何か問題でも起こったのですか?』

そして神裂がそう問うと。


アイゼン『うむ。特に「主席書記官」。そなたに強く関係しておるぞ』


禁書『―――わ、私?』


―――

519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:32:43.58 ID:FyE4RatUo
―――

学園都市、第七学区。
複数の大悪魔の力が立て続けに振るわれたその一画は、今や瓦礫散らばる荒野と化していた。

いいや、『瓦礫』として認識できるほどに、
『普通の形』を留めているものはまだ良い方なのかもしれない。

五和「……」

レディに続き無残な更地の中をゆく五和、
第七学区の奥へと進むにつれ現実離れしていく周囲の環境を見て、五和はふとそう思ってしまった。


光源がどこにも無いのに、満月が『五つ』くらいでもなければというくらいに、
青白くぼんやりと浮かび上がっている地面。

それも照らされているのではなく、光を帯びているのだ。
瓦礫や鉄くず、爪先で蹴ってしまう小石までもが。

そして冬の冷たい風が吹き荒んでいるにもかかわらず、
ふわふわと穏やかに宙を舞う、ガラスとも氷とも判別がつかない不気味な煌きを帯びた『細かな砂』。

人類が周知しているどの法則でも説明がつかないであろう、
神の領域の力による現象の数々であろうか。

レディ「大丈夫だとは思うけど、下手にあれこれ触らないようにね。まだこの辺りは『全て』に力が濃く残留してるわ」

一際強く光を帯びている瓦礫の一欠けらを脇に目にしての、
そう一応といった忠告を飛ばしてくるレディ。

五和「…………」

力の残留、それは五和もはっきりと認識していた。
この特有の息苦しさはもちろん。
手にある魔女の槍、そして腰に刺している上条当麻の黒い拳銃からも熱を帯びて感じる。

いいや、今やこの第七学区だけではない。
先ほどから第一学区であろうか、その方向からこことは比にならないプレッシャーが放たれてきており、
更に学園都市中が『悪魔のもの』とは明らかに違う『異質な圧力』に覆われている。

520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:35:51.85 ID:FyE4RatUo

と、そうして二人が更地の中を歩み進んでいたところ。
先を行くレディがふーん、と鼻を鳴らして。

レディ「この有様の原因は主にイポスとケルベロスの力、それとシャックスが戻ってきたみたいね」

力を分析する魔術的な判別紙であろうか。
三つの異様な紋章が浮かび上がっている、その葉書ほどの古びた紙を指の間に挟みこむようにして、
ひらりひらりと振るいながらそう口にした。

五和「名くらいは私でも知ってはいますが……それも三つとも、やっぱり大悪魔なんですか?」

レディ「そうね。ケルベロスはダンテの『飼い犬』で、シャックスとイポスの飼い主はアスタロト」

五和「その……彼らがここで戦いを?」

レディ「みたい。詳しい流れはよくわかんないけど、とにかく人類の敵であるシャックスとイポスはとりあえずくたばったみたいね」

                 オーブ
レディ「ここはあいつらの『血』で満ちてるわ。おかげでホクホクだしいい気味だし最高ね」

五和「それでもう一体は?」
                              オーブ
レディ「ケルベロスね、うぅん、あちこちに彼の『血』も飛び散ってるのだけれど、盛大にってわけでもないのよね」

五和「では……生きてると?」

レディ「あー……微妙ね。死んでてもおかしくない量でもあるし」

521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:37:31.14 ID:FyE4RatUo

そうした会話を続けていると、
二人は大地に穿たれた大きな窪みの淵に辿りついていた。

一方に向けて巨大な溝が続く大きなクレーター、その様はさながら、
地面とほぼ水平の角度で隕石が衝突してきたかのよう。

レディ「ま、一応知ってる顔だし、そんなワンちゃんの安否でも確認してあげようとっねっ」

そこでレディはそう口にしながら淵から飛び降り、クレーターの底へ滑り降りていった。
ワンちゃん、そんな表現に少し意表を付かれるも、一先ずと五和も続き飛び降りていく。

クレーターの底の深さは20mほどか、これまた光を帯びた大量の異質な瓦礫で覆われているため、
実際の深さはもっとあるか。
そんなクレーターのちょうど中心辺りにて、
ロケットランチャーを箒のように振るい、乱暴に瓦礫を除け始めるレディ。

そして。

レディ「?いたいた」

五和「…………?」

その欠片の合い間にて、青く透き通る水晶のようなものに覆われた『何か』が見え。
更にがらがらと周りの瓦礫を除けていくと、そこから現れたのは大きな―――『獣状の足先』だった。

人の胴五本分はあろうかという巨大なそんな爪先を今度はレディ、
ロケットランチャーの尻で乱暴に叩き。

レディ「良かった。一応生きてはいるわね」

今の行動でどのようにして判別したのか五和にはさっぱりであったが、
一先ず彼女はそう確認の声を口にした。

レディ「『冬眠』に入りかけてるけど」

五和「……と、冬眠ですか?」


レディ「復活まで『一時的に死んでいる』状態ね。魂と器の治癒待ち」

レディ「悪魔の習性ってところかしらね」

522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:38:57.77 ID:FyE4RatUo

そう傍らの五和に告げながら、
ロケットランチャーでごんごんと更に叩くレディ。

レディ「話はできる? ああそれも無理、ね」

レディ「じゃあ……とりあえずここに放置するわけにもいかないし、もうちょっと運びやすいサイズになってくれない?」

とその時、彼女がそう巨大な爪先に言い放った途端、
突然その場が大きく陥没した。
深さ幅共に5mほどが一気に沈んだのである。

五和の体は条件反射ですかさず飛び退き、陥没に巻き込まれることなく穴の淵へ。
そこでようやく彼女の意識は驚きという感情を滲ませた。

五和「……っ!!」

レディ「ごめんびっくりしたでしょ」

対して逃げなどせずに地面と一緒に陥没したレディは、
そんな彼女を見上げて意地が悪そうな笑みを浮べて。

足元に転がっていた『あるもの』を爪先にひっかけ、
五和へと向けて蹴り上げた。

それは青い結晶のような質感の―――三棍のヌンチャク。


五和「っきゃ……つ、つめたっ……!」

『冷たい』、それがヌンチャクを抱きとめた彼女が最初に覚えた感覚だった。
そんな彼女の反応を見てまたもやレディはにやにやと笑みを浮べて。

レディ「それがかの名だたる三頭の魔狼、ケルベロスよ」

523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:40:17.34 ID:FyE4RatUo

五和「…………」

ケルベロス。

数々の神話や記述にその名がある存在。
それら伝聞の元となった本物の『神』が今、己の手の中にある。

それはそれはとんでもないコトなのであろうが、
不思議な事に、内に何かの衝撃が走ることは無かった。

ここ半年、悪魔という存在とは特に強く関わってはきたせいか、
そしてウィンザー事件やヴァチカン、先のアスタロトという一連の流れの中で慣れてしまったのだろうか、
これといって強く思うことが何も無い。

五和「…………」

『冬眠』であるせいか、ヌンチャクからはこれといった重圧も覚えないことも、
その『新鮮味』の欠如に拍車を駆けているか。

この神が通常の状態であれば、
きっと慣れ不慣れ関係なく精神を揺さぶられるのであろうが、
今伝わってくるのは氷を持っているかのような冷気のみだ。

五和はそう何気なしといった面持ちで少しこのヌンチャクを眺めて、
陥没穴から上がって来たレディに手渡した。

そんな彼女の様子を見てレディが一言。

レディ「いい顔してるわね」

524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:41:23.86 ID:FyE4RatUo

五和「…………」

それは一体、どういった意味なのか。
先ほどのアスタロトの件から精神状態がほぼ回復し
落ち着いていることを指しているのか。

それともこうして妙に冷めて、
神たる存在を手にしても全く怖気もしていないことなのか。

五和「は、はい。どうも」

その意図はどうにも分かりかねたが、レディの表情を見る限り、
少なくとも悪い意味は一切含まれていないよう。
そうしてここは一先ず素直にと、五和は褒めの言葉に対して礼を返し―――


―――と、その時であった。


それは突然の『異質な衝撃』。
地面は揺れてもいないのに『地鳴り』が響き、倒れてしまいそうになるくらいの振動。

そしてある方向の彼方にて。

距離感がなぜかまるでわからないが、
それでもとてつもなく巨大だと瞬時にわかる、

今まで人類が築いたどの建築物よりも高いであろう―――『黒い塔』が出現した。

525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:42:38.65 ID:FyE4RatUo

刹那、五和はとても信じられない『もの』を目にしてしまった。

五和「―――っ」

もちろん突然現れたあの異質な塔でもあるが、
それとは別にもう一つ、彼女の目は捉えてしまったのだ。

それは振り向き、あの黒い塔を見たレディ。


一瞬だけ見えた―――ひきつった横顔。


それを覗かせたのはほんの僅かな時間だけ、
しかしそれでもはっきりと認識できるくらいに、そこにはとてつもなく色濃く負の感情が―――


―――嫌悪、憤怒、そして―――恐怖が滲んでいた。


五和「―――」


しかもそれは程度の差はあれど、
少し前に五和がレディの中に目にした色と同質のものであった。

先ほど、アスタロトが罠にかかる直前、
彼女がデビルハンターとなる道を決定付けたある男―――『父親』の話をしていた時に垣間見せた『陰り』と。

526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:44:38.81 ID:FyE4RatUo

レディ「―――…………」

レディ、その目に映るかの塔の姿に、『メアリ』は何を抱き見るか。
それは今でも脳裏に焼きついている凄惨な過去。


彼女だけの―――そして彼女にとって唯一たった一度の―――『悪夢』。


だが今は、その悪夢を見ている存在はもう『彼女だけ』ではなく。
たった『一度』でもなくなってしまった。

メアリ=アン、彼女が悪夢の象徴としてかの塔を意識したとき。

かの塔も彼女を意識し。
かの塔を顕現させている要素の一つ、『具現』も彼女を認識し捉えることとなる。


それはつまり、かの力に精神が囚われてしまうことを意味する。


『具現』、それを前にして僅かな恐怖でも見せてしまったら、
この恐怖を主食とする忌まわしき力に、恐怖の源たる記憶を抉られ―――そして曝け出され。


あの日終ったはずの、その手で自ら終らせたはずの悪夢が――――――再現される。



レディ「………………………………」


この瞬間、彼女の脳裏に『悪夢』が鮮明に復元されて。
同時に再顕現されたテメンニグルの塔内には、その『悪夢』が再び『実体化』する。

この呪縛から抜け出すにはただ一つ。

再びその恐怖の権化たる試練に立ち向かい、
『前回』と同様、その手で決着をつけるほか無い。

そう。


レディ「……………………………………………………………………」


自らの意志でもう一度、あの重くて痛くて苦しくてたまらなかった――――――――――――『引き金』を絞らねば。


―――

527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:47:06.06 ID:FyE4RatUo
―――

学園都市の界上にて、
創造と具現の『御業』により再顕現したテメンニグルの塔。

それは古の世にて魔女の手で築かれた『門』であり
2000年前のかの魔界による侵略の際は、
漏れ出した魔界の欠片と悪魔達を封じる牢獄として使われ、その後。

その後は魔剣スパーダの芯、フォースエッジの封印領域へ続く、唯一の門となった。

もちろん、そうした経緯からこの塔そのものも強固に封じられることとなる。

スパーダは己が半身を魔界の錠にしたように、
七柱の大悪魔を礎に『七つの大罪』をなぞる『七つの封印』を敷く。

それは如何なる事があろうと、
フォースエッジを持つに足るものでなければ決して解くことのできない錠。
すなわちスパーダの二人の息子達のみということだ。

更に、ここにスパーダはもう一つの『カラクリ』を仕込む。

七重の封印を解けるのは双子のみであるが、
双子だけではその封印の位置を絶対に見つけられないようにしたのである。

封印の位置に関する記述は、魔術の暗号言語でのみ残して。

これぞ、息子達が人間と共に歩むことを願ったスパーダの遺言の一つだ。
我がスパーダの力を受け継ぐ時は、人間の協力と許可が必要である、と。

528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:48:46.55 ID:FyE4RatUo

しかし。

さすがのスパーダであっても未来を正確に見通すことは不可能であったか、
その後には誤算が生じていく。

いいや、結果をみれば誤算ではないであろうか、
だがその経緯はとても彼が望んだものではなかったはずである。

彼が消えてすぐに妻が生き絶え。
息子達の道が完全に分かれ。

そして。

兄がフォースエッジを求めて七つの封印を解こうとした際、

得られた協力者は、悪意に満ちた狂気の魔術師だった。
それも妻を生贄に悪魔に転生した『元人間』の。

そこから繰り広げられたのは、兄弟の血で血を洗う闘争。
二人の宿命を分かち、そして冷酷に突き付ける戦いだ。


竜王『……』

そんな、かの魔剣士の刃の記憶に優雅に浸って。

竜はその鮮やかな髪を風に揺らしながら、
テメンニグルの塔の頂上、『七つの柱』が物寂しげに立っている広間に佇んでいた。

529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:49:47.58 ID:FyE4RatUo

竜王『「七つの鐘を打ち鳴らし、我らは祝福するだろう」―――』


竜王『―――「太古の恐怖の再来、魔界の王の降臨を」』


その『祝福の鐘』が吊り下げられるであろう柱の一本を見上げながら、
口から漏れるは、『七つの封印』の錠とされた大悪魔の一柱が最期に残した言葉。

竜王『―――はは、面白い。中々風情がある』

そうして小さく笑っては柱に軽く寄りかかり、
ゆっくりと眼下へと目を向けた―――ちょうどその時であった。



『―――まさか今一度、貴様と言霊を交わす日が来ようとは』



突然響く、低く篭った異質な声。
ただ竜王は特に驚きなどしなかった。
むしろ待ちかねたといった表情を浮べて。


竜王『やあ、久しぶりだな―――』


そして相手の名を口にした。



竜王『―――フォルティトゥード』

530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:51:22.66 ID:FyE4RatUo


フォルティトゥード『我が名を気安く口にするな……腐れ竜めが』


現天界の頂点にして四元徳が一柱、忍耐フォルティトゥード。

まるで隠すつもりもないのであろう、
その声にはとてつもない嫌悪がありありと滲み出ていた。
しかし竜王はそんな相手の声色など全く気にもせず。

竜王『昔の蟠りは抜きにしよう。時間が惜しいしな。すぐ本題に入らせてもらうよ』

フォルティトゥード『何用だ?』

酔狂に満ちた声でこう告げた。


竜王『―――俺様と手を結ばないか?』


その瞬間、塔全体が揺れるかというくらいの振動を伴った、
天空からの笑い声が響き渡り、そして。


フォルティトゥード『―――貴様と手を結ぶだと?妄言も甚だしい』


笑いの中に怒りも滲ませての、四元徳の威圧的な声。
しかしその笑いも、次の竜王の言葉で一瞬にして途絶えることとなった。



竜王『―――――――――「創世」。それがお前達の悲願であろう?』

531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:54:20.43 ID:FyE4RatUo

フォルティトゥード『…………』


竜王『世界の目を持ち、完全なる状態で復活したジュベレウス』

竜王『かの存在による御業、全てを無に還し、この世を絶対的な秩序の下で「創世」、それをお前達は望んでいたのだろう?』

フォルティトゥード『…………』

竜王『しかし今や「光の右目」は完全に失われ、ジュベレウスの復活は不可能。創世の可能性は潰えた。だが―――』



竜王『―――俺様なら―――創世も不可能ではない』



竜王『さて、良く考えろ』

竜王『お前達はこれからどうするつもりなのだ?この今の人間界を巡る一戦には「奇跡的」に勝利したとしても、そこからどうする?』


フォルティトゥード『…………』


竜王『わかっているだろう?「俺様抜き」であれば、如何なる選択をしようが今敗北するかいずれ敗北するか、結果はこの二つしかない』


フォルティトゥード『……………………』


竜王『実質、お前達には選択の余地が無いのだよ』


竜王『悪くは無い話だと思うが?俺様と手を結べば、悲願の創世が叶うのだ』


竜王『この世の全ての闇と共に魔界も消え去る。それこそジュベレウスが望んだことではないのか?』

532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 02:57:28.86 ID:FyE4RatUo

竜の声。
それはとても信頼できるような音ではない、
冷やかしと嘲笑があちこちに色濃く浮かび上がっているもの。

だがそんな表層とは相反して、放たれた言葉自体は全て道理にかなっていた。

そう。


フォルティトゥード『……………………』


彼らにとって選択の余地は無いのである。
ここで竜王の手を取らなければ、天界の滅亡は確定することになる。

ましてやジュベレウスが滅亡した、その衝撃に今だ震撼している天界とっては、
この『創世』の可能性は『救いの光』に等しいものだ。


フォルティトゥード『……………………良かろう』


答えはそれしかなかった。

竜王『心配するな。何も俺様に隷属しろというわけじゃあない』

竜王『三神の力を完全統合し、「全能」となるには少し時間がかかる。その間少し支援して欲しいだけだ』

竜王『学園都市の「洗浄」は当初の計画通り行ってくれても構わない』

フォルティトゥード『……ふん』

そうしてここに、それまでの関係からするとあまりにも意外な、
竜王と四元徳の同盟が成立した。


ただ当然、そこには一欠けらも信頼など存在していないが。
四元徳との交信を終えた後、竜は一人可笑しそうに笑った。


竜王『はっ……相変わらず馬鹿正直で安易な連中だ。それだから戦下手なのさ』

533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/11/30(水) 03:01:50.45 ID:FyE4RatUo

と、そう一仕事終えた後。

竜王『ほぉ……これはこれは、思わぬゲストか。面白い』

さきほどから背後に覚えていた気配に向け、
竜は愉快気に笑みを浮べながら声を放った。

竜王『ちょうど先ほど、この塔と併せてお前についても記憶を遡っていたよ。一度会ってみたかった』

竜王『この時代に生を受け、世界に多大な影響を及ぼした至高の魔術師、その三傑を決めるとすれば―――』

そして振り向き、そこにいた一人の『男』と面と向かって。

竜王『アリウス、アレイスター、そしてお前―――』



竜王『――――――アーカムであろうな』



その名を呼んだが。
アーカムと呼ばれた、スキンヘッドの異様な雰囲気の男は特に反応を示してはいなかった。
人形のようにそこに立ち尽くしているだけだ。

それを見て竜は、まいったといった風に肩を竦めて。

竜王『……ま、所詮は「過去の残像」か。「記憶の主」以外にはまともに反応しないか』

そうして、わざとらしくではあるが寂しそうにため息をついた時。
タイミングよく、ある人物が彼へとアクションを送ってくれた。

それはまず、魂そのものによって形成されていた『特異な繋がり』の『再起動』にはじまり。


竜王『お、やっと「回復」したか』


そして意識内に響くは。



『―――――――――――――――あなたは…………―――だれ?』



かの『愛おしい少女』の茫然自失とした声。
対して竜はけらけらと笑いながら、茶化すようにして言葉を返した。


竜王『誰かって? ひどいな――――――インデックス』


それもわざと―――口調を真似て。



竜王『君が愛する――――――「上条さん」ですよ』



―――

536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(富山県) [sage]:2011/11/30(水) 07:21:56.60 ID:J2dtW2Afo
右条さんはゲスいな

541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/03(土) 02:24:35.60 ID:rnNsSxiao
―――

ステイル『テメンニグルの……塔……』

名を聞かされても、いまいち釈然としなかったが、
その響き自体に、とてつもない言霊としての力があるのであろう。

名を耳にし認識した瞬間、神裂から―――いや、これはその先の『大主』のバージルからのものであろうか。
断片的なイメージが繋がりを介して流れ込んできたのだ。

それらは具体的に何の情景なのかは判別できない、ノイズまみれの壊れたイメージ。

ステイル『……』

しかしこれだけははっきりと認識できた。
それらの断片上に渦巻いてる、只ならぬ感情と滾りを。

なんと苛烈で熱く、破壊的で破滅的な滾りか、
その勢いは無二の絶対的恐怖をも覚えてしまうくらいだ。


そう、今この瞬間、バージルはかの塔の存在を認識して『逆鱗』しているのだ。


そんな最強たる『主の主』の強烈な憤怒に晒されてしまうことは、
『使い魔の使い魔』である彼にとって恐怖のどん底に突き落とされるのと同じこと。
ステイルは顔をひきつらせてその場に硬直してしまう。

しかし彼には別の繋がりがもう一つある。


イフリート『何をしておる?―――まずお前達はやるべきことを成せ』


父たるこの大悪魔との繋がりが。
一瞬バージルの激烈な圧に押し潰されそうになったステイルを見て、
炎の魔人は良く響く言霊を放った。


イフリート『恐怖に縛られるのはその後でよい』

542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/03(土) 02:26:31.24 ID:rnNsSxiao

ステイル『……っ』

そうだ、今こうしている余裕など無いのだ、と。
イフリートのたくましい声が、揺らぎかけていた彼の芯火に再び力を宿させる。

ステイル『ああ……』

『向こう』でも、この状況を前に混乱しているのであろうか。
バージルはもとより、神裂からも具体的な命令は放たれてこない。

となれば今の己の義務は、こちらでやれることをやるのみである。

イフリート『かの塔については今ダンテが動く。彼らに任せるが良い』


そしてまた、イフリートの神たる声は例え繋がりが無くとも、
聞く者の内には言霊の力が届くものである。

一方『…………チッ』

唖然としていた一方通行もまたその頭を切り替えるように、
己が額を叩くようにして手を当てて舌打ち。

エツァリ「……そう……ですね。まずは……」

そうしてエツァリも塔から視線を外して、彼らの方へ振り向いたその―――瞬間だった。

突然彼らの背後、つまり塔から反対側の方向、
すぐこのビル内にて赤い魔方陣が浮かび上がり。


―――筋骨隆々とし、赤い体皮の―――『首なし巨人』が現れた。


『―――届け物だ』


そしてそう告げる巨人の、大木の如き足の前には―――床に膝を付いて俯いているアレイスターがいた。

544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/03(土) 02:29:47.53 ID:rnNsSxiao

イフリート『ご苦労であったアグニ』

アグニ『うむ』


ステイル『……アレイスター』

一方『―――はッ』

長い髪が垂れ下がり肩を落としている様からは、例え顔を見なくても充分にわかるほどに、
竜王とアレイスター=クロウリーの勝負の結末が示されていた。

一方通行はそんな彼の姿を見て悟った瞬間「びきり」と。
闇と歪に混じる白い顔に、憎悪と憤怒に満ちた笑みを刻んで。

一方『―――カッカカッ!そォら言わンこちゃねェ!ボロッカスに負けたみてェだな!ザマァねェなァおィ!!』

無様は敗者の元へと、容赦なく言葉を浴びせながら歩んでいく。

彼がその歩を進めるたびに、周囲の虚空から闇の筋が出現し、
アレイスターの体へと今度こそどこにも逃さぬとばかりに巻き付き、その場に完全に拘束固定。


一方『よォ、「負け犬」さン。そこで大人しくしてろ。オマエにァ、ぶっ殺す前に聞きてェことが山ほど―――』


アレイスターの前まで来た一方通行は、その髪を乱暴に掴み、
俯いている顔を強引にあげて覗き込んで―――


一方『(―――っ…………こィつっ…………)』


そうしてその目を見た瞬間。
情け容赦ない言葉を連ねていた口が―――止まってしまった。


アレイスターの見た目は『麗しい女性』の顔、
その目から、透き通った雫が幾筋かの線を引いていたのだ。

そしてその瞳には。

僅かに、それでいて確かに―――先までは無かった何らかの『光』が宿っていた。

545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/03(土) 02:32:43.49 ID:rnNsSxiao


―――泣いているのか―――?


こんな普通の人間のような目で?
本当にあのアレイスターなのか?


これが―――憎んで憎み足りない、例え百万回殺しても絶対に気など晴れない、あの男の成れの果てだと?


ステイル『……アクセラレータ?』

一方『…………』

彼は少し混乱し困惑してしまった。

ちょうど己の陰になって、アレイスターの顔が見えていないのであろう、
そんなステイルからの声を受けて、一方通行は訝しげに目を細め。

無言のまま更にもう一重、彼の体に闇を強固に巻き付けては、
その手を乱暴に離して踵を返し。


一方『…………回線の修復が終わりそォだ。土御門と滝壺に繋げンぞ』


笑みを完全に潜めた表情で、そう言葉を放ちアレイスターの傍を離れた。
そんな彼の様子を見て、ステイルとエツァリは顔を見合わせるも。

エツァリ「……まあ、今はまず虚数学区の件を」

ステイル『ああ』

そう頷き、一方通行の方へと向かっていった。

546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/03(土) 02:36:32.29 ID:rnNsSxiao

アグニ『手は足りているか?』

イフリート『否。現状において、充分という言葉など存在せぬ。手勢は多ければ多いほど良い』

アグニ『では我もしばらくここに』

イフリート『よいのか?』

アグニ『よい。ダンテの元へはいつでも行ける。ルドラがいる』

そうして首なしの巨人アグニは、その場に『本体』である大剣を突き立て、
のっしりとアレイスターの背後に胡坐をかいて座った。

向かい、アレイスター越しの前方の壁際にはちょうど―――変わらぬ、友好的とは言えない雰囲気を醸すベオウルフ。

アグニ『……ふむ。何を考えている?ベオウルフよ』

この白銀の巨獣がなにやら思案気な目でアレイスターを眺めていることに気付き、
そこでアグニはすかさずそう問うたが。


ベオウルフ『……黙れ「脳」無しが。白痴がうつるわ』


手厳しく一蹴された。

イフリート『構うな。アグニ』

アグニ『ふむ……』


ベオウルフ『…………………………………………』

相変わらずの相容れない威圧感を放ち、じっと佇むベオウルフ。
その赤き光を宿す瞳は、何人も悟れぬ『ある意図』を含み。
ただただ静かにアレイスターへと向けられていた。

そんな白銀の巨獣の背後、
ぶち抜かれた壁から覗く闇夜の空は今、ぼんやりと。


―――徐々に『白金』の輝きを帯び。


虚空の狭間から学園都市へ、幾本もの光の筋が差し込み始めていた。
それはそれは『清廉で神々しい』―――『天からの光』が。

―――

547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/03(土) 02:39:42.86 ID:rnNsSxiao

―――

実用に耐える超音速機を所有しているのは、
学園都市とウロボロス社を除けばアメリカとイギリスのみ。

ただイギリスのそれは学園都市からリースした数機のみで、
整備は学園都市の第23学区で、もちろん学園都市のクルーによって行われるというものだ。

もちろんアメリカが所有する超音速機も、
開発した社はウロボロス系列であるため、
限定的にはこのイギリスと学園都市の関係とも重ねられる。

ただそれはあくまで限定的な類似点のみを抽出した見方であり、
一転して超音速機を取り巻く全体状況を有り方は、実質大きく異なってくる。

まず、ウロボロス社の各種軍需品開発の予算の大半はアメリカからのもの。
そして開発は当然米軍主導、量産整備も全てアメリカ国内で行われる。

それゆえか。

こうして生み出された超音速機、いや、
これはウロボロス北米本社傘下の全ての工業製品に言えることだが、

これらは、よく言えば『小奇麗で全てにおいて徹底的に作りこまれた』、
悪く言えば『器用貧乏』といった学園都市の工業製品類とは、『全体的』に大きく異なっている。

特にウロボロス系列の軍用機それは、
乗り心地など『絶え難いストレス』さえ覚えなければそれで充分、
『無駄』に乗り心地なんかを作りこむよりも実用性・保安性にだけ力を注ぎ込み、
できるだけ早く安く簡単に生産できる様にするべし、という思想で作られているのだ。

548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/03(土) 02:43:27.09 ID:rnNsSxiao

具体的には、まずこの超音速輸送機だ。

座席は固いしベルトは重く、換気が悪い貨物室内には金属的というか、
こういった『重工業系』機械類特有の油臭さが充満し。

学園都市のそれならば小声で会話するくらい簡単であるが、
ウロボロス社せいのそれは、超音速機用の高出力エンジンの爆音が鳴り響いているため、
隣の席の者と会話する際も大声を発しなければならない。

これは先に学園都市が実用化してしまったことによる圧力から、
早期実用化のため防音性開発の部分が短縮されてしまったことが主な原因である。

ただ、これも『よくあること』。

確かにそれは騒音と呼ぶに相応しいものであるのだが、
実際に搭乗する米軍兵士は皆 軍用機とはそういうものだ、
話したければ従来どおり機内無線を使えばよい、という考えで特に気にもしていない。

しかし。

学園都市で育った『この少年少女』達はもちろんそんな辛抱なんか無く、
尚且つ機内用無線のヘッドセットは数が限られ、個々の通常無線も今は混線防止で切られているため。


「―――決めたァッ!!」


何か他人に伝えたい時は、ただひたすら爆音に負けぬよう怒鳴り散らす。

真っ直ぐ切りそろえた前髪が印象的な、
包帯で作った粗末な眼帯をしている少女は、パーカーのフードの下から叫んだ。


「―――もォ一生飛行機には乗らねェ!!乗らねェぞチクショウがッ!!」

549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/03(土) 02:45:16.12 ID:rnNsSxiao

黒子「……」

同感だ、と。

離陸を待つ超音速輸送機のカーゴの無骨な座席にて、
向かいに座っている『Juliett 4』のそんな言葉を聞いて、彼女は一人心の中で頷いた。

学園都市のはもちろん、このウロボロス社製の機にも、
もう超音速で飛行する物体そのものに二度と乗りたくない。

超音速に乗り込み、危険極まりない空の旅へと発つのは本日二度目。
そして下手をすれば、同じく二度目の決死の降下をも敢行するかもしれない。
それも専用の頑丈な投下用シェルに乗ってではなく、この身のまま空へと飛び出し、
背にあるパラシュートと己が能力で。

これを狂気の沙汰と言わずしてなんと言う。

黒子「……」

更に、そんな狂気の沙汰を自ら行うのは十代の少年少女たち。
これを聞いた世界中の人権活動家や識者達は、一体どんな顔をするだろうか。

まさにイカレテル。


黒子「全く…………『クソッタレ』ですの」


それがなぜかとても滑稽に思えて彼女はにやりと笑い、
おそらく隣の者にすら聞えないであろう小さな声で口汚く呟いた。

少し前はこういった汚らしい言葉は抵抗があったが、今はその逆だった。

これはきっとダンテやネロのせいだ。

彼らの汚い口調に重なると、
自然と力が湧いてきて精神的に図太くなれてしまう。

黒子「ふふ……」

全く、なんと教育に悪いヒーロー達であろうか。
影響力が抜群のため本当にタチが悪い者達だ。

550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/03(土) 02:47:25.50 ID:rnNsSxiao

そのようにして彼女が一人笑っていた頃、
カーゴの中ほどでは。

絹旗「……」

浜面「……」

この二人がメンバー内に混じり、並んで座していた。

滝壺は今は一時的に機首側、土御門や結標といったいわゆる首脳陣と共におり、
浜面の隣はその彼女のために空けられている。

浜面「…………」

そんな二人の間には、
しばらく会話が無かった。

話すべきことはあるかもしれない、いいや。
山ほどあるのだが、二人ともわかっていたのだ。


『それ』は今は話すべきではない、と。


言葉を交わさずとも滝壺もわかっていたらしく、
彼女もまた、デュマーリ島を離れてから『それ』に関することは一言も口にしていない。

―――否。

そもそもこれ以上は、特に話す必要は無いのかもしれない。
『あの場あの時』、皆が皆その胸の中のものをまるごと吐き出したではないか。

浜面も、絹旗も、滝壺も。
怒って、泣いて、喚き散らして、荒削りの素のままの気持ちを。

551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/03(土) 02:50:06.87 ID:rnNsSxiao

浜面「……………………」

あの時の光景を思い返す中、浜面はぼんやりと顔をあげた。
上方のラックからは、小さなテレビが無造作に吊り下げられている。

映っているのはどう見ても通常番組では無い。
深夜の放送休止時間のようなカラーバーが全面に映り、
下の帯にはしきりに英語のテロップが流れている。

浜面「……なあ!!あれなんて書いてるんだ!!」

ふと何となしに。
爆音の中、隣の絹旗に向けそう叫び問うと。

絹旗「民間人への避難指示ですよ!!最寄の基地か指定の施設に超急いで避難してくださいってところです!!」

浜面「なるほど!!」

絹旗「あの程度の英語も読めないのですか!!全くここまできても浜面は相変わらず超浜面ですね!!」

そしていつもの調子で返される声。
こちらをコケにする普段どおりのその返しが、今はどれだけ心地よかったか。

浜面は思わず「ふっ」と小さく笑って。

浜面「……ああ。お前も普段どおりだな」

そう小さく呟き返した。
と、その言葉は聞えなくとも口が動いたことに気付いたのか、

絹旗「―――はいぃ?!超浜面のくせに何か文句でも―――?!」

絹旗が声を放った―――その時。


突然、方々から大きな声が上がった。
一時的にこの爆音を上書きしてしまうほどにまで、メンバーが皆沸き立ったのだ。

浜面が驚き隣を見ると、
絹旗も周りと同じく目を見開いて、何やら歓喜の声を放っている。

そこで彼が、彼女の耳元で声を張り上げて問うと。

浜面「―――おい?!何があった?!」


絹旗は満面の笑みでこう答えた。


絹旗「―――回復です!!―――演算支援が超回復しました!!」

568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:22:59.32 ID:A3y7G+xXo

そして機首側の『首脳』達の側にも、一気にその騒ぎが波及していく。
その時土御門は、結標と共に米軍の将校と確認作業を行っていた。

土御門「―――?!」

結標「―――演算支援が回復したわ!!」

土御門「―――本当か?!」

彼にとっては全く前触れのない突然の湧き立ちだったが、
驚き面を上げるとほぼ同時、すぐに結標がそう告げてくれた。


滝壺『つちみかど。学園都市との回復したよ』


土御門「―――!」

次いで耳の通信機から『久しく』響いてくる滝壺の声。
当の滝壺は近くの座席にちょこんと座り、
周囲の騒ぎとは対照的に相変わらずのマイペースな空間を形成維持し続けている。

滝壺『アクセラレータから通信が入ってる』

そして彼女はそのまま口動かすことなく、
再構築された回線を介して声を送ってきた。


土御門「―――繋げろ」

一方『―――土御門。聞えるかァ?』

指示すると、続けて学園都市からの彼の声も。

569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:29:11.72 ID:A3y7G+xXo

土御門「何かあったのか」

一方『あァ大アリだ』

結標『学園都市の状況は?』

一方『あァー、色々あり過ぎてだな……』

対する一方通行の反応は、あまり芳しいものではなかった。
伝えることが多すぎるのであろうか、立て続けの質問に押される形で、

一方『……口で伝えるには面倒ォな量だ。まずは滝壺と結標にイメージ流すぞ』

彼はそう、一先ずミサカネットワーク・滝壺の能力経由でデータを流すと告げてきた。

ただその脳内への直接のイメージデータは、
滝壺とAIMで接続されていない土御門は受け取ることが出来ないもの。

しかしそれも考え方次第でどうとでもなることだ。
いつも通り柔軟に働いた土御門の思考は、瞬時に己もイメージデータを受け取れるある妙案を導き出す。

土御門「―――そっちに魔術師はいるか?」

エツァリ『はい、自分が』

ステイル『僕もいる』

土御門『よし、まず海原、今お前は原典起動しているな? 魔術回線を構築して、イメージを直接俺に流してくれないか』

エツァリ『はい?記憶の直接転送が可能なほどに強い魔術回線なんか繋げたら、あなたは―――』

土御門「大丈夫だ。今の俺は魔術障害は一切無い」

エツァリ『ああ…………ふふ、なるほど、「例の件」は上手くいったのですね』

土御門「ああ。成功も成功、思わぬ助けも得ちまったぜよ」

570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:30:04.87 ID:A3y7G+xXo

そうして魔術的位階座標とある程度の術理論を素早く話し合わせ、
土御門も問題なくエツァリ・ステイルからの必要な記憶を受け取った。

土御門「―――」

彼らの見聞きした事柄が一瞬にして、
走馬灯のごとく意識内へと流れ込んでくる。

特にこの一刻のステイルの記憶は壮絶なものであった。
学園都市、そしてプルガトリオを跨いで行われた激しい戦闘と『逃走劇』。
神裂、ローラ=スチュアート、インデックス、魔女、アスタロト。
イフリート、ベオウルフ。


そして虚数学区への『投獄』、アレイスターと―――上条当麻。

土御門「―――……っ……」

それはそれはこちらがデュマーリ島で体験したことにも引けを取らない、
濃密過ぎる出来事の数々。
いや、デュマーリ島よりも更に酷いか。

こちらの出来事は一応一段落ついているのに―――学園都市ではまだ継続中なのだ。
ステイル、エツァリからの記憶は唐突に終っていた。


今すぐにでも天界の侵攻が始まるかという中で―――上条当麻が竜王とかいう存在に『成ったまま』で。


土御門「…………」

結標『…………』

イメージの持ち主・送り元が違うとはいえ、内容はほぼ同一であろう。
顔を見合わせた結標もまた、その表情は唖然としたものであった。

571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:31:51.46 ID:A3y7G+xXo

土御門「……」

天界の門の開放、迫る天の軍勢降臨の時。
ネロとダンテを信じ、同意した結果がこれか。

いや、この言い回しは語弊があるか。
別に土御門は、彼らを信じたことを後悔しているわけではない。

むしろより―――彼らへの信頼を強めていた。
そしてより―――彼らのその『流れの上』の立ち位置と視点に驚かされていた。

ネロが任せとけと言うのだから、
てっきりスパーダの一族が天界関連の問題にも着手してくれるとは思っていたが、
そんなことは無い、学園都市を守るのは自分達自身であったのである。

このイメージに付加されてきた策―――天界の攻撃から本物の学園都市を保護する計画。

虚数学区を実体化させ殻とする、なんて悪い冗談・戯言に聞えてしまう内容だが、
彼らが精査し組み立てたこの仕様を見る限り、決して不可能な話しでもない。
各人材を適切に配置すれば充分に実現可能なものであるのだ。


土御門「……」

具体的にこの状況へとなることを、ダンテやネロが最初から予期していたか、
いいや、それはまず考えられない。
まずこの案の出所は垣根帝督であり、直接の接点があるとは到底思えない。


つまりはこれもまた、彼らにとっては―――『何となく』、『気まぐれ』が引き寄せた展開である。

572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:35:11.70 ID:A3y7G+xXo

ふと脳裏を過ぎる、それらのネロの言霊。
篭められたる意味は決して『無責任に流れに身を任せろ』なんかではない、
『己と直感を信じて進路を定めろ』というもの。

土御門「……」

再度、その単純ながら至難である行動原理の在り方を実感させられた。

一切妥協しない。
どんな恐怖にも屈しない。
何があっても絶対に止まらない。

逆境の中でそれらを貫くのはまさに至難。
しかし、逆境に屈せずに進み続けていれば、
僅かずつでも確かに可能性が積みあがっていき―――その可能性の山がこうして新たな可能性を引き寄せてくれるのだ。


それはそれは、可能性を積み上げて別の可能性を手に入れ、それを積み上げてまた―――という、
きわめて長く険しい綱渡り。
デュマーリ島で散った者達のように、途上で脱落してしまう可能性も大いにあるであろう。

しかし脱落したからといって、それまでの行いが無駄になるわけではない。


手に入れた可能性は仲間に引き継がれてゆくのだから。

そう、今の己達のように。

                      クソッタレ
――――――麦野沈利を筆頭とした亡き『仲間』達、彼らが築いた可能性の山の上に立っているからこそ、


こうして学園都市に生きて帰還することができ、学園都市を守るために戦える。
土御門舞夏と、彼女の住まうこの世界を守りきれる可能性を捕捉できる。


      バカ
そしてあの親友―――上条当麻を引き戻す可能性も必ず―――。

573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:38:24.45 ID:A3y7G+xXo

土御門「……」


結標『―――………………悪くは無い案ね』


そうして結標もまた、己の中である程度の形をもって状況を飲み込んだのか。
唖然とした顔からすぐに切り替え、例の計画についてそう口を開いた。

土御門「滝壺、設計は可能か?」

滝壺『うん、ちょっと待って…………大丈夫、ミサカネットワークに手伝ってもらえれば上手くできそう』

滝壺『でもAIM掌握がミサカネットワーク経由だけだと、すごい量だから少し遅延が出てくるよ』

一方『具体的にはどォいった障害が出る?』

滝壺『例えば、アクセラレータや虚数学区のAIM自体に揺らぎが生じたら、対応処理が遅れて一瞬穴が開くかもしれない』

滝壺『最悪、コンマ数秒くらい』

土御門「……」

コンマ数秒。
普通の人間の感覚からすればごくごく一瞬ではあるが、
異界の戦士達からすれば充分すぎる時間だ。
穴を見つけられたら、本物の学園都市へと一気に雪崩れ込んでくるに間違いないか。

そんな、学園都市が直接戦火に晒されることは何としてでも避けなければならない。

滝壺『でも私が学園都市の真ん中にいけば、直接掌握できるから遅延問題は解消するよ』

土御門「……」

ならば核たる滝壺を危険域の中央に置くのも止むを得ないか。

一方『チッ。仕方ねえな。オマエ達が来るまで穴とやらはこっちで何とか誤魔化してやる』

土御門「頼む。こちらはもうすぐ離陸する。二時間以内にはそちらに着くだろう」

一方『おゥ』

574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:41:26.78 ID:A3y7G+xXo

土御門「それとだな、念には念をいれて外部から常時モニターするエンジニアも欲しい」

土御門「設備と一緒に確保できるか?」

エツァリ『ここは第一学区ですし、アレイスターのものもありますし設備はなんとかなるでしょう』

エツァリ『エンジニアは芳川さんなどは?確かラストオーダーと一緒におられるのでしょう?適任かと』

土御門『妥当だな。頼んだぞアクセラレータ』


一方『…………』

と、そこで急にアクセラレータが押し黙ってしまった。
音声だけでも充分にわかくらいに重く言葉を詰まらせて。

土御門『……アクセラレータ、言っておくが―――』

一方『―――わかってる。そィつはさっき海原にも言われた』

と一転、今度はやや早口で土御門の声を先回りして遮った。
そう、一方通行たる人物を知っている者ならば、
すぐにピンと来る彼の『個人的な問題』。

滝壺『?』

きょとんとしている滝壺を除き、
この会合に参加している者達は皆揃って、含みのある沈黙と相槌を発した。


一方『……あァ。わかってンよ』

575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:43:50.15 ID:A3y7G+xXo

エツァリ『…………さて、それでは、まず実体化はあとどれくらいで?』

滝壺『え?あ、うん、とりあえずあと三分くらいで、一応の形で実体化できるかな』

滝壺『細かいところはその後に加えていくよ。それで完成に固められるのは30分くらいかな』

土御門「よし」

これはかなり良い話しだ。
今や天の軍勢が降臨するかという時なのだから、すぐに実体化できるに越した事は無い。

と、そう話を詰め合わせていたところ。

少し席を外していた米軍将校が再び戻って来、身振り手振りで離陸する旨を告げてきた。
聞いて土御門は、結標と頷き合わせては座席に座り。

土御門「滝壺、この馬鹿騒ぎしてる連中に離陸すると伝えろ。あと黙れともだ」

滝壺『了解』

するとAIMのネットワークを介して彼女の指示の声が伝わったのだろう、
機内のざわめきがみるみる沈み、変わらぬエンジンの爆音独奏へと戻る。
その中、滝壺自身は機の中を小走りで駆け、機の中ほどの己の座席へと戻っていった。

エツァリ『こちらに到着するのは?』

土御門「学園都市領空に到達するのは約100分後だ」

エツァリ『わかりました。では、快適な空の旅を祈ります』

土御門「ああ。本当に快適であって欲しいぜよ」

そうして土御門もベルトをしっかりと止め、
徐々に振動を増す機体へと身を委ねた。

一際大きく唸りをあげるエンジン、
その咆哮の音程は、強まる振動と共に徐々に高くなりつつあった。

576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:45:32.50 ID:A3y7G+xXo

その頃、同じく機の一画では。

御坂「―――ねえ、何があったの?」

回復したミサカネットワークを介して、
御坂が妹達からの状況説明を聞こうとしていた。

『……おお』

『……ううん』

『……あー……』

『……本当にこういう気持ちの時はどうすればいいのでしょう。すごくザワザワして気持ち悪いんです』

しかし学園都市で何があったか、
それを問うと妹達は皆口篭り、思わせぶりな声を漏らすばかり。

御坂「ちょ、ちょっと何よ、はっきり言いなさいよ」

『では……先に言っておきますがどうか落ち着いて聞いて下さい。ミサカ達も実は今、頑張ってパニックを抑えている最中なんですから』

ただそれでも最終的には、『長女』たるの命令には逆らえず。

御坂「―――パニック?」


『はい、ぶっちゃけて言いますと――――――』


妹達は学園都市にて起こった事をありのまま―――告げた。


御坂「――――――――――――は―――当麻―――が―――?」


血の気が引く、とはまさに今の彼女の表情変化の事を言うのであろう。
耳の通信機からの声に、御坂美琴の思考は瞬間完全に止まってしまった。




暗いグレーに塗装された大きな機体は、凄まじい出力のエンジンを高鳴らせて。
そんな彼女と他100余りの少年少女を載せてゆっくりと滑走路に進入。

そして離陸許可を受けたのち、みるみる加速して。
高温ジェットの光の尾を引き空を引き裂いていった。

日中であるにも関わらず依然、不気味に闇に淀んでいるその空を。


―――

577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:46:48.95 ID:A3y7G+xXo
―――


学園都市、第一学区。
『窓の無いビル』と呼ばれていた、今や壁が崩壊しているその建物にて。

ステイル『さて、僕は外に出て様子を見てくる』

アグニ『我も逝こう』

土御門達との打ち合わせを一先ず終えて、それぞれが動き出した。
ステイルは『神々しく』白み始めている空を伺いながら、
同時に腰を上げたアグニと共に外へと歩んでいく。

イフリート『我はとりあえずこやつと共にここに居よう』

炎の魔人はそのまま、まずはベオウルフの見張りを続ける事とし。

エツァリ「自分はまずこの施設の設備を見てみます」

エツァリもそう口しながら周囲を見渡して、そして。

エツァリ「あなたは、わかっていますね?」

一方『……』

一方通行へ向けてさりげなく、
それでいながら強く戒めるかのような声色でそう放った。


一方『………………あァ』


何のことか、それはわかっているとも。

大仕事の前に、円滑な作業の障害になりかねない個人的問題を片付けておけ、
つまり―――打ち止めに面と向かって会えということだ。

578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:47:50.23 ID:A3y7G+xXo

怖いか。

それはもちろんだ。
彼女に会うことは怖い。
彼女の本当の言葉を聞くのは怖い。

しかしもう逃げることは許されない。


一方『あァ、ンなこたァわかってンよ』


そして先送りにすることなんて、今の己自身が許さない。

すぅっと一度大きく息を吸い。
彼は目を瞑り、己が感覚を研ぎ澄まして彼女の魂の位置を探っていく。


一方『はッ…………』

すると案外、彼女は近くにいた。
第一学区の地下深くではなく地上、それもここから300m足らずの目と鼻の先にだ。

大悪魔が三体も密集しているせいで近づけないのだろうか、
ちょうど圧が急激に濃くなる範囲のすぐ外のところで、他二人の人間と共に留まっていた。
一人は芳川、もう一人はどうやら先ほど保護した『花畑』の少女か。

三人は、あたかもこちらを待っているかのようにじっと動かずにいた。


一方『……来ィってか』


それもまあ当然なのかもしれない。
AIMごと掌握し、あれだけミサカネットワークを力ずくで弄ったら、
こちらの『色々な事』が妹達に筒抜けになっていてもおかしくない。

それこそこちらが今、どんな事を考えているのかも。


そうして一方通行は再度、
己を鼓舞するように大きく息を吸っては吐き。


彼女のもとへと『飛んだ』。

579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:48:46.00 ID:A3y7G+xXo

「―――ひゃわ!!」

その先でまず耳にしたのは、
そんなやや間抜けな少女の声だった。

一方『……』

そこは薄暗い、施設と施設間の壁に挟まれた路地。
やはり同行していたのはあの花畑の少女と芳川だった。

こちらの突然の出現で驚いたのだろう、少女は壁にびたりと張り付き、
かたや地面に座していた芳川は、少々目を丸くしていたも特に驚いてはおらず。

そして芳川の腕の中、毛布に包まった―――幼い少女に至っては。

まるで、いや、予めこちらの出現する場所がわかっていたのであろう、
その大きくて可愛らしい目は一切揺らぎ無く彼へと向けられていた。


一方『………………あッ…………』


透き通る瞳。
そのあまりの澄み渡り具合に瞬間、声が出なくなってしまった。
呼吸、鼓動も止まってしまったのような感覚。


一方『………………』


聞きたい事がある。
大事な大事な、今までずっと聞きたかったことがある。
しかし。

それが喉まで来ているのに言葉が出てこなかった。

580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:50:02.93 ID:A3y7G+xXo

ならば。

声が出なければ、せめて体で示そう。


一方『…………』

そこで一歩、また一歩と前へと踏み出し始める一方通行の足。
地面を踏みしめるたびに闇が擦れて赤き火花が散り、
その重圧で周囲が小刻みに揺れる。

芳川、その腕の中にいる打ち止めに近づいていくたびに、
止まったような感覚に陥った鼓動と呼吸が、
今度はずくずくと形容し難い振動を伴って加速していく。

そして2mというところにまで達したとき。
彼は静かに跪き―――頭を垂れた。

それが今の彼の精一杯の意思表示。


己が魂の采配を全て貴女に委ねよう、と。

一方『……………………』

その時だった。

彼女が芳川の腕の中から降り立ったのが、
細い足が地面に伸びる形で見えた。

今、どんな顔をしているのかはわからない。
今、どんな目をこちらに向けているのかわからない。

だがひたり、ひたりと小さな足が着実にこちらに向かってきて。

手を伸ばせばすぐに届く位置、
僅か30cmのところまで歩み寄ってきて。

そこで彼女の声が発された。


打ち止め「あなたが―――……『見えるよ』って……ミサカはミサカは………………」


穏やかで、幼くて、一方で。


打ち止め「―――…………あなたがそう求めるなら―――ミサカも『裁き』をはじめる」


幼い少女のものとは思えないほどに鋭い声色で。

581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:51:10.95 ID:A3y7G+xXo


一方『……』

ついに始まった。
ここからは聞くべきだった言葉。
聞かなければならなかった言葉。


打ち止め「そうだよ―――――――――――――――ミサカは、あなたに怒り続けてる」


今まで逃げ続けてきた―――

一方『…………』



打ち止め「ミサカは、あなたが―――――――――憎い」



初めて耳にする、彼女の『本音の本音』。



打ち止め「あなたに一万回分―――同じ事をしてやりたい」


一方『………………………………』


打ち止め「―――でもね。困ったことにミサカは、あなたのことを―――これっぽっちも嫌いになれないの」


打ち止め「だってあなたは何度も―――ミサカを守ろうとしたから」


一方『…………』

582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:52:49.44 ID:A3y7G+xXo

それは何の捻りもない、幼く単純な言葉。
だがそれ故に、ありのままの形で彼女の心の内を運んでくる。

打ち止め「ミサカ達を一万回殺した『あなた』のことは憎い―――」


衝撃的で、刺激的で。
残酷で、荒削りで。


打ち止め「―――でも、ミサカを何回も守ってくれた『あなた』のことは、ミサカは―――」


情緒の欠片も無くて。



打ち止め「―――――――――大好き」



どこまでも透き通って明確で。

打ち止め「……ねえ、ミサカはどうすれば良いのかな?」

そして容赦なく―――核心を突く。



打ち止め「『どれ』がミサカの本当の気持ちなのかな?」



打ち止め「―――あなたがミサカだったら―――どうするの?」



一方『………………………………』

583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:54:31.34 ID:A3y7G+xXo

どうするか。

一方通行『……』

己の場合、憎くて憎くてたまらない存在と言えば―――アレイスター=クロウリーだ。

何回殺そうが絶対に気が晴れそうも無い、どれだけ憎んでも憎み足りない相手。

打ち止めが問うのは、
もしあの男が―――打ち止めと同じくらいに己にとって重要なものであったら、ということ。

普通に考えて、そんな感情が肩を並べることなどまず有り得ないであろうか。
愛情が憎しみに変貌することはあっても、それら二つが同化することなく同居するなんてことは。

だが現に打ち止めの中には、そんな二つの感情がしっかり分化したまま同居しているのだ。

一方『………………』

つまりこの問いの本質は『選択』。


―――滾る憤怒に身を委ねるか、それとも。

―――憤怒に耐え、かけがえのない愛情を守るか、というもの―――であるが。

この問題は、今の一方通行にとっては――――――愚問に等しかった。


一方『………………………………』


これについての答えは、少し前に己の中で既に導き出されたではないか。

もう、己の本心から目は背けないと。
もう、苦悩することを恐れないと。
もう、苛まれることも恐れないと。


一方『俺は…………』



もう―――全てを投げ出して―――。



一方『………………「逃げない」』



―――『憤怒』にだけ身を委ねることなんてしない、と。

584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:56:03.42 ID:A3y7G+xXo

己の本心を認められなくて。
己を見失って。
考えるのをやめて。
苦悩に抗うことをやめて。

そして『憤怒』だけを選び『憤怒』だけになったとき、どうなってしまうか。

それは先ほどこの身をもって証明されたではないか。


己は打ち止めのもとから離れ、全てを投げ出して、灼熱の『憤怒』に焼かれて灰になりかけた。


一方『俺は―――』


そこで馬鹿で臆病者だった己はやっと気付いたばかりではないか。
『ある女』のおかげで覚悟を決めたばかりではないか。


一方『―――選択はしない。全て受け入れる』


そう。


その矛先が例え、あのアレイスターであろうが。
『憤怒』と『愛情』を天秤になど絶対にかけない。

己の全てを受け入れ、全てを掌握し、全てを支配してやる、と。

585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:57:00.83 ID:A3y7G+xXo

すると。
頭上から、あの普段通りのけたけたと快活な笑いが毀れて。


打ち止め「あなたって、欲張りさんになったんだね」


打ち止め「でも今のあなたは―――今まで一番好きな『あなた』かもって」


一方『―――っ…………』

鋭さが消え、今度は母性さえも感じさせるような温もりに満ちた声。
そしてふわりと。

一方通行は、己が頭に小さな手が置かれる感触を覚えて。

打ち止め「うぅん、それならミサカも欲張って、都合よく『間』を取っちゃおうかな」

打ち止め「決めたっこうするっ―――」

放たれた『判決』の言葉をその身に刻み込んだ。



打ち止め「あなたは『今後一生』―――ミサカ達の望みどおりにすること!」



一方『…………』

すなわち傀儡と成ること、それが科せられる刑。
この身この魂の未来は、まるごと彼女の所有物。
生きるも死ぬも全て言いなりの『終身刑』―――


そう、『終身刑』。


一方『―――……ありがとう』


つまり―――『生として存在すること』の承認。

彼女の判決はまさしく、己の存在を拒絶するどころか、
一先ず生きていて良いと認めてくれたのだ。
それも『今後一生』、とは、どれだけ長く刑に服するであろうか。
それだけ長く生きても良いのだろうか。

そんな彼女の言葉が何よりも嬉しくて、その慈悲が何よりも有り難くて。


一方『……………………ありがとう……ラストオーダー』


一方通行はそう再度呟いて、更に深くその頭を下げた。

586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 05:59:00.38 ID:A3y7G+xXo

すると。


打ち止め「む、……顔を上げてミサカを見なさい!って、ミサカはミサカは第一の命令をしてみる!!」


仰々しく更に低くなる一方通行に対し、早速放たれる命令。
声を受けてゆっくりと彼が面を上げると。

幼い少女は楽しげに、そして穏やかに微笑みを向けてきて。


打ち止め「つづいて第二の命令!って、ミサカはミサカはこれでもかとアピールしてみる!」


それだけ言うと両手を大きく広げてみせた。
第二の命令の内容、それは言葉では示されていなかったが、
その仕草で充分把握できるもの。

両手を広げ、じっと待つ姿勢


一方『………………………………』


つまりは抱きしめろということだ。

そうすぐにわかる。
そう、すぐにわかるも、一方通行はその第二の命令に従えずにいた。
原因は恥ずかしい、そもそも柄じゃない、そんな人並みの普通の感情も含まれていたが。


何よりも大きいのは―――全て闇で形成されているこの今の己の体が信用できなかったから、だ。

587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 06:01:21.30 ID:A3y7G+xXo

とてつもなく破壊的、で恐ろしく容赦の無い力の塊で、
彼女に触れることはどうしても抵抗が生じてしまう。

もちろんしっかりと、力は隅々まで意識を巡らして制御統率している。
だが得て時間が短い体と力、それでも万が一が考えられる。

一方『…………』

その万が一で、
打ち止めを傷つけてしまう光景が脳裏を過ぎってしまう。

と、そう彼が手を伸ばせずにいたところ。


えい、っと―――打ち止めの方から飛びついてきた。


そして彼の胸にぎゅっと抱きついて。


打ち止め「―――怖がらないで。今のあなたなら大丈夫」


一方『……』

それはさながら呪文のような言葉であった。
声と共に胸に覚える温もりに吸い寄せられ、自然と腕が動き。

彼女の背へと回され―――そして触れた瞬間。


―――すぅっと。


一方『……』

全身を覆っていた闇がみるみる退いていった。

588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 06:03:15.75 ID:A3y7G+xXo

火花散らしていた翼が、まるで休めるかのように折りたたまれ、
指も腕も、顔も髪も、全てが生身だった頃の姿形へと変じていき。

そうして一方通行は強く抱きしめた。
一切怖気ずくことなく、その小さな体をしっかりと固く―――優しく。

一方『……』

ふわりとした癖のある髪が頬を、そして鼻先を撫でていく。
体温と鼓動、そして呼吸が伝わってくる。

それのなんと暖かいことか、なんて心地よいことか。

打ち止め「良くできました。それじゃあ、次は第三の命令―――」

そして彼の胸に顔を埋めながら、少女は第三の命令を発する。


打ち止め「―――絶対に帰ってきて」


一方『――――――……あァ』

それは命令されるまでも無いことだった。


今から赴くのは―――『生きるための戦い』。


一方『必ず帰る』


絶対に勝って帰らなければならない戦い。

打ち止め「そしてまた皆で、黄泉川と、芳川と、ミサカと一緒に暮らすことって、ミサカはミサカはもっと欲張ってみる」

もちろんだとも。

一方『あァ。誓う』

これ以上、この少女の泣き顔なんか見たくはない。
そして。


『この笑顔』をずっと見続けていたいのだから。


胸から顔を少し放して―――満面の笑みを浮べる打ち止め。


そんな彼女の姿が、そこで徐々に薄れていった。
芳川も、あの花畑の少女の姿も。

それは虚数学区が実体化したことによって、一方通行が虚数学区上に『押し上げられている』から―――。

589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 06:06:05.67 ID:A3y7G+xXo

その間も打ち止めはずっと抱きついたまま、
彼を真っ直ぐに見上げていた。

透き通り、その触感も重さも消えても。

最後の最後まで。

一方『……』

そうして完全に学園都市が虚数学区と言う殻に覆われて、
彼女含め三人の姿は完全に消えていた。

胸と腕に温もりを。
そして大気には香りを仄かに残して。

だがその僅かな余韻に浸る時間も、今は与えられなかった。



その時突然―――白みを帯びていた天から轟く―――無数の『ラッパ』の音。



一方『―――』


奏でられるは壮大な聖歌のような―――いや、軍歌的でもある、
圧倒的なパワーと畏敬の念を抱かせるもの。

そして目が眩みそうなほどの、白金色の輝きに染まっていく空。


そう―――遂に『始まった』のである。


一方『……来たか』

実はかなり時間的に危ういものだったらしい。
あのように『始まる』前、30秒も無いうちに実体化できたとは、なんと幸いなことであろうか。

590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [saga]:2011/12/05(月) 06:12:47.89 ID:A3y7G+xXo


一方通行は即座に飛びあがり、付近で最も高いビルの上へと降り立った。


遠くには依然、遥か高く聳えるテメンニグルの塔。
そして眼下に広がるは、文字通り『無人』の学園都市。
正確には、学園都市を覆う強固な『殻』か。

一方『……』

ステイル達はまだこちらに入ってきてはおらず、
ヒューズ=カザキリも実体化していないか。
虚数学区のAIMは全て認識下にあるため、内側にいる存在は全て把握できるのだ。

その知覚で確認できる限り、今ここの界上にいる生命体は己だけ。
ただここもすぐに大賑わいになる。

一方『…………はッ』

見上げたその空、そこから天のものと思われる莫大な圧が染み出してきているのだから。
きっとすぐあの向こうには、大勢の天使とやらが詰め掛けてきているであろう。

その天使共を迎え撃つため、一方通行は戦闘態勢へ―――再度、己が身を闇へと変ずる。
翼を解放し、全身からも闇を滲ませ、莫大な力を豪快に渦巻かす。


そうして臨戦態勢となり、相手の出現を待つだけとなった時。


一方『おィ―――聞えるか?』


彼はふと―――独り声を放った。

それはある一人の女への『一方的な言霊』。


一方『これ以上、オマエのことをしつこく考えはしねェ』


その胸にぽっかりと穴を空け、
心の一部を『持ち逃げ』していったあの『暴君女』であり。

そして今、こうして存在できている己の最大の『恩人』。


そう、あの―――初めて本気で恋してしまった、今は亡き女。


一方『だからよ、最後に一つだけ頼みがあるンだ―――』


もっともっと話し、知り、触れたかった彼女。
それが叶わなかったとしても、せめてこれだけは知ってほしかったのだ。

これだけは―――伝えたかったのだ。



一方『せめてこの戦いの間だけは―――』



その心に共感し、こうして同じ思いで―――生きて戦おうとしている己を。



一方『―――――――――見ていてくれ。なァ、麦野』



―――

591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(青森県) [sage]:2011/12/05(月) 06:13:58.56 ID:A3y7G+xXo
学園都市編はこれにて終了です。
創世と終焉編は10日開始を予定しております。

592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(富山県) [sage]:2011/12/05(月) 06:18:35.53 ID:/ab7/RW7o
盛り上がって参りますた乙

599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(徳島県) [sage]:2011/12/06(火) 00:31:11.87 ID:KdGohkx/0
最初の頃は上条さんはただの悪魔だったのにな・・・



605 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 23:41:02.61 ID:sKzDu1hgo
あ、>>1や。もし明日から投下するのなら読者として一つお願いが。
学園都市編終了までの各登場人物、勢力の現状を簡単でいいので、短くテンプレっぽく書いてはもらえないでしょうか。
過去ログ見るのもいいけど、>>1が現在まとめられる範囲で構いませんので。

606 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 02:50:08.46 ID:CvmXWnF7o
どうぞ。

◎学園都市
 ○ダンテ&ルドラ 
   バージルの問題含めた『筋書き』をぶっ潰すため、最顕現したテメンニグルの塔へ。具体案はいつも通り無し。
 ○レディ+ケルベロス&五和 
   レディはテメンニグルの塔を認識。ケルベロスは瀕死。五和は上条の銃持ち。
 ○一方通行 
   人界の神族化。上条のことで悩むも、ひとまず虚数学区上にて天界の軍勢を迎え撃つためスタンバイ。
 ○アレイスター 
   竜王に徹底的にぶちのめされて気力を喪失したも、ダンテに救われて僅かながら『何か』を抱く。
 ○ステイル&アグニ
   学園都市の見回りののち、天界の軍勢を迎え撃つ予定。
 ○海原
   アレイスターの設備をチェック中。主に、土御門が合流するまでの虚数学区実体化作業の取り纏め役。
 ○ベオウルフ&イフリート
   ベオウルフは協調性ゼロ、アレイスターを見て何かを思案中。イフリートはその見張り兼この場の守護役。
 ○打ち止め
   虚数学区実体化作業の中核を担う。芳川・初春が同行。
   
◎能力者部隊
 学園都市へ帰還途上。学園都市編終了時点で、到着まで約100分。
 ○土御門・結標・滝壺
   虚数学区安定化のため、滝壺を学園都市へ『設置』することがひとまずの目的。結標は一応今も佐天の『世話係り』。
 ○御坂
   上条の現状を知って衝撃。『大砲』の弾はレディ製が尽きたため、米軍に譲ってもらった通常弾。
 ○浜面&絹旗
   課せられている任は変わらず滝壺護衛。
 ○黒子
   満身創痍ながらも他隊員ら(黒夜など)と共に帰還途上。

◎テメンニグルの塔
 ○竜王(上条)
   アレイスターですら『ミカエルの聖剣』は完全再現できないと確認できて安心。
   悠々と三神の力を融合し、全能となることを目論む。その目的は『楽しむこと』。
   ちなみに『上条当麻』は視覚をベオウルフに捧げる形で喪失。

◎天界
 ○ジュベレウス派
   竜王を信用してはいないが損は無し(選択の余地無し)として表面上の同盟を組む。
   四元徳はドーピングで強化状態。
   セフィロトの樹が『何者か』に切断されたこともあって、人間界再掌握は急務であるとし、学園都市掃討は当初の計画通り推し進める。
   また天界内の不穏な空気には薄々気付いてはいるも、戦力差は歴然である(ジュべ派の絶対優勢)と考えひとまず放置。
 ○天界諸派
   ロダンと天津族・アース神族による蜂起が秒読み段階。
   依然、天界内におけるパワーバランスは絶対的不利ではあるも、ロダン〜ダンテの繋がりと立ち上がろうとする人間達の意志を信じて実行に踏み切る。
   その他派閥はいまだ明確な姿勢を示してはいないものの、一部ガブリエルといった『非公式』単独で動く者も存在。

607 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 02:52:48.72 ID:CvmXWnF7o
◎神儀の間
 ○バージル
   人間界の時間軸を力ずくで塞き止めて状態を固定、
   これによって魔界の侵食やセフィロトの樹の喪失から一時的に人間界を保護中。
   次いで『人間界を救う』ため、その身と引き換えにする形で『ある作業』を行う。
 ○ベヨネッタ
   バージルとの仕事を済ませたのち、人間界へ出撃翌予定。
 ○神裂&インデックス
   セフィロトの樹の切断を済ませ、アイゼンに呼び出される形で神儀の間に帰還。
   上条の状態を知ってインデックスは茫然自失。ちなみにインデックスは右腕をアスタロトによって喪失。
 ○アイゼン
   相談役兼神儀の間における作業の取り仕切り役。
 ○ジャンヌ&ローラ
   両者ともそれぞれの件で疲労困憊。一時休息中。

◎魔界
 ○ネロ
   魔剣スパーダをへし折り、『人間』としてダンテ・バージルと同じ『最強』へと昇り立つ。
   プルガトリオの境界にて悪魔掃討中、『流れ』の異変に気付く。
 ○十強
   アスタロト一派は壊滅したも、他の十強達が人間界に大挙しつつあり。

◎その他
 ○トリッシュ
   ネヴァンと共に事務所デビルメイクライに。
   歩行すらままならないほどに衰弱しきっているが、その意識は常にダンテと共にあり。
 ○シルビア
   イギリスへ帰還途上
 ○オッレルス
   デュマーリ島にて核を解析・情報収拾中。
 ○アックア
   キリエをフォルトゥナに。

 ○麦野&アラストル 
   トリグラフと相打ち死亡。
 ○ルシア 
   アリウスの安定化を崩すのと引き換えに死亡、ネロに取り込まれる。

◎世界情勢
   ロシアからヨーロッパにかけての争乱は終息。
   アメリカ、イギリス、日本、フランス、イタリア、スペイン、ロシア、正教・盛教・清教らはひとまず停戦合意。
   イギリスのアシュフォードにて、キャーリサとローマ教皇が面会し合同会議へ。
  

こんなところです。

それと諸事情により投下開始は数日遅れます。
本当にすみません。
その穴埋めにはなりませんが、ついでに整理参考のために使っていた年表を置いていきます。


608 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 02:56:07.39 ID:CvmXWnF7o

―――太古の昔―――

ジュベレウスによる創世。無数の世界が生み出される。
そして気の遠くなるほどの時が経った頃、魔界の一部の者達が創世主の領域を侵犯。
魔界対ジュベレウスに率いられた世界らによる『ファーストハルマゲドン』勃発。

約1500万年前〜
  ジュベレウスが魔界の三神に敗北、魔界の覇権時代が始まる。
  ファーザーロダンが魔界に堕天、更に彼を真似てオーディーンなどの多数の天界の存在が堕天。

人界系神話のモデルとなる『事実』は主にこの期間の出来事。


―――人類(人界最下層の知的種『青銅の種族』)の歴史の始まり―――

50000年前 「青銅の種族」の一部の者達が、人界神に見切りをつけて天界や魔界の力を求め始める。

34000年前 アンブラの魔女とルーメンの賢者が起つ。

30000年前 ミカエルと竜王が共に倒れ人界神族と力場が封印、人間界はその存在を天界に依存することとなり、
      神儀の間やテメンニグルの塔などの神域とセフィロトの樹の原型が作られる。

―――天界による人間界保護時代(アレイスター曰く『オシリスの時代』)の始まり―――

26000年前 魔女王アイゼンの治世。アンブラ魔女の勢力が確固たるものとなる。

25000年前 『常闇ノ皇』率いる悪魔の一団が人間界に侵入、天照ら天津族との戦い。

20000年前 ジュベレウス派、人間界に『世界の目』の存在を確認。
     この時より、その行動指針をジュベレウス復活に定める。
     その一環でセフィロトの樹を改修、保護から支配するためのシステムへ変貌する。

―――現行の有史時代の始まり―――

約5000年前〜 人界神信仰のシュメール文明が成立。
       ゴモラが滅ぼされる(神戮)。

旧約のモデルとなる『事実』は主にここまでの出来事。

2800年前 ギリシャにてホメロスらが人間界の真理に到達しかける。
     ジュべ派は人界神信仰と人間の知性探求の危険性を改めて認識し、
     支配を更に強化するよう各派閥へ命じる。

―――天界信仰の全盛時代の始まり―――
 
2400年前 釈迦を皮切りに、各地で天界の管理強化策が始まる。

2010年前 イエスが生まれる。

約2000年前 魔界による人間界侵略が始まるもスパーダの反逆、魔帝封印、
     表の人間世界への影響はごく僅かなものにとどめて早期終結。

1600年前 アレクサンドリア図書館が破壊され、古き知識が失われる。
     ローマ帝国において十字教が国教化され、人界神信仰は基盤を失い凋落する。

525年前 セレッサ(ベヨネッタ)とジャンヌ生まれる 。
    またセレッサの出自とその処遇に関して(バルドルの策略)、アンブラの魔女とルーメンの賢者の関係が急激に悪化する。

520年前 姉メアリーが生まれる(のちの最大主教ローラの基礎人格)

510年前 妹ローラが生まれる(のちのインデックスの基礎人格)

この頃にアンブラの魔女と天界・ルーメンの賢者の戦争が勃発。

500年前 ジャンヌがセレッサを闇の左目と共に封印。四元徳率いる軍勢により魔女滅亡。

こののち十字教も大動員された魔女狩りが欧州を席巻し、残党は徹底的に掃討される。

400年前 スパーダがフォルトゥナを去る。

120年前 アレイスターとアリウスが生まれる。

609 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 03:00:33.12 ID:CvmXWnF7o

―――ここから激動の一世紀―――

100年前 アレイスターとアリウスが出会う。

80年前 アリウスがウロボロス社を建て、のちの第二次世界大戦で大きく成功する。

アレイスターとローザが出会う。

60年前 イギリスの片田舎でアレイスター・ローザと、「先代右方」に率いられた掃討部隊との戦闘が発生。
    生存者はアレイスターのみ。

40年前 アリウス、デュマーリ島開発に乗り出す。
      同じ頃、アリウスの協力によってアレイスターが学園都市創設。

39年前 バージル・ダンテが生まれる。

3X年前 レディが生まれる。

30年前 スパーダが突然姿を消し、エヴァが双子を庇って悪魔に殺される。

25年前 エリザードの推薦によりローラが最大主教に。

23年前 父の足跡を追ってバージルがフォルトゥナに。ネロが仕込まれる。

22年前 ネロが生まれる。アーカムとバージルが出会う。

21年前 湖底で封印されていたベヨネッタ目覚める。
    テメンニグルの塔におけるダンテとバージル・アーカムの戦い。フォースエッジの封印が解かれる。

18年前 神裂が生まれる。

16年前 上条、土御門、一方通行が生まれる。

15年前 マレット島にてダンテと魔帝の戦い。ネロアンジェロ死亡。魔剣スパーダが覚醒。

14年前 バアル・モデウスら兄弟とダンテの戦い。
    御坂、ステイルが生まれる。

10年前 人工能力者の「生産方法」が確立され、垣根や麦野達ら第一世代の開発が本格化する。
    フィアンマが神の右席右方の座に付く。

5年前 ローラの手によってインデックスが目覚め、禁書目録として必要悪の教会へ。

4年前 魔剣教団教皇サンクトゥスによるフォルトゥナ争乱。

3年前 神裂、ステイル、インデックスがフォルトゥナへ。

2年前 ベヨネッタが四元徳とバルドル、ジュベレウスを倒す。
    イザヴェルグループがウロボロス社に吸収合併、アリウスはヨーロッパのシェアをも完全掌握。

1年前 バージル復活。


恐らく間違っていたり矛盾している点がありますので、あくまで参考までに。


610 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/10(土) 10:34:44.29 ID:gReTbNup0
おー年表わかりやすい!
ネロが仕込まれるにワロタwwww
ネロって兄貴16の時の子供なのか…ww


ダンテ「学園都市か」(創世と終焉編) 1 第一章 『人間と記憶』




posted by JOY at 01:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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