2012年09月24日

垣根「俺の居場所に…」1

1 :>>1 [sage]:2012/06/23(土) 19:01:01.85 ID:qRavVs4W0


垣根帝督による10月9日以降(原作15巻以降)の再構築ssとなります。
垣根×初春になると思います。
需要があるかは分かりませんが、どうぞよろしくお願いします。


◎諸注意!

・某小説サイトで二週間くらい前から投稿していたのですが、訳あってこちらで投稿させていただく事となりました。
・遅筆な上に、PCが再起不能のためiPhoneからの投稿となります。
・>>1のご都合主義にry


そんなこんなですが、宜しくどうぞ。


2 :>>1 [sage]:2012/06/23(土) 19:02:38.27 ID:qRavVs4W0


序章 ー10月11日。



3 :>>1 [sage]:2012/06/23(土) 19:03:30.69 ID:qRavVs4W0



『―――yjrp悪qw』

『ちくしょう。……テメェ、そういう事か!!テメェの役割は―――ッ!?』

最後に見たのは、振りかざされた拳。
後の事は、記憶にねぇ――――。


――――――――――――――――
―――――――――――――
――――――――――
―――――――
――――




「………………あ?」

府抜けた声と共に、俺は目を覚ました。

辺りを見回す。
真上は白、横も白。

……成る程、ここは病院ってわけか。


「………ッ」

体を起こそうとするが、体が言うことを訊かねえ。

無理矢理体を起こそうとしたら、今度は頭痛が襲ってきやがる。


4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 19:04:38.48 ID:qRavVs4W0

「目を覚ましたようだね?」


病室の出入り口付近から声がした。
見てみりゃ、そいつはそれなりに年をくった医者だった。

………コイツの顔、常識が通用しねぇ。



「早い目覚めだね?
治したのは僕だが、君の状態たるや、それなりに酷いものだったんだよ?」



………あ?

そういえばそうだ。何で俺は病院なんざで寝てたんだ?


「……オイ、何で俺はこんな所にいる?」

かすれ声で医者に尋ねる。
声もまともに出ねえのかよ、クソッタレ。

そしてこの医者は、いきなり疑問の核心をついてきやがった


7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 19:08:57.26 ID:qRavVs4W0

「覚えているだろう?"10月9日"」



………あー、そうだった。

あんの忌々しいクッソ野郎(第一位)と戦って、無様に殺された日だったか。

……あ?
俺はあの日、
確かに 殺 さ れ ― ― ― ?


「オイ!!! 」


勢いで医者に叫んだ。
頭痛が襲う。関係ねぇ。


「なんで俺は生きてる!?確かに!あの日!俺はあのクソ野郎に殺された筈だぞ!!」


「患者を救うのは僕の仕事だからね?『冥土返し』(ヘブンキャンセラー)とまで言われて、やすやすと死ぬのを見過ごす程僕は優しくないんだよ?」

8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 19:09:27.86 ID:qRavVs4W0

……『冥土返し』、聞いた事がある。
どんな患者も治しちまうっつーメルヘン色の強い医者だったか。

それと、こんな噂も聞いた事がある。


『冥土返し』は、学園都市の『裏』を知っている―――――。

―――成る程な。


「…テメェ、『裏』からのご命令で俺を治療しただろ?
成る程なぁ…、ククク……。
…舐めてんじゃ、ねえよ!!!」



無理矢理体を起こし、無理矢理叫ぶ。
何故か込み上げてきた怒りのおかげで、痛みは感じなかった。


「……………」

『冥土返し』は何も喋らねえ。ムカついた。


「なにだんまりしてんだ?アァッ!?随分と舐められたモンだ。
一番殺されたくねえ奴に殺されかけた上に、今度は無駄な助けかよ!?」



俺はただ吠える。謎怒りに身を任せて。
そして、『冥土返し』は俺を制止する。この一言で。


9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 19:10:00.98 ID:qRavVs4W0

「自惚れるなよ?」


………は?
自 惚 れ る ?



どういう意味だよクソ野郎。
そう言いかけたが、『冥土返し』の言葉が先に遮る。


「君は僕に『裏』が君を生かすように仕向けたと言ったが、そうじゃあない。
君はもう、『裏』から必要ないと言われてね?
君を治療したのはあくまで僕の意思なんだよ?」


10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 19:10:42.68 ID:qRavVs4W0

?


………ハッ。そういう…事かよ。

自分で言うが、俺は頭の回転が早い。
どんなに怒りに震えていようが、ある程度の場は掴んできたからな。


……つまり。

俺はその内、殺される。


『冥土返し』の言ってた事はおそらく事実だ。
なんの確証も魂胆もねぇが、直感が俺をそう促す。

『裏』が俺は必要ねぇってんなら、『裏』を知っている俺を生かしておく可能性はゼロに近い。


これは、学園都市の『闇』に潜んでる奴なら誰でも分かる。いわゆる『鉄則』。


簡単に『死』を考えた俺だが、別段沸いてくる感情―――。なんてモノはありはしなかった。


………が、
また『冥土返し』の言葉が俺を遮った。


11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 19:11:28.95 ID:qRavVs4W0

「それで?」


「……あ?」


「君は今死ぬ事でも考えてたみたいだけど、このまま簡単に野垂れ死ぬつもりかい?」



……ホントにムカつく野郎だ。

「何が言いてえんだ。テメェ」


「分からないかね?"生きてみろ"と言ってるんだよ」




その一言を聞いた瞬間、得体の知れない感情が俺を支配する。

出てきたのは、笑み。
とにかく不愉快極まりなかった。

勝手に救って、そして今度は"生きろ"だ?

ふざけんじゃねぇ。
俺は命令される事が大嫌いなんだよ。

俺は殺される。


おそらくコイツはその事を分かっていて俺に生きろと言っている。

心底不愉快だ。冗談じゃねえ。

言葉にして表そうとするが、これまた『冥土返し』は遮りやがる。


拒否権も許さねえってか。ムカつく。


12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 19:12:20.87 ID:qRavVs4W0

「僕は君があと2日で退院できるだけの施しをする。
後は君の自由だからね?
黙って殺されるのもよし。
人生を楽しんでみるのもよし。
まさに自由だね?
そういうのが君は一番好きだろ?」



本当にコイツは全部分かったような口振りで喋ってきやがる。
実際に全部を知っていたとして、とことんムカつく。


その上自由だと?
生きろとかぬかしたのはどこのどいつだよ。



「そうだね? 垣根帝督―――」



こんなクソにまみれた合図で、俺は第二の人生の幕開けってのを迎えちまったらしい。

こん時の俺は、まさに生まれたての赤ん坊の気分。


13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 19:12:56.81 ID:qRavVs4W0




簡単に殺されると思ってたが、このクソ医者の言葉が、表情が、なにか俺を引っ掻かせる。

信念―――とまでは言わねえが、何かしらを揺らがせられたような気分。


俺らしくもねぇ。自分で自分にムカついた。




―――これから先、俺はどうなる?

らしくない疑問は、喜劇(ストーリー)の序章。
モヤモヤする心境は、俺(垣根帝督)そのもの。


現在。10月11日。
垣根帝督と"何か"が交わる時、物語は始まる―――――。



16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 19:19:31.16 ID:4aWufh4e0


これは期待ですわ

17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/06/23(土) 19:22:07.80 ID:3yWwibvV0


今年は垣根ssが多くてうれしいな

20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [ sage]:2012/06/23(土) 22:16:03.66 ID:qRavVs4W0


第一章 ー10月13日。




22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/06/23(土) 22:25:03.58 ID:qRavVs4W0


10月13日。

本当にあのクソ医者は2日で俺を退院させやがった。

つくづく思い知らされたよ。あいつの腕に常識は通用しねえ。

屈辱感をもたらす程に、俺は今五体満足だ。


10月9日の俺は臓器が飛び出てる程のグロい状態だったらしい。反吐が出る。


どうせ殺される俺を五体満足で帰しやがる。

これが一番ムカつくんだ。

23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 22:26:15.43 ID:qRavVs4W0

その上『生きろ』とまで言っておいて、『退院した後は君の自由だからね?』だぁ?


ふざけんじゃねぇ、無責任にも程があんだろ。

だが、これから先の事について考えるような事は何もねぇ。


何故かって言っちまえば、"生きたい"とも"死にたい"とも思っちゃいねえから。



………結局は俺が一番無責任なんじゃねえか?

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 22:26:49.03 ID:qRavVs4W0

いや、考えるのはよそう。俺らしくねぇ。

のらりくらりと家まで歩いている俺を、どうやら神様っつーのは簡単に帰すつもりはないらしい。



「ちょ……っ。離して下さい!支部まで連行しますよ!?」


「『風紀委員』(ジャッジメント)が来たと思ったら、随分と可愛らしい奴が来たもんだな。なぁッ!?ギャハハハハハハハ!!」



……オイオイ。冗談よせよ。

25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 22:27:19.90 ID:qRavVs4W0

何だって帰り道の通路でイカれた小説みてぇな展開繰り広げてんだコイツら?



………そして何より、俺がイラついたのは俺自身にだった。


「俺の帰り道でなにツマんねぇことやってんだ?正直目障りで仕方ねぇんだが」

26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 22:27:46.44 ID:qRavVs4W0

気付けば俺の口からこんな言葉が出てた。

何だってこんな言葉が出てきたんだ?訳が分からねえ。

…確かに俺は、"一般人"と"俺の敵"の区別をハッキリと線引きしている。

一般人には危害は加えねぇし、敵には一切の容赦はしねぇ。
言っちまえば、一般人を気まぐれで助ける事もあるかもしれない。


だが、コイツらはなんだ?

いかにも三下臭しかしねぇクソ馬(スキルアウト)が二匹に、その馬共に震えている雑魚(被害者)。

そして、出で立ちがあまりにも似合わねぇ花飾りの勇者さん(風紀委員)。


……………白けた。

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 22:28:23.61 ID:qRavVs4W0

気まぐれで助ける?バカか。こんな三下共の茶番劇に、何だって第二位(俺)が参加しなきゃなんねぇんだ。


本当に何故啖呵を切ったのかが謎だよ。

自分で自分に呆れてたら、クソ馬共が反応してきやがった。


「オイオイどこのホスト崩れだお前!?ギャハハハハッ!」

「悪りぃけど俺達取り込み中なんだよね?。あぁそうだお兄さん。
アンタ、金持ちそうなスーツ着ちゃってさ。こりゃ金置いてくしかないでしょ?」

「道連れかよッ!?ギャハハ―――ごがッ!!?」


……どうでもいい、息臭え。


28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 22:29:41.73 ID:qRavVs4W0

「て、テメェ!?コイツに何しやがった!?」

「言って分かる脳ミソ持ってねえだろうが三下」


「テンメェ……調子に乗ってんじゃ――がッ!?」


喋んじゃねぇよ。吐き気がする。

………こんな馬共にイラついてやがる。本当にらしくねぇ。
どうしちまったんだ?


29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 22:30:12.69 ID:qRavVs4W0


「オイそこの風紀委員。後始末はテメェでやっとけ。
良かったな。テメェに手柄つくぜ」


適当に気晴らしにすらならない戯言を、花飾りの風紀委員にふった。


「……あっ。………あぁ…!」



………なんだ?
コイツ。今までにないくらい震えてやがる。


しかも俺が話しかけた瞬間にだ。どういった了見だよクソガキ。


……そう思っていられたのも、まぁ長くは続かなかった。


30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 22:30:43.09 ID:qRavVs4W0

………いや待てよ。この花飾り、どっかで見た覚えがあるぞ。


――――――――
―――――
――


『聞こえ、なかったんですか……』

『あの子は、あなたが絶対に見つけられない場所にいる、って言ったんですよ。嘘を言った覚えは……ありません』



……………、思い出した。

俺が第一位に潰される前に、俺が殺しかけた奴だったっけか。


31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 22:31:21.60 ID:qRavVs4W0


「………ハッ」


何でか知らねぇが、思い浮かんだ事がどんどん口から出ていく。


「あの状況であんだけの威勢放ったのは結構だったが、"今の俺"に震えてるんじゃ、意味がねぇな」


意味もなく俺は勝手に毒づいていた。



「…………」

花飾りは喋らねぇ。


ただ一つ、俺のことを見る目は、あの時とまるで変わっちゃいなかった。


32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 22:32:12.29 ID:qRavVs4W0

別段今のコイツに殺意は湧かない。
むしろ俺は感心していた。


一度殺されかけた奴が目の前にいるんだ。普通だったらチビって逃げるだろ。


それにコイツの腕、包帯が巻いてある。

…あの時の傷って訳か。
さぞ傷が痛むだろうにな、本当に大したモンだ。



「………クソッタレ」


最後にそう吐き捨てて、俺はこの場をあとにした。


33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/23(土) 22:32:55.04 ID:qRavVs4W0

…オイ待て。


吐き捨てた後に思うような事じゃねぇが、なんで「クソッタレ」なんだ?

俺は何か求めてたのか?
そもそも花飾りに毒づいてた時点で俺は意味が分からなくなっていた。

何を、誰に求めてたんだ……?


…………本当におかしいぞ俺…。


今日はとことん自分を嫌悪する日らしい。
今の心境はモヤモヤどころじゃねぇ。


……さっさと帰って寝よう。




俺の中で"何か"が変化してるっつーのには、俺はまだ当分気付かないみたいだ。



37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 14:09:37.48 ID:YCZamvxl0


行間一 ー10月14日 1。



38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 14:10:12.42 ID:YCZamvxl0



『ああそうだ、お嬢さん。言い忘れていた事があるけど』

『テメェが最終信号と一緒にいた事は分かってんだよ、クソボケ』


私が最後に見たのは、竜巻を背中に乗せた白い少年と、絵本に出てきそうな六枚の白い羽を背中から生やした"あの人"。

後の事は、記憶にない―――。


――――――――――――――――
―――――――――――――
――――――――――
―――――――
――――



「…ッ!!!」


掛け布団を勢い良くめくりあげる動作と共に、私は目を覚ました。

…最悪の目覚めです………。


目覚まし時計を見て、今日の日時を確認する。
10月14日、5:24。

……昨日は早めに寝たんでしたっけ。


39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 14:10:51.98 ID:YCZamvxl0

9日に右肩を複雑骨折し、長い入院生活か……と落ち込んでたけど、


カエルに良く似たお医者さんが凄い日にちで治してくれたおかげで(と言ってもまだ包帯は巻いてるんですけど…)、12日には早くも退院することができ、昨日の13日には見事に風紀委員(ジャッジメント)の仕事に復帰できて私の気分は凄いハッピー。



……だったのに。

復帰して最初の仕事に任された第7学区の見回りで、何の因縁か"あの人"に会ってしまった。


痛みは消えた筈の右肩が、あの人に殴られたこめかみ付近が、あの人を見た瞬間に疼いてしまう。


40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 14:11:47.31 ID:YCZamvxl0

かといって、今回はあの人が私を傷つけるような事はなかった。

むしろ逆。
私を助けてくれたんです。


スキルアウトの人達に絡まれていた被害者を、
風紀委員としての威厳を守れなかった私を。


分かっています。助けてくれたって事は、確かに。

それでも、私は怯えてしまった。

41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 14:12:18.57 ID:YCZamvxl0

そして、あの人が去り際にポツリと呟いた一言を、これまた何かの因果か私には聞こえてしまった。


『クソッタレ』、と。
どこか寂しそうな顔で。


それを聞いた時、私は何故かこんな感覚を覚えたんです。

『この人とは、またどこかで会うことになる』


それが事実になったとして、私にとって良い物語になるか、悪い物語になるのかは、私、初春飾利はまだ知らない。



44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/24(日) 17:41:29.43 ID:lGebzCJU0


純愛ものになるか
シリアスになるか楽しみにしてる

頑張れ

47 :>>1 [sage]:2012/06/24(日) 21:02:42.50 ID:UszX2A/O0

>>1です。投下しまっす。

>>44さん、癖でシリアス描写が多くなってしまいそうですが、コンセプトは純愛です。

48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:04:02.39 ID:UszX2A/O0


第二章 ー10月14日 2。



49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:08:25.56 ID:UszX2A/O0

「…………」

久しぶりの自室での目覚め。
気分は優れている筈がねぇ。


何せやることがねぇんだから仕方ねぇってモンだ。


『スクール』が9日に壊滅したと聞かされた時点で、俺に残された人間関係なんつーのも断たれたも同然。


携帯のアドレス帳を見た所で、出てくる名前は数が知れている。


……そういえば1人いたな。話つけとかなきゃいけないヤツが。


50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:09:15.07 ID:UszX2A/O0

適当に淹れたコーヒーを飲みながら、アドレス帳からソイツの番号を探す。

仕事以外でコイツに電話するたぁ、初めてだったか。

「………」

なかなか掛からねぇ。ムカつく。


51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:09:45.58 ID:UszX2A/O0

『はいはい私だけど。あなたよく生きてたわね』

「……テメェ、これでも元上司だぞ。
死にかけた上司をいたわる事すらできねぇのか」


『あら?もしかして見舞いとかに期待しちゃったり?あなた随分と可愛い所あるのね』



成る程、余程愉快な死体になりてぇと見える。


52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:10:17.95 ID:UszX2A/O0

『……で?わざわざ私に電話してきた理由を聞こうかしら?』


「……『スクール』の事だ。こちとら 簡単に壊滅した。としか聞かされてないんでね。色々と聞いとく必要があんだよ」


そう。
俺が今電話してる相手は『スクール』での元同僚。


仕事の上では名前なんざ知っとく必要もないため、コイツの事はその能力から『心理定規』(メジャーハート)と呼んでいる。


53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:11:34.06 ID:UszX2A/O0

『あー、私も一応話しときたい事あるし、この後時間あるかしら?適当な場所で落ち合いましょう』


都合が良い。電話よか直接会った方が話し落とす事もねぇだろ。

「決定だ。なるべく早めに連絡よこせ」


心理定規の返事は待たず、俺はそのまま通話を切った。


54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:12:06.38 ID:UszX2A/O0

「こっちこっち?」

手を降って合図するアイツを見つけ、俺は喫茶店に向かった。



………待て。

「お前…なんだって制服なんざ着てやがんだ」


席に座る動作と一緒に俺は心理定規に質問した。


どういう訳か、今心理定規はいつもの派手なドレス姿とは一転して、制服……それも常盤台中学のソレを着ていやがった。


55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:12:36.15 ID:UszX2A/O0

「だって私戸籍上では常盤台なんだもの。それに、学生が制服を着るのは当たり前でしょう?」



……舐めてやがるのかコイツは。


「テメェ、『スクール』が壊滅したとは言え、俺達は腐っても暗部に染まってるんだぞ。
その元暗部の人間が学校だぁ?ふざけんのも大概に――」

言いかけた所で、心理定規の言葉が覆い被さる。


あの医者といいコイツといい、最後まで喋らせろってんだ。


56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:13:10.57 ID:UszX2A/O0

「心配しないで。制服を着ているだけで私常盤台には通ってはいないもの。
あの第五位がいる学校なんて、行った所で生き地獄なだけよ」


「そういう問題じゃねぇ。通ってまいが常盤台の制服着てるだけでどれだけ目立つか分かってんのか?
それに常盤台の関係者に見つかってみろ。
あそこほど校則がうるせぇ場所はないはずだ」


57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:13:42.36 ID:UszX2A/O0

「大丈夫なのよねそれが。私には暗部時代に持っておいた沢山のコネがまだ使えるし、仮に面倒事になってしまえば能力を使ってしまえば問題ないわ」


……それだけで本当にどうにかなるのか?


簡単に尋ねた所、「ご都合主義なのよ、私は」とのこと。

仕事の頃からそうだ。
相変わらずコイツは掴みにくい。


それはコイツが能力を使って俺との距離を縮めているからではない。

第一んな事やったら殺してる。



………何が目的でコイツに会いに来たんだっけか?


58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:14:17.25 ID:UszX2A/O0

「……それで?」

「…あ?」

「ただの雑談をしに来た訳じゃないんでしょう?確か『スクール』についてだったかしら」


そうだ。ソレソレ。
俺は『壊滅したスクール』について情報が欲しかったんだ。


『スクール』の構成員の中で今現在生きてるヤツは俺とコイツだけってのは知っている。

59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:14:55.83 ID:UszX2A/O0

俺が知りたい情報は以下の2つ。

スクールが壊滅してからのエージェントからの連絡。
並びに総括理事会からの何かしらの申告。



総括理事会に直接乗り込むのも悪かねぇが、"用なし"とまで言われた俺が行こうが結果なんざ見えている。

大能力者(レベル4)のコイツが知ってる情報量も、たかが知れている。


それでも、どうしても、俺はその情報ってのを知っておきたかったらしい。


60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/06/24(日) 21:16:04.20 ID:UszX2A/O0

「……意外ね」

1人深く考えていた俺を引っ張りだすように、心理定規は俺に呟いた。


「何がだよ」


「総括理事会があなたを"見捨てた"って事は知ってるんでしょう?
だったら大方、殺される事くらいしか考えていなかったと思ったんだけど」


……………。

言葉が…出てこねぇ。

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:16:58.90 ID:UszX2A/O0

言われてみればそうだ。
俺はいわば命を狙われてもおかしくない立場。

それに抗って生きようなんつー考えは丸っきりなかった。
勿論今だってそうだ。


なのに。
俺は情報を求めている。確かに。

短い、少なくとも長くはないであろう命の俺が、何故?


62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/06/24(日) 21:17:29.31 ID:UszX2A/O0

なんで求めている? なにを求めている?


さっきから頭の中からは疑問詞しか浮かんでこねぇ。

いや、もうひとつあった。


俺の何かしらが変わっているという、確信。
無様に殺されかけ、無様に助けられ、無様に生かされている。


どうやらあのクソ医者に"何か"を揺らがされたってのは本当らしい。


……ムカつく、盛大にムカつく。

俺の表情から怒りと戸惑いの感情を読み取ったのか、心理定規は俺にそれ以上の詮索はしてこなかった。

63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:18:05.59 ID:UszX2A/O0

「ま、らしくない事してるのもあなたらしいしね。深くは気にしないわ」


俺は気を使われてんのか、ムカつくを通り越して自分に呆れちまう。


「一応これだけは言っとくわ。『スクール』が壊滅してから、私は学生としての生活が可能となっている。
これは、超能力者(レベル5)のあなたに言えるかは分からないけど、理事会からの接触は一切ないということ」



そんな事はコイツの格好を見ていりゃ分かる。
俺にそんな"自由"が与えられるかは別として、大能力者くらいのヤツらには不用意なマネはしないっぽいな。

64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:18:56.95 ID:UszX2A/O0

「あなたの知りたい事は全部吐いた事だし、話題を変えましょうか」


ケロッと顔色を変え、コイツは何故か目を輝かしている。
やっぱりコイツは掴みにくい。


「学校にいってないのにわざわざ制服を着ている理由が一応あってね…」

「…いや、聞いてねぇよ」


「私、『風紀委員』に通い始めたのよ」




……………はぁ?


65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:19:26.83 ID:UszX2A/O0

コイツは馬鹿か?
馬鹿なのか?死ぬのか?


ただ呆けている俺など気にせず、心理定規はペラペラと続ける。


「私、こう見えて暗部に入る前はちゃんと風紀委員の一員だったのよ?
だから、復帰と言うのが正しい表現かしら?」



やっぱりコイツは馬鹿だ。

「常盤台の制服に風紀委員…? 面を割るこれ以上とない手段だなコラ」


66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/06/24(日) 21:19:53.67 ID:UszX2A/O0

「そう怒らないでよ。それとも、自由すぎる生活に妬いちゃったり?」


「OK、そんなに望むなら愉快な死体に変えてやるよ」


俺は立ち上がり、両手を握り拳に変えて心理定規の頭を挟む形で拳を置く。


「いたいいたいッ!!」

ただひたすらグリグリ。
随分と丸くなってやしねーか…?俺。


「んだぁ?風紀委員サマがこの程度で根ぇあげてんじゃねえぞ!」

「どんなキャラよあなた!!」



かれこれ3分が立った。俺もよく飽きなかったな。


67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/06/24(日) 21:20:34.04 ID:UszX2A/O0

「で?お前がしたかったのは日常の自慢話だけかよ」


「あー、いや、あなたに提案があってね。
聞いてくれるかしら?」

「聞くだけならな」


「あなたにも風紀委員の仕事手伝って欲しいのよね」



………成る程。
どうやらコイツは本当の死体になりたいらしい。


68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:21:12.94 ID:UszX2A/O0

「オイ、何の真似だ?」

「何の真似でもないわよ。あなたに風紀委員の仕事をやって欲しいの。
これはあなたのためでも―――」


言いかけた所で、俺は再び立ち上がる。

右手を心理定規の首を掴む形にして、首のほんの少し前で寸止めする。


「俺のためだ?随分とキマった冗談だな。
こりゃあ笑えねぇ」

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:22:22.89 ID:UszX2A/O0

現在時刻は12:44。

昼時の喫茶店で広げているこの雰囲気に、一般人共は何だ何だとこっちを見てくる。


「冗談なんかでもないわ。だってあなた、何か生きる理由を探しているみたいなんだもの。
これはあくまでも"協力"。らしくないままのあなたが、一番あなたらしくないから」


70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/06/24(日) 21:22:50.07 ID:UszX2A/O0

………コイツの目。あの花飾りと同じ目だ。

圧倒的な力を振るおうとする俺を前に、その俺を、ただ真っ直ぐ、
強い眼で見つめてくる。



勘にさわる。その目で見るんじゃねぇ。
俺にすら分からない"何か"をテメェには分かるってのか。


71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:24:59.24 ID:UszX2A/O0

「それに……」

それでもこいつは曲がらない。
その言葉にも、強い何かを秘めているような気がした。


「あなたはこれを、"断れない"」


な  に  ?


一見戯言にも聞こえたが、俺は自分の感情に大きな違和感を覚える。

このクソッたれた"提案"を、コイツの言う"協力"を、
「断る」の一言で一蹴できない。


72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:25:26.84 ID:UszX2A/O0

瞬間、俺は学園都市第2位の頭脳をフル回転させる。


答えが出てくるのには、一秒もかからなかった。


「テメェ……能力をッ!!」


「…ええ。私とあなたの心理的距離を縮めさせてもらった。
仕事でもないと、流石のあなたにも隙はいくらでもあったからね」


73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:25:57.38 ID:UszX2A/O0

………やってくれたなこのクソアマ。

どうも俺とコイツの交遊関係は、"頼まれたら断れないくらいの関係"に設定されちまったらしい。

74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/06/24(日) 21:26:32.41 ID:UszX2A/O0

コイツ……何が目的だ?

死体になりてぇって願望だけとなると、流石にコレは凝りすぎてる。


目的を聞き出そうとする前に、心理定規が動いた。


「言わないと本当に分からないみたいね」

心理定規は俯いてそう言った。

75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:27:08.71 ID:UszX2A/O0

今の俺なら分かる。今、コイツは何故か怒ってる。


何故気付かないんだ、と。まさにそう言いたげな表情が、俯いていても伺えた。



「私は、あなたに生きて欲しいのよ……帝督…」


……コイツのこの一言。

俺はコレを聞いた時、心理定規が別の誰かなんじゃねぇかと、マジで錯覚した。


76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:27:42.06 ID:UszX2A/O0

「な…に……?」


俺は聞き返す事しか出来ない。
それも府抜けた声で。


「何度でも言うわ。生きて欲しいの。
あなたは生きることに理由を求めようとするから、私はそれを手助けしようとしてるだけ」



……そんなの頼んでねぇ。
頼まれる覚えもねぇ。

もはや大きな世話を通り越してる。


77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:28:12.80 ID:UszX2A/O0

だがそれは不思議と、心地が良かった。

いつもなら自分にクソッたれてる所だが、何に対してムカつくような事もない。


それが今まで生きている中で、垣根帝督(俺)が一番人間らしい感情になっているかもしれないと言うことに、俺(垣根帝督)はまだ気付いてない。


78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:28:45.72 ID:UszX2A/O0

いつ気付くかも分からない、もしかたら一生気付かないかもしれない。



いつもの調子の俺なら、どんなんだよと一蹴していたのかもしれない。

自分の"感情"を。


79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:29:18.37 ID:UszX2A/O0

「風紀委員って言うのは、生きる理由を求める上では割と上等な手段じゃないかと思うの。
汚れきった手で人を助ける事にも、それなりの意味があるんじゃないか、って」


心理定規は続ける。

俺を説得させてるつもりか?
ハナから能力使っといて回りくどい真似してんじゃねぇ。



それに正直、断る理由はもう無いに等しかった。


80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:29:46.25 ID:UszX2A/O0

コイツの能力が一番の原因だろうが、足掻き続けるのも情けないと思ったから、もう拒もうとは思えなかった。


まぁ、全部を引き受けようとも思っちゃいねぇが。


「オイ」


「何?」


「条件が2つある。
1つ目はさっさとこの能力を解け。
解いた直後に断るなんつー真似はしねぇからよ」


81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/24(日) 21:30:18.06 ID:UszX2A/O0

「……分かったわ。あなたとこの距離のままいるのも気色悪いしね。
…で?2つ目は?」


クスクスと笑いながら聞いてくる。
やっぱりテメェはクソアマだ。


「俺がするのはあくまで"手伝い"だ。間違えても風紀委員に入れようなんざ思うんじゃねぇぞ」



「……安心したわ。ようやくあなたらしくなったわね」


これが本当の第二の人生の幕開けなんじゃねぇかと一瞬思ったが、どうせ能力の影響だろうと俺は気には掛けなかった。


85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/24(日) 23:44:45.03 ID:Ih70SavDO
心理可愛いな



87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2012/06/25(月) 02:57:49.92 ID:Gw7o8hF3o
心理帝春に変更してもいいんだよ?wwww

96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:27:22.71 ID:pNaFgXLC0


第三章 ー10月14日 3


97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:27:51.30 ID:pNaFgXLC0

「オイ、本当に能力解いたんだろうな」


「今ので何度目よその質問。アンタ自分でも気づいてて言ってるでしょ…」


現在時刻は13:29。

俺達は一悶着あった喫茶店を離れ、第七学区内を歩いている。


大方心理定規が所属している支部にでも向かってんだろ。


98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:28:52.30 ID:pNaFgXLC0


「まずは挨拶よ。挨拶」


心理定規は1人呟き、前を歩く。

……まだ1時半だぞ?学生はまだ授業終わってないんじゃねーのか?



「あ、そうそう。ある程度人が集まるまで少し時間あるから、支部内色々回れるわよ」


……必要ねーよ。


99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:29:44.99 ID:pNaFgXLC0

久しぶりの俺のうんざり顔を見てか、心理定規はまたクスクスと笑っていやがる。うざってぇ。


「ほら、着いたわよ」

心理定規が立ち止まり、俺は目についた物を見る。

【柵川中学校】


うん。普通に知らねー。


100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:30:46.79 ID:pNaFgXLC0

「ここよ、ここ」

校内をスーッと歩いて、再び立ち止まる。
1つの部屋の横には、【第一七七支部】と書かれたプレートが貼り付いてあった。



「手続きやなにやら済まさなくていいのかよ」


「あなたそんな事気にするタイプだっけ?大丈夫よ。それこそ常盤台じゃないんだから」


102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:32:14.86 ID:pNaFgXLC0

適当な相槌の後に、心理定規はポケットから取り出した鍵を使って、部屋へと入っていった。


……狭ぇ。

部屋に入って最初の感想がこれだ。
やっぱり俺に常識は通用しねぇ。


103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:33:16.41 ID:pNaFgXLC0

―――そこそこの時間が過ぎた。

俺は退屈にコーヒーを飲み、心理定規はパソコンとにらめっこしている。


「おや、また1人しょっぴきましたの?心理定規さん」

『スクール』時代の"普段"を思わせる雰囲気の部屋の中に1つ。

違う女の声が響いた。


104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:33:57.98 ID:pNaFgXLC0

……何だコイツ。

今ドア開いたか?いいや開いちゃいねぇ。
気付いたら部屋の中にいて、気付いたら声が聞こえてきた。


「白井さん……能力使わないで普通に入ってきてよ…。
それ心臓に悪いんだから」


105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:34:33.72 ID:pNaFgXLC0

白井と呼ばれたこの女。
成程。コイツの能力は『空間移動』(テレポート)か何かか。



「毎度申し訳ありませんわ心理定規さん。
それで……」


……言葉の後に何かこっちをチラ見してきやがった。

喧嘩でも売ってんのか?

106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:35:12.98 ID:pNaFgXLC0

「ああ、コイツ? 犯罪者にしか見えないだろうけど、今回はちょっと違うわ。
助っ人って所かしら」


……分かった。喧嘩を売ってんのはテメェの方だったか。
いいぜ、高く買ってやるよ。


107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:35:46.13 ID:pNaFgXLC0

「助っ人……ですの?」

心理定規を殴ろうと立ち上がろうとした俺を今度はまじまじと見て、白井とかいうのが呟いた。


何だ俺、読心能力にでも目覚めちまったか?

コイツの目。フルで俺を疑ってやがる。


108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:36:15.55 ID:pNaFgXLC0

まぁ無理もねぇか。
強いハネが目立つ茶髪(しかも金に近い)に、ホストみてぇなスーツ姿と来てる。

風紀委員にゃあ一番似合わねえ格好だって事くらいの自覚はある。


「ああ。確かに身だしなみはそぐわねぇがバリバリの風紀委員助っ人だ。
垣根帝督だ。宜しくな」


109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:36:42.58 ID:pNaFgXLC0

疑われる事なんざさんざん慣れている俺は一切気にせず、適当に挨拶した。


仕事柄は自分の名前を滅多に名乗ろうとはしないが、風紀委員のガキに名乗った所で俺が学園都市の第二位ってことがバレる事はない。


どこぞの第三位や第五位みたく、俺の正体は一般には公開されてないからな。


110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:37:22.17 ID:pNaFgXLC0

「まぁコイツの服装とかにはそれなりの理由があるのよ。
腕前だけは確かだから」


オイクソアマ。それでフォローしたつもりか?

それなりの理由ってだけで風紀委員が納得すると思ってんのか?


無駄に追及されんのだけは勘弁だぞ……。

111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:37:52.87 ID:pNaFgXLC0

「まぁまぁそうでしたの!心理定規さんが一目おかれる殿方なら問題ありませんわね」


……この女、本当に常盤台かよ。


詮索してこないのは助かるが、一緒に仕事をやる仲ってーとなると少々心配になってきた。

ちょいとカマかけてみるか。


112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:38:22.53 ID:pNaFgXLC0

「白井だったか?お前、コイツが学校行ってねーの知ってんだろ?」


普段俺は初対面の一般人(特に女性)と話す時は猫を被るが、今は被ろうとしない。

心理定規が五月蝿そうだからな。


「ええ。存じておりますわ。
研究協力のため長期の休学だそうで。
風紀委員に顔を出せてるのですからそろそろ復学しても宜しいですのに……」


良かった。
疑りが浅いだけで普通の考えはできるみてぇだ。

常識が通用しねぇのは俺の能力だけで十分だっての。


113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:39:00.26 ID:pNaFgXLC0

「それにしたってよくも名乗りもしない奴と仕事なんざ出来んな。尊敬するぜ」


仕事をやる上で信頼ってのは第一に気にする事だ。
ある程度の信用を得るために、俺は適度な雑談ムードを醸し出す。



横で心理定規が頬を膨らましてたが気にしねぇ。


114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:39:36.71 ID:pNaFgXLC0


「心理定規さんにも名乗れない理由があるのでしょう。休学の理由にも関係あるかもしれませんし、深い詮索はしませんわ。
日は浅えど、"仲間"としての信頼はあるつもりですから」



白井はそう言って、心理定規に微笑んで見せた。


……何だ。コイツ、それなりに恵まれた環境にいるんじゃねーか。


115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:44:02.26 ID:pNaFgXLC0

「大した仲間意識だ。こりゃあ本当に尊敬したぜ」



10月9日以降の俺は、本当に何かしらが変わったような気がする。

心情が豊かになり、その本心を吐露できる。



ジジイみてぇだな。 笑えてきた。

116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:44:34.28 ID:pNaFgXLC0

「お褒めいただき光栄ですわ垣根さん。ですが仲間意識の事なら、ウチの初春が一番強いんですのよ?」


「それは言えてるわね。彼女も第一七七支部だから、少なくとも会うことにはなるでしょう」



まだキャラの濃そうな奴が来んのかよ…。


117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:45:03.37 ID:pNaFgXLC0
そんな、まんざらでもない俺の感情が壊れるまで、あと30秒。



「そういえば白井さん、今朝は初春さんに会った?」


「ええ。登校時にフラッと会いましたわ。やはり昨日と同じで少し体調が悪そうでしたわね……」


「そう…。やっぱり退院して1日後に復帰っていうのは早すぎたのかしら」


118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:45:30.56 ID:pNaFgXLC0

仲間内の他愛もない雑談ムードが壊れるまで、あと15秒。


「病み上がりってやつか。俺はそいつの代わりって事でいいのか?」


「そういう訳じゃないわ。それにいくらあなたでも、ハッキングの能力じゃ初春さんの足元にも及ばないしね」



心理定規の戯言に軽く毒づこうとした時が、終わりの合図だった―――。


119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/25(月) 20:46:03.15 ID:pNaFgXLC0

「すみませーーん!!遅れちゃいまし―――」

ドアを勢いよく開けて出てきた少女。
俺がコイツの顔を見るのは、これで三度目。



目が会って、そして花飾り(初春飾利)も俺(垣根帝督)も、共に表情を凍らせた。


131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:20:14.76 ID:zthO/UpI0

「えっ――な んで――」

花飾りの目の色は"絶望"。
風紀委員という仕事の場で俺と対面したのが原因。


132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:20:48.30 ID:zthO/UpI0

「…………」

俺の目の色は"憤怒"。

何故コイツがこの支部にいる。

まさか、心理定規は全て分かっていて俺をここに連れてきた―――?



133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:21:28.62 ID:zthO/UpI0

妄想枠が広がり、心理定規に問いかけようとしたが、それは叶わなかった。


「う?い?は?る?? 何でそこで立ち止まってますの?遅れてる事に自覚があるなら、さっさと手を動かして下さいな」


「初春さん、もしかしてコイツの形相のせいで立ち止まっちゃってる?
ごめんなさいね。こんなんでも一応助っ人ってやつなのよ」


134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:22:15.96 ID:zthO/UpI0


これこそ本当に他愛のない仲間内の雑談。

やっぱり読心系の才能あるのかもな。

白井はともかく、心理定規も何も知っちゃいねぇ。


冗談まじりの白井の怒りも、冗談まじりの心理定規からかいも、この花飾りには聞こえちゃいない。


当然俺にも、大して聞こえやしなかった。


135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:23:05.17 ID:zthO/UpI0

現在時刻、15:42。

「…………」


風紀委員第一七七支部の部屋には、沈黙が広がっていた。


事件簿やら何やらをペラペラめくる俺と、パソコンをカタカタと打ち続ける花飾り。


136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:23:41.34 ID:zthO/UpI0

そして、その雰囲気に耐えられないと言わんばかりに繰り広げる心理定規と白井のヒソヒソ話に、当然俺達は気づいていない。



「(なんなんですのアレ?やっぱり初春の様子がおかしいような……)」


「(それはウチのヤツだって一緒よ。あんな雰囲気、"仕事"でも滅多に見なかったわよ……)」


「("仕事"?)」


「(ううん、気にしないで白井さん。
こっちの話)」


137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:24:13.72 ID:zthO/UpI0

それからも数分たち、とうとうこの2人は何かを思い付いたらしく、俺と花飾りに切り出してきた。


「そうですわ!!交流を深めるという面でも、これからの信頼関係を築く土台にするためにも、初春と垣根さんで第七学区の巡回を頼みたいですの!」


「いいわねソレ!なんか2人とも一言も喋ってないし、この機会にどうかしら?」



本当になんなんだコイツら。
…………言葉が出ねぇ。


138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:24:42.72 ID:zthO/UpI0

言葉こそ出さなかったが、考える様なことはいくらでもあった。


俺が花飾りと巡回?何故?

見れば俺とコイツの関係はギクシャクしてるっつー事ぐらいすぐにでも分かる筈。

増して心理定規は俺がどういう人間かを知っている。

俺が他人と馴れ合って仲が良くなるような人間じゃないって事を。


139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:25:16.15 ID:zthO/UpI0

そしてこの花飾りはこの提案をすぐ断らない。何故?

疑ってみたが、聞こえていない訳じゃなさそうだ。

何か言いたそうな、しかし戸惑いを含んだ表情が伺える。


早く言っちまえよ。「イヤです」って。
早く断ってくれよ。このクソな提案を。


140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:25:57.82 ID:zthO/UpI0

そして、コイツの口は動いた。

俺の予想と期待の、正反対な言葉を言うために。


「…いいですね、ソレ。垣根さんさえ良ければ、お願いします」



…………。
前言撤回だ。俺に読心系の才能はねぇ。


コイツの目を見ても、なにも分かりゃしねぇんだから。


141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:26:36.72 ID:zthO/UpI0

訳が分からなかった。


コイツの言葉の意味も、コイツの意思も、
そして、俺の可笑しな思考も。


俺は一瞬、ほんの一瞬、
コイツの言葉に賛同していた。


142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:27:12.15 ID:zthO/UpI0

いや、それはまだ続いているのかもしれない。

それは、否定してないから。否定しないから。


俺が、コイツと同行するということに。


理由なんか……知らねぇ。


143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:27:59.33 ID:zthO/UpI0

少なくとも罪滅ぼしっつー考えは微塵もない。

そもそも"罪"となんざ思っちゃいねぇんだから。


だが、俺は行こうとしている。
コイツと歩こうと、コイツと話してみようと思った。



そして俺は、ようやく重い口を開く。


144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:28:32.02 ID:zthO/UpI0

「オイ、心理定規」


「な、なにかしら?」


「腕章よこせ。どうせ俺の分もあるんだろ? 助っ人だろうが腕章は必要みたいだしな」



馬鹿みたいな吐き台詞だ。
我ながら、似合わねぇと自覚したよ。


145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:29:10.77 ID:zthO/UpI0

現在時刻、16:06。

第七学区の裏路地に、足音が響く。

「………」


巡回を始めて約5分、俺と花飾りは一切口を聞いてない。

146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:29:38.81 ID:zthO/UpI0

何か言おうとしてるのか、このままだんまりを通し続けるのか。

そんな事に興味はなかったが、コイツの考えてる事には興味があった。



ロクな関係も持たない(だろう)最終信号(ラストオーダー)を命懸けで守り、
今度は命を狙った俺の隣を歩いている。

俺が言うのは酷だが、常識的に考えて正気の沙汰を越えている。


147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:30:39.65 ID:zthO/UpI0

「あの……」

俺の耳に届いた花飾りの声は、心なしか震えていた。


「なんだよ」


震えてるクセに、怖いクセに、それでも俺の隣を歩き続ける。

ムカつくとと共に、もはや感心すらしていた。


148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:31:14.12 ID:zthO/UpI0

「あなたは……一体何なんですか?」



………は?

オイオイ、随分と奇抜な質問だな。

本当に感心しちまう。


149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:31:43.08 ID:zthO/UpI0

「どういう意味だよ」

こうとしか返答の仕様がなかった。


悪党と名乗ろうともしたが、一瞬俺の脳裏に白いクソ野郎が浮かんだからすぐさま止めた。

ウゼェんだよ。テメェが俺の脳裏に現れんじゃねぇ。


150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:32:13.00 ID:zthO/UpI0

「そのままの意味です。あなたは誰で、あなたは何がしたいんですか?」


声の震えはもうなかった。

根強く聞いてくるコイツにイラついた俺は、最初に出会った日(10月9日)を引き合いに出す。



「名乗らなかったっけか?"お嬢さん"、
垣根帝督って言うんだけど」


151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:32:47.86 ID:zthO/UpI0

俺はわざとあの日と同じように振る舞う。

コイツはどう反応する?


あの日を引き出した俺を最低だと思うのもいい。

あの日を思いだし、苦痛を表情に残すのもいい。

あの日に俺が残した傷が疼き、痛みに震えるのもいい。


152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:33:18.14 ID:zthO/UpI0

「ああ、そうでしたね。思い出しました。"外道でクソ野郎の垣根さん"」



まさか、こんな言葉が出てくるなんざ思ってもいなかった。

俺はどこまでコイツの肝に驚かされればいい?


153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:33:58.63 ID:zthO/UpI0

外道のクソ野郎。

これも俺が10月9日にコイツに吐いた言葉だった。

ここで俺はようやく気付く。

この花飾り、真正面から俺と向き合うつもりだ。


154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:34:25.77 ID:zthO/UpI0

それこそ何がしたいんだよと心底思う。

ただ俺も引き下がるつもりは毛頭ない。


「そういえばまだ君の名前を聞いてなかったな、お嬢さん」


上等じゃねぇか。


155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:35:09.30 ID:zthO/UpI0

外道のクソ野郎と分かっていて、救い用のない悪党と分かっていて、それでも向き合うってんならとことん相手になってやる。


「お嬢さんじゃありません。初春飾利です。宜しく、垣根さん」


「初春っつーのか、俺が何をしたいのかも聞いてたよな」


ここらで猫被りを止め、毒づくように吐き捨てていく。


156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/27(水) 20:35:49.48 ID:zthO/UpI0

「テメェと向き合ってやるよ。その気に食わねぇ目に、テメェの思考に付き合ってやる。
こんな形でクソ外道に目ぇ付けられた事を一生悔いやがれ」


直後、
ようやくコイツと同じ土俵に立った。

そんな、そんな気がした。



164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/28(木) 17:21:29.86 ID:DgjgmlUY0


行間 二 ー10月16日。


165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/28(木) 17:22:11.35 ID:DgjgmlUY0

『窓のないビル』

出入口どころか窓の1つすらないビルの中に、『人間』と『何か』がいた。

『人間』の名はアレイスター=クロウリー。
学園都市の統括理事長であり、最強の魔術師。


『何か』に名はない。
強いてコードを言うなら、『ドラゴン』
アレイスターが言うなら、『エイワス』


166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/28(木) 17:22:38.15 ID:DgjgmlUY0

双方共に明確な存在としては危うい存在が、確かに言葉を交わしていた。


「まるで第二候補(スペアプラン)を遊ばせてるみたいだな、アレイスター」


「――なに、彼の私的な役割は10月9日の時点で終わっている。『未元物質』も一部保管され、既に研究も始まっている。
彼のプライベートを潰すほど私にも暇はなくてな」


167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/28(木) 17:24:07.22 ID:DgjgmlUY0


不適な笑みを浮かべ、アレイスターは1つのモニターに視線を移す。


エイワスもそれに連なり、更に言葉を乗せた。


168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/28(木) 17:24:38.90 ID:DgjgmlUY0


「そのわりに、随分とそぐわないgjbをahqwるじゃないか」


ノイズが走るエイワスの言葉に感情は一切ない。

それは当然、アレイスターの表情にも言えた事だった。


169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/28(木) 17:25:04.51 ID:DgjgmlUY0

「これは彼のプライベートじゃあない。第二候補の第二の仕事さ」


「ふむ。それが10月17日に予定されてる所を見ると、まだ君は彼を第一候補(メインプラン)とぶつけるつもり、と思っていいのかい?」




感情のない問いに、感情のなかったアレイスターの口元が僅かに歪む。


170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/28(木) 17:26:35.53 ID:DgjgmlUY0

「いいや」

否定の言葉を置き、アレイスターは続けた。


「垣根帝督がつまらない人間関係を持ち始めている。これに至っては一方通行にも言える事だが、垣根帝督のは"一般人"だ」


「久しぶりに君の言いたい事がさっぱりだな、アレイスター」


171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/28(木) 17:27:55.15 ID:DgjgmlUY0


「――彼は色々と勘違いしている。私は彼を殺しはしないし、本質そのものは第一候補に匹敵するとも言える」


そこで。と、アレイスターは置き、


「彼の"本質"を試す。人間性と『未元物質』が、そのつまらない関係でどこまで変わるのかを、どうしようもない"研究者"を使って」


172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/28(木) 17:28:31.18 ID:DgjgmlUY0

エイワスはアレイスターの言葉の真意を詮索しようとはしない。

アレイスターの言う垣根帝督が持ち始めた関係など、まともな関係じゃないばかりか期間など一週間にも立たないのだ。


だが"研究者"としてモニターに移った人物の名前を見て、エイワスは目を張る。

感情のな い表情に、

わずかな、歪みが生じた。


173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/28(木) 17:29:01.98 ID:DgjgmlUY0


―――その研究者の"名"は"その分野"で知らない者はいなかった。


―――その"名"を持つ者はどんな形であれ科学に愛され、科学を悪用しなければならない運命にあった。


―――そしてその殆どがどうしようもなく残酷で、どうしようもなく卑怯で、どうしようもなく外道。


174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/28(木) 17:29:53.54 ID:DgjgmlUY0




―――総称されるその冠し名は―――



     『木原』





180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:05:39.81 ID:WKQsOsm70

現在日時、10月16日 9:36。

花飾りに啖呵を切ってから2日が立った。
正直昨日の事は思い出したくない。


心理定規と白井(と変なメガネ)が立ち上げた変な企画のおかけで俺はさんざん振り回されたあげく、花飾りを俺の"先輩"としてずっと付き添わせやがった。


181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:06:15.26 ID:WKQsOsm70

認めたくねぇが、俺は頭が良い割にかなり不器用らしい。


事務的な仕事なんざやったことないもんだから色々とミスったあげく、花飾りに変な目で見られた。


死体になりてぇのか花飾り、と言ってやったが、
『ミスの八つ当たりなんてみっともないですよ垣根さん』

だとよ。


182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:07:23.46 ID:WKQsOsm70

コイツの掴みにくさは心理定規の数段上を行ってやがる。




そして今、俺は心理定規に呼び出され第一七七支部にいる。

白井や花飾りは学校。
制服姿の心理定規が普通に支部にいていいのかとことん心配になる。


183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:08:01.56 ID:WKQsOsm70

「…で、話しておきたい事なんだけど」


心理定規の第一声で俺は硬調する。

………"仕事"の時の顔してやがる。


「よくない情報が入ったのよ。『暗部』絡みでね」


184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:09:04.24 ID:WKQsOsm70

色々よぎった考えはあったが、ひとまず簡単に吐き捨てる。


「何でココでんな話をする。わざわざ呼び出してまで、理由らしい理由でもあるんだろうな」


「あなたが受け入れるような理由なんてないわよ。 強いて言うなら活動しやすいから?
白井さん達は学校、そしてココには多数のコンピューター。
知ってる?ここのコンピューター、初春さんが使うモノ以外殆ど細工してるのよ」


185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:09:32.08 ID:WKQsOsm70

「花飾りに覗かれるかもしれない程度のセキュリティかよ。
こりゃあ『暗部』の情報が引き出せるって訳じゃなさそうだが」



「そこまで大層なモノでなくても、期待できないものでもないわよ?
『スクール』の時に経由していたネットワークを一時的に借りてるの。
所詮、"用済み"の私たちに出来る事なんて限られてるけどね」


186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:10:45.86 ID:WKQsOsm70

ここで一瞬、俺は我に帰る。

俺は長く居座り続けた『闇』に、今まさに帰っていた。


そしてそれはどうしようもなく居心地が悪かった。

こんな感情を抱いたのは恐らく初めてで、
その感情が俺の求める"何か"に関与しているかなんて事には、俺は気にもかけなかった。


187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:11:23.43 ID:WKQsOsm70

「………なんなんだよ。その噂ってのは」



モヤモヤする心境を払うためにも、俺は心理定規に質問した。


「まず、10月9日に『スクール』が壊滅したのと一緒に、『グループ』以外の暗部組織は壊滅されたの」


188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:12:03.72 ID:WKQsOsm70

その程度なら予測できた。

少なくとも俺を"惨殺"したクソ野郎がいる『グループ』は暗部同士の潰し合いくらいじゃ消えそうにない。

それこそ上層部に直接啖呵を切らない限りは。


189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/06/29(金) 21:12:43.44 ID:WKQsOsm70

それに足して、『メンバー』のリーダー(名前忘れた)に至っては俺自ら殺し、『アイテム』も俺の攻撃が響いたのだろう。


他の組織は大方『グループ』に潰されたか。



「で?何で今更潰れた組織の名前を引き出す。まさか、仲良く元通りする事になりました、ってか?」


190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:14:08.73 ID:WKQsOsm70

ケラケラとかます俺だったが、心理定規の表情に変わりはない。


よぎった嫌な予感は、すぐさま心理定規の言葉が具現化してくれた。



「元通りって言うんじゃないけど、……あながち間違いでもないのよね…」


191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:14:39.72 ID:WKQsOsm70


切なそうに呟くコイツの心境は理解できなかったが、俺も変な疑問を抱えていた。



―――戻る? あの、『闇』が?


192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:15:15.45 ID:WKQsOsm70

俺達に闇が戻ってくる。
結構な事じゃねぇか。


さんざんに居座り、手を汚し、こだわり続けた俺の唯一の居場所。


それが、何故、
こんなにも不愉快に感じる?


193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:17:21.27 ID:WKQsOsm70

分からねぇ。

もう全部、何もかも理解不能。



1人で悶えている俺に言う、心理定規の情報は大して耳に入っちゃいない。


『グループ』以外の組織の残党が結成されようとしてるとか、
『猟犬部隊』(ハウンドドッグ)の残党が動き出しているとか、


194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:17:52.16 ID:WKQsOsm70

もうそんな事はどうでも良かった。


俺を巻き込むな。静かに寝かせろ。

さんざん人をコキ使い、さんざん人を殺してきた俺が何を言ってんだか……。


195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:18:24.25 ID:WKQsOsm70

それでも、俺は壊れないことを、何事も起こらない事を望んでいた。

この、"居場所"を。



………、居 ?場 ?所 ??


196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:19:18.13 ID:WKQsOsm70

そんなこんなで時間は過ぎていく。

現在時刻、12:31。



俺と心理定規は柵川中の食堂にいた。

適当に風紀委員の事務を行い、適当な時間に昼食をとる。

変鉄すぎる常識に、俺は浸っているのかもしれない。


197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:20:04.24 ID:WKQsOsm70

食堂で花飾りと会った。
アイツここの中学だったのかよ…。

加えて花飾りと一緒にいた中学生が俺をまじまじと見てきやがる。


「うーいーはーるー?このイケメンさんとは一体どんな?どんな!?」

「佐天さん!?そ、そういうんじゃありませんって!」


198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:20:46.21 ID:WKQsOsm70

そんな事はどうでも良く、アイツに巻かれていた包帯は取れていた。


加害者の俺はあえて何も言わなかったが、わざわざ被害者のアイツが俺に言ってくる。


「治りましたよ垣根さん! これで事務の手伝いはかどりますね!」


無邪気に、それも平然と言うが、この花飾り本当に大したモンだ。


199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:21:42.51 ID:WKQsOsm70


俺は「助けなんざ必要ねぇよ」とあしらうが、やっぱりこれは居心地が良かった。


……余計にモヤモヤする。

俺は、何を―――?




そんな、迷路に捕まった俺を、
引っ張り出すように、事件は起こった。


200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:22:29.32 ID:WKQsOsm70

それは、爆発。

場所の詳しい特定はここからじゃ難しいが、少なくとも柵川中内であることに違いはない。



それがどういう意味を表すのか、俺にはすぐに分かったよ。
おそらく、心理定規もそうだろう。

どんだけ暗部やってきたと思ってんだ。


201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:22:57.73 ID:WKQsOsm70

花飾りは他の生徒と同様この現状に頭が追い付いていない。


コイツ、こういう時は普通のヤツと同じなのかよ………。



何はともあれ、俺と心理定規は動く。

動かなきゃならねぇ。

202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:23:44.61 ID:WKQsOsm70

「(オイ、お前は花飾りを含むここにいる生徒の避難とケアを出来る限りとれ)」


心理定規にしか聞こえない程の声で、心理定規に聞かせるためだけに囁く。


「(あなたはどうするつもり?)」


203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:24:54.59 ID:WKQsOsm70

「(奴さんのオーダーに答えてやろうじゃねえか、前菜なんかで満足してんじゃねぇっての。
メインディッシュ自ら顔出してやる)」



そして、俺は一旦戻っていく。

血肉にまみれた、闇へと。


204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:25:25.92 ID:WKQsOsm70

ひとまず俺は柵川中の外に出ていた。

奴さんの標的は恐らく、いや、
十中八九は俺だろう。


とうとう迎えが来たって訳か。


205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:25:55.19 ID:WKQsOsm70

一番納得のいく、一番合理的な結末に、どうしてもイラつきが生まれる。


これ以上の事は考えねぇ。

今感情論をぶちこめば、俺は壊れてしまいそうだから。


206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:26:28.45 ID:WKQsOsm70

柵川中周辺を歩いていると、1人の女を見つけた。


ソイツは20代の女性だった。
ソイツは車椅子に乗っていた。
ソイツの服装は緑色のパジャマだった。

そして、ソイツの目と出で立ちには、深い"何か"を感じた。


207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:27:56.45 ID:WKQsOsm70

「失礼、お姉さん。さっきそこの学校で爆発があってね。危ないから避難しておいた方がいい」


俺は肩の腕章を見せる仕草と一緒に女に注意した。

当然、マジの善意剥き出しでこんな事をやっている訳ではない。

208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:28:37.46 ID:WKQsOsm70

「あら、風紀委員の方ですか。大きな音がしたものですから驚いてしまって」


パジャマの女はペコリと頭を下げ、車椅子の方向を逆回転させる。



「そのお体だと移動も一苦労でしょう。
車椅子を押すくらいの事はやらせて下さい」


俺は最も風紀委員に適していない意志で、最も風紀委員に適した対応をする。


209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:29:05.34 ID:WKQsOsm70

「あらあら、では、お言葉に甘えさせてもらおうかしら」



その後、俺はパジャマの女が指定した場所まで車椅子を押し続けた。


そこは人気が少なく、第七学区なのかも怪しい場所だった。


210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/06/29(金) 21:29:56.61 ID:WKQsOsm70

「もうここで大丈夫ですよ、迎えが来るので。どうもありがとうございます」



「そうですか。では、失礼しますね」


そして、


「ああそうだ、お姉さん。言い忘れていた事があるけど」


211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/06/29(金) 21:30:32.79 ID:WKQsOsm70


俺は、


「テメェが注文者って事は分かってんだよ、クソボケ」



本当の意味で、
闇へと帰っていく。


216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県) [sage]:2012/06/30(土) 00:07:53.12 ID:g9PRv/+Ro
最近病理さん登場のSSが多くて俺得すぎる

219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:49:22.11 ID:kV6MqW7d0


第五章 一10月16日?。


220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:50:19.94 ID:kV6MqW7d0

砂嵐が吹き荒れる。

原因は俺が適当な一発を女にくれてやったから。


「ククク…ッ」

砂嵐から声がする。


221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:50:56.78 ID:kV6MqW7d0

あの程度じゃ死なねぇか。
まぁ当然と言えば当然だろ。

わざわざ第二位を注文して来てんだ。少しくらい楽しませてくれなきゃ価値が合わねぇよなぁ?



「ばれてましたかぁ……。まぁ…」


222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:51:27.61 ID:kV6MqW7d0

女の姿が視界に入る。

右手を口元にあて、ケラケラと笑ってやがる。

成る程、第一位に引けをとらねぇイカれっぷりと見える。


「ば・れ・て・し・ま・っ・て・は、仕方がありませーん!」


223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:52:07.86 ID:kV6MqW7d0

車椅子ではありえない速さと、ありえない形相でパジャマの女は俺に迫ってくる。


あまりの勢いに反射的にもう一発かましたが、ヤツの動きを止めただけで見た所外傷は1つもない。


224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:52:47.23 ID:kV6MqW7d0

「『量産型能力者(レディオノイズ)計画』を蒸し返すような呼び方で気は引けますが、"私は"あなたをこう呼んだ方がいいんですかねぇ?
オ・リ・ジ・ナ・ル」


ゾッ、と、

コイツの持つ『何か』が、俺には見えた気がした。


225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:53:14.10 ID:kV6MqW7d0

「あのスライム計画まで知ってやがんのか……。
テメェ…"誰"だ?」

この時点で俺の警戒度はMAXと言っても良かった。

少なくとも、コイツは雑魚じゃねぇ。

226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:53:42.47 ID:kV6MqW7d0

長く居座り続けた暗部で培われてきた感覚が、俺を奮い立たせる。



「あー、どこから説明したらいいのかしらね?でもでも、私が名乗っちゃえば大体分かっちゃうからそれでいいですかね」


227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:54:11.13 ID:kV6MqW7d0


まただ。

コイツから一瞬見える『何か』が
、俺を襲う。

その『何か』が何なのかも、コイツが名乗ったと共に判明した。



228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:54:44.66 ID:kV6MqW7d0

「『木原』」

「……へぇ」


「第二位がこの名をしらない筈ありませんよねぇ? では改めて自己紹介しましょうか。木原病理と申します。宜しく、第二位さん」



229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:55:12.43 ID:kV6MqW7d0

知らない筈はなかった。

『木原』
あのクソ一位の研究にも携わった一流のゲス共。


……ああ、そうか。

今の今までコイツが放ってた気味の悪い『何か』は『木原』だったのか。


230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:55:40.67 ID:kV6MqW7d0

俺は『未元物質』の出力を最大にする。

一気に潰す。

これ以外に方法などいらなかった。

俺が未元物質を最大出力で振るう時何故か六枚の白い翼が展開する。


231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:56:10.99 ID:kV6MqW7d0

似合わねぇって?
安心しろ、自覚はあるよ。


その翼を木原病理に向けて叩きつける。
いたってシンプルな攻撃だった。


しかし、


232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:56:52.61 ID:kV6MqW7d0

「いきなり全力ですか。そういうのマジでさむーいんですが」


「…なに?」


受け止めていた。

翼の一撃を、未元物質を、確かに木原は"両手で"受け止めてやがる。


233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:57:19.31 ID:kV6MqW7d0

疑問を浮かべてる暇などなかった。


肉が軋む音がする。
音源は木原の両腕。

警戒した俺は翼を離し木原との距離をとる。


234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:57:46.93 ID:kV6MqW7d0

直後、木原の腕からミサイルが発射される。

俺には見えた。あのミサイルに書かれた文字を。

Made_in_KIHARA.


235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:58:14.20 ID:kV6MqW7d0

ちゃちな攻撃にしか見えんが、『木原』となれば話は別だ。


放たれた2つのミサイルは俺を追ってくる。

俺は未元物質を構築、応用しこの世には存在しない太陽光を木原とミサイルに向けて放つ。

236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:59:21.59 ID:kV6MqW7d0

ミサイルは瞬間に爆発したが、木原に大した外傷はない。

……アイツ、皮膚まで改造してるってのかよ。

こりゃあ全身が改造されてると見ても間違いじゃなさそうだが……。


237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/01(日) 23:59:55.08 ID:kV6MqW7d0

「あらあら、女性の肌をなんだと思ってるんですかねー」


「改造人間がなに抜かしやがる。見せてみろよ。まだこんなもんじゃねぇんだろうが」


「イロイロ諦めてきた病理ちゃんにそれ言っちゃいますー?私から攻撃仕掛けるなんて気が引けますがねぇ…」


238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/02(月) 00:01:31.81 ID:nvASZ/aV0


御託はいいよ、怪物。

見せてもらおうじゃねぇか、『木原』がどの程度の代物かをよ。



245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/03(火) 21:25:29.23 ID:L3DBTRzP0



と、その前にだ。
聞いときてぇ事があったな。

「テメェ、"オリジナル"ってなぁどういう意味だよ」


「あー、それですか? なんかぁー、いきなりネタバレってのもつまらないですよね??」

ドス黒い瞳にドス黒い笑みでコイツは俺に言う。

うざってぇ。やっぱとっとと殺すか?


246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/03(火) 21:26:21.72 ID:L3DBTRzP0

「なので……」

木原の声が届く。
明確な殺意が肌に届く。


「ネタバレは、お・あ・ず・けでぇぇえす!!」

瞬間、木原は車椅子から取り出したスイッチを押す。

出てきたのは、やっぱりただのミサイルだった。


247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/03(火) 21:27:13.95 ID:L3DBTRzP0

「舐めてんのか?」

思わず口に出してしまう。
木原製だろうが、もう底が見えている。

この程度で、二位の前に立つつもりか?

『未元物質』を使い、俺と木原の間で大きな爆発が起こる。

「そうですねぇ。私はあなたを殺し合いに来た訳じゃありませんし?」

巻き上がる煙の中から声がする。
見えなくても分かる。コイツは俺を見透かしてる。


248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/03(火) 21:28:42.55 ID:L3DBTRzP0

「物騒な兵器抱えてよく言えんな。
だったら何しにきたってんだよ」


「そうですねぇ。諦めさせに?」


諦め?何をだよ。
言葉に出してないのに、木原は分かったかのように続ける。

「『諦め』の餌ってのはあちらこちらにも転がってるんですね?。ほら、あんなのとか」



249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/03(火) 21:29:35.26 ID:L3DBTRzP0

木原が指差したその先。
それを見て、俺は何故か目を見開いていた。

「こ、この辺だよね初春?爆発あったの」

「待ってくださいって佐天さん!親友としても風紀委員としても、ここに居るのは許可できません!危険ですよ!!」



250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/03(火) 21:30:29.98 ID:L3DBTRzP0

あのバカども……ッ。

一番闇から遠い奴らが、一番闇に近いこの場へと確実に近づいて来る。


もう自分の感情にクソったれるのはやめだ。

俺のイザコザに、『一般人』を巻き込みたくない。
それでいい。

理由を付けりゃ、俺にも……人を、助けられる筈だ。


251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/03(火) 21:31:23.95 ID:L3DBTRzP0


「…なんて顔してるんです?オリジナル」

まだ距離がある花飾りを注視していた俺に木原は言う。

ここで一番、『闇』の雰囲気を感じさせて来る。

「一位に続いてアナタもですか?止めてくださいよ。暗部なんて小さい容器に入らないアナタ達が他人を守る?助ける?
いやいや、サムいどころじゃないんですが……ねッ!」


252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/03(火) 21:32:08.64 ID:L3DBTRzP0

木原がとった行動は、単純と言えば単純で、複雑と言えば複雑だった。

何の咎めもなく、兵器を花飾り達に放ったという単純。

コイツの言う『諦め』のためだけに、闇が光を襲うという複雑。


大分距離は縮まってきて、花飾りとサテン(だったか?)がようやく身の危機を察した。


253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/03(火) 21:32:55.28 ID:L3DBTRzP0

「…チッ!」

俺は即座に反応する。狙われてる花飾り達が兵器に気づくより、ずっと早く。

花飾り達と数十メートル離れた位置で、ミサイルを受け止める。

俺の後ろにいる花飾りとサテンがどんな顔をしているのか、

俺は知らない。


254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/03(火) 21:33:57.29 ID:L3DBTRzP0

俺は翼を広げていた。

闇のくせして、光をも思わせる白い翼が、汚れを知ってはいけない光を守るために。


木原はため息をついていた。

闇が何をやっている?と、ドス黒い瞳が、ただただ俺を見つめる。


花飾りは……。
俺の名前を読んでいた気がした。

木原に敵意を丸出しにしていたためか、後の事は知らねぇ。


260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/04(水) 22:45:53.15 ID:c4eDXZIV0

「はぁぁぁぁああああ」

大きなため息が一つ。

B級、いや、C級映画を見た後のような表情と雰囲気。

「大体分かりましたよ。まぁ最初から予想はいくらでもしましたけど。
あなたの浸ろうとしてるもの……」


261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/04(水) 22:47:11.32 ID:c4eDXZIV0

俺としては、もうどうでも良かった。

さっき理由があればとか何とかとも思っていたが、それも全て撤回だ。

本能が、確かに助けろと促している。

それがありゃぁ、十分だよ。
コイツを、木原病理を、潰す。


262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/04(水) 22:48:05.73 ID:c4eDXZIV0

しかし、

木原から全くと言っていいほどに戦意を感じない。


「なんか酷く萎えてしまいましたよ。
諦めさせるのは一旦諦めますかねぇ」


悠長に流れて行く言葉が、俺のカンに触る。


263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/04(水) 22:49:24.61 ID:c4eDXZIV0

「まぁ」

やる気のない声。
うざったい、今すぐに頭を叩き潰してやりたい。

「ここは引くとましょうか。
お姫様の前で、化けの皮はがしたくないでしょ?騎士(ナイト)さん」

わざとらしく木原は笑う。後ろで花飾りがどんな心境なのかなんて知らない。

「とことん舐めてやがるな。ここまでかき回しといてんな理由で帰すと思ってんのか?」


264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/04(水) 22:50:25.72 ID:c4eDXZIV0

「ええ、帰らせていただきますよ。そのためにも……」

コイツから笑みは消えない。
最初からそうだ。この余裕は何だ…?


「どっかーん」

……あ?

木原の腑抜けた一言に、思わず敵意を緩めてしまう。


265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/04(水) 22:52:10.05 ID:c4eDXZIV0
直後、

轟ッッ!!!

マジの爆発が、そう遠くないどっかで起きた。


「ッ!!」

思わず片目を瞑ってしまう。
理由?それは爆発の音が響き過ぎってくらい耳に届いたから。

ぶっちゃけた所、俺や花飾り達を狙った攻撃ではない。

しかし、この爆発により敏感に反応したのは、花飾り達だった。


266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/04(水) 22:53:00.84 ID:c4eDXZIV0

「佐天さん……あの方向って…」

「うん……」

二人の表情が、深刻さを増す。
この距離ならまだ聞こえる。聞こえる。


「私たちの寮…だよね…」


な に ?

267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/04(水) 22:53:59.20 ID:c4eDXZIV0

木原は笑っているまま。

コイツ……何を考えてる?

俺が言えた義理じゃねぇが、行動の根端が見えねぇ。

「解せなさそうですねぇ。オリジナル」


「…当然だ。まるで訳が分からねぇ」


268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/04(水) 22:54:47.25 ID:c4eDXZIV0

「別に"今"はそれでいいですよ。
今日は私帰りますし」

……これ以上話しても無駄みてぇだ。
色んなイレギュラーを見てきた俺の直感。

逃がさねぇと吠えた所で、コイツは何かしらの手段でこの場を巻く。

しかし同時に、こんな直感もあった。


コイツは、また、俺を『諦め』させに来る。


269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/07/04(水) 22:56:00.38 ID:c4eDXZIV0
根拠もクソもねぇ。
だって直感なんだ、仕方ねぇだろ。


「では、また"お会いしましょうね"。オリジナル」

そんな言葉は俺には聞こえちゃいない。

ただ木原がこの場からいなくなるのを、ただ確認する。


ただ、それだけ。



278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:40:11.96 ID:XPA1HtE90


第六章 一10月16日?。



279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:41:00.17 ID:XPA1HtE90

「か、垣根さん!」

オドオドした声で、花飾りが俺に近づいて来る。

テメェ、いつもの威勢はどうしたんだよ。

「あぁ?」

適当に反応する。
ヤクザみたいだ、笑えてきた。


280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:41:39.48 ID:XPA1HtE90

「だ、大丈夫なんですか?」


……は?

一瞬、「アタマ大丈夫か?」と聞かれたようにも聞こえたが、花飾りの表情からそうではないと確信できた。


コイツ…俺を"心配"してやがる。


281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:42:27.55 ID:XPA1HtE90

それは紛れもない"迷惑"だった。
誰を心配してんだ。俺は学園都市の第二位だぞ。


それは紛れもない"不可解"だった。
本当に解せねぇ。俺はお前を殺そうとした悪党だぞ。


そして、

それは、紛れもない。

居心地の良さーーーー。


282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:43:22.39 ID:XPA1HtE90

「……ハッ」

どれもこれも口には出さない。
出してしまえば、俺は自覚してしまう。

「お前らが出しゃばってこなきゃ、今頃アイツの死体が転がってたっての」

俺の求める、"なにか"を。


283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:44:02.17 ID:XPA1HtE90

「で、ひとつ気になってんだけどよ」

紛らわすように、しかし自然に、俺は花飾り達に言葉を放つ。


「いいのか?寮の様子見に行かなくても」

「「あ」」


284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:45:01.44 ID:XPA1HtE90

花飾りとサテン、しまったといった顔つきで互いを見つめる。

「あわわわ、そうですよ!この後どうなっちゃうんですか佐天さん!?私野宿なんて嫌ですよ!」

「初春!?わ、私に聞かれても分からないよ!」


……花飾り、お前が凄い奴なのかそうじゃないのか、
やっぱりよく分かんねぇよ。


285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:45:37.37 ID:XPA1HtE90

「とりあえず様子見に行ったらどうだ。てか、俺を一人にしてくれ」

ヒラヒラと手を振る俺は、二人が寮の方まで行くのを見守る。

二人が視界から消えた事を確認すると、俺は背を向いたまま呟いた。


「いい加減出てきたらどうだ。心理定規」


286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:46:13.68 ID:XPA1HtE90

「あ、やっぱり気づいてたの?いつから?」

「最初からだボケ」


このやりとり。『スクール』では良くあった事だ。

しかし、その時とは雰囲気も気分もまるで違う。

良い意味でも、悪い意味でも。


287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:47:12.69 ID:XPA1HtE90

「『木原』を持ってきたのは流石に驚いたわ。
統括理事会は一体何が目的なのかしらね」

「…知るか」

本当、この一言だった。

もうあれこれ考えねぇ。

一般人をコッチに巻き込まない。
これだけ頭に入れるだけで十分だ。


288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:48:03.53 ID:XPA1HtE90

「それで?」

「…あ?」

「ゴタゴタまみれだった訳だけど、風紀委員には行くのかしら?
この事件は何かしらの形で探られるだろうし、やめとく?」

一瞬、
いや、数秒、言葉が詰まる。

答えは出てる。 が、まだ俺はその考えに理由をこじつけようとしている。


289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:48:38.27 ID:XPA1HtE90

分かってる。
理由なんていらない。 考えた所で答えなんか出やしない。

"本能"なんだ。仕方ねぇだろ。


「行くさ」

肯定する俺と、否定する俺。
双方に混じりながら、俺は続ける。


290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:49:12.71 ID:XPA1HtE90

「ムカつくが………あそこが…、第一七七支部が、俺の今の"居場所"みたいだからな…」

本当に似合わねぇな。とことん自覚が湧いて来る。

心理定規は何も言わない。
なにか安心したような顔つきで、微笑んでる。

……いつか、

俺も、あんな顔。
……出来っかな。


291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:49:55.44 ID:XPA1HtE90

現在時刻 16:12。

今、第一七七支部内ははちょいと殺伐とした雰囲気。

柵川中内で爆破されたのは誰も使わない(らしい)倉庫だけだったため、支部には何とか入れたが、警備員(アンチスキル)が張り付いていてかなり面倒だった。

無能共が見廻りした所で、一つも安心できねぇっての。


292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:50:41.58 ID:XPA1HtE90

ちなみに、今この部屋には俺と心理定規、そして花飾りしかいない。

白井は常盤台から帰って来るなり情報を集めて来ると言って出て行きやがった。

メガネ先輩も白井と同様、今回の事件の全容やら何やらについて警備員と面会中とのこと。


その事件の原因が俺なんて、一生掛かっても分かりそうにねぇのにな。


293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:51:54.14 ID:XPA1HtE90

花飾りは俯いたまんまだった。

寮の爆破については簡単な説明を受けただけで、今後の事についてとかは風紀委員という理由でまだ聞けてないらしい。

サテンが『後で説明に行くね!』と花飾りに言っていたが、結局サテンの声にも不安がこびりついていた。

まぁ、そりゃ不安でならねぇだろうな。


294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:52:39.94 ID:XPA1HtE90

無言が続く第一七七支部のドアが、勢い良く開く。


「初春ー!結果報告だよ!」

入って来たのはサテンだった。

柵川中の体育館で話を聞いてたため、警備員の目に触れずここまで来れたそうだ。


295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:53:23.98 ID:XPA1HtE90

サテンの声は陽気にも聞こえたが、どこか無理をしているような雰囲気も垣間見えた。

それは花飾りも察していたらしく、ある程度の覚悟を備えた上で耳を傾けている。


完全な第三者である俺と心理定規はただ聞いてるだけ。


296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:54:52.07 ID:XPA1HtE90


「一応仮の住居は用意できるだけするみたいだけなんだけど、ウチの学校の予算じゃ人数分は厳しいだろうから学園都市内に親がいる人は実家に帰ったり、都合のきく他校の寮に入ったりしてくれだってさ」

………よくもこんなベラベラと喋れるモンだ。

まぁ、そんなモンだろ。
それこそ常盤台みたいなボンボンの学校じゃなきゃ人数分の仮住まいなんて用意できるわけがない。


297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:55:44.34 ID:XPA1HtE90

そんなどうでも良い考えと共に、どうしても解せない疑問も俺の頭によぎっていた。


「アケミの両親が学園都市内に住んでるらしいから、ムーちゃんとマコちんと私はお世話になる話になったんだけど、初春はどうする?」


何故柵川中の寮まで爆破した?

あの場を去るための手段としては適してない上に、狙いである俺にはなんの意味もない。

……どうしても解せねぇ。


298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:56:31.57 ID:XPA1HtE90

「じ、じゃあ私も……」

「初春さん。アイツの家でいいんじゃない?」


「へ?」

「え?」

「……あ?」

心理定規の言葉に、俺を含む三人は聞き返してしまう。

……全く聞いてなかった。
何の話してたんだこいつら?


299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:57:27.88 ID:XPA1HtE90

「メ、心理定規さん!?」

「だって、佐天さんの話だと初春さん入れたら子どもだけでも5人なんでしょ?」

「オイ何の話してんだ」

全く状況が掴めない俺の視界に、
何かを閃いたような顔をしたサテンが入った。


……イヤな予感しかしねぇ。


300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:58:08.29 ID:XPA1HtE90

「初春……分かった!アケミ達には私から説明するから、垣根さんの家のお世話になってこい!」

………は?

「話聞いてなかったみたいな顔してるわね。行き着く場所のない初春さんを引き取りなさいって言ってるのよ」


「ち、ちょっと二人とも!?何でそうなるんですか!?」

珍しいな花飾り。
俺も全くを持って同じ意見だ。


301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:58:39.35 ID:XPA1HtE90

「何だって俺が引き取んなきゃ行けねぇんだ。
そこまで言うんなら心理定規、テメェが引き取れよ!」

「なに言ってんの?私は常盤台の寮住まいなんだし無理に決まってるじゃな?い」

なに言ってんだこのクソアマ。
……何故ココで嘘を吐く。

意味が分からねぇ……。


302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 22:59:44.28 ID:XPA1HtE90

「いい機会じゃない。
コミュ障って程じゃないにしろ、一人暮らしよかずっとマシかと思うわよ?」


オモシロイ事言ってくれるな、余計に了承する気なくなったぞ。

「まぁ、あの様子じゃもう取り返しつかないんじゃない?」


心理定規が指差した先の有様に、俺の目が久しぶりに丸くなった。


303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 23:00:34.51 ID:XPA1HtE90


「もしもしアケミ!?初春なんだけど、引き取ってくれる人がいるらしいから今回は遠慮するって!うん?そうそう、男!!」


「えぇっ!?ちょっと何してるんですか佐天さん!!」

……あり得ねぇ。
この行動力は何だ?

そして、……どうしてこうなった。


304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 23:02:37.14 ID:XPA1HtE90

一一一一一一一一一一一一一
一一一一一一一一一一一
一一一一一一一

……………。
この際だ、何度でも言ってやる。


「お、お邪魔しまーす」

どうしてこうなった……。


305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 23:03:18.35 ID:XPA1HtE90

現在時刻、18:24。

結論を言うと、花飾りは俺の家にいる……。

ついさっきの出来事は、俺からしたらまともに覚えちゃいない。

確か、白井が戻ってきて、途端にサテンが白井に告げ口をしたんだったっけか。


306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 23:04:08.28 ID:XPA1HtE90

後はまさにトントン拍子って言葉がピッタリだろ。

学園都市第二位の俺の意見はガン無視でな、ムカつく。

支部内を未元物質で蹴散らそうかとも本気で考えたくらいだ。

それでもやってない所を見ると、やっぱり俺は丸くなっちまったのか。



307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 23:04:52.45 ID:XPA1HtE90

元にしろ、『暗部』の人間としてはタブーな状況だってのに、俺に嫌悪感は湧いて来ない。

もうこの感覚にも慣れてきたな。
…どれだけ平和ボケしてんだか。

俺を標的にしてるヤツがいるってのに。


………それはそうと、


308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 23:05:34.89 ID:XPA1HtE90

「お前、いつまで玄関でつっ立ってんだよ」

そう。
花飾りは何故か玄関から動いていない。

まさか、俺が玄関から動かずに考え事をしてたからって訳じゃねえよな。


309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 23:06:19.87 ID:XPA1HtE90

キョトンとした顔つきで、花飾りは返答する。

「え?だって垣根さんが気だるい顔しながら動かないからじゃないですか」

…こういう所は変に常識が通用するヤツだ。

つかそもそも、常識って言うには怪しい部分があるが。


310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 23:06:47.97 ID:XPA1HtE90

「あーそうかよ。とっとと入んぞ」

「では改めて、お邪魔します」


ようやくの帰宅。
……何だかんだ言って花飾りを普通に迎えてやしねーか俺?

久しぶりに自分で自分に呆れた。


311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [saga]:2012/07/07(土) 23:09:21.01 ID:XPA1HtE90


「うわっ。凄く広いですよ垣根さん!」

今度は部屋に入るなりキャッキャキャッキャと騒ぎ出す。


「当たり前だ。なんつったって俺は一一一」

っと危ねえ。
下手に第二位と宣告するのは良くねえな。

ましてコイツは俺の裏の顔を少なからず覗いちまってんだから。

ほんの一瞬でも、暗闇に帰ったような表情をした俺を、花飾りは見逃していなかった。

何も言ってこないモンだから、俺は全くを持って気が付かない……。



313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/07/07(土) 23:27:07.59 ID:ewsFxn9Do
乙!
やっぱ第二位だし相当の住まいなのか


垣根「俺の居場所に…」2




posted by JOY at 15:50| Comment(1) | TrackBack(0) | 禁書SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なんでこう一方さん然りむぎのん然りレベル5の人たちはボロクソにやられると丸くなるのか
Posted by at 2013年03月06日 00:21
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