2012年09月06日

ダンテ「学園都市か」(創世と終焉編) 13

148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:15:06.23 ID:swV6Vgfco

―――


たった一つ、この決壊から逃れていた一欠けらの現実があった。


アイゼン『―――何だこれは?!』

ベヨネッタ『!!』


神儀の間である。

双子の激突に備えて、
ベヨネッタが張っておいた世界の目を要とした結界。
それがこの領域とここにいる五人の魔女達の存在を維持したのである。

ただし、この結界が防壁となって濁流を防いだのではない。
結界に内包するという形で世界の目―――『闇の左目』の影響下においていたことが、
ここが飲み込まれるのを『後回し』にしてくれたのだ。


『闇の左目』は、分類上は創造や破壊よりも上位に位置する、
創世主の力に一番近いどころか『オリジナル』の片割れだ。

ゆえにもっとも存在が『重い』のである。
現実の外にあるダンテよりも、だ。

そのために現実を一通り飲み干した濁流は、次はダンテへと向かった。
もちろん彼が飲みこまれれば―――次の番こそベヨネッタだ。

149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:15:36.13 ID:swV6Vgfco

神儀の間の外は何も無くなっていた。
くらく蠢く空も、影の海も消えさり完全なる闇、いいや、闇とすら認識できない。
現実がないために認識が外に届かないのだ。


禁書『だめ!とうまもベオウルフも繋がらない!!』

ジャンヌ『こっちもだ!契約者達の存在が消えた!』


ベヨネッタ『……ッ!』

二人に同じく、彼女もその異常の中にいた。

これまで契約してきた悪魔達の存在が感じられない。
主契約者たるマダム=バタフライすらも消え去ってしまっている。


アイゼン『―――何が起こった?!』


何が起こったのか。


禁書『ね、ネロが…………―――』


この異常事態がはじまる瞬間は、
インデックスが上条の目を通して直に見ていた。


ネロを襲った現象、いや、ネロの姿の『変容』の瞬間である。

変化した姿は、
ダンテ、バージル、ネロに『非常によく似ている』も『別人』であり、
息子や孫達に見受けられる、母から遺伝した人間的おもかげは微塵もない―――『純魔』。

そうした変化した特徴をインデックスから告げられて、
実際に『彼』と面識のあったアイゼンは絶句。
そんな彼女を見て、他四名も確信した。


現れたのは―――スパーダだ、と。

150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:17:26.93 ID:swV6Vgfco

アイゼン『―――どういうことだ?!蘇ったのか?!』


厳密には『蘇った』わけではなかった。


ベヨネッタ『いえ―――』


原因と状況を把握するべく、観測者たる瞳で見通していくベヨネッタ。
見えてくるのは、筋書きという操舵主が消えてしまったことによる流れの暴走だ。

筋書きの目的は、望む未来を作り出すことにあった。
そのためには展開を誘導しつつ、過去と未来が正常に繋がっていくように現実を維持せねばならない。
手を加えていくことから常に流れにストレスが生じるため、それを抑え込む必要もある。

筋書きとはいわば『理性』だったのである。

だが今や消え去った。


―――残ったのはただの『衝動』のみ。

管理者の喪失により箍がはずれ、
抑え込まれ蓄積されてきたストレスが噴出、そうして現実が『壊れた』―――流れが『決壊』したのである。


暴走した理性なき衝動は、いかなる理をも無視する。
過去と未来、生と死、有と無、それらを区別する境界すらも消滅する。


そして衝動たる濁流が宿す唯一の『意味』は、
この衝動の旗印、筋書きの核であった――――――スパーダであり。


こうして決壊した際、最初に粉砕する現実こそ、その核を破壊した―――ネロである。

151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:19:16.71 ID:swV6Vgfco

ベヨネッタ『―――違うわ。生き返ったんじゃない』

スパーダは蘇ったのではない。
死から生へと、過去から未来へと舞い戻ったのではない。
過去も未来も、生と死の境界も全て無視した濁流によって、


―――ネロの存在に『上書き』されたのだ。


これは反動だ。

流れを誘導するにあたり、
筋書きという『理性』が太古から押さえつけてきたストレス、
そして此度の戦いによる圧迫から、

極端な原点回帰とも言えるか、解き放たれた『衝動』はスパーダただそれだけに集中する。

ただし、『それだけ』では現実は存在できない。
律する『理性』がなければ、世は存続しない。


結果、現実は『壊れた』。


ネロがスパーダへと変じた瞬間―――過去も未来も、生と死も、有と無の区別も消え去り、全てが無かったことに。


そして濁流はすべてを舐め尽した。


ここ神儀の間は、ベヨネッタの闇の左目という理に守られているおかげで、
いまだに現実として存在を維持できている。
しかしそれも絶対的ではない。


ベヨネッタ『―――ダンテ……』


さらに深く、もっと先へと濁流を見通していくと、見えてくるのは―――スパーダと相対しているダンテ。

彼が濁流に飲み込まれることがあれば、次は―――ベヨネッタである。

闇の左目が消え去るという事象に含まれるのは、
現実の『飛び地』である神儀の間が消滅するという意味だけではない。

創世主の力という『始点』が『無かったこと』になるのだ。

つまり、創世主によって生み出されたこの世すべてが『無かったこと』になる。

152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:20:30.11 ID:swV6Vgfco

ベヨネッタ『―――チッ!』

これほどの危険になぜ事前に気付けなかったのか。


ベヨネッタは自責の念に駆られかけたも、それは仕方のないことだった。

創世主たる目でも、中身は創世主たる存在ではない。
見えていても、認識が及ばずに気づくことが出来ない。
筋書きを認識できても、その中身まではわかりようがないのだ。

そして状況的にも、彼女には自身を責めている暇など無かった。
ジャンヌもローラも、愛する存在を喪失したインデックスも、
ただ絶望に打ちひしがれていることはなかった。

彼女らはアンブラの魔女。
いついかなる時も美しく、堂々とし、図太く、狡猾で、強く逞しい、最悪にして最高の『アバズレ』。

死してもなお怨念となって敵を貪ろうとする、死んでも敗北を認めない者達である。


口早にアイゼン達へとわかった範囲の事柄を告げるベヨネッタ、
それらを踏まえ、それぞれがいま成すべきことについて思考を展開していく。


最重要目的は世界を元に戻すことだ。
それについてまず考えなければならないのは、それが可能かどうか。


アイゼン『どうだセレッサ?!』

ベヨネッタ『大丈夫!!なんとかなりそう!!』


それについては、良好な答えを見出すことが出来た。

濁流を止めることができれば、流れはまた正常になり全てが元通りだ。

この現象自体には時間軸がないために『中途過程』というものも無い。
(こうして現象として観測できるのは、闇の左目の独立した時間軸を通しているからだ)

ゆえに結果は1か0であり、何とか防ぐことが出来れば0、現象自体を無かったことに。
現象が『はじまる直前の状態』に世界を戻すことが出来る。

ただしそれにも条件がある。


―――『ネロ』に上書きされた『スパーダ』を倒さなければならないのだ。

153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:21:56.17 ID:swV6Vgfco

確かにダンテが敗れてもすぐには終らない。
濁流は次にこちらを飲み込む必要があるため、
ベヨネッタにも応戦のチャンスはある。

ただし、そうなった段階では勝てる望みは皆無としていい。


ダンテが倒れれば、濁流は更に勢いを増して強くなる。
逆に彼女は、マダム=バタフライの力が消えて大きく弱体化。

ベヨネッタ『―――……』

どう足掻いても無理だ。
ここにいる他四人の力を加えても不可能なのは目に見えている。

そのように考えると、ダンテが倒すしか世界を取り戻す道はないのである。


彼が『何』と戦っているのかも含め一通り告げると、
アイゼンが思案気に頷いては、仮面の下で目を細めて問うてきた。

アイゼン『……それでどうなっておる?戦況は?』

ベヨネッタ『…………』

返すは沈黙。
これだけでも充分に答えになっていた。

声にするまでもない。
誰もがわかるはずだ、きわめて厳しい戦いであると。
単純に今ある戦力でも、そしてダンテという男にとって心理的にも。

なぜなら相手はスパーダなのだから。

154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:23:38.44 ID:swV6Vgfco

どう見ても厳しい。

続けての戦いで疲労困憊のダンテに対して、
スパーダは時間軸を無視しているために常に全盛という状態。

しかも戦うにつれダンテの消耗が色濃くなっていくであろうから、
さらに差が広がっていくのも確実。


ジャンヌ『どうにかして向こうにいけないか?私とセレッサが加勢すれば―――』


となれば加勢すべきであろう。
かの戦いは一対一が条件というわけではない、スパーダを葬ればそれでいいのだ。
だがそれについては。


ベヨネッタ『無理よ―――』


アイゼン『あの者共が戦っておる領域は、ダンテの内なる世界。
      外から部外者が乗りこむことは出来ぬ』

理由は、顎先に手を当てたアイゼンがすばやく続けてくれた。
そして。


アイゼン『存在と魂が互換せねば入れぬ。その点、「アレ」はスパーダの形であるために入ることができた、……とな』


そう告げた最後に、『何か』を仄めかせた。

155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:25:03.15 ID:swV6Vgfco


ベヨネッタ『―――ッ……』

ジャンヌ『……なっ……』


その含ませられたところに、二人はすぐに気づいた。

直後、アイゼン含む三者の視線が向かう先は―――インデックス、そしてローラ。

それぞれ訝しげな表情を浮べるその『姉妹』をよそに、
三者は再び視線を交差させては、声無き議論を交わしはじめた。

ジャンヌ『いや……しかし……』

ベヨネッタとジャンヌは眉をしかめ、
一方アイゼンは説得するように頷いて。

そのようにして5秒ばかり立った頃、ここでインデックスとローラも悟った。
先ほど己達に視線が向けられた理由も、この三者の議題についても。


そしてインデックスも、ベヨネッタとジャンヌと同じようにアイゼンへと視線を投げて。


一筋の希望を見たと同時に―――表情を『悲しげ』に陰らせた。


彼女達の議題、それはダンテへと加勢を送り込むための、
あるアンブラ魔女の技についてだった。


このインデックスとローラにまつわる―――とある『禁術』について、だ。


156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:27:38.32 ID:swV6Vgfco

他の者達が表情を曇らせる中、
アイゼンだけはその術の使用について淡々と話を進めていく。

アイゼン『セレッサ。力は残っておるか?』

ベヨネッタ『……ええ。ギリギリだけど足りるわ』

ジャンヌ『私の力も使えるだろう』

その禁術の稼動には莫大な力が必要になるが、
人間界保持の任から解き放たれた今なら、集中すればなんとかなりそうだ。
ただし一発勝負、そしてこの一回で、しばらく歩けないほどに消耗するだろうが。

アイゼンはふむと頷くと、矢継ぎ早に次なる確認を向けてきた。


アイゼン『―――「あやつ」を「引き戻す」ことは可能だな?』


ベヨネッタ『それは……』

確かに『彼』の痕跡は残っている。

人間界の力場を経由して、ダンテの『中』にも移されているため、
『彼』の存在は消え去ってはいない。
そこから引き戻すことは可能だ。


ベヨネッタ『でも器が……』

しかし『彼』の身はもう消失してしまった。
引き戻すことができても、存在を繋ぎ止める依り代がない。


アイゼン『材料ならばここにあるだろう?―――我が血肉ならばなんとか条件に合う。
      少し遠いが、一応血は繋がっておるからな』


だがそこでアイゼンは、
何をわかりきったことを、といった口調で答えた。


そう、皆わかっていた。
わかっていたから眉を顰め、表情を曇らせていたのだ。


この禁術の『受け皿』はアイゼンしかいない。
術を行使すれば、この偉大なる魔女王は――――――死ぬのだと。

157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:28:27.85 ID:swV6Vgfco

誰もこの策を拒絶することはできなかった。
感情面では拒否反応が沸いても、
現実的な思考面ではその逆、これこそ状況を打開し得ると賛成の声。

世界を、未来を取り戻すには他に選択肢はないのである。


アイゼン『――――――それでは準備を』


ぱん、と手を叩いたアイゼンの言葉に、皆従わざるを得なかった。

重い心、暗い沈黙の中でも。
体と思考は優秀な魔女たる技能と力を示し、準備を手際よく進めていく。
アイゼンの死に関することは一切口にしないままに。


アイゼンを中心として、
周囲四人の間に浮かび上がっていく色鮮やかな光の文様。

それらが皆を接続し、
まずインデックスの中から禁術が展開され、
実際に稼動させた経験のあるローラが調整し、

そしてベヨネッタとジャンヌの圧倒的な力が注がれて胎動を始めていく。


ある存在を『召喚』するべく。


―――

158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:28:56.68 ID:swV6Vgfco
―――


内なる世界の戦場、
そこはただ戦うために、『空間』と『足場』が整えられただけの領域。
目にうつる眺望は灰色の虚空に、黒く平らな地面のみ。

だが退屈な場所というわけでもない。
ここで今、最後の決戦が始まろうとしていたのだから。



息子が、その懐かしきモノクル姿を眺めていられてたのも、僅かな間だった。

父は親子の再会を果すべく現れたのではない。
ダンテという障害物をただ壊しに現れただけだ。

成長した息子を前にしても、表情もかえなければ声を発することもなく。
一切の間も置かずに、その目的を遂行しようと動き出す。


瞬間、『父の姿』は噴出した赤黒い光の中に消え。

現れるのは湾曲した大きな角に、
爬虫類、もとい昆虫類を思わせる漆黒の外殻に翼。

そしてフルフェイスの兜のごとき顔に、
まばゆい魔の光を湛えている切れ込み状の目。


史上最強と謳われる魔剣士―――悪魔たるスパーダの姿である。


ダンテ『Hum―――!』

この存在を前に力を出し惜しむ必要などない。

ダンテも再会に浸ることはせず、すぐに今ある全力を解放、真魔人へと変じていく。

バージルとの戦いで酷く消耗はしているも、
なんとか真魔人化できる程度の力が残っていたのは幸いだった。

真魔人状態でなければ、次の瞬間にはリベリオンごと切り捨てられていただろう。



直後―――父子の刃は正面から激突していた。

159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:30:10.42 ID:swV6Vgfco

ダンテ『―――ッ!!』


―――なんという圧力か。

閃光を散らしての刃の押し合い、
刃越しの父から猛烈なプレッシャーが襲い掛かってくる。

それも単に力が強大というだけではない。
焼け付くような感覚の他にも覚えるのは、
背筋がぞくりとし、胸が収縮していく悪寒だ。

ダンテ『ハッ―――』


刃を弾きあう中で彼は嘲り笑い、心の中で呟いた。


――――――ビビッてやがる、と。


ダンテと言う男が『心理的』に圧迫されているのだ。
身を強張らせるほどに―――『恐怖』しているのである。

戦いにおいて恐怖は重要な要素、
緊張と集中を保ってくれる刺激剤であるが、度を越せば重荷にしかならない。

この時ダンテの中に生じた恐怖心の規模は、
まさにその領域に触れつつあった。

160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:31:22.96 ID:swV6Vgfco

互いに一歩も引かぬまま、返した刃による次なる一合。
振り下しが再び交差し、光と力の嵐を迸らせていく。

ダンテ『Si !!』

ここまでの二合で、ダンテはほぼ互いの力関係を把握した。

刃は互角、膂力もほぼ互角といったところ、いや、こちらの方が僅かに上か。
猛烈ではあるも少しも押し負けてはいない。
かなり疲弊していながらもこの腕は十分に渡り合っている。


はっきり言ってしまえば、潜在的にはあらゆる面における出力はこちらが上だった。


先ほどの真魔人化状態のバージルが相手だったら、こうはいかないはずだ。
また己もその時の状態ならば、父の刃を難なく押し退けることができたであろう。


そう、息子の力は―――父を超えている。

消耗している今でも、充分に戦えているのだ。


―――そのはずなのに、息子の精神は極限状態に置かれていた。


ダンテ『―――Hu!!』


落ち着かない緊張が胸の中で騒ぎ、挙動にいちいち影を投げかけ。
刃をぶつけ合うたびに、ひやりと走っていく嫌な感覚―――『恐怖』。

161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:32:49.10 ID:swV6Vgfco

ダンテは今一度、認識させられることとなった。

どれだけの戦いを勝ち、どれだけの苦難を乗り越え、どこまで強くなろうとも、
己は永遠に『スパーダの息子』であるということを。


息子にとって父は道しるべであり生涯の目標であった。
父のように強く、父のように正しく、そして父のように愛と善を守る、
そのようにして常に魂に掲げて息子は戦ってきたのだ。

そうした存在に刃を向けなければならなくなった心境は、
信仰篤い者が神に抗わざるを得なくなった時のものに似ているだろう。


この上なく尊敬し、こよなく愛するがゆえに、いざ相対すると絶対的な巨壁に感じてしまう。


ダンテ『―――Huh-HA!!』

まるで昔に戻っているような感覚だった。
幼い息子と厳格な父という関係からもたらされる、実に懐かしい恐怖心。

まさかまたあの頃のような感覚を体感するとは思っていなかった。
そもそも体感したくも無かった。


しかも目的が、あの日々のような鍛錬ではなく―――相手を殺すという戦いで。


因果を無視した、本物か否かは考えるだけ無駄である存在であっても。
目の前の存在は、ダンテにとっては間違いなく『家族』だった。

162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:33:19.17 ID:swV6Vgfco

だが、この戦いは必要だった。
父をここで殺さなければならないのだ。

バージルとの戦いを終えた際、これでもう血が流される必要は無いと思ったが、
今となっては考えがまた異なっていた。

生と死の狭間、『現実の外』に立つことで見えてくる事実もある。

筋書きを壊しただけでは足りないのだと。

この『スパーダ』という『宿命』が残っている限り、
これを核に、いつか第二の筋書きが形成される可能性がきわめて高いからだ。


ダンテ『Yeeeeah!!!』


やはり宿命の原点と向き合い、粉砕しなければならない―――


―――父を打ち倒してこそ、全ての戦いが完遂されるのだ。


過酷なのは当然、恐怖を覚えるのも当然のこと。
むしろそうだからこそ、この戦いに意味が宿る。

身が恐怖に支配されかけている際の中であっても、
ダンテは自らを律し、負けじと闘志を滾らせていく―――


―――勝てるのだ、そして勝たなければならないのだと。

163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:34:41.25 ID:swV6Vgfco

渾身の力をこめて、ダンテは刃をうち掃った。

すると1mほどであるが、スパーダを押し退けさせることができた。


やはり出力はこちらの方が上なのだ。

となれば何を臆する、攻勢に出るのみである。
ダンテは恐怖を踏み潰すようにして前へと出で、一気に身を押し込んでいく。

ダンテ『―――Ha!!Hu!!』

 ドレッドノート
『 装 甲 』もなんとか健在であるため、多少強引でも大丈夫だ。

目にも止まらぬ連撃をダンテは叩き込んでいく。
円を基調とした流れるような剣捌きで、同時にとてつもなくパワフルに。

まさに『鞭のようなハンマー』を手にしているかのごとき。


ほら親父、俺も強くなっただろう、
バージルはもっと強い俺を相手に勝ったんだぜ、と刃に言霊のおまけを携えて、
猛攻を加えていく。


次第に戦いは、明らかにダンテが攻勢に見えるようになっていた。
スパーダが後に下がりながら刃を受けているのを見たら誰でもそう思うだろう。


だが―――実際はそうとも言い切れない。

164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:36:08.84 ID:swV6Vgfco

父に抱いた恐怖は所詮、子供の視点からのもの。


―――なんてことは、こうして刃を重ねつつあると絶対に思えなくなっていく。

それどころかダンテは得体の知れない強さを父に見始めていた。

派手に火花を散らし激音を奏でていても、まるで手応えがないのだ。
出力は互角以上なのに、油の塊に刃を滑らせているような触感。

事実、傍目に見れば派手に打ち合っているようでも、
実際はダンテの刃が全て撃ち流されている。


そこに示されている事実は、父が息子の剣筋を完全に見切りはじめているということだ。


もちろんダンテだって、単調にリベリオンを振るっているだけではない。

剣撃の中で、身の内のあらゆる力を展開している。

手先に拳銃を出現させては魔弾を放ち、
指の間に爆発性を帯びた小剣を出現させては、退路を断つべく周囲に撒いて起爆。

足には『衝撃鋼』の装具を出現させ、かつ炎獄の王たる業火を纏わせて、
剣を振るいながら足で地を叩き、爆炎を噴き上がらせていく。

単調どころか、これほど飽きさせない戦い方はないだろう。


だがそうした戦いであっても、スパーダは的確にダンテの呼吸を捉えつつあったのだ。


そして待っていた。
その凶刃で、確実な一撃を叩き込める瞬間を。

165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:37:19.27 ID:swV6Vgfco

スパーダの動きに『間』が生じた瞬間を逃さず。
ダンテは瞬時に脇へ飛び込み、すれ違いざまにリベリオンを引いての斬り払い。

その一振りが切り裂いたのは、
すばやく身を落としたスパーダの頭上の空間のみだ。

そんな父へと続けて二撃目。
すれ違い、振り向きざまに、素早く返した刃を振るうダンテ。

しかし。
その一刀をも、身の上に魔剣をかざして打ち流すスパーダ。


そしてこの瞬間、ついにスパーダの凶刃が牙を向く。


ダンテはここで初めて、魔剣士スパーダの『本物の強さ』というものを体感した。


息子の刃を撃ち流す瞬間、父は起用に手首を返しては刃を滑らせ、
カウンターとして同時に斬り上げてきたのである。

こうして言葉で形容すれば、確かに高度な技ではあるも
特筆するほどのことには聞えないだろう。

だが問題はこの点ではなかった。


スパーダはこれを、今の真魔人状態のダンテの刃を相手にこなしたのである。

166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:38:36.83 ID:swV6Vgfco

ダンテ『―――』

信じられない動きだった。

間一髪のところで身を仰け反らせ、鼻先の外殻が掠り飛ばされていく中、
ダンテは衝撃に包まれていた。

真魔人ではなかったら、目を丸くしている頭部が飛んでいただろう。


この速度とパワーの刃には、己やバージルですらも、
来るとわかっていてもこうした『クロスカウンター』は無理だ。

それも直に刃を重ね、撃ち流すと同時に振るうなんて。
加えてこちらの剣圧で勢いが殺されるどころか、さらに刃を加速させてだ。

まるでリベリオンが、カタパルトの役割を果したのではないかというくらいに。


一体どれだけの技術なのか、どんな力の使い方をしているのか。


ダンテはこの瞬間、父と己の間にある『差』を認識した。


さすがと言うべきなのか。
ダンテ、バージル、ネロの始祖たるスパーダは、やはりとんでもない戦闘センスの塊だ。
だがこれら四者の中では、センスについて差はほとんど無いとダンテは考える。

そう、問題はセンスじゃない。


スパーダが他三者を大きく突き放している要素は―――経験と技能である。

167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:40:04.57 ID:swV6Vgfco

ダンテとバージルは40前、ネロは20そこそこ。
対してスパーダの生きた年月といえば天文学的数字になる。

しかもただ長いだけではない、生き様の濃さも凄まじいものだ。
遥か遥か太古の昔、ジュベレウス陣営との空前の超大戦の中でのし上がり、
力をつけてこの主神を下し、その後は魔帝の腹心としてあらゆる世界を侵略しては滅ぼし。

その果てに人間界を知り、反旗を翻し、魔界の軍団を相手にして魔帝を、次いで覇王を打ち負かす。

まさに伝説、まさに筋書きの核になるに相応しき存在。


そうした中で練り上げられた技術は、
もはや何人の追従をも許さぬ境地に達していたのだ。

例えば―――この剣技。


ダンテ『―――Hu!!』

怯んではいられぬと、刃を返しては再び振るうも―――


ダンテ『―――ッ!』


―――またもや刃重ねてのカウンター。


攻撃した間一髪のところでなんとか回避し、
魔弾で牽制し、三度刃を振るうも―――それにもカウンター。

168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:41:24.19 ID:swV6Vgfco

ダンテ『ッ―――おいおいこんなのアリかよ!!』


あまりのことにダンテは思わずそう叫び、
一時撤退とばかりに後方に飛び退いてしまった。

攻撃すれば確実にカウンターを合わせられてくるなんて、
それではもはや自らに刃を振るっているのと変わりない。

そんな相手と一体どうやって戦えば良いのか。

力の出力は互角以上、総合的な『強さ』としても互角と言える。
それなのにこの有様である。


ダンテ『ハッ―――マジで強え』

半ば呆れながら呟くしかないか。
肉を切らせて骨を断つという常套戦法もどう考えても通用しない。

ここまで呼吸を読みきられているのだ。
すぐに読まれて完璧に対応されるのがオチだ。

ではどうするのか、どうやって戦うのか。

もうろくな手が無い、小細工で騙すしかないか、
だがここでダンテは一つ。


彼ならでは、彼のような男でなければ不可能な戦法を思いついた。


技術の差は別の要素で『補う』のではなく―――足りない分を『学んで』埋めてしまえば良い、と。



―――『教師』は目の前にいるのだから。

169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:42:27.40 ID:swV6Vgfco

己と同じ名の魔剣を手に、じわりじわりと近づいてくる魔剣士。

猛烈なプレッシャーだ。
直に剣を交えたからこそ、より彼の恐ろしさと強さが身に染みる。

魔界中の名だたる存在たちの尊敬を集め、
そしてその反動で恐怖され狂気的に憎まれたのも、これでは仕方が無いくらいだ。


ダンテ『ハッ。全くよ。もう少し前に来てくれてたらこんな苦労はしねえのに』

疲弊さえしていなかったら、体力体調が万全ならばもっと堂々と戦えていただろう。
もしかすると難なく勝てていたかもしれない。

だがそんな『もし』なんか考えるだけ無駄だ。


今はこのぼろきれのごとき体で戦うしかない。


だが果たしてそんな体で、首が飛ばされる前に学ぶことができるのか。
そこまで技術を盗めるのか。

そう問われたらダンテはこう返していただろう。


俺を誰だと思ってる?―――誰の息子だと思ってる?


―――できるに決まってるだろ、と。


なあに、これはそんな大それたことじゃあない、
とダンテは自らに心の中で笑いかけた。

小さい頃にさんざんやってきたこと、その日々の続きじゃないか、と。


ダンテ『よし―――ご教示頼むぜ。親父』


―――ただし唯一の違いは、刃に殺意が宿されている点のみである。

170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:43:49.17 ID:swV6Vgfco

ダンテはまず構えから入った。

腰を落ち着かせ、顔の横で手首を返しては、
まっすぐに切っ先を相手へ。

スパーダの構えをそのまま真似て向きあった。


父は特に反応を見せることなく、同じ構えのまま徐々に近づいて来て。
互いに5mほどの位置で停止。


ダンテ『……来いってか。OK』

強烈な圧を放つ『教師』を前に、
ダンテはかるく息を吐いては、意を決して―――前へと踏み出した。

踏み込みは一歩で充分、軽く跳ねればすぐに間合いを詰められる。
ただし即座に機動展開できるよう、
地を削るように足をできるだけ擦り付けたままに。


そのように昔に父から教わった基礎を今一度復習しつつ、ダンテは刃を振るった。

柄を握る手はかるく、それでいながら肉体の延長であるようにしっかりと固定し。
切っ先から腕、そして体軸を一繋がりとして完璧な曲線を描き、

鞭のようにしならせては、集束させた力をインパクトの瞬間に放ち。
そして引き際は濡れた麻布のように重く―――

171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:44:34.57 ID:swV6Vgfco

こうしたイメージは、肉体の制御以上に力の状態に大きく影響する。
力と魂の在り方が、自らを形作っていく神の領域の存在にとっては特にだ。


認識が研ぎ澄まされていくほど、
力の速度、密度、剛性、弾性がより洗練され、はじき出される能力は大きく飛躍するのだ。

時に力の出力が同じ、もしくはそれ以下であっても、
瞬間的な優劣を逆転させてしまうほどにだ。


例えば―――今この瞬間のように。


振るわれた刃。
ダンテにとっては完璧な一太刀も、スパーダにとっては隙だらけ。

袈裟に振り下ろされたリベリオンを、
またもやレールのようにして駆け上がってくるスパーダの刃。


ダンテ『―――Hu!!』

紙一重の回避、と言うには少し至らない。

仰け反ってはなんとか直撃を免れたも、首筋を僅かに削り取られてしまったからだ。

 ドレッドノート
『 装 甲 』が削られる耳障りな音が、体内を響き走っていく。

だが掠った程度ならば大丈夫だ。
バージルの刃のように時の腕輪の作用もなく、
時間はそれなりにかかるも修復が可能だ。

それに技をさらけ出させて盗みとるためには、無茶を押し通すことも必要である。
相手が相手だ、腕一本くらい軽くくれてやる気概で挑まなければならない―――

172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:46:20.42 ID:swV6Vgfco

ダンテ『Ha!!』

首の皮が数枚切り裂かれたところで、ダンテはもう怯みはしない。

直前にバージルの走馬灯で、
かつての日々を鮮明に見てしまったせいでもあるだろう。


今や、この恐怖には逆に懐かしさを抱き、
思い出に浸るように楽しみはじめていた。


もちろん、世界と未来を取り戻すという使命を忘れたわけではない。
そしてこの父を殺さなければならない、という過酷な仕事であることもわかっている。

だがそれ以上に。

どのような状況・状態であれ、
もう二度とないと思っていた『父との時間』というものは、ダンテを虜にしてしまっていた。


彼は夢中になって父から学ぼうとした。
30年の父なき時間を埋めるかのように。


リベリオンを返しての再びの一刀。
父はまたカウンターを重ね、猛烈な刃を放ってくる。
なんとか深手を負うことを避け、攻撃してもカウンター。

父はあらゆる方向、あらゆる形の一振りに合わせて来た。
全て完璧にだ。

そのためにダンテが攻勢であるにもかかわらず、
彼の状況は、火花と激音の中で回避で精一杯というもの―――

173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:46:56.72 ID:swV6Vgfco

だがそれでもただ回避し続けているわけじゃない。

力の速度、固め方、そこからの刃の作り方、
息子は一刀ごとに的確に分析を重ね、
技術として少しずつ吸収しつつあった。

ダンテ『Huh!!』

そして徐々に戦いの表層にも―――その成長が現れてくる。


とあるリベリオンの一刀。
これまで通りならば、そこにまたスパーダの刃が重ねられて、
ダンテの方が回避に死力を尽くさねばならかったのだが、この時は違った。

技術を盗み、作り上げた認識で、ダンテは的確にタイミングを読み。
リベリオンとスパーダの刃が触れた瞬間、手首を捻り、父の刃を跳ねさせようとしたのだ。


それは成功した。
弾かれた魔剣スパーダの刃は、回避行動がいらぬほどに大きく剃れたのだ。

ただし完璧ともいえなかった。


―――手首を返すタイミングが僅かに遅かったようだ。

跳ね上がった魔剣スパーダの切っ先が、リベリオンの鍔にぶち当たり。
その際にダンテの右手人差し指も飛ばされてしまっていた。

174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:47:55.87 ID:swV6Vgfco

しかしそれでも得たものに比べれば安いものだ。

瞬間、ダンテは自らの認識が正しいことを確信する。
そうして飛ばされた指が地に落ちるよりも早く―――次なる一振りを繰り出す。

父はまたもや刃を重ねてきたも、
息子の見極めたタイミングは今度こそ完璧だった。

リベリオンの刃は見事に―――魔剣スパーダを撃ち払い、
そのまま相手へと向かったのだ。

今度こそスパーダが回避する番だった。
一歩後方に飛びさがる父、それを追い同じく一歩踏み込み、
やっと本物の攻勢をしかけていくダンテ。

そのようにして、戦いは新たな局面へと向かっていく。


的確に状況を見たのか、
今度はスパーダも攻撃の手を出してくるようになり、
戦いは正真正銘、互いの刃の応酬となった。


ダンテ『Si―――Ha!!』


しかし足りない。
まだ技能は『対等』ではない。

この速度・力の領域におけるカウンターへの防御は身に着けたも、
カウンターを仕掛ける技術については、今だに我が物にしきれてはいないからだ。

175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:48:48.59 ID:swV6Vgfco

さらなる教えを乞うべく、
息子は刃を振り続けていく。

スパーダと戦うにあたり、
警戒しなければならないのはカウンターだけではない、『全て』だ。

あらゆる戦闘技術、特に剣技が徹底的に練り上げられているのだ。

カウンターのみならず、繰り出されてくる刃すべてが猛烈だった。
とにかく『嫌な』タイミングで、
とことん受けにくい線に刃を叩き込んでくるのだ。

ダンテ『―――Hu!!』

ここまでで、一体何度死にかけたことか。
強烈な刃が首を、脇を、胸を掠っていく。

そのたびにひやりとし、
決して慣れることが出来ない恐怖に背筋を凍らせる。

精神的困窮だけではない、
刃をぶつけているだけで、手から全身に疲労が蓄積。
それに真魔人状態の燃費の悪さもあいまって、力の消耗はさらに加速していく。



しかし消耗に負け意識が緩んでしまったら、一瞬にして終る。

スパーダ相手に慣れが生じることはない。
剣一本とはいえその動きは実にバリエーション豊かで、
常に危険な『新鮮度』に満ちた刃だからだ。

176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:50:09.10 ID:swV6Vgfco

ダンテ『―――』

スパーダから繰り出されてくる突き攻撃。
そこをこれまでのように打ち弾こうとした瞬間―――魔剣スパーダが『伸びた』。

刃が分離、いや―――もともと二枚刃であり、
先側が押し出される形で槍状になるのだ。


そのようにして、射程の拡大とさらなる勢いが上乗せされた強烈な突き。


ダンテ『―――ッ!』

ダンテは間一髪のところで、それを退けることに成功した。
とはいえ完璧な体捌きとはとても言えない、
動きの流れを完全に崩してしまった動作だった。

これには父もきっと大きな『減点』をするだろう。


脇へ飛び退き、大きく姿勢を崩した『生徒』へと、
容赦のない『教師』の追い討ち。

これも『指導』か。

スパーダの刃の嵐という過酷な中、なんとか姿勢の回復を試みるダンテ。

足の位置、体軸、重心、
外れてしまったそれらの繋がりを再び構築しなおす傍ら、
応戦するリベリオンの刃にも意識を渡らせねばならない。

やたらに振り回してはいけない。
切っ先まで集中していなければ、
すぐに『レール』にされて強烈なカウンターがやって来るのだ。

177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:50:59.11 ID:swV6Vgfco

そうした難題をダンテは見事にクリアする。
体勢を回復させ、自身戦闘に立ち直ることに成功。

ダンテ『―――Ha!!』

短く笑いながら、どうだ、と息子は刃に魂の言霊をのせていく。
クリアだ、お次はなんだ、と。

父からは声は返ってこず、刃にもいかなる思念ものってはいない。
しかし返答は確かにあった。
少なくともダンテにはそう感じられた。

スパーダの攻撃パターンがさらに激しくなったからだ。

戦いがさらに加速していく。


ダンテ『YeaH―――Ha!!』


一気に踏み込んでの突き攻撃。
それを弾き上げられても、まるで予め決めていたかのような完璧な体捌きで、
刃を返しては振り下ろす息子。

そんな強烈な斬り下ろしを受け流しつつ、
息子の刃に刃重ねてはレールにして斬り上げてくる父。

それを息子は難なく弾き、また刃を返しては斬り込む―――


超高速の刃の応酬。
しかも『目的』がもはや入れ替わっていそうな―――


―――相手の殺害よりも、互いの速度、反応、技術を競い合うことが目的であるごとき剣舞だ。

178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:52:01.71 ID:swV6Vgfco

事実、ダンテにとってはそれはあながち間違いでもなかった。
目的が入れ替わりはしていないも、それらが並び立ちはしていた。

いいや、むしろ『同一』と呼ぶべきだろう。


父から学び、父を超える―――それこそ、息子にとって宿命を倒すのと同義であると。


父の最期の手ほどきを受けて、ダンテは戦った。
そして学び、成長していった。

一刀ごとに、父から技術の種を盗み―――授かり。
一刀ごとに、それを精査調整しては自らの戦闘体系に組み込み。

そして一刀ごとに正常かどうかを確認していき。


ダンテ『Break!!』


―――我が物にする。


これが授業ならば、ダンテはきわめて優良な生徒だった。
課題を全てクリアし、教示された事柄を全て飲み込み、
そしてそれらを昇華させ、完全に自らのものとしたのだから。

179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:52:56.50 ID:swV6Vgfco

ついにその瞬間が訪れる。


互いに弾き合った刃。
一際強い衝撃のために、両者と数歩分おし退けられてしまう。

その瞬間、二人とも―――そこに生じた間を逃さなかった。


そして双方、相手の次の手が突き攻撃だと読み取るもそのまま―――突き攻撃を繰り出すべく踏み込んだ。


突き攻撃の同時応酬、そう言ってしまえば簡単だろう。
しかしその中身は、正確に形容するならば多くの言葉が必要なほどに複雑だった。
それでも簡単に言うならば、どちらが相手の刃を利用して―――カウンターを決められるか、だ。

ダンテはここに勝負にでた。
今だ手中に収めていない新技能を、やり直しのきかない本番に投じたのだ。



そうして―――この『一戦』は決した。


ダンテ『―――Yeeeeeeah!!』

接触し、重なる魔剣。
互いに火花散らしては擦れ合い、押し合い、すれ違っていく刃。

どちらが相手の刃をレールにして刃を『走らせる』ことに成功したのか。
それは双方の切っ先が何を捕えたかが答えだ。


                        ドレッドノート
抜けた魔剣スパーダ、その切っ先は―――ダンテの『 装 甲 』を貫き、肉を抉っていく。


ただし、突き刺さったのは彼の肩上に過ぎなかった。




一方、リベリオンの切っ先は―――――――――スパーダの胸を貫通した。





息子が『全て』において――――――――――――父を超えた瞬間だった。

180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:54:34.56 ID:swV6Vgfco

       オールカウンター  スタイル
あらゆる攻撃に反撃を重ねる戦闘術という、父の鉄壁の剣術を会得、
さらにこれを父相手に父よりも上手く扱い、技能においても上回ったことを証明した一刀。

その衝撃がこの内なる世界を震わせていく。


父の胸を貫く―――銀の刃。


ダンテ『―――ッ』

柄からの手応えは完璧。
切っ先は確実に魂を捉え―――その存在を打ち砕いていく。

勝利の感覚、魅惑的な破壊の味。
普段ならばダンテにとっての最高の好物たちである。

しかしこの時ばかりは快感には浸れなかった。

何度こなそうとこの触感だけは慣れない。
そして絶対に好きにもなれない。


―――家族を殺める触感だけは。



あまりの衝撃に、ダンテが制動しても、
リベリオンから抜けて前へと吹っ飛んでいくスパーダの身。

そのように血を撒き散らして、無様に跳ね転がっていく父の姿は、
息子にとってはとても見ていられるものではなかった。

181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:55:05.29 ID:swV6Vgfco

ダンテ『…………』

ダンテの消耗はもう限界点に達していた。

最後の一突きでほぼ全力を搾り出してしまったために、
直に魔人化もとけ、それどころか歩くこともできなくなってしまうだろう。

だがそれでも―――30mほど離れた場所で、
地に打ちつけられて転がっている父に比べたら、まだまだ充分に活力が溢れている。

ぎこちなく手をついて起き上がろうとするもかなわぬ父
近くに突き刺さっている魔剣を取ろうにも、体が動かずに手が届かず。


ダンテ『…………』

スパーダを尊敬するものとして、
その意志を受け継ぐものとして、そして息子として。

この姿には心が痛んでしまう。


たとえ濁流が作り上げた産物であっても、
こんな姿は晒したままにさせるわけにはいかない。


とどめを刺さなくては。
安寧を与えなければ。

それが息子としての最後の義務だ。

182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:56:32.31 ID:swV6Vgfco

ダンテは左手をかざしては、その手先に黒き拳銃―――エボニーを出現させて。


ダンテ『もういいだろう、親父』


疲労を滲ませながらも、
穏やかな声でそう呟き、銃口を父へと向けた。


その瞬間、父の赤い目と合い―――ダンテは『見た』。


これは恐らく気のせいだったのだろう。
濁流の産物にそんな思念があるわけはないし、
ここまで刃受けてきても、一度もそういった類の欠片を感じることは無かった。

だがそうだとしても、例え疲労の際の幻想だったとしても、
この時ダンテにとっては確かにそう見えた。
スパーダの異形の顔、人間とは似ても似つかぬも、


そこに―――満足そうな微笑が浮かんでいた、と。


とても懐かしい感覚だった。
むかしむかし、あのような笑みは何度も見た。


父から教わったことをうまくこなすと、よくあんな風に笑って―――褒めてくれたものだ。



ダンテ『―――お疲れさん。休んでくれ』


ダンテもまたあの頃と同じように笑った。
そして心地良さそうに穏やかに言葉を手向けて。


魔弾を解き放った。

183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:57:31.77 ID:swV6Vgfco



しかし―――そんなダンテの最期となるはずだった夢想も、すぐに台無しとなってしまった。



ダンテ『―――おいおい―――なんだってんだ!』


次の瞬間。
放った魔弾、その行く先で起こった事象を目にしては、
うんざりとした声を挙げるしかなかった。


父が『リセット』されつつあったのだ。


ダンテが放った魔弾は―――突然手にされた魔剣スパーダによって弾かれて。

そして父は、さっきまでは身を転がすことも叶わなかったのに、
今や力強くスパーダを手に、地響きを轟かせて立ち上がる始末。



ダンテ『待て待て待てそんなのアリかよ!』


先の一突きは確かに手応えがあった。
確実に殺すことができた一撃だ。

そう、これが父が『普通の状態』ならば倒せていたはずだ。
息子は確かに父を超え、堂々の勝利を収めたのだ。

だが今は普通ではない。


このスパーダは―――濁流の産物である。

184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:58:46.74 ID:swV6Vgfco

ダンテ『―――笑えねえ冗談だぜ!!』

このスパーダは不死身というわけではない。
先の手応えからも、倒すことは可能である。

ただかなり頑丈、回復が異常に速いということ。


回復の速度から、ダンテは素早く倒すに必要な条件を大まかに割り出した。

倒すには連続で二、三回殺すような勢いで攻めなければならないか。
とにかく動かなくなるまで攻撃を加え続ける必要があるようだ、と。


ダンテ『ハハッ!………………ヤバいな……こいつはどうしたもんか……』


どう見繕っても力が足りなかった。

この消耗しきっている身には、そこまでの力はもう残ってはいない。

一体どうするか、だが策を考えている暇も無い。
回復半ばながらも早々に、父がこちらへと向かってきたからだ。


ダンテ『―――!』


体が重い。
そして受けるスパーダの刃はさらに重い。
まだ全快しきっていないのになんという刃か、まさかパワーアップでもしているのか。

否、そうではなかった。

ダンテはすぐに自覚した。
疲労のあまり、己が弱くなっているのだと。

185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 01:59:13.66 ID:swV6Vgfco

ダンテ『―――Ha!』

後ろに下がりながら、何とか父の刃を打ち流していく。
できるのはそれだけだ。
攻勢に出るなんてもう夢の話しでしかない。

猛攻につぐ猛攻。
スパーダの刃がこれまで以上に凶悪に響き、
空間を断ち切っていく。

もはや止められない。


どうすれば勝てるのか、と思考を巡らせても徒労に終わり。
有効な戦法がこんなところでうまく見つかるわけもなく、
また剣技を昇華させるほどの体力と集中力も、もうない。

そのようにしてついに、諦めぬ奮闘もむなしく―――彼は追い詰められしまう。


ダンテ『―――ッ』

弾かれるリベリオン、
そして―――腹部を蹴りこまれ、倒されてしまうダンテ。

この時もまた、スパーダの体捌きは一切の無駄がなかった。
相手にとどめの一撃を与える瞬間になっても、彼の動きはまるで変わらない。

背を地に打ちつけた衝撃を覚えると同時に、ダンテは目にした。



最期の光景であろう―――己に突き立てられるであろう、魔剣スパーダの切っ先を。



186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 02:01:29.12 ID:swV6Vgfco



―――だが最期にはならなかった。


続けてある輝きがダンテの目に入ってきたのだから。


それはもう二度と見られることがないであろうと、
つい先ほど受け入れたばかりの―――『蒼い』光跡だった。


そんな光の筋が、涼やかな金属音を響かせては飛来して来。
魔剣スパーダを横から撃ち弾く。


ダンテ『―――ハッ』

耳を劈く激突音、飛び散る光の粒子の中にて、彼は瞬時に確信した。
見間違えるはずもない、一目で何なのかは判別できる光刃だ。


―――『次元斬』である。


そしてあれほどの代物を放てるのも一人しかいない。


次元斬に続き、ダンテの前に飛び込んでくる大きな影―――


さらなる蒼き刃を振るい、父を押し飛ばしては、悠然と立つ―――蒼き『魔騎士』。



ダンテ『よう……まさか、俺が「二度」もぶっ殺したから化けて出てきたのか?』


その異形の背へと、声を向けるダンテ。
散々な有様ながらも、嬉しさとからかいに満ちた笑みを浮べながら。

対し魔騎士は前を向きながら冷ややかに、『弟』へとこう言った。



『―――違う。無様な弟の醜態に耐えられなかったからだ』



さらりと相変わらずの毒を吐いて。


         死ぬ
『さっさと立て―――寝るにはまだ早い』



―――

187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 02:02:03.71 ID:swV6Vgfco
―――


遡ること少し。


神儀の間に重く響く、禁術の稼動音。
それがその場にいた全員の心を強く締めつけていた。

ベヨネッタとジャンヌは顔を厳しく引き締め、
ローラは感情を表に出さぬように堪えているせいでぎこちない表情。

そしてインデックスはもはや抑えることができず、身を震わせていた。


アイゼン『ふふ―――このみすぼらしい老体がここで役に立つとはな』

そんな四名とは逆に、飄々と愉快気に笑うアイゼン。


アイゼン『さあて、よいな。それでは始めろ』


何食わぬ声でそう命じた。
これからの己の運命などまるで知らぬかのように。
だがそれは表面的にそう見えただけ。

虚空から出現したベヨネッタの黒髪が彼女を包む瞬間。
穏やかながらも、アイゼンは『最期』に相応しい律された佇まいをとり。


アイゼン『―――我が愛しきアンブラの子たちよ―――』


そして良く響く声を紡いだ。


禁書「あッ―――アイゼン様っ―――」

堪えずに声をあげるインデックスには、
魔女王は仮面を脱ぎはらい微笑んだ。


アンブラの母としての優しき眼差しで。
それが、彼女達が見た最期の魔女王の姿。

次の瞬間、黒髪の中にその姿が埋もれ、『材料』とされるべく砕かれて。



ベヨネッタによる『召喚』が始まった。



188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 02:03:07.42 ID:swV6Vgfco


『彼』の『生』を再構築するには充分な材料が揃っていた。

心と魂は、ダンテの中に移されていた分をそっくり喚び出せばいい、
そしてそれらを繋ぎ止める器は―――血の繋がっているとある魔女の血肉で形成できる。


インデックスという存在を生み出した死を覆す禁術に、
アンブラ式の妖しき演舞と艶やかな歌声。


  NOROMI-AMMA PON
『忌まわしき破壊の申し子よ』 


  LONDOH CNILA MONASCI CRO-OD-D! 
『  かの血命の下に  三度 生れ落ち!  』



そこから紡がれた言霊が、遥か虚空の彼方まで届いていき。



 OI PON OD OVOF!
『 砕き、滅せよ! 』



永久の眠りから彼を引き上げ、
構築された器へと、魔女の有無を言わせぬ鎖で繋ぎ止め。



  ZILODARP DO-O-A-IP-ELO LONDOH!
『       始祖たる王を制せ!      』



そしてついに、
契約者たるベヨネッタの喚び声に応じて、蒼き魔騎士が帰還する―――


189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 02:06:40.39 ID:swV6Vgfco

虚空から噴出す、契約者の黒髪の中から―――彼は肉体を有して再顕現を果たした。


今の状況は完全に把握していた。
彼の再構築のもととなったのは、ダンテの中にあった心であるために、
弟の目を通して全てを見、感じていたのだ。

ゆえに行動には一縷の迷いもなかった。
出現した瞬間に抜刀、即座に次元斬を放っては―――弟に迫っていた魔剣を撃ち弾き。

次いで飛び込み、今度は閻魔刀で直に斬りつけては体ごと押し退けては、
弟の前に降り立ち家族と再会。


そうして背後の弟と軽口と皮肉を交じらせながら、じっと父を見据えた。


再会した父の姿に心を震わせているわけではない。
それら息子としての感情はもう充分に浸り終えていた。

弟の中から全てを見ていたのだから、もはや言うことはないのだ。
父への恐怖も、愛情も、心の痛みも、そして最後の手ほどきも、
全てダンテがこなしてくれた。


強さも、意志も――そして家族の愛も、思いでも、充分過ぎるくらいに貰った。


ゆえにもう―――父に用はなかった。


この時の兄の瞳に宿っていたのは、
終止符を打つための純粋な殺意だった。

今こそスパーダの名から離れ、決別し、巣立つときだ。
父をこのクソッタレな鎖から―――解放するときだ。


―――父を眠らせるときだ、と。


剣を突き、ヘラヘラしながら立ち上がる弟へと兄――――――バージルは、鋭く声を飛ばした。


バージル『―――馬鹿笑いは止めろ目障りだ。さっさとケリをつけるぞ』


ダンテ『OK. Bros』


そうして。
ふん、と生意気に含み笑う弟とともに、前へと踏み切り。
父へと向かっていった。


190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 02:07:59.93 ID:swV6Vgfco

片や消耗しきって動けなくなる一歩手前。
片や急ごしらえの肉体に繋がれ、顕現したばかりの『病み上がり』。

兄弟はそうした惨憺たる状態ではあったが、
そんなものは障害にはならなかった。

わだかまりが一切消えた二人は、
そんな不利など吹き飛ばしてしまうほどに―――連携は完璧だったからだ。

幼き頃の純粋な兄弟の距離。



それを取り戻した二人には、もう敵はいない。



並び、そして別れ、ダンテが右に、バージルが左に飛び、
両側から父へと向かっていく。

ダンテ『Ho―――HuhhHa!!』

袈裟の一振り。
それを父に撃ち流されても、即座にくるりと返してはまた同じ機動で袈裟斬り。

父の魔剣を砕かんとばかりにハンマーのように打ちすえていく。
もちろん刃を走らせてのカウンターもさせぬよう、切っ先まで意識を集中させて。

同時に逆方向からも、バージルが閻魔刀を振り抜いていく。

抜刀して斬り掃い、手首返して今度は逆からの切り上げ。

それを父は、一振り目は精密な体捌きで交わし。
二合目は、ダンテに打ちすえられた勢いを利用して魔剣をまわしては、
紙一重で弾く―――


だがその直後のバージルからの凶悪な三撃目には、対応が追いつかなかった。


閻魔刀を掃うと同時に、兄は父の膝を蹴ったのだ。


がくんと落ち込むスパーダの身―――


―――その父の『動き』の切れ目を息子達は見逃さない。

兄は下から斬り上げて、弟は上から振り下ろした。
一本の刃では防げない挟撃である。

191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 02:09:23.68 ID:swV6Vgfco

だがそれは二本ともが、スパーダへと向けられていたらの話だ。

父はこの瞬間、刃を止めるのではなく、そんな状況を壊す方を選んだ。


ダンテ『ッ―――』

振り下ろしかけたというところで、
腹部を蹴りこまれてしまうダンテ。

蹴りの威力自体はそうではなかったも、
後方に押し下げられたためにリベリオンは無様に空を切ってしまう。

そんな弟の醜態を見て兄が一言。


バージル『鈍い!』


ダンテ『うるせえ!―――』


この時、スパーダからは絶好の隙に見えたであろう。
リズムと体勢を崩した弟、しかも消耗しきっているとなれば尚更だ。


しかし―――その逆境をダンテは好機に作り変えた。


ここぞとばかりに振るわれてきた魔剣スパーダに―――



ダンテ『―――これでチャラだろ!』


―――刃を重ねて、走らせてのカウンターを放ったのだ。


火花散らして擦れ合い。
放たれたリベリオンの刃が、父の魔剣持つ前腕から肩先まで
外殻を裂き一筋の溝を刻んでいく。


―――確かに傷は浅かった。

右腕を使用不能にするまでにも至らない。
だが動きを鈍らせるには充分すぎたほどだ。


この瞬間を起点に、スパーダの鉄壁の剣技はついに――――――瓦解した。

192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 02:10:55.86 ID:swV6Vgfco

刃を重ねていく二人。

加速して激しくなっていく猛撃に、
地を蹴り、一端その場から距離を置こうと跳躍するスパーダ。

だが逃しはしない。


バージル『This may be fun!! For you!! Father!!』


ダンテ『Hey! Take it! Dad!!―――Drive!!』


素早く低く構えた兄弟。
並び立って放つは、刃抜き掃っての―――蒼き次元斬と赤き斬撃の猛射。


その砲撃により、体勢を整える間を与えず。

兄弟は一気に距離を詰め、畳み掛けていく。


再びスパーダを挟んでの挟撃。

渾身の力をこめて振るわれた刃たちが、
閃光を散らして魔剣スパーダを打ち弾き―――その主の動き、リズムを完全に砕き。


そしてとうとう―――父の魂を捕える。

193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 02:11:38.24 ID:swV6Vgfco

躊躇いも容赦の欠片もなく。
体勢崩され、無防備をさらけ出した父へと叩きこまれる二つの刃。


バージル『―――Haaaaa!!』


ダンテ『―――Yeeeeah!!』


リベリオンが、後ろから左腕を―――


―――閻魔刀が、前から右腕を斬り飛ばしていく。


さらにそれだけでは止まらずに、
刃返されては、今度はスパーダの胴へと振るわれ。



二つの刃がそれぞれ―――スパーダの胸と背を―――袈裟に斬り裂いた。

194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 02:12:35.82 ID:swV6Vgfco

外殻を割り、肉を裂き、骨を砕いていく息子の魔剣たち。


ただそのまま上半身を切り落とすことはできなかった。

前からの閻魔刀、後ろから切り込まれたリベリオンが、
父の胸の中央にてぶつかってしまったからだ。

ダンテ『ハッ!!』


完璧な連携も、最後の最後に凡なるミスか。
しかしこれが勝利を汚すことはない。


むしろいかにもこの二人らしい『スパイス』へと変じる。


ダンテは短い笑い声をあげると、魔剣を父に刺したまま足を振るい。
まるで地の表面を擦り蹴るような仕草をとった。



すると瞬間―――足先の光から飛び出す―――白い拳銃。



その魔銃が宙を抜け―――バージルの左手に収まったころには、



―――ダンテの左手にも黒い拳銃が出現していた。


195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 02:13:24.94 ID:swV6Vgfco


お互いに何をすればいいのかはもうわかりきっていた。
言葉どころか目を合わせる必要もない。


二人の『合言葉』―――もとい、『決め言葉』は一つだ。


ここからはもう『様式美』である。
これがダンテとバージル、この兄弟の流儀であり幕の引き方。

兄弟は姿勢を低く落とし、
握る柄にそれぞれ圧力をかけては―――父に銃口を向け。


ダンテ『あばよ、最期に会えてよかったぜ―――』



バージル『―――悪いな、親父―――』



まるでそうとは聞えない、
日常の他愛もない会話のごときこ声色で、最期の言葉を手向けて。



―――溜めた圧を解き放っては刃を引き、思いっきり斬り抜いて―――




バージル『――――――俺の息子を返してもらう』





196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 02:14:07.33 ID:swV6Vgfco







『『―――――――――Jack pot―――!!』』







197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 02:14:57.24 ID:swV6Vgfco



戦いは終った。



消滅する一つの宿命。


核を失い霧散する濁流。



『二人』の勝者を乗せたまま、虚無の果てにて『消え去る』――――――『内なる』戦場。





――――――――そして世界は再び、何事もなかったように動き出した。




198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [saga]:2012/05/30(水) 02:17:37.08 ID:swV6Vgfco


生と死、有と無、それら領域の外で行われた、とある父と息子達の決闘。
その戦いは、現実の中に住まう者達にとっては存在しないも等しいものだ。

現実の再稼動の折でも、何が起こったのかを悟る者はいない。
何かが起こっていたということにすら気づかない。

誰一人だ。


しかし―――すでに『知っていた』者ならば、幾人かは存在していた。


神儀の間にいた者たちは当然すべてを見ていたし、
そこにいたインデックスと繋がっている―――上条当麻も。


そしてスパーダが上書きされていた―――ネロも。


上条「……」

ネロ「……」


だが二人は、その周辺については何も言わなかった。

始祖たる英雄への弔いの言葉も。
世界が存続した祝いの声も。


虚無の果てで戦い抜いた、とある兄弟の行方についてもだ。


遺された二人は、学園都市の瓦礫の中に並び立ち。
ただ遠くの空を見つめていた。


上条「…………やっと、か」


ネロ「ああ―――…………」



―――白む東の空、



ネロ「――――――……夜明けだ」



闇が明けるこの世界を。



―――

199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(青森県) [sage]:2012/05/30(水) 02:18:39.03 ID:swV6Vgfco
これにて全ての戦いは終了しました。
次回は金曜に。
あと二回で完結予定です。

201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/30(水) 02:20:04.08 ID:aKKIH4bGo

ついに終わりか…

203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2012/05/30(水) 02:25:01.90 ID:jRXtNG9P0
乙ー
え、二人が消えたなんて嘘だろ・・・

206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/05/30(水) 03:45:42.37 ID:4oPUVgxA0
乙乙乙
消えるなんて反則だチクショウ・・・

212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/05/30(水) 14:17:08.78 ID:QW/+k6EDO
ベヨ姉に召喚されるバージルはこの時の伏線だったのか…

218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/05/30(水) 23:06:01.11 ID:rZYInQ0X0
決め台詞までマジで鳥肌立ちまくりだった・・・・


ダンテ「学園都市か」(創世と終焉編) 14 (完結)




posted by JOY at 20:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 禁書クロスSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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